JP2522821Y2 - 燃料噴射装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は燃料噴射装置に関し、さらに詳しくは、ディ
ーゼルエンジンの列型燃料噴射ポンプにおけるプランジ
ャとこのプランジャを嵌合させているスリーブとによる
燃料圧送構造に関する。

（従来の技術） 周知のように、ディーゼルエンジンに用いられる列型
噴射ポンプにあっては、燃料の圧送構造として、ポンプ
エレメントを構成するシリンダのプランジャバレルに形
成してあるスピルポート（燃料逃し孔）に対して、この
プランジャバレル内を摺動するプランジャに形成してあ
る傾斜したピランジャリードを対向させるまでの間の期
間を燃料の圧送期間として設定する構造がある。

ところで、上述した構造にあっては、プランジャがカ
ムにより駆動されるようになっているために、エンジン
回転数の変化により、燃料の噴射圧力が一定にならず、
高回転では高圧に、そして低回転では低圧になる。そし
てこのような現象は、燃料の微細化に影響を及ぼし、高
速回転時の燃料噴射の高圧化は、燃料噴霧内への空気導
入量を増加させて噴霧の平均空気過剰率を上昇させるこ
とから、良好な混合気の形成促進にとって良い結果を得
られるが、この反面、噴射圧力が低くなる低回転時に
は、このような結果が得られなくなる。

このため、低回転時での噴射ポンプの送油率を増加さ
せる目的で、低回転時の送油率にあわせて噴射ポンプ内
での燃料噴射圧力を高めようとすると、高回転時には過
剰な噴射管内圧力となり、構造的に剛性を高めたりする
必要が生じ、このことが生産コストの上昇を招くことに
なり、やみくもに上述した考えを踏襲することはできな
いという問題があった。

そこで、このような燃料噴射圧力の設定における問題
に鑑み、第８図に示すように、プランジャに形成してあ
るプランジャリードに対向するプランジャバレルにおけ
るスピルポートの位置を変化させてプレストロークを可
変とする構造が本考案者により提案された。

すなわち、第８図は、上述した構造の要部を示す斜視
図であり、同図において、プランジャリード1Aを周面に
備えたプランジャ１を嵌合しているシリンダ内のプラン
ジャバレル２の一部を分離されてプランジャ１上を摺動
できるコントロールスリーブ３とされている。このスリ
ーブ３は、プランジャバレル２内に形成される燃料溜り
室2A内に配置されている。

そして、コントロールスリーブ３には、径方向に貫通
するスピルポート3Aが形成してあり、周面の一部に嵌合
するピン4Aを周面に固定している回転可能なコントロー
ルロッド４をロータリーソレノイド５により回転変位さ
せることで、第９図に示す燃料圧送終了までの行程にお
けるプランジャ１のプランジャスリーブに対するスピル
ポートの位置をプランジャ１の軸方向で変化させ、圧送
開始時期までのプレストロークを変化させるようになっ
ている。

このような構造においては、第10図に示すように、低
回転時には、プレストロークを大きくすることによりプ
ランジャ速度を高くして送油率を増加させ、また高回転
時には、プレストロークを小さくすることにより、従来
通りの送油率を維持させるようにしてある。つまり、高
速回転時には、プランジャリード1Aとスピルポート3Aと
の対応時期を早めることで燃料噴射圧力を低下させて過
剰な高圧による弊害をなくすようになっている。

（考案が解決しようとする課題） ところで、上述した燃料噴射ポンプを備えたディーゼ
ルエンジンにあっては、コントロールスリーブの位置、
換言すれば、燃料の圧力開始時期を設定するにあたり、
一々、回転数を検知したうえでその回転数に応じた圧送
開始時期を例えば演算制御部により割り出して第10図に
示したようなマップ上で設定することが必要となる。

しかも、上述した燃料噴射装置においては、第９図
（Ｂ）に示すように、プランジャの移動により燃料の圧
送が開始される時期は噴射量に関係なくプランジャにお
けるサクションポートの下縁部がコントロールスリーブ
の下辺に差しかかった直後に一致するようになっている
ことから、駆動カムのストロークが比較的少ない時期に
開始され、これによって、圧力が比較的低い状態で燃料
の噴射が行なわれることになる。

このことは、噴射圧力が低い状態である低速回転時に
おいても起こり、結果として、コントロールスリーブの
移動量を設定したらそれ以上の高圧噴射を望めず、逆
に、さらに高圧噴射を要求する場合には、再度コントロ
ールスリーブの位置設定が必要になる煩わしさがあっ
た。また、噴射圧力が低いと、燃料送油率が低く燃料の
微粒化も図りにくい。

そこで、本考案の目的は、上述したプレストロークの
可変型燃料噴射装置において、コントロールスリーブの
位置制御における不具合を解消すると共に、簡単な構造
により噴射特性、特にコントロールスリーブの位置調整
で設定されるプレストロークにより得られる噴射圧力以
上の圧力を以って燃料噴射が行なえる構造を備えた燃料
噴射装置を得ることにある。

（課題を解決するための手段） この目的を達成するため、本考案は、燃料圧送用プラ
ンジャを嵌合しているプランジャバレルの一部に燃料溜
り室を形成し、この燃料溜り室内で上記プランジャの軸
方向に移動できるように上記プランジャに嵌挿したスリ
ーブを配置し、このスリーブに、上記プランジャの周面
に形成され且つ上記プランジャの内部を通って上記プラ
ンジャの端面に連通する噴射用燃料調量用のプランジャ
リードと対面する燃料逃し孔を形成した構造とし、上記
スリーブをプランジャの移動方向に変位させることで上
記プランジャリードに対するプレストロークを変化させ
ることのできる燃料噴射装置において、上記噴射用燃料
調量用のプランジャリードを燃料の圧送終了時期が噴射
量に拘らず同時期とできる辺を上部に位置させ、燃料の
圧送開始時期が上記燃料の噴射量に応じて変化する傾斜
辺を下部に位置させた略三角形状の面部で構成したこと
を特徴としている。

（作用） 本考案によれば、プランジャが燃料の圧送方向に移動
する段階において、コントロールスリーブの下辺に対す
るプランジャリードの圧送開始時期設定用の傾斜辺は、
プランジャとスリーブとの間の相対回転により設定さ
れ、噴射量に応じて燃料逃し孔との対向位置が変化させ
られ、換言すれば、燃料の圧送開始時期が変化させられ
る一方、コントロールスリーブの上辺に対するプランジ
ャリードの噴射終了時期設定用辺が噴射量に拘らず同時
期に対向する。

（実施例） 以下、第１図乃至第７図において、本考案実施例の詳
細を説明する。

第１図は本考案実施例による燃料噴射装置の要部を示
す第８図相当の模型図であり、第８図に示したものと同
一構成部品については同符号により示してある。

本実施例の特徴は、従来、傾斜溝により形成してある
プランジャリードを、燃料の圧送終了時期が燃料の噴射
量に拘らず同時期に設定される辺部、換言すれば、噴射
量に拘らずコントロールスリーブの上辺に同時に対向す
る水平辺とプランジャの回転により設定される燃料の噴
射量に応じてコントロールスリーブの下辺との対向時期
を変えることのできる傾斜辺から成る横向きの略三角形
とした凹面部で構成したことにある。

すなわち、上述したプランジャ１側のプランジャリー
ド1Aは面部で構成してあり、この面部の形状としては、
プランジャバレル２に形成した燃料溜り室2A内に配置さ
れたコントロールスリーブ３の上辺3Bに平行する水平辺
1A1と、コントロールスリーブ３の下辺3Cに対し、プラ
ンジャ１を回転させることで燃料の噴射量を設定するた
めの圧送開始時期を異ならせることのできる傾斜辺1A2
とを上下方向で対向させた横向きの略三角形とされてい
る。そして、この三角形における水平辺1A1と傾斜辺1A2
との交差部は、最小噴射量を設定するための大きさに設
定されている。

なお、第１図において、符号3Aはスピルポートを、そ
して符号1Bはサクションポートをそれぞれ示している。

また、プランジャリード1Aにおける各辺部1A1、1A2と
コントロールスリーブ３の上下各辺3B、3Cおよびスピル
ポート3Aとの位置関係は、第２図に示すように、プラン
ジャ１の摺動方向において次のように設定してある。

すなわち、本実施例にあっては、例えば、最少噴射量
を設定する場合でいうと、プランジャリード1Aがスピル
ポート3Aを通過した直後から圧送期間が開始されるよう
にしてあり、このため、コントロールスリーブ３の下辺
3Cからスピルポート3Aの上縁部に至る距離（ｃ）がプラ
ンジャリード1Aにおける水平辺1A1と傾斜辺1A2とを結ぶ
底辺1A3の長さ（ｂ）よりも小さくしてある（第２図
（Ａ）参照）。

従って、プランジャリード1Aがスピルポート3Aを通過
するまでの間、噴射ポンプ内の圧送室と連通した状態と
され、圧力の上昇は生じない。

また、上述した圧送開始時期を設定するために、上記
距離（ｃ）に対し、プランジャリード1Aにおける上記底
辺1A3の下部から水平辺1A1と傾斜辺1A2との交差部の下
縁部に至る距離（ｄ）を大きく設定してある（第２図
（Ｂ）参照）。

従って、プランジャリード1Aは、交差部の下縁部がス
ピルポート3Aの上縁部を通過した直後にサクションポー
ト1Bを閉じられることで燃料の圧送を開始する。

さらに、燃料噴射の終了時期を噴射量に拘らず同時に
するため、コントロールスリーブ３の上辺3Bからスピル
ポート3Aの上縁部に至る距離（ａ）に対し、そのスピル
ポート3Aの上縁部を基準としたプランジャリード1Aにお
ける底辺1A3の長さ（ｂ）を長く設定してある（第２図
（Ｃ）参照）。

従って、プランジャリード1Aは、スピルポート3Aを通
過して圧送期間を設定されながら移動し、底辺1A3の下
部がスピルポート3Aを上縁部に差しかかった時点で、水
平辺1A1の全てがコントロールスリーブ３の上辺3Bから
外れることで圧送を停止する。

本実施例は以上のような構造であるから、第３図
（Ａ）に示すように、図示しない駆動カムの駆動により
プランジャ１が上昇する過程において、プランジャリー
ド1Aは、スピルポート3Aと対向しない間、ポンプ内の圧
力室に連通しており、この状態では、圧送圧力が生じな
い。

そして、さらにプランジャ１の上昇が継続されてプラ
ンジャリード1Aにおける交差部の下縁部がスピルポート
3Aの上縁部に差しかかると、プランジャリード1Aと圧力
室との連通が遮断されて圧送を開始される（第３図
（Ｂ）参照）。

そして、スピルポート3Aの上縁部を通過したプランジ
ャリード1Aは、第３図（Ｄ）に示すように、水平辺1A1
がコントロールスリーブ３の上辺を超えるまでの間を燃
料の圧送期間として設定する。

そして、上述したように、プランジャリード1Aの水平
辺1A1がコントロールスリーブ３の上辺3Bを超えるとポ
ンプ内の圧力室との連通が再開されて圧送圧力の低下を
来たし、燃料の圧送が停止される。

本実施例においては、燃料の圧送開始時期を、コント
ロールスリーブに有するスピルポートを通過した後に設
定したので、第４図および第５図に示すように、従来の
もの（第５図）に比べ、一定噴射率を条件として比較し
た場合、従来の圧送開始時期に相当するクランク角（θ
₁）に対して、進角（θ₂）した位置で噴射を開始させる
ので、噴射開始時での圧送圧力を高くすることができ
る。

つまり、第６図において、本実施例は従来の者に比較
してカムリフトが大きい位置、換言すれば、カム速度が
高い時期を圧送期間として設定しているので、高圧噴射
を可能にすることができる。

なお、上述したような、圧送開始時期を噴射量により
異ならせる傾斜辺の構造としては、プランジャリードで
構成する代わりに、第７図に示すように、プランジャ１
を摺動可能に支持しているコントロールスリーブ３の下
側の辺をプランジャリードにおける傾斜辺と同じ形状と
し、プランジャ側のプランジャリードを従来と同様に傾
斜溝のままとても良い。

（考案の効果） 以上、本考案によれば、プランジャに形成されたプラ
ンジャリードを、主噴射終了時期が噴射量に拘らず同時
期とできる辺と、燃料圧送開始時期を上記燃料の噴射量
に応じて変化させる傾斜辺とを設定された略三角形状の
面部で構成したので、燃料の圧送停止をコントロールス
リーブの上辺により設定することができ、これにより、
圧送開始時期をプランジャの移動速度が早くなる時期ま
で変化させることで圧送圧力を上昇させることができ
る。従って、速度域に応じてコントロールスリーブの位
置を調整し、噴射開始時期を設定した場合においても、
この時期設定による噴射圧力以上で燃料の噴射を行わす
ことが可能になり、燃料噴射量が少ない時にも平均送油
率を高め燃料噴霧の微粒化を図り、ディーゼルエンジン
で問題となる黒煙やパティキュリート等の排気ガス性能
を改善できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案実施例による燃料噴射装置における噴射
ポンプの要部構造を説明するための模型図、第２図は第
１図に示した要部の特性を説明するための第１図相当の
模型図、第３図は第１図に示した要部の作用を説明する
ための第１図相当の模型図、第４図は第１図に示した要
部の圧力特性を説明するための線図、第５図は従来の噴
射ポンプにおける圧力特性を説明するための第４図相当
の線図、第６図は第１図に示した要部の作用を説明する
ための特性線図、第７図は第１図に示した要部の変形例
を示す第１図相当の模型図、第８図は従来のプレストロ
ーク可変型の燃料噴射装置における可変機構を示す斜視
図、第９図は第８図に示した機構の作用を説明するため
の第３図相当の模型図、第10図は第８図に示した機構の
特性を説明するための線図である。 １…プランジャ、1A…プランジャリード、1A1…水平
辺、1A2…傾斜辺、1A3…底辺、２…プランジャバレル、
2A…燃料溜り室、３…コントロールスリーブ、3A…スピ
ルポート。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】燃料圧送用プランジャを嵌合しているプラ
   ンジャバレルの一部に燃料溜り室を形成し、この燃料溜
   り室内で上記プランジャの軸方向に移動できるように上
   記プランジャに嵌挿したスリーブを配置し、このスリー
   ブに、上記プランジャの周面に形成され且つ上記プラン
   ジャの内部を通って上記プランジャの端面に連通する噴
   射用燃料調整用のプランジャリードと対面する燃料逃し
   孔を形成した構造とし、上記スリーブを上記プランジャ
   の移動方向に変位させることで上記プランジャリードに
   対するプレストロークを変化させることのできる燃料噴
   射装置において、 上記噴射用燃料調量用のプランジャリードを、燃料の圧
   送終了時期が噴射量に拘らず同時期とできる辺を上部に
   位置させ、燃料の圧送開始時期が上記燃料の噴射量に応
   じて変化する傾斜辺を下部に位置させた略三角形状の面
   部で構成したことを特徴とする構造を備えた燃料噴射装
   置。