JP2519023Y2 - 農業機械における穀粒搬送装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は農業機械における穀粒搬送装置、特に脱穀装
置の２番還元装置の改良に関する。

〔従来の技術〕

脱穀装置には扱胴が収容されている扱胴室の下方に揺
動移送選別体が設けられ、これの下方の前方に一番穀粒
移送螺旋（横螺旋）を内蔵した一番穀粒樋が前記揺動移
送選別体を横切る方向に設けられ、そしてこれらの後方
（下流側）に二番物移送螺旋（横螺旋）を収容した二番
物移送樋（横螺旋移送装置）が配置され、この二番物移
送樋により機側に搬送された二番物は、二番物搬送螺旋
（縦螺旋）を内蔵した二番物還元筒（縦螺旋移送装置）
によって揚上されて前記揺動移送選別体の初端側（上流
側）に還元して揺動選別するように構成されている。

つまり、二番物は横螺旋を有する二番物移送樋によっ
て扱胴室の横方に移送され、ここにおいて縦螺旋を有す
る二番物還元筒に受継がれて揺動移送選別体の上流側等
に螺旋搬送されるように構成されているわけである。

ところで、第11図に示すように横螺旋ａを有する二番
物移送樋ｂと縦螺旋ｃを有する二番物還元筒ｄとは、通
常はギヤケースｅを介して直交して二番物を引継いで搬
送するようにしている。この引継部においては移送物で
ある二番物に藁屑等が混入されている関係で、方向転換
される箇所で滞留する傾向がある。そこでこれを防止す
るために二番物還元筒ｄ内の縦螺旋ｃの初端部のみの直
径を拡大して大径の螺旋部分ｆとしたものを使用してい
る。

つまり、二番物還元筒ｄの縦螺旋ｃは、大径の螺旋部
分ｆと、通常の径である小径の螺旋部分ｃとが同一の回
転速度で回転することになるのでそこには移送能力の差
が発生することになる。

換言すれば、大径の螺旋部分ｆにおいては移送物であ
る二番物還元筒ｄ（外筒）の下部の拡大部ｇの内壁面と
大径の螺旋部分ｆとの間に遊び空間ｈが形成されること
になる。この遊び空間ｈにおいては螺旋によって二番物
が押圧される力が低下するために屑の塊が発生し、これ
が縦螺旋の大径の螺旋部分ｆに続く小径の螺旋部分ｃの
外周に長藁が巻付く現象や、筒体ｄの内面と螺旋部分ｆ
との間に噛み込みが発生する現象が発生した。このよう
な現象が発生すると、二番物移送樋ｂと二番物還元筒ｄ
との間の二番物の受継ぎが困難となるばかりか、場合に
よってはこの受継ぎ部分において屑の塊が著しく硬化し
て二番物が移送不能となるような事故が発生したのであ
る。

本考案は、前記従来の農業機械の穀粒搬送装置、特に
脱穀機の殻粒搬送装置の有する問題点を解消するために
得られたものであって、二番物移送樋と二番物還元筒と
の間の受継ぎ部を二番物が円滑に移送される装置を提供
することを目的とするものである。

〔課題を解決するための手段〕

前記目的を達成するための本考案は、水平方向に配置
された横螺旋移送装置と、この移送装置に対して急角度
で連結された縦螺旋移送装置とからなり、該縦螺旋移送
装置は横螺旋移送装置に接合される筒体の下部を上部に
比較して太径に形成し、この大径の部分の螺旋羽根を大
径とし、更に前記筒体の直径が拡大される部分の内面に
被搬送物が螺旋羽根と共に回転するのを防止する回転阻
止体を設けてなる農業機械における穀粒搬送装置であ
る。

〔作用〕

従って、縦螺旋移送装置を構成する大径羽根55で送ら
れてきた藁クズを、回転阻止体60,60aによって抵抗力を
与えるので、筒体のテーパー筒部57等が遊ばせることな
く、小径羽根56に引き継ぐことができる。

また、回転阻止体60,60aで大径羽根55の藁クズの移送
をセーブするので、一時的に大量の藁クズが供給される
ようなことがあっても、一度に小径羽根56側に供給され
ずに、時間差を持って分散されながら供給されるので、
大径羽根55より小径羽根56に至る間の筒体の内面と羽根
との間に藁クズの噛み込みを防止でき、円滑に二番物を
再処理部に移送することができる。

〔実施例〕

以下、本考案の実施例を図面を参照して説明するが、
先づ脱穀装置の全体構成を説明する。

脱穀装置Ｓの前方側に設けた扱室１には、前後方向に
周囲に多数の扱歯３を植設した扱胴４が扱胴軸２に回転
可能に支持され、この扱室１の上面は天板５で閉止され
ると共に、下側に前記扱胴４の周面に沿って扱網６が設
けられている。

前記扱網６の直下には扱室１の下方から後方の選別室
７に向けて延びる揺動移送選別体８が配設されている。
この揺動移送選別体８は扱室１の下方の初端側に下向き
に傾斜したグレンパン９、このグレンパン９の前端に接
続された上向きに傾斜したチヤブシーブ10、このチヤブ
シーブ10の下方に配設されたグレンシーブ11及び選別網
12、この選別網12の先端に距離をおいて配設され、前方
に向けて傾斜する一番穀粒戻し板13、この一番穀粒戻し
板13の後方に接続された上向きに傾斜したストローラッ
ク14、このストローラック14の下方に配設された二番物
戻し板15から構成されている。そしてこの揺動移送選別
体８は第３図の如く左右に配設した両側板16に固定され
ている。

なお、この実施例では、一番穀粒戻し板13の後方にス
トローラック14を接続しているが、このストローラック
14だけでなくチヤフシーブ等の二番選別体を設けること
もできる。

前記揺動移送選別体８は、下端が左右の機壁に揺動自
在に設けられた前部の揺動リンク17と後部の揺動リンク
17aの上端に枢支連結されており、図示しないカム板の
回転に連動して上下および前後に煽動運動するように構
成されている。

前記一番穀粒戻し板13の下方には、一番穀粒移送螺旋
19aを有する一番穀粒樋19が配設され、まが、二番物戻
し板15の下方には、二番物移送螺旋20aを有する二番物
移送樋20が配設され、この二番物移送樋20と前記一番穀
粒移送樋19との間には二番物移送樋20の上方を通りスト
ローラック14の間を吹き抜ける二番物選別風路21に選別
風を送る圧風フアン22が回転自在に設けられている。

また、グレンパン９の下方には圧風フアン23が回転自
在に設けられ、この圧風フアン23からの選別風は上方の
吹出口24aから一番穀粒樋19の上方を通り、選別網12を
吹き抜けるようになっている。

扱室６の前面に開口された扱口には、挟扼レール25と
フイードチエン26とからなる穀稈挟持搬送機構27が配置
され、この穀稈挟持搬送機構27の後端には、脱穀済みの
排藁を後方に向けて搬送する排藁搬送機構29が配設され
ており、この排藁搬送機構29の下方には、排稈を切断す
る排藁カッター30が配設されている。前記穀稈挟持搬送
機構27の扱室６の後端から後方に突出する位置には、搬
送される排稈から落下する刺さり粒を受け止めるフイー
ドパン31が所定の長さにわたって配設され、このフイー
ドパン31は、揺動移送選別体10側に固定され、この揺動
移送選別体体10と一体で揺動されるように構成されてい
る。

前記一番穀粒移送樋19の外側には直立した一番揚穀筒
32の下部が接続され、この一番揚穀筒32内には図示しな
いグレンタンクの上方に連通されている。また、前記二
番物移送樋20の外側には、斜め前方に傾斜した二番物還
元筒33の下部が接続され、この二番物還元筒33内には第
２図及び第３図に示すように二番物搬送螺旋33a（縦螺
旋）が内装されており、この二番物還元筒33の上部に設
けた排出樋33bは揺動移送選別体10の搬送側初端側、つ
まりグレンパン９の側方の機壁に開口された開口孔に固
定され、二番物を側方からグレンパン９上に供給するよ
うにしている。なお、この実施例では、二番物還元筒33
の排出樋33bをグレンパン９上に臨む位置に設けている
が、この排出樋33bは、扱室１の側方に臨ませても良
い。

第２図及び第３図に示す如く、扱室１の後部側方には
処理室35が処理室35が連接され、扱室１に設けた扱網６
の一部が切り欠かれて送塵口が開口され、扱室１より排
出された処理物を前記処理室35内に供給するようにして
いる。

後方に延びる処理室35内には扱胴軸２に平行する処理
胴軸35によって支持された処理胴37が設けられ、この処
理胴37の周囲には移送螺旋37a（第２図）と後方側の多
数の処理歯37bとが設けられている。この処理胴37の扱
胴４と対面する側から下方にかけて選別網39が張設され
ているが、この処理室35の終端部に設けた排塵口40はス
トローラック14上に臨む位置に開口されている。

次に、前記脱穀機に付設された本考案に係る穀粒搬送
装置の詳細を説明する。

第４図は本考案の第１の実施例を示す側断面図であっ
て、二番穀稈樋20の上方に二番物移送螺旋20aを配置し
て横螺旋移送装置を構成している。そしてこの二番物移
送螺旋20aの端部には羽根20bが設けられていると共に、
ギヤケース50に支持されている。このギヤケース50を介
して直交して二番物還元筒51が設けられ、この二番物還
元筒51は下部の大径筒部52と上部の小径筒部53とから構
成され、この二番物還元筒51の内部に二番物還元螺旋5
4、即ち縦螺旋が内蔵されて縦螺旋移送装置を形成して
いる。

この縦螺旋移送装置は大径筒部52で回転する１ピッチ
の大径羽根55と小径部筒53の部分で回転する小径羽根56
とで構成されている。

そして二番物還元筒51の大径筒部52と小径筒部53とを
結ぶテーパー筒部57の内面に本考案において適用した回
転阻止体60が設けられている。この回転阻止体60は第５
図に示すように二番物還元筒51のテーパー筒部57の内面
に軸方向に等間隔に４個が突出して設けられている。

第６図は二番物還元筒51の側面図、第６図Ａは還元筒
51を構成する二つ割りの下部構造の斜視図を示してい
る。

第７図は二番物還元筒51の頂部に設けた排出筒61の平
面図を示し、そして第８図はギヤケース50の斜視図をそ
れぞれ示している。

二番物移送螺旋20aで図において右方に送られきた藁
クズや籾の混合物は、この二番物移送螺旋20aの終端に
設けられている羽根20bで投げ上げられ、大径羽根55で
掬い上げられて上部に搬送される。この大径羽根55は１
ピッチ程度で続いて小径羽根56に引継がれ、この小径羽
根56の終端の羽根56aで脱穀機内に投げ込まれて再処理
が行なわれる。

前記藁クズや籾の混合物からなる二番物は、回転阻止
体60によって回転を阻止されながら、あたかも大径羽根
55の移送能力を抑制することになるので、一時的に大量
の藁クズの供給があっても、一度に小径羽根56側に供給
されずに時間差を持らながら供給されることになるの
で、大径羽根55より小径羽根56に移送する部分において
藁クズの噛み込みが防止でき、円滑に二番物を上昇搬送
することができる。

第９図は第２の実施例を示すもので、この実施例にお
いては回転阻止体60aを縦螺旋移送装置の回転方向Ｒの
方向に角度αだけ傾斜させたものを設けている。なお、
この角度αは15〜45°の範囲が好ましく、この角度αに
よって大径羽根55の終端部における藁クズの停滞を効果
的に防止して小径羽根56側に引継ぐことができる。

第10図は第３の実施例を示すもので、この実施例にお
いては、排出筒61と脱穀装置Ｓの側板62との接合部にゴ
ム等の弾性材料からなるブーツ63を嵌合させたものであ
る。この構造によれば、側板62の開口部と排出筒61の吐
出口との間をブーツ63を介して連結したので、これらの
部材の組立てが極めて容易となる。

〔考案の効果〕

本考案に係る農業機械における穀粒搬送装置は、水平
方向に配置された横螺旋移送装置と、この移送装置に対
して急角度で連結された縦螺旋移送装置とからなり、該
縦螺旋移送装置は横螺旋移送装置に接合される筒体の下
部を上部に比較して太径に形成し、この大径の部分の螺
旋羽根を大径とし、更に前記筒体の直径が拡大される部
分の内面に被搬送物が螺旋羽根と共に回転するのを防止
する回転阻止体を設けて構成されている。

従って、縦螺旋移送装置を構成する大径羽根55で送ら
れてきた藁クズを、回転阻止体60,60aによって抵抗力を
与えるので、筒体のテーパー筒部57等が遊ばせることな
く、小径羽根56に引き継ぐことができる。

また、回転阻止体60,60aで大径羽根55の藁クズの移送
をセーブするので、一時的に大量の藁クズが供給される
ようなことがあっても、一度に小径羽根56側に供給され
ずに、時間差を持って分散されながら供給されるので、
大径羽根55より小径羽根56に至る間の筒体の内面と羽根
との間に藁クズの噛み込みを防止でき、円滑に二番物を
再処理部に移送することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は脱穀機の要部の説明用左側面図、第２図は同右
側面図、第３図は第２図におけるIII-III線における断
面図である。 第４図は本考案の実施例における穀粒搬送装置の正断面
図、第５図は縦螺旋移送装置の横断面図、第６図は穀粒
搬送装置の正面図、第６図Ａは下部筒体の斜視図、第７
図は排出筒の平面図、第８図はギヤケースの斜視図であ
る。 第９図は第２の実施例に係る穀粒搬送装置の正断面図、
第10図は第３の実施例の要部を示す正断面図、第11図は
従来の穀粒搬送装置の正断面図である。 33……二番物還元筒、33a……二番物還元螺旋、33b……
排出筒、35……処理室、50……ギヤケース、51……二番
物還元筒、52……大径筒部、53……小径筒部、65……二
番物還元螺旋、55……大径羽根、56……小径羽根、57…
…テーパー筒部、60,60a……回転阻止体、61……排出
筒。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 湯原 明徳 島根県八束郡東出雲町大字揖屋町667番 地１ 三菱農機株式会社内 (56)参考文献 実開 昭63−119332（ＪＰ，Ｕ)

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】水平方向に配置された横螺旋移送装置と、
   この移送装置に対して急角度で連結された縦螺旋移送装
   置とからなり、該縦螺旋移送装置は横螺旋移送装置に接
   合される筒体の下部を上部に比較して太径に形成し、こ
   の大径の部分の螺旋羽根を大径とし、更に前記筒体の直
   径が拡大される部分の内面に被搬送物が螺旋羽根と共に
   回転するのを防止する回転阻止体を設けてなる農業機械
   における穀粒搬送装置。