JP2566469B2 - ポリプロピレン樹脂組成物 - Google Patents

ポリプロピレン樹脂組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は,線膨張率が低く,かつ機械的性質のバラン
スに優れたポリプロピレン樹脂組成物に関する。
〔従来の技術〕
結晶性ポリプロピレン樹脂は,曲げ強度,曲げ弾性率
等の機械的性質,耐薬品性に優れ,かつ安価な熱可塑性
樹脂であるため,各種の成形品に広く利用されている。
そして,該ポリプロピレン樹脂は,例えば第2図に示
すごとく,自動車,船舶等の外装に用いる,長尺状のサ
イドモール1に成形され,外装部品として使用されてい
る。なお,同図の符号2は貼着用両面粘着テープであ
る。
また,近年においては,上記サイドモール1はますま
す幅広で,長いもの(1〜1.5m)が要求され,大型サイ
ドモールとして使用されている。
〔解決しようとする課題〕
しかしながら,上記サイドモールは温度変化の大きい
屋外で使用されるため,熱による膨張,収縮が大きい。
例えば,10℃付近と40℃付近では,長さ1m当たり,約3mm
の差を生ずる。そのため,上記のごとき大型サイドモー
ルの場合には,一層膨張,収縮の差が大きくなる。かか
る膨張,収縮は,自動車等の外板に装着したサイドモー
ルが,脱落する危険性を生ずる。
また,膨張,収縮が大きいことは,自動車等にサイド
モールを装着する場合,その寸法安定性に欠けることも
意味する。
また,かかるポリプロピレン樹脂における寸法安定性
の欠除は,大型サイドモールのみならず,各種成形品へ
のポリプロピレン樹脂の利用の障害となっている。
そこで,従来,上記寸法安定性を向上させる対策とし
て,例えばタルク,炭酸カルシウム,マイカ等を添加す
ることが行われているが,その効果は充分でない。
また,例えば,特公昭56−15824号公報には,結晶性
ポリプロピレン樹脂に,スチレン−ブタジエンブロック
共重合体と,脂肪酸エステル処理した炭酸カルシウム粒
子を用いた組成物が提案されている。しかし,このもの
も充分に低い線膨張率でなく,また上記共重合体中にブ
タジエン成分による炭素・炭素二重結合(C=C)を有
しているため耐候性に若干劣る。
本発明はかかる従来の問題点に鑑み,線膨張率が低
く,機械的性質のバランス及び耐候性に優れたポリプロ
ピレン樹脂組成物を提供しようとするものである。
〔課題の解決手段〕
本発明は,結晶性ポリプロピレン樹脂31〜75%(重量
比,以下同じ)と,25℃における溶液粘度が1400cps以下
であるスチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合
体20〜40%と,繊維状フィラー1〜10%と,増量材4〜
40%とからなることを特徴とするポリプロピレン樹脂組
成物にある。
上記結晶性ポリプロピレン樹脂としては,いわゆるポ
リプロピレン樹脂と変性ポリプロピレン樹脂とがある。
前者のポリプロピレン樹脂としてはホモポリプロピレン
の他にプロピレン−エチレンランダム共重合体,プロピ
レン−エチレンブロック共重合体及びこれらの混合物が
用いられる。また,後者の変性ポリプロピレン樹脂はポ
リプロピレン樹脂を不飽和カルボン酸またはその誘導体
及び有機過酸化物で変性したものである。
上記結晶性ポリプロピレン樹脂は31〜75%用いる。31
%未満ではポリプロピレン樹脂組成物の剛性が低くな
る。一方,75%を越えると,線膨張率が悪化する(大き
くなる)と共に耐衝撃性が低下する。
また,結晶性ポリプロピレン樹脂は,メルトフローイ
ンデックス(230℃,2.16kg測定)が0.5〜100のものを用
いることが好ましい。0.5未満では成形加工性,及び成
形品の外観が悪く,100を越えると耐衝撃性等の機械的性
質が低下する。
上記スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合
体(以下,S−EB−Sという)は,エチレンとブチレンと
の共重合体に,更にスチレンを反応させた共重合体であ
る。該S−EB−Sは,後述するごとく,ポリプロピレン
樹脂のマトリクス中において繊維状フィラーと相互作用
し,線膨張率を低下させる大きな役目をなす。
また,S−EB−Sは20〜40%を用いる。20%未満では,
線膨張率が悪化すると共に耐衝撃性が低下する。一方,4
0%を越えると剛性が低くなる。
また,該S−EB−Sは,25℃における20重量%のトル
エン溶液の粘度が1400cps(センチポイズ)以下であ
る。1400cpsを越えると,線膨張率が悪化する。
また,繊維状フィラーとしてはチタン酸カリウイス
カ,酸化亜鉛ウイスカ,ワラストナイト,ガラス繊維,
炭素繊維などの繊維状態にあるフィラーを用いる。繊維
状フィラーは,前記S−EB−Sと作用して,線膨張率の
低下に大きく寄与する。上記中,特に,チタン酸カリウ
イスカは,材料物性,寸法安定性の点で優れた繊維状フ
ィラーである。
上記繊維状フィラーは1〜10%用いる。1%未満では
線膨張率の低下に寄与せず,10%を越えると成形性が低
下する。また,該繊維状フィラーは,平均長さ1〜50μ
mのものが好ましい。1μm未満では物性,寸法安定性
が低下し,一方50μmを越えると加工性が低下する。
また,増量材としては,偏平形状であるタルクやマイ
カ,粒状である炭酸カルシウムなど,非繊維状のフィラ
ーを用いる。換言すれば,増量材とは非繊維材フィラー
をいう。この中,特に偏平形状のフィラーは,前記S−
EB−S及び繊維状フィラーと共同作用して,線膨張率の
低下に寄与する。
上記増量材は,4〜40%用いる。4%未満では,剛性が
低下する。一方,40%を越えると耐衝撃性が低下する。
また,本発明においては,前記成分以外に酸化防止
剤,紫外線吸収剤,滑剤,帯電防止剤,核剤,顔料,難
年剤,増量剤,加工助剤等の添加剤を混合してもよい。
また,上記の各成分の混合は,少なくとも結晶性ポリ
プロピレン樹脂が溶融する温度以上において,一軸押出
機,二軸押出機,ニーダー,ブラベンダー,バンバリー
ミキサー等の混練機を用いて,溶融混練する。
また,このように溶融混練した後は,通常はペレット
化する。更に,かかる組成物は,射出成形,押出成形,
ブロー成形等により所望形状に成形する。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は,前記した自動
車や船舶の外装用サイドモールの他,バンバー,ピラー
ガーニッシュその他電気部品,機械部品などに用いる。
そして,特に寸法安定性が要求される成形品に用いる場
合,その特性が発揮される。
〔作用及び効果〕
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は,結晶性ポリプ
ロピレン樹脂,S−EB−S,繊維状フィラー及び増量材を前
記配合割合にて混合してなるので,線膨張率が約4×10
-5cm/cm℃以下と低く,寸法安定性に優れている。
また,曲げ強度,曲げ弾性率も高く,更に耐衝撃性に
おいても優れており,機械的性質のバランスに優れてい
る。また,本発明において用いるS−EB−Sは,前記従
来のごとく,炭素・炭素二重結合を有していないので,
該ポリプロピレン樹脂組成物は耐候性に優れている。
なお,本発明のポリプロピレン樹脂組成物が,前記の
ごとく低い線膨張率を示す理由は,次のようであると推
察される。
即ち,まず従来のごとく結晶性ポリプロピレン樹脂に
タルク等の前記増量材を添加した場合には,該増量材が
その長手方向における膨張,収縮を若干規制する。しか
し,該増量材は前記のごとく偏平形状,粒状であるため
ポリプロピレン樹脂組成物の線膨張率を若干低下させる
程度である。
これに対して,繊維状フィラーを配合した場合には,
このものは細長い繊維であるために第2A図に示すごと
く,結晶性ポリプロピレン樹脂のマトリクス3中に,該
繊維状フィラー4が無方向に,しかも均一に分散する。
そして,該繊維状フィラー4の間に上記増量材5が分散
している状態となる。そのため,線膨張率が一層低下す
る。
そして,ここに注目すべきことは,第2B図に示すごと
く,上記結晶性ポリプロピレン樹脂のマトリクス3,繊維
状フィラー4,増量材5に加えて,S−EB−S6を配合したこ
とにある。該S−EB−S6は結晶性ポリプロピレン樹脂の
マトリクス3中において,前記繊維状フィラー4,増量材
5と共に分散する。そして,該S−EB−S6は,結晶性ポ
リプロピレン樹脂に対して,異種ポリマーの関係にあ
る。そのため,該S−EB−S6は偏平分散化(モルフォロ
ジー効果)を呈し,ポリプロピレン樹脂組成物の低線膨
張率化に大きく寄与する。
それ故,本発明にかかるポリプロピレン樹脂組成物
は,低い線膨張率を発揮すると考えられる。
以上のごとく,本発明によれば,線膨張率が低く,機
械的性質のバランス及び耐候性に優れたポリプロピレン
樹脂組成物を提供することができる。
〔実施例〕
以下,本発明にかかる実施例を比較例と共に説明す
る。
〔試料作製,測定方法〕
実施例,比較例ともに,表に示した結晶性ポリプロピ
レン樹脂(PP)及びS−EB−Sの両成分をタンブラー式
ブレンダーで5分間混合し,溶融混練してこれらの混合
物をペレット化した。
次に上記ペレットを長さL/直径D=27,30ミリ異方向
回転2軸押出し機のスクリューの最下流部(末端)に供
給し,そして繊維状フィラーとしてのチタン酸カリウイ
スカと,増量材としてのタルクとをスクリューの途中に
供給して,溶融混練した後,ポリプロピレン樹脂組成物
のペレットとなした。
上記組成物ペレットを8時間熱風乾燥した後,射出成
形により所定形状のテストピースに作製し,これを試料
とした。
諸物性の測定は,以下の方法により行った。また,各
例の配合割合,測定結果は下表に示した。配合割合は,
ポリプロピレン樹脂組成物中における重量%で示す。ま
た,表中の「NB」は,「破断せず」を示す。
○ 曲げ強度,曲げ弾性率, ASTM D790に従って試験した。
○ アイゾット衝撃値 ASTM D256に従って,23℃と−30℃につき試験した。
○ 線膨張率 ASTM D696に従って試験した。
○ S−EB−Sにおける溶融粘度 ブルックフィールド粘度(センチポイズ)を測定し
た。ブルックフィールド粘度計は,一定のせん断速度と
一定の温度下にて,上記溶液中でスピンドルを回転させ
るのに必要なトルクを測定するものである。
本例においては,所定量のS−EB−Sをトルエンに溶
解させ,特定濃度の溶液となし,25℃にて上記測定を行
った値を示す。
また,各例における成分は次のものを用いた。
○ 結晶性ポリプロピレン樹脂: 三菱ノーブレン BC05G 三菱油化(株) ○ S−EB−S: クレイトン G1657X,G1650,G1726X シェル化学(株) ○ チタン酸カリウイスカ: ティスモーD 大塚化学(株) 長さ10〜20μm,平均直径0.2〜0.5μm ○ タルク:平均粒径1.6〜2.0μm LMR#100 富士タルク工業(株) 下表より知られるごとく,本発明にかかる実施例1〜
5は,線膨張率が3.90×10-5cm/cm℃以下,曲げ強度が1
50kgf/cm2以上,曲げ弾性率が8400kgf/cm2以上,23℃又
は−30℃のアイゾット衝撃値が22.0kgf cm/cm又は7.0kg
f cm/cm以上を示している。
これに比して,比較例1は,S−EB−Sを配合していな
いため,線膨張率が7.13×10-5cm/cm℃と高く,またア
イゾット衝撃値がかなり低い。また,比較例2はS−EB
−Sの溶液粘度が1500cpsと高いため,また比較例3は
チタン酸カリウイスカを配合していないため,更に比較
例5はS−EB−Sが少ないため,共に線膨張率が大き
い。また,比較例4は,S−EB−Sが多いため,曲げ弾性
率が極端に低下している。
上記のごとく,本発明によれば,線膨張率が低く,ま
た曲げ強度,曲げ弾性率,アイット衝撃値が高くてバラ
ンスの良い機械的性質を有し,線膨張率が低く,また耐
候性に優れたポリプロピレン樹脂組成物を得ることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
第1図は自動車用サイドモールの斜視図,第2A図及び第
2B図は低線膨張率化の説明図である。 1……サイドモール, 3……結晶性ポリプロピレン樹脂のマトリクス, 4……繊維状フィラー, 5……増量材, 6……S−EB−S,

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】結晶性ポリプロピレン樹脂31〜75%(重量
    比,以下同じ)と,25℃における溶液粘度が1400cps以下
    であるスチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合
    体20〜40%と, 繊維状フィラー1〜10%と, 増量材4〜40%と からなることを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物。
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