JP2553496Y2 - 機械式車両用ディスクブレーキ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、機械式の作動機構にて
制動作用を行なう車両用のディスクブレーキに係り、詳
しくは機械式作動機構に設けられるカムシャフトに固設
したブレーキレバーのリターンスプリングとの当接面に
おける発錆の防止及びブレーキレバーの作動方向の回動
量を規制する構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】車両の後輪用ブレーキとして搭載される
ディスクブレーキは、液圧マスタシリンダに発生した液
圧で作動する液圧式作動機構と、ハンドブレーキレバー
の牽引によって作動する機械式作動機構とを組合わせた
いわゆるパーキングブレーキ付きが用いられる。

【０００３】該機械式車両用ディスクブレーキは、例え
ば実開平３−３８４３１号公報に示されているように、
キャリパ内に収納したパッド押動部材をディスク軸方向
に押動するカムシャフトのキャリパから突出する突出軸
部に、該カムシャフトを回動するブレーキレバーを固設
するとともに、該突出軸部にコイル状のリターンスプリ
ングを外嵌し、該リターンスプリングの一端ををキャリ
パに植設した係止ピンに、他端をブレーキレバーにそれ
ぞれ係合して、ブレーキレバーの非作動方向に付勢し、
ブレーキレバーに形成した突起を前記係止ピンに当接し
てブレーキレバーの非作動方向の回動を規制する。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】ところが、前記公報に
提示されている従来の機械式車両用ディスクブレーキ
は、パーキングブレーキの作動時にブレーキレバーが回
動すると、ブレーキレバーの表面にリターンスプリング
が接触しているので、ブレーキレバーのリターンスプリ
ング接触面に傷が付き、錆が発生して耐久性が劣るとい
う問題がある。

【０００５】本考案は、このような実情に鑑みてなされ
たもので、その目的とするところは、ブレーキレバーの
作動によるリターンスプリング接触面の錆の発生を防止
し、また、同時にカムシャフトの作動方向の回動量を規
制して、ハンドブレーキレバーが過大に引かれてもカム
シャフトによって押動されるプッシュロッドがディスク
軸に対して傾くことがなく、作動の円滑化を図った機械
式車両用ディスクブレーキを提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本考案は、キャリパ内に
収納したパッド押動部材をディスク軸方向に押動するカ
ムシャフトのキャリパから突出する突出軸部に、該カム
シャフトを回動するブレーキレバーを固設するととも
に、該突出軸部にコイル状のリターンスプリングを外接
し、該リターンスプリングの一端をキャリパに植設した
係止ピンに、他端をブレーキレバーにそれぞれ係合し
て、ブレーキレバーの非作動方向に付勢し、ブレーキレ
バーに形成した突起を前記係止ピンに当接してブレーキ
レバーの非作動方向の回動を規制する機械式車両用ディ
スクブレーキにおいて、前記ブレーキレバーとリターン
スプリングとの間に防錆材からなるプレートを、ブレー
キレバーと一体的に回動可能に介装し、該プレートに、
前記係止ピンに当接してブレーキレバーの作動方向の過
回動を規制する突起を設けたことを特徴とする。

【０００７】

【作用】かかる構成によれば、リターンスプリングは、
防錆材からなるプレートと接触するので、ブレーキレバ
ーの作動によるリターンスプリング接触面の錆の発生を
防止できる。また、ブレーキレバーの作動方向の過回動
をプレートに形成した突起を、キャリパに植設した係止
ピンに当接させて規制する。

【０００８】

【実施例】以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明
する。

【０００９】図１乃至図３は本考案の第１実施例を示す
もので、後輪用のディスクブレーキ１は、液圧式作動機
構２と機械式作動機構３とを備えるパーキングブレーキ
付きで、ディスクロータ４の一側で車体に固設されるブ
ラケット５に、キャリパ６が一対の摺動ピン７，７を介
してディスク軸方向へ移動可能に支持されている。

【００１０】ディスクロータ４の両側には、一対の摩擦
パッド８，８が対向配置され、両摩擦パッド８，８を挟
んで配置されるキャリパ６の作用部６ａ及び反作用部６
ｂは、ディスクロータ４と摩擦パッド８，８とを跨ぐブ
リッジ部６ｃにて連結されている。

【００１１】作用部６ａには、大径孔９ａと小径の連通
孔９ｂとを連ねたシリンダ孔９がディスク軸方向に形成
されており、ディスクロータ４側に開口する大径孔９ａ
には、液圧式作動機構２としてコップ状のピストン１０
が液密且つ移動可能に内挿され、大径孔９ａの底部とピ
ストン１０との間に液圧室１１を画成している。

【００１２】ピストン１０は、液圧室１１に供給される
液圧マスタシリンダからの作動液の液圧上昇によりディ
スクロータ４方向へ移動し、一方の摩擦パッド８をディ
スクロータ４の一側面に押圧し、次にこの反作用で、キ
ャリパ６が作用部６ａ側へ移動して、反作用部６ｂが、
他方の摩擦パッド８をディスクロータ４の他側面に押圧
し、ディスクロータ４を両摩擦パッド８，８で挾圧して
制動作用を行なう。

【００１３】一方、機械式作動機構３は、運転者のハン
ドブレーキ操作にて制動作用を行なうパーキングブレー
キ用で、この機械式作動機構３は、アジャストボルトと
アジャストナットとを組合わせたアジャスタ１２と、大
径孔９ａの底部側に配置されるスリーブピストン１３
と、シリンダ軸に直交して配設されるカムシャフト１４
と、該カムシャフト１４及びスリーブピストン１３との
間に介装されるプッシュロッド１５とを有している。

【００１４】カムシャフト１４は、軸受孔１６内に回動
可能に配置される挿通軸部１４ａと、軸受孔１６から突
出する突出軸部１４ｂとからなっており、突出軸部１４
ｂには、回動用のブレーキレバー１７と、例えばＳＵＳ
材料などの防錆材からなるプレート１８がナット１９に
て固設されている。

【００１５】ブレーキレバー１７は、カムシャフト１４
の突出軸部１４ｂに平面部を対向して形成した係合部１
４ｃに、挿通孔１７ａに平面部を対向して形成した係合
部１７ｂを係合してカムシャフト１４に一体回動可能に
固設されている。

【００１６】また、プレート１８は、ブレーキレバー１
７の外側に配置され、ナット１９のワッシャ機能を有
し、ブレーキレバー１７と同様に、突出軸部１４ｂの係
合部１４ｃに、挿通孔１８ａに平面部を対向して形成し
た形成した係合部１８ｂを係合してカムシャフト１４に
一体回動可能に固設されている。

【００１７】さらに、ナット１９には、プレート１８の
外側に、コイル状のリターンスプリング２０がプレート
１８に接触して外嵌され、該リターンスプリング２０
は、一端２０ａをキャリパ６の作用部６ａに植設した係
止ピン２１に、他端２０ｂをブレーキレバー１７のワイ
ヤ連結腕１７ｃに形成した係合孔１７ｄにそれぞれ係合
し、ブレーキレバー１７を非作動方向（図１の矢印Ａ方
向）へ付勢している。

【００１８】また、ブレーキレバー１７には、前記係止
ピン２１に当接して非作動方向の回動を規制する突起１
７ｅが設けられ、ワイヤ連結腕１７ｃにはブレーキワイ
ヤ２２が連結されており、非制動時のブレーキレバー１
７は、リターンスプリング２０の弾発力によって、図１
に示す如く、ブレーキレバー１７の突起１７ｅを係止ピ
ン２１に当接した後退限位置にある。

【００１９】さらに、プレート１８には、前記係止ピン
２１に当接してブレーキレバー１７の作動方向（図１の
矢印Ｂ方向）の過回動を規制する突起１８ｃが設けられ
ている。

【００２０】上述のように構成された機械式作動機構３
は、運転者のハンドブレーキ操作にてブレーキワイヤ２
２が牽引されると、ブレーキレバー１７とカムシャフト
１４が図１の矢印Ｂ方向へ一体に回動して、カムシャフ
ト１４の回転力がプッシュロッド１５にて推力に変換さ
れ、スリーブピストン１３をディスクロータ４方向へ押
動し、スリーブピストン１３とアジャスタ１２とピスト
ン１０がディスクロータ４側へ一体に前進し、両摩擦パ
ッド８，８を、前記液圧作動と同様にディスクロータ４
に押圧して、制動作用を行なう。

【００２１】また、ブレーキワイヤ２２の牽引を解除す
ると、ブレーキレバー１７はリターンスプリング２０の
復元力にて図１の矢印Ａ方向へ回動して後退限位置に復
帰し、スリーブピストン１３とアジャスタ１２とピスト
ン１０が後退して制動作用が解除される。

【００２２】上記ブレーキレバー１７の回動により、プ
レート１８とリターンスプリング２０とが擦れ合い、プ
レート１８に傷がつくが、プレート１８が防錆材で形成
されているので、プレート１８に錆が発生せず、耐久性
を増すことができる。

【００２３】また、ハンドブレーキレバーが過大に引か
れることがあっても、プレート１８に形成された突起１
８ｃが係止ピン２１に当接してブレーキレバー１７の過
回動を規制するので、カムシャフト１４が過回動するこ
とがなく、従って、カムシャフト１４によって押動され
るプッシュロッド１５の傾きが防止され、摩擦パッド８
に対する押込み量が一定に保たれるので、円滑な作動を
安定して行なうことができる。

【００２４】図４はブレーキレバー１７とリターンスプ
リング２０との間に介装されるプレートの第２実施例を
示すもの、防錆材により形成されるプレート３０は、中
心にカムシャフト１４の突出軸部１４ｂに嵌装される円
形の挿通孔３０ａが形成されているとともに、ブレーキ
レバー１７に形成した非作動方向の回動を規制する突起
１７ｅに嵌装させてプレート３０をブレーキレバー１７
と一体に回転させるためのコ字形の嵌合突起３０ｂが突
設されているまた、プレート３０には、ブレーキレバー
１７の外周面に当接する案内片３０ｃと、前記実施例に
示した係止ピン２１に当接してブレーキレバー１７の作
動方向の回動を規制する突起３０ｄが設けられている。

【００２５】このプレート３０は、挿通孔３０ａが円形
であるため、嵌合突起３０ｂをブレーキレバー１７の突
起１７ｅに嵌合させればよく、組付けが容易であるとと
もに、突起１７ｅの係止ピン２１への当接面が防錆材に
より形成されるプレート３０の嵌合突起３０ｂにより覆
われる。

【００２６】従って、ブレーキレバー１７の突起１７ｅ
が係止ピン２１への当接作用によって傷付くことがな
く、発錆を防止するため更に耐久性を増すことができ
る。

【００２７】

【考案の効果】本考案は以上説明したように、ブレーキ
レバーとリターンスプリングとの間に防錆材からなるプ
レートを介装したことにより、ブレーキレバーの作動に
よってプレートのリターンスプリング接触面がリターン
スプリングとの擦れによって傷ついてもプレートに錆が
発生せず、耐久性を増すことができる。

【００２８】更に、プレートにキャリパに植設した係止
ピンに当接してブレーキレバーの作動方向の過回動を規
制する突起を設けたことにより、カムシャフトの作動方
向の回動量を規制してハンドブレーキレバーが過大に引
かれてもカムシャフトが過回動によって、カムシャフト
によって押動されるプッシュロッドがディスク軸に対し
て傾くことがなく、作動の円滑化を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 ブレーキレバー取付部の正面図

【図２】 カムシャフト、ブレーキレバー、プレートの
分解斜視図

【図３】 ディスクブレーキの一部断面平面図

【図４】 プレートの第２実施例を示す分解斜視図

【符号の説明】

１…ディスクブレーキ、４…ディスクロータ、６…キャ
リパ、８…摩擦パッド、１４…カムシャフト、１４ｂ…
突出軸部、１７…ブレーキレバー、１８，３０…プレー
ト、１８ｃ，３０ｄ…突起、２０…リターンスプリン
グ、２１…係止ピン、

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 キャリパ内に収納したパッド押動部材を
   ディスク軸方向に押動するカムシャフトのキャリパから
   突出する突出軸部に、該カムシャフトを回動するブレー
   キレバーを固設するとともに、該突出軸部にコイル状の
   リターンスプリングを外嵌し、該リターンスプリングの
   一端をキャリパに植設した係止ピンに、他端をブレーキ
   レバーにそれぞれ係合してブレーキレバーの非作動方向
   に付勢し、ブレーキレバーに形成した突起を前記係止ピ
   ンに当接してブレーキレバーの非作動方向の回動を規制
   する機械式車両用ディスクブレーキにおいて、前記ブレ
   ーキレバーとリターンスプリングとの間に防錆材からな
   るプレートを、ブレーキレバーと一体的に回動可能に介
   装し、該プレートに、前記係止ピンに当接してブレーキ
   レバーの作動方向の過回動を規制する突起を設けたこと
   を特徴とする機械式車両用ディスクブレーキ。