JP2556794Y2 - シートスライド装置のロック機構 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、シートスライド装置の
ロック機構に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に自動車のフロントシートは、シー
トクッションの下面側に配設したシートスライド装置に
よって前後方向へのスライドが可能となっており、この
シートスライド装置に設けられるロック機構でフロント
シートのスライド位置を固定して乗員が快適に着座でき
るように構成されている。

【０００３】従来のシートスライド装置としては、例え
ば図８および図９に示すようなものがある。この種のシ
ートスライド装置５１は、フロア５２側に固定される左
右一対のロアレール５３と、シートクッション５４の下
面にシートフレーム５５を介して固定される左右一対の
アッパレール５６とを有し、このアッパレール５６はロ
アレール５３にスライド可能に取付けられている。ま
た、シートスライド装置５１には、アッパレール５６を
スライドさせて所望の位置で固定するロック機構５７が
設けられている。

【０００４】図８に示すロック機構５７は、シートスラ
イド装置５１のアッパレール５６に回動可能に取付けら
れる操作ロッド５８を備え、操作ロッド５８にはシート
スライド装置５１と係脱するロック部材（図示せず）が
設けられており、このロック部材は操作ロッド５８に巻
装したスプリング（図示せず）にて常時係止方向に付勢
されている。また、操作ロッド５８はワイヤ５９を介し
てレバー６０と連結され、該レバー６０の遠隔操作によ
りワイヤ５９を介して操作ロッド５８を係止解除方向に
回動させる。すると、図示しないロック部材はシートス
ライド装置５１から離脱してアッパレール５６がスライ
ド可能な状態になる。そして、適宜の位置でレバー６０
を離すと、スプリングの付勢力によってロック部材はシ
ートスライド装置５１と係合して再び係止状態に保持さ
れることになる。

【０００５】また、図９に示すロック機構５７は、図８
に示すワイヤ５９およびレバー６０の代わりに操作ロッ
ド５８の前端部をシートクッション５４に向かって上方
へ延長させたレバー部５８ａを備えており、その他の構
成および作用は図８に示すものと同様である。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】ところが、上述した従
来のロック機構５７にあっては、図８に示すワイヤ５９
がフロア５２等の突起物に引っ掛かると、シートスライ
ド装置５１とロック部材（図示せず）との係止状態が解
除するおそれがあり、自動車の走行中にフロントシート
が移動することが起こる可能性があった。また、図９に
示すロック機構５７では、操作ロッド５８の全長が長く
なるため、操作ストロークが大きくなって操作しにくい
という不具合を有している。

【０００７】本考案はこのような実状に鑑みてなされた
ものであって、その目的は、簡単な構造で、操作性の向
上を図ることが可能なシートスライド装置のロック機構
を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記従来技術の有する課
題を解決するために、本考案においては、シートクッシ
ョンをシートフレームを介して前後方向へスライド可能
に支持するシートスライド装置と、このシートスライド
装置に回動可能に取付けられる操作ロッドと、この操作
ロッドに設けられかつ前記シートスライド装置と係脱す
るロック部材とを備え、前記操作ロッドを操作するレバ
ーを前記シートクッションの前端部側に上下方向にわた
って配置し、該レバーの上部を前記シートフレームに回
動可能に取付けるとともに、前記レバーの下部を一端部
が前記操作ロッドに取付けられる中間部材にスライド可
能に連結し、前記レバーを回動操作したとき、前記レバ
ーの下部が中間部材をスライドしてこの中間部材を回動
させるとともに、前記操作ロッドを同方向へ回動させ、
前記ロック部材と前記シートスライド装置との係止を解
除するように構成している。

【０００９】

【作 用】本考案に係るシートスライド装置のロック機
構では、シートスライド装置と係脱するロック部材が設
けられた操作ロッドを操作するためのレバーをシートク
ッションの前端部側に上下方向にわたって配置し、この
レバーの上部をシートフレームに回動可能に取付けると
ともに、前記レバーの下部を一端部が操作ロッドに取付
けられる中間部材にスライド可能に連結し、前記レバー
を回動操作したとき、当該レバーの下部が中間部材をス
ライドしてこの中間部材および操作ロッドを回動させ、
前記ロック部材とシートスライド装置との係止を解除す
るように構成しているため、シートフレームによって着
座するシートクッションの設置位置を高くした車高の高
い自動車においてシートスライド装置とロック機構のレ
バーとの位置が高さ方向に離れていても、複雑な構造を
とらずに操作ロッドを操作するレバーのストロークが小
さくなり、当該レバーを容易に操作することが可能とな
る。

【００１０】

【実施例】以下、本考案を図示の実施例に基づいて詳細
に説明する。

【００１１】図１〜図７は本考案に係るシートスライド
装置のロック機構の一実施例を示している。図におい
て、１は乗用車のアンダーボディを共通に使って車高を
高くした自動車、２はこの自動車１の室内前部下側に配
設されるフロントシートであり、フロントシート２は、
乗員が着座するシートクッション３と乗員の背部を受け
るシートバック４とからなっている。

【００１２】上記フロントシート２は、シートクッショ
ン３の下部に設けたシートフレーム５によって着座位置
が高く、かつ当該シートクッション３の下方に配設され
るシートスライド装置６にて車体の前後方向へスライド
可能に支持されており、このシートスライド装置６に取
付けられるロック機構７によってフロントシート２を適
当な位置で固定するように構成されている。

【００１３】シートスライド装置６は、車体の前後方向
に沿って配設される左右一対のロアレール８およびアッ
パレール９を備え、ロアレール８は前後端のブラケット
１０，１１を介してフロア１２側に固定されている。ま
た、これらロアレール８にスライド可能に取付けられる
アッパレール９は、シートフレーム５および取付ブラケ
ット１３を介してシートクッション３の下部に固定され
ている。そして、シートスライド装置６の片側（図２中
で右側）には、フロントシート２を適正位置で固定する
上記したロック機構７が配設されている。

【００１４】このロック機構７は、アッパレール９とほ
ぼ平行に配設される操作ロッド１４を有し、該操作ロッ
ド１４は、図３に示すように一端部をアッパレール９の
上面に固定した支持ブラケット１５の筒状部１５ａに挿
通配置することにより軸心を中心にして回動可能に支持
されている。また、操作ロッド１４には、ロック部材た
るロックプレート１６の一端部が一体的に設けられてお
り、このロックプレート１６には複数の係止孔１７が操
作ロッド１４の軸方向に所定の間隔を置いて穿設されて
いる。なお、操作ロッド１４の後端部には、図示しない
スプリングが巻装されており、該スプリングの一端はア
ッパレール９側に固定されている。しかして、このスプ
リングの弾撥力により操作ロッド１４およびロックプレ
ート１６は常時係止方向（図３中の矢印ａ方向）に付勢
されている。

【００１５】一方、ロアレール８の下面には、係止板１
８が長手方向に沿って固定されており、この係止板１８
の先端部はロック機構７側へ向って延び途中でクランク
状に折り曲げられ、当該ロアレール８とほぼ直交する位
置に配設されている。そして、係止板１８の先端部に
は、ロックプレート１６の係止孔１７とそれぞれ係合す
る複数の係止爪１９が長手方向に間隔を置いて配設さ
れ、従って先端部は凹凸が交互に配置されたラック形状
に形成されている。また、係止爪１９の先端は斜め下方
へ屈曲されており、これによって係止状態にあるロック
プレート１６が離脱するのを防止している。

【００１６】上記シートクッション３の前端部側下方に
は、操作ロッド１４を操作するレバー２０が図２に示す
如く上下方向にわたって配置されている。このレバー２
０は、操作片部２０ａと作動片部２０ｂとによってほぼ
Ｌ字状に形成され、操作片部２０ａはシートクッション
３の巾方向中央側に向かって配置されている。また、レ
バー２０の作動片部２０ｂの上端は、図４および図５に
示すように取付ブラケット２１を介してシートフレーム
５の上部に回動可能に取付けられている。

【００１７】このため、取付ブラケット２１の一端部後
面は、溶接にてシートフレーム５の外周面に固着されて
おり、その中央部には段付ボルト２２を挿通させる取付
孔２３が穿設されている。そして、取付ブラケット２１
の後面側には溶接ナット２４が取付孔２３と対応して固
着されている。また、段付ボルト２２の軸状部分は、溶
接ナット２４と螺合する雄ねじが形成された小径部２２
ａと、取付ブラケット２１の前面より突出して配置され
る大径部２２ｂとから構成されており、この大径部２２
ｂには樹脂製リング２５が嵌着されている。この樹脂製
リング２５の外周部には断面コ字状の周溝２６が形成さ
れ、該周溝２６にレバー２０が嵌合孔２７を介して回動
可能に取付けられるようになっている。

【００１８】上記レバー２０の作動片部２０ｂの下端
は、図６および図７に示す如く、連結ピン２８によって
長方形板状体の中間部材２９とスライド可能に連結され
ており、該中間部材２９の一端部は操作ロッド１４の前
端部に一体的に取付られ、これによって中間部材２９は
操作ロッド１４を中心にして回動可能に構成されてい
る。しかして、作動片部２０ｂの下端にはピン孔３０が
設けられているとともに、中間部材２９には長手方向に
沿って延びる係合孔３１が穿設され、これらピン孔３０
および係合孔３１に連結ピン２８を挿入配置することに
より、レバー２０と中間部材２９とは重ね合せられた状
態で結合されている。なお、連結ピン２８の両端には抜
け止め用のフランジ部２８ａ，２８ｂが形成されてい
る。

【００１９】このように構成したロック機構７において
は、図示しないスプリングの弾撥力により操作ロッド１
４を介してロックプレート１６を常時係止方向に付勢
し、所定の位置で係止板１８の係止爪１９にロックプレ
ート１６の係止孔１７を嵌合させて係止し、アッパレー
ル９を介してフロントシート２を固定する。

【００２０】また、フロントシート２の前後方向の位置
を調整する場合には、図６に示すように、レバー２０の
操作片部２０ａをスプリング（図示せず）の付勢力に抗
して矢印ｂ方向へ引き上げて鎖線の位置まで回動操作す
る。すると、レバー２０の作動片部２０ｂは嵌合孔２７
内の段付ボルト２２の軸心を中心にして同一方向に回動
し、中間部材２９の係合孔３１内を連結ピン２８を介し
て矢印Ｃ方向へスライドする。しかして、中間部材２９
は操作ロッド１４を中心にして矢印ｄ方向に回動すると
ともに、操作ロッド１４もその軸心を中心にして矢印ｄ
方向に回動する。操作ロッド１４の回動に伴って、ロッ
クプレート１６が図３中の矢印ａ方向と反対方向（図６
中の矢印ｄ方向）に回動し、係止孔１７は係止爪１９か
ら離脱して係止解除（ロック解除）され、図３に示す鎖
線の位置に後退する。

【００２１】この状態では、アッパレール９はスライド
可能となり、フロントシート２の前後位置をスライド調
整したのち適正な位置でレバー２０の操作片部２０ａを
離すと、図示しないスプリングの弾性復帰作用によって
作動片部２０ｂが図６の矢印ｂ方向とは反対方向に回動
し、これに伴って中間部材２９および操作ロッド１４も
矢印ｄ方向（図３中の矢印ａ方向）に回動し、係止孔１
７は対向する係止板１８の係止爪１９と係合して再び係
止状態（ロック状態）に保持される（図３に示す実線位
置）。

【００２２】本実施例によれば、作動片部２０ｂの上端
が取付ブラケット２１等を介してシートフレーム５に回
動可能に取付けられ、かつ下端が連結ピン２８および係
合孔３１を介して中間部材２９にスライド可能に連結さ
れるレバー２０をシートクッション３の前端部側に上下
方向にわたって配置し、また中間部材２９の一端部をロ
ックプレート１６が設けられた操作ロッド１４に取付
け、レバー２０の回動に伴って操作ロッド１４を中間部
材２９を介して係止解除方向に回動させ、ロックプレー
ト１６の係止孔１７を係止板１８の係止爪１９から離脱
させるようにしているため、着座するシートクッション
３の設置位置が高く、シートスライド装置６とロック機
構７のレバー２０との位置が高さ方向に大きく離れてい
ても、レバー２０の操作ストロークは大きくならず、当
該レバー２０の操作片部２０ａをわずかに引き上げるだ
けで操作することができる上、シートスライド装置６の
アッパレール９を確実に固定するとともに、ロック解除
も迅速に行うことができる。しかも、従来のワイヤ式ロ
ック機構のように、ワイヤが車体の突起物に引っ掛かっ
たりしてロックが解除されるおそれが全くない。

【００２３】以上、本考案の一実施例につき述べたが、
本考案の既述の実施例に限定されるものではなく、本考
案の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能
である。

【００２４】例えば、既述の実施例におけるロックプレ
ート１６の係止孔１７の代わりに係止爪を設け、係止板
１８の係止爪１９の代わりに係止孔を設けて互いに係合
するようにしてもよい。また、係止板１８を廃止してロ
アレール８の側面に複数の係止孔を長手方向に間隔を置
いて設け、これら係止孔にロックプレートの先端部を直
接係合しうるように構成してもよい。

【００２５】

【考案の効果】上述の如く、本考案に係るシートスライ
ド装置のロック機構は、シートクッションをスライド可
能に支持するシートスライド装置と、このシートスライ
ド装置に回動可能に取付けられる操作ロッドと、この操
作ロッドに設けられるロック部材とを備え、前記シート
クッションの前端部側に上下方向にわたって配置される
レバーの上部をシートフレームに回動可能に取付けると
ともに、前記レバーの下部を一端部が操作ロッドに取付
けられる中間部材にスライド可能に連結し、前記レバー
の回動操作に伴って中間部材および操作ロッドを回動さ
せ、前記ロック部材とシートスライド装置との係止を解
除するように構成したので、特にシートスライド装置と
ロック機構のレバーとの位置が高さ方向に大きく離れて
いても、簡単な構造で前記レバーのストロークを小さく
することができ、これによって操作性の向上が図れ、シ
ートの位置調整を容易にかつ迅速に行うことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例に係るシートスライド装置の
ロック機構を設けた自動車を示す側面図である。

【図２】上記ロック機構が設けられているシートスライ
ド装置を示す斜視図である。

【図３】上記シートスライド装置を示す断面図である。

【図４】図２におけるＡ−Ａ線断面図である。

【図５】図２におけるＢ−Ｂ線断面図である。

【図６】上記ロック機構のレバー、中間部材および操作
ロッドの関係を示す正面図である。

【図７】図６におけるＣ−Ｃ線断面図である。

【図８】従来のロック機構が設けられているシートスラ
イド装置を示す斜視図である。

【図９】他の従来のロック機構が設けられているシート
スライド装置を示す斜視図である。

【符号の説明】

３ シートクッション ５ シートフレーム ６ シートスライド装置 ７ ロック機構 ８ ロアレール ９ アッパレール １４ 操作ロッド １５ 支持ブラケット １６ ロックプレート １７ 係止孔 １８ 係止板 １９ 係止爪 ２０ レバー ２１ 取付ブラケット ２２ 段付ボルト ２３ 取付孔 ２４ 溶接ナット ２５ 樹脂製リング ２６ 周溝 ２７ 嵌合孔 ２８ 連結ピン ２９ 中間部材 ３０ ピン孔 ３１ 係合孔

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 シートクッションをシートフレームを介
   して前後方向へスライド可能に支持するシートスライド
   装置と、このシートスライド装置に回動可能に取付けら
   れる操作ロッドと、この操作ロッドに設けられかつ前記
   シートスライド装置と係脱するロック部材とを備え、前
   記操作ロッドを操作するレバーを前記シートクッション
   の前端部側に上下方向にわたって配置し、該レバーの上
   部を前記シートフレームに回動可能に取付けるととも
   に、前記レバーの下部を一端部が前記操作ロッドに取付
   けられる中間部材にスライド可能に連結し、前記レバー
   を回動操作したとき、前記レバーの下部が中間部材をス
   ライドしてこの中間部材を回動させるとともに、前記操
   作ロッドを同方向へ回動させ、前記ロック部材と前記シ
   ートスライド装置との係止を解除するように構成したこ
   とを特徴とするシートスライド装置のロック機構。