JP2524884B2 - 陽極酸化処理後の色調が濃灰色のアルミニウム合金材およびその製造方法 - Google Patents

陽極酸化処理後の色調が濃灰色のアルミニウム合金材およびその製造方法

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JP2524884B2 JP2265813A JP26581390A JP2524884B2 JP 2524884 B2 JP2524884 B2 JP 2524884B2 JP 2265813 A JP2265813 A JP 2265813A JP 26581390 A JP26581390 A JP 26581390A JP 2524884 B2 JP2524884 B2 JP 2524884B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は陽極酸化処理を施して使用される用途のア
ルミニウム合金材、特にビルのカーテンウォールや建築
外装材、内装材などの建材、あるいは器物、容器、電気
計測機器筺体、銘板等に使用されるアルミニウム合金材
およびその製造方法に関するものである。
従来の技術 一般にカーテンウォールや建築外装材、内装材などの
建材、あるいは器物、容器、電気計測機器筺体、銘板な
どに使用されるアルミニウム合金の圧延材は、耐食性の
観点から陽極酸化処理を施して用いられることが多い。
これらの用途の陽極酸化処理用アルミニウム合金として
は、陽極酸化処理後の色調が淡灰色系からシルバー系の
ものが多く、このような合金の圧延材としては一般にJI
S1050合金、1100合金、5005合金等が使用されることが
多い。また灰色系のものとしてはAl−1〜4%Si合金が
一般的である。なお陽極酸化処理法としては、経済性お
よび耐食性の点から従来一般に硫酸電解浴を用いた陽極
酸化処理が多用されている。
発明が解決しようとする課題 各種の色調のうちでも、灰色系の色調は落ち着いた質
感を与えるところから、建材等の用途においても灰色系
の色調が要求されることが多い。
ところで灰色系の色調としては黄味の少ない濃色の灰
色が求められることが多いが、Al−Si系のアルミニウム
合金では、陽極酸化処理後の色調として灰色を濃色化し
ようとすれば黄味が強くなり、その反面黄味を抑えよう
とすれば灰色が淡くなる傾向があり、そこで黄味の少な
い濃色の灰色を陽極酸化処理後に呈するアルミニウム合
金材の開発が強く望まれている。
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、
陽極酸化処理後の色調として、黄味の少ない濃色の灰色
を呈するアルミニウム合金材およびその製造方法を提供
することを目的とするものである。
課題を解決するための手段 本発明者等は前述の課題を解決する手段について種種
実験・検討を重ねた結果、Al−Si系アルミニウム合金材
における金属Si析出物を適切に制御することにより、陽
極酸化処理後の色調として黄味の少ない濃色の灰色を確
実かつ安定して得ることができることを見出し、この発
明をなすに至った。
具体的には、請求項1の発明のアルミニウム合金材
は、Si0.5〜3.0wt%、Fe0.3wt%未満を含有し、かつ結
晶粒微細化剤としてTi0.003〜0.15wt%を単独でもしく
はB1〜100ppmと組合されて含有し、残部がAlおよび不可
避的不純物からなり、全金属Si析出物のうち面積率で80
%以上の金属Si析出物のサイズが0.1〜3μmの範囲内
にあることを特徴とするものである。
また請求項2の発明のアルミニウム合金材は、Si0.5
〜3.0wt%、Mg0.05〜1.2wt%、Fe0.3wt%未満を含有
し、かつSi(wt%)>0.7×Mg(wt%)とされ、しかも
結晶粒微細化剤としてTi0.003〜0.15wt%を単独でもし
くはB1〜100ppmと組合されて含有し、残部がAlおよび不
可避的不純物からなり、全金属Si析出物のうち面積率で
80%以上の金属Si析出物のサイズが0.1〜3μmの範囲
内にあることを特徴とするものである。
さらに請求項3の発明のアルミニウム合金材製造方法
は、請求項1で規定した成分組成の合金をDC鋳造法によ
り鋳造した後、鋳塊に対して350〜500℃の範囲内の温度
で0.5〜24時間加熱する処理を施し、その後その鋳塊加
熱温度と同じかまたはそれ以下の温度であってしかも35
0〜430℃の範囲内の温度で熱間圧延するかまたはその温
度で熱間圧延した後冷間圧延し、熱間圧延と冷間圧延の
間または冷間圧延の途中で、中間焼鈍として260〜400℃
×0.5〜24時間のバッチ焼鈍もしくは380〜520℃で保持
なしまたは5分以下の保持の連続焼鈍を施すことによっ
て、全金属Si析出物のうち面積率で80%以上の金属Si析
出物のサイズが0.1〜3μmの範囲内にある圧延板を得
ることを特徴とするものである。
そして請求項4の発明のアルミニウム合金材製造方法
は、請求項2で規定した成分組成の合金について請求項
3と同様のプロセスを適用して全金属Si析出物のうち面
積率で80%%以上の金属Si析出物のサイズが0.1〜3μ
mの範囲内にある圧延板を得ることを特徴とするもので
ある。
作用 先ずこの発明のアルミニウム合金材における陽極酸化
皮膜の発色についての基本的な考え方を説明する。
Al−Si系アルミニウム合金における陽極酸化皮膜の灰
色の発色は、マトリックス中の金属Siが陽極酸化処理に
よって酸化されずに陽極酸化皮膜中にそのまま残留し、
この金属Si粒子の光の吸収によって生じることが知られ
ている。ここで、A−Si系アルミニウム合金中の金属Si
としては、鋳造凝固時に生成する晶出Si粒子と、鋳塊や
展伸材の加熱時に析出する析出Si粒子とがある。これら
のうち晶出Si粒子は一般にそのサイズが3〜20μm程度
であり、析出Si粒子は加熱温度により異なるが通常3μ
m以下である。
本発明者等はこのようなAl−Si系アルミニウム合金の
陽極酸化皮膜中の金属Siと色調との関係について詳細に
検討した結果、次のような知見を得た。
すなわちSi3wt%以下程度の低Si量のAl−Si系合金で
は、金属Siのうち晶出Si粒子はほとんど灰色の発色に寄
与しないことが判明した。これは、低Si量では、Siの晶
出量が多くても、個々の晶出Si粒子のサイズが大きいた
め、晶出Si粒子の絶対数が少なく、入射光の吸収点の数
が不足するためである。なおSi量を例えば10wt%程度に
高めれば晶出Si粒子だけでも濃色化させることができる
が、このようにSi量を増量すれば陽極酸化皮膜を形成す
る本来の目的である耐食性が損なわれてしまう。
一方析出Si粒子は一般にそのサイズが小さいためその
数が極めて多く、この析出Si粒子が入射光の吸収点とし
て機能して陽極酸化皮膜の色調の濃色化に寄与する。し
たがって陽極酸化皮膜の灰色の色調を濃色化するために
は、できるだけ微細な金属Si析出物を数多く析出させれ
ば良いことになる。本発明者等の実験によれば3μmを
越えるようなサイズの金属Si析出物は灰色の濃色化にあ
まり寄与しないことが判明した。
3μm以下の微細な金属Si析出物を得るためには、一
旦溶体化処理させた後冷間加工し、なるべく低温で析出
させれば良いと考えられる。例えばカーテンウォールの
如くH14テンパーで製造する場合には、熱間圧延の開始
温度をできるだけ高くし、Siを固溶状態に残したまま短
時間で熱間圧延を終了させ、冷間圧延により加工歪を与
えた後、再結晶が確保されるだけの比較的低温(例えば
280〜350℃程度)で長時間焼鈍することにより、微細な
金属Si粒子を析出させることが可能である。このような
方法によれば確かに著しく濃い色調を得ることができる
が、その反面黄味が極めて強くなってしまう。これは、
金属Si析出物のサイズが逆に微細すぎるためであり、本
発明者等の研究の結果、金属Si析出物のサイズが0.1μ
m未満では黄味を帯びてしまうことが判明した。
一方黄味を少なくするため焼鈍温度を高めれば確かに
黄味自体は少なくすることが可能であるが、Siの再固溶
と粗大化が生じて、Siの析出物の数が減少して灰色が薄
くなってしまう。また冷間加工後の焼鈍での金属Siの析
出過程においては、冷間加工により導入された転位が析
出を加速するため、温度や時間により析出の状態が変化
しやすく、そのため陽極酸化皮膜の色調が安定しないと
いう問題もある。そこで、鋳塊の段階でSiをある程度の
大きさで析出させ、しかも中間焼鈍時にはあまり析出を
生じさせないようにすれば、濃色でしかも黄味の少ない
灰色の色調を得ることができる。鋳塊の段階ではその前
に冷間加工を行なっていないことなどに起因してSiの析
出は遅く、しかも析出物のサイズも微細すぎることはな
い。したがって鋳塊の段階で適切なサイズでSiを析出さ
せることにより色調をほぼ決定づけることが有効であ
る。そして鋳塊段階でほぼ決定づけられた色調の変動を
防ぐためには、中間焼鈍過程での新たなるSiの析出が少
ないことが好ましい。このように中間焼鈍で新たなSiの
析出を起さないようにするためには、熱間圧延が終了し
た時点でのSi固溶量が少なくなっていることが必要であ
る。そのためには熱間圧延開始時の温度が重要であり、
この温度を比較的低温に設定することが必要である。
以上のように、陽極酸化処理後の色調として黄味の少
ない濃色の灰色の色調を得るためには、金属Si析出物の
サイズが0.1μm以上3μm以下の範囲内にあることが
重要であり、またそのための製造プロセスとしては鋳塊
加熱条件と熱間圧延開始温度が重要である。
なおこの発明において金属Si析出物のサイズは透過電
子顕微鏡写真で測定したサイズを意味するものとする。
一般に析出物としては大きなものも小さなものも統計的
に分布するのが通常であるが、この発明において0.1〜
3μmの範囲内とは、通常の透過電子顕微鏡写真で数視
野観察して大半の粒子がその範囲内に入っていることを
意味する。具体的には全金属Si析出物のうち面積率で80
%以上がその0.1〜3μmの範囲内にあれば良い。
次にこの発明のアルミニウム合金材の成分組成を限定
理由を説明する。
Si: Siは陽極酸化処理皮膜の色調を決定する重要な元素で
ある。Si量が0.5wt%未満では金属Siの析出物の析出が
少なく、充分な灰色が得られない。一方Si量が3.0wt%
を越えれば灰色の色調は得られるが、陽極酸化処理後に
表面に粉吹きが生じて耐食性が劣化し、またデスマット
性も悪く生産性を損なう。したがってSi量は0.5〜3.0wt
%の範囲内とする必要がある。
Fe: Feは陽極酸化皮膜の色調に黄味を与え、しかも陽極酸
化皮膜の耐食性を劣化させるから、0.3wt%未満に抑え
る必要がある。
Mg: 請求項2の発明のアルミニウム合金材ではMgが添加さ
れる。このMgは金属Siの析出を促進し、陽極酸化処理後
の灰色の色調の濃色化に寄与する。Mg量が0.05wt%未満
では上述のMg添加の効果が得られず、一方Mg量が1.2wt
%を越えればMg2Siが生成されて陽極酸化処理後の色調
が黄味を帯びてしまう。したがってMgを添加する場合の
Mg量は0.05〜1.2wt%の範囲内とする必要がある。またM
g量がその範囲内であっても0.7×Mg(wt%)≧Si(wt
%)ではMg2Siによる黄味が増大するから、0.7×Mg(wt
%)<Si(wt%)とする必要がある。
Ti,B: これらは結晶粒を微細化して、圧延板のキメ、ストリ
ークスを防止する効果があり、Tiを単独で、あるいはTi
とBを組合せて添加する。Tiが0.003wt%未満では上記
の効果が得られず、一方Tiが0.15wt%を越えればTiAl3
の粗大金属間化合物が生成されるおそれがあるから、Ti
は0.003〜0.15wt%の範囲内とする。BはTiと共存して
微細化効果を発揮する。Tiと組合されて添加する場合の
Bの添加量が1ppm未満では上記の効果が得られず、一方
100ppmを越えれば粗大TiB2粒子による線状欠陥が発生す
るから、B量は1〜100ppmの範囲内とする。
以上の各元素のほかは、基本的にはAlおよびその他の
不可避的不純物とすれば良い。
なお一般にMgを含有する系のアルミニウム合金におい
ては、溶湯の酸化防止のために微量のBeを添加すること
が多いが、この発明の合金の場合もBeを添加することは
特に支障はない。この場合のBe添加量は500ppm以下が一
般的である。
なおまた、この発明のアルミニウム合金においては、
若干のni,Mn,Cr,Zr,V,Cu,Zn等が含まれていても良い。
これらのうちNi,Mn,Cr,Zr,Vは陽極酸化皮膜の色調に本
質的に影響しないが、Ni1.0wt%以上、Mn0.3wt%以上、
Cr0.3wt%以上、Zr0.3wt%以上、V0.3wt%以上では鋳造
が困難となるから、Niは1.0wt%未満、Mnは0.3未満、Cr
は0.3wt%未満、Zrは0.3wt%未満、Vは0.3wt%未満に
抑制することが望ましい。またCu,Znは陽極酸化皮膜の
色調に若干の変化を与えるものの、Cu0.3wt%未満、Zn
2.0wt%未満では灰色化に本質的な影響は与えない。
以上のように金属Si析出物条件および成分組成条件を
定めることによって陽極酸化処理後の色調として黄味の
少ない濃色の灰色の色調を得ることができる。
次の請求項3、請求項4に記載の発明、すなわち製造
方法について述べる。
先ず前述のような成分組成の合金の溶湯を常法に従っ
て溶製し、DC鋳造法(半連続鋳造法)によって鋳塊とす
る。次いでその鋳塊に対し350〜500℃の範囲内の温度で
1.5〜24時間の加熱を施す。この鋳塊加熱は、一般的な
鋳塊組織均質化のために必要であるばかりでなく、陽極
酸化処理後の色調として濃色の灰色を与えるためにも重
要な工程である。すなわちこの鋳塊加熱によって金属Si
粒子の析出を促進させ、その金属Si析出物による陽極酸
化処理後の灰色の発色に寄与する。鋳塊加熱温度が350
℃未満では鋳塊の均質化が不充分となり、一方500℃を
越えればSiの粗大化が進み、陽極酸化処理後の色調が薄
くなる。また鋳塊加熱時間が0.5時間未満では前述の効
果が充分に得られず、一方24時間を越える長時間の加熱
は経済性の低下を招くだけである。したがって鋳塊加熱
の条件は、350〜500℃の範囲内の温度で0.5〜24時間と
した。
上述のような鋳塊加熱の後には、熱間圧延を行なう。
この熱間圧延の開始温度が350℃未満では熱間圧延が困
難となる。一方熱間圧延の開始温度が430℃を越えればS
iの固溶量が多くなって中間焼鈍時に微細な金属Siの析
出が生じ、そのため陽極酸化処理後の色調に黄味が強く
なり、また中間焼鈍温度の影響によって色調が不安定に
なりやすくなる。したがって熱間圧延の開始温度は350
〜430℃の範囲内とする必要があるが、その範囲内であ
っても鋳塊加熱温度より高い場合には鋳塊加熱工程で決
定づけられた金属Si析出物のサイズおよび分布が変化し
て陽極酸化処理後の色調が不安定となるから、熱間圧延
の開始温度は上記の範囲内の温度でしかも鋳塊加熱温度
と同じかまたはそれより低い温度とする必要がある。な
おこの熱間圧延は前述の鋳塊加熱の後に直ちに行なって
も良く、あるいは鋳塊加熱後に一旦冷却してから再加熱
して行なっても良い。いずれにしても熱間圧延開始温度
を前述のように規制することが重要である。
熱間圧延により得られた圧延板は、所望の最終板厚が
得られている場合はそのままで最終板としても良いが、
一般には熱間圧延後に冷間圧延を行なう。
熱間圧延と冷間圧延との間、あるいは冷間圧延の中途
においては、中間焼鈍を行なう。熱間圧延上りまでの工
程で陽極酸化処理後の基本的に色調は決定しているか
ら、陽極酸化処理後に所望の色調を得るという目的だけ
であれば中間焼鈍は必ずしも必要ではないが、カーテン
ウォール等の建材パネルの用途では曲げ性、平坦性等が
重要であるため、中間焼鈍を行ない、さらにその後冷間
加工を行なってH1nテンパー材として用いるのが一般的
である。
このように中間焼鈍を行なう場合、中間焼鈍の条件で
陽極酸化処理後の色調が変化することがある。従来のAl
−Si系アルミニウム合金灰色材の製造における中間焼鈍
の役割は、その中間焼鈍過程でSiの析出を制御し、色調
を決定づけることにあったが、この発明の場合には鋳塊
加熱で決定づけられた基本的な色調を大きく変動させな
いように中間焼鈍の条件を選択する必要がある。この発
明の方法では熱間圧延は比較的低温で開始されるためSi
の固溶量は少なくなっており、そのため中間焼鈍の温度
の影響は比較的受けにくいが、中間焼鈍の温度が高過ぎ
れば、Siの再固溶と粗大化が生じて陽極酸化処理後の色
調が薄くなってしまう。具体的な中間焼鈍の条件はバッ
チ炉を用いた焼鈍と連続焼鈍とで異なる。
バッチ焼鈍の場合、焼鈍温度が260℃未満では再結晶
せず、400℃を越えれば陽極酸化処理後の色調が薄くな
ってしまう。また焼鈍温度が0.5時間未満では焼鈍の効
果が充分に得られず、24時間を越えれば経済性を損な
う。したがってバッチ焼鈍の場合260〜400℃×0.5〜24
時間とする必要があり、好ましくは260〜350℃の範囲内
の温度とする。
一方連続焼鈍の場合、焼鈍温度が380℃未満では再結
晶せず、520℃を越えれば陽極酸化処理後の色調が薄く
なる。また保持時間が5分を越えれば結晶粒が粗大化す
るとともに経済性も損なう。したがって連続焼鈍を用い
た中間焼鈍では、380〜520℃に加熱して保持なしまたは
5分以内の保持とする。
以上のようにして得られた圧延材は、陽極酸化処理を
施すことによって、黄味を帯びていない濃色の灰色の色
調を安定して得ることができる。
次に以上のような圧延材に対して、陽極酸化処理を施
して実際に濃色の灰色の色調を得るためのプロセスを説
明する。
陽極酸化処理にあたっては、予め表面の汚れおよび表
面の欠陥を除去しておくため、脱脂およびエッチングを
行なうのが一般的である。エッチングは、苛性ソーダ系
のアルカリエッチングを行なうのが通常である。そして
陽極酸化処理自体は、H2SO4濃度が10〜25vol%の硫酸浴
を用い、浴温度10〜30℃、電流密度1.5A/dm2以上2.5A/d
m2未満で行ない、膜厚10〜30μmの陽極酸化皮膜を生成
させる。
ここで、硫酸浴のH2SO濃度が10vol%未満では生成さ
れる陽極酸化皮膜の多孔度が減少して浴電圧が高くな
る。一方H2SO4濃度が25vol%を越えれば、表面が荒れて
陽極酸化皮膜が柔かくなる。また浴温度が10℃未満では
所要の膜厚を得るために長時間の処理を要して不経済と
なり、一方30℃を越えれば陽極酸化処理後の耐食性が低
下してしまう。さらに電流密度は、2.5A/dm2以上では処
理に多大な電力を要し、実用的でなく、一方1.5A/dm2
満では、陽極酸化処理後の色調が薄くなって灰色が得ら
れなくなる。また生成される陽極酸化皮膜の膜厚が10μ
m未満では充分な耐食性が得られず、一30μmを越える
まで厚くすることは経済的でない。
以上のような硫酸浴による陽極酸化処理によって、黄
味の少ない濃灰色の色調を得ることができる。なおここ
で陽極酸化処理後の色調については、ハンターの色差式
(JIS Z8730参照)による明度指数Lとクロマティクネ
ス指数a,bの値によって評価することができる。すなわ
ち、明度指数のL値は高いほど白く、一方クロマティク
ネス指数は着色度についてのものであってそのa値は高
いほど赤味が強く、bは高いほど黄味が強いことをあら
わす。そしてこの発明で目的とする黄味の少ない濃灰色
の色調とは、L値、a値、b値が、 L<65、−2<a<+1.5、−2<b<+1.5 を満たす色調と定義することができる。
実 施 例 [実施例1] 第1表に示す合金No.1〜4の溶湯を常法にしたがって
溶製し、半連続鋳造法(DC鋳造法)によって450mm×120
0mm×4000mmのスラブを鋳造した。得られた各スラブに
ついて面削後、第2表の条件No.1〜7に示すような種々
の条件で鋳塊加熱を行ない、同じく第2表中に示す温度
で熱間圧延を開始して板厚4mmの熱延板とした。次いで
板厚2mmまで冷間圧延した。その後、バッチ炉により第
2表中に示す条件で中間焼鈍を行なった。その後さらに
冷間圧延を行なって板厚1.5mmの圧延板とした。
その後、各圧延板について10%NeOH水溶液でエッチン
グし、水洗後硝酸でデスマット処理を行なった。次いで
H2SO4濃度15vol%の硫酸浴を用いて、浴温20℃、電流密
度1.5A/dm2で陽極酸化処理を行ない、それぞれ膜厚20μ
mの陽極酸化皮膜を生成させた。
各板の陽極酸化皮膜の表面色調について、スガ試験機
製カラーメーターSM−3−MCHを用いて調べた。色調
は、ハンターの色差式による明度指数Lおよびクロマテ
ィクネス指数a,bを用いて評価した。その結果を第3表
に示す。また各板の金属Si析出物のサイズを調べたので
その結果も第3表中に示す。なお金属Si析出物のサイズ
は、透過電子顕微鏡で3〜10視野写真を撮り、測定し
た。
第3表から明らかなように、この発明の成分組成範囲
内の合金について、この発明のプロセス条件に従って製
造した圧延板は、いずれも陽極酸化処理後の色調が黄味
の少ない濃灰色となっていることが判明した。
[実施例2] 第4表に示す合金No.5の溶湯を常法に従って溶製し、
半連属鋳造法(DC鋳造法)によって450mm×1200mm×400
0mmのスラブを鋳造した。得られたスラブについて、面
削後、400℃×10時間の鋳塊加熱を施し、引続きその温
度で熱間圧延を開始し、3mm厚の熱延板とした。次いで
板厚1.5mmまで冷間圧延した後、連続焼鈍による中間焼
鈍を450℃保持なしで行ない、さらに1.2mmまで冷間圧延
した。得られた圧延板について、実施例1と同様に10%
NaOHによるエッチング、水洗、硝酸デスマット処理を行
ない、さらに実施例1と同じ条件で陽極酸化処理を行な
い、色調と金属Si析出物サイズを調べた。その結果を第
5表に示す。
第5表から明らかなように、中間焼鈍として連続焼鈍
を適用した場合にも、この発明の条件を満たすことによ
り、陽極酸化処理後に黄味の少ない濃灰色の色調が得ら
れることが判明した。
発明の効果 以上の実施例からも明らかなように、請求項1、請求
項2の発明のアルミニウム合金材は、陽極酸化処理によ
って黄味を帯びていない濃い灰色の色調を確実かつ安定
して得ることができる。また請求項3、請求項4の方法
によれば、前述のように陽極酸化処理後に黄味の少ない
濃灰色の色調を呈するアルミニウム合金圧延材を実際に
量産的規模で容易に製造することができる。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Si0.5〜3.0wt%、Fe0.3wt%未満を含有
    し、かつ結晶粒微細化剤としてTi0.003〜0.15wt%を単
    独でもしくはB1〜100ppmと組合されて含有し、残部がAl
    および不可避的不純物からなり、全金属Si析出物のうち
    面積率で80%以上の金属Si析出物のサイズが0.1〜3μ
    mの範囲内にあることを特徴とする、陽極酸化処理後の
    色調が黄味の少ない濃灰色のアルミニウム合金材。
  2. 【請求項2】Si0.5〜3.0wt%、Mg0.05〜1.2wt%、Fe0.3
    wt%未満を含有し、かつSi(wt%)>0.7×Mg(wt%)
    とされ、しかも結晶粒微細化剤としてTi0.003〜0.15wt
    %を単独でもしくはB1〜100ppmと組合されて含有し、残
    部がAlおよび不可避的不純物からなり、全金属Si析出物
    のうち面積率で80%以上の金属Si析出物のサイズが0.1
    〜3μmの範囲内にあることを特徴とする、陽極酸化処
    理後の色調が黄味の少ない濃灰色のアルミニウム合金
    材。
  3. 【請求項3】Si0.5〜3.0wt%、Fe0.3wt%未満を含有
    し、かつ結晶粒微細化剤としてTi0.003〜0.15wt%を単
    独でもしくはB1〜100ppmと組合されて含有し、残部がAl
    および不可避的不純物からなる合金をDC鋳造法により鋳
    造した後、鋳塊に対して350〜500℃の範囲内の温度で0.
    5〜24時間加熱する処理を施し、その後その鋳塊加熱温
    度と同じかまたはそれ以下の温度であってしかも350〜4
    30℃の範囲内の温度で熱間圧延するかまたはその温度で
    熱間圧延した後冷間圧延し、熱間圧延と冷間圧延の間ま
    たは冷間圧延の途中で、中間焼鈍として260〜400℃×0.
    5〜24時間のバッチ焼鈍もしくは380〜520℃で保持なし
    または5分以下の保持の連続焼鈍を施すことによって、
    全金属Si析出物のうち面積率で80%以上の金属Si析出物
    のサイズが0.1〜3μmの範囲内にある圧延板を得るこ
    とを特徴とする、陽極酸化処理後の色調が黄味の少ない
    濃灰色のアルミニウム合金材の製造方法。
  4. 【請求項4】Si0.5〜3.0wt%、Mg0.05〜1.2wt%、Fe0.3
    wt%未満を含有し、かつSi(wt%)>0.7×Mg(wt%)
    とされ、しかも結晶粒微細化剤としてTi0.003〜0.15wt
    %を単独でもしくはB1〜100ppmと組合されて含有し、残
    部がAlおよび不可避的不純物から合金をDC鋳造法により
    鋳造した後、鋳塊に対して350〜500℃の範囲内の温度で
    0.5〜24時間加熱する処理を施し、その後その鋳塊加熱
    温度と同じかまたはそれ以下の温度であってしかも350
    〜430℃の範囲内の温度で熱間圧延するかまたはその温
    度で熱間圧延した後冷間圧延し、熱間圧延と冷間圧延の
    間または冷間圧延の途中で、中間焼鈍として260〜400℃
    ×0.5〜24時間のバッチ焼鈍もしくは380〜520℃で保持
    なしまたは5分以下の保持の連続焼鈍を施すことによっ
    て、全金属Siの析出物のうち面積率で80%以上の金属Si
    析出物のサイズが0.1〜3μmの範囲内にある圧延板を
    得ることを特徴とする、陽極酸化処理後の色調が黄味の
    少ない濃灰色のアルミニウム合金材の製造方法。
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