JP2549519Y2 - 自動車の車体構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は自動車の車体構造、とり
わけ、車体フロントウエスト部のカウルボックスサイド
周りの構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】車体フロントウエスト部のカウルボック
スは周知のように車載空調装置の外気取入れ部としての
機能に持つ他、車幅方向の骨格部材としての機能を併有
し、このカウルボックスの両側端部はフードレッジパネ
ルとフードレッジレインフオースとによって車体前後方
向に延設する閉断面部と共にフロントピラーに結合され
て、車体フロント骨格部材同志の集合部ともなってい
る。前記フードレッジパネルにはカウルボックスに近接
して、フロントサスペンションストラットを支持するス
トラットハウジングが設けられており、このストラット
ハウジングの剛性を確保するため、該ストラットハウジ
ングの上面部分からカウルボックスに跨って、具体的に
はカウルサイドパネル上面およびカウルトップパネル上
面に跨ってカウルトップブレースを接合して補強し、ス
トラットハウジングに作用する入力を前記骨格部材同志
の集合部分に負担，分散させるようにしている。この類
似構造は、例えば実公平３−４６２２号公報に示されて
いる。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】ストラットハウジング
とカウルボックスサイド前側の各上面部分に跨ってカウ
ルトップブレースを接合してあるため、車両の前面衝突
時にこのカウルトップブレース接合部分は剛性が高く維
持されて圧潰変形が少なく、該カウルトップブレース接
合部分の後方部分でカウルサイドパネルおよび該カウル
サイドパネルを接合したフードレッジレインフオースと
で形成された閉断面部が圧潰変形するようになる。

【０００４】一方、このカウルサイドパネルの上面には
フードヒンジが設置されているため、前述のようにカウ
ルトップブレース接合部分の後方で閉断面部が圧潰変形
すると、フードヒンジ位置が後退移動することになるた
め、このようなフードヒンジ位置の後退移動に起因する
不都合を生じさせないためにも、前記カウルサイドパネ
ルやフードレッジレインフオースの板厚を増大して剛性
を高め、前面衝突時における圧潰変形を極力少なく抑え
る必要が生じる。この結果、コスト的におよび重量的に
不利となってしまうのみならず、 前面衝突時における
圧潰変形量の減少による衝突エネルギー吸収量の減少を
補うために、他の部分に緩衝構造を付設する等、車体の
チューニングが煩雑となってしまう不具合を生じてしま
う。

【０００５】そこで、本考案は簡単な構造により、車体
パネル材の板厚増大を伴うことなく、車両前面衝突時に
おけるフードヒンジ位置の後退移動を抑制できると共
に、衝突エネルギー吸収量を確保することができる自動
車の車体構造を提供するものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】カウルボックスの両側開
口部を閉塞したカウルサイドパネルと、後端をフロント
ピラーに接合したフードレッジレインフオースとを接合
して、これらカウルサイドパネルとフードレッジレイン
フオースとでカウルボックスの両側端部に閉断面部を形
成し、前記カウルボックスの上面からストラットハウジ
ングの上面に跨がって略コ字型のカウルトップブレース
を接合してなる構造において、前記カウルサイドパネル
のフードヒンジを取り付ける部位の内面にヒンジブレー
スを接合すると共に、該ヒンジブレースの後端をフロン
トピラーに接合する一方、前記ヒンジブレースの前端は
カウルトップブレースよりも後方に配置してある。

【０００７】

【作用】車両の前面衝突時にカウルサイドパネルとフー
ドレッジレインフオースとで形成した閉断面部に車体後
方に向けて衝突入力が作用した場合、カウルサイドパネ
ルのヒンジブレース接合部分では、該ヒンジブレースが
その後端をフロントピラーに接合してあって突張り材と
して機能するため圧潰変形が抑制され、フードヒンジ位
置の後退移動が回避される。一方、ヒンジブレース接合
部分の前方部位では、カウルサイドパネルおよびフード
レッジレインフオースで形成した閉断面部が圧潰変形
し、この変形によって衝突エネルギーを吸収する。

【０００８】

【実施例】以下、本考案の実施例を図面と共に詳述す
る。

【０００９】図１〜３において、１はダッシュアッパパ
ネル２とカウルトップパネル３とからなるカウルボック
スで、その両側の開口部はカウルサイドパネル４で閉塞
されている。カウルサイドパネル４は断面略コ字形に形
成してあり、その下壁５をダッシュアッパパネル２上に
接合すると共に、上壁６をカウルトップパネル３の上壁
端フランジ３ａの下面に接合し、かつ、縦壁７をカウル
トップパネル３の前壁端フランジ３ｂに接合してあっ
て、該カウルサイドパネル４の後端縁は建付け誤差吸収
のためフロントピラー８と非接合としてある。

【００１０】９はエンジンルーム１０の側壁を構成する
フードレッジパネルで、その後端縁は図外のダッシュロ
アパネル側縁とダッシュサイドパネル１１前縁と共に一
体的に接合され、かつ、該フードレッジパネル９の上側
部には断面略コ字状のフードレッジレインフオース１２
を接合して、車体前後方向に延在して強度骨格部を構成
する閉断面部１３を形成している。フードレッジレイン
フオース１２のカウルサイドパネル４に対応する後端部
は、断面逆Ｌ字状に形成されていて、ダッシュアッパパ
ネル２の側縁部上に接合してあると共に、後端末部をフ
ロントピラー８に接合してある。また、このフードレッ
ジレインフオース１２の後端部上壁にはフランジ１４を
曲折成形してあり、このフランジ１４をカウルサイドパ
ネル４の上壁６に曲折成形したフランジ１５に接合し
て、これらカウルサイドパネル４，ダッシュアッパパネ
ル２，フードレッジレインフオース１２によって、カウ
ルボックス１の両側端部に閉断面部１３と直線状に連続
する閉断面部１６を形成してある。

【００１１】前記フードレッジパネル９にはカウルボッ
クス１に近接し、図外のフロントサスペンションストラ
ットを支持するストラットハウジング１７を設けてあ
る。このストラットハウジング１７の上面部分からカウ
ルボックス１のサイド部前縁に跨って、具体的にはカウ
ルサイドパネル４の上壁６前端部、およびカウルトップ
パネル３の上壁前縁部に亘ってカウルトップブレース１
８を接合して、ストラットハウジング１７の剛性を確保
するようにしてある。即ち、ストラットハウジング１７
に作用する入力をフロントピラー８，カウルボックス
１，閉断面部１６の集合部分に負担，分散させるように
してある。

【００１２】そして、前記カウルサイドパネル４の上壁
６のカウルトップブレース１８接合部位よりも後方に設
定されたフードヒンジ１９を取り付ける部位の内面に、
ヒンジブレース２０を接合してある。このヒンジブレー
ス２０は車幅方向両側縁にフランジ２１，２２を曲折成
形してあり、フランジ２２をカウルサイドパネル４の縦
壁７に接合してある一方、フランジ２１をカウルサイド
パネル４のフランジ１５とフードレッジレインフオース
１２のフランジ１４との間に挾んで一体的に接合してあ
る。ヒンジブレース２０の裏面にはウエルドナット２４
を配設してあり、フードヒンジ１９を前記上壁６上に載
置した状態で、このウエルドナット２４にボルト２５締
結して固定するようにしてある。また、ヒンジブレース
２０の後縁にはフランジ２３を上向きに曲折成形してあ
って、このフランジ２３を前記上壁６の後縁に廻り込ま
せてフロントピラー８に接合してある。

【００１３】以上の実施例構造によれば、車両の前面衝
突時には、衝突入力によりフードレッジパネル９とフー
ドレッジレインフオース１２とで形成した閉断面部１３
が圧潰変形するが、ストラットハウジング１７とカウル
ボックス１との間に跨って接合したカウルトップブレー
ス１８配設部分は剛性が高く維持されていて、該部分の
圧潰変形量は少ない。

【００１４】また、この閉断面部１３に直線状に連続す
るカウルサイドパネル４，フードレッジレインフオース
１２で形成された閉断面部１６にも同様に衝突入力が作
用するが、カウルサイドパネル４の上壁６の内面に接合
したヒンジブレース２０をフロントピラー８に接合して
あるために、該ヒンジブレース２０が突張り材として機
能し、該ヒンジブレース２０配設部分の圧潰変形が抑制
されて、フードヒンジ１９位置の後退移動が回避され
る。この結果、フードヒンジ１９位置の後退移動に伴う
図外のエンジンフードの車室内への侵入の懸念を払拭す
ることができる。一方、この閉断面部１６のヒンジブレ
ース２０接合部分の前方部位、本実施例にあってはヒン
ジブレース２０接合部位と前記カウルトップブレース１
８接合部位との間にはクラッシャブルゾーンａが存在し
ているため、該部分で閉断面部１６が圧潰変形して衝突
エネルギー吸収量を確保することができる。

【００１５】ここで、前述のヒンジブレース２０はカウ
ルサイドパネル４の上壁６の内面に接合してあるため、
該上壁６の上面に段差の発生がなく、従って、図外のフ
ロントフェンダやエンジンフードの建付け性が悪化する
ようなことはない。これは、前述のフードヒンジ位置確
保のためには、上壁６の上面にヒンジブレース２０を接
合してもよいのであるが、前記建付け性を考慮すると、
該上壁６のヒンジブレース２０配設部分を、ヒンジブレ
ース２０の板厚相当で下方に有段成形して上壁６とヒン
ジブレース２０との面一性を出す必要があって、この段
差発生によって上壁６の剛性が損なわれてしまう不具合
を生じてしまうが、前述の上壁６裏面へのヒンジブレー
ス２０の接合，配置によって、フロントフェンダ，エン
ジンフードの建付け性確保と、上壁６の剛性確保の両立
を図れるのである。

【００１６】また、ヒンジブレース２０のフランジ２１
に、図４に示すように上方に突出するフェンダ固定ガイ
ド２６を延設しておけば、フロントフェンダ２７の配設
時に、このフェンダ固定ガイド２６にフロントフェンダ
２７を摺接させて、フロントフェンダ２７の建付け精
度，取り付け作業性を向上させることもできる。

【００１７】

【考案の効果】以上のように本考案によれば、カウルボ
ックス側部に配置されてフードレッジレインフオースと
で強度部材の閉断面部を形成するカウルサイドパネルの
フードヒンジ取り付け部位の内面には、ヒンジブレース
を接合してその後端をフロントピラーに接合してあるた
め、車両の前面衝突時に作用する衝突入力に対して、こ
のヒンジブレースが突張り材となって圧潰変形を抑制
し、フードヒンジ位置の後退移動を回避してエンジンフ
ードの車室内侵入の懸念を払拭することができると共
に、前記ヒンジブレース配設部前方での前記閉断面部の
圧潰変形を許容して、衝突エネルギー吸収量の確保を行
うことができる。

【００１８】また、ヒンジブレースは前述のようにカウ
ルサイドパネルの内面に接合して、カウルサイドパネル
外表面に段差を生じることがないので、エンジンフード
やフロントフェンダの建付け性を確保することもできる
という実用上多大な効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例の要部を示す斜視図。

【図２】図１のＡ−Ａ線に沿う断面図。

【図３】図１のＢ−Ｂ線に沿う断面図。

【図４】本考案の異なる例を示す図３と同様の断面図。

【符号の説明】

１…カウルボックス、２…ダッシュアッパパネル、３…
カウルトップパネル、４…カウルサイドパネル、８…フ
ロントピラー、９…フードレッジパネル、１２…フード
レッジレインフオース、１６…閉断面部、１９…フード
ヒンジ、２０…ヒンジブレース。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 カウルボックスの両側開口部を閉塞した
   カウルサイドパネルと、後端をフロントピラーに接合し
   たフードレッジレインフオースとを接合して、これらカ
   ウルサイドパネルとフードレッジレインフオースとでカ
   ウルボックスの両側端部に閉断面部を形成し、前記カウ
   ルボックスの上面からストラットハウジングの上面に跨
   がって略コ字型のカウルトップブレースを接合してなる
   構造において、前記カウルサイドパネルのフードヒンジ
   を取り付ける部位の内面にヒンジブレースを接合すると
   共に、該ヒンジブレースの後端をフロントピラーに接合
   する一方、前記ヒンジブレースの前端はカウルトップブ
   レースよりも後方に配置したことを特徴とする自動車の
   車体構造。