JP2522812Y2 - 内燃機関用ピストン - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この考案は、外周部にピストンリング溝を有する有蓋
円筒状の上部体下側の形状を骨格構造として、軽量化及
びスカート摺動面積減少を図った、いわゆるスケルトン
型ピストンからなる内燃機関用ピストンに関するもので
ある。

［従来の技術］ 従来、この種の技術として、例えば特開昭58-65952号
公報において「内燃機関用ピストン」が提案されてい
る。即ち、この内燃機関用ピストンは、第５図に示すよ
うに上部体21を有蓋円筒状に形成し、その上部体21の外
周部に複数のピストンリング溝22を設けると共に同ピス
トンリング溝22の下側外周部に上部スカート23を設け、
更に下部体24を骨格構造に形成してその一部に前記上部
スカート23から分離した下部スカート25を設けている。

［考案が解決しようとする課題］ ところが、前記従来例の内燃機関用ピストンでは、構
造上、その上部体21の重量の方が下部体24の重量よりも
大きくなっており、ピストン全体の重心がピストンピン
ボス26の中心位置Ｐよりも上側に偏りがちになってい
た。このため、上下運動時におけるピストン姿勢が不安
定となって揺動（首振り）が多くなり、摩耗やスカッフ
ィングの原因となって、第6,7図に示すようにピストン
姿勢が悪い分だけオイル消費やスラップ音が大きくなり
問題となっていた。

この考案は前述した事情に鑑みてなされたものであっ
て、その目的は、上下運動時におけるピストン姿勢を安
定化して、摩耗やスカッフィングを小さくすることが可
能な内燃機関用ピストンを提供することにある。

［課題を解決するための手段］ 上記の目的を達成するために、この考案においては、
有蓋円筒状をなす上部体と、下部体とを備え、全体の重
心が前記下部体よりも上部体に偏るものであり、下部体
が上部体から延設されたピストンピンボスと、そのピス
トンピンボスから延設された支持体と、その支持体に一
体に設けられたピストンスカートとを含んでなる内燃機
関用ピストンにおいて、下部体の重量を増大させるため
に、ピストンピンボスの中心位置よりも下側に位置する
ピストンピンボス、支持体及びピストンスカートの少な
くとも一つにつき、特定された部位の外形寸法を他の部
位よりも大きく設定している。

［作用］ 上記の構成によれば、下部体を構成するピストンピン
ボス、支持体及びピストンスカートの少なくとも一つに
つき、特定された部位の外形寸法を他の部位よりも大き
く設定している。ここで、下部体の上記各部における特
定の部位の外形寸法が他の部位よりも大きく設定される
ことにより、その特定の部位における重量が増大する。
従って、その特定の部位において重量が増大した分だけ
下部体の重量が増大し、その分だけピストンの重心が上
部体から下部体へ偏り、ピストンの重心がピストンピン
ボスの中心に近くなる。

［実施例］ 以下、この考案を具体化した第１実施例を図面に基づ
いて詳細に説明する。

第１図はこの実施例の内燃機関用ピストン１を示す正
面図であり、第２図はその段面図である。

このピストン１は、３つのピストンリングを組付ける
ための３つのピストンリング溝を備えたタイプのもので
あり、有蓋円筒状をなす上部体２と骨格構造をなす下部
体３とから構成され、全体が均等な材質によって一体成
形されている。

上部体２の外周部には、上からトンプリング溝４、セ
カンドリング溝５及びオイルリング溝６が互いに平行に
形成されている。そして、トップリング溝４及びセカン
ドリング溝５にはコンプレッションリングがそれぞれ組
み付けられ、オイルリング溝６にはオイルリングが組み
付けられるようになっている。前記オイルリング溝６の
内壁には、上部体２の内側に連通するオイル戻し穴７が
形成されている。このオイル戻し穴７は、オイルリング
によって掻き落とされるエンジンオイルの一部を上部体
２の内側へ戻すためのものである。又、そのオイルリン
グ溝６の下側外周部において、ピストン１のスラスト側
及び反スラスト側には、下方へ突出する一対の上部スカ
ート8A（スラスト側）、上部スカート8B（反スラスト
側）が形成されている。これら上部スカート8A,8Bの外
周面下端には内側下方へ傾斜する面取り8aが形成されて
いる。

一方、下部体３はそのフロント側及びリア側の中央に
ピストンピン装着用の一対のピストンピンボス９を備
え、各ピストンピンボス９の両側には横方向へ延びる支
持体10A（スラスト側）、支持体10B（反スラスト側）が
形成され、更にそれら支持体10A,10Bの先端側にはピス
トンスカートとしての円弧状の外周面を有する一対の下
部スカート11A、下部スカート11Bが形成されている。こ
の下部スカート11A,11Bは上部スカート8A,8Bと同じくピ
ストン１のスラスト側及び反スラスト側に形成されたも
のであり、上部スカート8A,8Bから分離してその上部ス
カート8A,8Bに対して並列に形成されている。又、下部
スカート11A,11Bの外周面上端には内側上方へ傾斜する
面取り11aが形成されている。

又、一般に、ピストン上下運動の際には、コンロッド
及びクランクシャフトとの連結関係からピストン外周面
のスラスト側がシリンダボアに強く押圧されることにな
る。そこで、これに対処するために、この実施例のピス
トン１においても、周知のようにピストンピンボス９の
中心位置Ｐがピストン１の中心軸線Ｌよりもスラスト側
へ僅かな間ｆだけオフセットされ、スラスト側摺動面に
おける衝撃、摩耗等を小さくするようにしている。

そして、この実施例のピストン１では、下部体３にお
ける反スラスト側の支持体10Bの剛性を相対的に高くす
るために、第１図に示すように反スラスト側の支持体10
Bの幅W1をスラスト側の支持体10Aの幅W2よりも相対的に
大きく形成している。しかも、この実施例では、ピスト
ン１のフロント側及びリア側の両方の支持体10A,10Bの
幅W1,W2について同様の設定がなされている。

従って、ピストン１の全体が一体成形されて均等な材
質となっているので、一方の支持体10Bの幅W1を大きく
したことにより、その分だけ下部体３の重量が相対的に
増大し、その分だけピストン１の重心が上部体２から下
部体３へ偏り、ピストン１全体の重心がピストンピンボ
ス９の中心位置Ｐに近づくことになる。

このため、前記ピストン１を内燃機関のシリンダボア
に装着して使用した場合に、ピストン１が低重心である
ことから、その上下運動時におけるピストン１の姿勢が
より安定化することになる。即ち、上下運動時における
ピストン１の揺動（首振り）が少なくなる。この結果、
シリンダボアとの摺動による摩耗やスカッフィングを低
減することができ、オイル消費やスラップ音を低減する
ことができる。

又、ピストン１の姿勢が安定化することから、コンプ
レッションリングにおけるシール性を向上させることが
でき、ブローバイガス量を減少させてブローバイガス混
入によるエンジンオイルの希釈化、汚濁化を低減するこ
とができる。更に、ピストン１とシリンダボアとの隙間
を常に小さく維持することができるので、ピストン１に
よる実圧縮比を向上させることができ、燃焼室内におけ
る燃料燃焼を良好にして燃費を向上させることができ
る。

しかも、この実施例のピストン１では、ピストンピン
ボス９の中心位置Ｐをスラスト側にオフセットしたこと
によって、相対的に荷重変形の大きくなる反スラスト側
支持体10Bの剛性を高くして、両支持体10A,10Bの剛性を
均等化することができる。これによって、シリンダボア
に対する両下部スカート11A,11Bの適合の自由度を大き
くすることができ、その摩耗やスカッフィングを更に低
減することができる。

尚、この実施例のピストン１では、下部体３の一部と
して一方の支持体10Bの重量を僅かに大きくしただけな
ので、ピストン１の軽量化に及ぼす影響は非常に少なく
問題となはならない。

［第２実施例］ 次に、この考案を具体化した第２実施例に第３図に従
って説明する。尚、この実施例において、前記第１実施
例と同様の要素については同様の符号を付して説明を省
略し、異なった点についてのみ説明を行う。

第３図はこの実施例のピストン15を示す底面図であ
る。前記第１実施例では、下部体３における反スラスト
側の支持体10Bの幅W1をスラスト側の支持体10Aの幅W2よ
りも大きく形成してその剛性を高くしたが、この実施例
のピストン15では、両支持体10A,10Bの幅を同じとし、
その肉厚D1,D2を異にしている。即ち、反スラスト側の
支持体10Bの肉厚D1をスラスト側の支持体10Aの肉厚D2よ
りも大きく形成してその剛性を高くしている。しかも、
ピストン15のフロント側及びリア側の両方の支持体10A,
10Bについてその肉厚D1,D2を異にしている。尚、この実
施例のピストン15においても、下部体３の一部としての
支持体10Bの重量を僅かに大きくしただけなので、ピス
トン15の軽量化に及ぼす影響については問題とならな
い。

従って、ピストン15の全体が一体成形されて均等な材
質となっているので、一方の支持体10Bの肉厚D1を大き
くしたことにより、その分だけ下部体３の重量が相対的
に増大し、その分だけピストン１の重心が上部体２から
下部体３へ偏り、ピストン15全体の重心がピストンピン
ボス９の中心位置に近づくことになる。

このため、前記ピストン15を内燃機関のシリンダボア
に装着して使用した場合に、ピストン15が低重心である
ことから、その上下運動時におけるピストン15の姿勢が
より安定化して、シリンダボアとの摺動による摩耗やス
カッフィングを低減することができ、オイル消費やスラ
ップ音を低減することができる。

又、コンプレッションリングにおけるシール性を向上
させてブローバイガス量を減少させることができ、ブロ
ーバイガス混入によるエンジンオイルの希釈化、汚濁化
を低減することができる。更に、シリンダボアとの隙間
を常に小さく維持して、ピストン15による実圧縮比を向
上させることができ、燃費を向上させることができる。

又、この実施例のピストン15においても、両支持体10
A,10Bの剛性を均等化することができるので、シリンダ
ボアに対する両下部スカート11A,11Bの適合の自由度を
大きくすることができ、その摩耗やスカッフィングを更
に低減することができる。

尚、この考案は前記各実施例に限定されるものではな
く、考案の趣旨を逸脱しない範囲において構成の一部を
適宜に変更して次のように実施することもできる。

（１） 前記第２実施例では、ピストン15のフロント側
及びリア側の両方の支持体10A,10Bについて、反スラス
ト側の支持体10Bの肉厚D1をスラスト側の支持体10Aの肉
厚D2よりも大きく形成してその剛性を高くしたが、第４
図に示すように、ピストン15のリア側に位置するスラス
ト側及び反スラスト側の両方の支持体10Dの肉厚D3を、
フロント側に位置するスラスト側及び反スラスト側の両
方の支持体10Cの肉厚D4よりも大きく形成することによ
り、その剛性を他の部位よりも高くしてもよい。

（２） 前記各実施例では、下部体３における反スラス
ト側の支持体10Bの幅W1を大きく形成したり、同じく支
持体10Bの肉厚D1を大きく形成したりして剛性を高くし
たが、各支持体の補強用として設けられるリブの寸法や
肉厚を大きく形成したり、ピストンピンボスの肉厚を大
きく形成したり、或いは下部スカートの肉厚を大きく形
成したりして剛性を高くしてもよい。

（３） 前記各実施例では、３つのピストンリングを組
付けるための３つのピストンリング溝を備えたタイプの
ピストン1,15に具体化したが、２つのピストンリングを
組付けるための２つのピストンリング溝を備えたタイプ
のピストンに具体化してもよい。

［考案の効果］ 以上詳述したように、この考案の内燃機関用ピストン
によれば、下部体の重量を増大させるために、ピストン
ピンボス、支持体及びピストンスカートの少なくとも一
つにつき、特定された部位の外形寸法を他の部位よりも
大きく設定している。従って、その特定の部位において
重量が増大した分だけ下部体の重量が増大し、その分だ
けピストンの重心が上部体から下部体へ偏り、ピストン
の重心がピストンピンボスの中心に近くなる。その結
果、上下運動部におけるピストン姿勢を安定化すること
ができ、摩耗やスカッフィングを小さくすることができ
るというすぐさた効果を発揮する。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案を具体化した第１実施例における内燃
機関用ピストンを示す正面図、第２図はその断面図であ
る。第３図はこの考案を具体化した第２実施例における
内燃機関用ピストンを示す底面図である。第４図はこの
考案を具体化した別の実施例における内燃機関用ピスト
ンを示す側面図、第５図は従来例における内燃機関用ピ
ストンを示す断面図、第６図及び第７図はピストン姿勢
に対するオイル消費及びスラップ音の関係を説明する図
である。 図中、２は上部体、４はトップリング溝、５はセカンド
リング溝、６はオイルリング溝、９はピストンピンボ
ス、10A〜10Dは支持体、11A,11Bはピストンスカートと
しての下部スカート、W1,W2は幅、D1〜D4は肉厚であ
る。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】有蓋円筒状をなす上部体と、下部体とを備
   え、全体の重心が前記下部体よりも前記上部体に偏るも
   のであり、前記下部体が前記上部体から延設されたピス
   トンピンボスと、そのピストンピンボスから延設された
   支持体と、その支持体に一体に設けられたピストンスカ
   ートとを含んでなる内燃機関用ピストンにおいて、 前記下部体の重量を増大させるために、前記ピストンピ
   ンボスの中心位置よりも下側に位置する前記ピストンピ
   ンボス、前記支持体及び前記ピストンスカートの少なく
   とも一つにつき、特定された部位の外形寸法を他の部位
   よりも大きく設定したことを特徴とする内燃機関用ピス
   トン。