JP2539519Y2 - 定植用育苗材 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案の定植用育苗材は、播種床
で発芽させた苗や、株分けした苗を移植して育苗するも
のであり、定植できる状態まで成長した苗を移植してか
ら水耕栽培用ベッドの上に設置されている定植板の定植
穴内に差込んで苗を定植できるようにしたものである。

【０００２】

【従来の技術】植物の育苗方法には播種して発芽した苗
を育苗したり、株分けした苗を育苗したりする方法があ
る。

【０００３】播種して発芽した苗の育苗方法としては、
従来は、例えば図４のようにウレタン等からなる播種床
Ａに播種し、それが発芽したら図５のように苗Ｂを播種
床Ａから引き抜き、同苗の根を図６のようなウレタン等
からなる育苗材の切込みＧ内に差込む方法がある。ま
た、播種床に発芽した苗と共に、図７のように播種床Ａ
に形成されている分割用切込みＨから播種床Ａを分割
し、図８のようにその分割された播種床Ａを前記育苗材
の切込みＧ内に押込む方法もある。これらの状態で苗Ｂ
が定植できる状態まで成長したら、図３（ａ）のように
同育苗材を水耕栽培用ベッドＤの上に設置されている定
植板Ｅの定植穴Ｆ内に差込んで定植する。

【０００４】株分けした苗の育苗方法としては、例えば
図９のような苺等の蔓性の株の場合は蔓を切って株を引
き抜き、図１０のようにその株分けした苗Ｃの根の周囲
にロックウール等の吸湿材Ｊを巻付けて育苗ポットＫに
移植する方法、また株分けした苗Ｃを図１１のように育
苗材の切込みＧ内に押込んで図１２のように反対側から
引出す方法がある。前者の場合は苗Ｃが定植できるまで
に成長したら苗を吸湿材Ｊごと育苗ポットＫから抜き出
して、図３（ａ）の水耕栽培ベッドＤの上の定植板Ｅの
定植穴Ｆに定植し、後者の場合は成長した苗Ｃを育苗材
ごと図３（ｂ）のように前記定植板Ｅの定植穴Ｆ内に差
込んで定植する。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら従来の育
苗方法は以下のような問題があった。 ａ．図５、図６の育苗方法では発芽した苗Ｂを播種床Ａ
から引き抜く際に根毛が切れ易く、また育苗材に根を押
込む時に根が傷み易い。従って移植後の根付き性（活着
性）が悪く、植物の生育が悪くなる。また、苗を一本ず
つ移植しなければならないので極めて作業性が悪い。 ｂ．図７、図８の育苗方法では、苗Ｂを引き抜いたり、
その根を無理に押込んだりしないので根はそれほど傷ま
ないが、分割された播種床Ａを育苗材の切込みＧ内に押
込む際に、同切込みＧを一々手で押し広げなければなら
ないので作業性が悪い。 ｃ．図９〜図１０の育苗方法では株分けした苗Ｃの根
に、一々吸湿材Ｊを巻き付けなければならないので面倒
であった。また、吸湿材Ｊの他に育苗ポットＫを必要と
するためコスト高であった。 ｄ．図１１、図１２の育苗方法では株分けした苗Ｃの根
を育苗材の深い切込みＧ内に無理に貫通させるのが面倒
であり、また根が切込みＧ内に無理に押込まれているの
で根の生育が悪く、ひいては植物の生育も悪くなる。

【０００６】

【考案の目的】本考案の目的は前記諸問題を解決すし
て、作業性が良く、活着性が良く、しかも植物が生育し
易い定植用育苗材を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本考案の定植用育苗材は
図１のように、吸湿性を有し且つ柔軟性のある材料から
なり、播種床Ａで発芽させた苗Ｂや、株分けした苗Ｃ等
を移植するブロック状の定植用育苗材において、育苗ブ
ロック３の一面から縦方向途中まで、前記の発芽した苗
Ｂを播種床Ａの一部ごと差し込み可能な凹陥部１が形成
され、同育苗ブロック３の反対面から凹陥部１の底４に
連通するまで、前記の株分けした苗Ｃの根又は茎を差込
み可能な切込み２が、育苗ブロック３の外周面５に開口
しないように形成されてなる。

【０００８】

【作用】本考案の定植用育苗材を用いて播種して発芽し
た苗Ｂを育苗する場合は、例えば図１（ａ）のように播
種床Ａに形成されている分割用切込みＨから、苗Ｂと共
に播種床Ａを千切って分割し、同苗Ｂを播種床Ａの一部
ごと育苗ブロック３の一面に形成されている凹陥部１内
に嵌入する。そして苗Ｂが定植できるまで成長したら、
前記育苗材を図３（ａ）のように定植板Ｅの定植穴Ｆに
差込む。株分けされた苗を育苗する場合は、例えば図１
（ｂ）のように、育苗材の反対面に形成されている切込
み２内にその根を押込む。このとき、切込み２自体の深
さは浅く、根はすぐに前記凹陥部１に貫通してしまうの
で、根を無理に押込む必要はない。また、図２のように
切込み２を貫通した根は同凹陥部１内で拡がるので根の
生育も良い。そして苗Ｂが定植できるまで成長したら、
前記育苗材を図３（ｂ）のように定植板Ｅの定植穴Ｆに
差込む。

【０００９】

【実施例】図１は本考案の定植用育苗材の一実施例であ
る。この実施例の育苗ブロック３はウレタン等の吸湿
性、柔軟性に富む材料をほぼ立方体状に成形されてい
る。また、この立方体の大きさは図３（ａ）（ｂ）に示
す水耕栽培用ベッドＤの上に設置されている定植板Ｅの
定植穴Ｆよりやや大きめにしてあり、その定植穴Ｆに差
込むだけで自己の弾性により差込んだ状態に保持される
ようにしてある。

【００１０】図１に示す凹陥部１は育苗ブロック３の一
面から縦方向に途中まで形成されている。この凹陥部１
は図７のように、発芽した苗Ｂを分割用切込みＨから分
割した播種床Ａごと嵌入できる大きさとしてあり、また
株分けした苗Ｃの根が十分に拡がる大きさにもしてあ
る。

【００１１】図１に示す切込み２は前記凹陥部１が形成
されている面と反対側の面から、前記凹陥部１の底４に
連通するまで形成されている。この切込み２は十字状に
形成され、また、育苗ブロック３の外周面５に開口しな
いように形成して、その十字形の交点付近を押し広げ
て、株分けした苗Ｃの根を押込むことができるようにし
てある。

【００１２】

【考案の効果】本考案の定植用育苗材は以下のような効
果がある。 ａ．播種して発芽した苗Ｂを分割された播種床Ａごと凹
陥部１内に嵌入して定植することができるので、定植作
業が容易になり、定植時に根が傷まず、活着性がよく、
植物の生育もよい。 ｂ．切込み２が凹陥部１が形成されている面と反対側の
面から、凹陥部１の底４に連通するまで形成されている
ので、凹陥部１内に差し込んで定植した苗Ｂの根が切込
み２に進入し易くなり、根の張りもよくなる。 ｃ．株分けした苗Ｃの根を切込み２に押込んで、その根
を凹陥部１内で拡げることができるので、根の生育がよ
く、植物の生育もよい。また切込み２の深さが浅いの
で、根を押込む作業が楽になる。 ｄ．切込み２が育苗ブロック３の外周面５まで開口しな
いように形成されているので、育苗ブロック３の定形性
が確保され、根が張っても育苗ブロック３が型崩れしな
い。

【図面の簡単な説明】

【図１】同図（ａ）は本考案の定植用育苗材に播種して
発芽した苗を移植する説明図、同図（ｂ）は同育苗材に
株分けした苗を移植する説明図である。

【図２】図１ｂの育苗材の縦断面図である。

【図３】同図（ａ）は定植板Ｅに発芽した苗を定植する
説明図、同図（ｂ）は株分けした苗を定植する説明図で
ある。

【図４】播種床に播種する状態の説明図である。

【図５】発芽した苗を播種床から引き抜く説明図であ
る。

【図６】引き抜いた苗を従来の定植用育苗材に移植する
説明図である。

【図７】発芽した苗ごと播種床を分割する説明図であ
る。

【図８】分割された播種床を従来の定植用育苗材に移植
する説明図である。

【図９】株分けの説明図である。

【図１０】株分けした苗を育苗ポットに移植する説明図
である。

【図１１】株分けした苗を従来の定植用育苗材に移植す
る説明図である。

【図１２】図１１の育苗材の縦断面図である。

【符号の説明】

１ 凹陥部 ２ 切込み ３ 育苗ブロック ４ 底 ５ 外周面 Ａ 播種床 Ｂ 発芽した苗 Ｃ 株分けした苗 Ｄ 水耕栽培用ベッド Ｅ 定植板 Ｆ 定植穴

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 吸湿性を有し且つ柔軟性のある材料から
   なり、播種床（Ａ）で発芽させた苗（Ｂ）や、株分けし
   た苗（Ｃ）等を移植するブロック状の定植用育苗材にお
   いて、育苗ブロック（３）の一面から縦方向途中まで、
   前記の発芽した苗（Ｂ）を播種床（Ａ）の一部ごと差し
   込み可能な凹陥部（１）が形成され、育苗ブロック
   （３）の反対面から同凹陥部（１）の底（４）に連通す
   るまで、前記の株分けした苗（Ｃ）の根又は茎を差込み
   可能な切込み（２）が、育苗ブロック（３）の外周面
   （５）に開口しないように形成されてなる定植用育苗
   材。