JP2552814Y2 - 金属板屋根の継手構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、通常長尺である金属板
を複数枚並敷し、各板の幅方向の端部を互に接合して１
枚の面材とし、その面材の側部に構造物の壁などの立上
り面に取付けるために役物材を設けて防水面材とした金
属板屋根において、継手を防水面材の間に設けて防水面
材において主として役物材の熱伸縮を十分に吸収しうる
ようにした金属板屋根の継手構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】屋根などを金属板で作る場合、長尺の金
属板を複数枚並敷して葺成するのが普通で、金属板とし
てトタン板とかカラー塗料焼付鉄板を用いる場合には、
一般の家屋に使用されることが多いこともあって、金属
板相互の接続構造も簡単なものである。

【０００３】最近その金属板としてステンレス鋼板が盛
んに使われるようになっており、ステンレス鋼板は耐久
性に富み、塗り替えなどの手間もかからず、保守が簡単
であり、美観性もよいというところから、比較的大型の
建造物の屋根に使われるようになってきている。そし
て、そのさいには水密をよくし、かつ気密にするため、
ステンレス鋼板の相対する端部をシーム溶接することが
行われている。

【０００４】ところで、その場合ステンレス鋼は熱膨張
係数が比較的大きいし、また前述したようにステンレス
鋼板は比較的大型の建造物の屋根に使われるときには長
尺のものが使われることになるから、屋根におけるステ
ンレス鋼板の熱による伸縮が大きな問題となる。

【０００５】このため、近時、構造物の屋根のような外
表面などにステンレス鋼板をシーム溶接して水密かつ気
密にし、しかも熱による伸縮を自在にした被覆金属外囲
体が開発されている。

【０００６】特に、構造物の立上り部を大きな角部を有
する長尺の役物材を含む長尺の被覆金属外囲体では、そ
の長手方向に対しての熱伸縮で極めて大きな熱応力が生
じ、くり返し応力により変形したり、破損する等の問題
があり、特に役物材は垂直状部を有するため、角部座屈
抵抗が他部より小さいため破損することが多かった。

【０００７】その解決手段の一つとして、特開昭６１−
２５０２５４号公報では、前記したような構造の役物材
を有する一部被覆金属外囲体同士を適宜の間隔をもたせ
て対向させ、この間隔部は、側面からみて扁平Ｌ字状の
底部の幅方向両側に立上げ縁を形成した中間材を挿入し
て、その立上げ縁を役物材の屈曲部などに重合させ、シ
ーム溶接して長手方向伸縮継手部を形成することが示さ
れている。

【０００８】

【考案が解決しようとする課題】特開昭６１−２５０２
５４号公報では、被覆金属外囲体の壁取合においても、
熱応力等に対応できるようにし、特に役物材の長手方向
を伸縮自在に構成し、その継手部を水密且つ気密にで
き、さらに一部被覆金属外囲体同士の取付施工が極めて
簡単にできるようにするために、中間材を設けるように
しているが、前記屈曲部及びその幅方向両側に形成する
立上げ縁の形状が現場加工のため常に十分な間隔を確保
することは困難なため、不十分な間隔が２ケ所になった
というのみであって、なんら解決するものではない。

【０００９】本考案は、大面積防水面材の熱伸縮を完全
に吸収し、特に役物材において熱伸縮による坐屈が生ず
ることがない金属板屋根の継手構造を提供することを目
的とするものである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本考案は、構造物の立上
り部に対して添設される、いわゆる断面形状がＬ形の役
物材をもつ防水面材を継手により相互に接続するさい
に、前記役物材に当接する継手部分が斜面部で、その斜
面部に続いて先に伸びる平坦部を有する継手を用いて金
属板屋根の継手構造を構成することにより、前記の目的
を達成することができることを見出すことによってなさ
れたものである。

【００１１】すなわち、本考案は、前記の目的を、両側
幅方向に側部立上り部を設けた長尺金属板を複数枚並設
し、前記長尺金属板の相対する側部立上り部を溶接して
相互に接続し、その一番端側にある長尺金属板の少なく
とも一つの外側に、構造物の立上り面の接する側に垂直
状部を有し、それに連らなって平坦部を有し、長尺金属
板側に側部立上り部を有し、かつ長尺金属板と平行に延
びる少なくとも一つの役物材を配置し、前記端側の長尺
金属板の側部立上り部と前記役物材の側部立上り部とを
溶接して接続することにより防水面材を構成し、この防
水面材の少なくとも二つを、前記長尺金属板の長手方向
端部の位置で相互に向い合うように適宜の間隔を設けて
対向させ、その間に前記役物材の垂直状部の上端の延長
線上に位置する上端から前記役物材の平坦部の末端であ
る側部立上り部の延長線上の位置まで延びる斜面部を有
し、前記斜面部に続く平坦部を有し、かつ前記斜面部及
び平坦部の両側に接続用立上り部を有する継手を設け、
前記継手の斜面部の接続用立上り部と前記防水面材の役
物材に設けた長手方向立上り部とを溶接して前記斜面部
の裏側に空間を形成し、かつ前記継手の平坦部の接続用
立上り部と前記防水面材の長尺金属板の端部の長手方向
立上り部とを溶接することによって、継手を介して防水
面材を相互に接続したことを特徴とする金属板屋根の継
手構造によって達成した。

【００１２】本考案で用いる継手は、役物材に隣接する
部分では斜面部であり、それに続いて平坦部を有してい
る。斜面部は曲面でもよく、平面でもよいが、傾斜角度
の異る複数の平面の集合した形式の曲面でもよい。平坦
部の長さは、前記面材の幅の長さである。この継手は斜
面部だけでなくそれに連らなる長い平坦部を有している
ので、役物材の熱伸縮を十分に吸収する外、併せて防水
面材相互の接続とそれらの熱伸縮の吸収を行わせること
ができる。

【００１３】継手の幅は、隣接する二つの防水面材にお
ける長尺金属板と役物材の熱伸縮を完全に吸収しうるも
のであればよく、例えば役物材の長さが１０ｍの場合、
継手斜面部では３０ｍｍ以上あればよいが、継手平坦部
では長尺金属板の熱伸縮を接続用立上り部の間隙と平坦
部金属平面の湾曲、平坦の複合作用により吸収させるこ
とと、溶接機を挿入して溶接作業をする必要から１００
ｍｍ以上とすることが好ましいので、これらを考慮して
その幅を選択する。また、最大幅は耐風荷重（負圧）を
考慮して、一般面材の幅と同等の４５０ｍｍ以下とす
る。

【００１４】そして、継手の両側、すなわちその斜面部
及び平坦部の両側には接続用立上り部を設け、斜面部の
接続用立上り部を、役物材の長手方向の端部の長手方向
立上り部と重合して溶接する。前記接続用立上り部は、
従来の役物材の屈曲部や金属板の側部立上り部について
採用されているのと同様に、外方へ斜め方向に立上るよ
うにして、前記溶接用立上り部の下端と金属板の側部立
上り部等の下端との間、ひいては継手の側端と役物材あ
るいは金属板の端部との間に間隙を保持することが好ま
しい。特に、継手の平坦部における接続用立上り部につ
いては、防水面材の長尺金属板の長手方向の熱伸縮を平
坦部の金属平面の湾曲・平坦化と複合して吸収させるた
めに、その作用をしうるに十分な間隙をもちうる構造を
有することが望ましい。

【００１５】本考案で金属板屋根を構成するのに用いる
長尺金属板としては、主として鉄板、例えばステンレス
鋼板、防錆の表面処理をした鉄板なとを用いることがで
きるが、その中でもステンレス鋼板が最も好ましい。ま
た、本考案で用いる継手の材質としては、長尺金属板と
同様なものを用いることができ、ステンレス鋼が好まし
い。

【００１６】本考案の金属板屋根の継手構造とその作用
を図面によって詳しく説明すると、例えば、実施例１の
図１及び図２に示すように、継手１５の一例のもので
は、斜面部１６と平坦部１７とからなる板状体で、斜面
部１６は表面が曲面を有するもので、その上端からゆる
やかに曲って下方に延びており、下端は平坦部１７に続
いている。斜面部１６の断面は曲線であって、隣接する
役物材５，６の垂直状部７，１１及び平坦部８，１２と
の稜線の延長線より離れた位置にあるため、斜面部１６
の裏側に十分な空間が空けられている。しかも、斜面部
１６の面は、役物材５，６の垂直状部７，１１及び平坦
部８，１２の各面と位置がずれている。

【００１７】このため、熱伸縮のさい坐屈抵抗が小さ
い、各役物材の前記稜線の端部１９と端部２０との間に
は、継手１５の幅にほぼ相当する大きなクリアランスが
保持されることになり、役物材５，６の熱膨張にさいし
て、これらの端部１９と端部２０とが熱で伸びて突出し
ても相互に接触することがまったくなく、十分に対応す
ることができる。また、前記垂直状部７，１１及び平坦
部８，１２の各面が熱膨張のため各面の延長線上に延び
ても、前記したように斜面部１６の曲面と位置がずれて
いるため、斜面部１６とぶつかることがない。

【００１８】上記した作用からいって、継手１５の斜面
部１６はその裏側に十分な空間が空けられている形状で
あればよいから、その表面の形状は曲面に限らず、平面
でもよいし、また複数の平面の集合によって曲面に近い
形状としたものでもよいが、これらの中では曲面が好ま
しい。曲面の場合には、前記端部１９，２０からなるべ
く遠くを通るゆるやかな曲面のものがよい。曲面の形成
は例えば特公平２−３３４４７号公報や特公平２−３８
２８５号公報に示す方法で行うことができる。通常、斜
面部１６は役物材５，６の平坦部８，１２の側部立上り
部９，１３の延長線上の位置まで曲線などの形状で延び
るようにする、言い換えれば、前記の位置から立上るよ
うにされるが、その位置よりも先（斜面部１６の上端に
近い位置）から立上るようにしてもよい。いずれにして
も、機械加工及び溶接の容易な形状のものを選択して用
いる。

【００１９】また、継手１５は、斜面部１６に続いて平
坦部１７を有し、この平坦部１７は斜面部１６と一体と
なっている。平坦部１７の長さは例えば面材の幅と同じ
である。

【００２０】さらに、防水面材Ａの各長尺金属板の端部
の長手方向立上り部４と前記継手１５の平坦部１７の接
続用立上り部１８とをそれぞれ斜めに立ち上らせて重合
し、それを溶接することによって接合させて、溶接部下
端に間隙を保持させるようにする。この構造によって防
水面材の長尺金属板における長手方向の熱伸縮を吸収す
ることができ、大面積の金属板屋根を構成することがで
きる。

【００２１】

【実施例】以下、実施例によって本考案を具体的に説明
する。ただし、本考案はこれらの実施例のみに限定され
るものではない。 実施例１ 継手として斜面部が曲面からなる表面をもつものを用い
た本考案の金属板屋根の継手構造の例を図１、図２及び
図３により説明する。

【００２２】図１は、長尺のステンレス鋼板を複数枚並
設し、互に溶接して連続させて得た面材３の端部に断面
Ｌ形の役物材を溶接して形成させた防水面材Ａ同士をそ
の間に本考案の特徴である継手を介在させてシーム溶接
により接続した状態を示す。

【００２３】継手１５は、接続前の各部材の状態を表わ
す図２に示すように、役物材に隣接する部分は表面が円
弧状の曲面である斜面部１６を有し、斜面部１６の下端
は平坦部１７に続いている。平坦部１７の長さは防水面
材Ａの幅（役物材の分は除く）と同じであるが、図では
平坦部１７の先の部分は省略してある。

【００２４】図１及び図２に示すように、両側幅方向に
側部立上り部２を設けたステンレス鋼板１を複数枚並敷
して、重合した側部立上り部２，２を相互にシーム溶接
して面材３を形成する。前記側部立上り部２，２はそれ
ぞれ斜め外方に立上って、その下端相互の間に間隔が空
くようにされている。

【００２５】そして、構造物の立上り部の面に接する側
に、比較的高さの高い垂直状部７，１１を有し、前記立
上り面に沿った平坦部８，１２を有し、前記平坦部８，
１２の一側に側部立上り部９，１３を有し、長手方向の
長さが前記ステンレス鋼板１と長さが同じであり、かつ
長手方向の端部の少なくとも一方に長手方向立上り部１
０、１４を有する役物材５，６をそれぞれ、面材３，３
の端部に重合し、役物材５，６の側部立上り部９，１３
をそれぞれ端のステンレス鋼板１，１の側部立上り部
２，２とシーム溶接して一体とすることにより防水面材
Ａ，Ａをそれぞれ形成する。そのさい、役物材５，６の
長手方向立上り部１０，１４の上端の高さは、継手１５
の斜面部１６の両側にある接続用立上り部１８の上端と
同じ高さであるのものとする。

【００２６】前記の防水面材Ａ，Ａの間に前記の継手１
５を介在させ、その斜面部１６における両側の接続用立
上り部１８，１８を役物材５，６の長手方向立上り部１
０，１４とそれぞれシーム溶接し、また平坦部における
接続用立上り部１８，１８を各ステンレス鋼板１の端の
長手方向立上り部４，４とシーム溶接することにより、
防水面材Ａ，Ａ同士が相互に一体化され、これにより金
属板屋根が構成される。なお、２１は溶接線である。

【００２７】これらの防水面材Ａ，Ａの役物材５，６の
垂直状部７，１１は、図３に示すような構造物の立上り
部Ｃの面に接するように配置されているので、防水性を
有する金属板屋根を構造物の上部Ｂ上に形成することが
できる。

【００２８】このように構成した金属板屋根の継手構造
においては、継手１５の斜面部１６の裏側に空間が空
き、役物材５の端部１９と役物材６の端部２０との間に
十分なクリアランスを開けることができる。このため熱
伸縮によって前記端部１９と端部２０とがぶつかること
がなく、熱応力による坐屈を生ずることがない。

【００２９】なお、図３では、手前側のステンレス鋼板
１は短く示されているが、便宜上のものであって実際で
は長尺のものである。また、継手１５の斜面部１６の接
続用立上り部１８と役物材５の長手方向立上り部１０と
の接合個所では、少なくとも前記斜面部１６の下端側の
接続用立上り部１８とそれに対向する前記役物材の長手
方向立上り部１０の部分について、前記の空間部分が小
さいことを考慮して、熱伸縮の対策上、斜めに立上らせ
て従来から行われている程度のクリアランスを開けてお
くことが好ましい。

【００３０】この例では、役物材５，６の長さは、ステ
ンレス鋼板１と同じ長さのものを用いたが、２個以上の
役物材をステンレス鋼板と接続することによって防水面
材Ａを構成するようにしてもよい。 実施例２ 継手１５を２個並列に用いることによって防水面材を相
互に接続して金属板屋根を構成した。その斜視図を模式
図として図４に示す。金属板屋根の構成は継手構造部分
を除いて実施例１と同じであるから、図４においてはそ
れらの部分について図示及び説明を省略する。

【００３１】同じ構造の継手１５，１５を並列し、継手
１５と継手１５の隣接する接続用立上り部１８，１８同
士を溶接して接続した。この場合、一方の継手１５が隣
接する防水面材Ａの熱伸縮を吸収し、他方の継手１５が
それに隣接する別の防水面材Ａの熱伸縮を吸収するよう
に作用するもので、防水面材Ａに特に長い長尺金属板を
使用した場合に用いる。

【００３２】

【考案の効果】本考案は、役物材を接続している防水面
材の間に斜面部を有する継手を設けることにより防水面
材全体を接続するという継手構造を取ることによって、
垂直状部と平坦部とからなる役物材の熱伸縮を完全に吸
収するとともに、長尺金属板の熱伸縮も吸収して接続す
ることができるため、役物材の熱破壊がなく、水漏れな
どが生じない大面積の金属板屋根を得ることができる。

【００３３】また、本考案は、前記の継手構造を設ける
ことによって、従来の屈曲部において採られているよう
な間隙の厳密な形成を必要としなくなったので、施工管
理が非常に容易になった。前記継手の幅はかなり自由に
設定できるので、溶接作業を容易に行うことができる。

【００３４】さらに、本考案では、継手が斜面部に続い
て平坦部を有しているので、役物材間の接続だけでな
く、金属板の長手方向間の接続を行えるので、金属板か
らなる面材相互の接続も行うことができ、この平坦部で
はその板の湾曲などによっても熱伸縮を吸収できるの
で、熱伸縮の問題が生じない大面積の金属板屋根を構成
することができる。そのさい、金属板と一個以上からな
る役物材の長さを同じにして施工できるので、組立て、
溶接などの施工作業が容易となる外、施工能率が向上す
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は、本考案の実施例１における金属板屋根
の継手構造の斜視図である。

【図２】図２は、図１の金属板屋根の継手構造の接続前
の状態を示す斜視図である。

【図３】図３は、構造物の上部Ｂと立上り部Ｃに対し図
１の金属板屋根の継手構造を設置して構成した金属板屋
根の斜視図である。

【図４】図４は、本考案の実施例２における金属板屋根
の継手構造の模式的斜視図である。

【符号の説明】

１ ステンレス鋼板 ２ 側部立上り部 ３ 面材 ４ 長手方向立上り部 ５，６ 役物材 ７，１１ 垂直状部 ８，１２ 平坦部 ９，１３ 側部立上り部 １０，１４ 長手方向立上り部 １５ 継手 １６ 斜面部 １７ 平坦部 １８ 接続用立上り部 １９，２０ 端部 ２１ 溶接線 Ａ 防水面材 Ｂ 上部 Ｃ 立上り部

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 両側幅方向に側部立上り部を設けた長尺
   金属板を複数枚並設し、前記長尺金属板の相対する側部
   立上り部を溶接して相互に接続し、その一番端側にある
   長尺金属板の少なくとも一つの外側に、構造物の立上り
   面の接する側に、垂直状部を有し、それに連らなる平坦
   部を有し、長尺金属板側に側部立上り部を有し、かつ長
   尺金属板と平行に延びる少なくとも一つの役物材を配置
   し、前記端側の長尺金属板の側部立上り部と前記役物材
   の側部立上り部とを溶接して接続することにより防水面
   材を構成し、この防水面材の少なくとも二つを、前記長
   尺金属板の長手方向端部の位置で相互に向い合うように
   適宜の間隔を設けて対向させ、その間に前記役物材の垂
   直状部の上端の延長線上に位置する上端から前記役物材
   の平坦部の末端である側部立上り部の延長線上の位置ま
   で延びる斜面部を有し、前記斜面部に続く平坦部を有
   し、かつ前記斜面部及び平坦部の両側に接続用立上り部
   を有する継手を設け、前記継手の斜面部の接続用立上り
   部と前記防水面材の役物材に設けた長手方向立上り部と
   を溶接して前記斜面部の裏側に空間を形成し、かつ前記
   継手の平坦部の接続用立上り部と前記防水面材の長尺金
   属板の端部の長手方向立上り部を溶接することによっ
   て、継手を介して防水面材を相互に接続したことを特徴
   とする金属板屋根の継手構造。