JP2516823Z - - Google Patents
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Description
【考案の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本考案は車輌内装材に用いる立毛織布に関するものである。
〔従来の技術〕
車輌内装材の分野においては、近年高級化の要求に対応してシート表皮及びド
アトリムに織布を使用する傾向が強い。特に高級車種の場合は、風合に優れる立
毛織布(以下モケットと記す)を採用する場合が多い。第4図に立毛織布の断面
図を示す。図中、1はパイル糸、2は地糸、3はバッキング材である。又、ドア
トリムを織布で装飾する際には、意匠上及び生産効率上高周波ウエルド加工を用
いるのが好ましい。この高周波ウエルド加工の中でも近年は技術的難度が高いと
されるウエルドカット工法を用いる車種が増えている。ウエルドカット(Weld C
ut)はプラスチックの高周波ウエルド加工において、ポリ塩化ビニルと布などの
見切り部分(境目)を処理する加工法の一つである。第5図にウエルドカットし
た積層体の一例を示す。図中、4はモケット、5は基材、6は表皮材、7はフォ
ーム材、8はパット材である。 オーナメント材(モケット+パット材)のパイル糸としては、本考案者らは実
願昭63-15275号明細書に記載された、毛倒れしたときにパイル糸間に隙間の発生
し易い断面形状を有するパイル糸を提案した。 又、第5図の如き積層体の切断処理と高周波溶着方法に関しては、特開昭62−
170324号公報に、基材に織布を貼り合わせ、その表面に厚手の表皮材を密着させ
た積層体の切断処理と高周波溶着をするにあたり、前記積層体の上方から切断刃
を下降させて表皮材を切断すると共に、高周波溶着用の上部電 極を切断刃に沿って下降させて前記表皮材と織布を抑さえた後、前記上部電極に
高周波電圧を印加して溶着する方法が記載されている。 〔考案が解決しようとする課題〕 モケットとウエルドカットを組み合わせた場合、溶着させる作業域が狭く、か
つ溶着強度が出にくいため外観不良を引き起し易い。すなわちウエルダー機の電
流値の小さな低い条件ではポリ塩化ビニル表皮の浮きが発生し、逆に電流値の大
きな高い条件では表皮と基材にスパークによる焼けこげが発生する。これは第5
図のモケット4のパイル糸1の部分が溶融したポリ塩化ビニル表皮材6の浸透を
疎外しているためであることが電子顕微鏡写真などで確認されている。又、これ
らの問題は、前述の電子顕微鏡写真による観察などからパイル糸の断面形状に大
きく影響されることが判明した。 すなわち第6図のような偏平断面の短繊維9からなるパイル糸は単一方向に倒
れ易く、第7図のようにポリ塩化ビニル表皮材6の浸透を著しく疎外する。又、
第8図のように円形断面の短繊維10からなるパイル糸の場合も同様である。こ
れを解決する策として本考案者らは前記実願昭63−15275 号においてパイル糸の
断面形状を三角形や星形などとすることで対応することを提案したが、望むべく
溶着強度は得られるものの実際の作業域(ウエルダー機の使用可能な電流値の範
囲)はモケット以外の表皮材に比べて狭く、作業しずらいと言わざるを得ない。
これは第9図の三角形断面の短繊維11からなるパイル糸においても倒れたパイ
ル糸は最密充填しやすく、偏平断面や第8図の円形断面ほどではないにせよ、ポ
リ塩化ビニル表皮材の浸透を疎外するためと考えられる。又、前記特開昭62−17
0324号公報にはパイル糸の断面形状についての記載はない。 本考案は上記従来技術における問題点を解決するためのものであり、その目的
とするところは溶着強度が高く、溶着時の作業域が広く、かつ品質の優れた立毛
織布を提供することにある。 〔課題を解決するための手段〕 すなわち本考案の立毛織布は、繊維断面が三角形と円形で、太さの差が0.9
デニール以上ある繊維長30〜55mmの短繊維を2種類混紡してなるパイ ル糸を立毛してなる車輌内装材用立毛織布である。 短繊維の長さは、55mmを越えると各繊維間に隙間が生じにくくなり、又、3
0mm未満では混紡などによるパイル糸の製造が困難となるので、30〜50m
mとする。 繊維断面が互いに異なる短繊維としては、例えば第2図A〜Eの断面形状を有
する短繊維及び第3図F〜Hの断面形状を有する短繊維が挙げられる。 本考案においては、第2図のA(三角形断面)と第3図のH(円形断面)との
組合せを用いる。各短繊維の混紡比率は、Aが50%以下でHが50%以上、好
ましくはAが40%以下でHが60%以上、最も好ましくはAが35%以下でH
が65%以上とするのが風合やウエルド性の点から具合がよい。 又、短繊維の太さは、パイル糸の弾性回復性や風合の点より、1.5〜6デニ
ール、特に1.5〜4デニールが好ましい。前記短繊維を20%以上、好ましく
は30%以上混紡するとよい。 短繊維の材質としては特に限定されないが、例えばポリエステル例えばポリエ
チレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等や、これに更に第3成分
を導入した改質ポリエステルが挙げられる。上記第3成分はイソフタール酸、ス
ルホイソフタール酸、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリ
アミド等であってよい。 〔作用〕 繊維断面形状が三角形と円形で、太さの差が0.9デニール以上ある繊維長3
0〜55mmの短繊維を2種類混紡してなるパイル糸を立毛して用いることにより
、毛倒れしたときに各繊維が最密充填されることなく、各繊維間に隙間が生じ易
いので、溶着時に表皮材の樹脂の溶融物が上記隙間に浸透し易くなり、溶着強度
が向上する。 〔実施例〕 以下の実施例及び比較例において、本考案を更に詳細に説明する。なお、本考
案は下記実施例に限定されるものではない。 各種断面形状、長さ及び太さの短繊維よりなるパイル糸を備えた本考案及び比
較例の立毛織布(第5図に示すものと同様)を製造し、ウエルド強度及 びウエルド条件域を調べた。結果を下記表に示す。又、第1図に本考案の立毛織
布のパイル糸の長さ方向と直交する方向の拡大断面図を示す。 上記表中、ウエルド強度とは第5図に示す表皮材6(ポリ塩化ビニル製)を基
材5から適当量剥した後、引張試験において200mm/分の速度でウエルド部
分を剥したときの剥離強度を測定したものであり、ウエルド条件域とはパール工
業製20kWのウエルダー機を用いて通電時間を一定にしたときの浮き剥れが発
生せず(低条件)、かつスパークも発生しない(高条件)電流値(アンペア)の
範囲を示す。又、比較例1〜5及び実施例のパイル糸 比較例1はモケット以外の表皮であり、このウエルド強度条件域が目標となる
。比較例2〜5はパイル長さ及び織密度を同一にした際のパイル糸の断面形状の
影響を示している。(全てモケット)。表からわかるように本考案による実施例
は比較例2〜5よりもウエルド強度が高く、又、ウエルド条件域も広い。更に比
較例1に比べてもほぼ同程度のウエルド強度及びウエルド条件域を示している。
それ故、実施例においては、比較例2〜5に比べて格段に作業性が向上した。 〔考案の効果〕 上述の如く、本考案の立毛織布は、繊維断面が三角形と円形で、太さの差が0
.9デニール以上ある織維長30〜55mmの短織維を2種類混紡してなるパイ
ル糸を立毛してなる車輌内装用立毛織布であるため、ウエルドカット時に樹脂の
溶融物が隙間に浸透し易くなり、ウエルド強度が向上した。又、ウエルドカット
時のウェルダー機の設定条件域が広いので作業性が向上した。更に、風合の上で
もこれまでに無い特徴を有している。すなわち、円形断面と三角形断面の短繊維
を混紡するとウールのような触感でかつしなやかな風合が得られる。
アトリムに織布を使用する傾向が強い。特に高級車種の場合は、風合に優れる立
毛織布(以下モケットと記す)を採用する場合が多い。第4図に立毛織布の断面
図を示す。図中、1はパイル糸、2は地糸、3はバッキング材である。又、ドア
トリムを織布で装飾する際には、意匠上及び生産効率上高周波ウエルド加工を用
いるのが好ましい。この高周波ウエルド加工の中でも近年は技術的難度が高いと
されるウエルドカット工法を用いる車種が増えている。ウエルドカット(Weld C
ut)はプラスチックの高周波ウエルド加工において、ポリ塩化ビニルと布などの
見切り部分(境目)を処理する加工法の一つである。第5図にウエルドカットし
た積層体の一例を示す。図中、4はモケット、5は基材、6は表皮材、7はフォ
ーム材、8はパット材である。 オーナメント材(モケット+パット材)のパイル糸としては、本考案者らは実
願昭63-15275号明細書に記載された、毛倒れしたときにパイル糸間に隙間の発生
し易い断面形状を有するパイル糸を提案した。 又、第5図の如き積層体の切断処理と高周波溶着方法に関しては、特開昭62−
170324号公報に、基材に織布を貼り合わせ、その表面に厚手の表皮材を密着させ
た積層体の切断処理と高周波溶着をするにあたり、前記積層体の上方から切断刃
を下降させて表皮材を切断すると共に、高周波溶着用の上部電 極を切断刃に沿って下降させて前記表皮材と織布を抑さえた後、前記上部電極に
高周波電圧を印加して溶着する方法が記載されている。 〔考案が解決しようとする課題〕 モケットとウエルドカットを組み合わせた場合、溶着させる作業域が狭く、か
つ溶着強度が出にくいため外観不良を引き起し易い。すなわちウエルダー機の電
流値の小さな低い条件ではポリ塩化ビニル表皮の浮きが発生し、逆に電流値の大
きな高い条件では表皮と基材にスパークによる焼けこげが発生する。これは第5
図のモケット4のパイル糸1の部分が溶融したポリ塩化ビニル表皮材6の浸透を
疎外しているためであることが電子顕微鏡写真などで確認されている。又、これ
らの問題は、前述の電子顕微鏡写真による観察などからパイル糸の断面形状に大
きく影響されることが判明した。 すなわち第6図のような偏平断面の短繊維9からなるパイル糸は単一方向に倒
れ易く、第7図のようにポリ塩化ビニル表皮材6の浸透を著しく疎外する。又、
第8図のように円形断面の短繊維10からなるパイル糸の場合も同様である。こ
れを解決する策として本考案者らは前記実願昭63−15275 号においてパイル糸の
断面形状を三角形や星形などとすることで対応することを提案したが、望むべく
溶着強度は得られるものの実際の作業域(ウエルダー機の使用可能な電流値の範
囲)はモケット以外の表皮材に比べて狭く、作業しずらいと言わざるを得ない。
これは第9図の三角形断面の短繊維11からなるパイル糸においても倒れたパイ
ル糸は最密充填しやすく、偏平断面や第8図の円形断面ほどではないにせよ、ポ
リ塩化ビニル表皮材の浸透を疎外するためと考えられる。又、前記特開昭62−17
0324号公報にはパイル糸の断面形状についての記載はない。 本考案は上記従来技術における問題点を解決するためのものであり、その目的
とするところは溶着強度が高く、溶着時の作業域が広く、かつ品質の優れた立毛
織布を提供することにある。 〔課題を解決するための手段〕 すなわち本考案の立毛織布は、繊維断面が三角形と円形で、太さの差が0.9
デニール以上ある繊維長30〜55mmの短繊維を2種類混紡してなるパイ ル糸を立毛してなる車輌内装材用立毛織布である。 短繊維の長さは、55mmを越えると各繊維間に隙間が生じにくくなり、又、3
0mm未満では混紡などによるパイル糸の製造が困難となるので、30〜50m
mとする。 繊維断面が互いに異なる短繊維としては、例えば第2図A〜Eの断面形状を有
する短繊維及び第3図F〜Hの断面形状を有する短繊維が挙げられる。 本考案においては、第2図のA(三角形断面)と第3図のH(円形断面)との
組合せを用いる。各短繊維の混紡比率は、Aが50%以下でHが50%以上、好
ましくはAが40%以下でHが60%以上、最も好ましくはAが35%以下でH
が65%以上とするのが風合やウエルド性の点から具合がよい。 又、短繊維の太さは、パイル糸の弾性回復性や風合の点より、1.5〜6デニ
ール、特に1.5〜4デニールが好ましい。前記短繊維を20%以上、好ましく
は30%以上混紡するとよい。 短繊維の材質としては特に限定されないが、例えばポリエステル例えばポリエ
チレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等や、これに更に第3成分
を導入した改質ポリエステルが挙げられる。上記第3成分はイソフタール酸、ス
ルホイソフタール酸、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリ
アミド等であってよい。 〔作用〕 繊維断面形状が三角形と円形で、太さの差が0.9デニール以上ある繊維長3
0〜55mmの短繊維を2種類混紡してなるパイル糸を立毛して用いることにより
、毛倒れしたときに各繊維が最密充填されることなく、各繊維間に隙間が生じ易
いので、溶着時に表皮材の樹脂の溶融物が上記隙間に浸透し易くなり、溶着強度
が向上する。 〔実施例〕 以下の実施例及び比較例において、本考案を更に詳細に説明する。なお、本考
案は下記実施例に限定されるものではない。 各種断面形状、長さ及び太さの短繊維よりなるパイル糸を備えた本考案及び比
較例の立毛織布(第5図に示すものと同様)を製造し、ウエルド強度及 びウエルド条件域を調べた。結果を下記表に示す。又、第1図に本考案の立毛織
布のパイル糸の長さ方向と直交する方向の拡大断面図を示す。 上記表中、ウエルド強度とは第5図に示す表皮材6(ポリ塩化ビニル製)を基
材5から適当量剥した後、引張試験において200mm/分の速度でウエルド部
分を剥したときの剥離強度を測定したものであり、ウエルド条件域とはパール工
業製20kWのウエルダー機を用いて通電時間を一定にしたときの浮き剥れが発
生せず(低条件)、かつスパークも発生しない(高条件)電流値(アンペア)の
範囲を示す。又、比較例1〜5及び実施例のパイル糸 比較例1はモケット以外の表皮であり、このウエルド強度条件域が目標となる
。比較例2〜5はパイル長さ及び織密度を同一にした際のパイル糸の断面形状の
影響を示している。(全てモケット)。表からわかるように本考案による実施例
は比較例2〜5よりもウエルド強度が高く、又、ウエルド条件域も広い。更に比
較例1に比べてもほぼ同程度のウエルド強度及びウエルド条件域を示している。
それ故、実施例においては、比較例2〜5に比べて格段に作業性が向上した。 〔考案の効果〕 上述の如く、本考案の立毛織布は、繊維断面が三角形と円形で、太さの差が0
.9デニール以上ある織維長30〜55mmの短織維を2種類混紡してなるパイ
ル糸を立毛してなる車輌内装用立毛織布であるため、ウエルドカット時に樹脂の
溶融物が隙間に浸透し易くなり、ウエルド強度が向上した。又、ウエルドカット
時のウェルダー機の設定条件域が広いので作業性が向上した。更に、風合の上で
もこれまでに無い特徴を有している。すなわち、円形断面と三角形断面の短繊維
を混紡するとウールのような触感でかつしなやかな風合が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本考案の立毛織布のパイル糸の長さ方向と直交する方向の拡大断面図
、 第2図A〜E及び第3図F〜Hは各種短繊維の長さ方向と直交する方向の拡大
断面図、 第4図は立毛織布の断面図、 第5図はウエルドカットした積層体の断面図、 第6図は短繊維の一例の長さ方向と直交する方向の拡大断面図、 第7図は第6図の短繊維からなるパイル糸を備えたモケットのウエルドカット
部分の拡大断面図、 第8図及び第9図は各々パイル糸の長さ方向と直交する方向の拡大断面図であ
る。 図中、 1…パイル糸、2……地糸、3……バッキング材、4…モケット 5…基材、6…表皮材、7…フォーム材、8…パット材 9,10,11,A〜H…短繊維
、 第2図A〜E及び第3図F〜Hは各種短繊維の長さ方向と直交する方向の拡大
断面図、 第4図は立毛織布の断面図、 第5図はウエルドカットした積層体の断面図、 第6図は短繊維の一例の長さ方向と直交する方向の拡大断面図、 第7図は第6図の短繊維からなるパイル糸を備えたモケットのウエルドカット
部分の拡大断面図、 第8図及び第9図は各々パイル糸の長さ方向と直交する方向の拡大断面図であ
る。 図中、 1…パイル糸、2……地糸、3……バッキング材、4…モケット 5…基材、6…表皮材、7…フォーム材、8…パット材 9,10,11,A〜H…短繊維
Claims (1)
- 【実用新案登録請求の範囲】 繊維断面が三角形と円形で、太さの差が0.9デニール以上ある繊維長30〜
55mmの短繊維を2種類混紡してなるパイル糸を立毛してなる車輌内装材用立毛
織布。
Family
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