JP2574206Y2

JP2574206Y2 - ピストン装置

Info

Publication number: JP2574206Y2
Application number: JP1991079230U
Authority: JP
Inventors: 晋一中西
Original assignee: Isuzu Motors Ltd
Current assignee: Isuzu Motors Ltd
Priority date: 1991-09-30
Filing date: 1991-09-30
Publication date: 1998-06-11
Anticipated expiration: 2006-09-30
Also published as: JPH0530623U

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は内燃機関のピストン装置
に関し、更に詳しくは、合口隙間を有するトップリング
の気密性を向上させたピストン装置に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】レシプロ型内燃機関は、ピストンの上下
動を容易にするために、シリンダとピストンとの間に隙
間を設け、この隙間の気密性を保つために、ピストンに
トップリング（コンプレッションリング）を嵌合してい
る。ところで、このトップリングは、拡縮可能とするた
めに、リングの一部を切り離して、合口隙間を形成して
いる。したがって、この合口隙間から燃焼室内の高圧ガ
スがクランク室側に吹き出し、圧縮率を低下させるとい
う問題がある。

【０００３】前記した合口隙間による圧縮率の低下を防
止する手段として、本考案者は、トップランドの径を第
２ランドの径よりも小さく形成すると共に、このトップ
ランドの下部にトップリングを嵌合するリング溝を形成
し、更にこのリング溝の下方に合口を形成しない第２リ
ングを嵌合する段部を形成し、この段部に嵌合する第２
リングの上面とピストン本体のリング溝の下面によっ
て、前記リング溝に嵌合する断面Ｌ字形のトップリング
を支持するピストン装置を考案して、これを実願平２−
８５８８１号として登録出願した。

【０００４】この出願のピストン装置は、図６に概要を
示すように、トップリング（第１リング）１を、例え
ば、実開昭５１−１３４０７号公報などによって公知の
Ｌ字形の断面形状に形成し、シリンダ２内を摺動するピ
ストン４のリング溝６に嵌合している。そして、合口隙
間を有する通常のトップリング１の下面に当接するよう
に、リング溝６の下方に形成した段部８に合口隙間を持
たない円環からなる第２リング10を嵌合し、この第２リ
ング10の上面を形成するリング受け面12と、ピストン４
のリング溝６の下面を形成するリング受け面14とで、ト
ップリング１の下面16と当接する連続面を形成して、前
記トップリング１の合口隙間を、合口隙間を形成してい
ない第２リング10が閉塞し、気密性を向上させるように
したものである。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】ところで、前記出願の
考案は、内燃機関の始動時など、機関の低温時にも高い
気密性を保持するために、第２リングをピストン本体と
は異なる低熱膨脹率の素材で形成しているのであるが、
このような熱膨脹率の異なる素材からなる第２リングを
使用したエンジンを長期間運転していると、前記ピスト
ン本体のリング受け面と、第２リングのリング受け面と
の間に熱膨脹率の違いによる段差が生じるために、これ
と当接するトップリングの下面に偏摩耗や異常摩耗が発
生したり、スティックが発生したりするという問題が生
じる。その結果、トップリングのガタつきによって第２
リングが捻じれ易くなり、この捻じれた第２リングが段
部に対して斜めになると、この部位にシール不良が発生
して圧縮率を低下させ、機関性能が低下する恐れがあ
り、そのまま放置しておくと第２リングの破損、更には
機関自体の破損に至る恐れがあることが判明した。

【０００６】本考案は、以上の問題点に鑑みて、第２リ
ングでトップリングの合口隙間を閉塞し、トップリング
の下面（ピストンスカート部側）に当接する第２リング
と、第３リング又はリング部材を、ほぼ同じ熱膨張率を
有する、ピストンよりも低熱膨張率の材料で形成して、
機関の低温時における気密性を維持すると共に、この第
２リングと、第３リング又はリング部材の上面（ピスト
ン頂部側の面）をトップリングに当接するように設け
て、第２リングと、第３リング又はリング部材とで形成
される平坦なリング受け面で当接支持することによっ
て、トップリング下面の偏磨耗等とこの偏磨耗等が原因
となる機関の性能の低下を防止することによって、シー
ル性能を維持できて、トップリングの合口隙間からのガ
ス漏れによる圧縮率の低下を防止できるピストン装置を
提供することを目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
の本考案に係るピストン装置は、内燃機関のピストンの
トップランドの径を第２ランドの径よりも小径に形成
し、このトップランドに設けたリング溝内のピストン頂
部側に、合口を有してシリンダに接触するリング片と前
記リング溝に嵌入されるリング溝片とで断面Ｌ字形に形
成されたトップリングを嵌合すると共に、合口を持つ第
３リングと、合口無しで前記トップランドの径よりも大
きな内径の第２リングとを、前記リング溝の奥側とシリ
ンダ側にそれぞれ嵌合して、前記第３リングと前記第２
リングによって前記リング溝片を当接支持し、更に、前
記第３リングと前記第２リングをピストン本体よりも低
熱膨張率の材料で形成した構成である。あるいは、内燃
機関のピストンのトップランドの径を第２ランドの径よ
りも小径に形成し、このトップランドにリング溝を設け
て、このリング溝の少なくとも奥側の部分をリング部材
で形成し、このリング溝内のピストン頂部側に、合口を
有してシリンダに接触するリング片と前記リング溝に挿
入されるリング溝片とで断面Ｌ字形に形成されたトップ
リングを嵌合すると共に、前記リング溝のシリンダ側
に、合口無しで前記トップランドの径よりも大きな内径
の第２リングを嵌合して、前記リング部材と前記第２リ
ングによって前記リング溝片を当接支持し、更に、前記
リング部材と前記第２リングをピストン本体よりも低熱
膨張率の材料で形成した構成である。

【０００８】尚、このリング部材はピストン本体に鋳込
む等の手段によって一体に形成しても良く、或いは別体
の合口を有する第３リングとして形成しても良い。ま
た、前記リング部材と第２リングは、トップリングの下
面に偏摩耗を生じさせないように熱膨脹率のみならず、
硬度が等しいか又は近似した材質で形成するのが好まし
く、更に、エンジンの温度変化によって気密性が低下し
ないように低熱膨脹率の材料で形成するのが好ましい。

【０００９】

【作用】本考案のピストン装置は以上の構成を有してお
り、リング溝内に設けた第３リング又はリング部材と、
第２リングとを、ピストン本体よりも低熱膨張率の材料
で形成すると共に、これらのリング受け面を前記トップ
リングの下面（ピストンスカート部側の面）に当接させ
て支持しているので、これらのリング受け面の高さが同
じになり、これを支持するリング受け面全面の磨耗特性
を均質にすることによって、従来のような機関の運転時
にこのリング受け面に熱膨張率の違いによる段差が生じ
ることを防止できるので、トップリングに偏磨耗やステ
ィックが発生することを未然に防止することができる。

【００１０】それによって、トップリングに形成された
合口隙間を第２リングによって確実に閉塞することがで
きるようになり、燃焼室内の高圧ガスがクランク室側に
吹き出すことによる圧縮率の低下を未然に防止すること
ができる。尚、ピストン本体に第２リングとほぼ同じ熱
膨張率のリング部材を形成する手段としては、ピストン
本体に鋳込むことによって形成することができるが、他
の手段として、合口隙間を設けるか又は分割し、取り付
け時に第２リングの内側に嵌合する第３リングを用る方
法でも良い。

【００１１】

【実施例】以下、添付図面を参照して、本考案の実施例
を具体的に説明する。図１に示す実施例１のピストン装
置は、シリンダに接触するリング片１９と前記リング溝
に嵌入されるリング溝片とからなる縦断面形状がＬ字形
のトップリング１の下面（ピストンスカート部側の面）
１６に当接するリング受け面１４を、ピストン４のリン
グ溝６に嵌合する第３リング１８の上面（ピストン頂部
側の面）に形成すると共に、トップランド２０の径Ｄｐ
を、前記第３リング１８の外径Ｄより僅かに小さく（Ｄ
ｐ＜Ｄ）形成している。また、第３リング１８の外周側
に環状の段部８を形成し、この段部８に第２リング１０
を嵌合している。この段部８は図２に示すリング部材２
２の場合と同様に第３リング１８をシリンダ側に延設
し、このシリンダ側の第３リング１８の一部分に段差を
設けて形成してもよい。

【００１２】尚、図１は機関温度が上昇した状態を示し
ており、各図に示すピストン装置は、低温の時には第２
リング10とシリンダ２との間には僅かな隙間が設けら
れ、機関温度が上昇すると、この隙間が熱膨脹によって
なくなり、トップリング１の合口隙間を第２リング10が
閉塞するように、熱膨張による変形を考慮して設計され
ている。

【００１３】また、第３リング18は合口隙間を設けた通
常の横断面が矩形をしたリング形状のものであって、低
熱膨張率で、且つ弾性を有する素材で形成し、リング溝
６の嵌合部21に設けている。一方、第２リング10は、前
記第３リングと同様に低熱膨張率を有する材料を使用
し、内径Ｄr を第３リング18の外径Ｄと同様の大きさと
し、合口隙間を形成していない円周方向に連続した環状
に形成したものである。

【００１４】この第２リング10は、第３リング18をピス
トン４のリング溝６に嵌合したのち、締まり嵌め、隙間
嵌めなどの手段で嵌合しており、リング溝６の外側に配
されるトップリング１のリング片19はトップランド20と
シリンダ２との間に位置するようにしている。尚、弾性
の乏しい材料で第３リング18を形成する場合には、割り
形にして、取り付け時に組み立て、外側から第２リング
８で締め付けて固定することもできる。

【００１５】一方、図２に示す実施例２のピストン装置
は、実施例１で、第３リング１８を嵌合して設ける替わ
りに、トップランド２０に設けたリング溝６の少なくと
も奥側、即ち、ピストン頂部と反対側で且つピストン中
心側の部分を、リング部材２２で形成する。このリング
部材２２は、第２リング１０と同じ低熱膨張率の材質で
形成し、このリング部材２２はピストン４のリング溝６
に鋳込まれ、ピストン４と一体化されて成形される。こ
のリング部材２２の材質と第２リング１０の材質は、熱
膨張率のみならず、硬度が等しいか又は近似した材質で
形成するのが好ましく、同じ材質で形成するのが好まし
いが、鋳込みと嵌合との差があるので、適当な材質を選
んで使用する。そして、このリング部材２２の形状は、
図３の実施例３のようにリング溝６の内側全体を形成す
るものや、図４の実施例４に示すように、ピストン頂部
にまで達する形状など様々な形状であってもよい。要す
るに、ピストン本体と一体化して、第２リングと共に、
トップリング１の下面に当接して、これを支持できれば
よい。また、第２リング１０は、図２、図３に示すよう
に、リング部材２２に設けた段部８に嵌合するように構
成してもよく、また、図４に示すようにリング部材とピ
ストン本体４とで形成される段部８に嵌合するように構
成してもよい。あるいは、図５に示した第３リングとの
位置関係と同様に、リング部材２２と間隔をおいて設け
てもよい。

【００１６】次に、図５に示す実施例５のピストン装置
は、実施例１の変形例であり、第３リング18を嵌入する
リング状溝からなる嵌合部21をリング溝６内に形成し、
この嵌合部21に、合口隙間を設けた第３リング18を嵌合
し、この第３リング18と第２リング10との間の溝面28
を、トップリング１と直接接触しないようにリング受け
面12，14より下げて形成した外は、実施例１と同様に構
成した。尚、弾性の乏しい材料で第３リング18を形成す
る場合には、割り形にして嵌合部21に取り付けるように
してもよい。

【００１７】上記したように、本考案のピストン装置に
よると、低熱膨張率を有する材料で形成した第２リング
10のリング受け面12と第３リング18のリング受け面14と
で、トップリング１の下面16を支えるようにしたので、
この当接部位の磨耗特性を均質にすることができ、トッ
プリング１の偏磨耗や異常磨耗を防止すると共に、ステ
ィックの発生、或いはシール不良などを防止することが
できる。

【００１８】それによって、トップリングに形成された
合口隙間を第２リングによって閉塞することが確実にで
きるようになり、燃焼室内の高圧ガスがクランク室側に
吹き出すことによる圧縮率の低下を未然に防止すること
ができる。

【００１９】

【考案の効果】本考案のピストン装置は、内燃機関のピ
ストンのトップランドの径を第２ランドの径よりも小径
に形成し、このトップランドに設けたリング溝内のピス
トン頂部側に、合口を有してシリンダに接触するリング
片と前記リング溝に嵌入されるリング溝片とで断面Ｌ字
形に形成されたトップリングを嵌合すると共に、合口無
しで前記トップランドの径よりも大きな内径の第２リン
グとを、前記リング溝のシリンダ側に嵌合して、更に、
前記リング溝の奥側に合口有りの第３リングを嵌合する
か、または、前記リング溝の少なくとも奥側の部分をリ
ング部材で形成して、前記第３リング又はリング部材
と、前記第２リングによって前記リング溝片を当接支持
し、前記第３リング又はリング部材と、前記第２リング
をピストン本体よりも低熱膨張率の材料で形成したの
で、以下の効果を奏することができる。

【００２０】リング溝内に嵌合する第３リング又はリン
グ溝内に設けたリング部材と、第２リングとを、ピスト
ン本体よりも低熱膨張率の材料で形成したので、エンジ
ンの温度変化によって気密性が低下することを防止で
き、また、第３リング又はリング部材と、第２リングと
を組合わせて両方のリング受け面でトップリングの下
面、即ち、ピストンスカート部側の面を当接支持したの
で、トップリングに偏磨耗や異常磨耗が発生することを
未然に防止することができる。

【００２１】また、第３リング又はリング部材と、第２
リングの両方でトップリングを当接支持するので、トッ
プリングの姿勢を安定して支持でき、ガタつきを防止で
きる。そのため、トップリングに当接する第２リングの
捩じれの発生を抑制でき、合口の無い第２リングで確実
にシールすることができるので、ピストンの気密性を向
上させることができ、燃焼室内の高圧ガスがクランク室
側に吹き出して圧縮率が低下することを未然に防止する
ことができ、機関の性能の低下を防止できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の実施例１によるピストン装置の要部縦
断面図である。

【図２】本考案の実施例２によるピストン装置の要部縦
断面図である。

【図３】本考案の実施例３によるピストン装置の要部縦
断面図である。

【図４】本考案の実施例４によるピストン装置の要部縦
断面図である。

【図５】本考案の実施例５によるピストン装置の要部縦
断面図である。

【図６】従来例によるピストン装置の要部縦断面図であ
る。

【符号の説明】

１トップリング２シリンダ４ピストン
６リング溝８段部 10 第２リング 12
リング受け面 14 リング受け面 18第３リング
19 リング片 20 トップランド 21 嵌合部
22 リング部材。

Claims

(57)【実用新案登録請求の範囲】

【請求項１】内燃機関のピストンのトップランドの径
を第２ランドの径よりも小径に形成し、このトップラン
ドに設けたリング溝内のピストン頂部側に、合口を有し
てシリンダに接触するリング片と前記リング溝に嵌入さ
れるリング溝片とで断面Ｌ字形に形成されたトップリン
グを嵌合すると共に、合口を持つ第３リングと、合口無
しで前記トップランドの径よりも大きな内径の第２リン
グとを、前記リング溝の奥側とシリンダ側にそれぞれ嵌
合して、前記第３リングと前記第２リングによって前記
リング溝片を当接支持し、更に、前記第３リングと前記
第２リングをピストン本体よりも低熱膨張率の材料で形
成したピストン装置。
【請求項２】内燃機関のピストンのトップランドの径
を第２ランドの径よりも小径に形成し、このトップラン
ドにリング溝を設けて、このリング溝の少なくとも奥側
の部分をリング部材で形成し、このリング溝内のピスト
ン頂部側に、合口を有してシリンダに接触するリング片
と前記リング溝に挿入されるリング溝片とで断面Ｌ字形
に形成されたトップリングを嵌合すると共に、前記リン
グ溝のシリンダ側に、合口無しで前記トップランドの径
よりも大きな内径の第２リングを嵌合して、前記リング
部材と前記第２リングによって前記リング溝片を当接支
持し、更に、前記リング部材と前記第２リングをピスト
ン本体よりも低熱膨張率の材料で形成したピストン装
置。