JP3078608B2 - 陽極酸化処理用アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents

陽極酸化処理用アルミニウム合金板の製造方法

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JP3078608B2
JP3078608B2 JP03197115A JP19711591A JP3078608B2 JP 3078608 B2 JP3078608 B2 JP 3078608B2 JP 03197115 A JP03197115 A JP 03197115A JP 19711591 A JP19711591 A JP 19711591A JP 3078608 B2 JP3078608 B2 JP 3078608B2
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雅美 古屋
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は陽極酸化処理を施して
使用される用途のアルミニウム合金板、例えばビルのカ
ーテンウォールや外壁、屋根、ドア、門扉、あるいは内
装材などの建材、さらには各種器物、容器、銘板等に使
用されるアルミニウム合金板の製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】一般にカーテンウォールや建築外装材、
内装材などの建材、あるいは器物、容器、銘板などに使
用されるアルミニウム合金の圧延材は、耐食性の観点か
ら陽極酸化処理を施して用いられることが多い。これら
の用途の陽極酸化処理用アルミニウム合金としては、陽
極酸化処理後の色調が淡灰色系からシルバー系のものが
多く、このような合金の圧延材としては一般にJIS
1050合金、1100合金、5005合金等が使用さ
れることが多い。また灰色系のものとしてはAl−1〜
4%Si合金が一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】最近では建築外装材、
内装材等の用途においては、デザイン上の要請から色調
の多様化、個性化を求められることが多くなっている。
陽極酸化処理を施して用いられるアルミニウム合金につ
いても、これらの用途では種々の色調が求められること
が多くなっており、その例として暗緑灰色の色調があ
る。
【0004】アルミニウム合金の陽極酸化処理材に各種
の色調を与える方法としては、二次電解法や染色法、そ
の他の塗装法などもあるが、これらの方法では退色の問
題があるほか、耐食性やコスト等の問題がある。したが
って陽極酸化処理のままで暗緑灰色の色調を得ることが
望まれる。
【0005】従来、陽極酸化処理のままで暗緑灰色の色
調を得る方法としては、シュウ酸電解浴による陽極酸化
処理があるが、シュウ酸電解浴による陽極酸化処理は、
現在主流を占めている硫酸電解浴による場合と比較し
て、電解条件や電解浴管理に厳密さが要求され、また皮
膜特性も劣るとともにコストも高いことから、硫酸電解
浴による陽極酸化処理のままで暗緑灰色の色調を得るこ
とが望まれる。
【0006】しかしながら、従来は硫酸電解浴による陽
極酸化処理のままで暗緑灰色の色調を得る手法は確立さ
れていなかったのが実情である。特に板連続鋳造法(連
続鋳造圧延法)によって5〜50mm程度の板を直接鋳造
する方法を適用した場合に、硫酸電解浴による陽極酸化
処理のままで暗緑灰色の色調を得るための手法は知られ
ていなかったのが実情である。
【0007】また建材等においては、単に色調のみなら
ず、デザイン的な観点から個性的な外観模様を有するこ
とも求められるようになっており、その一つとして木目
(柾目)調の不連続縦縞模様があるが、従来は陽極酸化
処理のままで安定して所定の不連続縦縞模様を得る手法
は確立されていなかったのが実情である。
【0008】この発明は以上の事情を背景としてなされ
たもので、硫酸電解浴による陽極酸化処理のままで、暗
緑灰色の色調で鋳造方向もしくは圧延方向と平行な方向
の不連続縦縞模様を有する板を確実かつ安定して得るこ
とが可能なアルミニウム合金板の製造方法を提供するこ
とを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明の陽極酸化処理
用アルミニウム合金板は、基本的には、成分系をAl−
Cr系とするとともに、所定量のFeを添加し、かつ結
晶粒微細化剤として通常アルミニウム合金に添加される
ことが多いTi,Bの量を極微量以下に規制するととも
に、板連続鋳造法等による急冷凝固の特性を活用して、
表面が幅広な柱状晶からなる鋳造板を得、さらに熱処理
を施して色調の暗色化に寄与する微細析出物を析出させ
るとともに、結晶粒毎の析出の変動を利用して、硫酸電
解浴による陽極酸化処理後の表面に暗緑灰色の色調での
不連続縦縞模様を発生させるようにしている。なおこの
発明では、鋳造のままの厚さの板、あるいは鋳造の後、
冷間圧延を施して板厚を減じた板として、前述のような
色調、不連続縦縞模様を有する板を提供することとして
いる。
【0010】
【0011】
【0012】具体的には、請求項1の発明の製造方法
は、Cr0.3〜1.2wtCr0.3〜1.2wt%、F
e0.2wt%を越え1.0wt%以下、Si0.5wt%以
下を含有し、かつTi量が0.01wt%以下、B量が
0.002wt%以下に規制され、残部がAlおよびその
他の不可避的不純物よりなる合金の溶湯を、5℃/sec
以上の冷却速度で鋳造して、表面の結晶粒の50%以上
が幅2mm以上の柱状晶からなる鋳造板を得、続いてその
鋳造板を、400〜630℃で0.5〜24時間加熱す
ることを特徴とするものである。
【0013】また請求項2の発明の方法は、請求項1の
方法と同様に鋳造した後、冷間圧延を行なって所要の板
厚とし、かつ鋳造と冷間圧延との間、または冷間圧延の
中途もしくは冷間圧延の後に400〜630℃で0.5
〜24時間加熱することを特徴とするものである。
【0014】
【作用】先ずこの発明におけるアルミニウム合金の成分
組成限定理由を説明する。
【0015】Cr:Crが固溶状態で存在すれば、陽極
酸化処理後の色調として黄金色を発色させることができ
る。そして陽極酸化処理後の色調として暗緑灰色の色調
を得るためには、その暗緑灰色の色調のベース色調とし
て固溶Crによる黄金色が必須である。すなわち、黄金
色の皮膜色をベースとし、皮膜中の後に説明するAl−
Fe(−Si−Cr)系の微細な析出物が黄金色を濁ら
せる結果として、深味のある暗緑灰色の色調が得られ
る。したがってCrは、この発明において基本的に重要
な合金元素である。Crの固溶量が多いほど黄金色は強
くなるが、充分な黄金色の色調を得るためには通常は
0.3wt%以上のCrが必要である。但し、DC鋳造法
等の通常の冷却速度が遅い鋳造方法では、Crが0.3
wt%以上ではCr系の巨大な初晶金属間化合物が晶出
し、実質上製造できないばかりでなく、Crを強制的に
固溶できないために、黄金色を明瞭に発色できない。こ
れに対し板連続鋳造法等によって5℃/sec 以上の冷却
速度で急冷凝固させれば、粗大なCr系の金属間化合物
を生成させないCr量範囲を1.2wt%にまで上げるこ
とができる。しかも板連続鋳造法の如き急冷凝固では、
添加したCrの大部分を強制的に固溶でき、そのため充
分に強い黄金色を発色させることができる。但しCrが
1.2wt%を越えれば、板連続鋳造法を適用しても初晶
の粗大化合物が晶出し、しかもCrの強制固溶量も限界
に達するからそれ以上添加しても意味がない。したがっ
てCr量は0.3〜1.2wt%の範囲内とした。
【0016】Fe:Feはこの発明において、適切な熱
処理を施すことにより、陽極酸化処理後の色調を黄金色
から暗緑灰色に変えるに寄与する。すなわち、Feが含
有されれば、適切な熱処理を施すことによってAl−F
e(−Si−Cr)系の析出物が微細に析出し、この微
細析出物によってベースの黄金色の色調に暗緑灰色の濁
りが加わり、これによって深みのある暗緑灰色の色調が
得られる。ここで、Fe量が0.2wt%以下であれば、
熱処理によるAl−Fe(−Si−Cr)系の微細な析
出物が少なくなり、暗緑灰色の色調を得ることも困難と
なる。一方Fe量が1.0wt%以上となれば、鋳造が困
難となる。したがってFe量は0.2wt%を越え1.0
wt%以下とする必要がある。
【0017】Si:SiがFeとともに含有されれば、
適切な熱処理を施すことにより微細なAl−Fe−Si
(−Cr)系の析出物が析出される。この微細なAl−
Fe−Si(−Cr)系の析出物は前述のように暗緑灰
色の発色に寄与する。したがってSiは暗緑灰色の発色
を助長させる効果がある。但し、Si量が0.5wt%を
越えれば鋳造が困難となるから、Si量は0.5wt%以
下とする必要がある。
【0018】Ti,B:一般のアルミニウム合金におい
ては、鋳塊結晶粒の微細化のために少量のTiを単独
で、あるいは少量のTiを微量のBと組合せて添加する
ことが多い。しかしながらこの発明の場合は、陽極酸化
処理後の表面に不連続縦縞模様を発現させるために、T
iやBの含有量を微量以下に規制し、鋳塊結晶粒の柱状
晶化(粗大化)を図ることが必要である。すなわちこの
発明では、Crの固溶による黄金色と、Al−Fe(−
Si−Cr)系の微細析出物による濁りとを合成して暗
緑灰色の色調を達成しているが、本発明者等の研究によ
れば、鋳造後にAl−Fe(−Si−Cr)系の微細析
出物を析出させる熱処理を行なった場合、その微細析出
物の分布は、結晶方位によって異なることが判明した。
したがって鋳造時の結晶粒が粗大な柱状晶の場合には、
結晶粒ごとにAl−Fe(−Si−Cr)系の微細析出
物の析出分布が異なり、その結果結晶粒ごとに陽極酸化
処理後の色調が異なることとなる。そして柱状晶は鋳造
方向に沿って成長するため、鋳造後に析出のための熱処
理を行なった板に陽極酸化処理を施せば、鋳造方向(縦
方向)に伸長した各結晶粒ごとに色調が異なることにな
り、全体として柾目の木目調の不連続縦縞模様が得られ
るのである。ここで、柱状晶の幅(各柱状晶結晶粒の鋳
造方向に対し直交する方向の最大幅)が2mm未満では、
縦縞の目が細か過ぎて、柾目の木目調とは言い難く、ま
た視覚的にも縦縞が細か過ぎて印象が弱くなる。但し、
結晶粒の幅が全ての結晶粒について2mm以上である必要
はなく、一部には2mm未満の幅の結晶粒が存在しても、
木目調の印象は与えることができ、したがってこの発明
では鋳造板表面の結晶粒の50%以上が2mm以上の幅の
柱状晶であれば良いこととしている。そして、このよう
に鋳造板表面の結晶粒の50%以上を粗大な柱状晶とし
て、柾目の木目調の不連続縦縞模様を得るためには、鋳
塊結晶粒を微細化してしまうTiおよびBの量を制限す
る必要があるのである。具体的には、Tiが0.01wt
%を越えれば、微細な等軸晶が生じて2mm以上の幅を持
つ柱状晶が得られない。またBも0.002wt%を越え
れば等軸晶が生じてしまう。したがってTiは0.01
wt%以下、Bは0.002wt%以下に制限する。
【0019】以上の各成分のほかは、基本的にはAl
と、Ti,B以外の不可避的不純物とすれば良い。但
し、通常のアルミニウム合金においては、鋳造時の溶湯
の酸化を防止するため微量のBeを添加することがある
が、この発明の合金の場合にも、微量のBeを添加して
も良く、Be量が500ppm 程度以下であれば特に他の
性能を劣化させることはない。またそのほか、強度向上
を目的としてCu,Zn,Mgのうちのいずれか一種ま
たは二種以上が含有されてていも良く、Cuは1.0wt
%以下、Znは2.0wt%以下、Mgは2.0wt%以下
であれば特に他の性能を損なうことなく、この発明の目
的を達成することができる。ただし、Cu,Znは耐食
性の観点から各々0.1wt%未満とすることが好まし
く、またMgは酸化物を生成しやすく、これに起因する
介在物が表面処理後の表面品質に悪影響を及ぼすから、
Mgも0.1wt%未満が好ましい。
【0020】次にこの発明のアルミニウム合金板の製造
方法について説明する。
【0021】この発明の方法では、合金溶湯の鋳造法と
して、5℃/sec 以上の冷却速度で鋳造する方法、例え
ば5〜50mm程度の厚みの板を直接鋳造する、板連続鋳
造法などを適用する。この板連続鋳造法の代表的なもの
としては、一対の回転冷却ロールやキャタピラー、ある
いはベルト等の間に給湯して板を鋳造する方法があり、
これは例えば3C法あるいはハンター法、キャスターI
I、ハザレー法として知られており、またロールキャス
トあるいはストリップキャストとも称されている。この
ような板連続鋳造法等では、冷却速度が著しく高いた
め、Cr,Fe等の遷移元素を多量に強制固溶させるこ
とができ、かつ粗大な金属間化合物を生成させることな
く高濃度のCrを含有するアルミニウム合金を鋳造する
ことができる。この発明では、このような著しく高い冷
却速度によるCrの固溶と、合金成分組成の適切な選択
による粗大柱状晶化および結晶粒ごとの析出の変動を利
用して、安定な柾目木目調の不連続縦縞模様を有する暗
緑灰色の色調を達成することが可能となったのである。
【0022】この発明の方法において、前述のような成
分組成の合金溶湯を鋳造するにあたっては、陽極酸化処
理による暗緑灰色のベースとなる黄金色の発色に寄与す
る固溶Crを充分に確保するべく、Crを強制的に固溶
させ、かつ0.3%以上のCr量でも粗大なCr系の金
属間化合物を生成させないために、5℃/sec 以上の冷
却速度が必要である。このような鋳造時の冷却速度を、
工業的に大きな板で得ることは、前述のように一対の冷
却ロールやキャタピラー、ベルト等の間に溶湯を供給し
て5〜50mm程度の板を直接鋳造する、板連続鋳造法
(連続鋳造圧延法)等で達成できる。
【0023】このようにして板連続鋳造法等により得ら
れた鋳造板は、そのままの板厚で陽極酸化処理に供して
も良く、あるいは冷間圧延を施して所要の板厚としてか
ら陽極酸化処理に供しても良いが、陽極酸化処理後の色
調として、固溶Crによる黄金色をベースとしてAl−
Fe(−Si−Cr)系の微細析出物による濁りを加
え、深みのある暗緑灰色の色調を得るとともに、微細析
出物の結晶粒ごとの変動により不連続縦縞模様を得るた
めには、鋳造直後に、あるいは冷間圧延を行なう場合に
は冷間圧延の中途あるいは冷間圧延の後に、比較的高温
での析出のための熱処理を行なう必要がある。この場合
の加熱温度が400℃未満では、暗緑灰色の発色に寄与
するAl−Fe(−Si−Cr)系析出物の析出が不充
分で、黄金色が未だ強く、深みのある暗緑灰色とは言え
ない。一方630℃を越えれば色調が全体的に薄くなる
に加え、2次再結晶が生じて木目調の不連続縦縞模様が
得られなくなる。また加熱時間が0.5時間未満では析
出が不充分であり、一方24時間を越えても効果は飽和
し、経済性を損なうだけである。したがってこの場合の
熱処理は、400℃以上、630℃以下の温度に0.5
〜24時間加熱する必要がある。
【0024】このようなAl−Fe(−Si−Cr)系
の微細な析出物を析出させて暗緑灰色の色調を得るため
の熱処理は、鋳造板のまま用いる場合は鋳造後に行なえ
ば良い。また冷間圧延を行なう場合は、基本的には冷間
圧延の前、中途、あるいは後のいずれでも良いが、実際
上は冷間圧延前に熱処理を施すことが望ましい。すなわ
ち、冷間圧延を施す場合は、鋳造板での柱状晶が圧延に
より引き延ばされた結晶粒ごとの析出の相異により不連
続縦縞模様が発現することになるが、冷間圧延の中途も
しくは冷間圧延の後に析出のための熱処理を行なった場
合、条件によっては析出に先立って再結晶が生じてしま
い、柱状晶が消失した再結晶組織について析出が行なわ
れることになり、この場合は柱状晶に由来する木目調の
不連続縦縞模様が得られなくなってしまうかまたはぼや
けてしまう。鋳造後、冷間圧延前の状態では再結晶が生
じにくく、したがって木目調の不連続縦縞模様を達成す
るためには、析出のための熱処理は冷間圧延前に行なっ
ておくことが最も望ましいのである。但し、場合によっ
ては冷間圧延の中途もしくは後に析出のための熱処理を
行なわざるを得ない場合もあると考えられ、その場合に
は前述のような析出のための熱処理条件範囲内でも、析
出に先立って再結晶が生じないような条件を選択すれば
良い。
【0025】一方、析出のための前述のような熱処理を
施した後に、冷間圧延の中途や冷間圧延の後、それ以降
の冷間圧延を容易にしたりあるいは強度を調整したりす
る目的で、焼鈍を行なう必要が生じることもある。この
ような目的での焼鈍は、本成分系では一般にバッチ炉を
用いた焼鈍では300〜550℃×0.5〜24時間、
また連続焼鈍の場合は400〜650℃で保持なしもし
くは3分以下の保持とするのが通常であるが、バッチ炉
を用いた焼鈍では、再結晶によって析出物分布の均一化
や変動が生じて木目調の不連続縦縞模様がぼやけたり、
消失したりしてしまうおそれがあるから、この場合も再
結晶が生じないような条件を選択することが望ましい。
再結晶しない条件は、成分組成や鋳造板の加熱条件、冷
間加工率などによって変動するから、一律には定められ
ないが、予め試験を行なって適切な条件を選択すれば良
い。これに対し連続焼鈍では、急速短時間加熱であるた
め、たとえ再結晶が生じたとしても、もともとの柱状晶
に由来する析出物分布が維持され、木目調の不連続縦縞
模様も明確に発現させ得る。したがって冷間圧延の中途
や後に焼鈍を施す必要がある場合は、連続焼鈍を適用す
ることが好ましい。
【0026】次に上述のような方法で得られたアルミニ
ウム合金板(鋳造板もしくは圧延板)に対して、陽極酸
化処理を施して実際に暗緑灰色の色調で木目調の不連続
縦縞模様を有する板を得るためのプロセスを説明する。
【0027】陽極酸化処理にあたっては、予め表面の汚
れおよび表面の欠陥を除去しておくため、脱脂およびエ
ッチングを行なうのが一般的である。エッチングは、苛
性ソーダ系のアルカリエッチングを行なうのが通常であ
る。そして陽極酸化処理自体は、H2 SO4 濃度が10
〜25 vol%の硫酸浴を用い、浴温度10〜30℃、電
流密度1.5A/dm2 以上、2.5A/dm2 未満で行な
い、膜厚10〜30μmの陽極酸化皮膜を生成させる。
【0028】ここで、硫酸浴のH2 SO4 濃度が10 v
ol%未満では生成される陽極酸化皮膜の多孔度が減少し
て浴電圧が高くなる。一方H2 SO4 濃度が25 vol%
を越えれば、表面が荒れて陽極酸化皮膜が柔らかくな
る。また浴温度が10℃未満では所要の膜厚を得るため
に長時間の処理を要して不経済となり、一方30℃を越
えれば陽極酸化処理後の耐食性が低下してしまう。さら
に電流密度は、2.5A/dm2 以上では処理に多大な電
力を要し、実用的でなく、一方1.5A/dm2 未満で
は、陽極酸化処理後の色調が薄くなって暗緑灰色が得ら
れなくなる。また生成される陽極酸化皮膜の膜厚が10
μm未満では充分な耐食性が得られず、一方30μmを
越えるまで厚くすることは経済的でない。
【0029】以上のような硫酸浴による陽極酸化処理に
よって、暗緑灰色の色調の不連続縦縞模様を有する板を
得ることができる。
【0030】なおこの発明で得られる不連続縦縞模様
は、図1に示すように、鋳造方向、圧延方向にほぼ平行
な方向の縞模様であって、直線状もしくは直線に近い波
状、曲線状などの長い形状の濃色の縞状部分1と同様な
形状の薄色の縞状部分2とが鋳造方向、圧延方向と平行
に不連続に伸びた状態で混在する縞模様である。但し、
ここでは一律に濃色の縞状部分1、薄色の縞状部分2と
を区別したが、これらの濃色、薄色は相対的なものであ
り、実際には種々の濃さの色調の部分が混在する。また
その縦縞の幅(縞状部分1,2の中心間距離)Wは、鋳
造板では柱状晶の幅と同様に2mm程度以上である。
【0031】
【実施例】
実施例1 表1の合金番号1〜5に示す成分組成のアルミニウム合
金を常法にしたがって溶製し、一対のロール間に給湯す
る方式の板連続鋳造法によって板厚7mmの鋳造板を得
た。なお合金番号1〜4はいずれもTi,Bは積極添加
せず、不純物としてこれらを含有しているものであり、
合金番号5はTi,Bを積極添加したものである。なお
また、凝固時の冷却速度はいずれも200〜300℃/
sec であった。得られた各合金に対して、350℃×1
0時間もしくは550℃×10時間の加熱を行なってか
ら陽極酸化処理を施した。
【0032】上記のいずれの場合においても陽極酸化処
理は次の条件で行なった。すなわち、先ず10%NaO
H水溶液でエッチングした後、水洗して硝酸でデスマッ
ト処理を施し、次いで15 vol%濃度の硫酸浴を用いて
浴温20℃、電流密度1.5A/dm2 で陽極酸化処理を
行ない、膜厚20μmの陽極酸化皮膜を生成させた。
【0033】以上のようにして陽極酸化処理が施された
各板の表面の色調と不連続縦縞模様の状況を目視により
観察、判定した結果と、鋳造板の表面組織を調べた結果
を表2に併せて示す。なお表2において、不連続縦縞模
様の欄の○印は明瞭に木目調の不連続縦縞模様が発現し
た場合を、△印は不鮮明に不連続縦縞模様が生じていた
場合を、×印は不連続縦縞模様が生じていなかった場合
をそれぞれあらわす。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】表2から明らかなように、成分組成が本発
明範囲内の合金(合金番号1,2)を用いた鋳造板(製
造符号A〜C)は、いずれも鋳造板表面の結晶粒が平均
して2mm以上の幅の柱状晶となっており、そのうち、5
50℃×10時間の加熱を行なった板(製造符号A,
C)は、陽極酸化処理によって暗緑灰色の不連続縦縞模
様を発現させることができたが、加熱を350℃で行な
った板(製造符号B)は不連続縦縞模様は得られたもの
の、色調が黄金色となって、暗緑灰色が得られなかっ
た。またCr量およびFe量がともに少ない合金(合金
番号3)を用いた場合(製造符号D)は、鋳造板に柱状
晶は得られているが、550℃での加熱を行なっても不
連続縦縞模様が発現せず、また暗緑灰色の色調も得られ
なかった。またFe量のみが低い合金(合金番号4)を
用いた場合(製造符号E)も、鋳造板に柱状晶は得られ
たが、550℃での加熱を行なっても不連続縦縞模様は
発現せず、また色調も黄金色であった。さらにTi,B
をこの発明で規定する上限値を越えて添加した合金(合
金番号5)を用いた場合(製造符号F)は、鋳造板で柱
状晶が得られず、550℃での加熱を行なっても縦縞模
様が生じないばかりかむしろ鋳造方向と直交する横縞模
様が生じてしまった。
【0037】なお、図2に合金番号1の合金を用いて製
造符号Aにより製造した板について陽極酸化処理を施し
た後の表面状況の写真を示す。ここで、図2において、
縦方向(鋳造方向)の寸法L1 は60mm、横方向(鋳造
方向に直交する方向)の寸法L2 は180mmである。図
2から、明瞭に暗緑灰色の不連続縦縞模様が発現されて
いることが判る。
【0038】表1の合金番号1,2の各合金について前
記同様に冷却速度200〜300℃/sec の板連続鋳造
により板厚7mmの鋳造板とし、各鋳造板について500
℃×10時間の熱処理を行なった後、板厚1.5mmまで
冷間圧延した。冷間圧延後の各板の一部はそのままま陽
極酸化処理を施し、他のものは、バッチ炉による300
℃×5時間もしくは500℃×5時間の焼鈍、または連
続焼鈍を想定したソルトバスによる530℃×10sec
の焼鈍を施してから陽極酸化処理を施した。陽極酸化処
理の条件は実施例1の場合と同じである。
【0039】陽極酸化処理後の表面の色調および不連続
縦縞模様を目視により観察、判定した。その結果を表3
に示す。
【0040】
【表3】
【0041】表3から明らかなように、冷間圧延を行な
ってから最終焼鈍を施した場合にも、バッチ炉での最終
焼鈍が再結晶しないものである場合、および連続焼鈍を
想定した急速短時間加熱の焼鈍を行なった場合は、いず
れも暗緑灰色の不連続縦縞模様が得られた。これに対し
バッチ焼鈍で再結晶が生じた場合は、不連続縦縞模様が
得られなかった。したがって冷間圧延板を焼鈍する場合
は、再結晶させないかまたは急速短時間加熱の焼鈍を適
用すれば良いことが判る。
【0042】
【発明の効果】前述の実施例からも明らかなように、こ
の発明のアルミニウム合金板の製造方法によれば、合金
の成分組成を適切に調整するとともに、鋳造時の冷却速
度を5℃/sec 以上とし、かつ適切な熱処理を施すこと
によって、硫酸浴による陽極酸化処理後に暗緑灰色の色
調を有しかつ安定した木目(柾目)調の不連続縦縞模様
を有する板を確実に得ることができる。
【0043】
【0044】したがってこの発明は、外観の多様化、個
性化が求められる各種建材材料や銘板、各種器物、容器
等に適用して有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるアルミニウム合金板の陽極酸化
処理後の横縞模様を説明するための模式図である。
【図2】実施例のアルミニウム合金板の陽極酸化処理後
の表面の金属組織写真である。
【符号の説明】
1 濃色の縞状部分 2 薄色の縞状部分
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22F 1/00 613 C22F 1/00 613 623 623 671 671 681 681 686 686A 691 691B 691C (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22F 1/04 - 1/057 C25D 11/04 - 11/24 C22C 21/00 - 21/18

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cr0.3〜1.2wt%、Fe0.2wt
    %を越え1.0wt%以下、Si0.5wt%以下を含有
    し、かつTi量が0.01wt%以下、B量が0.002
    wt%以下に規制され、残部がAlおよびその他の不可避
    的不純物よりなる合金の溶湯を、5℃/sec 以上の冷却
    速度で鋳造して、表面の結晶粒の50%以上が幅2mm以
    上の柱状晶からなる鋳造板を得、続いてその鋳造板を、
    400〜630℃で0.5〜24時間加熱することを特
    徴とする、陽極酸化処理後に暗緑灰色の色調の不連続縦
    縞模様を呈する陽極酸化処理用アルミニウム合金板の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 Cr0.3〜1.2wt%、Fe0.2wt
    %を越え1.0wt%以下、Si0.5wt%以下を含有
    し、かつTi量が0.01wt%以下、B量が0.002
    wt%以下に規制され、残部がAlおよびその他の不可避
    的不純物よりなる合金の溶湯を、5℃/sec 以上の冷却
    速度で鋳造して、表面の結晶粒の50%以上が幅2mm以
    上の柱状晶からなる鋳造板を得、その後冷間圧延を施し
    て所要の板厚とし、かつ前記鋳造と冷間圧延との間、ま
    たは冷間圧延の中途もしくは冷間圧延の後に、400〜
    630℃で0.5〜24時間加熱する熱処理を施すこと
    を特徴とする、陽極酸化処理後に暗緑灰色の色調の不連
    続縦縞模様を呈する陽極酸化処理用アルミニウム合金板
    の製造方法。
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