JP2539759B2 - 粉末成形品の脱脂方法 - Google Patents

粉末成形品の脱脂方法

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JP2539759B2
JP2539759B2 JP6056608A JP5660894A JP2539759B2 JP 2539759 B2 JP2539759 B2 JP 2539759B2 JP 6056608 A JP6056608 A JP 6056608A JP 5660894 A JP5660894 A JP 5660894A JP 2539759 B2 JP2539759 B2 JP 2539759B2
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利幸 松前
勲 不破
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、粉末成形品を加熱する
ことにより該成形品から余分な有機結合剤を除去する粉
末成形品の脱脂方法に関する。
【0002】
【従来の技術】粉末成形品の製造において、成形は通
常、焼結可能な粉末に有機結合剤を添加し、流動性を付
与した状態で行なわれる。成形法に関しては、プレス成
形や押出成形をはじめとして多数知られているが、この
中でも射出成形は複雑な形状が成形できる反面、添加す
る有機結合剤の量が多いため、脱脂という独立した工程
を設けて成形後に不要となった有機結合剤を成形品より
除去する必要がある。特に粉末成形品の射出成形による
製造において、この脱脂工程は重要なポイントであり、
条件設定が不適切であれば割れ、表層剥離等の重大な欠
陥が発生する。即ち、粉末射出成形品から脱脂を行なう
際には、成形品に過度の加熱や急熱を行うと単位時間当
りの有機結合剤の分解発生ガス量が過剰となり、成形品
に割れ、ふくれ、表層剥離等が生じるという不具合いが
ある。そこで、従来、例えば成形品に対する過度の加熱
や急熱が起こらないように、成形品を加熱する炉内の温
度を熱電対で検出し、その検出値に基づき、予め有機結
合剤の重量減少速度が一定となる様に設定した昇温プロ
グラムに沿って炉内の温度を上昇させていた。しかし、
上記の様な従来の粉末成形品の脱脂法においては、粉末
成形品中の有機結合剤の加熱による重量減少速度は一定
であるが、分解により発生するガスの体積量が常に一定
であるとは限らない。従って、前述の炉内温度検出値に
基づいて炉内温度制御のみを行っても、成形品中の有機
結合剤からの分解ガス発生量が過剰になる場合があり、
それに起因して成形品に割れ、ふくれ等の欠陥が発生す
ることになる。
【0003】次に脱脂工程において重要なポイントとな
るのは、温度条件もさることながら雰囲気条件である。
ここで、この雰囲気に起因する課題を図4に従って説明
する。先ず焼結可能な粉末と有機結合剤とを混合してこ
れを成形することにより、図4(a)のような粉末成形
品32が得られる。この粉末成形品を炉内に入れて加熱
すると周囲の温度が上昇するに伴い図4(b)のように
成形品中の有機結合剤(バインダー)が熱分解し、気化
した状態で成形品表面に移行し、雰囲気中に拡散する。
更に温度が上昇すると、有機結合剤の分解が進み、図4
(c)のように炉内に分解ガスが充満する。このとき、
炉内の分解ガスを除去しなければ、炉内雰囲気は分解ガ
スで飽和し、成形品表面から分解ガスの移行が行われな
くなる。この状態で更に温度が上昇すれば、成形品表層
からの分解ガス移行がない状態で有機結合剤の分解、気
化が進行し、ついには図4(d)のように成形品を破壊
してしまう。また、有機結合剤が残留したまま脱脂工程
を終了し、次の焼結を行うと、残留した有機結合剤が焼
結時の収縮の障害となり焼結不良を引き起こす。上記の
ような現象を防止するには、炉内の分解ガスを更新する
必要があるが、その手段としては2通りが考えられる。
1つは、炉内に気体を送り込み気流によって分解ガスを
除去する方法(以下、前者という)であり、他の1つ
は、炉内を減圧して分解ガスを吸いだす方法(以下、後
者という)である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者の
場合、粉末が酸化物系粉末であれば問題ないが、非酸化
物系粉末の場合、流す気体は高価な不活性ガスとなり、
コスト面で大きな問題となる。また、後者の場合、例え
ばUS.Pat 2,939,199号のように真空下
で脱脂するだけでは、分解ガス堆積の制御はできず脱脂
での欠陥を引き起こす。即ち、気体の体積と圧力は、一
定温度下ではPV=一定の関係より、高真空時ではその
体積は大きくなる。このため、一定の真空度で脱脂すれ
ば、最もガス発生量の多い領域では真空下で更に体積は
膨張し、脱脂欠陥を引き起こす。従って分解ガスの発生
量に応じて真空度を変化させる必要がある。また、特開
昭59−39775号のように10−mmHg台より
も高真空では、ガス体積は常圧下での数1000倍にも
なり、発生する分解ガスによる脱脂欠陥を更に助長させ
ることになる。
【0005】この発明は斯る課題を解決するためになさ
れたもので、その目的とするところは、脱脂工程におけ
る要因を温度でけでなく圧力まで捉えて制御すること
で、有機結合剤の分解ガスの体積及び濃度を制御し、脱
脂工程における欠陥を防止して良質な粉末成形品を提供
することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明は、焼結可能な粉末と有機結合剤とを混合し
この混合物を成形してできた粉末成形品を加熱すること
により、該成形品から余分な有機結合剤を除去する粉末
成形品の脱脂方法において、大気圧より低い炉内圧力下
で前記粉末成形品を加熱すると共に、有機結合剤が熱分
解する際に発生する分解ガスの特定成分の濃度を検出
し、その濃度に応じて前記炉の真空排気系のコンダクタ
ンスと前記炉への非酸化性ガス導入とを調節することに
よる炉内圧力の制御と加熱速度との制御により前記分解
ガスの特定成分の濃度を予め設定した設定値以下になる
ようにしたことを特徴とする。
【0007】
【作用】前記構成により、本発明によれば、大気圧より
低い減圧下に粉末成形品を加熱することで、粉末成形品
の表面ににじみ出てくる有機結合剤が減圧下で速やかに
気化され、効果的に除去することが可能となる。このと
き、有機結合剤の分解に応じて発生する分解ガスの特定
成分の濃度変化を検出し、その変化量が予め設定された
値以下となるような圧力制御と加熱速度の制御を行うこ
とにより、発生する分解ガスが増加する際に該分解ガス
の体積を圧縮し、濃度を一定値以下に抑制することにな
り、これによって良好な脱脂品が得られる。
【0008】
【実施例】以下図面に基づき本発明の好ましい実施例を
説明する。本発明方法においては、大気圧より低い炉内
圧力下で前記粉末成形品を加熱すると共に、有機結合剤
が熱分解する際に発生する分解ガスの特定成分の濃度変
化を検出し、その変化量に応じて加熱速度と炉内圧力を
制御するようにしたことを特徴とする。
【0009】すなわち、本実施例においては、図1およ
び図2に示されるように、炉体1に真空排気部2とカス
パージ部3の他、分解ガス検出部13が設けられてい
る。この分解ガス検出部13は、ニードルバルブ14と
コントロールバルブ5を介して炉体1と接続しており、
検出部内は10−Torr台に保持されている。この
分解ガス検出部13は、センサー15と質量分析計1
6、油拡散ポンプ17、ロータリポンプ18、コントロ
ールバルブ19を含み、前記質量分析計16により分解
ガス成分の分子量が検出される。また、コントロールバ
ルブ5,7は質量分析計16とプログラムコントローラ
9および空電変換器8a,8bを関して接続されてい
る。この質量分析計16で測定された特定の、あるいは
複数の分子量成分の分圧と、プログラムコントローラ9
に予め設定された値との差に応じてコントロールバルブ
5,7が作動し、炉内の真空度が変化するようになって
いる。
【0010】図3(a)(b)には本実施例による炉内
温度と炉内圧力ならびに分解ガス特定成分の分圧との関
係が示されている。すなわち、粉末成形品の脱脂を行う
際、図3(a)のように炉内の真空度を一定にして加熱
を行うと、温度上昇に伴って粉末形成品中の有機結合剤
が熱分解し、分解ガスが発生するが、更に温度が上昇す
ると有機結合剤の熱分解は盛んになり、多量の分解ガス
が発生して特定成分の分圧が上昇する。従って、この状
態で脱脂工程を完了すると粉末成形品は内部で膨張した
分解ガスにより粉々に砕けてしまうことになる。そこ
で、図3(b)のように、質量分析計16で検出される
例えば分子量28の成分が一定となるように、プログラ
ムコントローラ9を設定する。そして、このときの設定
値よりも検出値の方が大きくなった場合、ガスパージ部
3から非酸化性ガスを導入し、かつ真空排気系のコンダ
クタンスが小さくなるような制御が行われる。この状態
で脱脂を行うと、有機結合剤の分解が激しくなると共
に、炉内に供給される非酸化性ガス量は増加する。一
方、真空排気系のコンダクタンスが小さくなったため、
炉内の真空度は低下する。この結果、分子量28の成分
は希釈され、検出値と設定値とが略同じになる。このよ
うにして、有機結合剤の分解が激しくなり発生する分解
ガスが増加する際に、炉内の真空度が低下し発生するガ
スの体積が圧縮され濃度が希釈される。この条件にて脱
脂することにより割れ、ふくれ等の脱脂不良を防止し、
有機結合剤の残留を防ぐこともでき、焼結時の収縮障害
のない良好な焼結品が得られる。
【0011】なお、この実施例では、検出する分解ガス
成分を分子量28のものについて説明したが、これに限
定されるものではなく、分解ガスの検出方法も質量分析
計に限定されるものでないことは勿論である。
【0012】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明は、大気圧よ
り低い炉内圧力下で前記粉末成形品を加熱すると共に、
分解ガスの特定成分の濃度変化に応じて加熱速度と炉内
圧力を制御することにより、有機結合剤の分解により発
生する分解ガスの体積と濃度を制御することができ、
やふくれ等のない良好な脱脂品を得ることができ、有
機結合剤の残留を防止でき、残留した有機結合剤による
焼結時の収縮障害による焼結不良を起こすこともない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施するための全体構成を示す
図、
【図2】分解ガス検出部の構成ブロック図、
【図3】(a)(b)は炉内温度と炉内圧力ならびに分
解ガスの特定成分の分圧との関係を示す図、
【図4】(a) (b) (c) (d)は粉末成形品
の脱脂工程における雰囲気状態を示す図である。
【符号の説明】
1 炉体 2 真空排気部 3 ガスパージ部 4 圧力検出器5,7,19 コントロールバルブ 8a,8b 空電変換器 9 プログラムコントローラ 12 ヒータ 13 分解ガス検出部 14 ニードルバルブ 16 質量分析計 17 油拡散ポンプ 18 ロータリーポンプ 32 成形品

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 焼結可能な粉末と有機結合剤とを混合し
    この混合物を成形してできた粉末成形品を加熱すること
    により、該成形品から余分な有機結合剤を除去する粉末
    成形品の脱脂方法において、 大気圧より低い炉内圧力下で前記粉末成形品を加熱する
    と共に、有機結合剤が熱分解する際に発生する分解ガス
    の特定成分の濃度を検出し、その濃度に応じて前記炉の
    真空排気系のコンダクタンスと前記炉への非酸化性ガス
    導入とを調節することによる炉内圧力の制御と加熱速度
    との制御により前記分解ガスの特定成分の濃度を予め設
    定した設定値以下になるようにしたことを特徴とする粉
    末成形品の脱脂方法。
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