JP2504513B2 - イオン感応膜 - Google Patents

イオン感応膜

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JP2504513B2 JP63056417A JP5641788A JP2504513B2 JP 2504513 B2 JP2504513 B2 JP 2504513B2 JP 63056417 A JP63056417 A JP 63056417A JP 5641788 A JP5641788 A JP 5641788A JP 2504513 B2 JP2504513 B2 JP 2504513B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は溶液中のイオンの活量測定用のイオン選択性
電極に用いるイオン感応膜に関する。詳しくは、イオン
選択性電極の境界膜として使用した場合、塩素イオンに
対して優れた感応性を有するイオン感応膜である。
〔従来の技術及び発明が解決しようとする問題点〕
近年、イオン選択性電極を医療用に応用し、血液や尿
等の生体液中に溶解しているイオン、例えばナトリウム
イオン、カリウムイオン、塩素イオンなどの定量を行う
試みがさかんに行われている。これは、生体液中の特定
のイオン濃度が生体の代謝反応と密接な関係にあること
に基づいて該イオン濃度を測定することにより、高血圧
症状、心臓疾患、腎疾患、神経障害等の種々の診断を行
うものである。
一般に、イオン選択性電極は、第1図に示すように試
料液に浸漬する部分(一般には低部)に境界膜としてイ
オン感応膜12を設けて構成さた筒状容器11中に、内部電
解液13及び内部基準電極14を設けることにより基本的に
構成される。
かかるイオン選択性電極を用い、溶液中のイオンの活
量の測定を行うためのイオン測定装置の代表的な構造を
第2図に示す。即ちイオン選択性電極21は塩橋22と共に
試料溶液23に浸漬され、塩橋の他の一端は比較電極24と
共に飽和塩化カリウム溶液26に浸漬される。両電極間の
電位差はエレクトロメータ25で読み取られ、該電位差よ
り試料溶液中の特定のイオン種のイオン活量を求めるこ
とができる。このようなイオン測定装置に用いるイオン
選択性電極の性能は、それに用いるイオン感応膜の性能
によって決定される。
従来から、陰イオン、特に塩素イオンを選択的に検出
するためのイオン感応膜として種々の膜が提案されてい
る。例えば、 a)塩化銀を主体とする固体成形膜 b)ポリ塩化ビニル等の重合体、四級アンモニウム塩な
どのイオン感応物質及び可塑剤を混合して製膜した膜 c)トリメチルアンモニオ基、ピリジニオ基等のイオン
交換性基を有する重合体よりなる陰イオン交換膜 等の膜が知られている。しかしながら、(a)のタイプ
のイオン感応膜を用いたイオン選択性電極は、溶液中に
臭素イオン、シアンイオン、チオシアン酸イオン等が存
在していると、これらイオンの影響で膜表面が化学変化
するため電位が安定化しにくく、甚だしい場合には電位
計測が不可能となる場合がある。また、種々の生体液等
の測定においては、タンパク質等の影響を受け易く、や
はり電位が安定しないという欠点がある。(b)のタイ
プのイオン感応膜を用いたイオン選択性電極は、応答が
遅く、また、膜中のイオン感応物質が徐々に溶液中に溶
解するため、電極寿命が短いという欠点がある。(c)
のタイプのイオン感応膜を用いたイオン選択性電極は、
イオン性基が膜を構成する重合体に共有結合で導入され
ているため寿命が長くまた生体液中に含まれるタンパク
質等の影響を受けにくいという長所を有している。しか
しながら、前記した交換基を有する陰イオン交換膜は一
般に電解用に用いられるイオン交換膜であり、これをイ
オン感応膜として用いた場合、塩素イオン以外の妨害イ
オン、例えば、リン酸イオン、炭酸水素イオン等の影響
が大きく、また得られる電位も不安定であるという欠点
を有している。
従って、生体液中の塩素イオンを高感度でかつ安定し
て測定可能なイオン選択性電極を与えるイオン感応膜の
開発が望まれていた。
〔問題を解決するための手段〕
本発明者等は、かかる問題点を解決し得るイオン感応
膜を開発すべく鋭意研究を重ねた。その結果、特定の構
造を有する第4級アンモニウム基を有する重合体よりな
る膜状物が、塩素イオンに対して優れたイオン感応性を
有し、且つ良好な耐水性を有するため、これをイオン感
応膜として用いることにより、長寿命でしかも塩素イオ
ンを高感度でかつ安定して測定可能なイオン選択性電極
が得られることを見い出し本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は下記の一般式 (但し、Yは水素、アルキル基、シアノ基より選ばれた
基、X-はハロゲンイオン、又は陰イオンを形成する原子
団、Zは CH2 n(但し、nは1から10の整数)、 −COOR3−、−OCOR3−、−CONHR3−、及び−NHCOR3
(但し、R3はCH2 m、又は−CH2CH2OCH2 mCH2−、 −CH2CH(CH3)OCH2 mCH(CH3)−、(但し、mは1から
10の整数))から選ばれた基、R1,R2は炭素数5以下の
アルキル基、ハロゲン化アルキル基、又は、ヒドロキシ
アルキル基、及びベンジル基より選ばれた同種又は異種
の基、Aは2本又は3本の長鎖疎水基、又は剛直性部分
を連鎖中に含む1本の直鎖疎水基のいずれかを有する非
イオン性の1価の基であり、B1,B2は同種又は異種の非
イオン性の1価の直鎖疎水基を示す)で表されるユニッ
トを50重量%(以下、重量%をwt%で表示する)以上含
む直鎖状重合体の膜状物よりなるイオン感応膜である。
前記一般式〔I〕及び〔II〕に示されるように、本発
明の重合体はその分子中に特定の第4級アンモニウム基
を有するユニットを含有することがイオン感応膜の塩素
イオンに対する選択性を飛躍的に向上させるために必要
である。
本発明において、前記一般式〔I〕及び〔II〕中、Y
で示されるアルキル基は、その炭素数について限定され
ないが、原料の入手の容易さから炭素数1〜4のものが
好適に使用される。X-で示されるハロゲンイオンとして
は、フッ素,塩素,臭素,ヨウ素の各イオンが、X-で示
される安定な陰イオンを形成する原子団としては、公知
の原子団が特に制限なく使用されるが、一般にNO3 -,Cl
O4 -,OH-,SCN-,CH3COO-等が好適に使用される。更
に、前記一般式〔I〕及び〔II〕中、R1,R2で示される
炭素数5以下のアルキル基、又はそのハロゲン置換体、
もしくは水酸基置換体としては、一般に公知のものが特
に制限なく使用されるが、好適に使用されるものを例示
すれば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、
ペンチル基、クロルメチル基、2,2−ジクロルエチル
基、2−クロルエチル基、3−クロルプロピル基、2−
ブロモエチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシ
エチル基、3−ヒドロキシプロピル基等である。上記ア
ルキル基の炭素数が6以上になると、得られるイオン感
応膜の選択性が不十分となることがある。前記一般式
〔I〕及び〔II〕中、Zは、 CH2 n(但し、nは1から10好ましくは1〜4の整
数)、 −COOR3−、−OCOR3−、−CONHR3−、及び−NHCOR3−、
(但し、R3はCH2 m、又は−CH2CH2OCH2 mCH2−、
−CH2CH(CH3)OCH2 mCH(CH3)−、(但し、mは1〜1
0、好ましくは1〜4の整数)から選ばれた基である。
これらの基を用いることにより原料の入手、重合体の製
造が容易となる。
本発明において、前記一般式〔I〕中、A、は2本又
は3本の長鎖疎水基、又は剛直性部分を連鎖中に含む1
本の直鎖疎水基のいずれかを有する非イオン性の1価の
基(以下、液晶性基と略称する)である。本発明のイオ
ン感応膜を構成する重合体中にかかる前記液晶性基が存
在することにより、得られるイオン感応膜の選択感応性
が向上すると共に、水中で使用する際の安定性が増加す
ることができる。
本発明において液晶性基のうち長鎖疎水基は、得られ
るイオン感応膜のイオン選択性、及び原料の入手の容易
さから、炭素数10〜30の直鎖アルキル基またはそのハロ
ゲン置換体であることが好ましい。尚、本発明でいう長
鎖疎水基とは、完全に直鎖状のものの他に、炭素数2個
までの分枝を有する分枝状のものをも含むものである。
本発明の液晶性基の一態様である、2本又は3本の長
鎖疎水基を有する非イオン性の1価の基において、該長
鎖疎水基が1本であると得られるイオン感応膜の耐水性
が十分でなく、また4本以上になると重合体製造上原料
の入手に難がある。
また、本発明の液晶性基の他の一態様の、剛直性部分
を連鎖中に含む1本の直鎖疎水基を有する非イオン性の
1価の基において、剛直性部分は、次の,及びに
示す基が挙げられる。
直結あるいは、炭素−炭素多重結合、炭素−窒素多重
結合、エステル結合、アミド結合等を介して連結された
少なくとも2個の芳香環で構成される2価の基。このよ
うな基を具体的に示せば、例えば 等の2価の基が挙げられる。
芳香環間の結合が、複数であるか、または原子団を介
してあるいは介さない単結合であって、その回転がエネ
ルギー的に束縛を受けている2価の基。
このような基を具体的に例示すると、 芳香環が縮合を形成しているもので、この縮合環が多
分子間で積層した場合に、その回転が互いに立体的に束
縛を受けている2価の基。
このような基を具体的に例示すると、 等の2価の基が挙げられる。
剛直性部分を連鎖中に含む1本の直鎖疎水基を有する液
晶性基の直鎖疎水基の炭素数は、得られるイオン感応膜
の耐水性及び原料の入手の容易さより4〜30であること
が好ましい。なお、ここでいう上記炭素数は、剛直性部
分及び、剛直性部分と該直鎖疎水基との結合部分を除い
た部分の炭素数を意味する。上記剛直性部分と直鎖疎水
基との結合部分は、一般に炭素−炭素結合、エステル結
合、エーテル結合が好適である。前記液晶性基におい
て、剛直性部分を連鎖中に含む直鎖疎水基を1本に限定
するのは、もし2本以上になると重合体の成形加工の際
に著しく困難が生じ、また得られるイオン感応膜の安定
性の低下が生じることが多く、望ましくないためであ
る。
本発明の液晶性基は、上記をみたすものであれば特に
限定されないが、一般に好適に使用される代表的なもの
を以下に具体的に示す。
但し、R4,R5は同種又は異種の炭素数12〜30の直鎖ア
ルキル基又はそのハロゲン置換体であり、Dは、E
jCH2 k(但し、Eは 又は であり、jは0又は1であり、kは正の整数である。)
であり、h,iは正の整数である。
但し、R4,R5D,及びjは上記と同じでありlは1又は
2である。
但し、R4及びR5は上記と同じであり、kは正の整数で
ある。
R6−V−G− 〔D〕 但し、R6は、炭素数4〜22のアルキル基、アルキルオ
キシ基、もしくはアルキルオキシカルボニル基又は、こ
れらのハロゲン置換体であり、Vは、 (但し、Wは−N=CH−,−N=N−,−CH=CH−,−
NO=N−,−CONH−,−COO−,−O−,−CO−,−C(C
H3)2−, であり、jは0又は1である。)Gは、CH2 p又は、
−OCH2 pである。(但し、pは正の整数である。) 上記一般式〔A〕,〔B〕,〔C〕,〔D〕中、k,p
は正の整数であれば良いが、一般には原料の入手の容易
さから1〜16であることが好ましい。また、上記一般式
〔A〕中、h及びiは、正の整数をなんら制限なく取り
得るが、一般には原料の入手の容易さから1〜4である
ことが好ましい。さらに、上記一般式〔A〕,〔B〕,
〔C〕及び〔D〕中、R4及びR5で示されるハロゲン置換
アルキル基のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭
素、ヨウ素の各原子が挙げられる。
上記一般式〔II〕中B1、B2は同種又は異種の非イオン
性の1価の直鎖疎水基である。本発明に用いる重合体中
に前記直鎖疎水基が存在することにより、得られるイオ
ン感応膜の選択性が向上すると共に、水中で使用する際
の安定性が増加する。上記直鎖疎水基は、原料の入手の
容易さから、炭素数12〜30の直鎖アルキル基またはその
ハロゲン置換体、直鎖アルキルカルボキシアルキル基、
または直鎖アルキルオキシカルボニルアルキル基から選
ばれた基であることが好ましい。また、更に好適な基を
具体的に例示すれば以下の通りである。
R7T−Uj 〔E〕 (但し、R7は炭素数12〜30の直鎖アルキル基又はそのハ
ロゲン置換体であり、Tは−COO−あるいは−OCO−であ
り、UはCH2 qであり、jは0または1である。) 上記一般式〔E〕中、qは正の整数であればなんら制限
なく採用されるが、原料の入手の容易さから1から5で
あることが好ましい。さらに、R7で示されるハロゲン置
換アルキル基のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、
臭素、ヨウ素の各原子が挙げられる。
本発明のイオン感応膜を構成する重合体において、一
般式〔I〕又は〔II〕で示されるユニット以外のユニッ
トは、直鎖状重合体を形成するものであれば特に制限さ
れないが、次式〔III〕で示されるユニットが好適に用
いられる。
(但し、Pは水素、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル
基、またはカルボキシル基であり、Qはアルキル基、カ
ルボキシル基、フェニル基、ナフチル基、アルキルカル
ボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルア
ミノカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルオキ
シ基、アミノ基、アルキルアミノ基、トリメチルアンモ
ニオアルキル基及びそのハロゲン置換体又は水酸基置換
体である。) 上記一般式〔III〕で示されるユニットの炭素数は、
原料の入手の容易さ及び得られる重合体の製膜性を勘案
し、10以下であることが好ましい。
本発明のイオン感応膜を構成する重合体において、一
般式〔I〕又は〔II〕で示されるユニットの全重合体に
対する重量分率は、50wt%以上であることが好ましい。
上記ユニットの分率が50wt%未満であると、得られるイ
オン感応膜のイオン選択性が不十分となることがあると
共に、水中で使用する際の安定性が悪化することがあ
る。本発明のイオン感応膜に用いる重合体の分子量は特
に制限されないが、数平均分子量が5000以上であること
が好ましい。数平均分子量が5000以下であると、得られ
るイオン感応膜が脆弱となる。
本発明のイオン感応膜は以上に説明したように一般式
〔I〕又は〔II〕で示されるユニットを特定の量以上有
する直鎖状重合体(以下イオン交換性重合体と略記す
る。)を構成成分とするものである。本発明のイオン感
応膜の製造方法は特に限定されず公知の方法が採用され
る。一般には、前記イオン交換性重合体を製造した後、
膜状物に成形する方法が好適である。
前記イオン交換性重合体の製造方法としては、特に限
定されず公知の方法が採用されるが、一般に、下記一般
式〔IV〕または〔V〕で示される構造のモノマーを単独
重合させるか又は2種以上を共重合させることにより得
られる。
Y、Z、X-、R1、R2、A、B1、B2の定義ならびに好まし
い例については、すでに述べられたとおりである。ま
た、一般式〔IV〕まは〔V〕で示されるモノマーは単独
で重合させても感応膜として使用することができるが、
該モノマーと共重合可能なビニルモノマーと共重合させ
ることによっても前記イオン交換性重合体を得ることが
できる。一般式〔IV〕または〔V〕で示されるモノマー
と共重合可能なビニルモノマーとしては、公知のモノマ
ーが特に限定されず使用できる。一般に好適に使用され
る代表的なものを具体的に示せは、例えば、エチレン、
プロピレン、ブテン等のオレフィン化合物;塩化ビニ
ル、ヘキサフルオロプロピレン等のオレフィン化合物の
ハロゲン誘導体;スチレン、ビニルナフタレン等の芳香
族ビニル化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル化合
物;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、2−ヒド
ロキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、メタク
リルアミド等のアクリル酸誘導体およびメタクリル酸誘
導体;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物;メ
チルビニールエーテル等のビニルエーテル化合物;ヨウ
化メチルビニルピリジニウム、塩化トリメチルアンモニ
オエチルメタクリレート等の第4級アンモニウム化合物
等が挙げられる。また、上記した以外にアクリル酸、メ
タクリル酸等のビニルカルボン酸化合物;スチレンスル
ホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸化合物等も好
適に使用し得るが、該陰イオン性のモノマーを用いた場
合、陰イオンに対して応答しないイオン感応膜となるこ
とがあるため、重合体中の陰イオン性基/陽イオン性基
の(当量比)を1未満にする必要がある。
上記イオン交換性重合体を製造する際の重合方法は、
イオン重合、ラジカル重合を問わないが、ラジカル開始
剤の存在下に重合を行うことが望ましい。重合操作も、
一般に公知の操作が特に制限されず用いられるが、得ら
れる重合体の均一性及び共重合体の組成比の調節の容易
さ等の点から溶液重合が好適に用いられる。溶液重合を
行う際の溶媒としては、用いるモノマーが溶解するもの
であれば特に制限されない。一般に好適に使用されるも
のとしては、水、メタノール、エタノール、アセトン、
ベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジクロルメタン、テ
トラクロルメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラ
ン、ジクロルエタン、クロルベンゼン等が挙げられる。
上記溶媒は、2種以上を混合して用いても差し支えな
い。重合温度は0℃〜150℃が好ましく、40℃〜100℃が
更に好ましい。また、イオン交換性重合体の単離法とし
ては、当分野で公知の種々の方法を用いることができる
が、溶液重合の場合には、生成重合体を溶解しない溶媒
中に反応混合物を投入する再沈澱法が好ましい。
以上のようにして製造されたイオン交換性重合体は、
一般に無色、白色あるいは淡黄色の固体である。また、
水には難溶であるが、有機溶媒、例えばジメチルホルム
アミド、クロロホルム、テトラクロルメタン、ジクロル
メタン、テトラクロルエタン、テトラヒドロフラン等に
は、室温〜100℃で溶解する。一般に、イオン交換性重
合体中の前記した一般式〔I〕又は〔II〕で示されるユ
ニットの含量は元素分析によって求められる。
上記製造方法によって得られるイオン交換性重合体を
膜状物に成形する方法は特に限定されず、どのような方
法であってもよい。一般に好適に使用される方法を例示
すれば以下の通りである。
本発明のイオン交換性重合体を可溶性溶媒に溶解し、
適当な基板上に流延させた後、溶媒を除去せしめる等の
方法で膜状物を得る方法。ここで使用される溶媒は本発
明のイオン交換性重合体を溶解するものであれば特に限
定されないが、前記したイオン交換性重合体の製法で述
べた可溶性溶媒が好適に用いられる。上記溶媒の除去に
は、一般に風乾、減圧乾燥等が特に制限されず用いられ
る。
本発明のイオン交換性重合体を加熱成形及び延伸する
ことによって膜状物とする方法。加熱成形時の温度は、
イオン交換性重合体の軟化点付近が採用され、イイオン
交換性重合体の種類によって異なるが、一般には、50〜
200℃の範囲で選択される。
本発明のイオン感応膜の厚みは特に限定されないが、
一般に0.1μm〜5mm、好ましくは5〜100μmの範囲と
することが、得られるイオン感応膜に実用に十分な膜強
度を付与することができ好ましい。
本発明のイオン感応膜は、一般にその基本的性質とし
て液晶性を示すことが多い。液晶性を示す温度範囲は、
0〜200℃の範囲にある。液晶性は一般に示差走差熱量
計による測定によって確認される。液晶である場合に
は、ある温度で固体から液晶への転移に伴う熱量が観測
され、その温度は固体−液晶転移温度と呼ばれる。従っ
て、本発明のイオン感応膜は上記の固体−液晶転移温度
以下で、より好ましくは固体−液晶転移温度より10℃以
上低い温度で使用することが望ましい。固体−液晶転移
温度以上で使用した場合、種々の陰イオン、特に2価の
陰イオンに対する選択性が低下する場合がある。
本発明のイオン感応膜の塩素イオンに対する選択性を
向上させるために、用いるイオン感応膜をその固体−液
晶転移温度以上の水中に1分間以上浸漬することが好ま
しい。かかる操作によりイオン感応膜の塩素イオンに対
する選択性及び感度が向上し、これをイオン選択性電極
の感応膜として使用することにより塩素イオンを高い感
度で測定することができ、また、測定される電位も安定
することが多い。
本発明のイオン感応膜において、該イオン感応膜中に
補強剤として繊維状物を存在させることにより、イオン
感応膜の反復使用耐久性を著しく向上させることができ
る。即ち、本発明のイオン感応膜は被測定液中におい
て、構成物質の溶出等がなく、長寿命であるが、被測定
液中への浸漬及び空気中での乾燥を繰り返すと膜にひび
が入ることによりイオン選択性が低下することがある。
本発明者らは、イオン感応膜中に繊維状物を存在させる
ことにより、イオン選択性を低下させることなく、かか
る現象を防止し得ることを見い出したのである。
また、イオン感応膜中に繊維状物を混入させることに
より、イオン感応膜の機械的強度も向上させることがで
き、これをイオン選択性電極として使用する際、その操
作性の向上も図ることができる。
かかる繊維状物の材質としては、繊維状に成形可能な
ものであれば特に制限されず、公知の材質が使用され
る。一般に好適に使用される材質を例示すれば以下の通
りである。即ち、ホウケイ酸ガラス、シリカガラス等の
ガラス類、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸ナトリウ
ム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリパラフェニレ
ンテレフタルアミド、6,6−ナイロン等の合成高分子、
木綿、絹、セルロース等の天然高分子が好適に採用され
る。前記繊維状物の直径としては、0.1μm〜100μmの
範囲が好適に採用される。直径が0.1μmより小さい場
合には膜強度の向上が顕著でなく、また、100μmより
大きい場合にはイオン感応膜の応答性が悪化する傾向が
ある。前記繊維状物の長さとしては1μm〜1cmの範囲
が好適に採用される。長さが1μmより小さい場合には
膜強度の向上が顕著でなく、又、該長さが1cmより大き
い場合にはイオン感応膜の応答性が悪化する傾向があ
る。
繊維状物を本発明のイオン感応膜に混入させる方法は
特に限定されず、どのような方法であってもよい。一般
に好適に使用される方法を例示すれば、本発明のイオン
交換性重合体を可溶性溶媒に溶解した後、繊維状物を溶
媒中に分散させ、適当な基板上に流延させた後、溶媒を
除去せしめる等の方法でイオン感応膜を得る方法が挙げ
られる。ここで使用される溶媒は、本発明のイオン交換
性重合体を溶解するものであれば特に限定されないが、
前記したイオン交換性重合体の製法で述べた可溶性溶媒
が好適に用いられる。上記溶媒の除去には、一般に風
乾、加熱乾燥、減圧乾燥等が特に制限されず用いられ
る。また、前記溶液中に繊維状物を分散させる方法とし
ては、攪拌、振とう、超音波照明等が特に制限されず用
いられる。
本発明のイオン感応膜中に繊維状物を混入させる場
合、該繊維状物とイオン交換性重合体の混合比(繊維状
物/イオン交換性重合体、重量比)は、0.005〜0.3の範
囲が好適である。上記繊維状物の混合比が0.005より小
さい場合には、膜強度の向上が顕著でなく、また、0.3
より大きい場合にはイオン感応膜の応答性が悪化する傾
向がある。
本発明のイオン感応膜において、該イオン感応膜中に
炭素数10以上の直鎖状アルコールを存在させることによ
り、イオン感応膜の塩素イオンの選択感応性を更に向上
させることができる。即ち、本発明のイオン感応膜は2
価の陰イオンに対する塩素イオンの選択感応性が良好で
あり生体液中の塩素イオンの測定に好適であるが、本発
明者らは、該イオン感応膜中に炭素数10以上の直鎖状ア
ルコールを存在させることにより2価の陰イオンに対す
る選択感応性を低下させることなく、チオシアン酸イオ
ン、過塩素酸イオン、硝酸イオン等の脂溶性の1価の陰
イオンに対する選択感応性を更に向上できることを見い
だした。
該直鎖状アルコールの炭素数が10未満であると、得ら
れるイオン感応膜の耐水性が不十分となる。また、該ア
ルコールは、他の構成成分との相溶性を向上させるため
に、直鎖状であることが必要である。
本発明の直鎖状アルコールは、上記を満たすものであ
れば、特に限定されず公知のものが用いられる。一般
に、得られるイオン感応膜の耐水性、原料の入手の容易
さを勘案すれば、炭素数16〜18の直鎖状アルコールが好
適に採用される。
本発明のイオン感応膜において、前記直鎖状アルコー
ルは、前記イオン交換性重合体の量に対して、10〜150
重量%の割合で含有される。直鎖状アルコールが10重量
%以下であると、得られるイオン感応膜のイオン選択性
の改善が十分でないことがある。また、150重量%以上
であると、得られるイオン感応膜の耐水性及び強度が不
十分となることがある。
前記イオン交換性重合体に、直鎖状アルコールを添加
混合し膜状物に成形する方法は特に限定されず、どのよ
うな方法であってもよい。一般に好適に使用される方法
を例示すれば以下の通りである。
本発明のイオン交換性重合体と直鎖状アルコールを可
溶性溶媒に溶解し、適当な基板上に流延させた後、溶媒
を除去せしめる等の方法で膜状物を得る方法。ここで使
用される溶媒は本発明のイオン交換性重合体及び直鎖状
アルコールを溶解するものであれば特に限定されない
が、前記したイオン交換性重合体の製法で述べた可溶性
溶媒が好適に用いられる。上記溶媒の除去には、一般に
風乾、加熱乾燥、減圧乾燥等が特に制限されず用いられ
る。
イオン交換性重合体と直鎖状アルコールを可溶性溶媒
に溶解した後、溶媒を除去せしめ、加熱成形及び延伸す
ることによって膜状物とする方法。ここで用いられる可
溶性溶媒としては、各構成成分の溶解性によって相異す
るが、一般にはジメチルホルムアミド、ジクロルメタ
ン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジクロルエタ
ン、クロルベンゼン、1,1,2,2−テトラクロルエタンを
用いることが好ましい。上記溶媒の除去には、一般に風
乾、加熱乾燥、減圧乾燥等が特に制限されず用いられ
る。上記加熱成形時の温度は、イオン交換性重合体の軟
化点付近が採用され、イオン交換性重合体の種類によっ
て異なるが、一般には、50〜200℃の範囲で選択され
る。
本発明のイオン感応膜中に繊維状物と炭素数10以上の
直鎖状アルコールを存在させることにより、反復使用耐
久性、及び脂溶性陰イオンに対する塩素イオンの選択性
を著しく向上させることができる。繊維状物及び直鎖状
アルコールの定義及び好ましい例については既に述べら
れた通りである。また、好ましい製造方法については、
上記した繊維状物を含有させたイオン感応膜及び直鎖状
アルコールを含有させたイオン感応膜の製造方法がその
まま適用される。
〔効果〕
本発明のイオン感応膜は、イオン感応部分である特定
の構造の第4級アンモニウム基が共有結合で重合体中に
固定化されているものである。従って、構成成分の溶出
がほとんどなく長寿命である。また、本発明のイオン感
応膜は、血液、尿等の生体液中に存在する炭酸水素イオ
ン、リン酸イオン等の妨害イオンに対して塩素イオンの
応答性が著しく高いため、これをイオン選択性電極のイ
オン感応膜として使用することにより、血液、尿等の生
体液中の塩素イオンの定量を極めて正確に行うことが可
能である。また、上記イオン感応膜中に繊維状物を存在
させることにより、反復使用耐久性を著しく向上させる
ことができると共に、強度も向上し、取扱が容易とな
る。また、上記イオン感応膜中に炭素数10以上の直鎖状
アルコールを存在させることにより、硝酸イオン、過塩
素酸イオン、チオシアン酸イオン等の脂溶性陰イオンに
対する塩素イオンの選択性を向上させることができ、生
体液中の塩素イオンの定量を更に正確に行うことが可能
である。以上の点より、本発明のイオン感応膜の工業的
価値は極めて大きい。
本発明のイオン感応膜が適用可能なイオン選択性電極
は、公知の構造を有するものが特に制限なく採用され
る。一般には、試料溶液に浸漬する部分の少なくとも一
部が前記イオン感応膜で構成された容器内に内部標準電
極、及び内部電解液を内蔵した構造が好適である。例え
ば代表的な態様としては前記の第1図に示した構造があ
る。即ち、第1図のイオン選択性電極は、電極筒体11の
底面部にイオン感応膜12を装着して構成される容器中
に、内部電解液13が満たされ、且つ内部基準電極14を設
けてなるものである。なお、15は液シール用Oリングで
ある。
該電極においては、イオン感応膜以外の材質等は特に
制限されず、従来のものが限定なく採用される。例えば
電極筒体の材質としては、ポリ塩化ビニル、ポリメタク
リル酸メチル等、内部電解液としては塩化ナトリウム水
溶液、塩化カリウム水溶液等、内部基準電極としては白
金、金、カーボングラファイトなどの導電性物質あるい
は銀−塩化銀、水銀−塩化水銀等の難溶性金属塩化物等
が使用される。
本発明のイオン感応膜を適用し得るイオン選択性電極
は、第1図に示した構造に限定されず、前記イオン感応
膜を有する電極であればいかなる構造であってもよい。
他のイオン選択性電極の好適なものを例示すれば、金、
白金、グラファイト等の導電体あるいは、塩化銀、塩化
水銀等のイオン導伝体に前記イオン感応膜を貼付けて構
成されるイオン選択性電極等である。
また、本発明のイオン感応膜を使用したイオン選択性
電極は公知の方法で使用することができる。例えば、前
記した第2図に示すような使用態様が基本的である。即
ち、イオン選択性電極21は、塩橋22と共に試料溶液23中
に浸漬され、塩橋の他の一端は比較電極24と共に飽和塩
化カリウム溶液26に浸漬される。上記比較電極としては
一般に公知のものが採用されるが、公的に使用されるも
のを例示すれば、カロメル電極、銀−塩化銀電極、白金
板、カーボングラファイト等である。
以下に本発明をさらに具体的に説明するために実施例
を挙げるが、本発明はこれら実施例に限定されるもので
はない。
尚、本発明の実施例中の膜強度の測定は以下に示す方
法で行った。即ち、外径8mm内径4mm長さ20mmのポリ塩化
ビニル製パイプ2本を、直径8mmのイオン感応膜の両側
にシアノアクリレート系接着剤を用い接着する。これ
を、室温で1時間放置した後、金属製のアタッチメント
を取り付け、クロスヘッドスピード10mm/minの引張り試
験機で引張り強度を測定した。
また、本発明の実施例中のイオン感応膜の反復使用耐
久性の測定は以下に示す方法で行った。即ち、外径8mm
内径4mm長さ20mmのポリ塩化ビニル製パイプの片端に直
径8mmのイオン感応膜をシアノアクリレート系接着剤を
用い接着する。これを空気中と水中にそれぞれ1日ずつ
交互に放置し、30日経過後に膜中にひび割れが生じたか
どうかについて観察した。
また、本発明の実施例中、イオン交換性重合体中の前
記一般式〔I〕又は〔II〕で示されるユニットの重量分
率をユニット分率と略記する。
製造例1 第1表に示すモノマー5mmolとアゾビスイソブチロニ
トリル5mgをベンゼン10mlエタノール10mlと共に試験管
に入れた。試験管内を窒素雰囲気下にした後、密栓をし
80℃で24時間重合させた。内容物をメタノール500ml中
に注ぎ生成した沈澱を濾過によって集めた。減圧乾燥に
よりイオン交換性重合体として固形物を第1表に示す量
得た。元素分析によりイオン交換性重合体のユニット分
率を求めた。結果をまとめて第1表に示す。
製造例2 第2表に示すモノマー10mmolと過酸化ベンゾイル7mg
をクロロホルム10mlと共に試験管に入れた。試験管内を
窒素雰囲気下にした後、密栓をし70℃で20時間重合させ
た。内容物をメタノール500ml中に注ぎ生成した沈澱を
濾過によって集めた。減圧乾燥により、イオン交換性重
合体として固形物を第2表に示す量得た。元素分析によ
りイオン交換性重合体のユニット分率を求めた。結果を
まとめて第2表に示す。
製造例3 以下に示すモノマー10mmolと 第3表に示すモノマー10mmol及びアゾビスイソブチロ
ニトリル2mgをベンゼン−エタノール混合溶媒(1:1、重
量比)10mlと共に試験管にいれた。試験管内を窒素雰囲
気下にした後、密栓をし65℃で30時間重合させた。内容
物をメタノール500ml中に注ぎ生成した沈澱を濾過によ
って集めた。減圧乾燥により、イオン交換性重合体とし
て固形物を第3表に示す量得た。元素分析によりイオン
交換性重合体のユニット分率を求めた。結果をまとめて
第3表に示す。
製造例4 第4表に示すモノマー3gとメチルメタクリレート(以
下MMAと略記する。)を第4表に示す量及びアゾビスイ
ソブチロニトリル3mgをベンゼン−エタノール混合溶媒
(1:1,重量比)10mlと共に試験管に入れた。試験管内を
窒素雰囲気下にした後、密栓をし60℃で30時間重合させ
た。内容物をメタノール500ml中に注ぎ生成した沈澱を
濾過によって集めた。減圧乾燥により、イオン交換性重
合体として固形物を第4表に示す量得た。元素分析によ
りイオン交換性重合体のユニット分率を求めた。結果を
まとめて第4表に示す。
実施例1 製造例1〜4で製造した製造No.1〜38のイオン交換性
重合体500mgをクロロホルム10mlに溶解しポリテトラフ
ルオロエチレン(以下PTFEと略記する。)製シャーレに
流延した。クロロホルムを60℃大気圧の条件下で蒸発さ
せ均一で透明な膜状物を得た。得られたイオン感応膜を
それぞれ第1図の示すように電極に装着した後、90℃の
水中に10分間浸漬した。これを用いて第2図に示した装
置により、種々の陰イオンについて、室温での濃度と電
位差の関係を測定した。得られた結果より公知の方法
〔G.J.Moody,J.D.Thomas著、宗森信,日色和夫訳「イオ
ン選択性電極」、共立出版、18ページ(1977)に記載の
方法〕により各陰イオンに対する塩素イオン選択係数を
求めた。結果を第5表にまとめて示す。尚、比較膜1と
して、ポリ塩化ビニル、塩化メチルトリドデシルアンモ
ニウム及びジブチルフタレートを成分とするイオン感応
膜〔Analitical Chemistry,56,535−538(1984)に記載
されたもの〕について同様な方法で求めた塩素イオンの
選択係数を、また、比較膜2として市販のイオン交換膜
(商品名ネオセプタACS、徳山曹達社製)について同様
な方法で求めた塩素イオンの選択係数を第5表に併せて
示す。
本実施例中のイオン選択係数は、その値が小さいほど
イオン感応膜の塩素イオンに対する選択性が良好である
ことを示している。第5表よりわかるように本発明のイ
オン感応膜を用いたイオン選択性電極は、生体液中に存
在する硫酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、炭酸水
素イオン、ヨウ素イオンに対する塩素イオンの選択性が
優れており生体液中の塩素イオン濃度の測定に好適であ
る。
実施例2 製造例1〜4で製造した製造No.1〜38のイオン交換性
重合体500mgと第7表に示す直鎖状アルコールを第6表
に示す量クロロホルム10mlに溶解しPTFE製シャーレに流
延した。クロロホルムを60℃大気圧の条件下で蒸発させ
均一で透明な膜状物を得た。結果を第6表にまとめて示
す。また、比較膜3,4として直鎖状アルコールの炭素数
の少ないもの及び直鎖状アルコールの含量の少ないもの
についても同様に膜状物を得た。結果を併せて第6表に
示す。
上記の第6表に示す膜No.39〜76および比較膜3,4のイ
オン感応膜を90℃の水中に10分間浸漬した後、それぞれ
第1図に示すように電極に装着した。これを用いて第2
図に示した装置により、種々の陰イオンについて、濃度
と電位差の関係を測定した。得られた結果より実施例1
と同様にして各陰イオンに対する塩素イオン選択係数を
求めた。結果を第7表に示す。また、比較のため直鎖状
アルコールを含まないイオン感応膜についても同様にし
て選択係数を測定した。結果を併せて第7表に示す。
第7表よりわかるように直鎖状アルコールを本発明の
イオン感応膜に含有させることにより、チオシアン酸イ
オン、過塩素酸イオン、硝酸イオン等の脂溶性陰イオン
に対する塩素イオンの選択性が著しく向上しており、生
体液中の塩素イオン濃度の測定に好適である。
実施例3 製造例1〜4で製造した製造No.1〜38のイオン交換性
重合体500mgをクロロホルム10mlに溶解した。得られた
溶液に平均直径1μm平均長さ1mmのホウケイ酸ガラス
製ガラス繊維を第8表に示す量加え、超音波照射により
分散させた。次いで、PTFE製シャーレに流延した後、ク
ロロホルムを60℃大気圧の条件下で蒸発させ透明な膜状
物を得た。結果を第8表にまとめて示す。
上記の第8表に示す膜No.77〜114のイオン感応膜の引
張り強度を測定した。また、参考のため、ガラス繊維の
混入されていない膜No.1〜38のイオン感応膜の引張り強
度を測定した。結果をまとめて第9表に示す。更に、上
記第8表に示す膜No.77〜114のイオン感応膜の反復使用
耐久製も測定した。結果を併せて第9表に示す。
また、上記第8表に示す膜No.77〜114のイオン感応膜
を90℃の水中に5分間浸漬した後、実施例1と同様な操
作で各イオンに対する塩素イオン選択係数を求めた。結
果を第10表に示す。
第9表よりわかるように、本発明のイオン感応膜に繊
維状物を混入することにより、膜強度が著しく向上して
いる。更に、その反復使用耐久性も実用上十分である。
また、第10表よりわかるように、イオン選択性電極とし
て使用した場合にも2価陰イオンに対する塩素イオンの
選択性が良好であるため、生体液中の塩素イオン濃度の
測定に好適である。
実施例4 製造例1〜4で製造した製造No.1〜38のイオン交換性
重合体500mgとn−オクタデシルアルコール250mgをクロ
ロホルム10mlに溶解した。得られた溶液に平均直径1μ
m平均長さ1mmのホウケイ酸ガラス製ガラス繊維を50mg
加え、超音波照射により分散させた。次いで、PTFE製シ
ャーレに流延した後、クロロホルムを60℃大気圧の条件
下で蒸発させ透明な膜状物を得た。得られたイオン感応
膜の引張り強度を測定した。参考のため、ガラス繊維の
混入されていない膜No.1〜38のイオン感応膜の引張り強
度を測定した。結果をまとめて第11表に示す。更に、得
られたイオン感応膜の反復使用耐久性も測定した。結果
を併せて第11表に示す。
また、上記第11表に示す膜No.115〜152のイオン感応
膜を90℃の水中に10分間浸漬した後、実施例1と同様な
操作で各イオンに対する塩素イオンの選択係数を求め
た。結果を第12表に示す。
第11表よりわかるように、本発明のイオン感応膜に繊
維状物を混入することにより、膜強度が著しく向上して
いる。更に、その反復使用耐久性も実用上十分である。
また、第12表よりわかるように、イオン選択性電極とし
て使用した場合にも2価の陰イオンと脂溶性陰イオンに
対する塩素イオンの選択性が良好であるため、生体液中
の塩素イオン濃度の測定に好適である。
実施例5 膜No.115のイオン感応膜を90℃の水中に10分間浸漬し
た後第1図に示すように電極に装着した。これを用いて
第2図に示した装置により、10-4Mから10-1Mの範囲で塩
化ナトリウム水溶液を試料溶液として20℃での比較電極
(カロメル電極)とイオン選択性電極の電位差を測定し
た。得られた電位差と試料溶液の塩素イオン濃度の関係
を第13表及び第3図に示す。第3図よりわかるように、
本発明のイオン感応膜を用いたイオン選択性電極は10-4
Mから10-1Mの範囲で直線応答を示す。また、このとき電
位勾配は58mV/decadeであった。この値は、ネルンスト
式より求まる計算値59mV/decadeとよく一致している。
この結果より、本発明のイオン感応膜が塩素イオンに対
して十分な感度を有していることが明らかである。
実施例6 膜No.115のイオン感応膜を90℃の水に15分間浸漬した
後、第1図の如くに電極に装着した。これを用い第2図
に示す装置により、試料溶液中の塩化ナトリウムの濃度
を1.2mMから3.3mMへ急激に変化させた時の出力電位の差
を第14表に示す。また、上記塩化ナトリウムの濃度と出
力電位差の関係を第4図に示す。第4図からわかるよう
に本発明のイオン感応膜を用いたイオン選択性電極は98
%応答が4秒以内であり迅速な測定が可能である。ま
た、前記測定を500回繰り返しても出力電位差の変化は
ほとんど観測されなかった。
用途例 前記した実施例4において得られた膜No.115〜152の
イオン感応膜を90℃の水中に10分間浸漬した後第1図の
如くに電極に装着した。これを用い第2図に示す装置に
より、1mMと4mMの塩化ナトリウム水溶液を試料溶液とし
たときの出力電位を測定した。測定値より塩素イオン濃
度と出力電位の検量線を作製した。一方、試験溶液とし
て塩化ナトリウム3mM、炭酸水素ナトリウム1mM、リン酸
一水素ナトリウム1mM、硝酸ナトリウム0.005mM、硫酸ナ
トリウム10mMを含む水溶液を用い出力電位を測定した。
得られた値を前記検量線に代入し、塩素イオン濃度を求
めた。その結果を第15表に示す。比較膜1,2についても
同様にして塩素イオン濃度を求めた。結果を併せて第15
表に示す。
第15表よりわかるように、本発明のイオン感応膜を用
いて得られた測定値は試験溶液中の実際の塩素イオン濃
度3mMとよく一致しており、本発明のイオン感応膜を用
いたイオン選択性電極が、種々の陰イオンを含む溶液中
の塩素イオン濃度を正確に測定できることが明らかであ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のイオン感応膜を用いるイオン選択性電
極の一例の構成を示す断面図である。第2図は第1図の
イオン選択性電極を用いて電位差を測定する装置の説明
図である。第3図は実施例1において測定した塩素イオ
ン濃度と電位差の関係を示す図である。第4図は実施例
3において測定した本発明のイオン選択性電極の応答速
度を示す図である。 第1図及び第2図中で各番号は次の内容を示す。 11……電極筒体、12……イオン感応膜、13……内部電解
液、14……内部基準電極、15……Oリング、21……イオ
ン選択性電極、22……塩橋、23……試料溶液、24……比
較電極、25……エレクトロメーター、26……飽和塩化カ
リウム水溶液、27……記録計。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式 (但し、Yは水素、アルキル基、シアノ基より選ばれた
    基、X-はハロゲンイオン、又は陰イオンを形成する原子
    団、Zは CH2 n(但し、nは1から10の整数)、 −COOR3−、−OCOR3−、−CONHR3−、及び−NHCOR3
    (但し、R3はCH2 m、又は−CH2CH2OCH2 mCH2−、 −CH2CH(CH3)OCH2 mCH(CH3)−、(但し、mは1から
    10整数))から選ばれた基、R1,R2は炭素数5以下のア
    ルキル基、ハロゲン化アルキル基、又は、ヒドロキシア
    ルキル基、及びベンジル基より選ばれた同種又は異種の
    基、Aは2本又は3本の長鎖疎水基、又は剛直性部分を
    連鎖中に含む1本の直鎖疎水基のいずれかを有する非イ
    オン性の1価の基、B1,B2は同種又は異種の非イオン性
    の1価の直鎖疎水基を示す)で表されるユニットを50重
    量%以上含む直鎖状重合体の膜状物よりなるイオン感応
    膜。
  2. 【請求項2】膜中に繊維状物よりなる補強材を分散させ
    た特許請求の範囲第1項記載のイオン感応膜。
  3. 【請求項3】膜中に、直鎖状重合体に対して10〜200重
    量%の割合で炭素数10以上の直鎖アルコールを含有させ
    た特許請求の範囲第1項記載のイオン感応膜。
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