JP2582132Y2 - プレキャストコンクリート板 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案は、現場打コンクリート
と構造的に一体化して合成床版を構成するプレキャスト
コンクリート板に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】立体トラス鉄筋を用いたオムニア板、カ
イザー板等のプレキャストコンクリート板は、現場にお
けるコンクリート打設時には型枠として用い、コンクリ
ート打設後には現場打コンクリートとプレキャスト板と
が構造的に一体化して合成床版を構成する所謂ハーフス
ラブ工法に用いられている。ハーフスラブ工法は、従来
の現場打設床版工法と比較して、現場工事の省力化、工
期短縮及び床版工事の品質向上等を図ることが可能であ
る。

【０００３】このカイザー板においては、板を型枠とし
て使用する場合にはカイザー板の補強材として立体トラ
ス鉄筋を用いて、そして現場におけるコンクリート打設
後には、立体トラス鉄筋のジベル効果によって２次コン
クリートとの合成を図ることに特徴がある。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】カイザー板を型枠とし
て使用する場合、板の無支保工での適用スパンは、約
２．５ｍといわれている。すなわち、３〜６ｍのＲＣ床
版の一般的なスパンにカイザー板を型枠として使用する
場合には、中間支保工を一箇所又は２箇所設ける必要が
ある。

【０００５】一方、型枠の剛性を高めるため、立体トラ
ス鉄筋の代わりに鉄筋を内蔵するコンクリートリブを、
板下面に配したプレキャスト板もあるが、無支保工での
適用スパンを大きくするためには、鉄筋を内蔵するコン
クリートリブが非常に大きな断面になるというプレキャ
スト板としては致命的な欠点がある。

【０００６】また、カイザー板における２次コンクリー
ト打設後の断面計算は、通常のＲＣ床版と同様の計算を
行っており、立体トラス鉄筋は床版の補強材として断面
計算に算入されておらず、床版厚さを薄肉化することに
は役だっていない。

【０００７】一方、鉄筋を内蔵するコンクリートリブを
もつプレキャスト板では、かかる鉄筋コンクリートリブ
が型枠、床版の両者において構造材として計算できる
が、先に述べたように、無支保工での適用スパンを大き
くとるとリブ断面が非常に大きくなり、プレキャスト板
としては不適切である。

【０００８】すなわち、ＲＣタイプのハーフスラブに用
いるいずれのプレキャスト板においても、その型枠とし
て無支保工で適用できるスパンを大きくとるためには、
板断面を大きくする必要があるが、最終床版厚及び現場
打設コンクリート厚の関係から板厚はおのずと上限があ
り、適用スパンが制限されると同時に断面を大きくする
とプレキャスト板の重量がアップするという欠点があ
る。

【０００９】この考案の目的は、前記の従来における技
術的課題を解決し、作用荷重による曲げモーメントに応
じたリブ断面の最適設計がコストアップなく容易に可能
で、補強鋼板とコンクリートから構成される合成リブを
有するプレキャストコンクリート板を提供することにあ
る。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに、この考案のプレキャストコンクリート板に依れ
ば、鉄筋の上部がプレキャスト板上面に突出するように
連続曲げ鉄筋を固着した補強鋼板とコンクリートとの一
体化により合成リブを構成すると共に、合成リブ下面を
曲げモーメントの分布に応じて略２次曲線を描くように
形成したことを特徴としている。

【００１１】

【作用】この考案のプレキャストコンクリート板は、下
面に配した合成リブを板に作用する曲げモーメントに応
じた最適断面に容易に形成することができ、さらに型枠
や床版の両者においてこの合成リブを構造材として断面
計算に算入することができるので、それぞれ型枠及び床
版の曲げ強度の向上を図ることができる。

【００１２】従って、このような合成リブを有するプレ
キャストコンクリート板は、従来のカイザー板より大き
なスパンに適用できると共に、２次コンクリートを打設
した後の床版を薄肉化することが可能である。また、鉄
筋コンクリートリブをもつプレキャスト板に比較して、
リブ断面をかなり小さく抑えることが可能であるため、
リブ断面の最適設計と相まって板断面が小さく軽量で高
強度のプレキャスト板を安価に提供することができる。

【００１３】

【実施例】図面にはこの考案の実施例が示されており、
図１において、この考案のプレキャスト板１は、連続曲
げ鉄筋４を固着した補強鋼板２とコンクリート３が一体
化した合成リブ５をプレキャスト板１の下面に１つ又は
複数形成して構築される。補強綱板２は、図４〜図６に
示されるように帯板状（図４）、又は曲げモーメントに
応じて幅を変化させたもので、曲線的に中央部幅広（図
５）、さらに直線的に中央部幅広（図６）に形成する等
各種のものが使用できる。このような補強鋼板２は、軽
量鉄鋼板の様な金属材料から造られ、１枚の帯状鋼板か
ら極めて容易に形成することができる。

【００１４】連続曲げ鉄筋４は、図３に示すように略三
角形状のジグザグ状に連続して折り曲げると共に三角形
の下側頂点を結ぶ線が曲げモーメントの分布に応じて略
２次曲線を描くよう形成する。このように形成した連続
曲げ鉄筋４を鉄筋の上部９がプレキャスト板１の上面８
に突出するように補強鋼板２の上面に溶接するが、補強
鋼板２は薄板鋼板を用いているため、連続曲げ鉄筋４と
の接合は、鉄筋の形状に合わせて略２次曲線を描くよう
に簡単に形成できる。合成リブ５の最終形状は、この補
強鋼板２を型枠として製造するので、図２に示す略２次
曲線状に高さが変化する合成リブ２を簡単かつ安価に形
成することができる。ちなみに鉄筋コンクリートリブを
本例のように略２次曲線状に最適設計するためには、型
枠の製作が非常に困難となり、コスト面から実用的とは
いえない。さらにこの連続曲げ鉄筋４は、断面に作用す
るせん断力が小さいスパン中央では、大きな三角形４ａ
を構成し、大きなせん断力が作用する板端部では、小さ
な三角形４ｂを構成するようにして、断面に作用するせ
ん断力に応じてジベル効果を発揮する鉄筋の量を変化さ
せた構造としており、連続曲げ鉄筋４と補強鋼板２を組
み合わせた構造は、極めて力学的に有利なものとしてい
る。

【００１５】この連続曲げ鉄筋４の上部は、プレキャス
ト板上面８に突出し、現場において打設される２次コン
クリートとの付着を良好にするのみでなく、プレキャス
ト板上面８に現場で配置される鉄筋の定規の役目を果た
し、これらの鉄筋のかぶりが正しく取れるように高さを
設定することが望ましい。なお、鉄筋を工場において予
め補強鉄筋４の上部に溶接しておけば現場配筋作業がさ
らに簡略化できる。

【０００６】前述の連続曲げ鉄筋４及び補強鋼板２を用
いたこの考案のプレキャスト板１は、連続曲げ鉄筋４を
接合した補強鋼板２を型枠上に並列配置し、コンクリー
ト板に必要な長手方向の主鉄筋６と横方向の配力筋７を
格子状に配筋し、コンクリート３を打設してパネル状に
製作する。板の形成に用いる型枠の配置は、補強鋼板２
を用いた合成リブ５が形成できるように板の最終形状に
合わせて製作されるのが好適である。なお、本考案に用
いる補強鋼板２は、作用荷重に対しては鋼板の幅が曲げ
モーメントの大きさに応じて変化するタイプが望ましい
が、プレキャスト板１製造用の型枠を製作する点からみ
ると同一幅をもつ鋼板の方が好ましいので、目的に応じ
て選択すればよい。プレキャスト板の上面８は、粗面仕
上げとし、連続曲げ鉄筋４の上部９と協同して２次コン
クリートとの付着を良好にする役割を果たす。コンクリ
ート打設後、蒸気養生、脱型、後養生することによっ
て、この考案における補強鋼板２を有する合成リブ５付
きのプレキャスト板１が製造される。

【００１７】

【考案の効果】このように構成されたこの考案のプレキ
ャスト板１に依れば、作用荷重に応じた最適な断面設計
を行った合成リブをもつ板が簡単かつ安価に製造できる
ため、最小のプレキャスト板重量で適用スパンを伸ばす
ことができる。すなわち、従来のカイザー板に比較し
て、型枠として使用する場合には、無支保工で適用でき
るスパンを飛躍的に伸ばすことが可能となり、現場仮設
に関わる人件費、仮設材費用及び施工日数を低減でき
る。特に、床版スパンを本プレキャスト板の無支保工適
用スパンと合致させることによって、仮設材を全く使用
しないで同時に複数階の床版を施工することが可能とな
り、工期を大幅に低減できる。また、２次コンクリート
打設後の床版においては、最適設計された合成リブの効
果によって薄肉かつ軽量で高い曲げ強度を有する床版を
構成することが可能となり、構造躯体の軽量化が特に要
求される高層ビルなどにおいては、本プレキャスト板の
特徴が大いに活かせる。本プレキャスト板における合成
リブは、合成リブ効果による板の断面２次モーメントの
大幅な増加及びリブの形状が曲げモーメントの分布に応
じた最適設計が容易にできることから、鉄筋コンクリー
トリブをもつ同様の形状の板における鉄筋コンクリート
リブよりはるかに小さい断面にすることが可能であり、
軽量で高強度のプレキャスト板を容易に提供することが
可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案のプレキャスト板を示す断面図であ
る。

【図２】この考案のプレキャスト板を示す側面図であ
る。

【図３】プレキャスト板に用いる補強鉄筋の側面図であ
る。

【図４】プレキャスト板に用いる補強鋼板を上面から見
た図である。

【図５】プレキャスト板に用いる補強鋼板を上面から見
た図である。

【図６】プレキャスト板に用いる補強鋼板を上面から見
た図である。

【符号の説明】

１ プレキャスト板 ２ 補強鋼板 ３ コンクリート ４ 連続曲げ鉄筋 ５ 合成リブ ６ 主鉄筋 ７ 配力筋 ８ プレキャスト板上面 ９ 連続曲げ鉄筋の上部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) E04B 5/38

Claims (4)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 鉄筋の上部がプレキャスト板上面に突出
   するように、連続曲げ鉄筋を固着した補強鋼板とコンク
   リートとの一体化により合成リブを構成すると共に、合
   成リブ下面を曲げモーメントの分布に応じて略２次曲線
   を描くように形成したことを特徴とするプレキャストコ
   ンクリート板。
2. 【請求項２】 連続曲げ鉄筋を固着した補強鋼板を曲げ
   モーメントの分布に応じて略２次曲線を描くように形成
   して合成リブを構成することを特徴とする請求項１記載
   のプレキャストコンクリート板。
3. 【請求項３】 連続曲げ鉄筋を略三角形のジグザグ状に
   折り曲げると共に、三角形の下側の頂点を結ぶ線が曲げ
   モーメントの分布に応じて略２次曲線を描くように形成
   したことを特徴とする請求項１若しくは２記載のプレキ
   ャストコンクリート板。
4. 【請求項４】 補強鋼板を帯板状若しくは曲げモーメ
   ントの大きさに応じて中央部幅広に形成したことを特徴
   とする請求項１〜３いずれか記載のプレキャストコンク
   リート板。