JP2502904Y2 - 導電性塗料の静電塗装装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、高電圧が印加された静電塗装機によって水
性塗料やスラリー塗料、メタリック塗料等の導電性塗料
を塗装する静電塗装装置に関する。

〔従来の技術〕

高電圧が印加された静電塗装機によって水性塗料等の
導電性塗料を塗装する場合は、静電塗装機に印加した高
電圧のリークを防止するために、その塗装機の塗料供給
系に絶縁対策を施す必要があるから（特開昭55−114366
号，同56−141869号公報）、数十色もの塗料を色替して
塗装する自動車塗装用の多色静電塗装装置にあっては、
各色の塗料ごとに夫々その塗料供給配管や塗料タンク等
を絶縁しなければならないという面倒がある。

このため、自動車塗装においては、有害な有機溶剤を
大量に消費する絶縁性樹脂塗料による静電塗装が未だ主
流を占め、無公害な水性塗料の使用を見合わせているの
が実情である。

しかし、最近では、世界的な環境保全運動が高まり、
塗装業界においてもハイドロカーボン等の公害物質を生
ずる有機溶剤の使用規制が叫ばれている。

〔考案が解決しようとする課題〕

そこで本考案は、水性塗料による塗装を推奨するため
に、水性塗料等の導電性塗料による多色静電塗装を行う
場合でも、その塗料供給配管や塗料タンク等の塗料供給
系に面倒な絶縁対策を施さなくても済むようにすること
を主たる技術的課題とし、また、多色静電塗装における
前色塗料の洗浄時間を短縮すると共に、その洗浄時間の
短縮によって生ずる前色塗料と次色塗料の色混じりを確
実に防止することも技術的課題としている。

〔課題を解決するための手段〕

この課題を解決するために、本考案は、高電圧が印加
された静電塗装機で導電性塗料を塗装する導電性塗料の
静電塗装装置において、塗料流入口からシリンダ内に導
入された導電性塗料をそのシリンダ内に設けたピストン
によって塗料吐出口から静電塗装機の塗料吐出量に応じ
た所定の流量で圧し出すポンプが、電気的絶縁状態で設
置され、前記塗料流入口に対して、洗浄液供給バルブを
有する色替バルブ装置に接続した塗料供給配管が係脱自
在に連結されると共に、前記シリンダには、少なくとも
静電塗装機に高電圧を印加している間は電気的絶縁状態
に維持される洗浄液供給配管と洗浄液排出配管が、その
シリンダ内への洗浄液の供給と排出を前記ピストンの背
部側で行える位置に連結されることを特徴とする。

〔作用〕

本考案によれば、静電塗装機に高電圧が印加されてい
ないときに、ポンプの塗料流入口に塗料供給配管を連結
させて、その塗料流入口からシリンダ内に色替バルブ装
置で選択した所望色の導電性塗料を導入する。

そして、そのシリンダ内に塗装に必要な所要量の導電
性塗料が充填されると、塗料流入口に連結した塗料供給
配管をその塗料流入口から離脱させて、ポンプ全体を電
気的絶縁状態にする。

この状態で、静電塗装機に所定の高電圧を印加すると
共に、ポンプのシリンダ内に充填された導電性塗料を、
ピストンによって塗料吐出口から静電塗装機の塗料吐出
量に応じた所定の流量で圧し出して当該静電塗装機に定
量供給し、その導電性塗料による静電塗装を開始する。

このとき、ポンプと、そのポンプの塗料流入口に導電
性塗料を供給する塗料供給配管は、互いに離脱して電気
的に絶縁されているから、静電塗装機に印加した高電圧
が塗料供給配管や色替バルブ装置等で成る導電性塗料の
塗料供給系にリークすることがない。

したがって、その塗料供給系に面倒な絶縁対策を施す
必要がなくなり、数十色もの塗料供給系を有する多色静
電塗装装置にあっては、絶縁対策を施すための膨大な設
備費が不要となる。

次に、ポンプのシリンダ内からピストンで圧し出され
る導電性塗料を使い切ってその塗料による塗装が終了す
ると、静電塗装機への高電圧の印加を停止して、ポンプ
の塗料流入口に再び塗料供給配管を接続し、当該塗料供
給配管に接続した色替バルブ装置の洗浄液供給バルブか
らポンプのシリンダ内に洗浄液を供給して、当該シリン
ダ内のピストンの前部側に残存する導電性塗料を洗浄除
去する。

また、これと同時に、シリンダに連結された洗浄液供
給配管から当該シリンダ内のピストンの背部側に洗浄液
を供給して、その背部側に付着した導電性塗料を洗浄す
る。

このようにすれば、シリンダ内を前進して前色塗料と
なる導電性塗料を圧し出したピストンを一旦元の位置ま
で後退させてからシリンダ内を洗浄する面倒な操作をし
なくても、そのピストンが前色塗料を圧し出した位置で
洗浄を行って、シリンダ内から前色塗料を色残りなく除
去することができ、また、その洗浄が終了するとそのま
まピストンを後退させながら次色塗料となる導電性塗料
を充填することができるので、前色塗料と次色塗料の色
混じりが確実に防止されると同時に、前色塗料の洗浄時
間も著しく短縮される。

〔実施例〕

以下、本考案の実施例を図面に基づいて具体的に説明
する。

第１図は本考案による静電塗装装置の一例を示すフロ
ーシート図、第２図はその要部を拡大して示す断面図で
ある。

本例においては、80〜120KVの高電圧が印加された静
電塗装機１に導電性塗料を定量供給するポンプ２が、電
気的絶縁状態で設置されて、モータやエアシリンダ等の
駆動装置３で往復運動せられる絶縁シャフト４の先端に
取り付けたピストン５によって、塗料流入口６からシリ
ンダ７内に導入された導電性塗料を静電塗装機１の塗料
吐出量に応じた所定の流量で塗料吐出口８から圧し出し
て静電塗装機１に定量供給するようになっている。

塗料流入口６の先端には、その塗料流入口６を開閉す
る雌形カプラー９が設けられて、その雌形カプラー９が
定位置に固定されている。

また、色替バルブ装置10に接続した塗料供給配管11の
先端には、塗料流入口６の雌形カプラー９と係脱自在に
嵌合する雄形カプラー12が設けられ、その雄形カプラー
12が、エアシリンダ13のピストンロッド14に固定され
て、当該ピストンロッド14の伸縮により、定位置に固定
された塗料流入口６の雌形カプラー９に向かって所要の
絶縁距離から進退するようになっている。

なお、雌形カプラー９と雄形カプラー12は、互いに嵌
合した時に開放される逆止弁構造を有している。また、
色替バルブ装置10は、各色の導電性塗料を選択供給する
複数の色替バルブCV₁〜CV₃と、洗浄空気を供給する洗浄
空気供給バルブCV_Aと洗浄液を供給する洗浄液供給バル
ブCV_Wが設けられている。

次に、ポンプ２のシリンダ７には、ピストン５の背部
側においてそのシリンダ７内への洗浄液の供給と排出を
行える位置に、洗浄液流入口15と洗浄液吐出口16が形成
されている。

そして、洗浄液流入口15の先端には、定位置に固定す
る雌形カプラー17が設けられ、その雌形カプラー17に対
して、洗浄液供給源18から洗浄液を供給する洗浄液供給
配管19の先端に設けた雄形カプラー20が、エアシリンダ
21のピストンロッド22の伸縮によって係脱自在に連結さ
れるようになっている。

一方、洗浄液吐出口16の先端にも、定位置に固定する
雌形カプラー23が設けられ、その雌形カプラー23に対し
て、排液タンク24に接続される洗浄液排出配管25の先端
に設けた雄形カプラー26が、エアシリンダ27のピストン
ロッド28の伸縮によって係脱自在に連結されるようにな
っている。

しかして、静電塗装機１に高電圧が印加されていない
塗装開始前に、エアシリンダ13のピストンロッド14を伸
長させて、そのピストンロッド14に固定された塗料供給
配管11の雄形カプラー12を、ポンプ２のシリンダ７に形
成した塗料流入口６の雌形カプラー９に嵌合させ、塗料
供給配管11と塗料流入口６の先端同士を互いに連結させ
る。

次に、色替バルブ装置10に設けられた色替バルブCV₁
〜CV₃の中から、一つのバルブを開放して、そのバルブ
で選択した所望色の導電性塗料を塗料供給配管11から塗
料流入口６を通じてポンプ２のシリンダ７内に供給する
と同時に、そのポンプ２の駆動装置３でシリンダ７内の
ピストン５を後退させて、当該シリンダ７内に導電性塗
料を導入する。

そして、このシリンダ７内に静電塗装機１の塗装に必
要な所要量の導電性塗料が充填されると、エアシリンダ
13のピストンロツド14を収縮させて、当該ピストンロッ
ド14に固定された塗料供給配管11の雄形カプラー12を、
塗料流入口６の雌形カプラー９から離脱させて元の位置
まで後退させる。

この状態で、静電塗装機１に所定の高電圧を印加する
と共に、ポンプ２の駆動装置３を起動させて、その駆動
装置３に絶縁シャフト４を介して連結されたピストン５
によりシリンダ７内に充填された導電性塗料を塗料吐出
口８から所定の流量で圧し出して静電塗装機１に定量供
給し、導電性塗料の静電塗装を開始する。

このとき、静電塗装機１に導電性塗料を供給するポン
プ２と、そのポンプ２のシリンダ７内に導電性塗料を供
給した塗料供給配管11は、互いに所要の距離を保って絶
縁されているので、静電塗装機１に印加された高電圧が
塗料供給配管11や色替バルブ装置10にリークすることが
ない。

したがって、これら塗料供給配管11と色替バルブ装置
10や、当該色替バルブ装置10の各色替バルブCV₁〜CV₃に
導電性塗料を供給する塗料タンクや塗料配管などの塗料
供給系全体に絶縁対策を施す面倒がない。

次に、ポンプ２のシリンダ７内に充填された導電性塗
料を使い切ってその塗料による塗装が終了すると、静電
塗装機１への高電圧の印加を停止して、塗料供給配管11
の先端に設けた雄形カプラー12を塗料流入口６の先端に
設けた雌形カプラー９に再び嵌合させ、ポンプ２のピス
トン５が第１図のようにシリンダ７内の塗料を出し切っ
た前進状態のまま、色替バルブ装置10に設けた洗浄空気
供給バルブCV_Aと洗浄液供給バルブCV_Wを交互に開閉し
て、これら各バルブが供給する洗浄空気と洗浄液で塗料
供給配管11からポンプ２のシリンダ７内と静電塗装機１
内に残存する導電性塗料を洗浄除去して静電塗装機１か
ら排出させる。

また、これと同時に、洗浄液供給配管19の先端に設け
た雄形カプラー20をシリンダ７の洗浄液流入口15に設け
た雌形カプラー17に嵌合させ、洗浄液排出配管25の先端
に設けた雄形カプラー26をシリンダ７の洗浄液吐出口16
に設けた雌形カプラー23に嵌合させて、洗浄液供給源18
から洗浄液供給配管19を通じてシリンダ７内のピストン
５の背部側に洗浄液を供給すると共に、その洗浄液を洗
浄液排出配管25を通じて排液タンク24に排出させる。

これにより、シリンダ７内に残存する導電性塗料が、
ピストン５の前部側のみならずその背部側からも高速で
洗浄除去されて、前色塗料の色残りが全くなくなると同
時に、洗浄時間も短縮される。

そして、その洗浄が終了すると、シリンダ７内からピ
ストン５を後退させながら、色替バルブ装置10の色替バ
ルブCV₁〜CV₃で選択した次色塗料となる導電性塗料をシ
リンダ７内に導入する。

そして、そのシリンダ７内に所要量の塗料が充填され
ると、塗料流入口６の連結された塗料供給配管11を切り
離した後、静電塗装機１に再び高電圧を印加して次色塗
料の静電塗装を開始する。

なお、上記実施例では、静電塗装機１に高電圧が印加
されているときに、シリンダ７に連結する洗浄液供給配
管19と洗浄液排出配管25がそのシリンダ７から切り離さ
れて電気的に絶縁されるようになっているが、本考案は
これに限らず、例えば、洗浄液供給源18を成す洗浄液圧
送タンクや排液タンク24を碍子に支持して電気的絶縁状
態で設置することにより、洗浄液供給配管19と洗浄液排
出配管25をシリンダ７内に連結したままにしておいても
よい。

また、シリンダ７内に供給した洗浄液は、ピストン５
が後退する際に排出することができるので、洗浄液供給
配管19と洗浄液排出配管25を１本の配管で兼用して、当
該配管を洗浄液供給源と排液タンクに切換接続するよう
にしてもよい。

〔考案の効果〕

以上述べたように、本考案によれば、水性塗料等の導
電性塗料による静電塗装を行う場合でも、その導電性塗
料の塗料供給系に面倒な絶縁対策を施す必要がなくなる
から、数十色もの塗料供給系を有する多色静電塗装装置
であっても、設備費が嵩むことなく無公害な水性塗料に
よる静電塗装を行うことができるという大変優れた効果
がある。

また、導電性塗料の色替の際の洗浄時間を短縮するこ
とができ、前色塗料と次色塗料との色混じりも防止でき
るので実用性も高く、有機溶剤を大量に消費する絶縁性
樹脂塗料による静電塗装から水性塗料による静電塗装へ
の移行を促すことができるという有用性がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案による静電塗装装置の一例を示すフロー
シート図、第２図はその要部を拡大して示す断面図であ
る。 符号の説明 １…静電塗装機、２…ポンプ、５…ピストン、６…塗料
流入口、７…シリンダ、８…塗料吐出口、９…雌形カプ
ラー、10…色替バルブ装置、CV_W…洗浄液供給バルブ、1
1…塗料供給配管、12…雄形カプラー、18…洗浄液供給
源、19…洗浄液供給配管、24…排液タンク、25…洗浄液
排出配管。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】高電圧が印加された静電塗装機（１）で導
   電性塗料を塗装する導電性塗料の静電塗装装置におい
   て、塗料流入口（６）からシリンダ（７）内に導入され
   た導電性塗料をそのシリンダ（７）内に設けたピストン
   （５）によって塗料吐出口（８）から静電塗装機の塗料
   吐出量に応じた所定の流量で圧し出すポンプ（２）が、
   電気的絶縁状態で設置され、前記塗料流入口（６）に対
   して、洗浄液供給バルブ（CV_W）を有する色替バルブ装
   置（10）に接続した塗料供給配管（11）が係脱自在に連
   結されると共に、前記シリンダ（７）には、少なくとも
   静電塗装機に高電圧を印加している間は電気的絶縁状態
   に維持される洗浄液供給配管（19）と洗浄液排出配管
   （25）が、そのシリンダ（７）内への洗浄液の供給と排
   出を前記ピストン（５）の背部側で行える位置に連結さ
   れることを特徴とする導電性塗料の静電塗装装置。