JP3623829B2 - REーBaーCuーO系酸化物超電導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に磁石との磁気反発力特性及び保磁力特性に優れたREーBaーCuーO系酸化物超電導体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
REーBaーCuーO系酸化物超電導体(REは1種もしくは2種以上の希土類金属元素)の原料混合体(前駆体)を融点温度以上に加熱溶融した後に、種結晶を接触させて種結晶から結晶を成長させ、REーBaーCuーO系酸化物超電導体を製造する方法としては、例えば、特開平5−193938号公報に記載の方法が知られている。この公報に記載の方法は、REBa2 Cu3 O7−x 相を有する超電導体を製造する際に、種結晶として、REBa2 Cu3 O7−x 相(以下、「123相」と略称する場合がある)を有する単結晶を用いるものである。この方法は、種結晶の「123相」を構成するRE元素と製造すべき超電導体の「123相」を構成するRE元素とを異ならしめてその組み合わせを選定することによって、種結晶の「123相」の生成温度が、製造すべき超電導体(前駆体)の「123相」の生成温度よりも高くなるようにして、種結晶による結晶成長を可能にしているものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述の従来の方法は、種結晶の「123相」の生成温度が製造すべき超電導体の「123相」の生成温度よりも高くなるように、それぞれを構成するRE元素を選定する必要がある。したがって、必然的にこの方法は、「123相」の生成温度が一番高いRE元素を構成元素とする超電導体を製造する場合には適用できない。これより高い生成温度の「123相」を有する種結晶を用意することができないからである。
【0004】
本発明は、上述の背景のもとでなされたものであり、「123相」の生成温度がより高い場合にも種結晶を用いた方法を適用可能にし、これにより、大型でより高い磁気反発力特性及び保磁力特性を有する酸化物超電導体を歩留まりよく製造することができるREーBaーCuーO系酸化物超電導体の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するために本発明は、
(構成1) REーBaーCuーO系酸化物超電導体(REはYを含む1種もしくは2種以上の希土類金属元素)の製造方法において、
RE化合物、Ba化合物、Cu化合物を、それぞれのmol%(RE,Ba,Cu)が、RE,Ba,Cu成分系のmol%を表わす三角座標上において、A(35,25,40)、B(35,35,30)、C(15,40,45)、D(15,30,55)の点で囲まれる領域の組成となるようにそれぞれ秤量して混合し、この混合粉を900〜1500℃の温度で焼成することによって得た仮焼粉末をペレット成形してペレット状の前駆体を形成し、
次に、この前駆体を990〜1300℃において加熱して固液共存状態にした後に種結晶温度にし、
次いで、種結晶としてNdGaO3 単結晶を前記前駆体に接触させ、
しかるのちに、前記種結晶側が低温側となるように、5〜50℃/cmの温度勾配をかけ、室温まで徐冷することによって前記種結晶を基点として該種結晶と同じ方位を有するREーBaーCuーO系酸化物超電導体の大きな配向した結晶を製造することを特徴とする構成とした。
【0006】
また、この構成1の態様として、
(構成2) 構成1のREーBaーCuーO系酸化物超電導体の製造方法において、
前記種結晶として前記NdGaO3 単結晶の代わりに、Sr2 AlTaO6 単結晶を用いることを特徴とする構成、
及び、
(構成3)構成1のREーBaーCuーO系酸化物超電導体の製造方法において、
前記種結晶として前記NdGaO3 単結晶の代わりに、Sr2 AlNbO6 単結晶を用いることを特徴とする構成とした。
【0007】
さらに、構成1ないし3のいずれかの態様として、
(構成4)構成1ないし3のいずれかのREーBaーCuーO系酸化物超電導体の製造方法において、
前記RE化合物、Ba化合物、Cu化合物を前記酸化物超電導体の組成に応じた割合で混合し、焼成後にペレット成形してペレット状の前駆体を形成する工程を、
前記RE化合物、Ba化合物、Cu化合物を前記割合でそれぞれ秤量した後、これら秤量した化合物のうちの1つまたは2つを取り出して混合し、次に、この混合物を800〜950℃で焼成し、しかるのちにこの焼成物を残りの化合物と混合してペレット成形する工程にしたことを特徴とする構成とした。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1はRE,Ba,Cu成分系のmol%を表わす三角座標を示す図である。以下、図1を参照にしながら本発明の実施の形態を説明する。
【0009】
第1の実施の形態は、次の順からなる。
【0010】
まず、RE化合物、Ba化合物、Cu化合物を、図1に示される三角座標上において、A(35,25,40)、B(35,35,30)、C(15,40,45)、D(15,30,55)の点で囲まれる領域の組成となるようにそれぞれ秤量して混合する。
【0011】
次に、この混合粉を900〜1500℃の温度で焼成することによって得た仮焼粉末をペレット成形してペレット状の前駆体を形成する。
【0012】
次に、この前駆体を990〜1300℃において加熱して固液共存状態にした後に種結晶温度にする。
【0013】
次いで、種結晶としてNdGaO3 単結晶を前記前駆体に接触させ、
しかるのちに、前記種結晶側が低温側となるように、5〜50℃/cmの温度勾配をかけ、室温まで徐冷することによって前記種結晶を基点として該種結晶と同じ方位を有するREーBaーCuーO系酸化物超電導体の大きな配向した結晶を得る。
【0014】
また、第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態における種結晶としてのNdGaO3 単結晶の代わりに、Sr2 AlTaO6 単結晶を用いるものである。
【0015】
さらに、第3の実施の形態は、上記第1の実施の形態における種結晶としのNdGaO3 単結晶の代わりに、Sr2 AlNbO6 単結晶を用いるものである。
そして、第4の実施の形態は、上記第1の実施の形態におけるペレット状の前駆体を形成する工程を、RE化合物、Ba化合物、Cu化合物を前記割合でそれぞれ秤量した後、これら秤量した化合物のうちの1つまたは2つを取り出して混合し、次に、この混合物を800〜950℃で焼成し、しかるのちにこの焼成物を残りの化合物と混合してペレット成形する工程にしたものである。
【0016】
上述の各実施の形態において、前記種所定の温度に加熱溶融した前駆体に接触させる種結晶として、ペロプスカイト構造を持つNdGaO3 又はSr2 AlTaO6 又はSr2 AlNbO6 単結晶を種結晶として用いることによってREBa2 Cu3 O7−x 相が生成する温度の比較的高いSmBa2 Cu3 O7−x 相やNdBa2 Cu3 O7−x 相からなる超電導体でも、該種結晶を基点として該種結晶と同じ方位を有するREBaCuO系酸化物超電導体の大きな配向した結晶を製造することが可能となった。
【0017】
また所望の超電導体の組成を、それぞれのmol%(RE,Ba,Cu)がA(35,25,40)、B(35,35,30)、C(15,40,45)、D(15,30,55)の点で囲まれる領域としたのはREが35%以上ではRE2 BaCuO5 相が凝集粗大化するため特性が悪くなり、15%以下ではBaやCu化合物の不純物相が析出するためである。また、ADの線よりBaを少なくするとCu化合物の不純物が多く析出して特性を著しく劣化させるためである。
【0018】
仮焼温度を900〜1500℃としたのは、900℃以下ではカーボン等の出発原料中にある不必要な元素が残り、溶融結晶化後の試料の特性を悪くするためである。また、1500℃以上では原料をいれる容器との反応が激しくなり、不純物の混入が多く起こるため、1500℃以下とした。
【0019】
溶融温度を990〜1300℃としたのは990℃以下では溶融が不十分となり、結晶粒界が残り、1300℃以上ではRE2 BaCuO5 相の凝集粗大化がおこるためである。
【0020】
温度勾配を5〜50℃/cmとしたのは、5℃以下では種結晶との接触部以外の点からの結晶の核発生がおこりやすくなるためであり、50℃以上では種結晶と反対側の試料温度が高くなり過ぎて、形状を保てなくなるためである。
【0021】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
この実施例は、種結晶としてNdGaO3 単結晶を用い、組成がY1.8 Ba2.4 Cu3.4 O7−x である酸化物超電導体の配向結晶を製造する例である。
【0022】
Y2 O3 、BaCO3 、CuOの各原料粉末をY:Ba:Cu=18:24:34になるように秤量した後、BaCo3 、CuOのみをPt坩堝中で、950℃で24時間焼成してBaCuO2 とCuOの仮焼粉を得た(モル比でBaCuO2 :CuO=24:10)。この仮焼粉とあらかじめ秤量しておいたY2 O3 とを混合して外径50mm厚さ20mmのディスク状にプレス成形して成形体を作成した。この成形体を1150℃で半溶融状態にした後、1020℃まで10℃/minで降温し、上記種結晶を成形体の上部に接触させ、種結晶側が低温となるように15℃/cmの温度勾配を加え、そこから1℃/hrの速度で室温まで徐冷するとによって結晶化を行なった。
【0023】
得られたYBa2 Cu3 O7−x 相中にY2 BaCuO5 が微細に分散した結晶は、試料全体が種結晶の結晶方位を反映し、大きな配向した結晶となった。
【0024】
この試料に、外部磁場5kOeを加えて液体窒素で磁場中冷却し、その後磁場を取り去り、試料の直径に沿って保持磁束を測定した。
【0025】
図2は保持磁束測定装置の概略構成を示す図であり、図3は実施例1の試料の保持磁束測定結果をグラフにして示す図である。なお、図3において、縦軸が保持磁束(単位;kGauss)であり、横軸が試料の直径方向の側定位置(単位;mm)である。図3のグラフから明らかなように、種結晶を反映して配向性が向上したため、大量の磁束を保持する特性を有している(最大約3.5KGuss)ことがわかる。
【0026】
また、この実施例の試料について他の超電導特性を調べたところ、臨界温度(Tc)が90Kであり、臨界電流密度(Jc)が1.5×104 A/cm2 (温度77K、外部磁場1T)であり、磁気反発力が12Kg・fであって、十分高い値を有していた。
【0027】
(実施例2)
この実施例は、種結晶としてSr2 AlTaO6 単結晶を用い、組成がY1.8 Ba2.4 Cu3.4 O7−x である酸化物超電導体の配向結晶を製造する例である。
【0028】
Y2 O3 、BaCO3 、CuOの各原料粉末をY:Ba:Cu=18:24:34になるように秤量した後、BaCo3 、CuOのみをPt坩堝中で、950℃で24時間焼成してBaCuO2 とCuOの仮焼粉を得た(モル比でBaCuO2 :CuO=24:10)。この仮焼粉とあらかじめ秤量しておいたY2 O3 とを混合して外径50mm厚さ20mmのディスク状にプレス成形して成形体を作成した。この成形体を1150℃で半溶融状態にした後、1020℃まで10℃/minで降温し、上記種結晶を成形体の上部に接触させ、種結晶側が低温となるように15℃/cmの温度勾配を加え、そこから1℃/hrの速度で室温まで徐冷するとによって結晶化を行なった。
【0029】
得られたYBa2 Cu3 O7−x 相中にY2 BaCuO5 が微細に分散した結晶は、試料全体が種結晶の結晶方位を反映し、大きな配向した結晶となった。
【0030】
この試料に、上述の図2に示した保持磁束測定装置を用いて外部磁場5kOeを加えて液体窒素で磁場中冷却し、その後磁場を取り去り、試料の直径に沿って保持磁束を測定した。図4は実施例2の試料の保持磁束測定結果をグラフにして示す図である。なお、縦軸、横軸等の表示は図3の場合と同じである。図4のグラフから明らかなように、この実施例2の試料も種結晶を反映して配向性が向上したため、大量の磁束を保持する特性を有している(最大約3KGuss)ことがわかる。
【0031】
また、この実施例の試料について他の超電導特性を調べたところ、臨界温度(Tc)が90Kであり、臨界電流密度(Jc)が1.5×104 A/cm2 (温度77K、外部磁場1T)であり、磁気反発力が11Kg・fであって、十分高い値を有していた。
【0032】
(実施例3)
この実施例は、種結晶としてSr2 AlTaO6 の単結晶を用いて、組成がSm1.8 Ba2.4 Cu3.4 O7−x である酸化物超電導体の配向結晶を製造する例である。
【0033】
Sm2 O3 、BaCO3 、CuOの各原料粉末をSm:Ba:Cu=18:24:34になるように秤量した後、BaCO3 、CuOのみをPt坩堝中で、950℃で24時間焼成してBaCuO2 とCuOの仮焼粉を得た(モル比でBaCuO2 :CuO=24:10)。この仮焼粉とあらかじめ秤量しておいたSm2 O3 とを混合して外径50mm厚さ20mmのディスク状にプレス成形して成形体を作成した。この成形体を1150℃で半溶融状態にした後、1020℃まで10℃/minで降温し、上記種結晶を成形体の上部に接触させ、種結晶側が低温となるように15℃/cmの温度勾配を加え、そこから1℃/hrの速度で室温まで徐冷することによって結晶化を行なった。
【0034】
得られたSmBa2 Cu3 O7−x 相中にSm2 BaCuO5 相が微細に分散した結晶は、試料全体が種結晶の結晶方位を反映し、大きな配向した結晶となった。
【0035】
この試料に、上述の図2に示した保持磁束測定装置を用いて外部磁場5kOeを加えて液体窒素で磁場中冷却し、その後磁場を取り去り、試料の直径に沿って保持磁束を測定した。図5は実施例3の試料の保持磁束測定結果をグラフにして示す図である。なお、縦軸、横軸等の表示は図3の場合と同じである。図5のグラフから明らかなように、この実施例3の試料も種結晶を反映して配向性が向上したため、大量の磁束を保持する特性を有している(最大約3.2KGuss)ことがわかる。
【0036】
また、この実施例の試料について他の超電導特性を調べたところ、臨界温度(Tc)が91Kであり、臨界電流密度(Jc)が1.7×104 A/cm2 (温度77K、外部磁場1T)であり、磁気反発力が11Kg・fであって、十分高い値を有していた。
【0037】
(実施例4)
この実施例は、種結晶としてSr2 AlNbO6 の単結晶を用いて、組成がNdBa2 Cu3 O7−x である酸化物超電導体の配向結晶を製造する例である。
【0038】
Nd2 O3 、BaCO3 、CuOの各原料粉末をNd:Ba:Cu=1:2:3になるように秤量した後、BaCO3 、CuOのみを、850℃で30時間焼成してBaCuO2 とCuOの仮焼粉を得た(モル比でBaCuO2 :CuO=2:1)。この仮焼粉とあらかじめ秤量しておいたNd2 O3 及びPt粉末を0.5wt%加えて混合して、外径50mm厚さ20mmのディスク状にプレス成形して成形体を作成した。この成形体を酸素分圧PO2 =10−3atm中1200℃で半溶融状態にした後、1080℃まで10℃/minで降温し、Sr2 AlNbO6 の単結晶を種結晶として成形体の上部に接触させ、種結晶側が低温となるように15℃/cmの温度勾配を加え、そこから1℃/hrの速度で室温まで徐冷することによって結晶化を行なった。
【0039】
得られたNdBa2 Cu3 O7−x 相からなる結晶は、試料中で異方位の結晶が存在していたが、種結晶下部では種結晶の結晶方位を反映し比較的大きな結晶が得られた。
【0040】
この試料に、上述の図2に示した保持磁束測定装置を用いて外部磁場5kOeを加えて液体窒素で磁場中冷却し、その後磁場を取り去り、試料の直径に沿って保持磁束を測定した。図6は実施例4の試料の保持磁束測定結果をグラフにして示す図である。なお、縦軸、横軸等の表示は図3の場合と同じである。図6のグラフから明らかなように、この実施例4の試料も種結晶を反映して配向性が向上したため、大量の磁束を保持する特性を有している(最大約2KGuss)ことがわかる。
【0041】
また、この実施例の試料について他の超電導特性を調べたところ、臨界温度(Tc)が91Kであり、臨界電流密度(Jc)が1.1×104 A/cm2 (温度77K、外部磁場1T)であり、磁気反発力が8Kg・fであって、十分高い値を有していた。ことがわかる。
【0042】
(実施例5)
この実施例は、種結晶としてNdGaO3 の単結晶を用い、組成がNdBa2 Cu3 O7−x である酸化物超電導体の配向結晶を製造する例である。
【0043】
Nd2 O3 、BaCO3 、CuOの各原料粉末をNd:Ba:Cu=1:2:3になるように秤量した後、BaCO3 、CuOのみを、850℃で30時間焼成してBaCuO2 とCuOの仮焼粉を得た(モル比でBaCuO2 :CuO=2:1)。この仮焼粉とあらかじめ秤量しておいたNd2 O3 及びPt粉末を0.5wt%加えて混合して、外径50mm厚さ20mmのディスク状にプレス成形して成形体を作成した。この成形体を酸素分圧PO2 =10−3atm中1200℃で半溶融状態にした後、1080℃まで10℃/minで降温し、NdGaO3 の単結晶を種結晶として成形体の上部に接触させ、種結晶側が低温となるように15℃/cmの温度勾配を加え、そこから1℃/hrの速度で室温まで徐冷することによって結晶化を行なった。
【0044】
得られたNdBa2 Cu3 O7−x 相からなる結晶は、試料中で異方位の結晶が存在していたが、種結晶下部では種結晶の結晶方位を反映し比較的大きな結晶が得られた。
【0045】
この試料に、上述の図2に示した保持磁束測定装置を用いて外部磁場5kOeを加えて液体窒素で磁場中冷却し、その後磁場を取り去り、試料の直径に沿って保持磁束を測定した。図7は実施例5の試料の保持磁束測定結果をグラフにして示す図である。なお、縦軸、横軸等の表示は図3の場合と同じである。図7のグラフから明らかなように、この実施例5の試料も種結晶を反映して配向性が向上したため、大量の磁束を保持する特性を有している(最大約2KGuss)ことがわかる。
【0046】
また、この実施例の試料について他の超電導特性を調べたところ、臨界温度(Tc)が91Kであり、臨界電流密度(Jc)が1.1×104 A/cm2 (温度77K、外部磁場1T)であり、磁気反発力が8Kg・fであって、十分高い値を有していた。ことがわかる。
【0047】
(比較例)
この比較例は、種結晶としてNdBa2 Cu3 O7−x の単結晶を用い、組成がNdBa2 Cu3 O7−x である酸化物超電導体の配向結晶を製造する例である。
【0048】
Nd2 O3 、BaCO3 、CuOの各原料粉末をNd:Ba:Cu=0.15:3.3:5.45になるように秤量した後混合し、920℃で30時間仮焼してNdBa2 Cu3 O7−x 、BaCuO2 とCuOの仮焼粉を得た(モル比でNdBa2 Cu3 O7−x :BaCuO2 :CuO=0.15:3:2)。この仮焼粉をPt坩堝中にいれて1150℃で30分間溶融した後、1060℃まで10℃/minで降温し、1000℃まで0.5℃/minで降温し、多孔質の煉瓦上に流し込むことによって急冷した。煉瓦上には多少液層の付着があるが、3mm程度のNdBa2 Cu3 O7−x 相の単結晶が、無数に得られた。
【0049】
次に、Nd2 O3 、BaCO3 、CuOの各原料粉末をNd:Ba:Cu=1:2:3になるように秤量した後、BaCO3 、CuOのみを、850℃で30時間焼成して仮焼してBaCuO2 とCuOの仮焼粉を得た(モル比でBaCuO2 :CuO=2:1)。この仮焼粉とあらかじめ秤量しておいたNd2 O3 及びPt粉末を0.5wt%加えて混合して、外径50mm厚さ20mmのディスク状にプレス成形して成形体を作成した。この成形体を酸素分圧PO2 =10−3atm中1200℃で半溶融状態にした後、1080℃まで10℃/minで降温し、上記で得られたNdBa2 Cu3 O7−x 相の単結晶を種結晶として成形体の上部に接触させ、種結晶側が低温となるように15℃/cmの温度勾配を加え、そこから1℃/hrの速度で室温まで徐冷することによって結晶化を行なった。
【0050】
得られたNdBa2 Cu3 O7−x 相からなる結晶は、種結晶が完全に溶融してしまい、非常に細かな多結晶体となっていた。
【0051】
この試料に、上述の図2に示した保持磁束測定装置を用いて外部磁場5kOeを加えて液体窒素で磁場中冷却し、その後磁場を取り去り、試料の直径に沿って保持磁束を測定した。図8は比較例の試料の保持磁束測定結果をグラフにして示す図である。なお、縦軸、横軸等の表示は図3の場合と同じである。図8のグラフから明らかなように、この比較例の試料は多結晶であるため、上述の各実施例に比較すると保持できる磁束が少なくなっている(最大約1.5KGuss)ことがわかる。
【0052】
また、この実施例の試料について他の超電導特性を調べたところ、臨界温度(Tc)は91Kであり、臨界電流密度(Jc)は1.1×104 A/cm2 (温度77K、外部磁場1T)であって十分であるが、磁気反発力については、5.5Kg・fであって、上述の各実施例に比較すると劣ることがわかる。
【0053】
なお、以上の各実施例及び比較例の超電導特性をまとめて表にして図9に示した。
【0054】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、酸化物超電導体の製造方法の一つであるいわゆる溶融法を用いてREーBaーCuーO系超電導体(REは1種もしくは2種以上の希土類元素金属元素)を作成する際に、種結晶として、分散温度が高く、格子常数が近いペロブスカイト構造を有するNdGaO3 単結晶、Sr2 AlTaO6 単結晶又はSr2 AlNbO6 単結晶を種結晶として使用することにより、「123相」の生成温度がより高い場合にも種結晶を用いた方法を適用可能にし、これにより、大型でより高い磁気反発力特性及び保磁力特性を有する酸化物超電導体を歩留まりよく製造することを製造可能にしたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】RE,Ba,Cu成分系のmol%を表わす三角座標を示す図である。
【図2】保持磁束測定装置の概略構成を示す図である。
【図3】実施例1の試料の保持磁束測定結果をグラフにして示す図である。
【図4】実施例2の試料の保持磁束測定結果をグラフにして示す図である。
【図5】実施例3の試料の保持磁束測定結果をグラフにして示す図である。
【図6】実施例4の試料の保持磁束測定結果をグラフにして示す図である。
【図7】実施例5の試料の保持磁束測定結果をグラフにして示す図である。
【図8】比較例の試料の保持磁束測定結果をグラフにして示す図である。
【図9】各実施例及び比較例の超電導特性をまとめて表にした図である。
Claims (3)
- RE−Ba−Cu−O系酸化物超電導体(REはYを含む1種もしくは2種以上の希土類金属元素)の製造方法において、
RE化合物、Ba化合物、Cu化合物を、それぞれのmol%(RE,Ba,Cu)が、RE,Ba,Cu成分系のmol%を表わす三角座標上において、A(35,25,40)、B(35,35,30)、C(15,40,45)、D(15,30,55)の点で囲まれる領域の組成となるようにそれぞれ秤量して混合し、この混合粉を900〜1500℃の温度で焼成することによって得た仮焼粉末をペレット成形してペレット状の前駆体を形成し、
次に、この前駆体を990〜1300℃において加熱して固液共存状態にした後に種結晶温度にし、
次いで、種結晶としてSr 2 AlTaO 6 単結晶を前記前駆体に接触させ、
しかるのちに、前記種結晶側が低温側となるように、5〜50℃/cmの温度勾配をかけ、室温まで徐冷することによって前記種結晶を基点として該種結晶と同じ方位を有するRE−Ba−Cu−O系酸化物超電導体の大きな配向した結晶を製造することを特徴とするRE−Ba−Cu−O系酸化物超電導体の製造方法。 - 請求項1に記載のRE−Ba−Cu−O系酸化物超電導体の製造方法において、
前記種結晶として前記Sr 2 AlTaO 6 単結晶の代わりに、Sr2AlNbO6単結晶を用いることを特徴とするRE−Ba−Cu−O系酸化物超電導体の製造方法。 - 請求項1または2に記載のRE−Ba−Cu−O系酸化物超電導体の製造方法において、
前記RE化合物、Ba化合物、Cu化合物を前記酸化物超電導体の組成に応じた割合で混合し、焼成後にペレット成形してペレット状の前駆体を形成する工程を、
前記RE化合物、Ba化合物、Cu化合物を前記割合でそれぞれ秤量した後、これら秤量した化合物のうちの1つまたは2つを取り出して混合し、次に、この混合物を800〜950℃で焼成し、しかるのちにこの焼成物を残りの化合物と混合してペレット成形する工程にしたことを特徴とするRE−Ba−Cu−O系酸化物超電導体の製造方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP28041795A JP3623829B2 (ja) | 1995-10-27 | 1995-10-27 | REーBaーCuーO系酸化物超電導体の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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