JPH0822971B2 - 螢光を有する天然赤色色素の製造法 - Google Patents

螢光を有する天然赤色色素の製造法

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JPH0822971B2 JP61227140A JP22714086A JPH0822971B2 JP H0822971 B2 JPH0822971 B2 JP H0822971B2 JP 61227140 A JP61227140 A JP 61227140A JP 22714086 A JP22714086 A JP 22714086A JP H0822971 B2 JPH0822971 B2 JP H0822971B2
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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は、螢光を有する新規な天然赤色色素の製造法
に関するものである。
この色素は、天然物である利点を有し、例えば食品用
色素及び化粧品用色素として利用出来る。さらにこの色
素は、螢光を有することから抗体標識用螢光色素等の臨
床検査試薬、生化学用試薬としても有用である。
<従来の技術> 食品用天然赤色色素としては、従来カロテノイド、ポ
ルフィリン、フラボノイド、ベタニン、キノン系の色素
がある。そしてこれらの色素の使用に際しては、食品添
加物であるからには、より少量の色素で所望の色調を安
定に着色し得ることが望まれる。しかしながら従来の色
素では所望の色調が得られなかったり、着色力や安定性
が不十分な場合がある。
また標識試薬に用いる螢光色素としては、検出容易性
の点から、より強い螢光強度を有する色素が望まれてい
る。
更にまた、発色部分としてフィコエリトロビリンおよ
びフィコウロビリンを有する天然色素として、特開昭58
−160866号公開特許公報に記載されている藻類由来のビ
リタンパクがあるが、これも望ましい色調を有さず、ま
た着色力および螢光強度が未だ十分とは言えず、更に強
いものが望まれている。
<発明が解決しようとする問題点> 本発明は、従来の食用色素ではそれ自体単独では得ら
れない桃色から赤紫色の色調を有し、しかもその色調が
明るく且つ強い着色力を持つと共に安定性を有する、食
品用、化粧品用等に用い得る色素を提供するものであ
り、また、より強い螢光強度を有する標識試薬その他に
有用な螢光色素を提供しようとするものである。
<発明の構成> 本発明者らは、藻類の生産する赤色系色素の製造方法
を鋭意研究した結果、直線的増殖期後期の紅藻、藍藻及
びクリプト藻に属する赤色色素生産藻を、pH5.0〜6.5の
塩溶液で抽出すると、優れた螢光を有する赤色色素が得
られることを見い出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、紅藻、藍藻及びクリプト藻に属する赤
色色素生産藻のいずれか1種以上を、栄養源培地中で培
養し、直線的増殖期後期の藻類を収集し、これからpH5.
0〜6.5の塩溶液で赤色色素を抽出、分離することを特徴
とする、以下の理化学的諸性質を示す、螢光を有する天
然赤色色素の製造法に関する。
(a)可視部吸収極大及び吸光係数: pH6.0の塩溶液中で、560〜570nmまたはそれに加え540
〜550nm及び495〜505nmの可視部吸収極大を有し、560〜
570nmのモル吸光係数が2.0×106cm-1M-1以上である。
(b)螢光発光極大及び量子収率: pH6.0の塩溶液中で、480〜565nmの励起光により550か
ら600nmの範囲に発光極大を有し、吸収極大波長を励起
光とするときの量子収率が0.90以上である。
(c)熱安定性: pH6.0で0から40℃において30分処理した場合、565nm
の吸光度が95%以上残存する。
(d)安定pH範囲: 25℃でpH5.0から6.5において30分処理した場合、565n
mの吸光度が95%以上残存する。
(e)分子量: ゲル過法によると20,000〜600,000ダルトンであ
り、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によると
サブユニット分子量が10,000〜50,000ダルトンである。
(f)等電点: 等電点pH4.5±0.5である。
(g)蛋白質部分: 本赤色色素は蛋白質部分と発色部分から成り、蛋白質
部分が質量90%以上を占める。
(h)発色部分 発色部分がフィコエリトロビリンまたはそれに加えフ
ィコウロビリンから成る。
(i)均一性 ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析法により、単一
バンドを与える。
(j)溶解度 冷水、温水に可溶であるが、エタノール、アセトン、
エーテル等の有機溶媒には不溶である。一般に色素蛋白
質の構造を明らかにすることは困難であるといわれる
が、本物質も複雑な高分子であるので構造を明瞭に示す
ことは難しい。しかし、本物質の固定はさきに規定した
理化学的諸性質を確認すれば容易である。
本発明の色素を製造するには、藻類のうち紅藻、藍藻
及びクリプト藻に属する、本発明赤色色素生産藻のいず
れか1種以上を、栄養源培地中で培養し、直線的増殖期
後期の藻類を収集し、これからpH5.0〜6.5の塩溶液で赤
色色素を抽出、分離することにより行なわれる。
本発明において利用される藻類の藻名・分類は、共立
出版、西澤一俊・千原光雄共著「藻類研究法」(昭和54
年)によるものとし、本赤色色素の生産に利用する藻類
としては、例えば、紅藻;ポルフィリディウム・クルエ
ンテゥム(Porphyridiumcruentum)R−1、藍藻;カロ
スリクス・ブレビシマ(Calothrix brevissima)M−
7、アナベナ・バリアビリス(Anabaena variabilis)
M−2、シリンドロスペルム・ムスシコラ(Cylindrosp
ermummuscicola)M−32があり、夫々東京大学応用微生
物研究所微細藻類系統保存株として保存されている。し
かし本発明の実施にあたっては、特定の藻株に限る必要
はなく、本邦で広く養殖されている紅藻であるアサクサ
ノリ;ポルフィラ・テネラ(Porphyra tenera)、藍藻
であるスイゼンジノリ;アファノテセ属の1種(Aphano
thece sp.)など、或いは自然に広く分布している紅藻
であるベニミドロ;ゴニオトリクム属の1種(Goniotri
chum sp.),ヒナノリ;ポルフロプシス属の1種(Porp
hyropsis sp.)、藍藻であるホルミディウム属の1種
(Phormidium sp.)、ノストク属の1種(Nostoc s
p.)、トリポスリクス・テヌイス(Tolypothnix tenui
s)、クリプト藻であるクロオモナス属の1種(Chroomo
nas sp.)などからもその藻株を得ることが出来る。
このようにして得られた藻株の培養は、それぞれの藻
株に適した培養法に従い、用いる藻が増殖可能な培地及
び培養条件下で行なう。培地としては、藻類の発育に必
要な無機塩類を含有する栄養培地及び海水、土壌抽出液
をそのまま用いるか、これらに適当量の栄養分、ビタミ
ンを加えた培地がある。炭素源としては炭酸水素塩、炭
酸塩及び二酸化炭素がある。また窒素源としては硝酸
塩、アンモニウム塩及び窒素ガス、さらにはペプトン、
肉エキス、酵母エキス、尿素などの有機態窒素も使用出
来る。リン源としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリ
ウムなどの無機態及びβ−グリセロリン酸塩などの有機
態のリン酸塩がある。その他に陽イオンとしてナトリウ
ム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、陰イオ
ンとして塩素、硫酸などがある。また微量金属としてホ
ウ素、マンガン、亜鉛、銅、モリブデン、バナジウム、
クロム、ニッケル、チタン、コバルト、リチウム、臭
素、ストロンチウム、ルビジウム、ヨウ素、などがあ
る。必要に応じ、EDTA等のキレート剤、ビタミンB1、ビ
タミンB12、ビオチンなどの微量ビタミン成分を添加す
ることも出来る。なお紅藻、藍藻、クリプト藻は、元来
自然の環境条件下で生育してきたから、さまざまの無
機、有機の化合物をその増殖生育に利用出来る。従って
上記藻類の培養といえども上記成分だけに限定をうける
ものではない。赤色色素含有量を向上させるには、培地
成分中の窒素源を、炭素源と比較して相対的に多くなる
様に設定した方が好ましい。
培養は温度5〜60℃、多くの種は20〜35℃、pH2〜11
で通常振盪培養または深部通気撹拌培養で実施される。
光合成を効率よく行なわせるため照射光は、藻類に均一
に一定強度を保持出来る様に照射する。照射光としては
太陽光及び人工光のどちらでも良く、緑色光を強く照射
する方が、赤色色素含有量を増加させるためには好まし
い。さらに、藻類が最高濃度に近づく直線的増殖期後期
まで培養を行なうことにより、本発明の赤色色素の含有
量を高めることが出来る。培養終了後は、遠心分離及び
過等の通常の方法により、収穫する。
色素の抽出には収穫した藻体をそのまま用いるか、凍
結した湿藻体及び乾燥品を用いて実施することが出来
る。細胞の破壊には、ホモジナイザー、超音波処理、凍
結・融解、及び浸透圧処理する物理的処理法、及び細胞
壁を多糖類の加水分解能を有する糖分解酵素(セルロー
ス加水分解酵素、マンナン加水分解酵素等)により分解
する生物的処理法があり、藻類の種類により、これらの
方法を組み合わせて細胞破壊を行なうことができる。抽
出は、上記の様にして得られた細胞破壊物に2〜20倍量
(w/w)の塩溶液を加え、弱アルカリ溶液または弱酸溶
液でpH5.0からpH6.5に調整し、ゆるやかに撹拌しながら
1〜12時間行なう。色素を変性させないためには暗所で
かつ4℃付近の低温で行なうことが好ましい。しかし変
性に対する注意を怠らなければ、この温度には限られな
い。次いで、この抽出処理物を、過または遠心分離処
理により藻体残渣を分離除去して抽出液を得る。
抽出、分離をpH5.0〜6.5で行なうことにより、pH7.0
以上で実施するよりも、この段階で、クロロフィル色
素、細胞膜成分等の藻体残渣を50%以上多く分離除去出
来る。
さらにこの抽出液から本色素を分離するには、一般に
蛋白質を分画、精製する方法ぎ適用出来るが、例えば以
下の4種の精製工程によって分離される。
(1) 抽出溶液に10〜20%飽和になるように硫安を加
え、クロロフィル、細胞壁などの夾雑物を遠心沈殿除去
する工程。
(2) 上記抽出液に40〜70%飽和になるように硫安を
加え、色素を遠心沈殿させ採取する工程。
(3) 上記沈殿を適当な緩衝液に溶解し、半透膜を用
いる透析、濃縮、脱塩、分子量分画を行なう工程。半透
膜としては分画分子量10.000から1000のものを利用で
き、ダイアフロー膜などがある。
(4) イオン交換体等に吸着させ、溶離液によりカラ
ムから色素を溶出するカラムクロマトによる分画工程。
イオン交換体としては、ジエチルアミノエチル基(DE
AE基)、カルボキシメチル基(CM基)を有するセルロー
ス、デキストラン、アガロース等がある。その他のもの
としては、吸着剤のヒドロキシアパタイトCa10(PO4
(OH)がある。
これらイオン交換体等を使用するに際しては、イオン
交換体を適当なカラムに充填したうえ、あらかじめ出発
緩衝液により平衡化し、これに赤色色素を含有する溶液
を負荷、通液し、出発緩衝液で洗滌後、溶離液を通液す
ることによって有効物質をイオン交換体から溶出させる
方法が有利である。
上記4種の精製工程は、すべてpH5.0〜6.5で行い、低
温暗所で実施することが好ましい。また上記4種の精製
工程は、場合に応じてさまざまな組合せが可能であり、
例えば、(1)の硫安分画の工程を省き(4)のカロム
クロマトによる分画工程を2回繰返することにより精製
を実施することも出来る。
<発明の効果> 本発明は以上の如きのものであるから、本発明で得ら
れる色素は、既述の特開昭58−160,866号公報に示され
た色素とは、可視部吸収極大での吸光度および螢光発光
強度が明白に異なっている。
食品用色素の使用に際しては、着色力の強さ、色調、
及び安定性等が重要である。本発明色素は、従来色素に
比らべ、(1)夾雑物質を含まず、色素、変性を伴なっ
ていないため、明るい色調を有する、(2)吸収効率が
良いため(565nmのモル吸光係数=2.0×106cm-1M-1
上)、強い着色力をもつ、(3)色素変性を伴なってい
ないため、水溶液中で安定である(熱安定性)利点を有
している。
また螢光色素として標識試薬に用いる場合には強い螢
光強度を有することが好ましいが、本色素は従来色素と
比較し、より強い螢光強度をもつ利点を有している。螢
光強度Iはモル吸光係数E及び量子収率Qに比例し、I
=KEQ式に従う。
本発明色素を488nmの励起波長で使用する場合、従来
色素ビリタンパクが、E=1.28×106cm-1M-1、Q=0.82
であるのに対し、本色素はE=1.30×106cm-1M-1、Q=
0.90以上であり、螢光強度は10%以上高い。
以上の様な色素の有用性に関する差異は、本発明赤色
色素の製造法の差異に由来している。即ち本発明色素
は、赤色色素生産藻を栄養源培地中で培養し、直線的増
殖期後期の藻を収集し、これからpH5.0〜6.5の塩溶液
で、赤色色素を抽出、精製することにより得られる。
培養時、藻類の増殖は、培地成分の他に、照射される
光強度に依存しており、藻濃度の上昇に伴い光律速とな
り直線的増殖を示す。赤色色素含有量は、藻あたりの光
強度が相対的に弱くなる直線的増殖期後期に増加する。
そして本発明の方法によると、目的とする赤色色素の収
量は、藻の種類により異なるが、本発明の方法によらな
い従来の色素の場合に比して20%近くまで増加する。ま
た、本発明者らの知見によると、藻の種類によっては、
この様な培養法において緑色光を強く照射したり、培地
成分中の窒素源濃度を炭素源と比較して通常条件より相
対的に高くすることにより、本発明の赤色色素の収量を
更に高めることができる。しかもこの様な色素含有量の
高い藻の使用は、色素の生産性、分離効率の向上、及び
抽出、精製時間の短縮をもたらし、ひいては色素を安定
に分取することに繋がる。
色素の抽出、分離に関しては、従来色素がpH7.0付近
で行なうのに対し、本製造法では、pH5.0〜6.5の弱酸性
領域で抽出、分離を実施することを特徴としている。実
施例3と、これと併記した比較例に示されるごとく、本
赤色色素は、pH7.0以上では発色部分、蛋白質部分の構
造及び発色部分と蛋白質部分との相互作用の変化による
と思われる。可視部吸収スペクトルの変動、吸収強度の
減少及び螢光発光強度の減少を生じる。この様な色素変
性は、pH5.0〜6.5の弱酸性領域で抽出、精製を実施する
ことにより防止することができる。従って、本製造方法
によると、色素変性を伴わずに赤色色素を得ることが可
能である。さらにこの領域では、夾雑するクロロフィル
色素及び細胞膜成分と本赤色色素との固液分離が容易で
あり分離効率の向上をもたらす利点がある。
以上の様に本製造法は上述した色素の有用性に関する
利点をもたらすばかりでなく、色素の生産性及び分離効
率の向上の点でも有利な方法を提供するものである。
<実施例> 以下実施例を示して本発明を更に具体的に説明する
が、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1 藍藻カロスリクス属からの赤色色素の製造例 カロスリクス・ブレビシマM−7株を下記の表1に示
されるフィツジェラルド培地に560nmの吸光度が0.1とな
るように接種し、7000ルックスの照度で30℃にて二酸化
炭素を供給しつつ通気培養した。
7日後に直線的増殖期後期に到達し、培養液の吸光度
は2.5となった。この培養液200から遠心機を用いて収
穫したところ湿重量で約250gが得られた。
この湿藻体に3倍量の10mMリン酸カリウム緩衝液(pH
6.0)を加え、超音波処理を行ない細胞を十分に破壊
し、1時間ゆるやかに撹拌しながら抽出を行った。この
色素懸濁液を5000G、15分間の遠心分離を行ない固液分
離した。得られた上清に硫安を20%飽和になる様に加
え、6時間放置した後、5000G、20分間の遠心分離を行
ない夾雑物質を除去した。遠心上清に硫安を60%飽和に
なる様に加え、6時間放置した後、5000G、20分間の遠
心分離を行ない赤色色素の沈殿画分を得た。この沈殿を
上記緩衝液に溶解し分画分子量10,000の透析膜を利用し
て十分透析を行なった後、同緩衝液で平衡化したDEAE−
セルロースカラムに添加した。同緩衝液で洗浄後、0〜
0.5MNaClの直線的濃度勾配を持つ同緩衝液で溶出させる
と、0.05〜0.3M NaCl濃度の画分に565nmの吸光度分布の
極大が認められた。この画分を再度、同緩衝液に対し透
析を行ない、DEAE−セルロースカラムにより再クロマト
を行ない赤色色素3gを得た。この色素の可視部吸収スペ
クトル(曲線1)を第1図に示した。
実施例2 通常の方法により、天然において養殖された紅藻アサ
クサノリ(Porphyra tenera)を収穫後、藻体にその湿
重量(10kg)の3倍量の蒸留水を加え、pHを6.5に調整
した。この時、細胞内外の浸透圧差により細胞の一部が
破壊され、色素が溶出した。さらにホモジナイザーによ
り細胞片化した後、それぞれ0.1〜10%になる様にセル
ロース分解酵素、マンナン分解酵素、及びリゾチームを
加え1時間反応を行なった。反応液を5000G、30分間の
遠心分離を行ない細胞残査を除去した。この上清を塩酸
によりpH6.0に調整し、再度遠心を行ない夾雑している
クロロフィル等を沈殿として除いた。上清に硫安を60%
飽和になる様に加え、6時間放置した後、5000G、20分
間の遠心分離を行ない赤色色素の沈殿画分を得た。この
沈殿を5mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に溶解し、同
緩衝液に対し分画分子量10.000の透析膜を用い、十分透
析を行なった後、同緩衝液で平衡化したヒドロキシアパ
タイトカラムに添加した。同緩衝液で洗浄後、同緩衝液
と50mMリン酸カリウム(pH6.0)との間で直線的濃度勾
配を作製しながら同リン酸カリウム緩衝液で溶出させる
と、15〜30mMリン酸カリウム濃度の画分に565nmの吸光
度分布の極大が認められた。この画分を、蒸留水に対し
十分透析後凍結乾燥し、赤色色素20gを得た。
実施例3及び比較例1 実施例2で抽出、分離したアサクサノリの赤色色素の
理化学的諸性質を測定した。その結果は以下のとおりで
ある。
(1)可視部吸収極大及びモル吸光係数: 可視部吸収極大はpH6.0で564nm、543nm及び496nmであ
った。564nmにおけるモル吸光係数は、E=2.0×106cm
-1M-1であり(第1図曲線2)、pH9.0では、吸収スペク
トル及び色調の変化が認められ、全体的に吸光度が低下
した(第1図曲線3)。
また、pH7.0で抽出、分離した赤色色素の564nmのモル
吸光係数は、E=1.7×106cm-1M-1であり、pH7.0以上で
抽出、分離した赤色色素は、pH9.0での吸収スペクトル
と同様に、特に564nmの吸光度が、製造時のpHが高くな
るほど低下した。
(2)螢光発光極大: 螢光発光極大は、pH6.0で580nmであり(励起光496n
m)量子収率は0.9であった(第2図曲線1)。またpH9.
0では螢光強度の減少が認められた(第2図曲線2)。
(3)熱安定性: pH6.0の水溶液で、0から40℃において30分処理した
場合、565nmの吸光度を95%以上残存した(第3図)。p
H7.0、4℃で24時間放置後の試料は同一条件下での熱処
理で、上記試料より吸光度の減少が大きかった。
(4)安定pH範囲: 25℃でpH5.0から6.5において30分処理した場合、565n
mの吸光度を95%以上残存した(第4図)。
(5)分子量: SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により2種
のサブユニットが認められ、それらの分子量は約22,000
と約19,000であった。またゲル過法により、分子量は
約240.000と求められた。SDS−ポリアクリルアミドゲル
電気泳動法は、0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)と
0.1Mリン酸ナトリウムを含む10%ポリアクリルアミドゲ
ルを用い0.1%SDSを含む0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液
(pH7.0)中で泳動を行なった。ゲル過法は、0.1Mリ
ン酸緩衝液pH6.5中、Sephadex G−200(商品名:ファル
マシア社製品)で行なった。
(6)等電点: 等電点は等電点電気泳動法によりpH4.5±0.5と求めら
れた。
(7)蛋白質部分 蛋白質部分は、牛血清アルブミン換算値(ローリー
法)で、90%以上を占めそれを構成するアミノ酸の種類
とそのモル比は、以下の通りであった。アミノ酸分析
は、常法に従い、試料を6NHCl中115℃減圧下で24hr加水
分解後アミノ酸分析装置により分析した。
アスパラギン酸 11.5モル% スレオニン 3.8 セリン 7.6 グルタミン酸 7.0 プロリン 5.0 グリシン 7.5 アラニン 16.7 システィン 1.1 バリン 7.8 メチオニン 2.4 イソロイシン 4.4 ロイシン 7.0 チロシン 4.0 フェニルアラニン 2.2 リジン 4.5 ヒスチジン 0.7 トリプトファン 0.2 アルギニン 6.6 合計 100.0 (8)発色部分 本色素をペプシン分解後、発色部分をイオン交換カラ
ムクロマトにより分取し同定したところラィコエリトロ
ビリン及びフィコウロビリンであると認められた。
(9)均一性 ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析法により、マー
カーであるブロモフェノールブルーに対して移動度約0.
27の位置に単一バンドを与えた。電気泳動は、pH8.3用
アクリルアミドゲル(7.5%アクリルアミド、トリス−
グリシン緩衝液系)を使用して行なった。
(10)溶解度 水に可溶でありpH6.5で約5%まで溶解した。20%エ
タノール溶液には可溶であるが、それ以上のアルコール
濃度では白濁を生じた。アセトン、エーテルには不溶で
あった。
実施例4 赤色色素の食品への使用例 本発明赤色色素は、天然物である利点を有し、安全性
が高く、しかも食品用色素として需要の多い桃色から紫
色を呈することは先述の通りである。本色素を食品用赤
色色素として使用する場合は、粉末状、液状のいずれで
もよい。
粉末として使用する場合は、本色素原末に例えば乳糖
などの色価調整剤、クエン酸ナトリウムなどのpH調整、
清澄剤を加えて用いることが出来る。添加量は、乳糖な
らば40〜80%になる様に添加して色価を調整可能であ
り、クエン酸ナトリウムは、5〜10%の添加によりpHを
6.0〜7.0に調整出来る。
液状として使用する場合は、本色素原末を直接水に溶
解しても使用可能であるが、上記色価調整剤、pH調整剤
を添加したものを溶解して使用する方が好ましい。この
様にして作製された色素粉末及び液状は幅広い用途に使
用可能であり、飲料、氷菓、キャンディ、チューインガ
ム、各種菓子などに使用出来る。例えば、本色素原末10
0g、乳糖120g、クエン酸ナトリウム20gを均一になる様
に混合し色素粉末とした。これを次の処方で使用し、グ
レープ果汁飲料を作製した。砂糖25g、1/5濃縮グレープ
果汁4.4g、本色素1g、グレープエッセンス0.2g、清水20
0mlを撹拌混合した後、加熱殺菌した。得られた製品は
グレープの風味と色調を有する好ましい飲料であった。
実施例5 標識抗体への使用例 本色素は、螢光を有することから抗体標識用螢光色素
等の臨床検査試薬、生化学試薬としても有用である。抗
体標識用螢光色素として利用する場合は色素と抗体間を
ブルチルアルデヒド、ジメチルスベリミデートなどの二
価性架橋試薬により橋渡し、これを目的抗原と反応さ
せ、螢光を観察することにより、抗原の数、位置などを
知ることが出来る。即ち、抗体グロブリン溶液(20mg/m
l、0.1Mホスフェートバッファーサリン、pH7.0)2mlに
本色素40mgを加え溶解させた。これに1%グルタルアル
デヒド水溶液0.1mlを滴下し、撹拌しながら2時間反応
させた。反応後セファデックG−200のゲル過法によ
り遊離色素を分離し、赤色色素標識抗体30mgを得た。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例1、3および比較例における赤色色素の
可視部吸収スペクトル図であり、10mMリン酸カリウム緩
衝液(pH6.0又はpH9.0)中で測定した。曲線1は、カロ
スリクス・ブレビシマの色素(pH6.0)、曲線2は、ポ
ルフィラ・テネラの色素(pH6.0)、曲線3は、pH値の
異る条件で得たポルフィラ・テネラの色素(pH9.0)。 第2図は、実施例3および比較例におけるポルフィラ・
テネラの赤色色素の螢光発光スペクトル図であり、pH値
の異る条件で得た2種の色素を10mMリン酸カリウム緩衝
液(pH6.0及び9.0)中で測定したものであり、曲線1は
pH6.0、曲線2はpH9.0(比較例)の場合である。 第3図は、実施例3におけるポルフィラ・テネラの赤色
色素の熱安定性を示すもので、温度と565nmの吸光度の
残存率の関係を示している。残存率は、pH6.0、各温度
下30分処理後の565nmの吸光度と処理前(20℃)の吸光
度との比から求めた。Δ印はpH7.0、4℃で24時間処理
した試料の値を示す。 第4図は、同じく実施例3におけるポルフィラ・テネラ
の赤色色素の安定pH範囲を示すもので、pHと565nmの吸
光度の残存率の関係を示している。残存率は、25℃、各
pH下30分処理後の565nmの吸光度とpH6.0での吸光度との
比から求めた。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】紅藻、藍藻及びクリプト藻に属する赤色色
    素生産藻のいずれか1種以上を、栄養源培地中で培養
    し、直線的増殖期後期の藻類を収集し、これからpH5.0
    〜6.5の塩溶液で赤色色素を抽出、分離することを特徴
    とする、以下の理化学的諸性質を示す、螢光を有する天
    然赤色色素の製造法。 (a)可視部吸収極大及び吸光係数: pH6.0の塩溶液中で、560〜570nmまたはそれに加え540〜
    550nm及び495〜505nmの可視部吸収極大を有し、560〜57
    0nmのモル吸光係数が2.0×106cm-1M-1以上である。 (b)螢光発光極大及び量子収率: pH6.0の塩溶液中で、480〜565nmの励起光により550から
    600nmの範囲に発光極大を有し、吸収極大波長を励起光
    とするときの量子収率が0.90以上である。 (c)熱安定性: pH6.0で0から40℃において30分処理した場合、565nmの
    吸光度が95%以上残存する。 (d)安定pH範囲: 25℃でpH5.0から6.5において30分処理した場合、565nm
    の吸光度が95%以上残存する。 (e)分子量: ゲルろ過法によると20,000〜600,000ダルトンであり、S
    DS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によるとサブユ
    ニット分子量が10,000〜50,000ダルトンである。 (f)等電点: 等電点pH4.5±0.5である。 (g)蛋白質部分: 本赤色色素は蛋白質部分と発色部分から成り、蛋白質部
    分が質量90%以上を占める。 (h)発色部分: 発色部分がフィコエリトロビリンまたはそれに加えフィ
    コウロビリンから成る。 (i)均一性: ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析法により、単一バ
    ンドを与える。 (j)溶解度: 冷水、温水に可溶であるが、エタノール、アセトン、エ
    ーテル等の有機溶媒には不溶である。
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