JP2502040Y2 - 圧造成形機の打痕防止装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、複数の圧造ステーショ
ンによって素材を粗から精へ成形する圧造成形機に関
し、さらに詳しくは、圧造された製品の排出時に該製品
に打痕が入るのを防止する装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】ボルトやナット、あるいはその他の各種
パーツ類を成形する圧造成形機は、相対向するダイとパ
ンチとを備えた複数の圧造ステーションで粗から精に素
材を段階的に圧造加工するものであって、通常、この種
の成形機には上記の素材をチャックして圧造ステーショ
ン間にわたって移送する素材移送用チャックが設けられ
る。即ち、該素材移送用チャックは前段と後段との圧造
ステーション間にわたって移動され、前段の圧造ステー
ションにおいて加工された素材を把持し、後段の圧造ス
テーションに移送する。

【０００３】そのため、素材移送用チャックにおいて
は、たとえば図３に示すように、下端にチャック爪Ａを
備えた左右一対のチャックアームＢ，Ｂを、同じく左右
一対のチャックアーム取り付け軸Ｃ，Ｃに取り付けると
共に、これらのチャックアームＢ，Ｂを交差させた状態
で該交差部にリンクＤを連結し、該リンクＤを昇降させ
ることによってチャックアームＢ，Ｂを矢印ａ方向に開
閉させ、素材の把持および把持の解除ができるように構
成されている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】ところで、圧造ステー
ションで成形された製品Ｘは、最終段のダイＥから打ち
出され、搬送手段によって、たとえば製品箱のような所
定場所へ搬送されることになる。そのためには、図３に
示すようにダイＥの下方位置にシュートＦを設け、ダイ
Ｅから打ち出された製品Ｘを該シュートＦによって製品
搬送装置に滑り落とすことになるが、素材の圧造は周知
のようにパンチをラムによって前進させ、ダイに打ち当
てて行うものであって、圧造時にはラムがダイブロック
に対して最接近し、両者間にシュートＦを配置するだけ
の間隔がないから、ラムならびにパンチを避けた下方位
置に上記のシュートＦを配置せねばならず、製品Ｘの落
下距離がありすぎて、製品Ｘによっては該落下によって
表面に打痕が生じ、製品品質が低下し、また製品が不規
則方向にむいて搬送されるのでその後の処理が煩雑とな
る。

【０００５】そこで本考案は、ダイから打ち出された製
品を打痕を生じさせることなく製品搬送装置に一定方向
に整列して供給できる圧造成形機の打痕防止装置の提供
を課題とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】即ち、本考案の請求項１
に記載の考案（以下、第１考案と称す）は、素材を粗か
ら精に成形するダイとパンチからなる複数のステーショ
ンにわたって該素材を移送する素材移送用チャックを備
えた圧造成形機であって、最終ステーションのダイ下方
位置に配置された製品搬送装置と、該製品搬送装置と上
記ダイとの間に位置されて、上昇したときにダイから打
ち出される製品を把持し、かつ下降したときに把持を解
除して製品を製品搬送装置上に排出する製品受け渡し手
段と、上記パンチがダイから後退し、かつ素材移送用チ
ャックが前段ステーションに移動しているときに上記製
品受け渡し手段を上昇させ、パンチが前進を始め、かつ
上記素材移送用チャックが最終ステーションに素材を移
送する前に下降させる駆動手段とを備えたことを特徴と
する。

【０００７】さらに、請求項２に記載の考案（以下、第
２考案と称す）は、製品搬送手段は、製品受け渡し手段
の昇降に連動して間欠駆動されることを特徴とする。

【０００８】

【作用】上記の第１考案によれば、ダイからパンチが後
退しているときに、製品受け渡し手段がダイ位置まで上
昇して、該ダイから打ち出された製品を把持し、上記パ
ンチが前進する前に製品受け渡し手段が下降して、製品
搬送装置上に製品を排出する。したがって、製品は自然
落下することなく製品搬送装置に供給されると共に、一
定方向に整列して該製品搬送装置に供給される。

【０００９】

【実施例】以下、本考案の実施例を図面に基づき説明す
る。

【００１０】図１は多段式圧造成形機１を示し、該成形
機１の機台２の所定位置にダイブロック３が設けられ、
該ダイブロック３に複数個の（図面では４個）の圧造用
のダイ４Ａ〜４Ａとサポート用のダイ４Ｂが一定の間隔
で配置され、これらのダイ４Ａ，４Ｂにむかって進退す
るラム（図示せず）の前面に、上記のダイ４Ａ，４Ｂと
同数のパンチがこれらのダイ４Ａ，４Ｂに対向して配置
され、かつパンチの進退移動によって、該パンチとダイ
４Ａ〜４Ａとの間で素材を粗から精に圧造加工するよう
になされており、対向するパンチとダイ４Ａとによって
それぞれ圧造ステーションが形成される。したがって、
この実施例の圧造成形機１の場合は４つの圧造ステーシ
ョンが形成されることになる。そして、最終的に成形さ
れた製品Ｘは圧造用ダイ４Ａからサポート用ダイ４Ｂに
移され、後述する受け渡し機構によって製品搬送コンベ
ヤに移し替えられる。

【００１１】また、上記のダイブロック３の上には、該
ダイブロック３に設けたガイド部材（図示せず）に嵌合
して支持フレーム５が摺動可能に取り付けられる。この
支持フレーム５の一端部には、上記パンチの進退方向と
直交するダイ並設方向に所定のストロークで進退する駆
動ロッド６が連結され、この駆動ロッド６の進退移動に
伴って支持フレーム５が隣接するダイの間隔に等しい距
離だけ、上記のパンチが後退している間に一往復移動さ
れるようになされている。

【００１２】さらに、上記の支持フレーム５の前面部に
は、ダイ４Ａ，４Ｂと同数の素材移送用チャック７〜７
が配設され、上記の駆動ロッド６による支持フレーム５
の往復移動に伴い各チャック７が素材を把持してダイ
４，４間にわたって移動するようになされている。

【００１３】加えて、上述のサポート用ダイ４Ｂの下方
に、図１および図２に示すようにダイブロック３の前部
に製品搬送コンベヤ８が配置される。この製品搬送コン
ベヤ８はプーリ９間にベルト１０が巻き掛けられた間欠
駆動のベルトコンベヤであって、該ベルト１０の周面に
製品Ｘが入る溝１１が一定間隔で形成されており、かつ
該製品搬送コンベヤ８の搬送終端が図示しない製品箱の
近傍に臨まされ、受け渡し機構１２によってベルト１０
の溝１１に供給された製品Ｘが該ベルト１０の間欠移動
によって順次製品箱へと搬送され、終端においてロボッ
ト装置Ｙによって製品箱に収納されるようになされてい
る。

【００１４】上記の受け渡し機構１２はサポート用ダイ
４Ｂと製品搬送コンベヤ８との間に取り付けられる。即
ち、前述のラムならびにパンチの移動の障害とならない
高さ位置において機台２を利用してブラケット１３が取
り付けられる。このブラケット１３にはラム進退方向と
平行する軸１４が固定され、該軸１４に周面にピニオン
ギヤ１５が形成されたスリーブ１６が套嵌されると共
に、該スリーブ１６に一体的に受け渡しアーム１７が取
り付けられる。また、ブラケット１３側にはガイド部材
１８にそって昇降可能なラックギヤ１９が設けられ、該
ラックギヤ１９が上記のピニオンギヤ１５に噛み合わさ
れた状態で連結部材２５を介しシリンダ２０によって昇
降駆動されるようになされている。したがって受け渡し
用アーム１７はラックギヤ１９の上昇によって下動し、
下降によって上動する回動運動がなされることになる。

【００１５】その場合、上記の受け渡しアーム１７の先
端には、凹部２２と、支点２６を中心とする回動により
該凹部２２の入口を開閉するチャック爪２３とからなる
受け渡し用チャック部２１が形成されていて、受け渡し
アーム１７の上動限では該受け渡し用チャック部２１が
サポート用ダイ４Ａの前面に位置して、該サポート用ダ
イ４Ａから打ち出される製品Ｘを凹部２２内に把持し、
下動限では受け渡し用チャック部２１が製品搬送コンベ
ヤ８の上面に近傍に位置して、凹部２２に把持している
製品Ｘをベルト１０の溝１１に落とし込めるように構成
される。また、そのため、製品搬送コンベヤ８の近傍上
方にストッパ２４が設けられ、受け渡しアーム１７が下
動した際、受け渡し用チャック部２１のチャック爪２３
が該ストッパ２４に接当して凹部２２の入口が開くよう
になされている。さらに図示しないが、上記のチャック
部２１には凹部２２の入口を閉じるようにチャック爪２
３を付勢するバネが設けられる。

【００１６】さらに、ラムならびにパンチが前進を開始
して後退するまでの間は、受け渡しアーム１７が下動状
態にあり、上記後退中に上動され、かつ上記の前進が開
始される前に下動されるように、前述のシリンダ２０が
制御される。

【００１７】次に、動作を説明すると、最終の圧造用ダ
イ４Ａによって成形された製品Ｘは素材移送用チャック
７によってサポート用ダイ４Ｂの前面に移送され、該チ
ャック７による製品Ｘの把持の解除とほぼ同時にパンチ
によって該サポート用ダイ４Ｂに打ち込まれる。この間
は受け渡しアーム１７は図２の鎖線で示すように下方に
位置して、素材移送用チャック７による製品Ｘの移送や
ラムならびにパンチの前進の邪魔とならないようにされ
ている。そして、ラムならびにパンチが後退を開始し、
かつサポートダイ４Ｂの前面から圧造用ダイ４Ａの前面
に素材移送用チャック７が復帰するときに、シリンダ２
０によりラックギヤ１９が押し上げられ、該ラックギヤ
１９にピニオンギヤ１５によって噛み合っている受け渡
しアーム１７が図２の実線で示すように上方へ回動し、
サポートダイ４Ｂから打ち出された製品Ｘを受け渡し用
チャック部２１によって把持する。その後、シリンダ２
０が収縮され、受け渡しアーム１７が下方に回動し、ス
トッパー２４にチャック爪２３が接当して凹部２２が開
かれ、該凹部２２内の製品Ｘがベルト１０の溝１１に供
給される。

【００１８】このようにサポート用ダイ４Ｂから打ち出
される製品Ｘは、自然落下することなく受け渡しアーム
１７により把持されて製品搬送コンベヤ８に供給される
から、該製品Ｘに打痕が入ることがなくなる。また、製
品Ｘが一定方向に整列されて製品搬送コンベヤ８に供給
され、かつ整然と搬送されることになって、ロボット装
置Ｙによる箱詰めが作業性よく行われることになる。

【００１９】なお、上記の受け渡しアーム１７を回動さ
せる機構は、ピニオンギヤ１５とラックギヤ１９以外の
機構であってもよく、また上記の製品搬送コンベヤ８
は、スクリュウネジを２本平行に備え、これらのスクリ
ュウネジの同時回転によって両スクリュウネジの上にの
った製品Ｘを搬送するスクリュウコンベヤタイプのもの
であってもよい。さらに、実施例に示すサポート用ダイ
４Ｂを設けず、最終の圧造ダイ４Ａから受け渡しアーム
１７によって製品搬送コンベヤ８に直接供給するように
構成することも可能である。

【００２０】

【考案の効果】以上の記載によって明かなように、本考
案によれば、ダイからパンチが後退しているときに、製
品受け渡し手段がダイ位置まで上昇して、該ダイから打
ち出された製品を把持し、上記パンチが前進する前に製
品受け渡し手段が下降して、製品搬送装置上に製品を排
出する。したがって、製品は自然落下することなく製品
搬送装置に供給されることになって、製品に打痕が入る
のを防止でき、良質の製品を製造できることになる。ま
た、自然落下の場合と比べて、製品が一定方向に整列し
て製品搬送装置に供給されるので、ロボット装置等によ
って製品箱詰め作業等の後工程が作業性よく行えること
になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本考案にかかる圧造成形機の正面図。

【図２】 上記圧造成形機の要部拡大図。

【図３】 従来例の説明図。

【符号の説明】

１ 圧造成形機 ４Ａ 圧造用ダイ ４Ｂ サポート用ダイ ７ 素材移送用チャック ８ 製品搬送コンベヤ １２ 製品受け渡し機構 １７ 受け渡しアーム ２１ 受け渡し用チャック部

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 素材を粗から精に成形するダイとパンチ
   からなる複数のステーションにわたって該素材を移送す
   る素材移送用チャックを備えた圧造成形機であって、最
   終ステーションのダイ下方位置に配置された製品搬送装
   置と、該製品搬送装置と上記ダイとの間に位置されて、
   上昇したときにダイから打ち出される製品を把持し、か
   つ下降したときに把持を解除して製品を製品搬送装置上
   に排出する製品受け渡し手段と、上記パンチがダイから
   後退し、かつ素材移送用チャックが前段ステーションに
   移動しているときに上記製品受け渡し手段を上昇させ、
   パンチが前進を始め、かつ上記素材移送用チャックが最
   終ステーションに素材を移送する前に下降させる駆動手
   段とを備えたことを特徴とする圧造成形機の打痕防止装
   置。
2. 【請求項２】 製品搬送手段は、製品受け渡し手段の昇
   降に連動して間欠駆動されることを特徴とする請求項１
   に記載の圧造成形機の打痕防止装置。