JP2565832B2 - 金属板葺き屋根構造及び屋根板接合部の締結具 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、隣接する金属屋根板の
上部に立上り形成した接合脚どうしを背合せに連結し、
強度アップを図り作業性を向上させ意匠性を良好とした
形態の金属板葺き屋根構造とこれに使用する屋根板接合
部の締結具に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】この種の金属葺き屋根としては、近年例
えば施工性、意匠性に優れたボルトレス折板が広く使用
されてきているが、この折板の接合部は、下馳部と上馳
部とを機械的に馳合わせてゆき、水密性を確保する優れ
たものである。しかし、躯体との緊締部すなわち吊子部
分は、下馳部と上馳部が吊子を介して馳合わされている
ため、強風時にあっては、吊子の変形又は下馳部の変形
（回転、変位）等により上馳部が外れ易くなり、したが
って、高層建築の屋根においては耐風圧強度が十分とは
いえなかった。またボルトレスの折板にあっては、左右
の形状が異なっているため、葺き方向を一定にせざるを
得なかった。さらに、ボルトレス折板の屋根葺き作業に
あっては、金属屋根板を吊子に固定する時、屋根板先端
葺き部分より、半身を乗り出して作業を行うために、作
業者や部品の落下の危険を伴い、安全性や作業性に欠け
ていた。

【０００３】上記の点を改善するものとして、キャップ
材と金属屋根材板を嵌合して葺きあげる折板も開発され
ているが、概ね、折板本体には隙間があり、その隙間を
カバーするようにキャップ材が被せられているため、折
板が連結され一体となることにより生じる構造的強度が
得にくく、強風による折板の飛散に対抗する強度が充分
でなく、また飛散しないまでも強風降雨時に折板本体と
キャップ材との間に変形による隙間ができて、そこから
漏水を生じることになり、また、多量の積雪時にも同様
の隙間が生じ水密性に問題があった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】したがって、本願発明
においては、強風時の吹き上げ、外部からの積雪、作業
者の体重等の荷重に対する強度的耐久性を向上させ、屋
根葺きの方向性を解消するとともに接合部の水密性と作
業の安全性を確保することを解決課題とする。

【０００５】本発明は金属屋根板の接合脚間に間隔が形
成されないようにするとともに該接合脚がキャップ材の
補強部材となって、強風時の吹き上げや外部からの荷重
に対する強度的耐久性を向上することができ、また作業
性の簡略化ができるところの金属板葺き屋根構造とこれ
に使用する屋根板接合部の締結具を提供することを目的
とするものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は上記の課題を解
決し目的を達成するためになされたものであって、その
金属板葺き屋根構造は、任意の間隔で架設された各梁上
に固着したタイトフレーム１と、垂直な支柱板３の上部
左右に水平板部４を形成するとともに該水平板部の両端
に固定爪５を起立させ前記タイトフレーム１の上部に固
定した正面Ｔ型の吊子材２と、断面形状を凹型または開
口部が外方へ開いた凹形に形成してそれぞれの開口縁部
に肩部６を形成しこれに連続して前記吊子材２の支柱板
３に接合される接合脚７を一方は倒立Ｌ字に他方は倒立
逆Ｌ形に折曲して上部に返り付き水平折曲板８を形成し
た断面左右対称形の金属屋根板９と、断面逆凹型として
両側に折曲挟着脚１０を形成し吊子材２の上部を形成す
る水平板部４とその下面に接する金属屋根板９の返り付
き水平折曲板８とを折曲挟着し吊子材２の固定爪５で固
定される掴み金具１１と、金属屋根板９相互の接合ライ
ン全域にわたって被冠されるロールフォーミングしたキ
ャップ材１３とからなり、必要に応じて、金属屋根板９
相互の接合ラインの中間部を締結具１２で締結した構造
とする。 前記締結具１２は、所定幅Ｂの板部材を逆凹型
に屈曲して前記金属屋根板９の接合相互の返り付き水平
折曲板８と接合脚７を抱持状に挟着する挟着板部１４、
１５を形成するとともに、該挟着板部１４、１５に連続
して、金属屋根板９の肩部６から外方へ延設した部材表
面とキャップ材１３の側板内面に接してキャップ材係止
用空間１６を形成する係止形成脚１７を延設し、さらに
幅方向両端部にキャップ材支持脚１８を立設し又は立設
しない構成である。

【０００７】

【作用】上記のように構成した金属板葺き屋根構造にお
いては、垂直な支柱板３の上部左右に水平板部４を形成
するとともに該水平板部４の両端に固定爪５を起立させ
前記タイトフレーム１の上部に固定した正面Ｔ型の吊子
材２に、断面形状を凹型または開口部が外方へ開いた凹
形に形成してそれぞれの開口縁部に肩部６を形成しこれ
に連続して前記吊子材２の支柱板３に接合される接合脚
７を一方は倒立Ｌ字に他方は倒立逆Ｌ形に折曲して上部
に返り付き水平折曲板８を形成した断面左右対称形の金
属屋根板９、９の接合脚７、７を背合わせに接合し、タ
イトフレーム１上においては吊子材２の固定爪５で固定
される掴み金具１１で挟着し、又は掴み金具１１及び金
属屋根板９相互の接合ライン中間部を所定幅Ｂの板部材
を逆凹型に屈曲して金属屋根板９の返り付き水平折曲板
８と接合脚７を挟着する挟着板部１４、１５を形成した
締結具１２で挟着したから、金属屋根板９の接合脚７相
互は間隔を形成することなく強固に接合されるととも
に、これが接合ライン全域にわたって被冠されるロール
フォーミングしたキャップ材１３の補強部材として作用
し、強風時の吹き上げや外部からの荷重に対する強度的
耐久性を向上することができ、また、掴み金具１１及び
締結具１２は左右から掴み爪を締めるようにした締結工
具及びハンマーを用いて簡単且つ強力に接合脚７相互を
挟着することができ作業性を向上する。

【０００８】

【実施例】本発明に係る金属板葺き屋根の実施例を図に
おいて説明すると、図１は金属板葺き屋根構造の一部を
金属屋根板の接続部稜線に対して直角に切断した断面
図、図２は金属屋根板の断面図、図３はタイトフレーム
部分をキャップ材を外して示した斜視図、図４は吊子材
とと掴み金具の斜視図、図５は吊子材を固定する場合に
使用する特殊ワッシャの斜視図、図６は中間部締結具の
斜視図、図７は金属板葺き屋根構造における締結具使用
部分の断面図、図８は他の実施例であり、金属板葺き屋
根構造の一部を金属屋根板の接続部稜線に対して直角に
切断した断面図であり、その構成を一例の組立て作業手
順にそって説明すると次の通りである。

【０００９】図１乃至図５に示すように、任意の間隔で
架設された各梁（図示せず）上に固着され、後記吊子材
２を固定する段部１９を形成したタイトフレーム１の段
部１９に、正面Ｔ型（正確にはτ型）として取付板２０
を形成しこれに連続して垂直な支柱板３を立設しその上
部を左右に折曲して水平板部４を千鳥形に形成するとと
もに同一側へ張出した水平板部４の最外側端に固定爪５
を起立させた吊子材２の前記取付板２０を、矩形ワッシ
ャ本体２４の片側縁を垂直に折曲しその先端縁部を水平
方向へ折り返して屋根板支持脚２５を形成した図５に示
す形態の特殊ワッシャ２６を介してボルト２１で固定す
る。この特殊ワッシャ２６は、屋根板支持脚２５が、屋
根板を受けることにより、後記返り付き水平折曲板８の
高さを揃えて後記掴み金具１１を嵌め易くする。

【００１０】そして、図２に示すように断面形状を開口
部が外方へ開いた凹形に形成してそれぞれの開口縁部に
補強のための一段の階段部２２を有する肩部６を形成
し、これに連続して前記吊子材２の支柱板３に接合され
る接合脚７を一方は倒立Ｌ字に他方は倒立逆Ｌ形に折曲
して上部に返り付き水平折曲板８を形成し、裏面に保温
性を良好にするための断熱材（図示せず）を貼着した断
面左右対称形の金属屋根板９、９を、タイトフレーム１
に沿って被せて、その接合脚７、７で吊子材２の支柱板
３を挟んで接合するとともに、吊子材２の水平板部４下
に前記返り付き水平折曲板８を重ねる。

【００１１】次に、前記吊子材２の水平板部４の内幅を
有し固定爪５の間隔を長手方向寸法とし、長手方向直角
断面を逆凹型として両側に折曲挟着脚１０を形成した掴
み金具１１を、吊子材２の上部を形成する水平板部４と
その下面に重なった金属屋根板９の返り付き水平折曲板
８へ被せ、左右から掴み爪を締めるようにした締結工具
で締付けて固定し、前記掴み金具１１の移動を確実に阻
止するためにハンマーで前記固定爪５を掴み金具１１上
へ折曲する。このハンマーでの固定爪５の折曲は、屋根
葺き作業が、長尺の金属屋ね板９を一枚づつ隣り合わせ
に並べて葺き、金具にて強固に接合するものであること
から、タイトフレーム１に吊子材２を先行して取付けて
おくことにより、一枚手前の金属屋根板９を作業床とし
て、金属屋根板９どうしの掴み金具１１による締結作業
が行え、落下の危険もなく安全にしかも迅速に仮葺きを
行うことができる。

【００１２】上記実施例は、前記吊子材２と掴み金具１
１を使用した金属板葺き屋根構造であるが、金属屋根板
９相互の接合ラインの中間部を締結具１２で締結する場
合の締結具１２は、断面形状を凹型または開口部が外方
へ開いた凹形に形成してそれぞれの開口縁部に肩部６を
形成するとともに、該肩部６から外方へ延設した部材の
縁部に、一方は倒立Ｌ字に他方は倒立逆Ｌ形に折曲して
接合脚７を連続起立させ、その上部を内側水平方向に折
曲し先端部を下方へ折り返した返り付き水平折曲板８を
形成してなる断面左右対称形の金属屋根板９の多数を、
その接合脚７相互で接合し、該接合ライン全域にロール
フォーミングしたキャップ材１３を被冠する金属板葺き
屋根構造部分のキャップ材１３内となる前記接合ライン
中間部に装着固定するものであって、所定幅Ｂの板部材
を逆凹型に屈曲して前記金属屋根板９の接合相互の返り
付き水平折曲板８と接合脚７を抱持状に挟着する挟着板
部１４、１５を形成するとともに、該挟着板部１４、１
５に連続して、金属屋根板９の肩部６から外方へ延設し
た部材表面とキャップ材１３の側板内面に接してキャッ
プ材係止用空間１６を形成する係止形成脚１７を延設
し、さらに幅方向両端部にキャップ材支持脚１８を立設
した構成であり、この場合のキャップ材支持脚１８は、
キャップ材１３に作業者の体重が掛かった時の沈み防止
及び工具での締付け時に中央山部１８ａの変形を防止す
る。

【００１３】最後に、金属屋根板９相互の接合ライン全
域にわたってロールフォーミングしたキャップ材１３を
弾力に抗して被冠嵌合し、その断面略Ｓ形に屈曲した係
止縁脚２７を、締結具１２の係止形成脚１７と肩部６の
間に形成されている前記キャップ材形成用空間１６に係
止することにより完成する。前記キャップ材１３の係止
縁脚２７は、図８に示すように断面略Ｊ形に屈曲形成し
て、締結具１２の係止形成脚１７と肩部６の間に形成さ
れる前記キャップ材形成用空間１６に係止するようにし
てもよい。

【００１４】なお、吊子材２の固定位置及び固定手段は
上記実施例に限定されるものではなく、段部１９の垂直
部分であってもよいし、固定手段は溶接であってもよ
い。また吊子材２の水平板部４は逆Ｌ型の板部材を背合
わせに溶接して形成してもよく、さらに締結具１２に形
成したキャップ支持脚１８は、必ずしも必要とするもの
ではない。また掴み金具１１及び締結具１２に形成した
切欠き２３は締結を容易にするためのものである。

【００１５】

【発明の効果】以上説明したように本発明の金属板葺き
屋根構造によれば、垂直な支柱板３の上部左右に水平板
部４を形成するとともに該水平板部の両端に固定爪５を
起立させ前記タイトフレーム１の上部に固定した吊子材
２に、断面形状を凹型または開口部が外方へ開いた凹形
に形成してそれぞれの開口縁部に肩部６を形成しこれに
連続して前記吊子材２の支柱板３に接合される接合脚７
を形成した断面左右対称形の金属屋根板９、９の接合脚
７、７を背合わせに接合し、タイトフレーム１上におい
ては、吊子材２の固定爪５で固定される掴み金具１１で
挟着し、金属屋根板９相互の接合ライン中間部には、所
定幅Ｂの板部材を逆凹型に屈曲して金属屋根板９の返り
付き水平折曲板と接合脚７を挟着する挟着板部１４、１
５を形成した一個乃至数個の締結具１２で挟着したか
ら、金属屋根板９の接合脚７相互は間隔を形成すること
なく強固に接合されるとともに、これが接合ライン全域
にわたって被冠されるキャップ材１３の補強部材となっ
て、強風時の吹き上げや外部からの荷重に対する強度的
耐久性を著しく向上することができる。

【００１６】また、両側に折曲挟着脚１０を形成した掴
み金具１１及び両側に係止形成脚１７を形成した締結具
１２を使用したから、左右から掴み爪を締めるようにし
た締結工具及びハンマーを用いて簡単且つ強力に接合脚
７相互を挟着することができ、さらに貫通するボルトで
接合脚を連結するのではないから、外力に対して順応性
があり、貫通孔からの錆の発生や、金属屋根板の熱変化
による伸縮が原因となるゆがみ等を招来しない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の金属板葺き屋根構造の一部を金属屋根
板の接続部稜線に対して直角に切断した断面図である。

【図２】金属屋根板の断面図である。

【図３】タイトフレーム部分をキャップ材を外して示し
た斜視図である。

【図４】吊子材と掴み金具の斜視図である。

【図５】タイトフレームに金属屋根板と吊子材の取付板
を重ねてボルト固定する場合に使用する特殊ワッシャの
斜視図である。

【図６】本発明に係る締結具の斜視図である。

【図７】金属板葺き屋根構造における締結具使用部分の
断面図である。

【図８】金属板葺き屋根構造の、他の実施例に係る締結
具を使用した部分の断面図である。

【符号の説明】

１ タイトフレーム ２ 吊子材 ３ 支柱板 ４ 水平板部 ５ 固定爪 ６ 肩部 ７ 接合脚 ８ 返り付き水
平折曲板 ９ 金属屋根板 １０ 折曲挟着脚 １１ 掴み金具 １２ 締結具 １３ キャップ材 １４、１５ 挟着
板部 １６ キャップ材係止用空間 １７ 係止形成
脚 １８ キャップ材支持脚 １９ 段部 ２０ 取付板 ２１ ボルト ２２ 階段部 ２３ 切欠き ２４ 矩形ワッシャ本体 ２５ 屋根板支
持脚 ２６ 特殊ワッシャ ２７ 係止縁脚 Ｂ 所定幅

Claims (5)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 任意の間隔で架設された各梁上に固着し
   たタイトフレーム１と、垂直な支柱板３の上部左右に水
   平板部４を形成するとともに該水平板部の両端に同定爪
   ５を起立させ前記タイトフレーム１の上部に固定した正
   面Ｔ型の吊子材２と、断面形状を凹型または開口部が外
   方へ関いた凹形に形成してそれぞれの開口縁部に肩部６
   を形成しこれに連続して前記吊子材２の支柱板３に接合
   される接合脚７を一方は倒立Ｌ字に他方は倒立逆Ｌ形に
   折曲して上部に返り付き水平折曲板８を形成した断面左
   右対称形の金属屋根板９と、断面逆凹型として両側に折
   曲挟着脚１０を形成し吊子材２の上部を形成する水平板
   部４とその下面に接する金属屋根板９の返り付き水平折
   曲板８とを折曲挟着し前記吊子材２の固定爪５で固定さ
   れる掴み金具１１と、金属屋根板９相互の接合ライン全
   域にわたって被冠されるロールフォーミングしたキャッ
   プ材１３とから構成としたことを特徴とする金属板葺き
   屋根構造。
2. 【請求項２】 前記金属屋根板９相互の接合ライン中間
   部に、所定幅Ｂの板部材を逆凹型に屈曲して金属屋根板
   ９の接合相互の返り付き水平折曲板８と接合脚７を抱持
   状に挟着する挟着板部１４、１５を形成するとともに、
   該挟着板部１４、１５に連続して、金属屋根板９の肩部
   ６から外方へ延設した部材表面とキャップ材１３の側板
   内面に接してキャップ材係止用空間１６を形成する係止
   形成脚１７を延設し、さらに幅方向両端部にキャップ材
   支持脚１８を立設し又は立設したない構成とした締結具
   １２を装着した請求項１記載の金属板葺き屋根構造。
3. 【請求項３】 金属屋根板９の肩部６を断面階段状に形
   成した請求項１又は２記載の金属板葺き屋根構造。
4. 【請求項４】 吊子材２を固定する段部１９を形成した
   タイトフレーム１の段部１９に、正面Ｔ型（正確にはτ
   型）とした吊子材２の前記取付板２０を、矩形ワッシャ
   本体２４の片側縁を垂直に折曲しその先端縁部を水平方
   向へ折り返して屋根板支持脚２５を形成した特殊ワッシ
   ャ２６を介してボルト２１で固定するようにした請求項
   １、２又は３記載の金属板葺き屋根構造。
5. 【請求項５】 断面形状を凹型または開口部が外方へ開
   いた凹形に形成してそれぞれの開口縁部に肩部６を形成
   するとともに、該肩部６から外方へ延設し た部材の縁部
   に、一方は倒立Ｌ字に他方は倒立逆Ｌ形に折曲して接合
   脚７を連続起立させ、その上部を内側水平方向に折曲し
   先端部を下方へ折り返した返り付き水平折曲板８を形成
   してなる断面左右対称形の金属屋根板９の多数を、その
   接合脚７相互で接合し、該接合ライン全域にロールフォ
   ーミングしたキャップ材１３を被冠する金属析葺き屋根
   構造部分のキャップ材１３内となる前記接合ライン中間
   部に装着固定するものであって、所定幅Ｂの板部材を逆
   凹型に屈曲して前記金属屋根板９の接合相互の返り付き
   水平折曲板８と接合脚７を抱持状に挟着する挟着板部１
   ４、１５を形成するとともに、該挟着板部１４、１５に
   連続して、金属屋根板９の肩部６から外方へ延設した部
   材表面とキャップ材１３の側板内面に接してキャップ材
   係止用空間１６を形成する係止形成脚１７を延設し、さ
   らに幅方向両端部にキャップ材支持脚１８を立設し又は
   立設しないことを特徴とする屋根板接合部の締結具。