JP2541291Y2 - 真空ポンプ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、真空チャンバ内を真空にする真空ポンプに
関し、特にその内部のロータの表面にネジ部を有する真
空ポンプの改良に関する。

〔従来の技術〕

従来、例えばIC製品等を製造する場合に、各工程を各
作業室内において行っており、一作業室内で一工程が完
了すると、被作業物を次の作業室へ搬送している。ここ
で、一作業室においてこの室内を真空にする必要がある
場合があり、この場合には真空ポンプを使用している。

このような真空ポンプとしては従来、例えば第３図に
示すような複合型ターボ分子ポンプがある。同図におい
て、符号101はケーシングであり、このケーシング101に
は吸込口部102および排出口部103が形成されている。ケ
ーシング101内にはロータ104が収装され、このロータ10
4には、ケーシング101の内周壁面に向かって半径外方に
突出するロータ翼105と、螺旋状のネジ溝を有するネジ
部108が形成されている。これらロータ翼105およびネジ
部108のそれぞれに対向して、ステータ翼106およびステ
ータ109がケーシング101の内周壁面に取り付けられてい
る。ロータ104はケーシング101内に装着されたモータ10
7によって回転され、ロータ翼105およびネジ部108がそ
れぞれ、ステータ翼106およびステータ109に対して相対
的に高速回転する。

また、ロータ104にはロータ軸112が固設され、ロータ
軸112は軸方向電磁石113および半径方向電磁石114によ
って回転自在に磁気浮上させられ、またロータ軸112が
前記電磁石113,114により磁気浮上させられて支持され
ない場合に、ロータ軸112に接触してこれを回転自在に
支持する保護軸受115,116がロータ軸112の外側部材に設
けられている。

〔考案が解決しようとする課題〕

しかしながら、このような従来のターボ分子ポンプに
あっては、第４図に示すように、ネジ部108のネジ山108
aのガス吸引下流側の終端面（図中下端面）は、ロータ1
04のガス吸引下流側の端面（図中下端面）と同一面に一
致するように形成されている。そして、互いに隣り合う
ネジ山108aの軸方向相互間にはネジ溝108bが形成され、
このネジ溝108bの底隅部は刃物のエッジにより鋭く抉り
取られて加工されているため、ロータ104の回転時の遠
心力によりそのネジ溝108bの底隅部に応力が集中しやす
い。特に第４図におけるネジ山108aの終端部Ｂにおけ
る、ネジ溝108bの底隅部Ｃ（第５図参照）は加工終了時
に刃物が抜ける場所であるため、加工抵抗の偏りにより
切れ込みが入り易くなっている。このため、この底隅部
Ｃから亀裂が入り易く、回転時の遠心力によりロータ10
4がそこから破壊する虞があった。

そこで本考案は、このような問題点を解決することを
課題とするものである。

〔課題を解決するための手段〕

上記課題を解決するために、本考案にあっては、軸方
向相互間にネジ溝を形成する螺旋状のネジ山が表面に突
出して設けられたロータを有する真空ポンプにおいて、
前記ネジ山のガス吸引下流側端面の位置を前記ロータの
ガス吸引下流側端面の位置より短かくなる側にずらし、
前記ネジ山のガス吸引下流側端面の根元部に凹Ｒ部を設
けて形成するように、さらにネジ山のガス吸引下流側の
終端部に、そのガス吸引下流側の面とその隣接するネジ
溝側の側面とを凸Ｒ部により結合して形成するように構
成としたものである。

〔作用〕

このような構成の真空ポンプによれば、ネジ山のガス
吸引下流側端面の位置をロータのガス吸引下流側端面の
位置より短かくなる側にずらして形成するように構成し
たため、ネジ山のガス吸引下流側の端部におけるネジ溝
の底隅部において、加工終了時に刃物が抜けて加工抵抗
の偏りによりそこに切れ込みが入ったとしても、その
後、ネジ山のガス吸引下流側端面の位置がロータのガス
吸引下流側端面の位置より短かくなる側にずらして形成
されるように、ネジ山のガス吸引下流側の端部を少し削
り取ることにより、前記加工抵抗の偏りによる切れ込み
も一緒に削り取ることができ、さらに、ネジ山のガス吸
引下流側端面の根元部に凹Ｒ部を設けるように仕上げる
こと等によって、その根元部に応力が集中することを防
止することができるため、回転時の遠心力により、上記
切れ込みからさらに亀裂が入ってロータがそこから破壊
することを防止することができる。

〔実施例〕

以下、本考案を図面に基づいて説明する。第１図およ
び第２図は、本考案による真空ポンプの一実施例の要部
を示す図である。従来の真空ポンプと同様の構成の説明
は省略する。

同図において、符号４はターボ分子ポンプのロータで
あり、このロータ４の表面には、軸方向相互間にネジ溝
4bを形成する螺旋状のネジ山4aが突出して設けられてい
る。ロータ４の図中下端部（ガス吸引下流側端部）にお
いて、ネジ山4aのガス吸引下流側端面40の位置は、ロー
タ４のガス吸引下流側端面41の位置よりＨだけ短かくな
る側にずらして形成されている。

このため、ネジ山4aのガス吸引下流側の端部における
ネジ溝4bの底隅部において、加工終了時に刃物が抜けて
加工抵抗の偏りによりそこに切れ込みが入ったとして
も、その後、ネジ山4aのガス吸引下流側端面40の位置が
ロータ４のガス吸引下流側端面41の位置より短かくなる
側にずらして形成されるように、ネジ山4aのガス吸引下
流側の端部をＨだけ削り取ることにより、前記加工抵抗
の偏りによる切れ込みも一緒に削り取ることができ、従
来のように回転時の遠心力により、その切れ込みからさ
らに亀裂が入ってロータがそこから破壊することを防止
することができる。

また、第２図に示すように、ネジ山4aのガス吸引下流
側の端面40の根元部に凹Ｒ部4cが形成されているため、
ネジ山4aのガス吸引下流側の根元部の応力集中を防止し
て強度を向上させることができ、回転時の遠心力により
亀裂が入ってロータが破壊することを防止することがで
きる。

さらに、第１図に示すように、ネジ山4aのガス吸引下
流側の終端部に、そのガス吸引下流側の面40とその隣接
するネジ溝4b側の側面とを凸Ｒ部4dにより結合して形成
したため、前記加工抵抗の偏りによる切れ込みをさらに
完全に除去することができ、回転時の遠心力により亀裂
が入ってロータが破壊することをさらに確実に防止する
ことができる。

なお上記実施例においては、凹Ｒ部をネジ山4aのガス
吸引下流側の端面の根元部にだけに設けたが、すべての
ネジ山4aの側面の根元部に凹Ｒ部を設けるようにしても
よい。

また本考案は、従来のような複合型ターボ分子ポンプ
に限らず、翼の無い純粋なネジ溝型真空ポンプにも適用
することができることはもちろんである。

〔考案の効果〕

以上説明したように本考案によれば、ネジ山のガス吸
引下流側端面の位置をロータのガス吸引下流側端面の位
置より短かくなる側にずらし、前記ネジ山のガス吸引下
流側端面の根元部に凹Ｒ部を設けて形成するように構成
したため、ロータ回転時の遠心力により、加工終了時に
刃物が抜けるときできた切れ込みからさらに亀裂が入っ
てロータがそこから破壊することを防止することができ
る。

さらに、ネジ山のガス吸引下流側の終端部に、そのガ
ス吸引下流側の面とその隣接するネジ溝側の側面とを凸
Ｒ部により結合して形成するように構成することによ
り、上記の亀裂によるロータの破壊防止を確実にでき
る。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図は本考案による真空ポンプの一実施
例の要部を示す図であり、第１図は真空ポンプのロータ
のガス吸引下流側の端部の側面図、第２図は第１図にお
けるＡ−Ａ矢視断面図、第３図ないし第５図は従来の真
空ポンプを示す図であり、第３図はその全体断面図、第
４図はロータの一部断面側面図、第５図は第４図におけ
るネジ部のＤ矢視図である。 ４……ロータ 4a……ネジ山、4b……ネジ溝 4c……凹Ｒ部、4d……凸Ｒ部 40……ネジ山のガス吸引下流側端面 41……ロータのガス吸引下流側端面

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】軸方向相互間にネジ溝を形成する螺旋状の
   ネジ山が表面に突出して設けられたロータを有する真空
   ポンプにおいて、前記ネジ山のガス吸引下流側端面の位
   置を前記ロータのガス吸引下流側端面の位置より短くな
   る側にずらし、前記ネジ山のガス吸引下流側端面の根本
   部に凹Ｒ部を設けて形成することを特徴とする真空ポン
   プ。
2. 【請求項２】ネジ山のガス吸引下流側の終端部に、その
   ガス吸引下流側の面とその隣接するネジ溝側の側面とを
   凸Ｒ部により結合して形成することを特徴とする実用新
   案登録請求の範囲第１項記載の真空ポンプ。