JP2513078B2 - プレス加工方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ＜産業上の利用分野＞ 本発明は、簡単な構造のプレス金型を用いて容易にプ
レス加工製品を製造し得るプレス加工方法に関し、自動
車のドアパネル等の製造に好適なものである。

＜従来の技術＞ 自動車の外板等を効率良く生産するためにプレス加工
が用いられている。このプレス加工の多くは一対のプレ
ス金型間に被加工材を置き、一方あるいは両方のプレス
金型を移動させることで被加工材に対し塑性加工や穴加
工を行うものである。

これら加工の一形態として、曲げ加工や練り加工が行
われており、この加工を行うことにより種々の形状を成
形することが可能となる。

また、この加工の一例として、第６図に示すようなド
アパネル10の成形加工が知られている。

＜発明が解決しようとする課題＞ 曲げ加工や練り加工等のプレス加工においては、加工
時に第６図に示すような歪11が発生し易く、加工済の被
加工物である製品の外観品位の低下を招くという欠点を
有していた。

また、この歪の発生が防止される加工条件を設定すべ
く、プレス加工による製品の量産前に種々のトライアウ
ト及び調整作業を行わなければならず、結果として製造
コストの上昇を招くという欠点を有していた。

＜課題を解決するための手段＞ 本発明によるプレス加工方法は、薄板である被加工材
の加工時に歪の発生する箇所に対応し且つ該被加工材の
一面側に対向して、一対の金型表面の内の一方に逃げ穴
を形成し、この後この一対の金型により前記被加工をプ
レス加工する際に、前記逃げ穴の形成された金型表面と
他方の金型表面とを前記被加工材を介して密着させるこ
とを特徴とするものである。

＜作用＞ 一対の金型で被加工材を挾み被加工材を塑性変形させ
るプレス加工が行われる。この加工の際に、被加工材に
歪みが発生することがある。

また、予め歪の発生する箇所に対応して形成された逃
げ穴を有する一方の金型と、他方の金型とを歪の発生す
る箇所で密着することにより、歪部分の材料が逃げ穴内
に流動して、この流動した材料が逃げ穴内に突出する。
従って、他方の金型に対向する被加工材の表面は、平滑
な表面となる。

＜実 施 例＞ 本発明のプレス加工方法に係る一実施例が実行されて
自動車のドアパネルを整形するプレス金型を第１図から
第５図に示し、これらの図に基づき本実施例を説明す
る。

一対のプレス金型１の内の下型２の斜視図を第１図に
示し、第１図のＡ−Ａ矢視断面であってプレス機にこの
プレス金型１が組付けられた状態の断面図を第２図に示
す。

第１図及び第２図に示すように、プレス機のボルスタ
６に支持された下型２の周囲に位置し且つ上下方向移動
可能であってクッションピン５を介して図示しないばね
材により下側への移動が規制されるブランクホルダ３が
下型２側に保持されている。これら下型２及びブランク
ホルダ３の上部には、プレスラム７に取付けられて上下
動可能な上型４が位置しており、上型４が第２図のよう
に下降した際に、これらの間に被加工材８を挾み込み、
所定の形状に被加工材８がプレス加工され完成品ができ
る。

また、第１図及び第２図に示すように、下型２のパン
チ部2aにはドア取っ手の押し込み部12を成形する凹部2b
が形成されており、上型４にはこれに対応する突出部4a
が形成されている。従って、ドアパネルが成形される際
に上下型2,4で落し込み部12も成形されることとなる。

この落し込み部12を成形する下型２の凹部2bの周囲に
は、第２図及び第３図に示すように、例えば直径Ｄが3m
mから6mm程度の逃げ穴９が複数設けられており、被加工
材８を成形した際の余った材料をこの逃げ穴９に逃すよ
うにしている。

次に、以上に述べたプレス金型１により行われる本発
明の一実施例を説明する。

まず、ドアパネルの裏面側に対向する下型２に形成さ
れた凹部2bの周囲であって、凹部2bによる絞り加工によ
りドアパネルに歪であるしわの発生する虞がある箇所
（第６図に示された歪11）に対応した下型２に対し、予
め逃げ穴９をドリル加工等により設けることとする。

この後、プレス機に上下型を一体の形で第２図に示す
ように組付け、被加工材８をこれら上型４と下型２との
間に挾みつつブランクホルダ３で保持してプレス成形す
る。このプレス加工に際して、下型２の逃げ穴９が形成
された部分近傍と上型４とを特に強く密着させることに
より、板厚ｔを有するプレス加工によって被加工材８の
余った材料が流動し、逃げ穴９内に突出量αだけ材料が
突出する。

すなわち、加工直前を表す第４図から加工時を表す第
５図のように上型４をプレスラム７に伴って下降させる
と、逃げ穴９にプレス加工によって被加工材８の余った
材料が突出し、この部分のプレス加工された被加工材８
は厚み量ｔ＋αの厚みを有することとなる。従って、本
来プレス成形品に発生する高低差0.05mm〜0.5mm程度の
しわの原因となるプレス成形の過程で被加工材８の余っ
た材料を逃げ穴９に取込むと共に、加工の際に生ずる残
留応力が吸収され、歪みであるしわの発生が抑制され
る。

そして、逃げ穴９による材料の突出は、ドアパネルの
裏面側に生ずることとなり、ドアパネルの外観上の問題
は生じない。

また、完成時の被加工材８の板厚、形状面のキャンバ
曲率、歪11の程度によっては、逃げ穴の外径及び数量を
これに合わせて変更すればよく、変更により最適な材料
の流動が確保され、適度に逃げ穴内に材料が突出するこ
ととなる。

＜発明の効果＞ 本発明のプレス加工方法によれば、金型表面に逃げ穴
を形成し、プレス加工時にこの逃げ穴に被加工材の余っ
た材料を流動させるようにした結果、この逃げ穴に対応
する箇所以外の被加工材の表面を平滑なものとすること
が可能となった。

例えは、自動車のドアパネル等の製造に際しては、ド
アパネルの裏面側に対向する金型に逃げ穴を形成するこ
とにより、ドアパネル製品表面の外観品位が向上するこ
ととなる。また、製品表面側に歪が生じないことからプ
レス加工による種々のトライアウト及び調整作業を不用
とし、結果として製造コストの低減を図ることが可能と
なった。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明のプレス加工方法に係る一実施例が実行
されるプレス金型の下型の斜視図、第２図は第１図のＡ
−Ａ矢視であってプレス機に上下型一体となっているプ
レス金型が組付けられた状態の断面図、第３図は第２図
のＢ部拡大図、第４図は本発明の一実施例に係る加工直
前のプレス金型の拡大断面図、第５図は同じく加工時の
プレス金型の拡大断面図、第６図はドアパネルの斜視図
である。 図面中、 １はプレス金型、２は下型、３はブランクホルダ、４は
上型、８は被加工材、９は逃げ穴、10はドアパネル、11
は歪である。

フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｂ２１Ｄ 53/86 Ｂ２１Ｄ 53/86 Ａ

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】薄板である被加工材の加工時に歪の発生す
   る箇所に対応し且つ該被加工材の一面側に対向して、一
   対の金型表面の内の一方に逃げ穴を形成し、この後この
   一対の金型により前記被加工材をプレス加工する際に、
   前記逃げ穴の形成された金型表面と他方の金型表面とを
   前記被加工材を介して密着させることを特徴とするプレ
   ス加工方法。