JP2509555Y2 - 瓶用の緩衝材 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案は、瓶の底に敷いて、運
搬中等に瓶が破損するのを防止するのに使用される緩衝
材に関する。

【０００２】

【従来の技術】瓶を箱詰めして運搬すると、底が破損す
ることがある。運搬中に、瓶に上下の衝撃が加わると、
充填した液体のウォーターハンマー作用で、瞬間的に底
に過大な力が作用する。このときの衝撃で瓶の底が破損
することがある。

【０００３】この弊害を防止するために、瓶の底に敷く
緩衝材として、発泡スチロールを成形したものが使用さ
れている。発泡スチロールは、緩衝材として優れた特性
を備える。しかしながら、使用後に、焼却して簡単に廃
棄することができない。このため、廃棄処理に困ってい
るのが実状である。この欠点を解決するために、図１に
示す瓶用のパルプモールドと呼ばれる緩衝材１が使用さ
れている。この緩衝材１は、紙製であるために、使用後
に焼却できる。この緩衝材１は、古紙を繊維状に加工
し、これを瓶５の底に成形したものである。緩衝特性を
改善するために、図２の断面図に示すように、下方に突
出して、脚部２を成形している。脚部２は、瓶５に衝撃
が加わると変形して、衝撃を吸収する。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】図１と図２に示す緩衝
材１は、発泡スチロールに代わって使用できる。しかし
ながら、この構造の緩衝材１は、能率よく安価に多量生
産することが難しく、生産性が悪い欠点がある。とく
に、古紙を繊維状に加工するのに複雑な工程を必要とし
て、さらに、これを成形して乾燥するのにも、多くの加
工工程を必要とするからである。緩衝材は、ほとんど例
外なく、使用後に廃棄される。このため、簡単かつ容易
に、しかも安価に多量生産できることが極めて大切であ
る。

【０００５】図３に示すように、段ボールを箱形に折曲
した緩衝材１も開発されている。この図に示す緩衝材１
は、段ボールを裁断して箱形に組み立てるので、組み立
てに手間がかかる。また、瓶５の底を１枚の段ボールで
支持するので、上下のショックで瓶５が破損するのを効
果的に防止できない。

【０００６】この考案は、このことを実現することを目
的に開発されたものである。この考案の重要な目的は、
段ボールを使用して、極めて安価に能率よく多量生産で
き、しかも優れた緩衝性のある瓶用の緩衝材を提供する
ことにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この考案の瓶用の緩衝材
は、前述の目的を達成するために下記の構成を備える。
この考案の緩衝材は、複数枚の段ボールを積層してい
る。積層される上面段ボール３は、上に載せる瓶５の底
の周縁に沿い、かつ、下面の表面シート８を残してリン
グ状に切断されている。さらに、上面段ボール３は、瓶
５の底に沿うように、リング状の切断縁に沿ってウェブ
６を押し潰して、瓶５の底に沿う凹凸状に形成されてい
る。上面段ボール３の下に下面段ボール４を敷設してい
る。下面段ボール４は、上面段ボール３の押し潰された
部分にも緩衝性を持たせる。

【０００８】上面段ボール３と下面段ボール４とは、接
着して積層することも、あるいは接着しないで積層する
こともできる。接着しないで積層する上面段ボール３と
下面段ボール４とは、例えば、外周の一部を折曲できる
ように連結して位置決めできる。

【０００９】

【作用】この考案の瓶用の緩衝材は、図４の平面図に示
すように、リング状に切断して切溝７を設けている。切
溝７の近傍の斜線で示す部分は、ウェブ６を押し潰して
いる。いいかえると、ウェブ６の押し潰された部分をリ
ング状に切断して切溝７を設けている。リング状の切溝
７は、上面の表面シート８を切断している。切断された
上面の表面シート８は、ウェブ６の押し潰された部分を
瓶５の底の外周縁で押圧したときに、隙間（ｄ）が開い
て無理なく弾性変形する。かりに、ウェブ６を押し潰し
た部分で上面の表面シート８を切断していないと、表面
シート８が引っ張られて、ウェブ６の押し潰された部分
を無理なく圧縮変形できない。表面シート８が伸長しな
いと、ウェブ６を薄く変形できないからである。このよ
うに、この考案の瓶用の緩衝材１は、リング状の切溝７
を設けて、ウェブ６の押し潰された部分を無理なく弾性
変形させている。したがって、上に載せた瓶５に上下の
衝撃が作用すると、ウェブ６の押し潰された部分が弾性
変形して、瓶５の衝撃を吸収する。ウェブ６の押し潰さ
れた部分が弾性変形して薄く押し潰されると、上面段ボ
ール３は広い面積で瓶５の底に接触する。上面段ボール
３が瓶５の底の凹凸に沿って変形するからである。上面
段ボール３の押し潰された部分で、瓶５の衝撃を防止す
るために、上面段ボール３の下に下面段ボール４を積層
している。

【００１０】

【実施例】以下、この考案の実施例を図面に基づいて説
明する。ただし、以下に示す実施例は、この考案の技術
思想を具体化するための瓶用の緩衝材を例示するもので
あって、この考案の瓶用の緩衝材は、構成部品の材質、
形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでな
い。この考案の緩衝材は、実用新案登録請求の範囲を逸
脱しない範囲で変更することができる。

【００１１】さらに、この明細書は、実用新案登録請求
の範囲を理解し易いように、実施例に示される部材に対
応する番号を、「実用新案登録請求の範囲の欄」、「作
用の欄」、および「課題を解決するための手段の欄」に
示される部材に付記している。ただ、実用新案登録請求
の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するもの
では決してない。

【００１２】図６に示す瓶用の緩衝材１は、上面段ボー
ル３と下面段ボール４とを折曲できるように連結してい
る。上面段ボール３と下面段ボール４とは、片面の表面
シート８を残して切断して、折曲できるように連結して
いる。すなわち、上面段ボール３の下面の表面シート８
と、下面段ボール４の上面の表面シート８とを連結し
て、折曲できるように連結している。

【００１３】上面段ボール３は、上に載せる瓶５の底の
周縁に沿って、しかも、下面の表面シート８を残してリ
ング状に切断している。図に示す上面段ボール３は、瓶
５の外周よりも多少小さい半径として、２条のリング状
に切断して切溝７を設けている。１升瓶の下に敷く緩衝
材１の場合、外側の切溝７の半径は、瓶５の外径よりも
約５ｍｍ小さく、内側の切溝７は外側の切溝７よりも約
１０ｍｍ小さくしている。このように、リング状に切断
する切溝７の半径を、瓶５の外径よりも多少小さくする
のは、図７に示すように、瓶５の底は、外周縁がゆるく
湾曲しているからである。図４と図６とに示す緩衝材１
は、湾曲する瓶５の底のもっとも突出する部分を、２条
のリング状切溝７の間に位置するように設計している。

【００１４】上面段ボール３をリング状に切断する深さ
は、もっとも浅いときは、上面の表面シート８のみを切
断する。また、もっとも深いときは、上面の表面シート
８とウェブ６の全体を切断して、下面の表面シート８の
みを残して切断する。リング状に切断する深さを浅くす
ると、クッションが固くなり、深くすると変形しやすく
なる。

【００１５】さらに、上面段ボール３は、リング状の切
溝７に沿ってウェブ６を押し潰している。ウェブ６を押
し潰すのは、上面段ボール３の上面を瓶５の底に沿う立
体曲面とするためである。すなわち、上面段ボール３を
より広い面積で瓶５の底に接触させることによって、瓶
５の底の衝撃を広い面積に拡散するためである。押し潰
された上面段ボール３は、上面段ボール３の上面の表面
シート８を緩く変形させる。製造工程において、押し潰
されたウェブ６は、押し潰された後、クッションバック
によって、もとの位置に復元しようとする。しかしなが
ら、いったん押し潰されたウェブ６は、完全には元の状
態には復元せず、上面の表面シート８が押し潰された部
分にくぼみができて凹部となる。

【００１６】上面段ボール３をリング状に切断して押し
潰す部材を図８に示している。この図に示す部材は、下
面から突出して２重のリング状カッター９を有する。リ
ング状カッター９の間とその両側とにクッション材１０
を配設している。クッション材１０は、カッター９が上
面段ボール３を切断するときに、切断部分の近傍を凹部
してウェブ６を押し潰す。クッション材１０には、弾性
変形するプラスチック発泡体やゴム状弾性体が使用でき
る。上面段ボール３をリング状に切断して、押し潰すと
き、カッター９は下面の表面シート８を切断しない位置
まで降下し、クッション材１０が段ボールの上面を押圧
して、ウェブ６を押し潰す。

【００１７】瓶用の緩衝材１は、図９に示すように、上
面段ボール３の上に、ガイド段ボール１１を連結するこ
とができる。ガイド段ボール１１は、上面段ボール３と
下面段ボール４と同じ構造で連結している。ガイド段ボ
ール１１は、瓶５を挿入できる貫通孔を開口している。
このように、瓶５の貫通孔を開口したガイド段ボール１
１を積層した緩衝材１は、瓶５を位置ずれなく保持でき
る。また、瓶５の側面を緩衝性のある状態に保持して、
破損を防止できる特長もある。

【００１８】さらに、図１０に示す瓶用の緩衝材１は、
１２個の瓶５を載せることができる。この図に示す緩衝
材１は、１枚の上面段ボール３に、１２組のリング状切
断部分を設けている。リング状切断部分の近傍は、前述
の緩衝材１と同じように、ウェブ６を押し潰している。

【００１９】この構造の上面段ボール３は、押し潰され
ない下面段ボール４に積層されている。下面段ボール４
は、上面段ボール３と同じ外形に切断して積層されてい
る。

【００２０】以上の実施例は、段ボールに両面段ボール
を使用する。段ボールには、図示しないが、両面段ボー
ルに代わって、復両面段ボールや復復両面段ボールも使
用できる。

【００２１】

【考案の効果】この考案の瓶用の緩衝材は、簡単かつ容
易に、しかも能率よく多量生産して、安価にできる特長
がある。それは、この考案の緩衝材が、段ボールをリン
グ状に切断して、切断部分を押し潰して上面段ボールを
製作し、この上面段ボールの下面に下面段ボールを積層
して製造できるからである。段ボールは、リング状に切
断する部分の近傍を簡単に押し潰すことができる。それ
は、段ボールをリング状に切断するカッターに沿ってク
ッション材を固定し、カッターが段ボールを切断すると
きに、クッション材で段ボールを押し潰すことができる
からである。さらに、このようにして、クッション材で
段ボールを押圧すると、カッターを段ボールから簡単に
分離できる特長もある。

【００２２】さらにまた、この考案の特筆すべき特長
は、極めて簡単に多量生産できるにもかかわらず、優れ
た緩衝性によって瓶の破損を極減できることにある。こ
の特長は、上面段ボールをリング状に切断してその近傍
を押し潰すことによって、瓶の底に立体的に沿う形状に
成形し、さらに、上面段ボールに下面段ボールを積層し
ているからである。瓶の底に沿う形状に成形した上面段
ボールは、瓶の底に広い面積で接触する。広い面積で押
圧される上面段ボールは、衝撃がかかったときの面積当
りの力を減少させる。また、ウェブを押し潰した部分
で、上面段ボールの上面の表面シートをリング状に切断
しているので、瓶に押圧されると、無理なく変形する。
ウェブが押し潰されるときに、表面シートの切断部分が
開くからである。このため、この考案の瓶用の緩衝材
は、瓶の衝撃を効率よく吸収して、破損するのを効果的
に防止できる特長がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】従来の紙製緩衝材であるパルプモールドを示す
斜視図

【図２】図１に示す瓶用の緩衝材であるパルプモールド
の断面図

【図３】段ボールで製作された従来の緩衝材の一部断面
斜視図

【図４】この考案の実施例にかかる瓶用の緩衝材の一例
を示す平面図

【図５】瓶の底が緩衝材の上面段ボールを押圧する状態
を示す拡大断面図

【図６】この考案の実施例にかかる緩衝材の一例を示す
斜視図

【図７】緩衝材に瓶を載せた状態を示す断面図

【図８】上面段ボールをリング状に切断して押圧する状
態を示す断面図

【図９】この考案の他の実施例を示す緩衝材の平面図

【図１０】この考案の他の実施例を示す緩衝材の平面図

【符号の説明】

１…緩衝材 ２…脚部 ３…上面段ボール ４…下面段ボール ５…瓶 ６…ウェブ ７…切溝 ８…表面シート ９…カッター １０…クッション材 １１…ガイド段ボール

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数枚の段ボールが積層されており、上
   面段ボール(3)は、上に載せる瓶(5)の底の周縁に沿い、
   かつ、下面の表面シート(8)を残してリング状に切断さ
   れており、さらに、上面段ボール(3)は、リング状の切
   断縁に沿ってウェブ(6)を押し潰しており、上面段ボー
   ル(3)によって瓶(5)の底に沿う凹凸状に形成され、この
   上面段ボール(3)の下に下面段ボール(4)を敷設している
   瓶用の緩衝材。