JP2501396B2 - 環境応答性多孔性フィルム及びその製造方法 - Google Patents

環境応答性多孔性フィルム及びその製造方法

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JP2501396B2 JP4170727A JP17072792A JP2501396B2 JP 2501396 B2 JP2501396 B2 JP 2501396B2 JP 4170727 A JP4170727 A JP 4170727A JP 17072792 A JP17072792 A JP 17072792A JP 2501396 B2 JP2501396 B2 JP 2501396B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、化学的なエッチング法
(飛跡−侵食法)によって形成された孔を有する多孔性
ポリマーフィルム表面に、環境応答機能を有する重合性
単量体をグラフト重合させて、インテリジェント機能を
有する多孔性ポリマーフィルムを製造する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】各種のアミノ酸からタンパク質やポリペ
プチドを生化学的に合成して、生理活性をはじめとする
種々の機能を発現させるための試みは、バイオテクノロ
ジーの分野で盛んに研究されている。このような方法に
よって合成された物質は、アミノ酸がペプチド結合によ
って数多く配列した形態をしており、いわばアミノ酸配
列が物質の主骨格を形成するものである。
【0003】一方、高分子工業においては、ビニルモノ
マーの重合によってポリマーを合成することが一般的で
ある。このようにして合成された高分子は、メチレン基
が無数に配列した形態をしており、このメチレン基の配
列によってポリマーの主骨格が形成されるものであるの
で、上述のタンパク質やポリペプチドとは分子構造が本
質的に相違するものである。
【0004】ビニルモノマーには、他の官能基と置換可
能な水素があるので、この水素を種々の官能基と置換す
ることで、様々な特性を有するポリマーを合成すること
ができる。これら官能基として代表的なものには、例え
ばカルボキシル基、ニトリル基、フェニル基、ハロゲン
等がある。そして、アミノ酸やそのオリゴマーが官能基
として置換されたビニルモノマーも理論的には考えられ
るが、工業的にはポリマーの原料として用いられてはい
ない。そして、かかるビニルモノマーを原料とするポリ
マーが得られるならば、そのようなポリマーは、タンパ
ク質やポリペプチドと通常のポリマーとの性質を併せ持
つものと期待される。
【0005】ところで、分離機能を有する高分子膜は、
精密濾過、限外濾過、逆浸透、透折、気体分離、透過気
化、電気透折などの膜分離法に応用されている。その中
でも、多孔性膜は、精密濾過膜や限外濾過膜等として広
範な分野で使用されている。
【0006】従来、分離膜等に利用される微孔性の多孔
膜は、 ・機械的に高分子膜(フィルム)を延伸する方法、 ・化学的に高分子の溶解度差を利用する方法、 ・溶剤可溶の固体微粒子を混入後、溶出する方法、 ・焼結により多孔膜とする方法、 ・気泡入り高分子シートの圧潰による方法、などの多孔
化技術によって製造されている。
【0007】そして、その多孔形態は、三次元網目状、
独立気泡型、連通型などの不規則な孔を有するものや連
続的に孔径が変わるものなど多種多様である。またこれ
らの膜は、多孔膜中の見掛け孔径も不均一なので、対象
とする被分離物の精製又は除去の分離効率に限界があ
る。
【0008】例えば、ポリテトラフルオロエチレンやポ
リオレフィンなどの部分結晶性を有するポリマーフィル
ムを、延伸法によって延伸して得られる延伸膜は、三次
元網目構造を有している。また、延伸条件を制御するこ
とによって孔径を制御しているので、見掛けの孔径が不
均一であり、対象とする分離物の精製又は除去における
分離効率(選択的透過性)が不十分である。
【0009】また、相分離法による非対称膜の製造法に
よれば、セルロースエステル、ポリアミド、ポリスルホ
ン等を対象として、これらのポリマーを溶剤に溶解し、
更に添加剤を加えてドープ液とし、このドープ液を平板
上に流延して、所定時間経過後に貧溶媒と接触させて多
孔膜を得る。この方法による多孔膜は、多孔層の上に活
性層である緻密層又は多孔質スキン層を有している。こ
の方法は、溶媒、沈殿剤、粘性調節剤の選択や濃度、温
度等の製膜条件によって、孔径を制御しているので、見
掛けの孔径が不均一となり分離効率には限界がある。
【0010】ポリテトラフルオロエチレンの微粒子をフ
ィルムに延伸し、焼結法によって焼結して得られる焼結
膜は、孔径が不均一で機械的強度が小さい。
【0011】近年、高分子フィルムに原子炉から発生し
た中性子を含む高エネルギーの荷電粒子(イオン)を照
射して、ポリマー鎖が切断された飛跡を作り、この飛跡
をアルカリ性溶液や酸化性溶液等のエッチング剤によっ
てエッチング処理を行うことにより、多孔膜を得るエッ
チング法が提案されている(特公昭第52−3,987
号公報、特開昭第54−11,971号公報、特開昭第
59−117,546号公報)。
【0012】このエッチング法によれば、非常に均一且
つほぼ完全な円筒状の垂直孔を有する膜(毛管孔膜)を
得ることができる。したがって、かかる膜を分離膜とし
て使用した場合には良好な分離効率を発揮する。
【0013】現在、エッチング法による多孔性分離膜と
して市販されているものは、ポリカーボネート、ポリエ
チレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン等を素材
とする薄膜である。ポリカーボネートやポリエチレンテ
レフタレートの多孔膜は、耐薬品性が不十分であるた
め、用途が限られてしまうという欠点がある。一方、ポ
リフッ化ビニリデンから成る多孔膜は、比較的耐薬品性
に優れるが、一部の有機溶剤に容易に溶けてしまい、更
に耐放射線性にも劣るため、厳しい環境下では使用でき
ないという欠点がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】上記問題点に鑑み、本
発明は、外部環境からの刺激、例えば、pH、電気、
光、温度変化に応答して、孔径を自由に変化し、且つ分
離しようとする物質を認識・識別し得る能力を併せ持
つ、インテリジェント機能を有するポリマーフィルム及
びその製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の発明者らは、上
記課題を解決すべく鋭意研究した結果、荷電粒子を照射
し、エッチング処理することにより孔の形成が可能なポ
リマーフィルム(飛跡−侵食法によって孔の形成が可能
な市販フィルムの全てをも包含する)に、一種又は二種
以上のα−アミノ酸又はそれらのオリゴマーを含む側鎖
基を有する重合性単量体をグラフト重合させて得られる
ポリマーフィルムを用いて、上記目的が達成できること
を見い出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至
った。
【0016】すなわち、本発明によれば、多孔性ポリマ
ーフィルムから成る支持体と、支持体の表面に結合した
一種又は二種以上のα−アミノ酸又はそれらのオリゴマ
ーを含む側鎖基とから成る、環境応答機能を有する多孔
性ポリマーフィルムが提供される。
【0017】本発明の環境応答機能を有する多孔性ポリ
マーフィルムは、支持体と側鎖基とから成るので、支持
体の特性(例えば、機械的特性)を維持したままで、支
持体の表面に上述の一種又は二種以上のα−アミノ酸又
はそれらのオリゴマーを含む側鎖基を結合させ、環境応
答機能を付与せしめ得る。なお、本発明において「支持
体の表面」とは、支持体の上下面のみならず、孔の内壁
面をも包含するものである。
【0018】本発明においては、側鎖基に含まれる一種
又は二種以上のα−アミノ酸又はそれらのオリゴマーと
しては、以下のものが好ましい。
【0019】 また、本発明によれば、ポリマーフィルムに荷電粒子を
照射して照射損傷を形成した後、該照射損傷をエッチン
グ処理により孔を形成させ、ポリマーフィルム表面及び
孔の表面に一種又は二種以上のα−アミノ酸又はそれら
のオリゴマーを含む側鎖基を有する重合性単量体をグラ
フト重合させることを特徴とする環境応答機能を有する
多孔性ポリマーフィルムの製造方法が提供される。
【0020】かくして、本発明によれば、一種又は二種
以上のα−アミノ酸又はそれらのオリゴマーを含む側鎖
基を有する重合性単量体をグラフト重合して成る環境応
答機能を有する多孔性ポリマーフィルムが得られる。
【0021】また、本発明によれば、上記の照射損傷を
形成したポリマーフィルムに、エッチング処理をし、孔
を形成せしめ、次いで、電離性放射線又は紫外線を照射
した後に、又は、照射を行いつつ、一種又は二種以上の
α−アミノ酸又はそれらのオリゴマーを含む側鎖基を有
する重合性単量体をグラフト重合させることより成る、
環境応答機能を有する多孔性ポリマーフィルムの製造方
法が提供される。
【0022】更に、本発明によれば、好ましくは、平均
孔径0.01〜30μmの孔から成る多孔性ポリマーフ
ィルムが提供され、更にまた、環境応答機能の作用によ
って、該孔径が0.001〜5μmまで制御可能な多孔
性ポリマーフィルムが提供される。
【0023】本発明の、一種又は二種以上のα−アミノ
酸又はそれらのオリゴマーを含む側鎖基を有する重合性
単量体は、下記の一般式で表される。
【0024】 このような、側鎖基に一種又は二種以上のα−アミノ酸
又はそのオリゴマーを含む重合性単量体を原料とするポ
リマーの例は無く、本発明において初めて見い出された
ものである。そして、上述のように、かかるポリマー
は、タンパク質やポリペプチドの有する機能とビニル系
ポリマーの有する機能を併せ持つ、新規且つ極めてユニ
ークなポリマーである。かかるポリマーの有する極めて
特異な性質は更に後述する。
【0025】本発明の、一種又は二種以上のα−アミノ
酸又はそれらのオリゴマーを含む側鎖基を有する重合性
単量体の具体例としては、メタクリロイル−L−アラニ
ンメチルエステル、メタクリロイル−L−アラニンエチ
ルエステル、メタクリロイル−L−アラニンイソプロピ
ルエステル、メタクリロイル−L−アラニル−L−アラ
ニンメチルエステル、メタクリロイル−L−アラニル−
L−アラニンエチルエステル、メタクリロイル−L−ア
ラニル−L−アラニンイソプロピルエステル、メタクリ
ロイル−L−アラニル−L−アラニル−L−アラニンメ
チルエステル、メタクリロイル−L−アラニル−L−ア
ラニル−L−アラニンエチルエステル、メタクリロイル
−L−アラニル−L−アラニル−L−アラニンイソプロ
ピルエステル、メタクリロイル−L−プロリンメチルエ
ステル、メタクリロイル−L−プロリンエチルエステ
ル、メタクリロイル−L−プロリンイソプロピルエステ
ル、メタクリロイル−L−プロリル−L−プロリンメチ
ルエステル、メタクリロイル−L−プロリル−L−プロ
リンエチルエステル、メタクリロイル−L−プロリル−
L−プロリンイソプロピルエステル、メタクリロイル−
L−プロリル−L−プロリル−L−プロリンエチルエス
テル、メタクリロイル−L−アラニル−L−プロリンエ
チルエステル、メタクリロイル−L−アラニル−L−ア
ラニル−L−プロリンエチルエステル、メタクリロイル
−L−アラニル−L−プロリル−L−プロリンエチルエ
ステル、メタクリロイル−L−プロリル−L−アラニン
エチルエステル、若しくはメタクリロイル−L−プロリ
ル−L−アラニル−L−アラニンエチルエステル、若し
くはこれらのD体若しくはDL体から成る誘導体又はこ
れらのアクリロイル誘導体が挙げられる。
【0026】更に、上記の化合物におけるアラニンの代
わりにアミノ酸残基Rとして、−CHCH(C
(ロイシン)、−CH−C (フェ
ニルアラニン)、−CH(CH (バリン)、−
CH−C−OH (チロシン)、−CHOH
(セリン)、−CHSH (システィン)、−H
(グリシン)、又は−CH(CH)CHCH
(イソロイシン)を導入した誘導体も挙げられる。
【0027】従って、本発明の環境応答機能を有するポ
リマーフィルムは、支持体の表面に上述の重合性モノマ
ーのアルリロイル残基又はメタクリロル残基を含む側
鎖基を有するものである。
【0028】本発明において使用されるポリマーフィル
ムは、上述の如く一種又は二種以上のα−アミノ酸又は
それらのオリゴマーを含む側鎖基を有する重合性単量体
を、飛跡−侵食法によって孔を形成せしめたフィルム表
面にグラフト重合させて得られる。これらの重合性単量
体は、光、電離性放射線、熱重合、縮合又は触媒を用い
ることによって容易にグラフト重合し、孔を形成したポ
リマーフィルム表面上及び孔内壁にゲル層、つまり環境
応答機能を有するポリマー被膜が形成される。
【0029】本発明で用いられる「ポリマーフィルム」
とは、フィルムやシート状物等の薄膜を意味する。その
膜厚は、エッチング法(飛跡−侵食法)によって多孔膜
を形成できる程度であればよい。本発明においては、ポ
リマーフィルムの材質は特に問わず、一般に市販されて
いる汎用ポリマーフィルムを使用することができる。本
発明において好ましく用いられるポリマーフィルムに
は、例えば、ポリエチレン、コポリ(エチレン−酢酸ビ
ニル)、コポリ(エチレン−ビニルアルコール)、ポリ
プロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、
ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブ
チラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポ
リサルファン、ポリエーテルサルファン、ポリ(テトラ
フルオロエチレン−パーフルオロアルキルエーテル)、
ポリビニルフルオライド、ポリ(テトラフルオロエチレ
ン−エチレン)、ポリビニリデンフルオライド、ポリカ
ーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテル
イミド、ポリ(ジエチレングリコール−ビス−アリルカ
ーボネート)等がある。
【0030】本発明においては、ポリマーフィルムに高
エネルギー荷電粒子(イオン)を照射して、照射損傷を
形成した後、該照射損傷をエッチング処理して孔を形成
することによって、多孔性ポリマーフィルムと成し、こ
れを支持体として用いる。
【0031】荷電粒子としては、例えば、核分裂によっ
て得られる核分裂片やイオン加速器によって得られる加
速イオン等が利用できる。また、原子炉から発生した中
性子を含む粒子など、非荷電粒子を含む荷電粒子を利用
することもできる。
【0032】通常、荷電粒子はポリマーフィルム対し
てほぼ垂直に照射する。これによってポリマーフィルム
中にポリマー鎖が切断された照射損傷(飛跡)を与え
る。この照射損傷は化学的に活性であり、後述のエッチ
ング剤と容易に反応する。次いで、この照射損傷をエッ
チング処理すると、この照射損傷がエッチングされて孔
が形成される。このようにして得られた多孔性ポリマー
フィルムからなる支持体の表面に、一種又は二種以上の
α−アミノ酸又はそれらのオリゴマーを含む側鎖基を有
する重合性単量体をグラフト重合させることにより、本
発明の環境応答機能を有する多孔性ポリマーフィルムが
得られる。
【0033】荷電粒子の照射によって、ポリマーフィル
ムに照射損傷が与えられ、その結果活性な化学種が照射
損傷部分に生じる。均一なシリンダー状の孔を形成する
ためには、この化学種がエッチングによって除去され易
いことが必要である。この化学種を効率よく生成させる
ために、真空下のみならず酸素やオゾン等の活性ガス雰
囲気下で、ポリマーフィルムに荷電粒子を照射してもよ
い。更に、化学種の生成は、荷電粒子の種類や荷電粒子
のエネルギーを選択することによっても定まる。
【0034】エッチング処理による孔の形成は、通常、
照射損傷を与えたポリマーフィルムをエッチング剤に所
定時間浸漬して行う。
【0035】エッチング剤としては、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム等のアルカリ溶液、硫酸、硝酸等の
酸性溶液、重クロム酸カリウム、過マンガン酸カリウム
等の酸化剤などが使用できる。特に、重クロム酸カリウ
ムの硫酸溶液、過マンガン酸カリウムを含むアルカリ溶
液、次亜塩素酸ナトリウムのアルカリ溶液等の酸化性溶
液が好ましい。また、これらの酸化性溶液エッチング剤
に、アルコールや界面活性剤を添加したものも用いるこ
とができる。
【0036】荷電粒子の貫通によって生じたポリマーフ
ィルム中の照射損傷部分は、エッチング処理をすること
によって選択的にエッチング、除去され、孔が形成され
る。
【0037】孔の形成を効率よく行うために、照射損傷
が与えられたポリマーフィルムに、電離性放射線又は紫
外線を照射した後又は照射を行いつつ、エッチング処理
してもよい。電子線やγ線のような電離性放射線または
紫外線を再照射することによって、照射損傷部分の化学
種をよりエッチングされ易い化学種に変えることがで
き、その結果、エッチング時間の短縮や孔径の均一化を
図ることができる。
【0038】このようにして得られる孔の数は、荷電粒
子の数と対応し、荷電粒子の照射条件を選択することに
より任意に孔数の制御ができる。
【0039】また、孔径は、照射する荷電粒子の種類、
エッチング条件によって、0.01〜30μmの範囲で
任意に制御できる。更にポリマーフィルムに環境応答機
能を付与させることによって孔の孔径を0.001nm
〜5μmの範囲で任意に制御できる。
【0040】ポリマーフィルムに孔を形成せしめた後
に、該ポリマーフィルムの表面に、一種又は二種以上の
α−アミノ酸又はそれらのオリゴマーを含む側鎖基を有
する重合性単量体をグラフト重合させる。グラフト重合
の方法には特に制限はなく、上述のように、光、電離性
放射線、熱重合、縮合又は触媒を用いることによって、
グラフト重合を開始させることができる。好ましくは、
電離性放射線を用いたグラフト重合を用いる。この場合
には、例えば、従来より行われている前照射法や同時照
射法を用いることができる。また、かかる重合性単量体
の製造方法は特に問わず、例えば、通常のエステル化反
応によって得ることができる。また、類似の製造方法
は、Eur.Polym.J.27,493−499
(1991)にも記載されている。
【0041】次に、本発明の環境応答機能を有する多孔
性ポリマーフィルムにおける環境応答機能について説明
する。
【0042】本発明でいう環境とは、温度、pH、電
気、光、化学物質等の外部要因をいう。本発明の多孔性
ポリマーフィルムが有する環境応答機能とは、このよう
な温度等の外部変化に対して該ポリマーフィルムがある
種の応答をするような働きをいう。
【0043】このような応答の態様を個々に説明するな
らば、以下の通りである。本発明の多孔性ポリマーフィ
ルムは、外部温度の変化と共にその孔径が変化する。つ
まり、外部温度が低くなるほど孔径が小さくなり、逆
に、外部温度が高くなるほど孔径が大きくなる。このよ
うな挙動は、温度の上昇と共に分子運動が盛んとなり体
積が膨張するという分子運動論の立場からは全く説明の
できないものであり、本発明者らによって、初めて見い
出された新規な現象である。
【0044】また、孔径とpHとの関係は、pHが高く
なるにつれて孔径が大きくなることが見い出された。孔
径の拡大する程度は、側鎖基に含まれるアミノ酸又はそ
のオリゴマーの種類及びpHによって異なる。
【0045】更に、孔径と電気又は光との関係は、電気
又は光を与えると孔径は小さくなり、逆に電気又は光を
遮断すると孔径は大きくなる。
【0046】このような孔径の変化は、10μmのオー
ダーから0.01nmのオーダーまで幅広いものである
ので、本発明の多孔性ポリマーフィルムが外部環境の変
化によって孔径が変化することを利用して、物質を選択
的に濾過したり、除去したりすることが可能となる。
【0047】このような、温度等の変化による孔径の変
化は、ある値において急激に起こるものであり、かつ可
逆的なものなので、本発明の多孔性ポリマーフィルム
は、外部環境の変化によってON−OFFのスイッチン
グ動作を行うといえる。
【0048】また、本発明の多孔性ポリマーフィルム
は、上述の温度等の変化に対する応答の他に、化学物質
の認識及び識別機能をも有する。つまり、本発明の多孔
性ポリマーフィルムは、孔を通過しようとする物質を認
識し、その物質が孔を通過すべきものであるか否かを識
別する機能を有するのである。この認識及び識別機能は
孔径の変化とは別個に発現するものである。従って、孔
径よりも小さな物質でさえも本発明の多孔性ポリマーフ
ィルムの有する物質の認識及び識別機能によって、その
通過が阻まれることがある。このような機能によって、
混合溶液から特定の物質のみを選択的に分離することが
可能となる。
【0049】このように、本発明の多孔性ポリマーフィ
ルムは種々の環境応答機能を発現するが、そのメカニズ
ムについては未だ詳細には解明されていない。しかしな
がら、このような環境応答機能が、メチレン主鎖の側鎖
基として導入されたα−アミノ酸又はそのオリゴマーの
はたらきによるものであることは確かである。かかるメ
カニズムはアミノ酸を多数配列したタンパク質やポリペ
プチドのみから、又は通常のビニルポリマーのみからは
発現しないものであり、この両者の組み合わせによって
初めて発現するものである。本発明者らは、当該技術分
野において全く知られていなかった一種又は二種以上の
α−アミノ酸又はそれらのオリゴマーを含む側鎖基を有
するビニルモノマーを初めて合成し、これを原料として
多孔性ポリマーフィルムを得たところ上述の環境応答機
能を見い出し、本発明をなすに至ったものである。そし
て、本発明の多孔性ポリマーフィルムは、単に機能が付
与された材料に止まらず、生体物質と同様に周囲の環境
を自発的にセンシングしてそれに応答する作用をもつこ
とから、機能性材料に続く次世代の材料と目されるイン
テリジェントマテリアルに属するものであるといえる。
【0050】以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細
に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定さ
れるものではない。
【0051】
【実施例1】 ジエチレングリコールジアクリレート
を、ジイソプロピルパーオキシカーボネート(濃度3
%)を用いて重合せしめ、厚さ100μmのポリマーフ
ィルムを得た。このポリマーフィルムに、イオン加速器
から発生したAr10+イオンを8×10個/cm
照射して、照射損傷を形成させた。次いで、このポリマ
ーフィルムを、温度50℃、濃度5Nの水酸化ナトリウ
ム溶液に5時間浸漬してエッチング処理をした。エッチ
ング処理後のポリマーフィルムは1μmの孔を有するも
のであった。この孔を形成したポリマーフィルムを濃度
1%のメタクリロイル−L−アラニンメチルエステル水
溶液に浸漬し、窒素ガスで溶液をバブリングした。その
後に、室温で60Coからのγ線を30kGy照射し
て、メタクリロイル−L−アラニンメチルエステルを、
ポリマーフィルムの表面にグラフト重合せしめた。この
ようにして得られた本発明のポリマーフィルムを、それ
ぞれ40℃、0℃の水に浸し、その後、凍結乾燥処理を
行い、ポリマーフィルムの孔径を電子顕微鏡で観察し
た。その結果、40℃での孔径は1μmであったが、0
℃では孔が完全に消失していた。また、この孔径の変化
は可逆的であった。
【0052】
【実施例2】実施例1と同様の孔を有するポリマーフィ
ルムを支持体として用いた。このポリマーフィルムの表
面に、濃度2%のメタクリロイル−L−アラニンメチル
エステルをグラフト重合せしめ、本発明のポリマーフィ
ルムを得た。このようにして得られた本発明のポリマー
フィルムを、温度25℃のpH5及びpH2の緩衝溶液
にそれぞれ浸したところ、pH5の場合に1.0μmで
あった孔径は、pH2では完全に消失した。また、この
孔径の変化は可逆的であった。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【実施例3】厚さ10μmの市販のポリエチレンテレフ
タレートフィルムに、イオン加速器から発生した209
Biイオンを5×10個/cm照射して、照射損傷
を形成せしめた。次いで、このポリマーフィルムを温度
40℃のエッチング剤に1時間浸漬してエッチング処理
を行った。エッチング剤は、重クロム酸カリウム(5グ
ラム)を含む、30%硫酸(18グラム)溶液であっ
た。エッチング処理後のポリマーフィルムには、直径1
μmの穿孔が形成された。この孔を有するポリマーフィ
ルムを、濃度4%のアクリロイル−L−プロリン水溶液
に浸し、50℃の温度でγ線を照射して、ポリマーフィ
ルムの表面ポリ(アクリロイル−L−プロリン)をグ
ラフト重合せしめた。γ線の線源は、60Coであり、
線量率は5kGy/h、照射時間は4時間であった。
【0057】このようにして得られた本発明のポリマー
フィルムを10℃の硫酸ナトリウムの電解質溶液に浸
し、50Vの電圧を印加したところ、電圧を印加したポ
リマーフィルムの孔径は50nmとなった。これにたい
して、電圧を印加しないポリマーフィルムの孔径は、1
μmであった。また、この孔径の変化は、可逆的であっ
た。
【0058】
【実施例4】実施例1と同様の孔を有するポリマーフィ
ルムを支持体として用いた。このポリマーフィルムを2
%のアクリロイル−D−チロシル−D−チロシル−L−
プロリンエチルエステル水溶液中に浸し、過酸化ベンゾ
イル(3%)を用いて50℃で1時間処理し、支持体表
面に重合性単量体をグラフト重合せしめた。
【0059】このようにして得られた本発明のポリマー
フィルムに、30%ジメチルスルホキシド/30%エチ
ルアルコール/40%水の混合溶液を40℃で透過させ
たところ、エチルアルコールを95%回収できた。これ
に対して、ジメチルスルホキシドの回収率は5%であっ
た。
【0060】
【発明の効果】本発明は、飛跡−侵食法によって孔を形
成させたポリマーフィルム表面上に、環境応答機能を有
する重合性単量体をグラフト重合せしめることによっ
て、該ポリマーフィルムに分離対象物を容易に分離・分
別し得る機能を付与することができる。従って、本発明
の環境応答機能を有するポリマーフィルムは、特に医療
分野でのウイルス等の分別や諸工業プロセスでの高効率
分離能が要求される分野での利用に有効である。
【0061】更に、外部環境からの刺激、例えばpH、
電気、温度変化に対し孔径を任意に制御できるので、血
液成分、ホルモン、水に溶けている有機物質等を分離で
きるばかりでなく、物質を認識及び識別できる能力を併
せ持つので、化学・物理構造が類似する物質の分離にも
有効である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大道 英樹 群馬県高崎市綿貫町1233番地 日本原子 力研究所高崎研究所内 (56)参考文献 特開 平3−32729(JP,A) 特開 平3−242233(JP,A)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多孔性ポリマーフィルムから成る支持体
    と、支持体の表面に結合した一種又は二種以上のα−ア
    ミノ酸又はそれらのオリゴマーを含む側鎖基とから成
    る、環境応答機能を有する多孔性ポリマーフィルム。
  2. 【請求項2】 側鎖基が (式中、nは1〜10の整数であり、lは1〜10の整
    数であり、Rはアミノ酸残基であり、RはH又はア
    ルキル基である)を含む、請求項1に記載の環境応答機
    能を有する多孔性ポリマーフィルム。
  3. 【請求項3】 多孔性ポリマーフィルムの孔径が0.0
    1〜30μmである、請求項1に記載の環境応答機能を
    有する多孔性ポリマーフィルム。
  4. 【請求項4】 ポリマーフィルムに荷電粒子を照射して
    照射損傷を形成した後、該照射損傷をエッチング処理に
    より孔を形成せしめ、次いで、孔を有する該ポリマーフ
    ィルムの表面に一種又は二種以上のα−アミノ酸又はそ
    れらのオリゴマーを含む側鎖基を有する重合性単量体を
    グラフト重合させることを特徴とする環境応答機能を有
    する多孔性ポリマーフィルムの製造方法。
  5. 【請求項5】 重合性単量体が、 (式中、XはH又はメチル基であり、nは1〜10の整
    数であり、lは1〜10の整数であり、Rはアミノ酸
    残基であり、RはH又はアルキル基である)である、
    請求項4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 孔径0.01〜30μmの孔を形成せし
    める、請求項4に記載の方法。
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