JP2547497Y2 - 矩形断面コンクリート布基礎用プレキャスト基礎材 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】イ．考案の目的 (1) 産業上の利用分野 この考案は小・中規模建物用のコンクリート布基礎に関
し、更に詳しくは、矩形断面コンクリート布基礎に使用
されるプレキャスト基礎材に関する。

【０００２】(2) 従来の技術 従来の小・中規模建物用現場打ちコンクリート布基礎
は、図６に示すように、横断面が凸形をなし、水平長手
方向に連続して形成されている。すなわち、図におい
て、ａは基礎地盤に定着される幅広の底盤部であり、ｂ
は該底盤部ａの中央より立ち上がる幅狭の立壁部であ
り、これらにより躯体部が構成され、該躯体部には配力
鉄筋ｃが配されている。そして、このような断面を凸形
とすることにより応力的に有利な構造を実現することに
なる。しかしながら、その反面、形状が複雑化し、コン
クリートの打込み施工の効率が悪くなる。すなわち、底
盤部ａの型枠を組み立て、該型枠内にコンクリートを打
設し、しかる後このコンクリートの固結を待って立壁部
ｂの型枠を組み立ててコンクリートを打設する、という
ように二段階の施工となり、施工に時間と手間を要する
ことになる。また、プレハブ建築においては立壁部ｂ上
にプレキャストコンクリート壁版ｄが高さ調整セメント
ｅを介して載置されるが、布基礎の立壁部ｂとコンクリ
ート壁版ｄとの結合は立壁部ｂ上に植設されたアンカー
ボルトｆ以外に格別の配慮がなされておらず、この結合
部の強度に問題がある。更に、高さ調整セメントｅのみ
によれば、建物の外側と内側との止水性が不充分であ
り、この部分からの雨水の侵入による基礎部の劣化も問
題となる。本出願人は上述の観点から、先に実願昭６３
−３８８８４号において、「実質的に等幅の矩形断面を
有し、上面の天端幅がその上に載置されるプレキャスト
コンクリート壁版の厚さよりも少なくとも２倍以上の幅
を有し拡幅されている、ことを特徴とする現場打ちコン
クリート布基礎。」を提案した。そして、該先願技術に
よれば、矩形断面であるので、型枠の設置施工が容易と
なり、かつ、コンクリート打設が一度打ちで済むので施
工の効率が向上する、との利点を有する。

【０００３】(3) 考案が解決しようとする問題点 本考案は上記先願技術の矩形断面形状をなす布基礎を更
に発展させたものであって、布基礎の構築における施工
性並びに品質の向上を図るとともに、その上部に載置さ
れるコンクリート壁版との強固な結合並びに良好な止水
性が得られる矩形断面コンクリート布基礎用プレキャス
ト基礎材を提供することを目的とする。

【０００４】ロ．考案の構成 (1) 問題点を解決するための手段 本考案の布基礎用プレキャスト基礎材は上記目的を達成
するため、以下の構成を採る。すなわち、相対向する側
壁及び該側壁の底部を連結する底板よりなる外郭形状が
矩形状をなし、断面がＵ字形の躯体部を有し、前記側壁
の上縁の内側には切欠き部が凹設され、前記躯体部の両
端部には該躯体部に配される配力鉄筋が所定長にわたっ
て露出され、前記切欠き部には該躯体部に配されるスタ
ーラップが露出されていることを特徴とする。

【０００５】(2) 作用 布基礎の構築施工において、水平に並べられたプレキャ
スト基礎材の露出したスターラップに配力筋が架け渡さ
れ、かつ、このプレキャスト基礎材の溝部に中詰めコン
クリートが打設される。該中詰めコンクリート中にアン
カーボルトが埋め込まれ、また、布基礎の内側寄りにス
ターラップの露出部と交差して鉛直補強鉄筋が植設され
る。しかる後、この布基礎上にアンカーボルトを介して
プレキャストコンクリート壁版が直接的に載置される。
プレキャストコンクリート壁板には水平補強鉄筋が取り
付けられ、この水平補強鉄筋と鉛直補強鉄筋とを交差さ
せ、当該交差部に増打ちコンクリートが打設される。プ
レキャスト基礎材の相互は、配力筋の露出部の相互を交
差させ、コンクリートを打設して接合される。この布基
礎とコンクリート壁版とは、増打ちコンクリート部にお
いて、水平及び鉛直補強鉄筋により強固な結合が得ら
れ、かつ長手方向に連続した止水部を形成する。

【０００６】(3) 実施例 本考案の矩形断面コンクリート布基礎用プレキャスト基
礎材の実施例を図面に基づいて説明する。図１〜図４は
その一実施例の矩形断面コンクリート布基礎を示す。図
１及び図２はこのコンクリート布基礎を構成するプレキ
ャスト基礎材Ｈを示す。このプレキャスト基礎材Ｈは、
断面がＵ字形をなし、長手方向に長い鉄筋コンクリート
製の躯体部１を主体とする。すなわち、該躯体部１は互
いに相対して配される側壁部２と該側壁部２の底部を連
結する底板部３とからなり、内部に溝部Ｉが形成され
る。側壁部２の上部には内側に臨んで切欠き部４が長手
方向に凹設される。躯体部１の幅及び高さは矩形断面布
基礎として所定の寸法に決められる。すなわち、同一の
支持荷重の条件で、この躯体部１の高さｈは従来のフー
チング付き布基礎の高さと同程度であるが、その幅ｂは
従来のフーチング付き布基礎の立壁部の幅よりも大きく
され、底盤部よりも小幅とされる。また、その長さは、
可及的長くされることが好ましいが、輸送の都合等で約
８ｍを限度とする。躯体部１は、断面構造において、水
平方向に配された配力筋５と、該配力筋５相互を結合す
るスターラップ６と、これらの鉄筋を包み込むコンクリ
ート７とからなる。配力筋５は躯体部１の両側端部より
突出し、該露出部８はその先端８ａがフック状に折り曲
げられる。スターラップ６はその上端部が切欠き部４に
露出し、その先端６ａはフック状に折り曲げられる。本
実施例では両側のスターラップ６は同高とされている
が、片側のスターラップ６の上端部を更に延設し（６
ａ’破線表示）、内方に折り曲げておくこともある。こ
のプレキャスト基礎材Ｈは工場で製作されるものであ
り、オートクレーブ養生等によりコンクリートは緻密に
仕上げられる。また、両側壁部２の天端面２ａの水準は
正確になされる必要があるが、工場生産であるので高い
精度で仕上げられる。

【０００７】図３及び図４は上述したプレキャスト基礎
材Ｈを使用して施工される布基礎構造を示す。図におい
て、Ｅは地盤であり、該地盤Ｅに溝１０が適宜深さに掘
り下げられ、該溝１０の底部に割り栗石１１並びに均し
コンクリート１２が打設される。本プレキャスト基礎材
Ｈはこの均しコンクリート１２上に設置される。１４は
本プレキャスト基礎材Ｈの溝部Ｉ内に現場において打設
される中詰めコンクリートである。この上面１４ａはプ
レキャスト基礎材Ｈの上面２ａに揃えられ、平坦面を形
成する。この中詰めコンクリート１４の打設に当たっ
て、スターラップ６の上部に交差して配力筋１５が設置
され、また、横筋１６が該配力筋１５に交差して配する
態様を採ることができる。１７はこの中詰めコンクリー
ト１４上に長手方向に適宜間隔を存して植設されたアン
カーボルトである。該アンカーボルト１７は下方のアン
カー部１７ａが中詰めコンクリート１４中に埋め込ま
れ、上方のねじ部１７ｂが中詰めコンクリート１４の上
面１４ａより鉛直に立ち上がる。更に、布基礎の内側寄
りに、スターラップ６の露出部６ａと交差して鉛直補強
鉄筋１８が中詰めコンクリート１４中に植設される。該
鉛直補強鉄筋１８の間隔はアンカーボルト１７の間隔よ
り小さく、すなわち密に配されるが、アンカーボルト１
７と重ならないようにされる。なお、前記したようにス
ターラップ６の上端部を延設した態様においては、この
延設部を折り返して鉛直補強鉄筋に替えることができ
る。

【０００８】２０はこの布基礎の上面すなわち中詰めコ
ンクリート１４の上面１４ａ上に載置され、建物の外壁
となるプレキャストコンクリート壁版であって、所定の
厚みを有する。該コンクリート壁版２０はその下部に、
内方に向けて開口する凹部２１が形成され、この凹部２
１に臨んで前述したアンカーボルト１７を挿通するボル
ト挿通孔２２を有する取付け金具２３が固定されてい
る。従って、凹部２１及び取付け金具２３は前記アンカ
ーボルト１７に対応するように一定間隔をもって配され
るものであり、またボルト挿通孔２２の径はアンカーボ
ルト１７を遊嵌する大きさとされ、かつ、そのピッチは
アンカーボルト１７のピッチに等しい。該コンクリート
壁版２０の下部には、水平補強鉄筋２５が該コンクリー
ト壁版２０の内側面より突出して配されている。該水平
補強鉄筋２５の間隔は、コンクリート壁版２０の布基礎
上への設定位置において、布基礎より突出している鉛直
補強鉄筋１８の間に配されるように決められる。２７は
取付け金具２３のボルト挿通孔２２上に突出するアンカ
ーボルト１７のねじ部１７ｂに螺装される締付けナット
である。また、布基礎の上面内側及びコンクリート壁版
２０の下部内側には、前述の鉛直及び水平補強鉄筋１
８，２５の交差部に増打ちコンクリート２８が長手方向
に沿って連続的に打設される。該増打ちコンクリート２
８の一部はコンクリート壁版２０の凹部２１に充填され
る。更に、図において、３０は掘削溝１０に充填された
埋戻し土、３１は建物側の割り栗石、３２は床コンクリ
ートである。

【０００９】プレキャスト基礎材Ｈ相互の接合は、配力
筋５の露出部８の相互を交差させ当該部に型枠を設置
し、コンクリートを打設して行う。あるいは、型枠に代
わり、第５図に示す接合用のプレキャスト基礎材を配し
て行うことができる。すなわち、第５図（ａ）に示すＩ
型プレキャスト基礎材Ｊは直線部に使用され、（ｂ）図
に示すＬ型プレキャスト基礎材Ｋは角部に使用され、
（ｃ）図に示すＴ型プレキャスト基礎材Ｌは直交部に使
用される。

【００１０】叙上の布基礎の構築において、プレキャス
ト製の基礎材Ｈを使用して行われるので、施工速度が更
に高まる。また、プレキャスト基礎材Ｈは正確な矩形度
をなすので、中詰めコンクリート１４の上面１４ａの平
面は容易かつ正確に出すことができ、このため、布基礎
上面に高さ調整セメントのような手段を施すことなく、
直接的にプレキャスト壁版２０を載置することができ
る。しかして、プレキャスト壁版２０はその下面を布基
礎の上面１４ａに密接して載置されるとともに、増打ち
コンクリート２８によって強固に結合され、かつ、止水
性も向上する。

【００１１】ハ．考案の効果 本考案の矩形断面コンクリート布基礎のプレキャスト基
礎材によれば、溝部への中詰めコンクリートの打設によ
り容易に矩形断面布基礎が得られ、かつ、アンカーボル
トが中詰めコンクリートを介して植設されるとともに、
露出したスターラップを介して配力筋及び鉛直補強鉄筋
が配置され、布基礎の構築施工における施工速度を高め
ることができ、かつ、その品質並びに強度が向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の矩形断面コンクリート布基礎のプレキ
ャスト基礎材の一態様を示す斜視図。

【図２】図１の断面図。

【図３】このコンクリート布基礎の設置状態を示す断面
図。

【図４】図３のＸ方向矢視図。

【図５】他のプレキャスト基礎材の態様図。

【図６】従来の布基礎の断面図。

【符号の説明】

Ｈ…プレキャスト基礎材、１…躯体部、２…側壁、３…
底板、４…切欠き部、５…配力鉄筋、６…スターラッ
プ、１４…中詰めコンクリート、１７…アンカーボル
ト、１８…鉛直補強鉄筋、２２…ボルト挿通孔、２５…
水平補強鉄筋、２８…増打ちコンクリート

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】相対向する側壁及び該側壁の底部を連結す
   る底板よりなる外郭形状が矩形状をなし、断面がＵ字形
   の躯体部を有し、 前記側壁の上縁の内側には切欠き部が凹設され、 前記躯体部の両端部には該躯体部に配される配力鉄筋が
   所定長にわたって露出され、 前記切欠き部には該躯体部に配されるスターラップが露
   出されている、ことを特徴とする布基礎用プレキャスト
   基礎材。