JP2540319Y2 - タイヤ補強用スチールコード - Google Patents

タイヤ補強用スチールコード

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JP2540319Y2
JP2540319Y2 JP1990405371U JP40537190U JP2540319Y2 JP 2540319 Y2 JP2540319 Y2 JP 2540319Y2 JP 1990405371 U JP1990405371 U JP 1990405371U JP 40537190 U JP40537190 U JP 40537190U JP 2540319 Y2 JP2540319 Y2 JP 2540319Y2
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金井 宏之
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Description

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本考案は、主として自動車タイヤ
の補強材として使用されるスチールコードに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば重荷重用空気入りラジアル
タイヤを補強するスチールコードとしては、図4に示す
ように、3本の素線11の周囲に9本の素線21を配置
し、更にその周囲に15本の素線31を配置した3+9
+15撚り構造のスチールコード4が知られている。
【0003】また、図5,図6に示すように、同一線径
の素線11が、同一方向、同一ピッチで撚り合わされ
た、いわゆる束撚りのスチールコード5,6がある。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】上記従来技術のスチー
ルコードは、各層間の素線および同一層内の隣接する素
線がいずれも密接あるいは近接している。従って、上記
従来スチールコードは、タイヤ成形時に、ゴム材が各素
線間より内部に浸入することができず、単にスチールコ
ードの最外層部分を被覆するのみで、完全なゴムとの複
合体を構成することができなかった。
【0005】それ故、従来スチールコードを使用したタ
イヤは、コードとゴム材との接着が十分でないため、自
動車の走行中にコードとゴム材とが剥離する、いわゆる
セパレーツ現象を起こしたり、また隣接する素線同士の
接触によるフレッティング現象を生じて、コードの一部
を破断する事故があった。
【0006】さらに、コード内部の各層間のわずかな隙
間A,B,Cがゴム中の水分及びタイヤの切り疵より浸
入した水分の経路となり、コード全体に錆を発生させ、
スチールコードの強力を大幅に低下させ、セパレーツ現
象を促進させる要因になっていた。
【0007】これに対して、最近、図7に示すような、
各層の素線本数を従来より少なくして、各素線間に隙間
を設けたスチールコード7が提案されている。しかし、
上記スチールコード7は、実際に製造すると、図8に示
すように、各層の素線が一方に片寄り、コード全体に均
等な隙間を設けることが極めて困難であった。
【0008】本考案は、上記従来技術の課題に鑑みてな
したもので、ゴム材の浸入性を大幅に向上して、ゴム材
との完全な複合体となるタイヤ補強用スチールコードを
提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本考案のタイヤ補強用スチールコードは、コードを
構成する各層間の素線間およびまたは同一層内の素線間
に、ゴム材が浸入できる隙間を設けて成る。
【0010】即ち、本考案のタイヤ補強用スチールコー
ドは、同一線径を有する13〜30本の素線を略3層に
撚り合せてなるスチールコードにおいて、各層における
素線本数の1/3以上の素線が、くせピッチP=0.
1P〜0.7Pで、かつ見掛けの外径d=(d+2/
100)mm〜(d+2/10)mmである略スパイラ
ル状または波状のくせを有して成る。ただし、Pは各層
における撚ピッチ(mm)であり、dは素線径(mm)
である。
【0011】さらに、各層における隣り合う素線のう
ち、少なくともいずれか一方の素線が略スパイラル状又
は波状のくせを有するようにすることにより、均一なゴ
ム浸入を促進でき、また全ての素線を同一方向で、かつ
同一ピッチで撚り合せる、いわゆる束撚りにして、工程
を省略することもできる。
【0012】ここで、タイヤ補強用スチールコードとし
ては、素線径が0.10〜0.40mmの素線を用い、
その表面にCu:Zn=(60〜70):(40〜3
0)のブラスメッキを施して、撚ピッチ5.0〜25m
mの範囲で撚ったものが用いられる。
【0013】また、略3層とは、各層毎に撚ピッチや撚
方向を変えて撚る場合には、一般にコア、シース、コー
ド等と呼ばれるように、はっきりと各層を確認できる
が、同一撚ピッチ、同一撚方向で撚る、いわゆる束撚り
の場合には、各層が明確に区別するのが困難な場合もあ
るが、この場合、内側より内層、中間層、最外層と区別
する。
【0014】次に、本考案における数値限定は、多数の
実験により定めたものであり、その根拠について述べ
る。
【0015】素線本数については、略3層構造となる範
囲として13〜30本としたが、13本より少ないと、
略3層構造にすることが困難であり、30本より多くす
ると、4層以上の多層構造になり、コード径が太くなっ
てタイヤ用スチールコードとしては不適となる。
【0016】次に、くせを有する素線を各層において、
1/3以上の素線本数としたのは、これより少ないと、
ゴム浸入の効果がなく、また束撚りにしたときに、撚不
良が出現し易くなって好ましくないからである。
【0017】くせピッチP=0.1P〜0.7Pにし
たのは、0.1P未満にすると、素線へのくせ付け加工
時に無理な塑性変形が加わり、素線が折れ易く、生産性
が低下する。また、タイヤの補強材として使用した場
合、使用中に切断事故が発生し易い。また、0.7Pを
超えると、複合体成形時のゴム材のフローによる引張力
やコード表面に負荷されるしごき力によって素線間の隙
間が減少し、ゴム浸入性が低下して好ましくない。
【0018】さらに、見掛けの外径dが(d+2/1
00)mmより小さいと、流動性の良いゴム材を使用し
ても加圧加硫時にスチールコード内部へのゴム材の浸入
が十分でなく、また(d+2/10)mmより大きい
と、撚りの安全性が悪化し、耐疲労性の低下、挫屈の発
生等をきたし好ましくない。ところで上記見掛けの外径
とは、略スパイラル状又は波状にくせ付けしたくせ
付け素線の見掛け上の外径である。
【0019】
【作用】略スパイラル状又は波状のくせ付けをした素線
が、他の素線とたえず接触、非接触を繰り返して隣り合
っているため、素線間に適当な隙間が点在し、この隙間
よりゴム材がスチールコードの内部に十分浸透し、しか
も、図8のように、素線が一方に片寄ることもなく、安
定した構造となる。
【0020】次に、多数本の素線を同一方向、同一撚ピ
ッチで一度に束撚りする場合には、撚不良が生ずること
なく、素線間に適当な隙間が形成できる。図5,6に示
す従来のスチールコードでは、束撚りで一度に撚る場
合、内側の素線と外側の素線とではいわゆる撚込み率が
異なり、この結果、内側と外側の素線の位置が変化し
て、内,外層の素線が入り乱れて撚り不良が生じるばか
りか、素線本数が多くなる3層以上のスチールコードに
おいてこの傾向が著しくなる。
【0021】これに対して、本考案のスチールコードで
は、撚込み率の差が略スパイラル状又は波状にくせ付け
された素線の伸びや緩みによって吸収され、各層の素線
が入り混じるような撚り不良を完全になくすことができ
る。ところで、上記撚込み率とは、スチールコードの長
さが撚り合せにより撚る前の真直な素線の長さより短か
くなる割合のことで、この撚りに基づく長さの短縮は撚
こみと言われている。
【0022】
【実施例】次に、本考案の実施例を比較例および従来例
と対比して説明する。
【0023】表面にブラスメッキを施した線径0.17
5mmφの硬鋼線から成る素線を用いて、本考案の実施
例として、撚り構成が1×13(図1)、1×25(図
2)、3+9+16(図3)で、かつ下記の表1に示す
撚り方向、撚ピッチ、くせ本数、見掛けの外径d及び
くせピッチPのスチールコード1,2,3を夫々構成
した。
【0024】
【表1】
【0025】なお、図中、10,20,30は内層、中
間層、外層と夫々示し、また11,21,31は各層に
おける略真直な通常の素線を、12,22,32は各層
における略スパイラル状のくせを施した素線である。
【0026】また、比較例として、上記実施例と同一の
素線を用いて、撚り構成を実施例と同一で、略スパイラ
ル状のくせは実施例と異ならせたスチールコードを構成
した。更に、従来例として、実施例と同一の素線を用い
て、撚り構成が3+9+15(図4)、1×27(図
5)、1×30(図6)で、前記表1に示した撚り方
向、撚ピッチのスチールコードを構成した。
【0027】この実施例におけるスチールコードは、撚
線機としてバンチャー撚線機を用いて製造した。また、
略スパイラル状の小さいくせは、撚りの集合点前に設け
たくせ付けピンの間に素線を通し、この素線の周囲に上
記くせ付けピンを回転させながら素線を繰り出す方法に
より得られる。
【0028】次に、前記表1に示す実施例、比較例、従
来例のタイヤ補強用スチールコードN0.1〜16につ
いて、ゴム材の浸入性、疲労性及びスチールコードとし
ての撚状態を評価した。この結果を表1に記載した。
【0029】ところで、上記評価に際して、ゴム材の浸
入性(%)は、各スチールコードに5kg重の引張荷重
をかけた状態でゴム材中に埋込んで加硫した後、スチー
ルコードを取出して分解し、一定長さを観察し、観察し
た長さに対してゴム材と接触した痕跡のある長さの比を
パーセントで表示した。
【0030】疲労性は、ハンター式回転曲げ疲労試験機
を使用し、各スチールコードが断線に至るまでのサイク
ル数を求め、従来例のコードNo.1を100として指
数表示した。
【0031】撚状態は、撚り不良の程度を表わしたもの
で、素線の重なりやもつれ、あるいは内層の素線が外層
に出現する状態、素線間の隙間の片寄りおよび均一さ等
より判断し、×(悪い)、△(劣る)、○(普通)、◎
(良い)で評価した。
【0032】コードNo.1,2,3は従来例で、全て
の素線同士がほとんど接触している、いわゆるクローズ
ド撚コードであり、ゴム浸入がほとんどみられなかっ
た。また、No.2,3は束撚りといわれているもの
で、撚状態が悪く、疲労性も極端に劣っていた。
【0033】コードNo.4,9,10,14,16は
比較例であり、いずれも略スパイラル状のくせの形状が
適当でないため、ゴム浸入性、疲労性、撚状態が少し劣
っていた。
【0034】これに対して、本考案の実施例である、コ
ードNo.5〜8,11〜13,15は、ゴム浸入性、
疲労性、撚状態のいずれも満足できるものであった。上
記実施例において、1×13,1×25等の束撚りのも
のは、略スパイラル状のくせを全て同一としたが、各層
において異なるくせ付けをした素線を撚り合せると、一
層良い結果が得られた。
【0035】
【考案の効果】本考案は上記構成であるため、次の効果
を奏する。
【0036】多数本の素線より構成されるスチールコー
ドにおいても、素線間に適当な隙間を安定して均一に有
しているので、ゴム材がスチールコードの内部に良好に
浸入し、ゴム材とスチールコードとが確実に接着し、セ
パレーション現象を防止できる。
【0037】スチールコードの各素線がゴム材で完全に
覆われるので、素線同士のフレッティング摩耗が減少
し、疲労性が向上する。
【0038】また、スチールコード内部の隙間に水分が
入ることを完全に防止でき、耐腐食性も向上する。
【0039】さらに、くせ付けした素線を各層に適当に
配置することにより、実用的な束撚りのスチールコード
の製造が可能となり、大幅なコスト低減が可能となっ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】束撚りスチールコードの一実施例を示す概略断
面図である。
【図2】束撚りスチールコードの異なる実施例の概略断
面図である。
【図3】各層の撚方向又は撚ピッチを異ならせたスチー
ルコードの一実施例の概略断面図である。
【図4】従来スチールコードの概略断面図である。
【図5】従来束撚りスチールコードの概略断面図であ
る。
【図6】従来束撚りスチールコードの概略断面図であ
る。
【図7】従来の理想的3層構造のスチールコードの概略
断面図である。
【図8】素線が片寄った現実の3層構造のスチールコー
ドの概略断面図である。
【符号の説明】
1,2,3 スチールコード 11,21,31 素線 12,22,32 くせ付けを施した素線

Claims (3)

    (57)【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】 同一線径を有する13〜30本の素線を
    略3層に撚り合せてなるスチールコードにおいて、各層
    における素線本数の1/3以上の素線が、P=0.1
    P〜0.7P(P:くせピッチ、P:各層における撚
    ピッチ)で、かつd=(d+2/100)mm〜(d
    +2/10)mm(d:見掛けの外径、d:素線径)
    を満足するスパイラル状又は波状のくせを有することを
    特徴とするタイヤ補強用スチールコード。
  2. 【請求項2】 各層における隣り合う素線のうち、少な
    くともいずれか一方の素線が略スパイラル状又は波状の
    くせを有する請求項1記載のタイヤ補強用スチールコー
    ド。
  3. 【請求項3】 全ての素線が同一方向で、かつ同一ピッ
    チで撚られた請求項1または2記載のタイヤ補強用スチ
    ールコード。
JP1990405371U 1990-12-12 1990-12-12 タイヤ補強用スチールコード Expired - Lifetime JP2540319Y2 (ja)

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JPH0489590U JPH0489590U (ja) 1992-08-05
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