JP2538904Y2 - 釣り用リールの遠心ブレーキ機構 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、スプール軸、若しく
は、スプールと連係する回転系に半径方向に変位自在な
制動片を形成し、スプールの回転時における遠心力によ
り、この制動片を摩擦部材に接触させてスプールの回転
に制動力を作用させる釣り用リールの遠心ブレーキ機構
の改良に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、上記のように構成されるブレーキ
機構（以下、遠心ブレーキと称する）としては特公昭３
０−８１１６号公報に示されるものが存在し、この従来
例ではスプールと一体的に回転するスプール軸に対し
て、径方向に姿勢を設定した杆状体を設け、この杆状体
に筒状の制動片をスライド自在に外嵌し、この制動片の
回転軌跡の外方にリング状の摩擦部材を配置すること
で、スプールの回転時には制動片と摩擦部材との接触に
起因する摩擦力でスプールの回転に制動力を作用させ得
るよう構成されている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】前述した遠心ブレーキ
は、キャスト直後においてスプールの回転と連係して良
好に制動力が作用するため、従来からベイトキャスティ
ング用のリールに多く採用されているものであり、又、
この従来の構造の遠心ブレーキで制動力を調節する場合
には、リール本体を分解して、このブレーキ機構を露出
した状態で、制動片を摩擦係数の異なったものに取り替
える、あるいは、重量の異なったものに取り替える等の
操作を行っている。

【０００４】又、ベイトキャスティングと称される形態
の釣りではルアー等の仕掛の取り替えを行うことも多
く、この取り替えに伴ってブレーキ機構の制動力の値を
調節したい場合も生ずる。尚、この種のブレーキ機構は
キャスト時において、バックラッシュの発生を抑制する
ことが目的であり、仕掛の重量が増大するほどブレーキ
機構の制動力の値を大きく設定する必要を生ずる。

【０００５】しかし、この従来からの遠心ブレーキでは
制動力の調節を行うための操作は、前述したように、多
くの手間を必要とするものであり、しかも、このように
調節を行っても、制動力の値が段階的にしか変更されな
いものであることから微妙に制動力を調節することが困
難であり、改善の余地がある。本考案の目的は、できる
だけ手間を掛けずに、その制動力を調節し得る遠心ブレ
ーキ機構を合理的に構成する点にある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本考案の特徴は、冒頭に
記したように回転系に形成した制動片を遠心力により摩
擦部材に接触させてスプールの回転に制動力を作用させ
る釣り用リールの遠心ブレーキ機構であって、前記摩擦
部材の摩擦面を、前記制動片の回転軸芯方向に沿う夫々
の位置において異なる摩擦係数に形成すると共に、リー
ル本体の外部からの操作で、この摩擦面に対する前記制
動片の接触位置を前記回転軸芯方向で変更する制動力調
節手段を備えて成る点にあり、その作用、及び、効果は
次の通りである。

【０００７】

【作用】上記特徴を例えば図１に示すように構成する
と、制動力の増大を図る調節を行う場合には、制動力調
節手段Ａによって、摩擦部材７の摩擦面７Ｓに対する制
動片６の接触位置を摩擦係数の大きい側に設定し、又、
制動力の減少を図る場合には、制動力調節手段Ａによっ
て、前述と逆の操作を行うことにより、所望の制動力を
得るものとなる。つまり、この考案では、制動片６と摩
擦部材７との相対的な位置を調節することにより、制動
片６の取り替えを行わずに、又、遠心ブレーキの制動特
性を変化させること無く、リール本体の外部からの操作
で所望の制動力を設定できるのである。

【０００８】

【考案の効果】従って、比較的簡単な操作で、その制動
力を調節し得る遠心ブレーキ機構が合理的に構成できた
のである。特に、この考案では制動力調節手段を段階の
無い作動を行えるよう構成することにより、無段階で制
動力を調節できるという効果も奏する。

【０００９】

【実施例】以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明
する。図４に示すように、リール本体を構成する左右の
サイドケース１，１の間に、釣り糸（図示せず）を巻き
取るスプール２を配置すると共に、右側のサイドケース
１の外部にハンドル３を備え、左側のサイドケース１に
ブレーキ機構Ｂを内装して両軸受リールを構成する。こ
のリールではハンドル３からの動力をスプール２に伝え
る伝動系に介装されたクラッチ機構（図示せず）をリー
ル本体に内装し、前記ブレーキ機構Ｂは以下のように構
成されている。

【００１０】つまり、図１乃至図３に示すように、前記
ブレーキ機構Ｂは、スプール２と共に回転するスプール
軸４の端部に径方向に姿勢を設定した杆状体５を設け、
この杆状体５に樹脂製で円筒状の制動片６をスライド自
在に外嵌し、この制動片６の回転軌跡の外方に金属製で
筒状の摩擦部材７を配置して遠心型に構成され、このブ
レーキ機構Ｂでは、この摩擦部材７の摩擦面７Ｓを、ス
プール軸２の軸芯方向に沿う夫々の位置において異なる
摩擦係数になるよう、この摩擦面７Ｓの仕上げ精度を異
ならせてあり、使用時においては、リール本体の外部か
らの操作で、この摩擦面に対する制動片６の接触位置を
スプール軸４の軸芯方向で変更することで、制動力の調
節を行う制動力調節手段Ａを備えている。

【００１１】前記制動力調節手段Ａは左側のサイドケー
ス１に備えられたダイヤル８と、このダイヤル８に形成
されたカム溝８Ａに係入する状態で前記摩擦部材７に固
設された複数のピン９と、摩擦部材８を反スプールの側
に付勢するバネ１０とで成り、制動力の調節時にはダイ
ヤル８を回動操作することにより、カム溝８Ａの深さに
対応して摩擦部材７がスプール軸４の軸芯方向へ変位し
て、その制動片６が接触する部位の摩擦面７Ｓの摩擦係
数に応じた制動力がスプール２に作用するように構成さ
れている。

【００１２】又、このブレーキ機構Ｂでは、摩擦部材７
の摩擦面７Ｓの反スプールの側（図１において左側）で
摩擦係数が大きくなるよう、スプール２の軸芯方向で連
続的に摩擦係数の値を変化させてあり、更に、この摩擦
面７Ｓのスプール側（図１において右側）には傾斜面１
１Ａを有した環状溝１１を形成してあり、図３に示すよ
うに制動片６の位置を設定してキャスティングを行った
場合には、制動片６の外周部が環状溝１１の傾斜面１１
Ａに接触した状態で、この制動片６が杆状体５を中心と
して回転することにより制動力を極めて小さい値に設定
できるようになっている。

【００１３】因みに、このリールでは、リール本体の上
面を覆う形態のカバー１２を開閉自在に構成してあり、
前述のように制動力を調節する場合には、カバー１２を
開放してダイヤル８を露出させることになる。又、この
リールでは下部の脚部１３を釣り竿１４に装着した場合
に、釣り竿１４と左右のサイドケース１，１との間の隙
間を埋めてパーミング時の手触りの向上を図るよう柔軟
な素材で成る補助部材１５，１５を備えている。

【００１４】〔別実施例〕 本考案は上記実施例以外に、例えば、制動片をスプール
と連係する伝動系に形成することが可能であり、又、制
動片の側を摩擦部材に対して変位するよう調節系を構成
することも可能であり、又、制動力調節手段の作動構造
は、カム式以外にネジ式、ギヤ式等様々に実施できる。
更に、摩擦面の摩擦係数を異ならせるための手段として
は、アルミニューム、鉄、樹脂等、夫々摩擦係数の異な
るリング状の複数の素材を、その軸芯が制動片の回転軸
芯と一致する状態で隣接配置する構造が考えられ、又、
摩擦部材の摩擦面に摩擦係数の異なる塗料の塗布を行
う、あるいは、摩擦部材に細かい開口をメッシュ状に形
成して摩擦面を構成すると共に、このメッシュの開口
径、メッシュのピッチ等を連続的に変化させて形成する
ことで、摩擦係数を異ならせるようにも実施できる。

【００１５】尚、実用新案登録請求の範囲の項に図面と
の対照を便利にするために符号を記すが、該記入により
本考案は添付図面の構成に限定されるものではない。

【図面の簡単な説明】

【図１】ブレーキ機構の構造を表す縦断背面図

【図２】ブレーキ機構の拡大断面図

【図３】制動力を低く設定した状態のブレーキ機構の断
面図

【図４】リールの全体平面図

【符号の説明】

２ スプール ４ スプール軸 ６ 制動片 ７ 摩擦部材 ７Ｓ 摩擦面 Ａ 制動力調節手段

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 スプール軸（４）、若しくは、スプール
   （２）と連係する回転系に半径方向に変位自在な制動片
   （６）を形成し、スプール（２）の回転時における遠心
   力により、この制動片（６）を摩擦部材（７）に接触さ
   せてスプール（２）の回転に制動力を作用させる釣り用
   リールの遠心ブレーキ機構であって、 前記摩擦部材（７）の摩擦面（７Ｓ）を、前記制動片
   （６）の回転軸芯方向に沿う夫々の位置において異なる
   摩擦係数に形成すると共に、リール本体の外部からの操
   作で、この摩擦面（７Ｓ）に対する前記制動片（６）の
   接触位置を前記回転軸芯方向で変更する制動力調節手段
   （Ａ）を備えて成る釣り用リールの遠心ブレーキ機構。