JP2551647B2 - プロピレンの製造方法 - Google Patents

プロピレンの製造方法

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  • Catalysts (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は、イソプロパノールから特定の触媒を用いる
プロピレンの製造方法に関する。
<従来の技術> オレフィン類の製造方法としては、古くはアルコール
類を硫酸のような強酸の存在下に脱水させる方法が知ら
れている。しかしながら、この方法は強酸を使うため耐
酸性の製造装置を用いなければならず、また、反応後に
排出される廃硫酸の処理が困難なため近年では殆ど採用
されない方法となった。
近年のオレフィン類の製造法は、ナフサをクラッキン
グして製造する方法が主流である。例えば、エチレン、
プロピレン、ブテン類、ブタジエン等の工業的に重要な
オレフィン類がこの方法で製造されている。
ところが、最新オレフィン類製造原料の多様化を図る
ため、あるいは、高純度のオレフィン類を得るためアル
コール類の脱水法によるオレフィン類製造方法が見直さ
れてきた。例えばエチレンの製造方法において、エタノ
ールを脱水して製造する方法の提案が再びなされるよう
になってきた。かかる提案としては、特公昭59−40057
号公報、特公昭59−19927号公報が例示される。
また、イソブチレンのようなオレフィンの場合、ナフ
サクラッキングでは異性体が同時に生成し、これらの分
離が容易ではない。従って、なかなか高純度のイソブチ
レンを得ることが難しい。そのため、この場合にはイソ
ブチレンの水和反応で生成するターシャリーブタノール
を脱水して高純度イソブチレンを製造する方法が提案さ
れている。かかる方法として、特公昭61−23771号公
報、特開昭61−26号公報に記載の方法がある。
ところが、イソプロパノールを脱水してプロピレンに
変換する方法に関しては、上述の古典的方法以外の適当
な方法の提案はなく、また、エタノールを脱水する方
法、あるいはターシャリーブタノールを脱水する方法の
適用については、生成物のエチレンあるいはイソブチレ
ンとプロピレンとはその性質が大きく異なるため全く予
想が付かない。
<発明が解決しようとする課題> アルコール類を脱水してオレフィンを製造する反応の
触媒には、上述したような硫酸のほか、燐酸、過塩素
酸、リンモリブデン酸、リンタングステン酸等のヘテロ
ポリ酸などの強酸を用いることができるが、これらの強
酸を触媒に用いた場合、前述のように耐蝕性の製造装置
を用いなければならないという問題点があるのみなら
ず、折角製造されたオレフィン類がこれら強酸の存在下
に副反応を受け、たとえば、重合して高分子化合物に変
換されたり、また異性化して目的外の化合物に変換され
たりして、目的物の収率が低下するという問題点もあ
る。さらに、異性化で生成する不純物は分離することが
容易でなく、精製操作に多大の負荷を掛けることにな
る。
一方、従来技術として提案のあるアルミナやシリカア
ルミナ等の固体状の酸性化合物を触媒に用いる方法にお
いては、製造装置の材質上の問題は解決されるが、アル
コール類の脱水反応と共に併発する異性化反応のため生
成したオレフィン類が不純物を含み純度が悪いという問
題を残している。
さて、従来イソプロパノールはプロピレンを原料とし
て製造されてきたもので、イソプロパノールを原料にプ
ロピレンを製造することはあり得なかった。ところが、
近年クメン法フェノール製造法における副生アセトンの
余剰対策として、アセトンを水添して得られるイソプロ
パノールからプロピレンを製造することを考慮する必要
が生じてきた。すなわち、現在の工業的なフェノール製
造法はクメン法が主流となっている。このクメン法フェ
ノール製造法というのは、ベンゼンとプロピレンから製
造されるクメンを自動酸化してクメンヒドロペルオキシ
ドに変換した後、このクメンヒドロペルオキシドを酸触
媒の存在下に分裂反応させてフェノールとアセトンを得
る方法である。
したがって、フェノールとアセトンの需給がバランス
よく保たれている場合にはクメン法フェノール製造法は
経済性に優れた方法であった。
ところが、近年アセトンの需要が減退し始めてきた。
すなわち、アセトンの最も大きな需要を占めてきたメチ
ルメタクリレート向けの原料としての用途が、メチルメ
タクリレートの製法が炭素数4の化合物を用いる方法に
転換されてきたために減ってきたものである。
そのために、アセトンを副生品とせず、余剰アセトン
の有効活用として、アセトンをイソプロパノールに変換
した後これを脱水してプロピレンに戻す方法が浮かび上
がってきた。
したがって、従来の情勢からは考えられなかったイソ
プロパノールからプロピレンを製造する方法の開発が必
要となったものである。
<課題を解決するための手段> 本発明者らは、イソプロパノールを脱水してプロピレ
ンを製造する方法を開発するに当たり、まず、製造装置
の材質の問題を避けるため固体状触媒を用いる方法に着
目して、この方法が持つ生成物の純度が悪いという問題
の解決を図るため鋭意検討を行った結果本発明に到達し
た。
すなわち、本発明の方法は、 イソプロパノールを脱水してプロピレンを製造するに
当たり、細孔直径と細孔容積との関係に基づき統計的に
計算した平均細孔径が30〜150Åの範囲にあり、その標
準偏差(σ)が10〜40Åの範囲にあるγ−アルミナを
触媒として用いることを特徴とするプロピレンの製造方
法を提供する。
ここで、前記γ−アルミナ触媒が前記細孔容積0.4cc/
g(乾燥基準)以上を持つγ−アルミナ、前記γ−アル
ミナ触媒が乾燥状態で90重量%以上のγ−アルミナ、10
重量%未満のシリカおよび0.5%以下のアルカリ金属酸
化物をを含んでなる低アルカリγ−アルミナ、前記γ−
アルミナ触媒がハメット指示薬により測定されるpKaが
実質的に+3.3〜6.8の範囲にあり、その積算酸量が3.5m
eq/g(乾燥基準)以下である弱酸性γ−アルミナである
のが好ましい。
また、前記イソプロパノールはベンゼン類とプロピレ
ンからクメン法によりフェノールとアセトンを得、該ア
セトンを水添したものであり、前記製造されたプロピレ
ンはクメン法の出発物質として用いるのが良い。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明法は、イソプロパノールを脱水してプロピレン
を製造する際に用いる触媒に特徴がある。
この触媒はγ−アルミナであり、細孔直径と細孔容積
との関係に基づき統計的に計算した平均細孔径が30〜15
0Åの範囲にあり、その標準偏差(σ)が10〜40Åの
範囲にある。
この範囲のγ−アルミナ触媒を用いるとイソプロパノ
ールから高純度のプロピレンが極めて高い収率で得られ
る。
本発明の方法において、用いられる触媒は上記の性質
を持つγ−アルミナであって、さらに、次のような性質
も合わせ持つものが好ましい。すなわち、前記γ−アル
ミナの全細孔容積が0.4cc/g(乾燥基準)以上であり、
かつ、前記γ−アルミナが乾燥状態で90重量%以上のγ
−アルミナ、10重量%未満のシリカおよび0.5重量%以
下のアルカリ金属酸化物を含んでなる低アルカリγ−ア
ルミナであり、ハメット指示薬で測定されるpKaが実質
的に+3.3〜6.8の範囲で、その積算酸量が3.5meq/g(乾
燥基準)以下である弱酸性のγ−アルミナである。
触媒の平均細孔径が上記範囲内であり、また触媒pka
が上述の好適範囲の酸強度を持つものは生成物の純度が
高く、またプロピレンの収率が高い。
本発明の方法において用いられるγ−アルミナは必要
に応じ酸処理、焼成処理を施してもよい。
酸処理はγ−アルミナ触媒を酸に浸漬処理し、触媒の
酸強度を調整するために行うもので、用いられる酸とし
ては、塩酸、硝酸、ホウ酸等の水溶液や酢酸、蟻酸、シ
ュウ酸等のカルボン酸類である。
焼成処理は、触媒を空気中で、あるいは還元雰囲気中
で行なわれるが、400〜700℃の温度範囲が好ましい。
本発明の方法において、用いられる触媒の形態として
は、粉末状、粒状何れでもよい。
本発明の方法において、イソプロパノールの脱水反応
の好適な反応条件は下記の通りである。反応温度は150
〜500℃、好ましくは180〜400℃である。反応圧力は減
圧、常圧、加圧の何れでもよいが、反応系内が気相条件
になっていることが好ましい。反応器へのイソプロパノ
ールの供給量はLHSVとして0.1〜20hr-1、好ましくは0.5
〜10hr-1である。
本発明の方法においては、反応で生成したプロピレン
を系内から速やかに排出させるため、脱水反応に不活性
なガス状物質を混合させてもよい。このようなガス状物
質としては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、メタ
ン、エタン、プロパン、ブタン等が例示される。また、
このガス状物質は反応条件下においてガス状になってい
ればよく、反応器に送り込む前は液状物でも構わない。
そのような物質としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタ
ン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭化水素類、
あるいはアセトン、メチルエチルケトン、ジメチルエー
テル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等が
挙げられる。
本発明の方法において、反応方式は連続反応が好まし
く、反応器の形式としては粉末状の触媒を用いた流動床
方式、あるいは粒状の触媒を用いた固定床方式が好まし
い。
本発明の方法において用いる触媒は、触媒の寿命が著
しく長い。すなわち、通常の固体酸を触媒に用いた反応
のような場合、例えば、触媒の酸強度が大きいようなと
きにはイソプロパノールの脱水反応は容易に起こるけれ
ども生成したプロピレンの重合反応が併発して触媒に吸
着するため、触媒活性がすぐに低下する傾向を示す。し
かしながら、本発明の方法においては前述の範囲に規定
したような物性を持つγ−アルミナ触媒を用いることに
よって上述のような原因で活性低下を起こすことはな
い。
更に、本発明に用いる触媒は仮に触媒活性が低下して
も、触媒再生することができる。触媒を再生する方法と
しては空気存在下で付着した炭素質を燃焼除去する方法
が採用できる。触媒再生を行う温度としては300〜600℃
の範囲が好ましい。
本発明のプロピレンの製造方法は、クメン法フェノー
ル製造法において副生されるアセトンの用途が減少しつ
つある現状において、この副生アセトンを有効に活用す
るため、アセトンをイソプロパノールに変換した後、本
発明法により、脱水してプロピレンに戻すことにより、
再び、クメン合成のための原料プロピレンとして用いる
ことができる。プロピレンは、クメン法に用いる以外に
ポリオレフィン製造原料として大きな用途がある。
<実施例> 以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
(実施例1) 内径25.4mm、長さ500mmのステンレス製の縦形管状反
応器のほぼ中間部にγ−アルミナ(8〜14メッシュ、平
均細孔径69Å、σn13Å、酸強度分布pka≦6.8:0.31meq/
g、pka≦4.8:0.08meq/g、pka≦3.3:0、pka≦1.5:0、pka
≦−3.0:0、積算酸量:0.39meq/g、Na2O含量0.2重量%、
全細孔容積0.66cc/g)20mlを充填した。反応温度320
℃、圧力10kgf/cm2Gの条件下に、イソプロパノールを60
ml/hr(LHSV 3hr-1)の流速で反応器頂部から供給し
た。反応器下部より排出される気液混合物を液状反応混
合物とガス状生成物に分離した。実験開始後8時間経過
したところでの排出されてくる液状反応混合物、ガス状
生成物は1時間当たり平均して、それぞれ14.4g/hr、1
8.8/hrであった。液状反応混合物並びにガス状生成物
をガスクロマトグラフィによって分析し、このイソプロ
パノール脱水反応の反応成績を求めた結果、イソプロパ
ノールの転化率98.4%、プロピレンの収率98.0%の成績
が得られた。副生成物としてアセトンが0.4%生成して
いた。また、得られたガス状生成物のプロピレン純度は
99.5%であった。
(実施例2〜5) 実施例1で用いた反応器において、イソプロパノール
の供給量並びに反応温度を表1に示されるように変更し
たほかは、実施例1と同様に行った。得られた結果を実
施例1の結果と合わせて表1に示した。
(実施例6) 実施例1において、触媒に用いるγ−アルミナを次の
物に代え、イソプロパノールの供給量を40ml/hrで実験
したほかは実施例1と同じように行った。その結果、下
に示した反応成績であった。
触媒の物性 平均細孔径120Å、σn24Å、 全細孔容積0.82cc/g、 Na2O含量:0.17重量% pka≦6.8:0.22meq/g,pka≦3.3:0.02meq/g, 積算酸量:0.24meq/g 反応成績 イソプロパノール転化率 99.8% プロピレン収率 99.5% (実施例7) 実施例6において、反応温度を290℃に変更したほか
は実施例6と同様に行った。その結果、イソプロパノー
ルの転化率は84.8%、プロピレンの収率78.8%であっ
た。
(比較例1) 実施例1において、触媒を下に示す物性を持つH−モ
ルデナイトに代え、反応温度250℃、イソプロパノール
供給速度40ml/hrで反応を行ったほかは実施例1と同じ
ように実験した。その結果、イソプロパノール転化率は
96.8%であるが、プロピレンの収率は70.8%であった。
液状反応混合物にはプロピレンの低重合物(油状物)1.
4gを含んでいた。しかも、得られたプロピレンにはメタ
ン、エタン、プロパン等の不純物が数多く含まれており
純度は98.5%であった。
触媒の物性 平均細孔径7Å、細孔容積0.42cc/g、 Na2Oの含量:0.01重量% 積算酸量:2.07meq/g 最高酸強度 pka −5.6 (実施例8〜10) 反応温度320℃、表2に示した圧力下、実施例1と同
じ触媒を用い、イソプロパノールを40ml/hr(LHSV 2hr
-1)の流速で供給しながら、実施例1と同様に実験して
得られた結果を表2に示した。
(比較例2) 実施例1において、触媒を下に示す物性を持つγ−ア
ルミナに代え、反応温度320℃、イソプロパノール供給
速度40ml/hrで反応を行ったほかは実施例1と同じよう
に実験した。その結果、イソプロパノール転化率は64.1
%であるが、プロピレンの収率は54.2%であった。
触媒の物性 平均細孔径190Å、細孔容積0.43cc/g Na2O含量:2.7重量% 積算酸量:1.0meq/g 最高酸強度 pka −3.0 (実施例11) 実施例1において、イソプロパノールの供給量を40ml
/hrに保ちながら同じ条件で長時間の連続反応を行っ
た。200時間反応を継続したところでのイソプロパノー
ルの転化率は99.5%であり、このときのプロピレンの収
率は99.3%であった。さらに反応を継続し、反応時間が
500時間のときの反応成績はイソプロパノール転化率99.
3%、プロピレン収率99.0%であった。
反応時間が500時間経過したところで、一旦触媒を反
応器から抜き出したところ、触媒はやや灰色掛かってい
た。この触媒を電気炉の中で温度500℃で3時間再生処
理したところ、触媒は使用前のほぼ白色の状態に戻っ
た。
この触媒を再び反応器に充填して実施例1と同じ条件
下にイソプロパノールの脱水反応を行った結果、イソプ
ロパノール転化率は98.3%、プロピレン収率は98.0%で
あった。
<発明の効果> 本発明方法は、特定の範囲の物性を有するγ−アルミ
ナ触媒を用いてイソプロパノールを脱水する方法であ
り、これにより、純度の高いプロピレンを収率良く得る
ことができる。
また、本発明法に用いる触媒は触媒寿命が長く、容易
に再生することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07C 29/14 C07C 29/14 // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】イソプロパノールを脱水してプロピレンを
    製造するに当たり、細孔直径と細孔容積との関係に基づ
    き統計的に計算した平均細孔径が30〜150Åの範囲にあ
    り、その標準偏差(σ)が10〜40Åの範囲にあるγ−
    アルミナを触媒として用いることを特徴とするプロピレ
    ンの製造方法。
  2. 【請求項2】前記γ−アルミナ触媒が前記細孔容積0.4c
    c/g(乾燥基準)以上を持つγ−アルミナである請求項
    1に記載のプロピレンの製造方法。
  3. 【請求項3】前記γ−アルミナ触媒が乾燥状態で90重量
    %以上のγ−アルミナ、10重量%未満のシリカおよび0.
    5%以下のアルカリ金属酸化物を含んでなる低アルカリ
    γ−アルミナである請求項1または2に記載のプロピレ
    ンの製造方法。
  4. 【請求項4】前記γ−アルミナ触媒がハメット指示薬に
    より測定されるpKaが実質的に+3.3〜6.8の範囲にあ
    り、その積算酸量が3.5meq/g(乾燥基準)以下である弱
    酸性γ−アルミナである請求項1ないし3のいずれかに
    記載のプロピレンの製造方法。
  5. 【請求項5】前記イソプロパノールがベンゼン類とプロ
    ピレンからクメン法によりフェノールとアセトンを得、
    該アセトンをイソプロパノールに変換したものであり、
    前記製造されたプロピレンをクメン法の出発物質として
    用いる請求項1ないし4のいずれかに記載のプロピレン
    の製造方法。
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