JP2522710B2 - トラス梁のプレストレス導入方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 この発明は、上弦材、下弦材、ラチス材からなるトラ
ス梁に、当該トラス梁の長手方向に沿って配置するPC鋼
材の緊張により下弦材に圧縮応力を上弦材に引張応力を
導入するトラス梁のプレストレス導入方法に関するもの
である。

「従来の技術」 従来におけるトラス梁のプレストレス導入方法として
は、下弦材の端部に定着部を設け、この定着部を貫通さ
せるとともに、前記下弦材に沿ってPC鋼材を配設し、こ
のPC鋼材にプレストレス力を導入した状態で前記定着部
に固定するようにしたものである。

したがって、PC鋼材によって下弦材に圧縮応力を導入
することにより、鉛直方向の荷重で下弦材に発生する引
張力を低減して、下弦材の断面積を小さく設定すること
ができる。

「発明が解決しようとする課題」 ところが、前記従来のトラス梁にプレストレス力を導
入する方法においては、引張力が発生する下弦材に対し
てプレストレス力を導入するようにしている結果、下弦
材の断面積を小さく設定することができる利点がある半
面、圧縮力を受ける上弦材については引張方向へのプレ
ストレス力を導入するようにしていないので、上弦材の
断面積を小さく設定することができなかった。したがっ
て、未だ、トラス梁を合理的かつ経済的に設計している
とは言いがたかった。

この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであっ
て、トラス梁を合理的かつ経済的に設計することのでき
るトラス梁のプレストレス導入方法を提供することを目
的としている。

「課題を解決するための手段」 この発明は、柱本体と該柱本体上に配置される柱頭材
とを有する柱間に架設されるとともに上弦材、下弦材、
ラチス材からなるトラス梁に、当該トラス梁の長手方向
に沿って配置するPC鋼材の緊張により下弦材に圧縮応力
を上弦材に引張応力を導入する方法であって、前記トラ
ス梁の両端部に、当該両端部の補強を兼ねて前記柱頭材
をそれぞれ一体に設けておく工程と、前記PC鋼材の両端
定着部を前記柱頭材にそれぞれ設けるとともに中間部を
下弦材に沿わせて設ける工程と、前記両柱頭材の下端を
対応する柱本体の上端に載せる工程とを有し、これら各
工程の後に前記PC鋼材を緊張して両柱頭材の下端側を互
いに接近させることにより下弦材に圧縮応力を上弦材に
引張応力を導入するようにしたものである。

「作用」 PC鋼材を緊張することによって、柱本体の上端部に載
せられた両柱頭材の下端側を互いに接近させると、それ
ら両柱頭材に一体に設けられたトラス梁のうち下弦材に
は圧縮応力が上弦材には引張応力がそれぞれ導入され
る。

「実施例」 第１図ないし第３図はこの発明の一実施例であって、
図中、符号Ａはトラス梁、符号Ｂはスラブ１上に立設さ
れてトラス梁Ａを架設する柱をそれぞれ示すものであ
る。

前記トラス梁Ａは、所定長さのＨ形鋼からなる上弦材
２と、Ｈ形鋼からなりかつ２箇所の折点部3aを有する下
弦材３と、これら両者を連結するラチス材４とから構成
されている。また、前記柱Ｂは、スラブ１上に立設され
た鋼板からなる柱本体５と該柱本体５の上端5aに内方へ
摺同自在に載せられた柱頭材６とから構成されている。

前記柱頭材６は、第２図に示すように、１組のＨ形鋼
からなる側板7,7とこれら側板7,7の下面に固定された底
板８とから構成されており、それら側板7,7は、前記ト
ラス梁Ａの上弦材２および下弦材３の端部2a,3aに側方
から溶接等により固定されている。したがって、このよ
うな構成の柱頭材６はトラス梁Ａの両端部9,9に一体に
設けられているとともに、それら両端部9,9を補強する
役目をも兼ねている。

このようなトラス梁Ａ、柱頭材6,6および柱本体5,5か
らなるラーメン構造において、前記トラス梁Ａには、そ
の長手方向に沿ってトラス梁Ａにプレストレスを導入す
るための１本のPC鋼材（PC鋼棒）10が配設されており、
また、前記柱頭材6,6には、PC鋼材10の両端定着部11,11
がそれぞれ設けられている。

前記PC鋼材10は、その中間部10aが前記トラス梁Ａの
下弦材３の折点部3a,3a間に沿って設けられているとと
もに、その両端部10b,10bが前記柱頭材6,6の側板7,7間
を通って外方へ突出した形態で配設されている。また、
前記両端定着部11は、第３図に示すように、PC鋼材10の
端部10bを定着させる支圧板12と、端部10bに刻設された
ネジ山13と、このネジ山13に螺着されたナット14と、該
ナット14と前記支圧板12との間に挟持されたワッシャー
15とから構成されている。

なお、上記PC鋼材10には、特に下弦材３の折点部3aお
よび柱頭材６間を保護するする塩化ビニール等のさや管
16が被覆されている。また、PC鋼材10としては、PC鋼棒
の他にPCより線を適用してもよい。

次に、トラス梁Ａにプレストレスを導入する方法につ
いて、トラス梁Ａを柱Ｂに架設する作業に沿って説明す
る。

まず、上弦材２、下弦材３、およびラチス材４を互い
に連結してトラス梁Ａを組み立てる。そして、トラス梁
Ａの両端9,9において、上弦材２の端部2aおよび下弦材
３の端部3aに両側方より側板7,7をそれぞれ溶接等によ
り固定し、さらに側板7,7の下面に底板８を固定して、
柱頭材６をトラス梁Ａの両端9,9と一体に設けておく。

次いで、PC鋼材10の中間部10aをトラス梁Ａの下弦材
３に沿わせてその両端部10b,10bをそれぞれ柱頭材６の
側板7,7間から外方へ突出させた状態で、ナット14等に
よりPC鋼材10を支圧板12に定着、仮固定する。

次いで、柱頭材6,6の下端6a,6aをそれぞれ予めスラブ
１上に立設させておいた柱本体5,5の上面5a,5aに載せて
トラス梁Ａを柱Ｂに架設する。

この状態において、PC鋼材10の端部10aをジャッキ等
適宜手段により緊張し、所定の張力ＰをPC鋼材10に導入
した後に、ナット14を緊締してPC鋼材10を支圧板12に定
着、固定する。そして、PC鋼材10に導入された張力Ｐに
応対して両端の柱頭材6,6の下端側が互いに接近する。
これにより、下弦材３に対しては圧縮応力P1のプレスト
レスが、上弦材２に対しては引張応力P2のプレストレス
がそれぞれ導入される。

上記したようにこの実施例のプレストレス導入方法に
よると、トラス梁Ａの両端9,9に柱頭材6,6を一体に固定
して設け、それら柱頭材6,6の下端側をPC鋼材10を介し
て互いに内方へ接近させることによって、下弦材３に圧
縮応力P1のプレストレスを上弦材２に引張応力P2のプレ
ストレスをそれぞれ導入することができる。これによ
り、下弦材３の断面積を小さく設定することができるだ
けでなく、上弦材２の断面積をも小さく設定することが
できる。したがって、トラス梁Ａを合理的かつ経済的に
設計することができる。

なお、PC鋼材10にプレストレスを導入する作業は、ト
ラス梁Ａを柱B,Bに架設した後に限定されるものではな
く、予めトラス梁Ａのプレストレスを導入してからトラ
ス梁Ａを柱B,Bに架設するようにしてもよい。

「発明の効果」 以上詳細に説明したように、この発明は、トラス梁の
両端部に、当該両端部の補強を兼ねて柱頭材をそれぞれ
一体に設けておく工程と、前記PC鋼材の両端定着部を前
記柱頭材にそれぞれ設けるとともに中間部を下弦材に沿
わせて設ける工程と、前記両柱頭材の下端を対応する柱
本体の上端に載せる工程とを有し、これら各工程の後に
前記PC鋼材を緊張して両柱頭材の下端側を互いに接近さ
せることにより下弦材に圧縮応力を上弦材に引張応力を
導入するようにしたので、下弦材の断面積を小さく設定
することができるのみならず、上弦材の断面積をも経済
的に小さく設定することができる。したがって、トラス
梁を合理的かつ経済的に設計することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第３図はこの発明の一実施例であって、第
１図は柱およびトラス梁の構造を示す正面図、第２図は
第１図における円Ｉ内の斜視図、第３図はその側面図で
ある。 ２……上弦材、３……下弦材、４……ラチス材、５……
柱本体、5a……上端、６……柱頭材、6a……下端、９…
…両端部、10……PC鋼材、10a……中間部、11……両端
定着部、

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】柱本体と該柱本体上に配置される柱頭材と
   を有する柱間に架設されるとともに上弦材、下弦材、ラ
   チス材からなるトラス梁に、当該トラス梁の長手方向に
   沿って配置するPC鋼材の緊張により下弦材に圧縮応力を
   上弦材に引張応力を導入する方法であって、前記トラス
   梁の両端部に、当該両端部の補強を兼ねて前記柱頭材を
   それぞれ一体に設けておく工程と、前記PC鋼材の両端定
   着部を前記柱頭材にそれぞれ設けるとともに中間部を下
   弦材に沿わせて設ける工程と、前記両柱頭材の下端を対
   応する柱本体の上端に載せる工程とを有し、これら各工
   程の後に前記PC鋼材を緊張して両柱頭材の下端側を互い
   に接近させることにより下弦材に圧縮応力を上弦材に引
   張応力を導入することを特徴とするトラス梁のプレスト
   レス導入方法。