JP2579707B2 - メカニカルデスケーリング性に優れた被覆アーク溶接棒心線用線材の製造法 - Google Patents

メカニカルデスケーリング性に優れた被覆アーク溶接棒心線用線材の製造法

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JP2579707B2
JP2579707B2 JP3310325A JP31032591A JP2579707B2 JP 2579707 B2 JP2579707 B2 JP 2579707B2 JP 3310325 A JP3310325 A JP 3310325A JP 31032591 A JP31032591 A JP 31032591A JP 2579707 B2 JP2579707 B2 JP 2579707B2
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吉雄 佐藤
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はメカニカルデスケーリン
グ性に優れた被覆アーク溶接棒心線用線材の製造法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】被覆アーク溶接棒心線用線材はJISG
3503で規定された化学成分の鋼線材であり、線材熱
間圧延後空冷又は衝風冷却をして線材とし、その後酸洗
又はメカニカルデスケーリングし鋼表面に付着したスケ
ール除去を行い、更に伸線矯正して、350mm〜90
0mmに切断加工して製品となる。
【0003】鋼線材のスケール除去は前記の通り、酸洗
法とメカニカルデスケーリング法とがある。酸洗法はス
ケール除去が十分に行えるために広く採用されている
が、酸を用いるために公害等の問題を生じる場合がある
ので、メカニカルデスケーリング法の採用の要請があ
る。
【0004】メカニカルデスケーリングは多ロールで線
材に曲げ加工を加えてスケールを除去する方法で、メカ
ニカルデスケーリング性を支配する因子はスケールの組
成、密度、構造、スケール中の亀裂、スケールの厚さ等
である。
【0005】メカニカルデスケーリング性の良い線材を
製造するには、圧延後高温で線材を捲取りFeO組成の
スケールの生成を促進させ、その後の冷却速度を上げて
Fe34組成のスケールの発生を防止することが必要で
ある。特開昭52−33818ではスケール剥離性の向
上をねらって圧延後のステルモアラインでの冷却を約6
℃/sの速度で行っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし冷速を上げた場
合オーステナイト−フェライト変態速度が上昇し、フェ
ライト粒径の微細化により線材の引張強度が上昇する。
被覆アーク溶接棒心線用線材では、引張強度が上昇する
と被加工材の変形抵抗が著しく増大してダイス寿命を短
命化し、伸線機の稼働率ひいては生産能力が低下するこ
ととなる。
【0007】本発明は、線材圧延後の捲取温度、及び8
50℃〜600℃までの一時冷却速度と600℃〜35
0℃までの2次冷却速度をコントロールすることによっ
てメカニカルデスケーリング性の良いスケールを生成さ
せ、なおかつ引張強度が低い軟鋼線の製造法を提供する
ことを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするとこ
ろは、C:0.15wt%以下、Si:0.03wt%以
下、Mn:0.35〜0.65wt%、P:0.020w
t%以下、S:0.023wt%以下、Cu:0.20w
t%以下を含有し残部がFeおよび不可避的不純物から
なる組成の鋼片を用いて、加熱温度を900℃〜110
0℃の範囲で加熱し、線材の仕上圧延速度を60m/s
以上、仕上温度を950〜1100℃で圧延し、その後
の捲取温度を850〜930℃とし、850〜600℃
までの1次冷却速度を0.5〜2℃/sの範囲、600
℃〜350℃までの2次冷却速度を10〜25℃/sの
範囲で冷却することを特徴とするメカニカルデスケーリ
ング性に優れた被覆アーク溶接棒心線用線材の製造法で
ある。
【0009】
【作用】本発明における被覆アーク溶接棒心線用線材の
限定理由について述べる。つまり線材圧延後の捲取を高
温で行うことにより剥離性の良いFeO組成のスケール
が生成し、また850℃〜600℃までの一時冷却速度
を低く抑えることにより引張強度の低減がはかられ、6
00℃〜350℃までの2次冷却速度を上げることによ
り剥離性の悪いスケールの発生を防ぐことができる。こ
れによりメカニカルデスケーリング性に優れた引張強度
の低い被覆アーク溶接棒心線用線材が得られる。
【0010】Cは鋼の強度と延性を支配する基本的な元
素であり、低炭素化するほど軟質化し延性は向上する。
上限は加工性を劣化させない限界である0.15wt%
とした。
【0011】Siは鋼の強度を上昇させる元素であり、
また加工により延性を低下させる元素である他に、被覆
アーク溶接棒心線用線材のようにSi量が少量添加され
ている場合スケールの生成量とメカニカルデスケーリン
グ性を支配する成分である。Si量が増加するほどスケ
ール生成量は減少しメカニカルデスケーリング性は悪く
なる傾向が見られる。したがってスケール厚さ及び剥離
性を均一状態とすることがメカニカルデスケーリング性
の向上に効果的である。そのため上限は0.03wt%
とした。
【0012】Mnは脱酸剤として0.35wt%以上加
える。また鋼に固溶して強化する元素であり、加工硬化
を低くするためには低い方が望ましい。上限は加工性を
劣化させない限界として0.65wt%とした。
【0013】Cuは溶接性を劣化させる元素であり、低
い方が望ましく上限を0.20wt%とした。
【0014】Pは溶接性を劣化させる元素であり、低い
方が望ましく上限を0.020wt%とした。
【0015】Sは溶接性を劣化させる元素であり、低い
方が望ましく上限を0.023wt%とした。
【0016】線材圧延における加熱温度は鋼片の成分を
均一に固溶させるとともに圧延中の鋼材の温度に影響を
与える。下限はオーステナイト化温度以上で鋼片の成分
を均一に固溶させ、かつ圧延中の鋼材温度をA1変態点
以上に確保するために下限は900℃とした。上限は脱
炭層の量を低く抑えるために1100℃とした。
【0017】線材圧延の仕上温度は組織のオーステナイ
ト結晶粒度に大きな影響を与える。線材の仕上圧延工程
においては、加工発熱により鋼材温度が上昇する。粗粒
のオーステナイト結晶粒を得るために下限は950℃と
した。また上限は線材圧延設備の制限により1100℃
とした。
【0018】線材圧延における捲取温度は生成するスケ
ール組成を決める重要な因子である。このことを本発明
者等は実験的に求めた。その内容は図1および図2に示
すように、捲取温度が上昇するにしたがい、スケール生
成量が増加し、メカニカルデスケーリング性が向上して
いることがわかる。剥離性の良いスケールを生成させる
ため捲取温度の下限は850℃とした。上限は冷却設備
の制約から930℃とした。
【0019】線材圧延における850℃〜600℃まで
の一時冷却速度はオーステナイト−フェライト変態時の
フェライト粒径を決めるもので、低く抑えることにより
粒径を粗大にし線材の引張強度を低減させることができ
る。上限は加工性を得るフェライト粒組織を得るために
2℃/sとし、下限は圧延設備の制約から0.5℃/s
とした。
【0020】また600℃〜350℃までの2次冷却速
度はFeO→Fe+Fe34反応の速度を決定するもの
で、下限はFe34組成のメカニカルデスケーリング性
が悪いスケールの生成を防ぐことができる限界として1
0℃/s、上限は冷却設備の制約から25℃/sとし
た。
【0021】
【実施例】低炭素鋼を250トン転炉で溶製し、脱ガス
処理設備を用いて脱炭ならびに成分調整を行い、連続鋳
造設備により300×500mm鋳片とし、さらに12
2mm角断面の鋼片を製造した。
【0022】表1に供試鋼の化学成分を示す。表1のA
〜Dは本発明鋼の例、E〜Jは比較鋼の例である。E鋼
はC量が上限以上、F鋼はMn量が上限以上、G鋼はS
i量が上限以上である。
【0023】これらの鋳片を分塊圧延でビレットに製造
後、鋼片を表2に示す線材圧延条件で直径5.5mmの
線材に圧延し、ステルモア冷却を行った。引張試験はJ
ISZ2201の2号試験片を用い、JISZ2241
記載の方法で行った。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】メカニカルデスケーリング性の評価はリバ
ースベンディング法でスケールを除去した後、試料重量
に対するスケール量の百分率で表示した。このようにし
て得られた特性値を表2に合わせて示す。
【0027】No.5〜No.15は比較鋼である。No.5
は加熱温度が低すぎたため仕上圧延温度が低下しフェラ
イト結晶粒が微細となり引張強度が上昇した。No.6は
仕上圧延温度が低すぎたためにフェライト結晶粒が微細
となり引張強度が上昇した。No.7は捲取温度が低すぎ
たためにスケール剥離が悪化しメカニカルデスケーリン
グ性が低下した。No.8は1次冷却速度が速すぎたため
にフェライト結晶粒が微細化し引張強度が上昇した。N
o.9は2次冷却速度が遅すぎたために剥離性の悪いFe
34が発生しメカニカルデスケーリング性が劣化した。
No.10はC量が高すぎたため引張強度が上昇した。N
o.11はMn量が高すぎたため引張強度が増加した。N
o.12はSi量が高すぎたためスケール生成量が減少し
メカニカルデスケーリング性の劣化が生じた。
【0028】
【発明の効果】以上述べた如く本発明法にしたがって製
造された線材は、従来法にくらべてより一段とメカニカ
ルデスケーリング性が改善されており、これにより伸線
前処理に行うスケール除去を容易化することができ、安
価な被覆アーク溶接棒心線用線材の製造を可能にするも
のである。
【図面の簡単な説明】
【図1】は線材圧延後の捲取温度とスケール生成量の関
係を示す図、
【図2】は線材圧延後の捲取温度とメカニカルデスケー
リング後の残留スケール量の関係を示す図、である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 荒木 正樹 千葉県君津市君津1番地 新日本製鐵株 式会社君津製鐵所内 (56)参考文献 特開 昭60−177129(JP,A) 特開 昭52−10829(JP,A) 特開 平5−117763(JP,A) 特開 平4−293721(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C :0.15wt%以下、 Si:0.03wt%以下、 Mn:0.35〜0.65wt%、 P :0.020wt%以下、 S :0.023wt%以下、 Cu:0.20wt%以下 を含有し残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成
    の鋼片を用いて、加熱温度を900℃〜1100℃の範
    囲で加熱し、線材の仕上圧延速度を60m/s以上、仕
    上温度を950℃〜1100℃で圧延し、その後の捲取
    温度を850〜930℃とし、850℃〜600℃まで
    の1次冷却速度を0.5〜2℃/sの範囲、600℃〜
    350℃までの2次冷却速度を10〜25℃/sの範囲
    で冷却することを特徴とするメカニカルデスケーリング
    性に優れた被覆アーク溶接棒心線用線材の製造法。
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