JP2522937B2 - 車両用ｖベルト伝動装置の冷却装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は例えば自動二輪車等に備えられる車両用Ｖベ
ルト伝動装置の冷却装置に関するものである。

〔従来の技術〕

自動二輪車や自動三輪車、あるいは小型の四輪車にお
いては、動力伝達手段としてＶベルトを採用した車両用
Ｖベルト伝動装置が広く使用されている。車両用Ｖベル
ト伝動装置の冷却装置はＶベルトが摩擦熱で加熱され高
温になるのを防止するもので、エンジンの動力で駆動さ
れる冷却送風ファンを設け、この冷却送風ファンで外気
をエアクリーナから伝動ケース内へ導入することによっ
て、Ｖベルトを冷却するように構成されている。

〔発明が解決しようとする問題点〕

ところで、この種の車両用Ｖベルト伝動装置におい
て、レイアウト設計ないし意匠上などの理由からエアク
リーナがエンジンから後方へ離して配設される場合があ
り、このような装置に冷却装置を備える場合、ゴム製の
前後方向に長い吸気通路形成部材でエアクリーナと冷却
送風ファンとの間を連通させることが考えられる。

しかし、このような構造では、吸気通路形成部材が伝
動ケースの外側へ突出するために幅寸法が拡がり、車両
を構成する他の部材と干渉するおそれがあった。また、
吸気通路形成部材がゴム製で長く形成されると、走行時
の振動や衝撃によって大きく弾性変形し、伝動ケースか
ら外れてケース内部に塵埃が侵入する不具合が起きる。
一方、伝動ケースにおいては、共鳴してびびり音を発生
することがないように剛性を大きくすることが望まれて
いる。

〔問題点を解決するための手段〕

本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、幅寸
法が拡がったり、伝動ケース内部に塵埃が侵入するのを
抑えることができる車両用Ｖベルト伝動装置の冷却装置
を提供するものである。本発明に係る車両用Ｖベルト伝
動装置の冷却装置は、エンジン本体のクランクケースの
一側から車体の後方へ一体に延びる伝動ケース本体の外
側を伝動ケースカバーで覆うことによって、内部にＶベ
ルト室を形成する伝動ケースを構成し、この伝動ケース
内の前部に、クランク軸端に軸装され外側面に冷却送風
ファンが設けられた駆動プーリを配設し、かつ後部に従
動プーリを配設してこれら両プーリ間にＶベルトを掛け
渡し、前記従動プーリの外側方に従動プーリの回転を後
輪へ伝達する遠心クラッチを配置するとともにこの遠心
クラッチを覆って外側方へ突出する凸状部を前記伝動ケ
ースカバーの後部に形成し、前記伝動ケースの上方に配
置したエアクリーナからＶベルト室内に前記冷却送風フ
ァンによって外気を導入する車両用Ｖベルト伝動装置の
冷却装置であって、前記伝動ケースカバーの外側壁の上
下方向の中間部を、前記冷却送風ファンの中央部に対応
する部位から前記凸状部にわたる範囲において外側方へ
膨出させ、この膨出部の後部を、遠心クラッチの外周囲
に沿って後上がりに伝動ケースカバーの上面付近まで延
在させ、この膨出部とＶベルト室との間を仕切板で画成
することにより伝動ケース内に吸気通路を形成し、この
膨出部の前端壁とこれに対向する仕切板の前端に形成し
た切欠きとによって形成された開口を介して前記Ｖベル
ト室と吸気通路を互いに連通させ、前記仕切板を、前記
伝動ケースカバーに固定部の一部を仕切板の前端部に配
設して固定し、前記エアクリーナを、前記遠心クラッチ
の前上方付近であって前記伝動ケース本体の上方に配置
するとともに、前記膨出部の後端上面に開口させた連通
口に、この連通口の上面から伝動ケース本体における車
体内側の端部まで水平方向に延びるダクトを介して接続
したものである。

〔作用〕

本発明においては、伝動ケースカバーの側壁を利用し
て吸気通路が形成され、吸気通路と伝動ケースカバーと
が近接するので、吸気通路が外側方向へ突出するのが抑
えられる。また、膨出部の壁面で伝動ケースカバーが補
強される。

〔実施例〕

以下、本発明の一実施例を図により詳細に説明する。
第１図は本発明に係る車両用Ｖベルト伝動装置の冷却装
置が備えられたユニットスイング式エンジンを示す第２
図のＩ−Ｉ線断面図、第２図はユニットスイング式エン
ジンを示す側面図、第３図は同じく平面図で、これらの
図において全体を符号１で示すユニットスイング式エン
ジンは、エンジン本体２と、このエンジン本体２の動力
を後方へ伝達するＶベルト伝動装置３と、これらエンジ
ン本体２、Ｖベルト伝動装置３、および図示しない後輪
を支持する後輪軸４を一体的に保持するアルミニウム合
金製の伝動ケース５などから構成されており、自動二輪
車等の車両の車体フレームに揺動自在に枢支されてい
る。前記エンジン本体２は幅方向に配設されたクランク
軸６を有する水冷式の単気筒エンジンで、クランク軸６
の右側には発電機が軸装されている。Ｖベルト伝動装置
３はクランク軸６の左側に軸装され対向間隔が変化する
駆動プーリ７と、前記後輪軸４に歯車を介して連結され
た中間軸に回転自在に支持された従動プーリ８と、この
従動プーリ８と前記中間軸とを連結し従動プーリ８の回
転を後輪軸４に伝達する遠心クラッチ９と、前記駆動プ
ーリ７と従動プーリ８との間に掛け渡されたＶベルト11
などから構成されており、駆動プーリ７の外側の半体に
は冷却送風ファン12が一体に形成されている。伝動ケー
ス５の伝動ケース本体13は左側方へ開放された断面溝状
に形成されエンジン本体２のクランクケースから後方へ
一体に延設されている。14は伝動ケース本体13の外側を
覆い伝動ケース本体13との間にＶベルト伝動装置３を収
容するＶベルト室15を形成する伝動ケースカバーで、こ
の伝動ケースカバー14は、前記遠心クラッチ９を覆って
外側方へ突出する凸状部14aが後部に一体に形成されて
いる。この伝動ケースカバー14の後部下側には、図示し
ないがＶベルト室15内の空気を外部に排出する排気口が
設けられている。

21はエンジン本体２から後方へ離されて伝動ケース５
の中央部上方、すなわち前記遠心クラッチ９の前上方付
近に配設されたエアクリーナ、22はエンジン本体２の上
方に配設された気化器であり、前記エアクリーナ21とは
別に設けられた図示しないエアクリーナに接続されてい
る。エアクリーナ21は上下に２分割された上ケース21a
および下ケース21bから箱形状に形成されており、これ
らケース間に内部を上下２室に画成するクリーナエレメ
ント23が支持プレート24を介して挾持されている。そし
て、上ケース21aの前部には吸気口が下方へ開口され、
下ケース21bの底部には排気口25が開口されている。

31は前記伝動ケースカバー14の側壁を外側へ膨出させ
た膨出部である。この膨出部31は、前記伝動ケースカバ
ー14の外側壁の上下方向の中間部を、前記冷却送風ファ
ン12の中央部に対応する部位から前記凸状部14aにわた
る範囲において外側方へ膨出させることによって形成
し、その断面形状は縦長とされている。また、この膨出
部31の後部は、前記遠心クラッチ９の外周囲に沿って後
上がりに伝動ケースカバー14の上面付近まで延在してお
り、上壁には平面視前後方向に長い長孔状を呈する連通
口32が開口されている。33はこの連通口32とエアクリー
ナ21の排気口25との間を接続するゴム製のダクトであ
り、上端はエアクリーナ21の筒部に被冠され、下端は連
通口32に嵌着されている。すなわち、膨出部31内は上側
においてエアクリーナ21と連通されている。

35は膨出部31を内側から覆い、膨出部31内とＶベルト
室15との間を画成することによって、吸気通路36を形成
する仕切板である。この仕切板35は突起37に螺合するね
じ38で伝動ケースカバー14に固定されている。この固定
部の一部は、第３図に示すように、仕切板35の前端部に
配設されている。また、仕切板35における前記膨出部31
の前端壁31aと対向する前端には、第２図に示すよう
に、円弧状の切欠き39が形成されている。この切欠き39
と前記前端壁31aとによって、前記送風冷却ファン12の
中央部と対応する部位において吸気通路36をＶベルト室
15と連通させる開口が形成されている。すなわち、吸気
通路36は仕切板35および伝動ケースカバー14の壁面を側
壁として形成され、上流側は連通口32からダクト33を介
してエアクリーナ21に連通されている。前記ダクト33
は、第１図に示すように、前記連通口32の上面から伝動
ケース本体13における車体内側の端部まで水平方向に延
びる構造になっている。下流側は冷却送風ファン12の中
央部に対向して開口され、Ｖベルト室15に連通されてい
る。なお、40は仕切板35の縁部に貼着されたウレタンフ
ォームなどからなるシール材で、仕切板35と伝動ケース
カバー14との間をシールしている。

このように構成された車両用Ｖベルト伝動装置の冷却
装置においては、外気は吸気口からエアクリーナ21内に
吸い込まれ、クリーナエレメント23を通過して濾過され
た後、第２図において矢印で示したように、ダクト33か
ら吸気通路36内へと流入する。そして、冷却送風ファン
12によって仕切板35の切欠き39で形成された開口からＶ
ベルト室15内へ流入し、Ｖベルト11を冷却した後に伝動
ケースカバー14の後部に設けられた排気口から外部に排
気される。

ここで、吸気通路36を膨出部31とＶベルト室15との間
を仕切板35で画成することによって形成したから、吸気
通路36を形成するために伝動ケースカバー14の側壁を利
用することができる。したがって、吸気通路36と伝動ケ
ースカバー14とを近接させ、吸気通路36が外側方向へ突
出するのを、伝動ケースカバー14とは別体の吸気通路形
成部材で吸気通路を形成する場合に比較して、相対的に
抑えることができる。その結果、Ｖベルト伝動装置３の
幅寸法が拡くなるのを抑えて車両を構成する他の部材と
干渉するのを防止することができる。しかも、伝動ケー
スカバー14は走行時の振動や衝撃によっても外れること
がなく、吸気通路36が大気に開放されるようなことがな
いから、Ｖベルト室15内に塵埃等が侵入するおそれもな
い。

また、膨出部31の壁面によって伝動ケースカバー14に
凹凸を形成し、この凹凸によって伝動ケースカバー14を
補強することができる。そのため、伝動ケースカバー14
の曲げや捩じりに対する剛性を高めることができるか
ら、伝動ケースカバー14が共鳴するのを防止してびびり
音を低減させることができる。

〔発明の効果〕

以上説明したように本発明に係る車両用Ｖベルト伝動
装置の冷却装置は、エンジン本体のクランクケースの一
側から車体の後方へ一体に延びる伝動ケース本体の外側
を伝動ケースカバーで覆うことによって、内部にＶベル
ト室を形成する伝動ケースを構成し、この伝動ケース内
の前部に、クランク軸端に軸装され外側面に冷却送風フ
ァンが設けられた駆動プーリを配設し、かつ後部に従動
プーリを配設してこれら両プーリ間にＶベルトを掛け渡
し、前記従動プーリの外側方に従動プーリの回転を後輪
へ伝達する遠心クラッチを配置するとともにこの遠心ク
ラッチを覆って外側方へ突出する凸状部を前記伝動ケー
スカバーの後部に形成し、前記伝動ケースの上方に配置
したエアクリーナからＶベルト室内に前記冷却送風ファ
ンによって外気を導入する車両用Ｖベルト伝動装置の冷
却装置であって、前記伝動ケースカバーの外側壁の上下
方向の中間部を、前記冷却送風ファンの中央部に対応す
る部位から前記凸状部にわたる範囲において外側方へ膨
出させ、この膨出部の後部を、遠心クラッチの外周囲に
沿って後上がりに伝動ケースカバーの上面付近まで延在
させ、この膨出部とＶベルト室との間を仕切板で画成す
ることにより伝動ケース内に吸気通路を形成し、この膨
出部の前端壁とこれに対向する仕切板の前端に形成した
切欠きとによって形成された開口を介して前記Ｖベルト
室と吸気通路を互いに連通させ、前記仕切板を、前記伝
動ケースカバーに固定部の一部を仕切板の前端部に配設
して固定し、前記エアクリーナを、前記遠心クラッチの
前上方付近であって前記伝動ケース本体の上方に配置す
るとともに、前記膨出部の後端上面に開口させた連通口
に、この連通口の上面から伝動ケース本体における車体
内側の端部まで水平方向に延びるダクトを介して接続し
たため、吸気通路の形成に伝動ケースカバーの側壁を利
用することができる。

したがって、吸気通路と伝動ケースカバーとを近接さ
せ、吸気通路が外側方向へ突出するのを抑えることがで
きるから、幅寸法が拡くなるのを抑えて車両を構成する
他の部材と干渉するのを防止することができる。しか
も、吸気通路の約半分を伝動ケースによって形成したた
め、吸気通路形成部材が大きく変形することがなく、走
行時の振動や衝撃によっても外れることがないから、Ｖ
ベルト室内に塵埃等が侵入するおそれもない。

また、膨出部で伝動ケースカバーを補強し剛性を高め
ることができるので、びびり音を低減させることができ
る。さらに、吸気通路を、伝動ケースの前部に存在する
冷却送風ファンの中央部に対応する部位から後部の遠心
クラッチに至るように延在させるとともに、遠心クラッ
チの外周囲に沿って後上がりに延ばして伝動ケースカバ
ーの膨出部の上面に連通口として開口させ、かつこの連
通口から伝動ケースの車体内側の端部まで水平に延びる
ダクトを介してエアクリーナに連通させたので、冷却送
風ファンとエアクリーナとを連通する吸気通路の通路長
を長くとることができる。

このため、冷却送風ファンが回転することにより生じ
る風切り音がエアクリーナの空気入口となる吸気口から
外部に漏れ難くなって騒音を低減できる。

さらにまた、仕切板を伝動ケースカバーに固定したの
で、伝動ケースカバーを伝動ケース本体から取り外すだ
けでＶベルト室が露出するから、Ｖベルトなどの整備を
容易に行うことができる。

その上、伝動ケースカバーの膨出部の前端壁とこれに
対向する仕切板の前端の切欠きとによって形成された開
口を介してＶベルト室と吸気通路を互いに連通させたの
で、伝動ケースカバーの膨出部の前端壁を利用して吸気
通路の冷却送風ファン側開口の一部を形成できるから、
開口全体を仕切板に形成する場合に較べて仕切板の全長
が短くてよい。

加えて、仕切板を伝動ケースカバーに固定するに当た
って、伝動ケースカバーに固定する固定部の一部を仕切
板の前端部に配設したため、仕切板の前端部、すなわち
冷却送風ファンの近傍を伝動ケースカバーに固定できる
から、仕切板のばたつきによる冷却送風ファンとの干渉
が確実に防止でき、その分伝動ケースを幅方向にコンパ
クトに形成できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る車両用Ｖベルト伝動装置の冷却装
置が備えられたユニットスイング式エンジンを示す第２
図のＩ−Ｉ線断面図、第２図はユニットスイング式エン
ジンを示す側面図、第３図は同じく平面図である。 11……Ｖベルト、12……冷却送風ファン、14……伝動ケ
ースカバー、15……Ｖベルト室、21……エアクリーナ、
31……膨出部、35……仕切板、36……吸気通路。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】エンジン本体のクランクケースの一側から
   車体の後方へ一体に延びる伝動ケース本体の外側を伝動
   ケースカバーで覆うことによって、内部にＶベルト室を
   形成する伝動ケースを構成し、この伝動ケース内の前部
   に、クランク軸端に軸装され外側面に冷却送風ファンが
   設けられた駆動プーリを配設し、かつ後部に従動プーリ
   を配設してこれら両プーリ間にＶベルトを掛け渡し、前
   記従動プーリの外側方に従動プーリの回転を後輪へ伝達
   する遠心クラッチを配置するとともにこの遠心クラッチ
   を覆って外側方へ突出する凸状部を前記伝動ケースカバ
   ーの後部に形成し、前記伝動ケースの上方に配置したエ
   アクリーナからＶベルト室内に前記冷却送風ファンによ
   って外気を導入する車両用Ｖベルト伝動装置の冷却装置
   であって、前記伝動ケースカバーの外側壁の上下方向の
   中間部を、前記冷却送風ファンの中央部に対応する部位
   から前記凸状部にわたる範囲において外側方へ膨出さ
   せ、この膨出部の後部を、遠心クラッチの外周囲に沿っ
   て後上がりに伝動ケースカバーの上面付近まで延在さ
   せ、この膨出部とＶベルト室との間を仕切板で画成する
   ことにより伝動ケース内に吸気通路を形成し、この膨出
   部の前端壁とこれに対向する仕切板の前端に形成した切
   欠きとによって形成された開口を介して前記Ｖベルト室
   と吸気通路を互いに連通させ、前記仕切板を、前記伝動
   ケースカバーに固定部の一部を仕切板の前端部に配設し
   て固定し、前記エアクリーナを、前記遠心クラッチの前
   上方付近であって前記伝動ケース本体の上方に配置する
   とともに、前記膨出部の後端上面に開口させた連通口
   に、この連通口の上面から伝動ケース本体における車体
   内側の端部まで水平方向に延びるダクトを介して接続し
   たことを特徴とする車両用Ｖベルト伝動装置の冷却装
   置。