JP2548822B2 - マカラスムギ由来の糖タンパク質、その製造法及びそれを含有する免疫調節剤 - Google Patents

マカラスムギ由来の糖タンパク質、その製造法及びそれを含有する免疫調節剤

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、マカラスムギの実のエキスからの単離によ
り製造される、38kDの分子量を有する糖タンパク質と、
該糖タンパク質の製造法と、該糖タンパク質を作用物質
として有する薬剤と、免疫調節剤を製造するための使用
とに関する。
新たに発見された糖タンパク質は水溶性であり、38kD
の分子量を有し、アスパルテートのグルタメートに対す
る比が0.97、アラニンのバリンに対する比が1.03、バリ
ンのヒスチジンに対する比が10.6、バリンのリジンに対
する比が2.3及びバリンのアルギニンに対する比が3.5と
いうアミノ酸比を有する。ポリペプチド鎖(アミノ酸残
基のみ)の見掛けの分子量として、22.2kDの値が生じ
る。糖タンパク質の分子量はアミノ酸及び糖の分析の結
果から算出された。本発明の糖タンパク質は、更に、中
性ヘキソース、詳しくは、グルコース(45%)、ガラク
トース(8%)、マンノース(31%)及びアラビノース
(15%)を含有する。オサミン(グルコサミン及びガラ
クトースアミン)の含量は0.1%以下である。アミノ酸
残基部分は58.4%であり、糖残基部分は41.6%である。
算出された値は全加水分解産物のガスクロマトグラフィ
及びアミノ酸分析によって得られた。
従って、本発明の糖タンパク質は、多糖類部分に結合
されているポリペプチド鎖によって形成される。
好ましい本発明の糖タンパク質では、タンパク質画分
は約11モル%のアスパラギン酸、約11モル%のグルタミ
ン酸及び約8モル%のトレオニンから成る。グルコー
ス、ガラクトース、マンノース及びアラビノースは、好
ましくは例えば6:1及び4:2の比で存在する。
本発明の糖タンパク質はマカラスムギの実のエキスか
ら抽出され得る。
このために好ましい本発明の方法では、抽出物の高分
子成分は、引続き加工するため、好ましくは透析によっ
て濾過される。次いで、高分子成分は、糖タンパク質に
適当な沈殿剤、好ましくは硫酸アンモニウムによって沈
殿される。生じた沈殿物は、例えば遠心分離によって得
られ、水に溶解され、不純塩を除去するため、透析され
る。
精製した溶液を保存のために凍結乾燥して、新たに溶
解することは好ましい。次いで、成分を分子量領域に従
って分離し、分子量領域38kDを分離させる。好ましくは
ゲルクロマトグラフィによって成分を分離する。発見さ
れた活性画分を濃縮し、場合によっては新たに凍結乾燥
することができる。
本発明の方法を実施する前に、脂質及び核酸のような
高分子の夾雑物(Begleitstoffe)をエキスから遊離さ
せることは好ましい。このために、第4級アンモニウ
ム、例えば塩化ピリジルセチルアンモニウム、好ましく
は臭化トリメチルセチルアンモニウムと共に沈殿を行な
い、次いで、沈殿した夾雑物を分離させるために遠心分
離を行なうことができる。
安定性の理由から、沈殿及び遠心分離を好ましくは冷
温(約+4℃)で行なう。
透析のために、すなわち、ある分子量を有する分子を
所定の分子量と同じかそれより高いものも制限するため
に、一定の多孔膜を用いる。こうした多孔膜は中空繊維
カートリッジであってもよいが、螺旋限外濾過モジュー
ルを用いることは好ましい。PTGCの商品名で市販されて
いるミリポア社の膜を用いることは好ましい。当然なが
ら、所定の分子量以上の分子量を有する分子を、他の方
法により、例えば親水性の重合ゲルクロマトグラフィで
選択することができる。
成分を分子量に従って分離するために、30,000ドルト
ン以上の排除量(Ausschlussvolumen)を有し且つ改質
デキストランによって形成されている親水性の重合ゲル
を用いることは好ましい。「ゼファデックスG−50」と
いう商品名で市販されているゲルが適当である。
この場合、溶離された第1の画分を合体し、濃縮し、
透析する。次いで、濃縮して乾燥する。この乾燥を冷凍
乾燥によって行なうことは好ましい。平均的な寸法であ
り小型実験装置としても市場で入手できる凍結昇華装置
を用いて周知の方法で凍結乾燥を行なう。
凍結乾燥物の溶解後、ゲル濾過を行なう。濾過すべき
溶液は緩衝されており、同じ緩衝液で溶離を行なう。0.
1Mの炭酸アンモニウム緩衝液を用いるのは好ましい。濾
過を古典的な方法、特に紫外線スペクトル分析によって
280nmの波長で追跡することができる。このために用い
られたゲルも、「セファクライエルS−200」という商
品名で市販されている改質デキストランであることが好
ましい。
本発明の糖タンパク質は驚くべき薬理学的な性質、特
に、注目すべき免疫調節的性質及び良好な生体親和性を
有する。こうした性質の故に、本願の糖タンパク質を薬
剤として用いることの正しさが証明される。こうした薬
剤を、例えば、バクテリア又はウイルスの人間及び動物
への感染を処置し防止するために用いる。
急性及び慢性の感染の際に使用することは適当であ
る。バクテリアによる感染の例は気管支炎、扁桃炎、喉
頭炎、耳炎及び副鼻腔炎であり、ウイルスによる感染の
例は、ヘルペスウイルス、ピコルナウイルス、インフル
エンザウイルス、HIV又はサイトロメガロウイルスによ
って引き起こされる例である。
更に、本発明の糖タンパク質を、遺伝による抵抗力の
無さか又は一時的な抵抗力の無さによる感染し易さを治
療するために用いることができる。治療される患者及び
その時々に治療すべき病気によって、通常の用量を変え
る。例えば人間では、径口投与の場合に日に10乃至200m
g、直腸投与の場合に日に1乃至15mg及び非経腸投与の
場合に2乃至20mgである。
対応の薬学的組成物は例えば固体又は液体であっても
よく、通常医学で用いられる薬学的形状で、例えば単衣
錠及び糖衣錠、ゲルカプセル、顆粒、溶液、シロップ、
坐薬、注射可能な製剤、凍結乾燥製剤又は非凍結乾燥製
剤、卵、クリーム、ローション、滴剤、点眼剤、エアゾ
ールとして存在することができる。これらは通常の方法
で生成することができる。この場合、1つ又はそれ以上
の作用物質を、通常、以上のような薬学的組成物中に用
いられる賦形剤、例えばタルク、アラビアゴム、乳糖、
澱粉、ステアリン酸マグネシウム、カカオバター、水性
又は非水性担体、動物又は植物由来の油脂性物質、パラ
フィン系誘導体、グリコール、種々の湿潤剤、分散助剤
又は乳化剤及び防腐剤に加えることができる。
以下の例により、本発明を限定することなく、本発明
を説明する。
1.カラスムギの糖タンパク質を含有する錠剤 50mgの糖タンパク質を含有するそれぞれ200mgの重量
を有する錠剤を製造するために、 カラスムギの糖タンパク質 50mg 微結晶性セルロース(例えば「アビセルph102」)129mg ポリビニルピロリドン(例えば「ポリプラスドーネX
L」) 20mg ステアリン酸マグネシウム 1mg を必要とする。
2.カラスムギの糖タンパク質を300mg含有するカプセル 100mgのカプセルに対し、 カラスムギの糖タンパク質 50mg 黄臘 10mg 大豆油 10mg 植物油 130mg カプセルケース 100mg を必要とする。
3.カラスムギの糖タンパク質を含有する溶液100mlの溶
液に対し、 カラスムギの糖タンパク質 500 mg ソルビット 10 g サッカリン・ナトリウム 0.05 g H2O(bidest.) 100ml以下 を必要とする。
4.カラスムギの糖タンパク質を含有する注射アンプル 2mgの糖タンパク質を含有するそれぞれ2mlの容量を有
する注射アンプルを製造するために、 カラスムギの糖タンパク質 2mg 生理食塩水 2.0ml以下 を必要とする。
5.カラスムギの糖タンパク質を含有する注入溶液 500mlの注入溶液に対し、 カラスムギの糖タンパク質 20mg 生理食塩水 500ml以下 を必要とする。
6.カラスムギの糖タンパク質を含有する軟膏100gの軟膏
に対し、 カラスムギの糖タンパク質 1 g Natriumcetylstearylosulfuricumと乳化剤(例えば「エ
ムルガーデF」)との混合物 17 g オレイン酸デシルエステル(例えば「セチオルV」)20
g p−ヒドロキシ安息香酸エステルとソルビン酸との混合
物(例えばニパソルビン) 0.5g H2O(bidest.) 61.5g 免疫学的拒絶反応を刺激するための薬学的実験免疫調節
活性 免疫調節活性を、抗体の形成を刺激する能力に基づい
て、マウスのリンパ球によって試験した。当業者に周知
であるイエルネの抗体斑点試験では、第1図に示すよう
に、カラスムギに由来する糖タンパク質は羊の赤血球に
対する抗体合成を著しく高めることができた。濃度が1
5.6μg/mlである場合、刺激は最大限、すなわち未処理
の対照よりも約8倍高かった。大腸菌から由来するリポ
多糖(LPS)である周知の刺激剤と比較して、60又は30
μg/mlという比較可能な濃度の場合の刺激は2倍乃至3
倍高かった。
マイトジェン活性 糖タンパク質のマイトジェン活性を、マウスの脾臓細
胞におけるリンパ球の変態によって測定した。この場
合、第2図に示すように、リンパ球のDNS中への[6−3
H]チミジンの組込みを測定する。ゲル濾過によって得
られた糖タンパク質の画分は、1.25μg/mlの濃度におい
て、細胞B細胞マイトジェン(LPS)の30μg/mlと同様
に強い刺激を起こさせる。糖タンパク質の同様な濃度を
もって、125μg/mlの予め精製された糖タンパク質によ
って刺激の50%が達成される。
インターロイキン1の誘導 インターロイキン1は、身体に固有の防御の中心的な
両受体として機能する免疫学的に非特異性のサイトカイ
ニンである。インターロイキン1は、リンパ球を活性化
し、急性期タンパクの発現を調節し、熱を誘導する性質
に基づき、炎症及び感染の分野において重要な意味を有
する。単核細胞又はマクロファージはインターロイキン
1の主要な生産者である。従って、第3図に示すよう
に、マクロファージ系統の試験を行なった。72時間内
で、カラムスギの糖タンパク質は、周知のようにインタ
ーロイキン1の分泌を誘導する、大腸菌由来のリポ多糖
とほぼ同様に強い刺激を起こさせる。予め精製された糖
タンパク質の濃度は60μg/mlであり、リポ多糖に対して
は10μg/mlであった。これに対し、未処理の対照では、
72時間以内で、組込みの割合の3分の1にしか達しなか
った。
【図面の簡単な説明】
第1図〜第3図は、本発明による糖蛋白の薬理学的効果
を試験した結果を示すグラフである。

Claims (16)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】マカラスムギ(Avena sativa)の実のエキ
    スからの単離により製造される、38kDの分子量を有する
    糖タンパク質であって、アスパルテートのグルタメート
    に対する比が0.97、アラニンのバリンに対する比が1.0
    3、バリンのヒスチジンに対する比が10.6、バリンのリ
    ジンに対する比が2.3及びバリンのアルギニンに対する
    比が3.5というアミノ酸比を有する糖タンパク質。
  2. 【請求項2】22.2kDというポリペプチド鎖の見掛けの分
    子量を有する請求項1に記載の糖タンパク質。
  3. 【請求項3】グルコース45%、ガラクトース8%、マン
    ノース31%及びアラビノース15%という組成で中性ヘキ
    ソースを有し、且つ0.1%以下のオサミン含量を有する
    請求項1または2に記載の糖タンパク質。
  4. 【請求項4】58.4%のアミノ酸残基部分と41.6%の糖残
    基部分とを有する請求項4に記載の糖タンパク質。
  5. 【請求項5】タンパク質画分が約11モル%のアスパラギ
    ン酸、約11モル%のグルタミン酸及び約8モル%のトレ
    オニンからなる請求項1ないし4のいずれか1項に記載
    の糖タンパク質。
  6. 【請求項6】グルコース対ガラクトース及びマンノース
    対アラビノースの比が約6:1または4:2である請求項1な
    いし5のいずれか1項に記載の糖タンパク質。
  7. 【請求項7】(a)高分子成分を濾過してそれを続けて
    加工すること、 (b)糖タンパク質に適した沈殿剤で高分子成分を沈殿
    すること、 (c)沈殿物を分離して溶解すること、 (d)不純塩を透析によって分離すること、 (e)分子量領域に従って成分を分離し、分子量領域38
    kDを分離すること、を特徴とする請求項1ないし6のい
    ずれか1項に記載の糖タンパク質の製造法。
  8. 【請求項8】透析によって高分子成分を濾過することを
    特徴とする請求項7に記載の糖タンパク質の製造法。
  9. 【請求項9】沈殿剤として硫酸アンモニウムを用いるこ
    とを特徴とする請求項7または8に記載の糖タンパク質
    の製造法。
  10. 【請求項10】透析後に凍結乾燥を行うことを特徴とす
    る請求項7ないし9のいずれか1項に記載の糖タンパク
    質の製造法。
  11. 【請求項11】ゲルクロマトグラフィによって、分子量
    領域に従って成分を分離することを特徴とする請求項7
    ないし10のいずれか1項に記載の糖タンパク質の製造
    法。
  12. 【請求項12】クロマトグラフィに用いられた溶液は緩
    衝されており、同様な緩衝液によって溶離することを特
    徴とする請求項11に記載の糖タンパク質の製造法。
  13. 【請求項13】0.1Mの炭酸アンモニウム緩衝液を用いる
    ことを特徴とする請求項12に記載の糖タンパク質の製造
    法。
  14. 【請求項14】高分子成分を選択する前に脂質及び核酸
    を沈殿させて分離することを特徴とする請求項7ないし
    13のいずれか1項に記載の糖タンパク質の製造法。
  15. 【請求項15】沈殿のために第4級アンモニウムを用い
    ることを特徴とする請求項14に記載の糖タンパク質の製
    造法。
  16. 【請求項16】請求項1ないし6のいずれか1項に記載
    の糖タンパク質を作用物質として含有する免疫調節剤。
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