JP2554212B2 - 耐低温チッピング性に優れる自動車用表面処理鋼板 - Google Patents

耐低温チッピング性に優れる自動車用表面処理鋼板

Info

Publication number
JP2554212B2
JP2554212B2 JP3129757A JP12975791A JP2554212B2 JP 2554212 B2 JP2554212 B2 JP 2554212B2 JP 3129757 A JP3129757 A JP 3129757A JP 12975791 A JP12975791 A JP 12975791A JP 2554212 B2 JP2554212 B2 JP 2554212B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
steel sheet
zinc
resin
treated steel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP3129757A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH04226345A (ja
Inventor
田 ゆ か 菊
岸 英 夫 大
尾 研 治 高
亮 一 向
村 肇 木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kawasaki Steel Corp filed Critical Kawasaki Steel Corp
Priority to JP3129757A priority Critical patent/JP2554212B2/ja
Publication of JPH04226345A publication Critical patent/JPH04226345A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2554212B2 publication Critical patent/JP2554212B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Application Of Or Painting With Fluid Materials (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は主に自動車車体用鋼板と
して好適に適用される耐低温チッピング性に優れた表面
処理鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】各種の鋼板に対する防錆要求が年々高ま
っている。特に自動車用鋼板、電気製品等に対する防錆
要求は厳しく、防錆性を向上させるための表面処理を施
された表面処理鋼板が各種開発実用化されている。
【0003】このような表面処理鋼板のひとつに亜鉛め
っき、亜鉛−ニッケルめっきなどの亜鉛系合金めっき等
を施した亜鉛系めっき鋼板がある。
【0004】この亜鉛系めっき鋼板は高湿潤下での防錆
性に優れる鋼板であるが、自動車ドアの袋構造部や曲り
部(ヘミング部)のように高湿潤条件下に曝される上、
塗装がつきまわりにくい部分の用途に適用した際には、
耐食性が不十分であるという問題がある。これに対し
て、最近では、亜鉛系めっき鋼板上にクロメートおよび
有機被覆を施した有機複合被覆鋼板が提案されている。
【0005】以上のように、車体内面のように高湿潤環
境条件になりやすい部分には、表面処理鋼板が使用され
る割合が高いが、自動車の車体表面(外面)のように、
外装面を構成する鋼板面では、従来は鮮映性や塗装性の
ように外観に重点が置かれているため、冷延面が使用さ
れ、めっき鋼板は使用されていなかった。このため、塗
装欠陥部や傷部からの外面錆が発生し、外観を損ねるば
かりか、孔あきにまで進行し、自動車の耐久性を低下さ
せる原因にもなっている。このような背景から、近年で
は、車体外面側にも高防錆性が要求されるようになり、
鋼板の両面に表面処理を施す場合がでてきた。
【0006】車体外面側には、膜厚100μm程度の塗
装が施される上、比較的乾燥した状態にあるため、車体
内面側の鋼板と比べて腐食の進行は遅いが、塗装の傷部
が存在すると、その部分から腐食が進行する。外装用の
表面処理鋼板、特に自動車の外面となる鋼板面には、内
面側では全く考慮する必要のなかった性能が要求される
が、このような性能のひとつに耐低温チッピング性があ
る。チッピングとは、自動車の走行中に小石等が車体に
当たり、その衝撃でめっき層等が剥離して鋼板素地が露
出する現象であり、特に低温時に起こりやすい。
【0007】通常の亜鉛系めっき鋼板、特に亜鉛−ニッ
ケルめっき鋼板はめっき密着性が劣る。従って、めっき
層上に塗装を施した後は、塗膜(電着塗装、中塗り塗
装、上塗り塗装等)の応力がめっきに加わるため、低温
チッピングによって鋼板素地とめっき層の剥離が生じや
すく、耐低温チッピング性が良好な冷延鋼板と比べて耐
低温チッピング性が劣る。めっき剥離が生じると亜鉛の
犠牲防錆性が効果を発揮せず、外面錆が進行する。この
ように、外面に用いられる亜鉛系めっき鋼板では、耐低
温チッピング性が劣るという問題点を抱えている。以上
のように、車体外面に適する鋼板、すなわち、車体内面
の高湿潤環境下での裸耐食性と車体外面の耐低温チッピ
ング性両方を兼ね備えた鋼板がないという問題点があ
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このような問題点を解
決するために、鋼板の外面では耐低温チッピング性、内
面では高湿潤環境下での裸耐食性を向上させる改良がそ
れぞれ行われている。
【0009】この耐低温チッピング性の改善方法として
は、特開昭63−143286号公報に開示される初期
のめっきを低電流密度で行い、この鋼板の表面に亜鉛−
ニッケルめっきのエピタキシャル層を形成し、次いで電
流密度をあげて亜鉛−ニッケルめっきを施す方法、特開
平1−108400号公報に開示されるめっき層中の亜
鉛を優先選択的に溶解除去することを特徴とする方法、
特開平1−176091号公報に開示される予め鋼板上
に0.9<Ni/(Zn+Ni)<1.0(モル比)、
pH2以下、電流密度5〜200A/dm2 の条件で5
0〜1000mg/m2 の亜鉛−ニッケルめっきを行い
引続き所定ニッケル含有率の亜鉛−ニッケルめっきを施
す方法等のめっき自体の構造に関する、すなわち、めっ
き密着性をあげる各種の方法が開示されている。
【0010】上記の各方法によれば、確かに通常の亜鉛
系めっき鋼板に比べて耐低温チッピング性は向上する。
しかしながら、いずれの方法においてもその耐低温チッ
ピング性はこれに優れる冷延鋼板のレベルには達してお
らず、さらなる耐低温チッピング性の向上が望まれてい
る。
【0011】また、特開昭64−78832号公報に開
示されるめっき上にクロメートあるいはリン酸塩処理皮
膜層を設け、さらにその上にTg点55℃以下でかつ焼
付け後の常温における硬度が鉛筆硬度のH〜2Bである
有機樹脂被膜層が0.1〜2.0μmの厚さに設けられ
ていることを特徴とする方法が開示されている。
【0012】めっき鋼板の低温チッピング性試験におけ
る剥離面積とは、通常、地鉄露出面積(地鉄−めっき間
剥離)のみを換算し、めっき残存部は換算しない。前述
の特開昭64−78832号の表面処理鋼板によれば、
地鉄−めっき間の剥離は減少している。しかし、この方
法で必須の要件としているTg点55℃以下では耐低温
チッピング性試験の場合換算しない部分(樹脂−電着塗
膜間)の剥離がかなり認められ、自動車用外板として実
用的でないことが判明した。これはTg点55℃以下で
は樹脂−電着塗膜間の密着性が弱くなるためと推定され
る。
【0013】外装用の鋼板には、このような耐低温チッ
ピング性および塗料密着性を確保した上で、前述のよう
に耐食性、塗装性にも優れていることが望まれる。
【0014】本発明の目的は前記従来技術の問題点を解
決し、袋構造部のような部分に使用される鋼板の表裏そ
れぞれの面が適正な機能を有する、すなわち、片面は、
優れた耐低温チッピング性および耐外面錆性、さらには
耐水二次密着性を有し、もう一方の面は裸耐食性に優
れ、しかも製造も容易な亜鉛系めっき表面処理鋼板を提
供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、亜鉛系めっき
表面処理鋼板において、通常行われているリン酸塩処理
が耐低温チッピング性を低下させていることを見いだし
た。自動車用の亜鉛系めっき表面処理鋼板では、塗料の
密着性(二次密着性)を向上させるために、めっき層形
成後にリン酸塩処理を行って水不溶性リン酸塩皮膜を生
成させる。本発明者らの研究により、このリン酸塩皮膜
を有することにより、得られた表面処理鋼板の二次密着
性は向上するものの、耐低温チッピング性は低下するこ
とが明らかになった。
【0016】また、本発明者らはさらに検討を重ね、亜
鉛系めっき層上に所定の有機被覆層、すなわち、ガラス
転移点が60〜120℃の樹脂を付着量が乾燥重量で
0.1〜2.5g/m2 とすることにより、低温チッピ
ング性試験においてめっき剥離のみならず、樹脂と電着
塗膜間の剥離も大幅に改善されることを見いだした。ま
た、このような有機被覆層は必要にして十分な電着塗装
性を有するものであるが、有機被覆層の組成を樹脂とシ
リカとの混合物とし、被膜のガラス転移点が60〜12
0℃で付着量を乾燥重量で0.1〜2.5g/m2 とす
ることにより、膜厚上限付近での電着塗装性をも格段に
向上させることができる。
【0017】しかも、前述の有機被覆層は必要にして十
分な塗料密着性を有するものであるが、この有機被覆層
を形成する前に、400mg/m2 以下のクロメート皮
膜を有することにより、より良好な塗料密着性を得るこ
とができ、優れた耐食性をも発現させることができる。
【0018】さらに、このようなクロメート皮膜および
有機被覆層を有することにより、仮にリン酸塩処理を行
っても、耐低温チッピング性を低下させるリン酸塩皮膜
の実質的な形成を防止することができる。
【0019】また、このようにして作製した表面処理鋼
板のもう一方側の亜鉛系めっき層上に金属クロム換算で
5〜400mg/m2 の付着量のクロメート処理を施
し、さらに、数平均分子量が2000以上のエピクロー
ルヒドリン−ビスフェノールA型エポキシ樹脂をベース
とする樹脂組成物とシリカとの混合物を乾燥重量にして
0.2〜3.0g/m2 施すことにより、優れた裸耐食
性をも付与することができる。
【0020】すなわち、本発明は、両面に亜鉛系めっき
層を有し、一方の面(I)はその上層に金属クロム換算
で400mg/m2 以下の付着量のクロメート処理を施
しまたは施さずに、その上層にガラス転移温度が60〜
120℃の樹脂層を付着量が乾燥重量で0.1〜2.5
g/m2 有し、もう一方の面(II)はその上層に金属
クロム換算で5〜400mg/m2 の付着量のクロメー
ト処理を施し、さらに、数平均分子量が2000以上の
エピクロールヒドリン−ビスフェノールA型エポキシ樹
脂をベースとする樹脂組成物とシリカとの混合物層を乾
燥重量にして0.2〜3.0g/m2 有することを特徴
とする片面が耐低温チッピング性に優れ他の面で耐食性
にすぐれた表面処理鋼板を提供するものである。
【0021】さらに、本発明は、両面に亜鉛系めっき層
を有し、一方の面(I)はその上層に金属クロム換算で
400mg/m2 以下の付着量のクロメート処理を施し
または施さずに、その上層に樹脂とシリカとを含有しガ
ラス転移温度が60〜120℃の混合物層(A)を付着
量が乾燥重量で0.1〜2.5g/m2 有し、もう一方
の面(II)はその上層に金属クロム換算で5〜400m
g/m2 の付着量のクロメート処理を施し、さらに、数
平均分子量が2000以上のエピクロールヒドリン−ビ
スフェノールA型エポキシ樹脂をベースとする樹脂組成
物とシリカとの混合物層(B)を乾燥重量にして0.2
〜3.0g/m2 有することを特徴とする片面が耐低温
チッピング性に優れ、他の面が耐食性に優れた表面処理
鋼板を提供するものである。
【0022】ここで混合物層(A)におけるシリカの含
有量が50重量%以下であるのが好ましい。
【0023】また、一方の面(I)における亜鉛系めっ
き層が、第1層としてニッケル含有率が16wt%以上
の亜鉛−ニッケルめっき層を付着量0.05g/m2
1.0g/m2 有し、第2層としてニッケル含有率が9
〜15wt%の亜鉛−ニッケルめっき層を有するのが好
ましい。
【0024】以下、本発明について詳細に説明する。
【0025】本発明は、前述の知見を得ることによりな
されたものであるが、この点について、図面を参照して
より詳細に説明する。
【0026】図2に示されるように、従来の自動車車体
用両面表面処理鋼板では、冷延鋼板10上に、例えば亜
鉛−ニッケルめっき等のめっき層12を形成し、めっき
層12の上層に塗装、つまり、カチオン電着塗装16、
中塗り塗装18、上塗り塗装20の密着性を向上するた
めのリン酸塩処理によって形成されるリン酸塩皮膜14
を有する。また、さらに高耐食性を付与するため、車体
内面にあたる側にクロメート層24、有機被覆層26を
有する鋼板もある。
【0027】このような構成を有する従来の表面処理鋼
板では、耐低温チッピング性が低く、前述のような各種
の改良方法が提案されているが、いずれの方法でも所望
の耐低温チッピング性が得られないのは前述の通りであ
り、車体内面側の裸耐食性のみを向上させても車体外面
側の傷部からの腐食が進行するため良好な自動車用表面
処理鋼板が得られない。
【0028】ここで、本発明者らは、鋭意検討を重ねた
結果、従来の表面処理鋼板では塗装下地処理として周知
のリン酸塩処理によってリン酸塩皮膜14を形成するこ
とにより、かえって耐低温チッピング性が低下している
ことを見いだした。
【0029】その理由は明らかでないが、以下の通りと
考えられる。
【0030】通常行われているリン酸塩処理では、その
上層に塗料を強固に付着することができる。これは、リ
ン酸塩皮膜14においてはリン酸塩の結晶が大きく、表
面粗度が大きくなるために、塗料が物理的なアンカー効
果を得られるためであると考えられている。従って、こ
のリン酸塩の結晶により電着塗装とめっきとの接触面積
が増大するために塗料の残留応力伝達が促進され、めっ
きに歪が生じ、めっき密着性が低下するものと思われ
る。
【0031】ただし、単にこのリン酸塩皮膜を形成せ
ず、電着塗装16、中塗り塗装18、上塗り塗装20等
を形成すると、十分な密着性、特に耐水二次密着性を得
ることができず、自動車用鋼板、特に外装用の鋼板とし
て実用することは不可能であるのは周知の通りである。
【0032】また、めっき上にクロメートまたはリン酸
塩処理皮膜層を設け、さらにTg点55℃以下で、かつ
焼付け硬化後の常温における硬度が鉛筆硬度のH〜2B
である有機樹脂皮膜層を0.1〜2.0μm設ける鋼板
についてもめっき剥離はないものの樹脂−電着塗膜間の
密着性の低下に起因すると思われる低温チッピング時の
塗膜剥離が生じ、やはり実用的でない。
【0033】これに対して、本発明の表面処理鋼板は、
このリン酸塩皮膜14を実質的に有さず、しかも、少な
くとも一方の面に耐低温チッピング性および耐水二次密
着性を向上するための所定の有機被覆層30、すなわ
ち、ガラス転移温度が60〜120℃の樹脂またはガラ
ス転移温度が60〜120℃の混合物層を付着量が乾燥
重量で0.1〜2.5g/m2 有する。
【0034】つまり、本発明者らは、さらなる鋭意検討
の結果、めっき層12上の有機被覆層30を形成するこ
とにより、各塗料層の残留応力のめっき層への伝達を緩
和し、めっき剥離のみならず、塗膜剥離も抑えることが
可能であることを見いだした。
【0035】しかも、このような有機被覆層30および
所定のクロメート皮膜を有することにより、仮にリン酸
塩処理を行ったとしても、実質的にリン酸塩皮膜が形成
されないことも同時に見いだした。なお、実質的にリン
酸塩皮膜が形成されないとは、0.2g/m2 以下の場
合を意味する。
【0036】また、本発明の表面処理鋼板では、有機被
覆層30の下層として、クロメート処理を施すことによ
って優れた耐食性、特に耐水二次密着性を得ることがで
きる。
【0037】さらに、もう一方の側にも亜鉛系めっきを
施し、金属クロム換算で5〜400mg/m2 の付着量
のクロメート処理を施し、さらに、数平均分子量が20
00以上のエピクロールヒドリン−ビスフェノールA型
エポキシ樹脂をベースとする樹脂組成物とシリカとの混
合物を乾燥重量にして0.2〜3.0g/m2 施すこと
により、車体内面の塗装のつき回りにくい部分の耐食性
を確保し、車体内面側からの耐孔あき腐食性も向上する
ことができ、先程の車体外面側の優れた耐低温チッピン
グ性とあわせて、自動車車体外板用鋼板として非常に優
れた性能を発揮することができる。
【0038】以下、本発明を具体的に説明する。
【0039】本発明の表面処理鋼板は、鋼板10の両面
に亜鉛系めっきからなるめっき層12および22を有す
る。本発明における亜鉛系めっきとは特に限定はない
が、純亜鉛めっき、Zn−Ni、Zn−Feのような二
元系合金めっき、Zn−Ni−Cr、Zn−Co−Cr
のような三元系合金めっき、Zn−Co−Cr−Al2
3 のような複合分散めっき等種々のめっきがあげら
れ、めっきの形成方法も特に限定はなく、電気めっき、
溶融めっき等各種の方法が適用可能である。
【0040】また、適用するめっきが亜鉛−ニッケルめ
っきである場合には、鋼板10とめっき層12の密着性
をより良好なものにするために、めっき層の下方はNi
含有率が16wt%以上のZn−Niめっきを付着量で
0.05〜1.0g/m2 有するように形成されるのが
好ましい。その上層としてはニッケル含有率が9〜15
wt%の亜鉛−ニッケルめっき層を有するようにするの
が好ましい。
【0041】また、このような亜鉛系めっき層の上に、
金属クロム換算で下記の付着量のクロメート皮膜24お
よび28を施すことにより、このようなクロメート皮膜
24および28を有することによって良好な塗料密着性
および耐食性を得ることができる。
【0042】本発明の表面処理鋼板において、クロメー
ト皮膜28の付着量は金属クロム換算で400mg/m
2 以下である。400mg/m2 超になるとクロム溶出
が起こるため、環境上好ましくない。また、クロメート
皮膜24の付着量は金属クロム換算で5〜400mg/
2 である。5mg/m2 未満では、均一なクロメート
皮膜24の形成が困難であり、裸耐食性が不足する。ま
た、400mg/m2 を越えるとクロム溶出がおこるた
め環境上好ましくない。
【0043】クロメート皮膜24および28の形成方法
としては特に限定はなく、塗布型、電解型、反応型等周
知のクロメート処理の方法はいずれも適用可能である。
また、クロメート処理液には、必要に応じ、シリカ等の
各種の添加剤を加えてもよい。
【0044】本発明の表面処理鋼板においては、クロメ
ート層28の上層に、ガラス転移点が60〜120℃の
樹脂からなる有機被覆30または、被膜としてのガラス
転移点が60〜120℃の樹脂とシリカの混合物からな
る有機被覆層30を有する。このような構成にすること
により、非常に良好な耐低温チッピング性および耐水二
次密着性を得ることができる。この有機被覆層30に
は、必要に応じて添加剤を加えてもよい。
【0045】本発明に適用される有機被覆層30のガラ
ス転移点の範囲は樹脂単独の場合、樹脂とシリカの混合
物層の場合ともに被膜として60〜120℃である。6
0℃未満では、各塗料層の残留応力がめっき層12にか
かることがなく、また衝撃の伝達が有機被覆層30でと
まるため、鋼板素地からの剥離が生じることはないが、
有機被覆層30とその上層に形成される塗膜層との間の
密着性が低く、この両者の剥離が生じ、良好な表面処理
鋼板を得ることができないのは前述の通りである。一
方、有機被覆層30のガラス転移点が120℃を越える
と、塗料の粘度が高い上に各種の溶媒への溶解性も低下
するため、均一に塗布することが困難であり、やはり良
好な表面処理鋼板を得ることが出来ない。
【0046】本発明の有機被覆層30に適用される樹脂
としては、上記ガラス転移点を有するものなら各種のも
のが適用可能であり、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ア
クリル樹脂、フェノール樹脂、ポリオレフィン樹脂等が
例示される。
【0047】なお、上記の樹脂は2種以上混合して使用
してもよい。
【0048】また、ガラス転移点が本発明の範囲未満の
樹脂であっても、各種の硬化剤や変性剤等の添加剤を加
え、ガラス転移点を60℃以上にして適用することが可
能である。本発明において、この有機被覆層30の付着
量は乾燥重量で0.1〜2.5g/m2 である。有機被
覆層30の付着量が0.1g/m2 未満では、クロメー
ト皮膜28上に有機被覆層30を均一に形成することが
困難であり、クロムが溶出する。また、有機被覆層30
の付着量が2.5g/m2 を越えると、この有機被覆層
30の形成の後に通常行われる電着塗装16が行えなく
なる場合がある。また行えても不均一な被膜になるおそ
れがある。なお、前述のように複数の樹脂を混合して使
用する際には、全体量を0.1〜2.5g/m2 とする
ものである。
【0049】このような有機被覆層30の形成方法には
特に限定はなく、適用する樹脂に応じた各種の溶媒を用
い、これに樹脂を溶解して、スプレーコート、ディップ
コート、ロールコート等の方法によって塗布した後、加
熱又は紫外線照射のような通常の乾燥する方法によれば
よい。
【0050】また、本発明の有機被覆層26は、クロメ
ート層24の上層に数平均分子量が2000以上のエピ
クロールヒドリン−ビスフェノールA型エポキシ樹脂を
ベースとする樹脂組成物とシリカとの混合物を乾燥重量
にして0.2〜3.0g/m 2 施す。このような構成に
することにより、裸耐食性を格段に向上させることがで
きる。エポキシ樹脂としてはグリシジルエポキシ、グリ
シジルアミン、脂肪族エポキサイド、脂環族エポキサイ
ド等があるが強靭性、耐食性の見地から本発明鋼板にお
いてはエピクロールヒドリン−ビスフェノールA型エポ
キシ樹脂を用いる。その具体例としてはエピコート10
10、1009、1007、1004(いずれもシェル
化学製)等の市販品が挙げられる。
【0051】このような樹脂組成物の平均分子量Mnと
しては2000以上が望ましい。シリカは腐蝕生成物の
安定化に寄与しているが、樹脂は、このシリカのバイン
ダーの機能をもっている。樹脂の数平均分子量が200
0未満であると樹脂長が短くなり、樹脂が編目状構造を
取らないために、シリカのバインダーとしての機能を果
たさず、耐食性および塗料密着性を著しく損ない、ま
た、塗料中でのシリカとの相溶性も劣化する。また、数
平均分子量の上限は特に定めないが100000を越え
ると、被膜の抵抗が高まり、電着塗装性およびスポット
溶接性を阻害する場合もあるので好ましくは10000
0以下とする。
【0052】また、望ましくはエポキシ樹脂末端のオキ
シラン環にジアルカノールアミンを付加する。これは、
反応性の高い一級水酸基をふやすことにより、シリカと
の結合をおこりやすくすることを目的としている。これ
に用いるジアルカノールアミンとしては、たとえばジエ
タノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブタノール
アミン等が挙げられる。
【0053】さらに、必要に応じて、上記樹脂組成物の
一部をウレタン変性することも可能であるし、また、塗
料中にメラミンやベンゾグアナミンのようなアミン系樹
脂を架橋剤として配合してもよい。
【0054】以上のような構成を有する本発明の表面処
理鋼板は、有機被覆層30上に、電着塗装16、中塗り
塗装18、上塗り塗装20等が施され、また、有機被覆
層26上には電着塗装16が施され、自動車用鋼板等の
各種の用途に適用される。なお、本発明の表面処理鋼板
は、リン酸塩皮膜を有さなくても優れた塗膜密着性を有
することは前述の通りである。
【0055】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例をあげ、本発明
をより詳細に説明する。
【0056】(実施例1)冷延鋼板を酸洗、脱脂後、め
っきを行い、めっき鋼板を作製した。なお、亜鉛−ニッ
ケルめっきのうちいくつかのものは、めっき初期の付着
量0.3g/m2 の部分のNi含有率が16%以上にな
るようめっき初期を低電流密度で行い、ついで電流密度
をあげて平均Ni含有率が12%のZn−Niめっきを
行うめっき密着性対策を施した。作製しためっき鋼板の
めっき種、目付量、めっき密着性対策の有無を第3表に
示す。
【0057】このようにして作製しためっき鋼板表面に
クロメート処理液をロールコーターで塗布した後、電気
炉で乾燥することによりクロメート処理を行った。この
ようにして作製したいくつかの鋼板表面の一方の面に、
第1表の樹脂を用い、もう一方の面に第2表の樹脂を用
いて有機被覆層を形成した。なお有機被覆層の形成は、
適用する樹脂をそれに応じた溶媒に溶解し、適宜シリカ
を添加したものをバーコーターによって塗布した後、電
気炉で乾燥することによって行った。形成した有機被覆
層の樹脂種、シリカ含有率、ガラス転移温度、樹脂塗布
量を第3表に示す。
【0058】なお、サンプルのうちいくつかのものは、
リン酸塩処理を行った。処理条件は下記に示す通りであ
る。
【0059】(リン酸塩処理)通常のアルカリ脱脂を行
い、続いて、リン酸塩処理(日本パーカライジング社製
パルボンド3020に120秒浸漬)を行った。リン酸
塩処理の有無およびリン酸塩皮膜の有無を第3表に示
す。なお、リン酸塩皮膜は、付着量0.2g/m2 以上
を皮膜有り、未満を皮膜無しとした。ここで得られた各
サンプルの電着塗装前のアルカリ脱脂工程前後のクロム
溶出量を測定した。測定は、脱脂前後の鋼板のクロム付
着量を蛍光X線分析によって測定し、その差をクロム溶
出量とみなして評価した。評価基準は下記の通りであ
る。 ◎ 1mg/m2 以下 ○ 1〜2mg/m2 未満 △ 2〜5mg/m2 未満 × 5mg/m2 越える 結果は、第3表に示す。
【0060】(耐食性)以上のようにして作製した表面
処理鋼板の一方の面の裸耐食性を調査した。下記の条件
を1サイクルにする複合サイクル腐食試験を行い、赤錆
の発生するサイクル数で評価した。
【0061】このようにして作製した表面処理鋼板の一
方の面に、パワートップU−600(日本ペイント
(株)製)を電着電圧250V、浴温28℃、180s
ec通電し、170℃×20分焼き付けた。電着塗装後
のサンプルに、さらに自動車用中塗り塗装、上塗り塗装
をスプレー塗装した。このようにして得られた各サンプ
ルを用い、ダイヤモンドショット試験および耐水二次密
着性試験を行った。
【0062】(ダイヤモンドショット試験) ダイヤモンド:10mg(±1mg) 試験温度:−20℃ ショットスピード:210km/h 上記の各条件においてダイヤモンドショット試験を行っ
た。試験後は、テープによって剥離試験を行った。評価
方法は、ショット10点の剥離面積の合計面積である。
なお、210km/hのショットスピードは日本国内に
於ける通常の試験条件よりも厳しいものである(通常の
ショットスピード170km/h以下)。
【0063】(耐水二次密着性試験) 各サンプルを40℃の温水に240時間浸漬した。各サ
ンプルを取り出したのち、10分以内に碁盤目状に2m
m間隔で100個、カッターナイフを用いて傷をつけ、
セロハンテープを用いて剥離試験を行った。評価は、剥
離個数を測定することによって行った。 ◎ 剥離無し ○ 剥離個数1以下 △ 剥離個数2〜10 × 剥離個数11以上 各試験の結果は、第3表に示す。
【0064】第 1 表 樹脂種
【0065】第 2 表 樹脂種
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】上記第3表に示される結果より、本発明の
表面処理鋼板によれば、外面に適用する側に有機被覆を
有さない従来の表面処理鋼板に比べ、はるかに優れた耐
低温チッピング性を有することがわかる。
【0072】さらに、本発明の表面処理鋼板は、もう一
方の面にも有機被覆を有するため、優れた耐食性を示
す。
【0073】
【発明の効果】本発明の表面処理鋼板は耐低温チッピン
グ性に優れているので、自動車車体用をはじめ広く利用
することができ、特に自動車外板として特に好適に適用
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の耐低温チッピング性に優れる表面処理
鋼板を概念的に示す図である。
【図2】従来の表面処理鋼板を概念的に示す図である。
【符号の説明】
10 冷延鋼板 12 亜鉛系めっき層 14 リン酸塩皮膜 16 電着塗装 18 中塗り塗装 20 上塗り塗装 22 亜鉛系めっき層 24 クロメート皮膜 26 有機被覆層 28 クロメート皮膜 30 有機被覆層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 向 亮 一 千葉県千葉市川崎町1番地 川崎製鉄株 式会社技術研究本部内 (72)発明者 木 村 肇 千葉県千葉市浜野町1025番地 川鉄鋼板 株式会社製品研究所内 (56)参考文献 特開 平2−38583(JP,A) 特開 平2−43040(JP,A)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 両面に亜鉛系めっき層を有し、一方の面
    (I)はその上層に金属クロム換算で400mg/m2
    以下の付着量のクロメート処理を施しまたは施さずに、
    その上層にガラス転移温度が60〜120℃の樹脂層を
    付着量が乾燥重量で0.1〜2.5g/m2 有し、もう
    一方の面(II)はその上層に金属クロム換算で5〜4
    00mg/m2 の付着量のクロメート処理を施し、さら
    に、数平均分子量が2000以上のエピクロールヒドリ
    ン−ビスフェノールA型エポキシ樹脂をベースとする樹
    脂組成物とシリカとの混合物層を乾燥重量にして0.2
    〜3.0g/m2有することを特徴とする片面が耐低温
    チッピング性に優れ他の面で耐食性にすぐれた自動車用
    表面処理鋼板。
  2. 【請求項2】 両面に亜鉛系めっき層を有し、一方の面
    (I)はその上層に金属クロム換算で400mg/m2
    以下の付着量のクロメート処理を施しまたは施さずに、
    その上層に樹脂とシリカとを含有しガラス転移温度が6
    0〜120℃の混合物層(A)を付着量が乾燥重量で
    0.1〜2.5g/m2 有し、もう一方の面(II)は
    その上層に金属クロム換算で5〜400mg/m2 の付
    着量のクロメート処理を施し、さらに、数平均分子量が
    2000以上のエピクロールヒドリン−ビスフェノール
    A型エポキシ樹脂をベースとする樹脂組成物とシリカと
    の混合物層(B)を乾燥重量にして0.2〜3.0g/
    2 有することを特徴とする片面が耐低温チッピング性
    に優れた他の面が耐食性に優れた自動車用表面処理鋼
    板。
  3. 【請求項3】 前記混合物層(A)におけるシリカの含有
    量が50重量%以下である請求項記載の耐低温チッピ
    ング性に優れる自動車用表面処理鋼板。
  4. 【請求項4】 前記一方の面(I)における亜鉛系めっき
    層が、第1層としてニッケル含有率が16wt%以上の
    亜鉛−ニッケルめっき層を付着量0.05g/m2
    1.0g/m2 有し、第2層としてニッケル含有率が9
    〜15wt%の亜鉛−ニッケルめっき層を有する請求項
    1〜3のいずれかに記載の片面が耐低温チッピング性に
    優れた他の面が耐食性に優れた自動車用表面処理鋼板。
JP3129757A 1990-06-04 1991-05-31 耐低温チッピング性に優れる自動車用表面処理鋼板 Expired - Fee Related JP2554212B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3129757A JP2554212B2 (ja) 1990-06-04 1991-05-31 耐低温チッピング性に優れる自動車用表面処理鋼板

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP14599490 1990-06-04
JP2-145994 1990-06-04
JP2-243049 1990-09-13
JP24304990 1990-09-13
JP3129757A JP2554212B2 (ja) 1990-06-04 1991-05-31 耐低温チッピング性に優れる自動車用表面処理鋼板

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH04226345A JPH04226345A (ja) 1992-08-17
JP2554212B2 true JP2554212B2 (ja) 1996-11-13

Family

ID=27315991

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP3129757A Expired - Fee Related JP2554212B2 (ja) 1990-06-04 1991-05-31 耐低温チッピング性に優れる自動車用表面処理鋼板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2554212B2 (ja)

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0243040A (ja) * 1988-05-31 1990-02-13 Kawasaki Steel Corp 耐食性に優れた潤滑樹脂処理鋼板
JP2741599B2 (ja) * 1988-07-29 1998-04-22 日本鋼管株式会社 複層被膜鋼板

Also Published As

Publication number Publication date
JPH04226345A (ja) 1992-08-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0453374B1 (en) Improved corrosion-resistant surface coated steel sheet
EP0385362B1 (en) Steel plate with organic coating having improved corrosion resistance
US5147729A (en) Steel plate with organic coating having improved corrosion resistance in as-worked state
US4970126A (en) Highly corrosion-resistant, multi-layer coated steel sheets
US5110689A (en) Multi-layered steel sheets
JPH0939157A (ja) プレス成形性および耐孔あき腐食性に優れた有機複合被覆鋼板
JP2554212B2 (ja) 耐低温チッピング性に優れる自動車用表面処理鋼板
JPH1043677A (ja) 耐食性、耐パウダリング性及び塗装性に優れた溶接可能なプレプライムド鋼板
JPH0999517A (ja) 潤滑処理鋼板とそれに用いる皮膜形成性組成物
JP2621751B2 (ja) 自動車用表面処理鋼板
JPH02134238A (ja) カチオン電着塗装性にすぐれた有機被覆鋼板
JPH05293433A (ja) 塗装後の性能に優れる表面処理鋼板
KR20090070024A (ko) 수지 생략형 크롬 프리 표면처리 강판, 그 제조 방법 및이를 위한 크롬 프리 처리액
JPH0860380A (ja) 電着塗装性と塗料安定性に優れた有機複合被覆鋼板の製造方法
JPH0938569A (ja) 耐疵性および耐食性に優れた亜鉛・樹脂系表面処理鋼板
JPH07912A (ja) 高耐食性有機複合被覆金属板
JPH05115838A (ja) 耐食性および溶接性に優れる自動車用表裏異種表面処理鋼板
JP2988822B2 (ja) 電着塗装性と耐食性に優れた有機複合被覆鋼板およびその製造方法
JP3909016B2 (ja) 非クロム型処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法
JPH06316771A (ja) 溶接性、耐食性および鮮映性に優れた有機複合被覆鋼板
JPH0471666A (ja) 耐低温チッピング性に優れた表面処理鋼板
JPH08267654A (ja) 耐傷付き性に優れた塗装鋼板
JP3304235B2 (ja) 耐食性、耐パウダリング性、塗装後鮮映性、塗装性及び接着性に優れたプレプライムド鋼板
JP3195510B2 (ja) 薄膜塗装型鋼板用塗料組成物
JPH04126235A (ja) 高耐食性自動車用表裏異種表面処理鋼板

Legal Events

Date Code Title Description
A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 19951024

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 19960709

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees