JP2537311B2 - 撥水・防汚性石材 - Google Patents

撥水・防汚性石材

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JP2537311B2
JP2537311B2 JP3098915A JP9891591A JP2537311B2 JP 2537311 B2 JP2537311 B2 JP 2537311B2 JP 3098915 A JP3098915 A JP 3098915A JP 9891591 A JP9891591 A JP 9891591A JP 2537311 B2 JP2537311 B2 JP 2537311B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は大理石や花こう岩、みか
げ石等の石材の表面改質に関する。特に撥水性・防汚性
を付与した石材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、石材として花コウ岩、大理石、み
かげ石等が多くの分野で使われている。たとえば建築
物、建築材、芸術品、置物、風呂、墓石、記念碑、門
柱、石垣、歩道などである。これらの石材は表面を磨き
あげて石の美観を発揮させて使用されるのが普通であ
る。
【0003】これらの石材にとって一般的に望まれてい
るのは防汚性である。すなわち、石材は外気に当たって
空気中の埃が付着したり、室内の埃が付着しやすい。そ
して石材は汚れやすく、またいったん汚れると汚れが取
れにくいという問題がある。また屋外に置く石材は、酸
性雨に晒されたり、氷が付着する等して、表面にひび割
れが入りやすくなるため、防汚性とともに撥水性付与が
必要な場合もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
石材は単に表面に磨きをかけるだけであり、長期間用い
ると表面に汚れが付着したり、またその汚れが取れにく
いという課題があった。さらに環境問題により表面にひ
びが入りやすいという課題があった。これらの課題はと
くに高価な石材を用いたときには大きな問題となるもの
であった。
【0005】本発明は、従来技術の課題を解決するた
め、撥水性・防汚性のすぐれた石材を提供することを目
的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明の撥水・防汚性石材は、表面にシロキサン結
合を介してフッ化アルキル基を含有するナノメータない
しオングストロームレベルの厚さの化学吸着膜が設けら
れた撥水・防汚性石材であるという構成を備えたもので
ある。前記構成においては、化学吸着膜が単分子膜であ
ることが好ましい。
【0007】
【作用】前記本発明の構成によれば、石材の表面にシロ
キサン結合を介してフッ化アルキル基を含有する化学吸
着膜が設けられているので、撥水性・防汚性に優れ、か
つ石材表面の美観をそのまま生かすことができる。すな
わち、前記化学吸着膜の表層にはフッ化アルキル基が存
在するから、撥水性・防汚性に優れたものとなる。ま
た、前記化学吸着膜の基部は、シロキサン結合を介して
化学結合して形成されているので、耐久性に優れた膜と
することができ、表面を繰り返し洗浄しても前記化学吸
着膜は石材表面から容易には剥離しない。さらに、本発
明の化学吸着膜は、ナノメーター乃至オングストローム
単位の極薄い膜であるので、光沢などの美観を損ねるこ
とがない。
【0008】また、化学吸着膜が単分子膜であるという
本発明の好ましい構成によれば、均一な厚さの薄い膜と
することができるので、透明性に優れ、石材表面の美観
を損ねることがない。
【0009】
【実施例】本発明の石材は図1に示すように、石材1の
表面にシロキサン結合2を介して、フッ化アルキル基を
含有する単分子膜3が形成されている。石材1はSiO
2 、Al2 3 、CaOなどの金属酸化物から構成され
ており、その表面には水酸基がある。その水酸基とフッ
化アルキル基を有するクロロシラン系界面活性剤とを反
応させることにより、石材1の表面にシロキサン結合2
を介して、フッ化アルキル基を含有する単分子膜3を形
成させることができる。
【0010】石材の例として、火成岩では花コウ岩、安
山岩、ハンレイ岩などがあげられる。また、堆積岩の例
としては、大理石、砂質岩、泥質岩等があげられる。本
発明の石材表面に設けられる化学吸着膜はフッ化アルキ
ル基を有するクロロシラン系界面活性剤から構成されて
いる。フッ化アルキル基を有するクロロシラン系界面活
性剤としては、例えばCF3(CF2 7 (CH2 2
SiCl3 ,CF3 CH2 O(CH2 15SiCl3
CF3 (CH2 2 Si(CH3 2 (CH2 15Si
Cl3 ,F(CF2 4 (CH2 2 Si(CH3 2
(CH2 9 SiCl3 ,F(CF2 8 (CH2 2
Si(CH3 2 (CH2 9 SiCl3 ,CF3 CO
O(CH2 15SiCl3 ,CF3 (CF2 5 (CH
2 2 SiCl3 などのようなトリクロロシラン系界面
活性剤をはじめ、例えばCF3 (CF2 7 (CH2
2 SiCln (CH3 3-n ,CF3 (CF2 7 (C
2 2 SiCln (C2 5 3-n ,CF3 CH 2
(CH2 15SiCln (CH3 3-n ,CF3 CH 2
(CH2 15SiCln (C2 5 3-n ,CF
3 (CH2 2 Si(CH3 2 (CH2 15SiCl
n (CH3 3-n ,F(CF2 4 (CH2 2 Si
(CH3 2 (CH2 9 SiCln (C
2 5 3-n ,F(CF2 8 (CH22 Si(CH
3 2 (CH2 9 SiCln (CH3 3-n ,CF3
COO(CH2 15SiCln (CH3 3-n ,CF3
(CF2 5 (CH2 2 SiCln (CH3
3-n (但し式中のnは何れも1又は2)等のような低級
アルキル基置換のモノクロロシラン系あるいはジクロロ
シラン系界面活性剤が挙げられる。これらの中でも特に
トリクロロシラン系界面活性剤の親水性基と結合したク
ロロシリル結合以外のクロロシリル結合が、隣合うクロ
ロシラン基とシロキサン結合で分子間結合を形成するた
め、より強固な化学吸着膜となることから好ましい。ま
た、CF3 (CF2 n CH2 CH2 SiCl3 (但し
式中のnは整数であり、3〜25程度が最も扱いやす
い)が、溶剤溶解性、化学吸着性と撥水・防汚性等の機
能性との釣合が取れているため好ましい。さらにまた、
フッ化アルキル鎖部分にエチレン基やアセチレン基を組
み込んでおけば、化学吸着膜形成後5メガラド程度の電
子線照射で架橋できるのでさらに化学吸着膜自体の硬度
を向上させることも可能である。
【0011】本発明に使用できるクロロシラン系界面活
性剤は、上述に例示したように直鎖状だけではなく、フ
ッ化アルキル基又は炭化水素基が分岐した形状でも、又
は末端の珪素にフッ化アルキル基もしくは炭化水素基が
置換した形状(即ちR、 1 、R 2 、R 3 をフッ化アル
キル基又は炭化水素基として一般式R2 SiCl2 、R
3 SiCl、 1 2 SiCl2 もしくは 1 2 3
SiCl等)であってもよいが、吸着密度を高めるため
には一般には直鎖状が好ましい。さらに、例えば、Si
Cl4 、SiHCl3 、SiH2 Cl2 、Cl−(Si
Cl2 O)n −SiCl3 (但し式中nは自然数)、S
iClm (CH3 4-m 、SiClm (C2 5 4-m
(但し式中mは1〜3の整数)、HSiCll (C
3 3-l 、HSiCll (C2 5 3-l (但し式中
lは1又は2)等のようなクロロシリル結合を複数個含
む物質を化学吸着させた後、水と反応すると、表面のク
ロロシリル結合が親水性のシラノール結合に変わり、石
材表面が親水性となる。
【0012】なお、このクロロシリル基を複数個含む物
質の中でも、テトラクロロシラン(SiCl4 )は反応
性が高く分子量も小さいためより高密度にシラノール結
合を付与できるため好ましい。このようにして親水性化
すると、高分子を含む基体の基体の酸化処理よりも親水
性をより高くすることができる。この上に例えばフッ化
アルキル基を含むクロロシラン系界面活性剤を化学吸着
でき、このようにして得た化学吸着膜はより高密度化さ
れるため、撥水性、防汚性等の機能がより高められる。
【0013】本発明の石材に用いられる石材の表面にシ
ロキサン結合を介してフッ化アルキル基を含有する化学
吸着膜を形成する方法は、石材を非水系の有機溶媒に浸
漬して、この表面にクロロシラン系界面活性剤を化学吸
着させ、シロキサン結合を介してフッ化アルキル基を含
有する化学吸着膜を形成する工程を含む。本発明の石材
の表面にシロキサン結合を介してフッ化アルキル基を含
有する化学吸着膜を形成する方法に用いる非水系溶媒
は、クロロシラン系界面活性剤と反応する活性水素を持
たない有機溶媒であればよい。その例として例えば1,
1−ジクロロ,1−フルオロエタン、1,1−ジクロ
ロ,2,2,2−トリフルオロエタン、1,1−ジクロ
ロ,2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、
1,3−ジクロロ,1,1,2,2,3−ヘプタフルオ
ロプロパン等のフッ素系溶媒、例えばヘキサン、オクタ
ン、ヘキサデカン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶
媒、例えばジブチルエーテル、ジベンジルエーテル等の
エーテル系溶媒、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸
イソプロピル、酢酸アミル等エステル系溶媒の何れかが
好ましい。
【0014】また、本発明の石材に用いられる石材表面
に形成される化学吸着膜は、単分子化学吸着膜一層だけ
でも充分に機能が発揮される。単分子化学吸着膜を一層
だけ形成するには、クロロシラン系界面活性剤又はクロ
ロシリル基を複数個含む物質を化学吸着した後、水分に
接触させないで非水系の溶剤で洗浄するだけでよく、特
別な工程を要しなく簡便に行える。また、化学吸着膜は
単分子膜が累積していても良いこと勿論である。このよ
うに、化学吸着膜が累積膜を形成すると、付与された機
能性を示す基が配向し、密度も向上するためより高機能
を発揮できる。
【0015】次に具体的実施例を用いて本発明を説明す
る。 実施例1 花コウ岩(50cm×50cm×20cm)をヘプタデ
カフルオロデシルトリクロロシランの10-2mol /lシ
クロヘキサン溶液に室温、窒素雰囲気下で120分間浸
漬し、引き続いて未反応のヘプタデカフルオロデシルト
リクロロシランをシクロヘキサンで洗浄して、しかる後
純水で洗浄し、フッ化アルキル基を含むシロキサン結合
を介した化学吸着単分子膜を花コウ岩表面に形成した。
【0016】実施例2 実施例1の花コウ岩を大理石(50cm×50cm×1
cm)に代え、まず1wt%のテトラクロロシラン溶液
(溶媒:1,1−ジクロロ,1−フルオロエタン)に窒
素雰囲気下室温で60分間浸漬し、引き続いて未反応の
テトラクロロシランを1,1−ジクロロ,1−フルオロ
エタンで洗浄して、しかる後純水で洗浄し、乾燥した試
料を用いてシクロヘキサンを1,1−ジクロロ,1−フ
ルオロエタンに代えて、実施例1と同様の実験をした。
【0017】実施例1の石材を風雨の当たる屋外に30
日間放置した。また、実施例2の大理石を風呂場のタイ
ルとして30日間使用した。比較例として、化学吸着膜
を形成していない石材を使用した。30日後、両者の表
面の汚れ状態を比べてみた。その結果、実施例1は汚れ
が少なかった。また実施例2は、汚れほとんど無かっ
た。これに対して比較例1は、汚れが多かった。また比
較例2は、水垢がこびりついていた。
【0018】以上の結果、比較例の石材は、汚れがひど
かった。また、汚れを取るには、洗剤を含んだ布で拭き
取る必要があった。これに対して、本発明の石材では、
ほとんど汚れがついていなかった。また、少しついた汚
れも、水を含んだ布でふくだけで簡単に除くことができ
た。以上のように本発明の石材は、石材の表面にシロキ
サン結合を介してフッ化アルキル基を含有する化学吸着
膜が設けられたものを用いるので、従来のものに比べ
て、防汚性が著しく優れている。また、分子1層のコー
ティングが可能なので、フッ素樹脂コーティングのよう
に石材の寸法精度を変えることもない。このように本発
明は工業的価値の大なるものである。
【0019】
【発明の効果】前記したとおり本発明によれば、石材の
表面にシロキサン結合を介してフッ化アルキル基を含有
するナノメータないしオングストロームレベルの厚さの
化学吸着膜が設けられているので、撥水性・防汚性に優
れ、かつ石材表面の美観をそのまま生かすことができ
る。また、化学吸着膜が単分子膜であるという本発明の
好ましい構成によれば、均一な厚さの薄い膜とすること
ができるので、透明性に優れ、石材表面の美観を損ねる
ことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の石材の表面を分子レベルまで拡大した
断面概念図である。
【符号の説明】
1 石材 2 シロキサン結合 3 化学吸着膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−265581(JP,A) 特開 平2−164548(JP,A) 特開 昭63−264172(JP,A) 特開 昭59−203788(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 石材の表面にシロキサン結合を介してフ
    ッ化アルキル基を含有するナノメータないしオングスト
    ロームレベルの厚さの化学吸着膜が設けられた撥水・防
    汚性石材。
  2. 【請求項2】 化学吸着膜が単分子膜である請求項1に
    記載の撥水・防汚性石材。
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