JP3098673B2 - エレベータのブレーキ解放装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、エレベータのブレーキ
解放装置に関し、特に、エレベータかごと釣合い重りと
を連結ロープを介して連結し、前記連結ロープを滑車に
巻き掛けて前記エレベータかごおよび釣合い重りを昇降
路内で昇降可能に吊下げ支持し、非常時に前記エレベー
タかごを現状の位置に保持すべく、前記エレベータかご
の昇降に連動する前記釣合い重りの昇降を制動するブレ
ーキ装置を前記釣合い重りに付したエレベータにおい
て、ブレーキ装置を解放してエレベータかごの昇降を可
能にするためのブレーキ解放装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】ブレーキ解放装置を備えたエレベータ
は、例えば、特開平５ー１４７８５５号公報に開示され
る。

【０００３】このエレベータは、図９に示すように、エ
レベータかご１０１と、このエレベータかご１０１に連
結ロープ１０２を介して連結される釣合い重り１０３と
を備える。エレベータかご１０１および釣合い重り１０
３は、互いにバランスをとりつつ昇降路１０４内を連動
して昇降する。釣合い重り１０３には、釣合い重り１０
３の昇降を制動するブレーキ装置１０５が付されてい
て、停電等の非常時に釣合い重り１０３の昇降を制動す
ることによりエレベータかご１０１を現状の位置に保持
する。

【０００４】ブレーキ装置１０５には、その制動を解放
可能なブレーキ解放装置１０６が設置されている。ブレ
ーキ解放装置１０６は、ブレーキ装置１０５を非制動状
態に切り替える作動位置へ揺動可能な切替レバー１０７
と、昇降路１０４の床面および天井面に取り付けられた
一対のプーリ１０８と、これらプーリ１０８間に巻き掛
けられた無端状のブレーキ解放用ロープ１０９と、この
ブレーキ解放用ロープに固定された作動片１１０とを備
える。作業者が、プーリ１０８を回動して作動片１１０
を切替レバー１０７に係合させた後、さらにプーリ１０
８を回動して切替レバー１０７を作動位置へ揺動させる
と、ブレーキ装置１０５の制動が解放される。

【０００５】ブレーキ装置１０５が解放されると、釣合
い重り１０３は自由に昇降可能な状態になる。したがっ
て、釣合い重り１０３に比べてエレベータかご１０１の
重量が大きい場合には、エレベータかご１０１が下降し
ようとする。かかる場合、エレベータかご１０１の下降
に伴う釣合い重り１０３の上昇は、切替レバー１０７お
よび作動片１１０を介してブレーキ解放用ロープ１０９
で規制される。即ち、ブレーキ解放用ロープ１０９をプ
ーリ１０８で操作してエレベータかご１０１を最寄りの
停止位置へ移動させることができる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】上記従来のエレベータ
では、通常作動時の釣合い重り１０３の上昇により不必
要に作動片１１０が切替レバー１０７に係合することを
防止するために、作動片１１０を昇降路１０４の天井面
付近に位置させておく必要がある。このような場合、高
層ビル等でエレベータかごの昇降行程が長くなると、作
動片１１０が切替レバー１０７に係合するまでの移動距
離が長くなる。このため、ブレーキ装置１０５を解放す
るまで時間がかかり、同時に、プーリ１０８を回動させ
る作業者の労力が増加することとなる。

【０００７】また、エレベータかご１０１が釣合い重り
１０３に比べて極端に重い場合、一旦ブレーキ装置１０
５が解放されると、切替レバー１０７を介して作動片１
１０に上昇方向の大きな力が作用する。このような場
合、プーリ１０８の回転を作業者が支えるのは容易でな
い。しかも、たとえ支えられたとしても、プーリ１０８
上をブレーキ解放用ロープ１０９が滑って、エレベータ
かご１０１が意に反して下降する恐れもある。

【０００８】本発明は、上記実情に鑑みなされたもの
で、非常時にエレベータかごの昇降を制動するブレーキ
装置を迅速に解放することができるブレーキ解放装置を
提供することを第１の目的とする。

【０００９】また、本発明は、ブレーキ装置の解放後
に、エレベータかごの重量を確実に支持することができ
るブレーキ解放装置を提供することを第２の目的とす
る。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記第１の目的を達成す
るために、請求項１記載の発明によれば、エレベータか
ごと釣合い重りとを連結ロープを介して連結し、前記連
結ロープを滑車に巻き掛けて前記エレベータかごおよび
釣合い重りを昇降路内で昇降可能に吊下げ支持し、非常
時に前記エレベータかごを現状の位置に保持すべく、前
記エレベータかごの昇降に連動する前記釣合い重りの昇
降を制動するブレーキ装置を前記釣合い重りに付したエ
レベータにおいて、前記ブレーキ装置に設けられて前記
ブレーキ装置を非制動状態に切り替える切替手段と、先
端が前記切替手段に連結されるブレーキ解放用ロープ
と、前記昇降路の床面または天井面に固定されて前記ブ
レーキ解放用ロープを巻取可能な巻取手段とを備え、前
記釣合い重りの昇降時に、前記ブレーキ解放用ロープの
張力を一定に保持すべく前記巻取手段を駆動し、前記釣
合い重りの停止時に、前記巻取手段でブレーキ解放用ロ
ープを巻き取ることにより前記切替手段を介して前記ブ
レーキ装置を非制動状態に切り替えうるブレーキ解放装
置を有するエレベータが提供される。

【００１１】また、上記第２の目的を達成するために、
請求項２記載の発明によれば、上記請求項１記載の発明
の特徴に加えて、前記切替手段により前記ブレーキ装置
を非制動状態に切り替えたとき、前記ブレーキ解放用ロ
ープは、切替手段、ブレーキ装置、釣合い重りおよび連
結ロープを介してエレベータかごの重量を支持する、エ
レベータのブレーキ解放装置が提供される。

【００１２】さらに、請求項３記載の発明によれば、上
記請求項１および２記載の発明の特徴に加えて、前記巻
取手段には、通常のエネルギ源とは独立した非常用エネ
ルギ源を有する駆動手段が接続され、この駆動手段によ
り巻取手段を駆動してエレベータかごを昇降させる、エ
レベータのブレーキ解放装置が提供される。

【００１３】さらにまた、請求項４記載の発明によれ
ば、上記請求項１ないし３記載の発明の特徴に加えて、
前記駆動手段は、通常、前記釣合い重りの昇降時に、前
記ブレーキ解放用ロープの張力を一定に調節すべくエレ
ベータかごの昇降と前記巻取手段の巻取とを連動させ
る、エレベータのブレーキ解放装置が提供される。

【００１４】さらにまた、請求項５記載の発明によれ
ば、上記請求項１ないし４記載の発明の特徴に加えて、
前記巻取手段には、前記ブレーキ解放用ロープの張力の
変動を吸収可能な緩衝手段を備える、エレベータのブレ
ーキ解放装置が提供される。

【００１５】さらにまた、請求項６記載の発明によれ
ば、上記請求項１記載の発明の特徴に加えて、前記切替
手段は、先端に前記ブレーキ解放用ロープが連結される
とともに前記釣合い重りに揺動可能に支持されるレバー
を備え、このレバーは、前記ブレーキ解放用ロープを前
記巻取手段で巻き取ることにより前記ブレーキ装置を非
制動状態にもたらす作動位置へ揺動し、この作動位置に
あるレバーおよびブレーキ解放用ロープの協働により、
重量の不釣合に基づくエレベータかごの降下に連動する
釣合い重りの上昇を規制する、エレベータのブレーキ解
放装置が提供される。

【００１６】さらにまた、請求項７記載の発明によれ
ば、上記請求項１記載の発明の特徴に加えて、前記釣合
い重りの昇降時に前記切替手段の切替えを防止する誤作
動防止手段を備えた、エレベータのブレーキ解放装置が
提供される。

【００１７】さらにまた、請求項８記載の発明によれ
ば、上記請求項１および６記載の発明の特徴に加えて、
前記誤作動防止手段は、前記ブレーキ解放用ロープを挟
持してブレーキ解放用ロープの釣合い重りに対する進退
移動を規制するクランプを有する、エレベータのブレー
キ解放装置が提供される。

【００１８】

【実施例】以下、図面を参照して本発明の一実施例につ
いて説明する。

【００１９】図１に示すように、リニアモータ駆動式エ
レベータ１は、ガイドレール２に案内されつつ昇降路３
内を昇降するエレベータかご４と、一端をエレベータか
ご４に連結させると共に、昇降路３天井面に設置された
一対の滑車としての返し車５に巻き掛けられた連結ロー
プ６と、この連結ロープ６の他端に連結されてエレベー
タかご４の昇降に連動して昇降路３内をカウンタレール
７に沿って昇降する釣合い重り８とを有する。カウンタ
レール７には、リニアモータの２次側導体９が挟持され
ており（図３参照）、この２次側導体９に相対向するよ
うに、リニアモータの一次側（図示せず）が釣合い重り
８に設置される。

【００２０】図２および図３を併せて参照し、釣合い重
り８には、釣合い重り８の昇降を制動可能なブレーキ装
置１０が付される。このブレーキ装置１０は、釣合い重
り８の下部に固着されたハウジング１１と、互いに対向
すべくこのハウジング１１に支持され、ピン１２回りで
回転可能な一対の揺動腕１３と、揺動腕１３の先端に固
定されてカウンタレール７を挟んで相対向する一対のブ
レーキライニング１４と、ブレーキライニング１４を互
いに接近させるために揺動腕１３の後端同士を互いに離
反する方向へ付勢する押圧ばね１５と、トグルリンク１
６を介して揺動腕１３の後端に接続されてブレーキライ
ニング１４が互いに離れる方向に駆動力を発生するソレ
ノイド１７とを有する。ソレノイド１７の通電が解かれ
ると、押圧ばね１５が付勢力を発揮してブレーキライニ
ング１４が互いに接近し、カウンタレール７を挟持する
ことにより制動力を発生する。ソレノイド１７が通電さ
れると、ソレノイド１７の駆動軸１８が吸引され、トグ
ルリンク１６にブレーキライニング１４を互いに離反さ
せるための駆動力が伝わる。これにより、ブレーキライ
ニング１４は、押圧ばね１５の付勢力に反してカウンタ
レール７から離れ、制動力は解放される。

【００２１】ブレーキ装置１０には、ソレノイド１７の
非通電時においてもブレーキ装置１０を非制動状態に切
り替え得るブレーキ解放装置２０が付される。このブレ
ーキ解放装置２０は、ブレーキ装置１０を非制動状態に
切り替える切替手段としての切替レバー２１と、先端が
切替レバー２１に連結されて下方に延びるブレーキ解放
用ロープ２２と、昇降路３の床面３ａに固定されてブレ
ーキ解放用ロープ２２を巻取可能な巻取手段としてのウ
インチ２３と、釣合い重り８の昇降時に切替レバー２１
の誤作動を防止する誤作動防止手段２４とを備える。

【００２２】切替レバー２１は、ほぼＵ字型に形成さ
れ、その中間部がピン２５を介してハウジング１１に支
持される。切替レバー２１の一端には、ソレノイド１７
の駆動軸１８に連動して軸方向に進退可能な伝達軸２６
が連結され、他端には、ブレーキ解放用ロープ２２の先
端が連結される。ブレーキ解放用ロープ２２がハウジン
グ１１に対して後退する、即ち下方へ移動すると、切替
レバー２１が作動位置へ揺動し、伝達軸２６を介してソ
レノイド１７の駆動軸１８が機械的に吸引される。この
駆動軸１８の吸引によりブレーキ装置１０の制動力が解
放される。なお、切替レバー２１の作動位置は、切替レ
バー２１の前記他端とハウジング１１との当接により規
制される。

【００２３】ブレーキ解放用ロープ２２は、その巻き取
られる側が固定されているときに、切替レバー２１、釣
合い重り８および連結ロープ６を介してエレベータかご
４の重量を支持することが可能な強度を有する。即ち、
ブレーキ解放用ロープ２２は、ブレーキ装置１０が非制
動状態にあるときに、エレベータかご４および釣合い重
り８間の重量の不釣合に基づくエレベータかご４の降下
に連動する釣合い重り８の上昇を規制することができ
る。

【００２４】図４および図５を参照して、ウインチ２３
は、ブレーキ解放用ロープ２２を外周に保持する回動可
能な巻取ドラム２７と、巻取ドラム２７の回動軸を支持
する支持部材２８と、昇降路３の床面３ａに設置されて
支持部材２８の上下方向の移動を案内するガイド２９
と、支持部材２８および床面３ａ間に設けられて支持部
材２８の上下移動を緩衝しつつこれを支持する緩衝ばね
３０とを有する。緩衝ばね３０は、ブレーキ解放用ロー
プ２２の張力の変動、ブレーキ解放用ロープ２２からウ
インチ２３に加わる急激な衝撃を吸収可能な緩衝手段と
して作用する。

【００２５】ウインチ２３には、巻取ドラム２７を駆動
する駆動手段としてのモータ３１と、このモータ３１の
回転速度を制御する制御装置３２が付されている。モー
タ３１には、エレベータかご４を駆動するためのリニア
モータの電力供給源でもある公共の電力供給源３３と、
この通常のエネルギ源からは独立した、バッテリや自家
発電等、非常用エネルギ源としての非常電源３４とが接
続される。したがって、停電により公共の電力供給源３
３からの電力が供給不能となった場合でも、非常電源２
３を使用してブレーキ解放用ロープ２２を巻き取り、エ
レベータかご４を昇降させることができる。制御装置３
２にはエレベータかご４の昇降に関する情報が入力さ
れ、制御装置３２は、モータ３１の回転速度を制御する
ことによりブレーキ解放用ロープ２２の巻取具合を制御
する。モータ３１の回転速度は、釣合い重り８が昇降す
る際にブレーキ解放用ロープ２２の張力が一定に保たれ
るように調節される。

【００２６】誤作動防止手段２４は、ブレーキ解放用ロ
ープ２２の先端付近に固定されたソケット３５と、この
ソケット３５を挟持してブレーキ解放用ロープ２２の進
退移動すなわち上下移動を規制するクランプ３６と、こ
のクランプ３６の挟持および解放を制御するためにハウ
ジング１１に固定される電磁式の励磁装置３７とを備え
る。

【００２７】クランプ３６は、図６ないし図８から明ら
かなように、ハウジング１１に固定されたピン３８回り
で回転可能に支持される一対の作動腕３９と、各作動腕
３９の先端に固定されて互いに協働してソケット３５を
挟持可能な一対のパッド４０と、両作動腕３９間に設け
られて、パッド４０が互いに離反する方向に作動腕３９
を付勢する解放ばね４１とを有する。作動腕３９の後端
には、励磁装置３７の励磁時に確実に励磁装置３７に密
着するように平板部３９ａが設けられる。各パッド４０
には、クランプ３６の挟持状態でパッド４０がソケット
３５の外周に密着するように半円筒状の凹部４０ａが設
けられる。

【００２８】励磁装置３７は、ハウジング１１の下面
に、両作動腕３９の後端の平板部３９ａを挟むように相
対向して一対設けられる。励磁装置３７は、釣合い重り
８の通常の昇降時に励磁され、両作動腕３９の平板部３
９ａを吸着する。これにより、作動腕３９の後端が互い
に離反する方向に開き、これとは反対に、作動腕３９の
先端が互いに接近する。ブレーキ解放用ロープ２２のソ
ケット３５がパッド４０により挟持され、ブレーキ解放
用ロープ２２の進退移動が規制される。一方、励磁装置
３７は、停電等の非常時にブレーキ装置１０の作動に連
動して消磁される。励磁装置３７が消磁されると、解放
ばね４１の付勢力により作動腕３９の先端が互いに離反
する方向に開き、ソケット３５を解放する。ソケット３
５が解放されると、ブレーキ解放用ロープ２２の進退移
動が可能となる。

【００２９】なお、ソケット３５の上下端には、クラン
プ３６の挟持状態でソケット３５が擦り抜けないように
それぞれフランジ３５ａ（図２参照）が設けられる。

【００３０】次にこのエレベータ１の動作について説明
する。

【００３１】正常時、エレベータ１の動力電源を投入す
ると、誤作動防止手段２４の励磁装置３７が励磁され、
クランプ３６がソケット３５を挟持する。これにより、
ブレーキ解放用ロープ２２のハウジング１１すなわち釣
り合い重り８に対する進退移動が規制され、正常時に誤
ってブレーキ解放装置２０が作動状態に維持されること
が阻止される。

【００３２】エレベータ１が起動すると、エレベータ１
の作動制御部からの信号に応じてリニアモータが制御さ
れ、エレベータかご４が昇降する。このとき、エレベー
タ１の作動制御部からはエレベータかご４の昇降に関す
る信号がウインチ２３の制御装置３２に入力される。エ
レベータかご４の昇降に連動して釣合い重り８が昇降す
るが、制御装置３２は、エレベータかご４の昇降に応じ
てモータ３１の回転速度を制御するので、ウインチ２３
に巻き取られるブレーキ解放用ロープ２２の張力は常に
一定に保たれる。

【００３３】エレベータ１に停電や故障といった非常事
態が発生すると、まず、ブレーキ装置１０が作動する。
すなわち、ソレノイド１７の通電が解かれ、押圧ばね１
５が付勢力を発揮し、ブレーキライニング１４がカウン
タレール７を挟持する。これにより釣合い重り８の昇降
が制動され、この昇降に連動するエレベータかご４の昇
降も制動される。エレベータかご４の急激な落下は阻止
される。これと同時に、誤作動防止手段２４の励磁装置
３７への電力が不通となり、解放ばね４１の付勢力によ
りクランプ３６がソケット３５を解放し、ブレーキ解放
用ロープ２２の進退移動が可能な状態になる（図７参
照）。

【００３４】ブレーキ装置１０の制動後、エレベータか
ご４を最寄りの停止階に移動させる場合には、まず、ブ
レーキ解放装置２０を作動させてブレーキ装置１０の制
動を解放する。すなわち、ブレーキ解放用ロープ２２を
ウインチ２３で巻き取り、ブレーキ解放用ロープ２２を
後退させ、切替レバー２１を作動位置へ揺動させる。切
替レバー２２は伝達軸２６を介してソレノイド１７の駆
動軸１８を吸引する。この吸引により、トグルリンク１
６にブレーキライニング１４を互いに離反させるための
駆動力が伝わる。ブレーキライニング１４は、押圧ばね
１５の付勢力に反してカウンタレール７から離れ、制動
力は解放される。

【００３５】ブレーキ解放装置２０を作動させる際に
は、ブレーキ解放用ロープ２２が常に一定の張力を保持
しているため、ウインチ２３の巻取動作が即座に切替レ
バー２１の揺動動作に変換される。したがって、ブレー
キ装置１０を迅速に解放することが可能となり、エレベ
ータかご４に閉じ込められた乗員の救済を即座に行うこ
とができる。また、たとえウインチ２３の巻取を人力で
行う場合であっても、切替レバー２１を揺動させるに足
る長さだけブレーキ解放用ロープ２２を巻き取れば良
く、作業者の労力が軽減される。なお、この巻取操作
は、人力で行うことができるのはもちろんのこと、非常
電源３４を利用してモータ３１により行うこともでき
る。

【００３６】ブレーキ装置１０が解放されると、エレベ
ータかご４の自由な昇降が可能となる。したがって、エ
レベータかご４および釣合い重り８間の重量の不釣合に
基づいてエレベータかご４が降下することが考えられ
る。この場合、ウインチ２３の回転を拘束しておけば、
ブレーキ解放用ロープ２２を介して釣合い重り８の上昇
を規制することができるので、エレベータかご４が意に
反して下降する恐れはない。また、エレベータかご４の
重量は、作動位置にある切替レバー２１、釣合い重り８
および連結ロープ６を介してブレーキ解放用ロープ２２
で支持されるので、ウインチ２３でのブレーキ解放用ロ
ープ２２の巻取を操作すれば、容易にエレベータかご４
を最寄りの停止階に移動させることができる。

【００３７】また、非常電源３４によって作動するモー
タ３１をエレベータかご４の移動に利用すれば、一層容
易にエレベータかご４を最寄りの停止階に移動させるこ
とができる。

【００３８】また、ウインチ２３には緩衝ばね３０が接
続されているので、ブレーキ解放用ロープ２２の張力の
変動、ブレーキ解放用ロープ２２からウインチ２３に加
わる急激な衝撃によってもウインチ２３急激な負荷が作
用するのを阻止することができる。

【００３９】

【発明の効果】上記のように請求項１記載の発明によれ
ば、切替手段を通じてブレーキ装置を非制動状態に切り
替える際に、常に一定の張力を維持するブレーキ解放用
ロープを巻き取るので、ロープの巻取動作が即座に切替
手段に伝達され、ブレーキ装置を迅速に解放することが
できる。したがって、非常時にエレベータかごに閉じ込
められた乗員の救済を迅速に行うことができる。また、
ブレーキ解放用ロープの巻取操作を人力で行う場合で
も、ブレーキ解放用ロープの巻取が即座に切替手段に伝
わるため、ロープの巻取量が少なくて済み、作業者の労
量が軽減される。

【００４０】また、請求項２記載の発明によれば、ブレ
ーキ装置が解放されて、エレベータかごの自由な昇降が
可能となってもエレベータかごの重量がブレーキ解放用
ロープで支持されるので、エレベータかごおよび釣合い
重り間の重量の不釣合に基づいてエレベータかごが意に
反して降下することを阻止することができる。

【００４１】さらに、請求項３記載の発明によれば、非
常時に、非常用エネルギ源を使用して駆動手段により巻
取手段を駆動して、エレベータかごを最寄りの停止階ま
で容易に昇降させることができる。

【００４２】さらにまた、請求項４記載の発明によれ
ば、エレベータかごの昇降に応じて巻取手段のブレーキ
解放用ロープの巻取具合を調節することにより、容易に
ブレーキ解放用ロープの張力を一定に保持することがで
きる。

【００４３】さらにまた、請求項５記載の発明によれ
ば、ブレーキ解放用ロープの張力の変動を緩衝手段が吸
収するので、巻取手段に急激な負荷が作用することがな
く、巻取手段の耐久性を向上させることができる。

【００４４】さらにまた、請求項６記載の発明によれ
ば、ブレーキ装置が解放されて、エレベータかごの自由
な昇降が可能となっても、作動位置にあるレバーおよび
ブレーキ解放用ロープの協働により、釣合い重りの上昇
を規制するので、エレベータかごおよび釣合い重り間の
重量の不釣合に基づいてエレベータかごが意に反して降
下することを阻止することができる。

【００４５】さらにまた、請求項７記載の発明によれ
ば、誤作動防止手段が切替手段の切替えを防止するの
で、正常時に誤ってブレーキ解放装置が作動状態に維持
されることが防止される。

【００４６】さらにまた、請求項８記載の発明によれ
ば、切替手段の誤作動を簡単な構成で防止することがで
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係るエレベータの全体構成
図である。

【図２】図１の２矢視方向から見たブレーキ装置の側面
図である。

【図３】図２の３矢視方向から見たブレーキ装置の平面
図である。

【図４】ウインチの側面図である。

【図５】図４の５矢視方向から見たウインチの平面図で
ある。

【図６】挟持状態にあるクランプの平面図である。

【図７】解放状態にあるクランプの平面図である。

【図８】クランプの斜視図である。

【図９】従来のブレーキ解放装置を備えたエレベータの
全体構成図である。

【符号の説明】

１ エレベータ ３ 昇降路 ３ａ 床面 ４ エレベータかご ５ 滑車としての返し車 ６ 連結ロープ ８ 釣合い重り １０ ブレーキ装置 ２０ ブレーキ解放装置 ２１ 切替手段としての切替レバー ２２ ブレーキ解放用ロープ ２３ 巻取手段としてのウインチ ２４ 誤作動防止手段 ３０ 緩衝手段としての緩衝ばね ３３ 通常のエネルギ源としての公共の電力供給源 ３４ 非常用エネルギ源としての非常電源 ３６ クランプ

Claims (8)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 エレベータかごと釣合い重りとを連結ロ
   ープを介して連結し、前記連結ロープを滑車に巻き掛け
   て前記エレベータかごおよび釣合い重りを昇降路内で昇
   降可能に吊下げ支持し、非常時に前記エレベータかごを
   現状の位置に保持すべく、前記エレベータかごの昇降に
   連動する前記釣合い重りの昇降を制動するブレーキ装置
   を前記釣合い重りに付したエレベータにおいて、 前記ブレーキ装置に設けられて前記ブレーキ装置を非制
   動状態に切り替える切替手段と、先端が前記切替手段に
   連結されるブレーキ解放用ロープと、前記昇降路の床面
   または天井面に固定されて前記ブレーキ解放用ロープを
   巻取可能な巻取手段とを備え、前記釣合い重りの昇降時
   に、前記ブレーキ解放用ロープの張力を一定に保持すべ
   く前記巻取手段を駆動し、前記釣合い重りの停止時に、
   前記巻取手段でブレーキ解放用ロープを巻き取ることに
   より前記切替手段を介して前記ブレーキ装置を非制動状
   態に切り替えうるブレーキ解放装置を有することを特徴
   とするエレベータ。
2. 【請求項２】 前記切替手段により前記ブレーキ装置を
   非制動状態に切り替えたとき、前記ブレーキ解放用ロー
   プは、切替手段、ブレーキ装置、釣合い重りおよび連結
   ロープを介してエレベータかごの重量を支持することを
   特徴とする請求項１記載のエレベータのブレーキ解放装
   置。
3. 【請求項３】 前記巻取手段には、通常のエネルギ源と
   は独立した非常用エネルギ源を有する駆動手段が接続さ
   れ、この駆動手段により巻取手段を駆動してエレベータ
   かごを昇降させることを特徴とする請求項２記載のエレ
   ベータのブレーキ解放装置。
4. 【請求項４】 前記駆動手段は、通常、前記釣合い重り
   の昇降時に、前記ブレーキ解放用ロープの張力を一定に
   調節すべくエレベータかごの昇降と前記巻取手段の巻取
   とを連動させることを特徴とする請求項３記載のエレベ
   ータのブレーキ解放装置。
5. 【請求項５】 前記巻取手段は、前記ブレーキ解放用ロ
   ープの張力の変動を吸収可能な緩衝手段を備えることを
   特徴とする請求項２、３または４記載のエレベータのブ
   レーキ解放装置。
6. 【請求項６】 前記切替手段は、先端に前記ブレーキ解
   放用ロープが連結されるとともに前記釣合い重りに揺動
   可能に支持されるレバーを備え、このレバーは、前記ブ
   レーキ解放用ロープを前記巻取手段で巻き取ることによ
   り前記ブレーキ装置を非制動状態にもたらす作動位置へ
   揺動し、この作動位置にあるレバーおよびブレーキ解放
   用ロープの協働により、重量の不釣合に基づくエレベー
   タかごの降下に連動する釣合い重りの上昇を規制するこ
   とを特徴とする請求項１記載のエレベータのブレーキ解
   放装置。
7. 【請求項７】 前記釣合い重りの昇降時に前記切替手段
   の切替えを防止する誤作動防止手段を備えた請求項１記
   載のエレベータのブレーキ解放装置。
8. 【請求項８】 前記誤作動防止手段は、前記ブレーキ解
   放用ロープを挟持してブレーキ解放用ロープの釣合い重
   りに対する進退移動を規制するクランプを有することを
   特徴とする請求項６記載のエレベータのブレーキ解放装
   置。