JP2550737Y2 - 羽毛掛け布団 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、羽毛用として好適な掛
け布団に関するものである。

【０００２】

【従来技術及び考案が解決しようとする課題】羽毛用の
掛け布団はふつくらとして軽く、また保温性や吸放湿性
に優れ、しかも体に軽くフィツトし、手入れも簡単であ
るなどの理由により、快適性や利便性を求める現代の生
活様式と相俟つて年々人気が高まつてきており、需要が
増大しつつある。

【０００３】ところで、従来の羽毛掛け布団は、図９及
び図１０に示すように、一般に、内部に羽毛などの詰め
物素材ａを所定量装填した状態で表地ｂと裏地ｃとを周
縁で縫着すると共に、表裏地同志を直接、あるいはマチ
テープ（仕切り地）などを介して縦横格子状に縫着（キ
ルト、縫製）してなるもので、羽毛などの詰め物素材ａ
は布団全域にわたつて均一状態に分散されており布団全
体がほぼ同じ厚さになつている。

【０００４】しかも、従来の羽毛掛け布団Ｂは、表地ｂ
と裏地ｃを周辺部でそれぞれ内方へ折り畳んだ状態で縫
着しており、この表裏両生地ｂ、ｃの外周縫着部分が布
団の周縁に突出したフランジ状部ｅとなつている関係
上、肩口を暖たためるべく布団を首もとまで深く掛けた
としても、このフランジ状部ｅが直接首などに当たつて
ゴワゴワした感触を与えて肌に違和感を与える許りでな
く、肩口付近が隙間の開いた状態となつて保温性に欠
け、羽毛布団の利点が十分発揮されない不都合がある。

【０００５】また、従来の羽毛掛け布団Ｂは、胴部や腰
部の保温性についても、縫着部は表裏地が直接縫着さ
れ、あるいはマチテープを介して表裏地が縫着されてい
て、該マチテープ縫着部位において詰物が分断される状
態になるため、局部的に保温性が損なわれてしまう許り
でなく、該マチテープ部位が大きく引きつれた状態で凹
んでボリユーム感が損なわれてしまうという不都合も有
る。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本考案は、上記の如き実
情に鑑みこれらの欠点を解消すべく創案された掛け布団
に関するものであつて、表裏地間に仕切り地が介装され
て羽毛充填室が縦横に複数形成されてなる掛け布団の衿
部分に、掛け布団本体のほぼ全幅にわたつて袋状の肩口
覆い部を掛け布団本体と一体的に設け、上記肩口覆い部
に対する単位面積当たりの布団用詰め物の充填量を掛け
布団本体側よりも多くし、肩口覆い部の上下方向の膨出
量が掛け布団本体側よりも大となるように構成するにあ
たり、該肩口覆い部は、掛け布団本体の表地の衿側を所
定長延長し、その延長方向中途部を裏面方向に折返し、
該折返し部の左右両側縁を縫着すると共に、折返し先端
部を、掛け布団本体における裏地の衿側端部と最衿側仕
切り地と共に縫着することにより袋状に形成し、かつ前
記掛け布団本体側の仕切り地よりも表裏方向幅広の仕切
り地を用いて左右に仕切られていることを特徴とするも
のである。そしてこのものにおいて、さらに、掛け布団
本体側の仕切り地は、表裏地間に介装される中地と表裏
各地とのあいだに介装される表裏側仕切り地で構成さ
れ、かつこれら表裏仕切り地は、左右方向または前後方
向の少なくとも一方に互いに齟齬する状態で縫着されて
いるものとする一方、肩口覆い部側の仕切り地は、前記
表裏側両仕切り地を足した表裏方向の幅よりも表裏方向
幅広に設定されていることを特徴とするものである。

【０００７】そして本考案は、この構成によつて、肩口
や首元については、ここを柔らかく包み込むようにフィ
ツトさせて保温性を高めることを第一の改善とし、さら
にこのことに加えて、縫着部の自由度と保温性を高める
ことを第二の改善としたものである。

【０００８】

【実施例】つぎに、本考案を図面に示された一実施例に
より説明する。図面において、１は羽毛掛け布団本体Ａ
の表地、２は裏地で、掛け布団本体Ａの内部には羽毛か
らなる詰物素材（掛け布団用充填物）３が所定量充填さ
れている。そして、表地１と裏地２とのあいだには中地
４が介装されており、該中地４および表裏各地１、２と
のあいだは、それぞれ縦横のマチテープ（表裏側仕切り
地）５、５ａ、５ｂ、５ｃが介装される状態で縫着され
るが、本実施例においては、縦横表側マチテープ５、５
ａ、縦横裏側マチテープ５ｂ、５ｃのうち、縦表裏マチ
テープ５、５ｂについて本考案が実施され、横表裏マチ
テープ５ａ、５ｃについては、互いに同じ位置で表裏地
１、２および中地４に縫着されている。これに対し、縦
表裏マチテープ５、５ｂは、互いに齟齬する状態、つま
り縦表側マチテープ５の表地１、中地４との縫着位置に
対し、縦裏側マチテープ５ｂの中地４、裏地２との縫着
位置が略半ピツチだけズレる状態で縫着されており、こ
の様にして表裏地１、２、中地４、マチテープ５、５
ａ、５ｂ、５ｃで囲繞形成される各スペースに所要量の
前記詰物素材が充填されている。

【０００９】６は袋状の肩口覆い部で、この肩口覆い部
６は掛け布団本体Ａの衿部分のほぼ全幅にわたつて掛け
布団本体Ａと一体的に設けられているが、本実施例で
は、掛け布団本体Ａの表地１の衿側を所定長延長し、そ
の延長方向中途部を裏面方向に折返し、折返し部の左右
両側縁を縫着１ａすると共に折返し先端部を、裏地２の
掛け布団本体Ａの衿側端部と横裏側マチテープ５ｃを介
して縫着１ｂすることにより袋状の肩口覆い部６を形成
したものである。

【００１０】上記肩口覆い部６は、実施例では、内部が
マチテープ５ａ、５ｃ、７、８を介して３部屋に分離さ
れており、各部屋にはそれぞれ羽毛などの詰め物素材９
が所定量充填されていて、外観上単一の袋状肩口覆い部
６でありながら、就寝中の人体に対応して幅方向中間部
が首覆い部６ｃに、この首覆い部６ｃを挟んで両サイド
が右肩覆い部６ａおよび左肩覆い部６ｂに形成されてい
る。しかも、上記肩口覆い部６に対する単位面積当たり
の羽毛などの詰め物９素材の充填量は掛け布団本体Ａ側
よりも多くなつていて、肩口覆い部６の上下方向の膨出
量が掛け布団本体Ａ側よりも大となるように構成されて
いる。

【００１１】また、肩口覆い部６の内部空間を仕切る左
右のマチテープ７、８は、掛け布団本体Ａ側のマチテー
プ５、５ａ、５ｂ、５ｃの幅よりも上下方向広幅のもの
が使用されており、また、肩口覆い部６側のマチテープ
７、８の対向間隔は、図１、図３及び図７などに示すよ
うに掛け布団本体Ａと連接する基端側が狭く先端に行く
に従つて順次広くなるように設定されていて、衿元がフ
ィツトし易いほぼＶ地形状となるよう配慮されている。
さらに、右肩覆い部６ａと左肩覆い部６ｂの各充填量は
首覆い部６ｃの充填量よりも多くなつている。したがつ
て、就寝中、肌に直接接触する首覆い部６ｃが比較的軽
く、左右の肩覆い部６ａ、６ｂが重くなるので、安定感
があるばかりでなく、首元に対する圧迫感が一層軽減さ
れるうえ、左右の肩覆い部６ａ、６ｂが敷き布団１０側
に密着し易くなる。

【００１２】なお、上記実施例では肩口覆い部６の内部
空間を左右三部屋に分離することにより肩口覆い部６
を、右肩覆い部６ａ、左肩覆い部６ｂおよび首覆い部６
ｃの３部分に区分けした構造のものを例示したが、肩口
覆い部６は必ずしも３部屋に分離する必要はない。

【００１３】また、肩口覆い部６は、掛け布団本体Ａの
長手方向一端側（衿側）を延長して設けた構造ではな
く、掛け布団本体Ａの衿側を上下方向に膨出させて肩口
覆い部６に形成しても良い。

【００１４】さらに、肩口覆い部６に充填する羽毛など
の詰め物素材９は必ずしも掛け布団本体Ａ側の詰め物素
材３と同一である必要はない。また、詰め物素材９は羽
毛のみならず、羊毛、合繊、絹、綿などの単独、混合で
も良い。また、上記本実施例において、首覆い部６ｃの
詰め物素材９を左右の肩覆い部６ａ、６ｂの詰め物素材
９よりも比重の軽いものを使用しても良い。さらには、
首覆い部６ｃにおける詰め物素材９の単位面積当たり充
填量を左右の肩覆い部６ａ、６ｂにおける単位当たりの
素材充填量と同じにしても良い。

【００１５】上記の構成において、就寝中、図８に示す
ように、上下方向にふつくらと膨出した肩口覆い部６が
首元から左右の肩全幅にわたつてスツポリと包み込むよ
うにフィツトするので、従来の掛け布団のように、就寝
中、首から肩にかけて掛け布団の衿部分と敷き布団１０
間の隙間が開いてしまつて肩口が冷えるようなことがな
く、肩口の保温性は大幅に向上する。また、頭部を除き
肩口から足元まで全身が敷き布団１０と肩口覆い部６付
き掛け布団本体Ａによりスツポリと包持された状態とな
るので、肩口における敷き布団１０と掛け布団間の間隙
が少なくなり、その分、布団内のぬくもりが外部に逃げ
にくく、また、冷たい外気が布団内に浸入しにくくなる
ので布団全体としての保温性が一段と向上する。

【００１６】また、肩口覆い部６の先端部分（首元があ
たる部分）は、従来の掛け布団のように、表裏両生地
１、２の外周縫着部分が布団の周縁に突出してフランジ
状部を形成することがなく、表地１の延長部２がそのま
ま折り返された袋状底面状態となり、そしてここに詰物
素材９が充填されるため、肩口覆い部６の先端部分は円
弧状に膨らんだ状態となり、このため、肩口には、詰物
素材９が膨らんで厚くなった先端部分が当たることにな
って保温性に優れるうえ、首元などに直接当たっても肌
に違和感がなく、風合いが良好である。

【００１７】さらに、肩口覆い部６は掛け布団本体Ａの
表地１をそのまま所定長延長したうえ、延長方向中途部
を裏側に折り畳んだ状態にして袋状に構成されているの
で、掛け布団としての外観上の違和感もない。また、肩
口覆い部６は、掛け布団本体側Ａよりも表裏方向幅広な
マチテープ７、８で左右に仕切られることになつて、上
下に膨出する状態が左右小部屋状態として維持される。
この結果、肩口覆い部６は、羽毛が量多く充填されなが
ら固くなつてしまうことを回避して掛け布団本体Ａ側よ
りも厚手となる。そして肩口覆い部６への詰め物素材９
として実施例では綿より軽い羽毛を使用しているので、
就寝中、肩口などが重苦しく感じることはなく、風合い
の良好さと肩口保温性の向上と相俟つて常に快適な安眠
が保証される。

【００１８】一方、肩口覆い部６以外の布団本体Ａ部分
は、中地４を介して上下に二分され、しかも、中地４と
表裏地１、２間に介装されるマチテープのうち、縦表裏
マチテープ５、５ｂが互いに齟齬する状態で縫着されて
いる。この結果、前記布団本体Ａ部分は、左右方向につ
いては、従来のようにマチテープによつて詰物素材３の
ないところができてしまうことがなく、詰物素材３が左
右方向には連続する状態で存在することになつて、局部
的に保温性が損なわれてしまうことがなく、胴部や腰部
の保温性が大いに向上する。そのうえ、縦マチテープ
５、５ｂの各縫着部が左右方向に齟齬している結果、こ
れら各縫着部において、反対側において半分ではあるが
詰物素材３があるため、ボリユーム感が損なわれてしま
うことも確実に回避されることになる。

【００１９】尚、本考案は、前記実施例に限定されない
ものであることはもちろんであつて、表裏マチテープを
齟齬状に縫合する手法として、縦マチテープ同志でな
く、横マチテープ同志を齟齬状にしても良く、さらには
縦横マチテープ同志をそれぞれ齟齬状にしても良いこと
は言うまでもない。

【００２０】

【作用効果】以上要するに、本考案は上述の如く構成さ
れていることから、羽毛が充填される肩口覆い部は、上
下方向に膨出させた袋状で、しかも掛け布団本体側より
も表裏方向幅広な仕切り地で左右に仕切られることにな
つて、上記膨出状態が左右小部屋状態として維持され
る。この結果、肩口覆い部は、羽毛が量多く充填されな
がら固くなつてしまうことを回避して肩口や首元に対し
柔らかく包み込むようフイツトするうえ、敷き布団側に
密着しやすいものになつて、外気に対する肩口の接触部
分を少なくできて肩口の保温性が高められ、その分、就
寝中における布団内のぬくもりが外部に逃げにくく、ま
た、冷たい外気が布団内に浸入しにくくなるので布団全
体としての保温性を一段と向上させることができる。

【００２２】そのうえ、掛け布団の前記衿部分以外の布
団本体部分について、表裏地と、該表裏地間に介装され
る中地と、該中地および表裏各地のあいだに介装される
表裏側仕切り地とで縫着されるものとし、かつ前記表裏
仕切り地は、左右方向または前後方向の少なくとも一方
に互いに齟齬する状態で縫着したものでは、詰物素材が
分断されることがなくなつて、胴部や足腰部での保温性
の更なる向上が果たせる許りでなく、仕切り部での布団
のボリユーム感を損なうこともない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の平面図である。

【図２】本考案の側面図である。

【図３】要部の断面図である。

【図４】要部の斜視図である。

【図５】一部を断面して示す本考案の斜視図である。

【図６】一部を断面して示す要部の正面図である。

【図７】肩口覆い部の裏側を示す斜視図である。

【図８】使用状態を示す斜視図である。

【図９】従来例の側面図である。

【図１０】従来例の一部を破断して示す斜視図である。

【符号の説明】

１ 表地 ２ 裏地 ３ 羽毛などの詰物素材 ４ 中地 ５、５ａ、５ｂ、５ｃ マチテープ ６ 肩口覆い部 ６ａ、６ｂ 左右の肩口覆い部 ６ｃ 首覆い部 ７、８ マチテープ ９ 肩口覆い部の詰め物素材 １０ 敷き布団 Ａ 掛け布団本体

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 表裏地間に仕切り地が介装されて羽毛充
   填室が縦横に複数形成されてなる掛け布団の衿部分に、
   掛け布団本体のほぼ全幅にわたつて袋状の肩口覆い部を
   掛け布団本体と一体的に設け、上記肩口覆い部に対する
   単位面積当たりの布団用詰め物の充填量を掛け布団本体
   側よりも多くし、肩口覆い部の上下方向の膨出量が掛け
   布団本体側よりも大となるよう構成するにあたり、該肩
   口覆い部は、掛け布団本体の表地の衿側を所定長延長
   し、その延長方向中途部を裏面方向に折返し、該折返し
   部の左右両側縁を縫着すると共に、折返し先端部を、掛
   け布団本体における裏地の衿側端部と最衿側仕切り地と
   共に縫着することにより袋状に形成し、かつ前記掛け布
   団本体側の仕切り地よりも表裏方向幅広の仕切り地を用
   いて左右に仕切られていることを特徴とする羽毛掛け布
   団。
2. 【請求項２】 請求項１において、掛け布団本体側の仕
   切り地は、表裏地間に介装される中地と表裏各地とのあ
   いだに介装される表裏側仕切り地で構成され、かつこれ
   ら表裏仕切り地は、左右方向または前後方向の少なくと
   も一方に互いに齟齬する状態で縫着されているものとす
   る一方、肩口覆い部側の仕切り地は、前記表裏側両仕切
   り地を足した表裏方向の幅よりも表裏方向幅広に設定さ
   れていることを特徴とする羽毛掛け布団。