JP2540639B2 - ビスマス系超電導体の製造方法 - Google Patents

ビスマス系超電導体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、ビスマス系超電導体の製造方法に関し、更
に詳しくはビスマス系超電導体を部分溶融して結晶化し
て製造する方法に関する。
〔従来の技術〕
近年、超電導特性を有する超電導材料で作製された超
電導磁石を用いて、核磁気共鳴(NMR)分析装置、該磁
気共鳴コンピュータ断層診断装置(MRI:Magnetic Reson
ance Imaging)、磁気浮上列車等が開発されつつあり、
また、核融合炉等の新エネルギー開発、MHD発電等の新
エネルギー変換技術にも超電導磁石の強磁界の適用が検
討されている。
このような超電導材料として、各種の酸化物超電導体
が研究開発されている。これら酸化物超電導体の中で
も、Bi−Sr−Ca−Cu−O系のビスマス系(以下、Bi系と
する。)超電導セラミックスは、臨界温度(Tc)が高
く、特に注目を集めている。
Bi系超電導体の製造において、高い臨界電流密度(J
c)を得るためには、焼成時に部分溶融して、その後結
晶化させる必要があるが、この結晶化においても高Tc相
と低Tc相とが同時に析出したり、超電導相以外の異相が
生じる等の問題がある。
そのため部分溶融状態での制御や結晶化のための熱処
理について、従来から種々の提案がなされている。例え
ば、特開平1−203257号公報では、Bi系超電導体を製造
する方法として、部分溶融後、700〜800℃で熱処理後、
500〜740℃まで徐冷し、その後急冷することが提案され
ている。
また、特開平1−226735号公報においては、Bi系超電
導体を部分溶融後、0.05℃/分程度の冷却速度で800℃
まで徐冷することが提案されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、上記従来の各種提案のBi系超電導体の
製造においても、十分高いJcを得るには至っていない。
本発明は、高Jcを有するBi系超電導体を得ることを目
的として、部分溶融を経由するBi系超電導体の製造にお
ける部分溶融後、部分溶融後から結晶化の工程について
種々検討した結果、本発明を完成した。
〔課題を解決するための手段〕
本発明によれば、部分溶融を経由するビスマス系超電
導体の製造方法において、部分溶融した後、結晶化温度
まで0.1〜2.0℃/分の冷却速度で徐冷し、この後結晶化
してなることを特徴とするビスマス系超電導体の製造方
法が提供される。
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のBi系超電導体は、Bi2Sr2CaCu2OX、Bi2Sr2Ca2
Cu3OX等の組成のものが代表的であるが、部分溶融後結
晶化する工程により超電導特性を発現する組成のもので
あればいずれでもよい。例えば、鉛(Pb)、アンチモン
(Sb)等を添加した組成のもの、定比組成からずれた非
定比組成のものまたはBi系超電導体組成の主要元素を他
の元素で一部または全部置換した組成のもの等のいずれ
かの組成のものも適用することができる。
上記Bi系超電導体は、通常、Bi2O3、SrCO3、CaCO3、C
uO等を所定量混合して、その後仮焼したもの、または融
点以上で溶融し急冷して非晶化したものを原料として用
いることができるが、部分溶融後、上記原料と同様の状
態になるものであれば、出発原料は特に制限されるもの
でない。また、出発原料の粒径等により部分溶融温度、
部分溶融時間、或いは部分溶融時の固相成分の分散状態
等を変化させる必要があるが、それ等は出発原料組成や
出発原料物性等により適宜選択すればよい。
本発明は部分溶融を経て結晶化するBi系超電導体の製
造方法であって、部分溶融後にその部分溶融温度から所
望のBi系超電導体の結晶化温度になるまで徐冷するもの
で、例えば、Bi2Sr2CaCu2OX組成のBi系超電導体であれ
ば、結晶化温度は750〜880℃の範囲にあり、部分溶融時
の温度880〜930℃の範囲のいずれかの温度から、上記75
0〜880℃の範囲のいずれかの温度まで徐々に冷却するこ
とになる。
上記のように部分溶融温度から結晶化温度まで徐冷す
ることにより1000A/cm2以上、好ましくは1500A/cm2以上
の高Jcを得ることができる。
これらの理由は明らかではないが、以下の理由と推定
される。即ち、部分溶融時にはBi系超電導体組成の一部
が溶解し、固相成分と液相成分とになり、冷却凝固過程
では部分溶融で生じた固相成分と液相成分とが反応して
超電導相の粒子成長が生起するとされている。
このとき、部分溶融から急激に冷却した場合には、冷
却凝固過程で最も顕著に生起する超電導相の粒子成長が
抑制され、その後の結晶化温度で固相成分と凝固した液
相成分との相互拡散により超電導相の粒子成長が生じる
ことになり、超電導特性を得るために結晶化時間を長時
間採る必要があり、Jcの低いものとなり、また、部分溶
融からの冷却を余りにも緩慢に行うと、部分溶融状態が
持続し、その間に固相成分の凝集が起こり、超電導相の
粒子成長を生起する固相成分と液相成分との均質な反応
が阻害され、Jcが低くなるものと推定される。
従って、本発明における部分溶融後の結晶化温度まで
の徐冷は、部分溶融状態から冷却凝固過程で上記の固相
成分と液相成分との反応による超電導相の粒子成長を十
分に生起させるように冷却速度を選択する必要がある。
本発明において、この徐冷時の冷却速度は、Bi系超電導
体組成によっても異なるが、一般的には0.1〜2.0℃/
分、好ましくは0.2〜1.0℃/分、より好ましくは0.5〜
1.0℃/分である。部分溶融後の徐冷の冷却速度が、上
記0.1〜2.0℃/分の範囲から外れると前記のような理由
から十分な高JcのBi系超電導体を得ることができない。
更にまた、本発明において部分溶融からの徐冷を結晶
化温度以下まで行ってもよいが、高Jcを得るには結晶化
温度で熱処理する必要があり、結晶化温度までの徐冷が
効率的である。
本発明においては、上記の通りBi系超電導体組成物の
部分溶融状態、即ち部分溶融温度から適切な冷却速度で
結晶化温度まで徐冷して、冷却凝固過程を経由させるこ
とにより、固相成分と液相成分との反応を十分生起させ
超電導体相の粒子成長を助長し、それにより高JcのBi系
超電導体を得ることができる。
更に、本発明において、Bi系超電導体を成形体として
得る場合、成形方法としてプレス成形法、スプレー塗布
法、ドクターブレード法等公知の何れの方法を用いても
よく、上記出発原料に応じて適宜選択すればよい。ま
た、上記のBi系超電導体の出発原料または成形体を部分
溶融する場合、金属基板上に載置するか、スプレー塗布
法等では所望形状の金属基板に直接塗布し、その後部分
溶融するのが一般的である。この場合、部分溶融時の金
属基板として、銀基板を用いるのが好ましい。本発明に
おいて、銀基板とは銀の単体で構成されたもの、またス
テンレス等の他の金属板やセラミック板上に約1μm〜
1mmの銀薄膜を形成したもの等銀成分上にBi系超電導体
の出発原料または成形体を載置して部分溶融できれば、
特に制限されるものでない。
部分溶融を銀基板上で行うと、理由は明らかでない
が、得られるBi系超電導体のJcが極めて高くなり好まし
い。
〔実施例〕
以下に、本発明の実施例について詳しく説明する。但
し、本発明は、本実施例に限定されるものでない。
実施例1〜15及び比較例1〜4 原料Bi2O3、SrCO3、CaCO3、CuOをBi:Sr:Ca:Cu=2:2:
1:2となるように水湿式混合後、大気中800℃で20時間仮
焼した。その後、仮焼物をエタノールを溶媒として、ポ
リポットにてジルコニア玉石を用いて1〜20時間粉砕
し、粉砕時間により得られる平均粒径2〜7μmに調節
した。
次いで、得られた仮焼粉砕粉末を厚さ0.5mm、20×5
(mm)の直方体に、プレス成形法、ドクターブレード成
形法及びスプレー塗布成形法にてそれぞれ成形した。
プレス成形は、鉄製金型を用い1トン/cm2の圧力で成
形した。
ドクターブレード成形は、仮焼粉末にバインダーのポ
リビニルブチラール10重量%、分散剤1重量%、可塑剤
5重量%をそれぞれ添加してトルエンとイソプロピルア
ルコールとの1:1の混合溶媒中で撹拌し、スラリーを作
製し、得られたスラリーを脱泡、粘度調節後にブレード
にて成形して120℃で乾燥して成形した。
得られたプレス成形体及びドクターブレード成形体は
それぞれ銀基板上に載置した。
スプレー塗布成形は、仮焼粉末に分散剤1重量%を添
加し、エタノール溶媒を用いて0.5mm厚さの銀基板上に
約700μmの厚さにスプレー塗布して成形した。
上記のようにして得た銀基板上の各成形体を、酸素雰
囲気下890℃で、用いた粉末の平均粒径に応じ5分〜1
時間保持して部分溶融した。その後、第1表に示した冷
却速度でそれぞれ第1表に示した各結晶化温度まで徐冷
した。
徐冷後、結晶化温度で20時間保持し結晶化した。結晶
化後、炉外に取り出し室温に急冷し、Bi系超電導体を得
た。
得られたBi系超電導体を4端子法にて液体窒素温度の
臨界電流密度(Jc)を測定した。その結果を第1表に示
した。
実施例1〜10及び比較例1〜2の結果から明らかなよ
うに、ドクターブレード成形のBi系超電導体は、冷却速
度0.1〜2.0℃/分の徐冷で、平均粒径及び結晶化温度に
拘らずJcが2500A/cm2以上となるが、比較例1〜2で
は、冷却速度が速いまたは遅いため、Jcは1000A/cm2
満である。
また、実施例11〜15のスプレー成形及びプレス成形に
おけるBi系超電導体も同様の冷却温度の徐冷で、高Jcが
得られた。一方、比較例3〜4でも、冷却速度が速いま
たは遅いため、Jcは1000A/cm2未満である。
実施例16〜23及び比較例5〜8 銀基板の代わりにジルコニア基板を用い、部分溶融を
溶融温度920℃で5〜30分とした以外は、実施例1と同
様に行いBi系超電導体を得た。その結果を第2表に示し
た。
この結果からも分かるように、冷却速度0.1〜2.0℃/
分で、Jc1500A/cm2以上となるが、冷却速度が上記範囲
を外れると500A/cm2以下のJcしか得られなかった。
実施例24〜31及び比較例9〜10 原料Bi2O3、SrCO3、CaCO3、CuOをBi:Sr:Ca:Cu=2:2:
1:2となるように水湿式混合後、白金ルツボ中に入れ120
0℃で30分溶融し、溶融後ツインローラを用いて溶融物
を冷却してフレーク上のフリットを得た。
得られたフリットをエタノールを溶媒として、振動ミ
ルにてジルコニア玉石を用いて1〜3時間粉砕し、粉砕
時間により得られる平均粒径3〜10μmに調節した。こ
こで得られた粉末は、X線回折の結果により、ガラス状
態であることが確認された。
得られた粉砕粉末を用い、実施例1と同様に成形体を
得て、部分溶融時間を5分〜3時間にした以外は実施例
1と同様にしてBi系超電導体を得た。その結果を第3表
に示した。
この場合も、冷却速度0.1〜2.0℃/分で極めて高Jcの
Bi系超電導体が得られることが分かった。
〔発明の効果〕 本発明は、部分溶融を経由し結晶化してBi系超電導体
を得る製造方法において、Bi系超電導体の組成による所
望の結晶化温度に保持して結晶化する場合、部分溶融温
度からその結晶化温度まで徐冷することにより、極めて
高臨界電流密度のBi系超電導体を得ることができる。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】部分溶融を経由するビスマス系超電導体の
    製造方法において、部分溶融した後、結晶化温度まで0.
    1〜2.0℃/分の冷却速度で徐冷し、この後結晶化してな
    ることを特徴とするビスマス系超電導体の製造方法。
  2. 【請求項2】前記部分溶融を銀基板上で行う請求項
    (1)記載のビスマス系超電導体の製造方法。
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