JP2580884B2 - リニアモータ式エレベータ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はリニアモータ式エレベー
タに関するもので、特に、リニア誘導モータや誘導子形
リニア同期モータの原理を応用し、昇降路内の２次導体
や誘導子（以下、２次導体と総称する）に釣合おもりの
１次巻線を対応させて推力を発生させるリニアモータ式
エレベータに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来のこの種のリニアモータ式エレベー
タとして、図２乃至図５に示すものを挙げることができ
る。

【０００３】図２はこの従来のリニアモータ式エレベー
タを示す全体構成図、図３は従来のリニアモータ式エレ
ベータを示す平面図、図４は従来のリニアモータ式エレ
ベータの釣合おもりが最下位置のときを示す図２のＡ−
Ａ線断面図である。

【０００４】図において、１１は機械室の床面１２に設
けられた一対の滑車１３に掛け渡されたロープ、１４は
ロープ１１の一端に吊下されたエレベータかご、１５は
ロープ１１の他端に吊下された釣合おもりであり、この
エレベータかご１４と釣合おもり１５は昇降路１６内で
相互に逆方向に昇降するようになっている。また、１７
は長板状をなし、釣合おもり１５の両側で上下に延びる
ように配設されたリニアモータの一対の２次導体であ
り、この２次導体１７の下端１７ａは昇降路１６の床面
に当接している。１８は断面Ｌ字状をなして、前記２次
導体１７を挾持して昇降路１６の側壁に固定するガイド
レール、１９は釣合おもり１５に設けられたガイドロー
ラであり、前記ガイドレール１８上を転動して釣合おも
り１５の昇降を案内するようになっている。なお、図示
はしないが、エレベータかご１４も別のガイドレールに
案内されながら昇降するようになっている。

【０００５】２０は釣合おもり１５の両側に一対ずつ設
けられて、前記２次導体１７と所定間隔をおいて対応す
るリニアモータの１次巻線であり、リニア誘導モータの
原理により釣合おもり１５に上下方向の推力を付与する
ようになっている。また、２１は釣合おもり１５の１次
巻線２０の下側に設けられた制動装置である。２２は昇
降路１６内の床面上に設けられてエレベータかご１４の
下降を規制するかご側バッファ、２３は同じく昇降路１
６内の床面上に設けられて釣合おもり１５の下降を規制
するおもり側バッファであり、釣合おもり１５はこのお
もり側バッファ２３にて下降を規制された最下位置で整
備されるようになっている。

【０００６】図５は従来のリニアモータ式エレベータの
制動装置を示す図４のＢ−Ｂ線断面図である。

【０００７】図に示すように、２４は釣合おもり１５に
設けられた回転軸２５に回動可能に支持された制動装置
のキャリパ、２６はキャリパ２４の先端に装着されたブ
レーキシュー、２７はキャリパ２４の基端側に介装され
た圧縮ばねであり、キャリパ２４を閉方向に付勢してブ
レーキシュー２６にて前記一方のガイドレール１８を挾
持し、釣合おもり１５を制動するようになっている。ま
た、２８はキャリパ２４の基端にリンク３０を介して接
続されたプランジャ、２９はプランジャ２８を吸引する
ソレノイドであり、ソレノイド２９にてプランジャ２８
が吸引されると、圧縮ばね２７の付勢力に抗してキャリ
パ２４が開かれて前記釣合おもり１５の制動が解除され
るようになっている。なお、図示はしないが、他方のガ
イドレール１８にも別のキャリパが設けられ、両キャリ
パは連動して動作するようになっている。

【０００８】次に、上記のように構成されたリニアモー
タ式エレベータの動作を説明する。

【０００９】このエレベータは、１次側巻線２０と２次
側導体１７とからなるリニアモータにて釣合おもり１５
に推力が付与され、その釣合おもり１５が昇降路１６内
で昇降するとともにエレベータかご１４が反対方向に昇
降するようになっている。そして、釣合おもり１５に付
与される推力の方向及び大きさは図示しない制御装置に
て制御され、エレベータかごの運行が行なわれるように
なっている。

【００１０】また、前記制動装置２１は、通常のエレベ
ータかごの運行時においてエレベータかご１４の停止保
持等に利用され、非常時には昇降中のエレベータかご１
４の強制停止に利用される。

【００１１】一方、制動装置２１の整備時には、前記お
もり側バッファ２３にて規制される最下位置まで釣合お
もり１５を下降させた上で、作業者が昇降路１６内に立
ち入って整備を実施している。このとき、釣合おもり１
５の反エレベータかご１４側は昇降路１６の側壁と近接
しているため、作業者が立ち入る余地はなく、作業者は
エレベータかご１４側から制動装置２１を整備してい
る。なお、この整備に際して、エレベータかご１４は予
め空荷、つまり釣合おもり１５より軽くされ、制動装置
２１の制動が解除されたときのエレベータかご１４の落
下を未然に防止している。

【００１２】なお、この種のリニアモータ式エレベータ
としては、特開平１−２７１３８１号公報に掲載のもの
がある。

【００１３】

【発明が解決しようとする課題】従来のリニアモータ式
エレベータは、上記のように制動装置２１の整備がエレ
ベータかご１４側からのみ可能であり、かつ、昇降路１
６内には２次導体１７が突出していることから、制動装
置２１の個所によっては２次導体１７に妨げられて整備
し難い場合があった。すなわち、制動装置２１の各整備
個所の内、２次側導体１７より手前の個所は容易に整備
できるが、２次側導体１７より遠方の個所、例えば、２
次側導体１７の影に位置するブレーキシュー２６等は、
破線の矢印で示すように、２次側導体１７に妨げられて
整備が非常に困難であった。

【００１４】そこで、本発明は２次導体に妨げられるこ
となく、制動装置の全ての個所を容易に整備することが
できる整備性の良好なリニアモータ式エレベータの提供
を課題とするものである。

【００１５】

【課題を解決するための手段】本発明にかかるリニアモ
ータ式エレベータは、１次巻線と制動装置を備え、ロー
プに吊下されて昇降路内で昇降可能なエレベータかご及
び釣合おもりと、昇降路内で前記１次巻線と対応してエ
レベータかご及び釣合おもりに推力を付与するととも
に、エレベータかご及び釣合おもりが最下位置にあると
きに、下端が前記制動装置より上方に位置する２次導体
とを設けたものである。

【００１６】

【作用】本発明においては、制動装置の整備に際して釣
合おもりを最下位置まで下降させると、制動装置は２次
導体の下端より下方に位置し、作業者は２次導体に妨げ
られることなく、制動装置の各個所を容易に整備可能と
なる。

【００１７】

【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。

【００１８】図１は本発明の一実施例のリニアモータ式
エレベータにおける釣合おもりが最下位置のときを示す
断面図、図６は本発明の一実施例のリニアモータ式エレ
ベータにおける制動装置を示す図１のＣ−Ｃ線断面図で
ある。なお、この実施例のリニアモータ式エレベータの
全体的な構成は、従来技術で説明したエレベータと同一
である。特に、この実施例では、相違点を重点的に説明
する。

【００１９】図において、１は釣合おもり１５の両側で
ガイドレール１８に支持されたリニアモータの一対の２
次導体であり、釣合おもり１５が最下位置にあるとき
に、この２次導体１の下端１ａは制動装置２１より若干
上方に位置している。また、通常の運行時と同様に、こ
のときも２次導体１はその下部で釣合おもり１５の１次
巻線２０と対応している。なお、２はスペーサであり、
キャリパ２４の挾持力によりガイドレール１８が変形す
るのを防止している。

【００２０】次に、上記のように構成された本実施例の
リニアモータ式エレベータの制動装置の整備時を説明す
る。

【００２１】従来技術のエレベータと同様に、整備に際
して釣合おもり１５は最下位置まで下降され、作業者は
昇降路１６内でエレベータかご１４側から整備を行な
う。このときの制動装置２１は２次導体１の下端１ａよ
り下方に位置することから、作業者は２次導体１に妨げ
られることなく、破線の矢印で示すように、制動装置２
１の各個所、特に、従来のエレベータでは２次導体１７
の影に位置していたブレーキシュー２６等を容易に保守
及び点検可能となる。

【００２２】なお、前記したように２次導体１の下部は
昇降路１６の床面まで達していないが、釣合おもり１５
が最下位置にあるときでも１次巻線２０と対応している
ため、この最下位置からの昇降を再開することが可能で
ある。したがって、このように２次導体１の下端１ａの
位置を上方に変更しても、リニアモータの機能には何等
支障を与えない。

【００２３】このように、上記実施例は、昇降路１６内
で上下に配設されたガイドレール１８と、滑車１３に掛
け渡されたロープ１１の一端に吊下されて、前記昇降路
１６内で昇降可能なエレベータかご１４と、前記ロープ
１１の他端に吊下されて、昇降路１６内で前記ガイドレ
ール１８に案内されながらエレベータかご１４と逆方向
に昇降可能な釣合おもり１５と、前記釣合おもり１５に
設けられたリニアモータの１次巻線２０と、前記釣合お
もり１５の前記１次巻線２０の下側に設けられ、前記ガ
イドレール１８と係合して釣合おもり１５を制動する制
動装置２１と、前記昇降路１６内で前記ガイドレール１
８にて支持されて、前記リニアモータの１次巻線２０と
対応して釣合おもり１５に推力を付与するとともに、前
記釣合おもり１５が最下位置にあるときに、下端１ａが
前記制動装置２１より上方に位置するリニアモータの２
次導体１とを具備している。

【００２４】したがって、制動装置２１の整備に際して
釣合おもり１５を最下位置まで下降させると、制動装置
２１が２次導体１の下端１ａより下側に位置し、この２
次導体１に妨げられることなく、エレベータの機能上極
めて重要な制動装置２１の整備を容易に行うことができ
る。故に、エレベータの整備性を大幅に向上させること
ができる。

【００２５】ところで、上記実施例のリニアモータの１
次巻線は釣合おもり１５に設けられた１次巻線２０とし
て構成されているが、本発明を実施する場合には、これ
に限定されるものではなく、２次導体１と対応してエレ
ベータかご１４と釣合おもり１５に推力を付与できるも
のであればよい。したがって、例えば、エレベータかご
１４側に１次巻線２０と制動装置２１を設けるととも
に、１次巻線１と対応するように昇降路１６内に２次導
体１を配設し、その２次導体１の下端１ａが前記制動装
置２１より上方に位置するように構成してもよい。この
ように構成した場合でも、上記実施例と同様に、制動装
置２１の整備を２次導体１に妨げられることなく容易に
実施することができる。

【００２６】また、上記実施例の２次導体は１次巻線２
０と対応してリニア誘導モータの原理で推力を発生させ
る２次導体１として構成されているが、本発明を実施す
る場合には、これに限定されるものではなく、エレベー
タかご１４と釣合おもり１５に推力を付与できるもので
あればよい。したがって、例えば、１次巻線２０と対応
して誘導子形リニア同期モータの原理で推力を発生させ
る誘導子として構成してもよい。

【００２７】更に、上記実施例の制動装置はキャリパ２
４を利用した形式の制動装置２１として構成されている
が、本発明を実施する場合には、これに限定されるもの
ではなく、エレベータかご１４と釣合おもり１５を制動
できるものであればよい。したがって、例えば、ソレノ
イド２９の励磁力を直接ブレーキシュー２６に伝達して
ガイドレール１８を挾持する制動装置として構成しても
よい。

【００２８】

【発明の効果】以上のように、本発明のリニアモータ式
エレベータは、ロープの両端に吊下されて、昇降路内で
ガイドレールに案内されながら昇降可能なエレベータか
ご及び釣合おもりと、前記エレベータかご及び釣合おも
りに設けられた１次巻線と、前記１次巻線の下側に設け
られた制動装置と、前記昇降路内で前記１次巻線と対応
してエレベータかご及び釣合おもりに推力を付与すると
ともに、エレベータかご及び釣合おもりが最下位置にあ
るときに、下端が前記制動装置より上方に位置する２次
導体とを具備するため、制動装置の整備に際して釣合お
もりを最下位置まで下降させると、制動装置は２次導体
の下端より下方に位置し、作業者は２次導体に妨げられ
ることなく、制動装置の各個所を容易に整備可能とな
り、エレベータの整備性を大幅に向上させることができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は本発明の一実施例のリニアモータ式エレ
ベータにおける釣合おもりが最下位置のときを示す断面
図である。

【図２】図２は従来のリニアモータ式エレベータを示す
全体構成図である。

【図３】図３は従来のリニアモータ式エレベータを示す
平面図である。

【図４】図４は従来のリニアモータ式エレベータの釣合
おもりが最下位置のときを示す図２のＡ−Ａ線断面図で
ある。

【図５】図５は従来のリニアモータ式エレベータの制動
装置を示す図４のＢ−Ｂ線断面図である。

【図６】図６は本発明の一実施例のリニアモータ式エレ
ベータにおける制動装置を示す図１のＣ−Ｃ線断面図で
ある。

【符号の説明】

１ ２次導体 １ａ 下端 １１ ロープ １３ 滑車 １４ エレベータかご １５ 釣合おもり １６ 昇降路 １８ ガイドレール ２０ １次巻線 ２１ 制動装置

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 昇降路内で上下方向に配設されたガイド
   レールと、滑車に掛け渡されたロープの両端に吊下され
   て、前記ガイドレールに案内されながら相互に逆方向に
   昇降可能なエレベータかごと釣合おもりと、前記エレベ
   ータかごと前記釣合おもりの何れか一方に設けられたリ
   ニアモータの１次巻線と、前記１次巻線の下側に設けら
   れ、前記ガイドレールと係合してエレベータかご及び釣
   合おもりを制動する制動装置と、前記昇降路内で前記ガ
   イドレールで支持されて、前記リニアモータの１次巻線
   と対応して推力を付与するとともに、前記制動装置が最
   下位置にあるときに、下端が前記制動装置より上方に位
   置するリニアモータの２次導体とを具備することを特徴
   とするリニアモータ式エレベータ。