JP2531410B2 - 天然赤色色素の製造方法 - Google Patents

天然赤色色素の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は、紅藻、藍藻より得られる天然赤色色素の製
造方法に関するものである。
<従来の技術> 食品用天然赤色色素としては、従来カロテノイド、紅
麹色素、ラッカイン酸、ハイビスカス色素、ビートレッ
ド、キノン系の色素がある。そしてこれらの色素の使用
に際しては、食品添加物であるからには、より少量の色
素で所望の色調を安定に着色し得ることが望まれる。し
かしなが従来の色素では所望の色調が得られなかった
り、着色力や安定性が不十分な場合があった。又、こう
した天然赤色色素を牛乳、ヨーグルト等の白色系製品の
着色に用いると明るいピンク色とならず、くすんだピン
ク色としかならないといった問題があった。
かかる天然赤色色素の製造は、通常各原料から抽出し
たのち濃縮したり、硫安塩析、カラムクロマトグラフィ
ーで精製することにより行われているが、こうした方法
は煩雑で、作業性、生産効率の点で劣るものであった。
<発明が解決しようとする問題点> 本発明は、従来の食用色素ではそれ自体単独では得ら
れない桃色から赤紫色の色調を有し、しかもその色調が
明るく且つ強い着色力を持つと共に熱、光、溶媒等に対
する安定性を有する、食品に用い得る水溶性天然赤色色
素の簡便な製造方法を提示し、該色素を含む食品を提供
しようとするものである。
<発明の構成> 本発明者らは、藻類の生産する赤色系色素を鋭意研究
した結果、紅藻、藍藻を用いて従来の天然赤色色素の製
造法とは異なる、簡便、且つ生産効率に優れた製造法に
より得られた水溶性天然赤色色素を食品に用いた場合、
熱、光等に対する安定性明度に優れることを見し、本発
明を完成した。
即ち、本発明は、紅藻、又は藍藻類の赤色色素生産藻
を水もしくは塩類溶液により、赤色色素及び水溶性物質
を抽出し、次いで該抽出液を溶媒処理することによって
不要の物質を除去せしめて赤色色素を得ることを特徴と
する天然赤色色素の製造方法を提供するものである。
本発明の赤色色素の性質は以下のごとくである。
(イ)熱安定性: pH6.0で0から40℃において30分処理した場合、565nm
の吸光度が95%以上残存する。
(ロ)安定pH範囲: 25℃でpH5.0から6.5において30分処理した場合、565n
mの吸光度が95%以上残存する。
(ハ)溶解度 冷水、温水に可溶であるが、エタノール、アセトン、
エーテル等の有機溶媒には不溶である。
本発明において利用される藻類の藻名・分類は、共立
出版、西澤一俊・千原光雄共著「藻類研究法」(昭和54
年)によるものとし、本赤色色素の製造に使用する藻類
としては、例えば、紅藻;ホルフィリディウム・クルエ
ンテゥム(Porphyridium cruentum)R−1、藍藻;カ
ロスリクス・ブレビシマ(Calothrix brevissima)M−
7、アナベナ・バリアビリス(Anabaena variabilis)
M−2、シリンドロスペルム・ムスシコラ(Cylindrosp
ermum muscicola)M−32があり、夫々東京大学応用微
生物研究所微細藻類系統保存株として保存されている。
しかし本発明の実施にあたっては、特定の藻株に限る必
要はなく、本邦で広く養殖されている紅藻であるアサク
サノリ;ポルフィラ・テネラ(Porphyra tenera)、藍
藻であるスイゼンジノリ;アファノテセ属の1種(Apha
nothece sp.)など、或いは自然に広く分布している紅
藻であるベニミドロ;ゴニオトリクム属の1種(Goniot
richum sp)、ヒナノリ;ポルフロプシス属の1種(Por
phyropsis sp.)、藍藻であるホルミディウム属の1種
(Phormidium sp.)、ノストク属の1種(Nostoc s
p.)、トリポスリクス・テヌイス(Tolypothnix tenui
s)などもその藻株を色素の製造に利用することが出来
る。
養殖もしくは天然から多量に得られない藻株は、それ
ぞれの藻株に適した培養法に従い、用いる藻が増殖可能
な培地及び培養条件下で行なう。培地としては、藻類の
発育に必要な無機塩類を含有する栄養培地及び海水、土
壌抽出液をそのまま用いるか、これらに適当量の栄養
分、ビタミンを加えた培地がある。炭素源としては炭酸
水素塩、炭酸塩及び二酸化炭素がある。また窒素源とし
ては硝酸塩、アンモニウム塩及び窒素ガス、さらにはペ
プトン、肉エキス、酵母エキス、尿素などの有機態窒素
も使用出来る。リン源としては、リン酸ナトリウム、リ
ン酸カリウムなどの無機態及びβ−グリセロリン酸塩な
どの有機態のリン酸塩がある。その他に陽イオンとして
ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、
鉄、陰イオンとして塩素、硫酸などがある。また微量金
属としてホウ素、マンガン、亜鉛、銅、モリブデン、バ
ナジウム、クロム、ニッケル、チタン、コバルト、リチ
ウム、臭素、ストロンチウム、ルビジウム、ヨウ素、な
どがある。必要に応じ、EDTA等のキレート剤、ビタミン
B1、ビタミンB12、ビオチンなどの微量ビタミン成分を
添加することも出来る。なお紅藻、藍藻は、元来自然の
環境条件下で生育してきたから、さまざまの無機、有機
の化合物をその増殖生育に利用出来る。従って上記藻類
の培養といえども上記成分だけに限定をうけるものでは
ない。赤色色素含有量を向上させるには、培地成分中の
窒素源を、炭酸源と比較して相対的に多くなる様に設定
した方が好ましい。
培養は温度5〜60℃、多くの種は20〜35℃、pH2〜11
で通常振盪培養または深部通気攪拌培養で実施される。
光合成を効率よく行なわせるため照射光は、藻類に均一
に一定強度を保持出来る様に照射する。照射光としては
太陽光及び人工光のどちらでも良く、緑色光を強く照射
する方が、赤色色素含有量を増加させるためには好まし
い。さらに、藻類が最高濃度に近づく直線的増殖期後期
まで培養を行なうことにより、本発明の赤色色素の含有
量を高めることが出来る。培養終了後は、遠心分離及び
過等の通常の方法により、収穫する。
色素の抽出には、収穫した藻体をそのまま用いるか、
凍結した湿藻体及び乾燥品を用いて細胞の破壊をして実
施することが出来る。細胞の破壊は、水又は塩類溶液を
藻体に加えてホモジナイザー、超音波処理、凍結・融解
・及び浸透圧処理する物理的処理法、及び細胞壁を多糖
類の加水分解能を有する糖分解酵素(セルロース加水分
解酵素、マンナン加水分解酵素等)により分解する生物
的処理方があり、藻類の種類により、これらの方法を組
み合わせて細胞破壊を行なえばよい。抽出は、上記の様
にして得られた細胞破壊物に2〜20倍量(w/w)の水又
は塩類溶液を加え、弱アルカリ溶液または弱酸溶液で好
ましくはpH4.0〜7.0、特にpH5.0〜pH6.5に調整し、ゆる
やかに攪拌しながら1〜12時間抽出を行なう。塩類溶液
としては、酸性の緩衝液好ましくはpH4.0〜7.0、特にpH
5.0〜6.5のもので、例えば、リン酸バッファー、マッキ
ルベインバッファー等公知のものが使用される。この溶
液の濃度は、好ましくは1/100〜1/10規定(N)であ
る。
又、色素を変性させないためには暗所でかつ4℃付近
の低温で行なうことが好ましい。しかし変性に対する注
意を怠らなければ、この温度に限られるものではない。
次いで、この抽出処理物を、過または遠心分離処理に
より藻体残渣を分離除去して抽出液を得る。この抽出液
中には赤色のフィコエリスリン、青色のフィコシアニ
ン、及びクロフィルが含まれている。
抽出、分離は特にpH5.0〜6.5で行なうことにより、ア
ルカリ性で実施するよりも、この段階で、クロロフィル
色素、細胞膜成分等の藻体残渣を50重量%以上多く分離
除去出来るのでよい。
さらに、この抽出液から本色素を分離するには、溶
媒、好ましくはメタノール、エタノール、アセトンもし
くはその混合液を抽出液に5〜70重量%、好ましくは25
〜50重量%加えて不要のクロロフィル、フィコシアニン
等を沈澱除去することができる。こうして再度遠心分離
又は過により、液中に本発明の天然赤色色素を得るこ
とができる。得られた色素溶液は、そのままもしくは凍
結乾燥等の方法により乾燥して固体粉末化して色素とし
て保存する。
本発明赤色色素は、天然物である利点を有し、安全性
が高く、しかも食品用色素として需要の多い桃色から赤
色を呈する。本色素を食品用赤色色素として使用する場
合は、粉末状、液状のいずれでもよい。
粉末として使用する場合は、本色素原末に例えば乳糖
などの色価調整剤、クエン酸ナトリウムなどのpH調整、
清澄剤を加えて用いることが出来る。添加量は、乳糖な
らば40〜80%になる様に添加して色価を調整可能であ
り、クエン酸ナトリウムは、5〜10%の添加によりpHを
6.0〜7.0に調整出来る。
液状として使用する場合は、本色素原末を直接水に溶
解しても使用可能であるが、上記色価調整剤、pH調整剤
を添加したものを溶解して使用する方が好ましい。この
様にして作製された色素粉末及び液体は幅広い用途に使
用可能であるが、特に食品に有用である。本発明の食品
とは、飲料、氷菓、キャンディ、チューインガム等各種
菓子など、又はヨーグルト等の乳製品、水産練製品、ハ
ム、ソーセージなどの着色剤として使用が可能であり特
に白色の食品に使用するとよい。その添加量は、目的に
応じて0.001%〜10%、好ましくは0.01〜0.5%添加する
ことにより十分なピンク色〜赤色の着色が得られる。
<発明の効果> 本発明は、既に述べた様に硫安分画、カラムクロマト
グラフィーの様な複雑な方法ではなくエチルアルコール
等の溶媒の添加により不要な色素を除去せしめるという
簡便な方法により赤色色素を得ることができる。一方、
天然赤色色素としては、ラッカイン酸、紅麹色素、ビー
トレッド、ハイビスカス色素等があるがいずれも牛乳の
様なコロイド状白色系食品に混合するとくすみを帯てピ
ンク色にならなかったり紫色を帯たものしか得られなか
った。しかし本発明によって得られた赤色色素は、明る
いピンク色を示すので、ミルク、アイスクリーム等の白
色の食品への着色剤としては非常に優れたものである。
又、本色素は、他のタンパク結合色素に比して耐溶剤
性、耐熱性に優れるので汎用の赤色色素としても用いる
ことが出来る。
<実施例> 以下実施例を示して本発明を更に具体的に説明する
が、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1 藍藻(カロスリクス属)からの赤色色素の製
造例 カロスリクス・ブレビシマM−7株を次の表1に示さ
れるフィツジェラルド培地に560nmの吸光度が0.1となる
ように接種し、7000ルックスの照度で30℃にて二酸化炭
素を供給しつつ通気培養した。
7日後に直線的増殖期後期に到達し、培養液の吸光度
は2.5となった。この培養液200lから遠心機を用いて収
穫したところ湿重量で約250gが得られた。
この湿藻体に3倍量の10mMリン酸カリウム緩衝液(pH
6.0)を加え、超音波処理を行ない細胞を十分に破壊
し、1時間ゆるやかに攪拌しながら抽出を行なう。この
色素懸濁液を5000G、15分間の遠心分離を行ない固液分
離する。得られた上清を限外ロ過器により濃縮し250ml
の濃縮液を得た。これに50mlのエチルアルコールを加
え、攪拌し10000G、10分間遠心し、上清を得た。この上
清を凍結乾燥し赤色色素12gを得た。この1gを1の蒸
留水に溶かしたところ565nmにおける吸収は1.21であっ
た。また色彩計によって測色したところL=71.5,a=2
8.5,b=17.1であった。又、pH6.0のリン酸バッファー液
中で40℃、30分間の加熱では退色は見られなかった。
実施例2 通常の方法により、天然において養殖された紅藻スサ
ビノリ(Porphyra tenera)を収穫後、藻体にその湿重
量(10kg)の3倍量の蒸留水を加え、pHを6.5に調整す
る。この時、細胞内外の浸透圧差により細胞の一部が破
壊され、色素が溶出する。さらにホモジナイザーにより
微細片化した後、それぞれ0.1〜10%になる様にセルロ
ース分解酵素、マンナン分解酵素、及びリゾチームを加
え1時間反応を行なった。反応液を5000G、30分間の遠
心分離を行ない細胞残渣を除去する。この紫色の上清を
限外ロ過により15lに濃縮し5lのエチルアルコールを加
え、攪拌後8000G、15分間遠心し赤色の上清を得た。こ
の上清を凍結乾燥し赤紫色固体140gを得た。この1gを1
の蒸留水に溶かしたところ吸光度は、1.42であった。
また色彩計によって測色したところL=63.5,a=33.8,b
=18.2であった。又、pH6.0のリン酸バッファー液中で4
0℃、30分間の加熱では褪色は見られなかった。
応用例1 実施例1で得られた赤色色素を用いてアイスクリーム
を下記の処方で作成したところ明るいピンク色のアイス
クリームを得た。
応用例2 実施例2で得られた赤色色素を用いていちご風味牛乳
を下記処方によって作成したところ明るいピンク色を呈
したいちご風味乳飲料が得られた。
このものを63℃、30分間加熱したがほとんど褪色が認め
られなかった。
比較応用例1 応用例−2の処方中本発明品に替えビートレッド(市
販品、熱水抽出濃縮物)を用いて着色したが、紫色を帯
びたピンク色でありいちごミルク様の明るいピンク色は
得られなかった。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】紅藻、又は藍藻類の赤色色素生産藻を水も
    しくは塩類溶液により、赤色色素及び水溶性物質を抽出
    し、次いで該抽出液を溶媒処理することによって不要の
    物質を除去せしめて赤色色素を得ることを特徴とする天
    然赤色色素の製造方法。
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