JP2531205B2 - 1,1,1,2−テトラフルオロエタンの製造法 - Google Patents

1,1,1,2−テトラフルオロエタンの製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R−134
a)の製造法に関するものである。
[従来の技術及び問題点] R−134aの製造方法の一つとして、1,1−ジクロロ−
1,2,2,2−テトラフルオロエタン(R−114a)を、水素
化触媒の存在下で水素と反応させる製造方法がある。こ
のための触媒として、既知の水素化触媒、すなわち、ニ
ッケルまたは周期律表の第VIIIa族の金属、それらの合
金、または、それらの酸化物、および塩のうち、特に塩
酸耐性を有するものの適用が考えられ、既に、比較的低
コストであるパラジウムを用いる方法が報告されている
(特公昭56−38131号公報を参照)。しかし、本還元反
応においては、例えば下式に示すように塩化水素が副生
するため触媒には耐酸性が必要である。
CF3CCl2F+H2→CF3CHClF+HCl CF3CHlF+H2→CF3CH2F+HCl パラジウムは白金族の中では安価であり、水素化能に
おいても優れている。しかし、水素吸蔵能が高く、最
高、原子比で1:1まで水素が吸蔵する。水素の吸蔵量が
多くなると格子の歪も大きくなり、機械的な劣化を受け
易くなる。また、パラジウムは同族の他元素とは異な
り、濃硝酸や沸騰硫酸に溶解するほか、酸素が存在する
場合には、濃塩酸にも溶解するなど、化学的変化を受け
易いという欠点を有する。
[問題点を解決するための手段] したがって、より耐食性の優れた触媒を用いること
は、触媒の長寿命化に有効であると考えられる。レニウ
ムは電位−pH図[M.Pourbaix,“Atlas of Electrochemi
cal Equilibria inAqueous Solutions",Pergamon Pres
s,Oxford(1966)]によればpH=1付近、またはより酸
性の領域の還元雰囲気において、安定な領域を有してお
り、白金族以外の元素としては、本反応において耐食性
を示しうる数少ない元素の1つである。また、金属レニ
ウムは電極として用いた場合、水素発生反応に対して、
白金、パラジウム、ロジウム等の白金族同様、またはそ
れ以上に触媒作用が大きく、水素化電圧は非常に小さ
い。したがって、レニウム金属はそれ自身触媒として、
または白金族元素との合金触媒として、従来のパラジウ
ム触媒に替わる触媒となり得ることが見出された。
一方、レニウム酸化物はII〜VIIの多くの酸化状態を
取り得るが、それらはすべて何らかの触媒作用を有して
いる。例えば、レニウム黒と呼ばれる、低位のレニウム
酸化物(ReOx、X<3)は種々の有機化合物の水素化に
有効である。而して、レニウム酸化物(ReOx)などは白
金、パラジウム等への添加剤として用いた場合、本還元
反応において触媒の寿命を大幅に増加させることが見出
された。これは、レニウム酸化物などが、白金またはパ
ラジウムの分散度をよくし、その機能の劣化を抑制する
ためであると考えられる。すなわち、本還元反応におい
て、それ自身で従来の触媒性能を発揮するとともに、パ
ラジウム、白金、ロジウム等の白金族触媒に適当量増加
することにより、それらの触媒活性および耐久性を向上
させることが見出されたものである。
以上のように、レニウム金属またはレニウム酸化物
は、R−114aの還元反応における触媒、助触媒としてき
わめて好適な特性を有していることが判った。
かくして本発明は、上記知見に基づいて完成されたも
のであり、R−114aを白金族とレニウムを成分とする水
素化触媒の存在下で水素と反応させることを特徴とする
R−134aの製造法である。本発明における水素化触媒
は、白金族とレニウムを成分とする水素化触媒であり、
好ましくは白金族とレニウムからなる合金またはその酸
化物からなる水素化触媒である。本発明における水素化
触媒は、好ましくはレニウムの割合が0.01〜90重量%で
あり、より好ましくはレニウムの割合が0.1〜50重量%
である白金族とレニウムからなる合金またはその酸化物
からなる水素化触媒である。本発明において、水素化触
媒の担体としては、例えば、アルミナ、活性炭等が好適
である。担持方法は、従来の貴金属触媒の調製法が適用
可能である。なお、使用に当ってはかかる金属の化合物
は少なくとも一部還元する。
水素とR−114aの割合は大幅に変動させ得る。しかし
ながら、通常、化学量論量の水素を使用して塩素原子を
水素で置き換える。R−114aの全モル数に対して、化学
量論量よりかなり多い量、例えば4モルまたはそれ以上
の水素を使用し得る。
反応圧力については常圧、または常圧以上の圧力が使
用し得る。
反応温度は120℃以上が望ましいが、450℃を越えない
温度において気相で行なうことが適当である。
接触時間は、反応を気相で行なう場合には通常0.1〜3
00秒、特には5〜30秒である。
[実施例] 以下に本発明の実施例を示す。なお、以下の実施例、
比較例中の重量%以外の%はすべてモル%を表す。R−
134、R−124、R−124a、R−143aおよびR−114はそ
れぞれ1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1−クロロ−
1,2,2,2−テトラフルオロエタン、2−クロロ−1,1,2,2
−テトラフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン
および1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン
を表す。
調製例 活性炭を純水中に浸漬し、細孔内部まで水を含浸させ
た。これに塩化パラジウムと過レニウム酸カリウムをパ
ラジウムとレニウムの金属成分の重量比で90:10の割合
で、活性炭の重量に対しパラジウムとレニウムの金属成
分の全重量で0.5重量%だけ溶解した水溶液を少しずつ
滴下しイオン成分を活性炭に吸着させた。純水を用いた
洗浄した後、それを150℃で5時間乾燥した。次に窒素
中550℃で4時間乾燥した後、水素を導入し、5時間、3
00℃に保持して還元した。
実施例1 調製例のようにして調製した触媒を300cc充填した内
径2.54cm、長さ100cmのインコネル600製反応管を塩浴炉
中に浸漬した。
水素と出発物質(R−114aとR−114よりなる。モル
比で40:60)を2:1のモル比で反応管に導入した。水素、
出発物質の流量はそれぞれ、100cc/分、50cc/分とし
た。反応管出口のガス組成をガスクロを用いて分析し
た。その結果を第1表に示す。
R−114aの250℃における反応率は、反応初期におい
て99.1%、6ヶ月後では98.2%であった。
実施例2 水素と出発物質のモル比を3:1としたこと以外は、実
施例1と同様の条件で還元反応を行なった。水素、出発
物質の流量はそれぞれ、112.5cc/分、37.5cc/分であ
る。結果を第2表に示す。
R−114aの250℃における反応率は、反応初期におい
て98.8%、6ヶ月後では99.8%であった。
実施例3 出発物質としてR−114a(純度98.0%、残部はR−11
4)を使用する以外は、実施例1と同様の条件で還元反
応を行なった。結果を第3表に示す。
R−114aの250℃における反応率は、反応初期におい
て99.0%、6ヶ月後では98.1%であった。
実施例4 活性炭の重量に対して5重量%の触媒を担持する他は
調製例と同様に担持したものを用いる他は、実施例1と
同様にして還元反応を行なった。結果を第4表に示す。
R−114aの250℃における反応率は、反応初期におい
て99.3%、6ヶ月後では99.1%であった。
実施例5 パラジウムとレニウムの重量比を99:1としたこと以外
は調製例と同様にして触媒を調製し、実施例1と同様に
して還元反応を行なった。結果を第5表に示す。
R−114aの250℃における反応率は、反応初期におい
て98.9%、6ヶ月後では98.0%であった。
実施例6 担体としてアルミナを用いた以外は、実施例1と同様
にして還元反応を行なった。結果を第6表に示す。
R−114aの250℃における反応率は、反応初期におい
て98.0%、6ヶ月後では97.2%であった。
実施例7 触媒としてロジウムとレニウムを重量比90:10の割合
で用いるほかは調製例と同様にして触媒を調製した。ロ
ジウム源としては塩化ロジウムを用いた。この触媒を用
いて、実施例1と同様にして還元反応を行なった。結果
を第7表に示す。
R−114aの250℃における反応率は、反応初期におい
て99.3%、6ヶ月後では99.0%であった。
実施例8 触媒として白金とレニウムを重量比90:10の割合で用
いるほかは調製例と同様にして触媒を調製した。白金源
としては塩化白金酸を用いた。このようにして調製した
触媒を用いる他は、実施例1と同様に還元反応を行なっ
た。結果を第8表に示す。
R−114aの250℃における反応率は、反応初期におい
て99.0%、6ヶ月後では98.0%であった。
比較例1 触媒として活性炭に0.5重量%のパラジウムを調製例
と同様に担持したものを用いる以外は、実施例1と同様
に還元反応を行なった。結果を第9表に示す。
R−114aの250℃における反応率は、反応初期におい
て98.0%、6ヶ月後では32.1%であった。
比較例2 触媒として活性炭に0.5重量%のロジウムを調製例と
同様に担持したものを用いる他は、実施例1と同様にし
て還元反応を行なった。結果を第10表に示す。
R−114aの250℃における反応率は、反応初期におい
て99.0%、6ヶ月後では60.4%であった。
比較例3 触媒として活性炭に0.5重量%の白金を調製例と同様
に担持したものを用いる他は、実施例1と同様にして還
元反応を行なった。結果を第11表に示す。
R−114aの250℃における反応率は、反応初期におい
て97.8%、6ヶ月後では65.4%であった。
比較例4 触媒として活性炭に5重量%のパラジウムを調製例と
同様に担持したものを用いる他は、実施例1と同様にし
て還元反応を行なった。結果を第12表に示す。
R−114aの250℃における反応率は、反応初期におい
て98.3%、6ヶ月後では48.3%であった。
比較例5 触媒としてアルミナに0.5重量%のパラジウムを調製
例と同様に担持したものを用いる他は、実施例1と同様
にして還元反応を行なった。結果を第13表に示す。
R−114aの250℃における反応率は、反応初期におい
て97.8%、6ヶ月後では41.3%であった。
[発明の効果] 本発明は、実施例に示すように、触媒の初期性能を向
上させるとともに、耐久性の向上においても優れた効果
を有する。

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1,1−ジクロロ−1,2,2,2−テトラフルオロ
    エタンを、白金族とレニウムを成分とする水素化触媒の
    存在下で水素と反応させることを特徴とする1,1,1,2−
    テトラフルオロエタンの製造法。
  2. 【請求項2】1,1−ジクロロ−1,2,2,2−テトラフルオロ
    エタンに対して少なくとも化学量論量の水素を使用する
    特許請求の範囲第1項に記載の製造法。
  3. 【請求項3】水素化触媒が白金族とレニウムからなる合
    金またはその酸化物である特許請求の範囲第1項〜第2
    項のいずれか一項に記載の製造法。
  4. 【請求項4】水素化触媒が、レニウムの割合が0.01〜90
    重量%である白金族とレニウムからなる合金またはその
    酸化物である特許請求の範囲第3項に記載の製造法。
  5. 【請求項5】水素化触媒が、レニウムの割合が0.1〜50
    重量%である白金族とレニウムからなる合金またはその
    酸化物である特許請求の範囲第4項に記載の製造法。
  6. 【請求項6】水素化触媒が活性炭担体またはアルミナ担
    体上に担持されている特許請求の範囲第1項〜第5項の
    いずれか一項に記載の製造法。
  7. 【請求項7】反応を気相中において120℃〜450℃の温度
    範囲で行なう特許請求の範囲第1項〜第6項のいずれか
    一項に記載の製造法。
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