JP3394297B2 - 超電導性組成物の製造方法 - Google Patents

超電導性組成物の製造方法

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JP3394297B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はBi超電導性組成物の製
造方法に関し、特にその熱処理方法を改良し、臨界電流
密度を向上させることに関する。本発明は、限流器、超
電導磁石、磁気浮上材、並びに、超電導量子干渉計(S
QUID)及び核磁気共鳴機等に用いる磁場遮蔽材等に
応用できる。
【0002】
【従来の技術】超電導体は、臨界温度Tc以下で、電気
抵抗が実質的に0となる。近年、酸化物セラミックス
で、臨界温度が液体窒素の沸点である77K以上の超電
導体が見いだされている。従来、バルク状のBi2Sr2CaCu
2Oxを部分溶融法で製造するには、まず、Bi:Sr:
Ca:Cuがモル比で2:2:1:2である混合粉末を
Bi2Sr2CaCu2Oxが分解融解する温度以上、例えば、86
0℃〜900℃にまで加熱し、次いで、Bi2Sr2CaCu2Ox
からなる結晶粒を成長させるために徐冷又は830℃前
後で一定温度に保持していた。こうして得られたBi2Sr2
CaCu2Oxの臨界温度(以下、適宜「Tc」という。)
は、約89Kであった。なお、この混合粉末には、予め
所定のモル比となっている仮焼粉末を用いることが好ま
しい。
【0003】また、このビスマス系超電導体がバルク状
であるとき、部分溶融後の熱処理で臨界温度が上昇する
かは、その厚さに依存する。熊倉浩明ら、新超電導材料
研究会第20回ワークショップ(平成4年9月8日)、
28ページには、部分溶融法で得られたBi2Sr2CaCu2Ox
からなる薄膜の厚さが10〜20μmの薄膜であると
き、室温まで冷却した後、窒素雰囲気中、650℃で2
時間保持して熱処理すると、臨界温度が約89Kから約
94Kまで向上することが記載される。酸素の化学量論
比xが、熱処理前の約8.23から8.21と変化して
最適化されたため、臨界温度が向上したものと推測され
る(下山ら;第38回応用物理学会予稿集(199
1)、114ページ)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような熱
処理によって、部分溶融法で得られたBi2Sr2CaCu2Ox
臨界温度が向上することは薄膜に限られた。厚さが例え
ば0.3mm以上であるバルク状のとき、かかる臨界温
度の向上は認められない。例えば、870〜900℃で
部分溶融し、830℃まで徐冷した後、酸素雰囲気中
で、830℃、50時間、保持して熱処理し、室温まで
冷却し、次いで、窒素雰囲気中、650℃、30時間保
持して、熱処理する場合、得られるBi2Sr2CaCu2Oxの臨
界温度(Tc)は、89Kから向上が認められなかっ
た。また、臨界電流密度(Jc)の向上も認められなか
った。即ち、薄膜でないと、このような熱処理でも、臨
界温度及び臨界電流密度の向上は限られていた。
【0005】そこで、本発明では、部分溶融法で得られ
た、厚さが0.3mm以上であるバルク状のBi系超電
導性組成物であっても、臨界温度及び臨界電流密度が向
上する超電導性組成物の熱処理方法及び製造方法を提供
することを目的とする。この本発明の熱処理方法が適用
できるのは、厚さが0.3mm以上のバルク状のBi系
超電導性組成物に限られず、厚さが0.3mmより小さ
い薄膜にも同様に適用でき、更には、バルク状ではない
粉末にも適用できる
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、少なく
ともビスマス、銅及び酸素元素を含有する成形体を、
30℃〜900℃のBi系2212相超電導性酸化物が
分解融解する温度加熱する加熱工程と、次いで、当該
分解融解温度以下に徐冷し及び/又は当該分解融解温度
以下で一定温度に保持してBi系2212相超電導性酸
化物からなる結晶粒を成長させる冷却工程とを有する
Bi系2212相超電導性酸化物を主成分とする超電導
性組成物の製造方法であって、当該冷却工程の後に、
超電導性組成物を750〜860℃に加熱し、750
〜860℃に保持し、次いで、750℃より低い温度に
冷却する熱処理サイクルを複数回施すことを特徴とする
超電導性組成物の製造方法が提供される。
【0007】また、本発明では、熱処理サイクルにおい
て、750〜860℃に保持する時間が5時間以上であ
ることが好ましく、8時間以上であることが更に好まし
く、10〜30時間であることが更になお好ましい。更
に、熱処理サイクルにおいて、超電導性組成物が750
〜860℃であるときの雰囲気は、大気、主に酸素と窒
素とからなる雰囲気、酸素雰囲気、又は、窒素雰囲気で
あることが好ましく、熱処理サイクルにおいて、750
〜860℃であるときの雰囲気において、酸素分圧と雰
囲気の圧力全体との比が0.25以下であることが更に
好ましい。
【0008】更に、熱処理サイクルにおいて、超電導性
組成物を800〜860℃に加熱し、800〜860℃
に保持することが好ましく、超電導性組成物を820〜
850℃に加熱し、820〜850℃に保持することが
更に好ましい。更にまた、熱処理サイクルを回〜5回
施すことが好ましい
【0009】また、熱処理サイクルで、500℃以下に
冷却することが好ましい。熱処理サイクルで、300℃
以下に冷却することが更に好ましく、熱処理サイクル
で、100℃以下に冷却することが更になお好ましい。
【0010】更に、超電導性組成物は厚さが0.3mm
以上のバルクであることが好ましい。本発明のBi系超
電導性酸化物、ペロブスカイト構造を有する2212
相であるこの2212相がBi2Sr2CaCu2Oxであっ
て、熱処理サイクルの後に、xが8.19〜8.22で
あるものが好ましい
【0011】本発明によれば、Bi系超電導性酸化物か
らなる結晶粒を含有する超電導性組成物であって、Bi
系超電導性酸化物が、ペロブスカイト構造を有する22
12相であり、超電導性組成物は厚さが0.3mm以上
のバルクであり、超電導性組成物の臨界温度が90K以
上であって、77Kにおける超電導性組成物の臨界電流
密度が1,700A/cm2以上である超電導性組成物
を提供することができる。また、臨界温度が91K以上
であって、77Kにおける臨界電流密度が2,000A
/cm2以上である超電導性組成物を提供することがで
きる。更に、臨界温度が92K以上であって、77Kに
おける臨界電流密度が2,500A/cm2以上である
超電導性組成物を提供することができる。更にまた、臨
界温度が93K以上であって、77Kにおける臨界電流
密度が3,000A/cm2以上である超電導性組成物
を提供することができる。
【0012】
【作用】本発明では、部分溶融法で得られたBi系超電
導性組成物に、熱処理サイクルを施し、臨界温度及び臨
界電流密度を向上させる。Bi系超電導性酸化物では、
酸素は非化学量論比をとり、超電導特性に影響するので
あるが、本発明の熱処理サイクルで酸素の化学量論比が
より最適になり、この影響が当該組成物の表面に限られ
ずその内部にまで及ぶからと考えられる。
【0013】本発明で得られる超電導性組成物は、超電
導特性を発現するため、Bi系超電導性酸化物を含有す
る。また、本発明によれば、ペロブスカイト構造を有す
る2212相のBi系超電導性酸化物を得ることができ
ここで、2212相とは、例えば、Bi2Sr2CaCu2Ox
であって、Bi2Sr2CaCu2Oxには、少量の鉛、アンチモ
ン、その他の超電導特性の発現を妨げない元素を含有し
ていてもよい。例えば、ビスマスを20モル%程度ま
で、鉛に置換するものでもよい。xは、酸素の化学量論
比が変化し得るため、8.17〜8.27の値をとり、
本発明の熱処理サイクルの後に、xが8.19〜8.2
2であることが好ましい。また、超電導性組成物がバル
クであることは、超電導性組成物が粉末ではなく、薄
膜、厚膜、平板状、ペレット等の何等かの形態を保持し
ていることをいう。
【0014】本発明では、少なくともビスマス、銅及び
酸素元素を含有する成形体を、Bi系超電導性酸化物が
分解融解する温度以上に加熱する。この成形体は、所望
するBi系超電導性酸化物の組成となるように元素を含
有し、粉末から構成されてることが好ましい。成形体
は、例えば、Bi2Sr2CaCu2Oxの仮焼粉末から構成され
る。成形体は、仮焼粉末に対して、0.1〜5重量%の
酸化マグネシウム粉末を配合してもよい。酸化マグネシ
ウムを含有することにより、分解融解温度前後で、成形
体の粘性が高まるからである。また、銀粉末が配合され
る場合がある。銀粉末は、超電導性組成物中のBi系超
電導性酸化物の結晶粒に微細粒子として分散し、当該組
成物の強度を向上し、また、当該組成物が金属と接触す
る抵抗が低下するからである。接触抵抗の低下は、超電
導性組成物をリード等に用いるときに好ましい。
【0015】また、成形体は、これらの粉末の他に、成
形性を向上する等のために、潤滑剤、界面活性剤等を含
有してもよい。また、成形方法によっては、成形体は、
分散剤、バインダーを含有する。成形体の成形方法に特
に制限はない。プレス成形、静水圧加圧成形、泥漿鋳込
み成形、ドクターブレード等を用いることができ、ま
た、基板等に、スプレー塗布、ハケ塗り、ディップコー
ティング等で成形してもよい。スプレー塗布、ハケ塗り
成形方法では、仮焼粉末等を、溶媒中でスラリー又はペ
ーストにする。スラリー作成に用いる溶媒は、有機溶媒
であり、脱水してあるものが好ましい。エタノール、イ
ソプロピルアルコール等のアルコール又はトルエンと酢
酸エチルとの混合溶媒を用いることができる。適当な分
散剤、バインダーを添加し、スラリーの粘性を調整す
る。
【0016】仮焼粉末は、所望の組成となるように、B
i、Sr、Ca、Cu等の金属化合物の原料粉末を調合
し、混合し、次いで、この混合物を830〜900℃の
温度で大気中にて仮焼した後、粉砕して得られる。金属
化合物は、これらの金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物、
硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、過
酸化物等を出発原料に用いることができる。仮焼時間
は、2〜20時間が好ましい。この仮焼及び粉砕からな
る工程を数回、繰り返し、これらの元素の分散を高めて
もよい。
【0017】また、液相反応法により、成形体を構成す
るBi系超電導性酸化物の粉末を得てもよい。即ち、異
なる金属を含有する化合物を2種以上、適当な溶媒に溶
解又は分散させ、次いで、沈澱させて、粉末を得てもよ
い。液相反応法では、金属イオンが、一旦、溶液に溶解
又は分散しているので、この液相状態で2種以上の金属
イオンが、均一に混合できる。液相反応法は、主に、沈
澱法、加水分解法、ゾルゲル法等がある。また、沈澱法
又は加水分解法に、ゾルゲル法を組み合わせることがで
きる。
【0018】まず、沈澱物法では、金属塩の沈澱剤との
反応や加水分解により、難溶性の化合物を生成し、沈澱
させる。具体的には、金属塩の水溶液にアルカリ又は酸
を添加し、pHを調節し、酸化物又は水酸化物を沈澱さ
せてもよい。また、溶液の温度変化を利用して沈澱物を
得ても良い。更に、溶媒を除去し所望の組成の残存物又
はゾル若しくはゲルを得てもよい。化合物沈澱法の例と
しては、Bi、Sr、Ca、Cuの適当な溶解度を有す
る硝酸塩等の粉末を、Bi:Sr:Ca:Cuがモル比
で2:2:1:2又2:2:2:3の割合となるように
溶媒に溶解し、この溶液より、これらの金属イオンが所
望の組成に分布する粉末を得る方法がある。沈澱剤とし
て、クエン酸又はシュウ酸を添加して、金属が所望のモ
ル比の複合酸化物を沈澱させることができる。いずれの
沈澱剤を添加するときも、沈澱における各成分の混合を
均一にするため、溶液を激しく撹拌させることが好まし
い。また、上記したように、沈澱を生じさせることな
く、この溶液から溶媒を除去して、濃縮し、ゾルを作成
し、更にゲルとしてもよい。または、沈澱を生じさせる
ことなく、溶媒を除去して乾固物としてもよい。このゲ
ル又は乾固物を仮焼し、粉砕して用いることができる。
【0019】有機金属化合物の加水分解法としては、ビ
スマスアルコキシドを、Ca、Sr、及びCuの酢酸
塩、硝酸塩等の水又はアルコール系溶液に添加する方法
がある。ビスマスアルコキシドが、Ca、Sr、及びC
u等の金属と反応しながら複合酸化物を生成すると考え
られる。
【0020】成形体は、Bi系超電導性酸化物が分解融
解する温度以上に加熱する。この温度は、例えば、83
0℃〜900℃が好ましく、860℃〜900℃が更に
好ましく、875℃〜900℃が更になお好ましい。分
解融解する温度以上で、例えば、2212相のBi系超
電導性酸化物は、2212相を保持できなくなり、液相
と他の固相とに分かれる。加熱工程及び次の冷却工程の
雰囲気は、酸素濃度が20体積%以上、好ましくは80
体積%以上であってもよい。20体積%以上なので、大
気中も含まれる。
【0021】次いで、成形体を、分解融解温度以下の温
度に徐冷し、及び/又は当該分解融解温度以下の一定温
度に保持してBi系2212相超電導性酸化物からなる
結晶粒を成長させる。例えば、800〜850℃に冷却
速度1℃/分以下で徐冷し、次いで、800〜850℃
で一定温度に保持する。この例示では、冷却速度1℃/
分以下で徐冷したとき及び800〜850℃で一定温度
保持したときのいずれのときで結晶成長させてもよい
し、一定温度保持したときに主に結晶成長させてもよ
い。また、この例示のように一定温度に保持する必要は
なく、この例示のときより、徐冷速度を更に遅くするこ
とで、一定温度に保持することなく徐冷して、結晶成長
をさせることもできる。
【0022】本発明では、以上説明したように部分溶融
法で超電導性組成物を製造した後、更に、熱処理サイク
ルを複数回施す。熱処理サイクルは、超電導性組成物を
750〜860℃に加熱する工程と、750〜860℃
に保持する工程と、次いで、750℃より低い温度に冷
却する工程からなる。従って、超電導性組成物中で結晶
粒を成長させた後、一度、750℃より低い温度に冷却
し、熱処理サイクルを開始する。
【0023】熱処理サイクルでは、750〜860℃に
加熱し、750〜860℃に保持する。この温度範囲
で、臨界温度及び臨界電流密度が向上するからである。
一方、加熱温度及び保持温度が750℃より低いか又は
860℃より高いと、臨界温度及び臨界電流密度がさほ
ど向上しないからである。なお、保持温度が870℃以
上では、臨界温度及び臨界電流密度は却って低下する。
加熱温度及び保持温度は、800〜860℃であること
が好ましく、820〜850℃であることが更に好まし
い。この温度範囲では、臨界温度及び臨界電流密度が更
に向上するからである。加熱工程での昇温速度は、例え
ば、1分当たり、1〜10℃である。
【0024】本発明で、熱処理サイクルは複数回、好ま
しくは回〜5回、更に好ましくは3回〜5回施す。熱
処理サイクルを複数回施すことにより、臨界温度及び臨
界電流密度が著しく向上するからである。一方、熱処理
サイクルは5回以上施してもよい。但し、5回施される
までに、臨界温度及び臨界電流密度は飽和、5回より
多く繰り返しても、臨界温度及び臨界電流密度は更に向
上することはないので5回以内が好ましい。
【0025】熱処理サイクルにおいて、当該組成物が7
50〜860℃であるときの雰囲気は、大気、主に酸素
と窒素とからなる雰囲気、酸素雰囲気、又は、窒素雰囲
気であることが好ましい。主に酸素と窒素とからなる雰
囲気とは、大気に含有する程度の二酸化炭素、一酸化炭
素、アルゴン、窒素酸化物等のガスが含有していてもよ
い雰囲気をいい、酸素と窒素との混合比は、大気の値と
は限らない。これらの雰囲気は、臨界温度及び臨界電流
密度が向上するため、酸素分圧と雰囲気全体の圧力との
比が0.25以下であることが更に好ましく、大気はこ
の条件に該当する。酸素分圧と雰囲気全体の圧力との比
が、0.1以下であることが更に好ましく、0.01以
下であることが更になお好ましい。
【0026】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
する。但し、本発明は下記実施例により制限されるもの
でない。
【0027】(バルク状Bi2Sr2CaCu2Ox超電導体の作製
方法)Bi23、SrCO3、CaCO3、CuOの各粉
末を、Bi:Sr:Ca:Cuがモル比で2:2:1:
2の割合となるように混合し、得られた混合粉末を83
0〜860℃、大気中で10時間以上仮焼した後、粉砕
し、組成がBi2Sr2CaCu2Oxである組成物の仮焼粉末を得
た。次いで、この仮焼粉末を用いて一軸プレス成形で成
形した。
【0028】次いで、部分溶融法により、この成形体
を、厚さが、0.3mm、1mm、及び5mmであるバ
ルク状のBi2Sr2CaCu2Ox超電導体とした。まず、電気炉
を用いて、室温から500℃まで2時間で昇温し、50
0℃で2時間保持し、500℃から885℃まで1.5
時間で昇温し、次いで、酸素雰囲気中、885℃で10
分間保持して、部分溶融した。その後、885℃から8
30℃まで5時間で徐冷し、830℃で15時間保持し
てBi2Sr2CaCu2Oxからなる結晶粒を成長させた。その
後、830℃から室温まで、3時間で冷却した。
【0029】(実施例1;比較例1)上記の方法で得
た、厚さが1mmのバルク状Bi2Sr2CaCu2Ox超電導体を
試料に用いて、本発明の熱処理を施した。実施例1及び
比較例1では、同一の試料を用いて、熱処理サイクルで
保持するときの温度(以下、適宜、「熱処理温度」とい
う。)のみを変化させ、熱処理後の試料で、臨界温度
(K)及び臨界電流密度(A/cm2)を測定した。な
お、比較例1−1では、熱処理を施す前の値である。熱
処理サイクルは、まず、試料を室温から熱処理温度ま
で、1分当たり5℃で昇温する昇温工程と、次いで、熱
処理温度で15時間保持する保持工程と、最後に、熱処
理温度から室温まで炉内で冷却する冷却工程からなる。
大気中で、電気炉を用いて、熱処理サイクルを3回繰り
返した。臨界温度は、試料温度を変化させながら、試料
の抵抗を4端子法にて測定することで得た。また、臨界
電流密度は、液体窒素中、77Kで、試料に通電する電
流値を変化させながら、電圧を4端子法で測定すること
で得た。これらの結果を図1(a)及び図1(b)に示
す。
【0030】
【表1】 750〜860℃の熱処理温度で、臨界温度が90K以
上であって、かつ、臨界電流密度が1700A/cm2
以上であることが分かる。800〜850℃の熱処理温
度で、臨界温度が91K以上であって、かつ、臨界電流
密度が2000A/cm2以上であることが分かる。ま
た、850℃で、臨界温度が93Kであって、臨界電流
密度が3000A/cm2なので、約860℃ぐらいま
で、臨界温度が90K以上であって、かつ、臨界電流密
度が1700A/cm2以上の領域であると推測でき
る。
【0031】(参考例1;比較例2) 上記の方法で得た、厚さが1mmのバルク状Bi2Sr2CaCu
2Ox超電導体を試料に用いて、熱処理サイクルを1回と
したこと以外は本発明と同様の熱処理を施した。参考例
及び比較例2では、同一の試料を用いて、熱処理サイ
クルで熱処理温度に保持する時間(以下、適宜、「熱処
理時間」という。)のみを変化させ、熱処理後の試料
で、臨界温度(K)及び臨界電流密度(A/cm2)を
測定した。なお、比較例2−1では、熱処理を施す前の
値であり、熱処理時間は0のときである。熱処理温度は
830℃として、大気中で、電気炉を用いて、熱処理サ
イクルを1回繰り返した。その結果を図2(a)及び図
2(b)に示す。
【0032】
【表2】
【0033】5時間以上の熱処理時間で、臨界温度が9
0K以上であって、かつ、臨界電流密度が1700A/
cm2以上であることが分かる。また、約8時間以上
で、臨界温度が91K以上であって、かつ、臨界電流密
度が2000A/cm2以上の領域であると推測でき
る。10〜30時間の熱処理時間で、臨界温度が91.
5K以上であって、かつ、臨界電流密度が2300A/
cm2以上であることが分かる。熱処理時間が15時間
以上で、臨界温度が92Kであって、かつ、臨界電流密
度が2500A/cm2以上となって、飽和に達するよ
うである。この条件で保持時間を30時間以上として
も、臨界温度及び臨界電流密度は既に飽和していて、飽
和した値以上には向上しないようである。
【0034】(参考例2;実施例;比較例3) 上記の方法で得た、厚さが1mmのバルク状Bi2Sr2CaCu
2Ox超電導体を試料に用いて、本発明の熱処理(但し、
参考例2及び比較例2の熱処理サイクルの回数は本発明
の範囲外である。)を施した。参考例2、実施例及び
比較例3では、同一の試料を用いて、熱処理サイクルの
回数のみを変化させ、熱処理後の試料で、臨界温度
(K)及び臨界電流密度(A/cm2)を測定した。な
お、比較例3では、熱処理を施す前の値であり、熱処理
サイクルの回数は0である。熱処理温度は830℃、熱
処理時間は15時間として、大気中で、電気炉を用い
て、熱処理サイクルを0〜5回繰り返した。その結果を
図3(a)及び図3(b)に示す。
【0035】
【表3】 熱処理サイクルを1回以上すると、臨界温度が92K以
上であって、かつ、臨界電流密度が2500A/cm2
以上に向上することが分かる。この条件で熱処理サイク
ルを3回すると、臨界温度が93Kであって、かつ、臨
界電流密度が3000A/cm2以上となって、飽和に
達するようである。この条件で熱処理サイクルを5回よ
り多く繰り返しても、臨界温度及び臨界電流密度は既に
飽和していて、飽和した値以上には向上しないようであ
る。
【0036】(実施例) 上記の方法で得た、厚さが1mmのバルク状Bi2Sr2CaCu
2Ox超電導体を試料に用いて、本発明の熱処理を施し
た。実施例では、同一の試料を用いて、1気圧の雰囲
気で熱処理サイクルを行うときの雰囲気中の酸素分圧の
みを変化させ、熱処理後の試料で、臨界温度(K)及び
臨界電流密度(A/cm2)を測定した。熱処理温度は
830℃、熱処理時間は15時間として、電気炉を用い
て、熱処理サイクルを3回繰り返した。実施例−1で
は、酸素雰囲気であり、実施例−2は大気中であり、
実施例−3では、窒素ガス99体積%と酸素ガス1体
積%との混合ガスからなる雰囲気であり、実施例−4
では、窒素ガス99.99体積%と酸素ガス0.01体
積%との混合ガスからなる雰囲気である。その結果を図
4(a)及び図4(b)に示す。図4(a)及び図4
(b)では、雰囲気中の酸素分圧、PO2(atm)の対数を
横軸とした。
【0037】
【表4】 図4(a)及び図4(b)より明らかに、酸素ガスの分
圧が小さい方が、臨界温度及び臨界電流密度が向上す
る。また、実施例−1から明らかなように、酸素雰囲
気であっても、臨界温度が91.5K以上であって、か
つ、臨界電流密度が2200A/cm2以上に向上する
ことが分かる。
【0038】(実施例) 上記の方法で得た、バルク状Bi2Sr2CaCu2Ox超電導体を
試料に用いて、本発明の熱処理を施した。実施例
は、試料の厚さのみを0.3mmから5mmまで変化さ
せ、熱処理後の試料で、臨界温度(K)及び臨界電流密
度(A/cm2)を測定した。熱処理温度は830℃、
熱処理時間は15時間として、大気中で電気炉を用い
て、熱処理サイクルを3回繰り返した。
【0039】
【表5】 実施例1〜では、厚さが1mmの試料を用いたが、実
施例−3の厚さが5mmの試料でも、実施例−2の
厚さが1mmの試料と同様に、3回の熱処理サイクル
で、臨界温度が93Kであって、かつ、臨界電流密度が
3000A/cm2に達することが分かる。また、実施
−1の厚さが0.3mmの試料でもこれらの値が得
られた。
【0040】
【発明の効果】本発明の製造方法では、Bi系超電導性
酸化物からなる結晶粒を含有する超電導性組成物の臨界
温度及び臨界電流密度を向上する。本発明が適用できる
超電導性組成物は薄膜に限られず、厚膜等のバルク状超
電導性組成物でもよい。また、超電導性組成物の厚さが
0.3mm以上のバルク状であっても、十分な臨界温度
及び臨界電流密度を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱処理サイクルで熱処理温度のみを変化させた
ときの、臨界温度、Tc(K)及び臨界電流密度、Jc
(A/cm2)の変化を示すグラフである。
【図2】熱処理サイクルで熱処理時間(時間)のみを変
化させたときの、臨界温度、Tc(K)及び臨界電流密
度、Jc(A/cm2)の変化を示すグラフである。
【図3】熱処理サイクルで、その回数のみを変化させた
ときの、臨界温度、Tc(K)及び臨界電流密度、Jc
(A/cm2)の変化を示すグラフである。
【図4】熱処理サイクルでその雰囲気のみを変化させた
とき、酸素分圧、PO2(atm)の対数と、臨界温度、Tc
(K)及び臨界電流密度、Jc(A/cm2)との相関
を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−199057(JP,A) 特開 平3−163714(JP,A) 特開 平5−43245(JP,A) 特開 平1−234327(JP,A) 特開 平3−199159(JP,A) 特開 平5−193950(JP,A) 特開 平2−271921(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01G 1/00 C01G 29/00 H01L 39/12 C30B 29/22

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくともビスマス、銅及び酸素元素を
    含有する成形体を、830℃〜900℃のBi系221
    2相超電導性酸化物が分解融解する温度に加熱する加熱
    工程と、次いで、当該分解融解温度以下に徐冷し及び/
    又は当該分解融解温度以下で一定温度に保持してBi系
    2212相超電導性酸化物からなる結晶粒を成長させる
    冷却工程とを有する、Bi系2212相超電導性酸化物
    を主成分とする超電導性組成物の製造方法であって、 当該冷却工程の後に、当該超電導性組成物を750〜8
    60℃に加熱し、750〜860℃に保持し、次いで、
    750℃より低い温度に冷却する熱処理サイクルを複数
    回施すことを特徴とする超電導性組成物の製造方法。
  2. 【請求項2】 当該熱処理サイクルにおいて、750〜
    860℃に保持する時間が5時間以上であることを特徴
    とする請求項1に記載の超電導性組成物の製造方法。
  3. 【請求項3】 当該熱処理サイクルにおいて、当該超電
    導性組成物が750〜860℃であるときの雰囲気は、
    大気、主に酸素と窒素とからなる雰囲気、酸素雰囲気、
    又は、窒素雰囲気であることを特徴とする請求項1又は
    2に記載の超電導性組成物の製造方法。
  4. 【請求項4】 当該熱処理サイクルにおいて、750〜
    860℃であるときの当該雰囲気において、酸素分圧と
    当該雰囲気の圧力全体との比が0.25以下であること
    を特徴とする請求項3に記載の超電導性組成物の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 当該熱処理サイクルにおいて、当該超電
    導性組成物を800〜860℃に加熱し、800〜86
    0℃に保持することを特徴とする上記請求項の何れかに
    記載の超電導性組成物の製造方法。
  6. 【請求項6】 当該熱処理サイクルにおいて、当該超電
    導性組成物を820〜850℃に加熱し、820〜85
    0℃に保持することを特徴とする請求項5に記載の超電
    導性組成物の製造方法。
  7. 【請求項7】 当該熱処理サイクルを2回〜5回施すこ
    とを特徴とする上記請求項の何れかに記載の超電導性組
    成物の製造方法。
  8. 【請求項8】 当該熱処理サイクルで、500℃以下に
    冷却することを特徴とする上記請求項の何れかに記載の
    超電導性組成物の製造方法。
  9. 【請求項9】 当該熱処理サイクルで、300℃以下に
    冷却することを特徴とする請求項8に記載の超電導性組
    成物の製造方法。
  10. 【請求項10】 当該熱処理サイクルで、100℃以下
    に冷却することを特徴とする請求項9に記載の超電導性
    組成物の製造方法。
  11. 【請求項11】 当該超電導性組成物は厚さが0.3m
    m以上のバルクであることを特徴とする上記請求項の何
    れかに記載の超電導性組成物の製造方法。
  12. 【請求項12】 当該2212相がBi2Sr2CaCu2Oxであ
    って、当該熱処理サイクルの後に、xが8.19〜8.
    22であることを特徴とする上記請求項の何れかに記載
    の超電導性組成物の製造方法
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