JP2024049800A - フレーク金属粉末、フレーク金属粉末の製造方法、導電性ペースト、積層セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents

フレーク金属粉末、フレーク金属粉末の製造方法、導電性ペースト、積層セラミック電子部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】昇温を開始してから所定の低温の領域までで焼結がある程度以上に進む金属粉末を提供すること。【解決手段】レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)が0.7~4.9μmであり、25℃から900℃まで昇温速度10℃/分で昇温する熱機械分析(TMA)を行ったとき、収縮率が6.0%となるときの温度が658℃以下である、フレーク金属粉末。【選択図】図3

Description

本発明は、昇温を開始してから所定の低温の領域までで焼結がある程度以上に進むフレーク金属粉末、フレーク金属粉末の製造方法、導電性ペースト及び積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
従来、積層セラミックコンデンサ(MLCC)や積層セラミックインダクタ(MLCI)などの積層セラミック電子部品の内部電極や外部電極を形成する焼成型導電性ペーストの材料として、銅粉や銀粉や、銀コート銅粉などの金属粉末が使用されている。前記MLCCやMLCIは、例えば、誘電体層と内部電極層とが交互に積層された積層体と、この積層体の側面に形成されて内部電極と接続される外部電極を備えた構造をとっている。
導電性ペーストは、金属粉末を樹脂や溶剤等の有機ビヒクルに分散させたもので、誘電体層を形成する誘電体膜(グリーンシート)と導電性ペーストの塗膜を交互に積層した積層体の側面に、外部電極となる導電性ペーストの塗膜を形成し、これを焼成する工程などを経て、積層セラミック電子部品が製造される。
導電性ペーストに使用する金属粉末としては、電気抵抗を下げるなどの目的で、球状粉末よりも比表面積が高く粒子同士の接触面積が大きいフレーク粉末を使用することが検討されている(例えば特許文献1及び2)。
なお特許文献3には、平均粒径0.5~10μmでD90/D10が1~3の球状銅粉に潤滑剤を0.1~3重量%添加したうえ、機械的エネルギーによりフレーク状の銅粉に加工することを特徴とする、厚みや粒径が均一であるフレーク状銅粉の製造法が開示されている。当該文献の実施例では、前記機械的エネルギーを付与するためのメディアとして2.3mm径や3.0mm径のジルコニアボールが用いられている。
特開2004-169155号公報 特開2003-119501号公報 特開2005-200734号公報
上述の通り、誘電体層を形成する誘電体膜(グリーンシート)と導電性ペーストの塗膜を交互に積層した積層体の側面に外部電極となる塗膜を形成したものを焼成する工程などを経て、積層セラミック電子部品が製造される。前記焼成の温度は例えば900~1400℃程度であるが、前記積層体を、加熱炉において室温から前記の温度(焼成温度、と呼ぶこととする)まで昇温し、焼成温度で所定時間保持することで焼成工程が実施される。当該工程の生産性の点から、昇温時間及び焼成温度での保持時間は短くすることが望まれる。
焼成工程にて、金属粉末の焼結は焼成温度に達する前から始まる。焼成温度より低い所定の温度まで昇温したところで、ある程度以上に焼結が進んでいないと、焼成温度で保持しても、金属粉末の粒子が十分に焼結していない箇所が生じうる。生産性を高めるべく焼成温度での保持時間を短くした場合はその可能性が特に高くなる。そして十分に焼結していない個所が、積層セラミック電子部品においてクラック発生などの原因となりうる。
そこで本発明では、昇温を開始してから所定の低温の領域までで焼結がある程度以上に進む金属粉末を提供することを目的とする。なお本発明では、前記「昇温を開始してから所定の低温の領域までで焼結がある程度以上に進む」の指標として、金属粉末に対して25℃から900℃まで昇温速度10℃/分で昇温する熱機械分析(TMA)を行ったとき、収縮率が6.0%となるときの温度が658℃以下であること、を採用するものとする。焼成温度は上記の通り例えば900~1400℃程度であるが、こういった温度よりも200℃以上低い温度において6.0%以上収縮すれば(この収縮は金属粉末の焼結により起こる)、焼成温度で保持したときに、焼結が不十分な箇所が極めて生じにくいと期待される。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)が0.7~4.9μmであり、25℃から900℃まで昇温速度10℃/分で昇温する熱機械分析(TMA)を行ったとき、収縮率が6.0%となるときの温度が658℃以下であるフレーク金属粉末が、昇温を開始してから所定の低温の領域までで焼結がある程度以上に進むことを見出した。またそのようなフレーク金属粉末は、粒度分布がシャープであり粒子径が所定のサイズにある金属粉末を液体媒体との混合スラリーとした湿式条件で、小サイズのメディアビーズを用いて、前記混合スラリーを循環させながら、前記金属粉末を塑性変形させてその形状をフレーク状にすることで製造できることも、本発明者らは見出した。
以上により、本発明者らは本発明を完成した。すなわち本発明は、以下の通りである。
[1]レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)が0.7~4.9μmであり、25℃から900℃まで昇温速度10℃/分で昇温する熱機械分析(TMA)を行ったとき、収縮率が6.0%となるときの温度が658℃以下である、フレーク金属粉末。
[2]以下の方法で測定した短軸径の相対標準偏差が65.0%以下である、[1]に記載のフレーク金属粉末:
エポキシ樹脂及びイミダゾール硬化剤を10:1の質量割合で混合して得られた混合物10質量部と、前記フレーク金属粉末40質量部とを混合した硬化性組成物を試料台上に塗布して120℃で加熱硬化させ、得られた硬化物について、クロスセクションポリッシャにより、前記硬化物と試料台の接触面に平行な断面を切り出す加工を行い、得られた断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)により加速電圧5kV、倍率5000倍で観察し、得られた観察画像中の、前記フレーク金属粉末を構成する各金属粒子の短軸径の相対標準偏差を静的画像解析により求める。
[3]前記フレーク金属粉末の、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積90%粒子径(D90径)と、同様に測定した体積基準の累積10%粒子径(D10径)との差を、同様に測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)で除した値が1.4以下である、[1]又は[2]に記載のフレーク金属粉末。
[4]前記フレーク金属粉末に対して25℃から900℃まで昇温速度10℃/分で昇温する熱機械分析(TMA)を行ったとき、収縮率が6.0%となるときの温度と収縮率が1.0%となるときの温度との差が195℃以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のフレーク金属粉末。
[5]前記フレーク金属粉末を構成する金属が、銅及び銀からなる群より選ばれる少なくとも一種である、[1]~[4]のいずれかに記載のフレーク金属粉末。
[6]前記フレーク金属粉末の短軸径の平均値が0.1~1.5μmである、[2]に記載のフレーク金属粉末。
[6’]前記フレーク金属粉末について[2]に記載の走査型電子顕微鏡による観察をした際の、前記フレーク金属粉末の短軸径の平均値が0.1~1.5μmである、[1]~[5]のいずれかに記載のフレーク金属粉末。
[7]前記走査型電子顕微鏡による観察で得られた観察画像中の、前記フレーク金属粉末を構成する各金属粒子の長軸径を短軸径で除して求められるアスペクト比の平均値が、1.5以上である、[2]に記載のフレーク金属粉末。
[7’]前記フレーク金属粉末について[2]に記載の走査型電子顕微鏡による観察をした際の、得られた観察画像中の、前記フレーク金属粉末を構成する各金属粒子の長軸径を短軸径で除して求められるアスペクト比の平均値が、1.5以上である[1]~[6]及び[6’]のいずれかに記載のフレーク金属粉末。
[8]メディアビーズを用いて金属粉末を塑性変形させてその形状をフレーク状にするフレーク金属粉末の製造方法であって、前記金属粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)が0.6~4.0μmであり、前記金属粉末の、同様に測定した体積基準の累積90%粒子径(D90径)と、同様に測定した体積基準の累積10%粒子径(D10径)との差を、前記累積50%粒子径(D50径)で除した値が1.3以下であり、前記メディアビーズの直径が0.8mm以下であり、前記金属粉末を液体媒体との混合スラリーとして、この混合スラリーを循環させながら、前記メディアビーズによる塑性変形を実施する、フレーク金属粉末の製造方法。
[9]前記金属粉末とメディアビーズの使用割合が、質量基準で1:4~15である、[8]に記載のフレーク金属粉末の製造方法。
[10]前記金属粉末の塑性変形を、前記混合スラリー及びメディアビーズを収容する収容部並びに前記混合スラリー及びメディアビーズを撹拌する撹拌羽根を備える撹拌装置により行い、前記混合スラリーの循環を、当該スラリーのうちその鉛直方向における中央位置よりも底部側の下部位置にあるスラリーを前記収容部から抜き出し、抜き出した混合スラリーを、前記収容部内の前記中央位置よりも鉛直方向上側の上部位置に投入することにより実施する、[8]又は[9]に記載のフレーク金属粉末の製造方法。
[11]前記混合スラリーの循環において、前記混合スラリーの全量に相当する量が前記収容部から抜き出されるのに要する時間が0.6~5分である、[10]に記載のフレーク金属粉末の製造方法。
[12][1]~[7]、[6’]及び[7’]のいずれかに記載のフレーク金属粉末が、有機溶剤及びバインダ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の中に分散している、導電性ペースト。
[13]金属粉末Aが有機溶剤A及びバインダ樹脂Aからなる群より選ばれる少なくとも一種の中に分散している導電性ペースト1と、セラミック粉末が有機溶剤B及びバインダ樹脂Bからなる群より選ばれる少なくとも一種の中に分散している誘電体ペーストとを用いて、前記導電性ペースト1の塗膜1と前記誘電体ペーストの塗膜2が交互に積層された積層体を形成し、前記積層体の、前記塗膜1と塗膜2の積層方向に平行な側面に、金属粉末Cが有機溶剤C及びバインダ樹脂Cからなる群より選ばれる少なくとも一種の中に分散している導電性ペースト2を塗布して塗膜3を形成し、当該塗膜3が形成された積層体を900~1400℃で焼成する、積層セラミック電子部品の製造方法であって、前記導電性ペースト1及び/又は導電性ペースト2が、[12]に記載の導電性ペーストである、積層セラミック電子部品の製造方法。
[14]前記焼成が、前記積層体を-20~50℃から900~1400℃の焼成温度まで昇温して、当該焼成温度で保持することにより実施され、前記昇温の時間及び焼成温度での保持の時間の合計が10分~3時間である、[13]に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
[15]前記昇温の時間及び焼成温度での保持の時間の合計に占める、前記焼成温度での保持の時間の割合が30%以上である、[14]に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
本発明によれば、昇温を開始してから所定の低温の領域までで焼結がある程度以上に進む金属粉末が提供される。
実施例における混合スラリーの循環について示す模式図である。 実施例1のフレーク銅粉末のSEM写真を示す。 実施例1のフレーク銅粉末の、MORPHOLOGI4での短軸径の評価にあたって撮影したSEM写真を示す。 比較例5に係るフレーク銅粉末の、MORPHOLOGI4での短軸径の評価にあたって撮影したSEM写真を示す。 それぞれ実施例1及び比較例2のフレーク銅粉末を含む導電性ペーストをアルミナ基板上に塗布し、塗膜を加熱して形成された熱処理物のSEM写真を示す。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお本明細書において数値範囲を示す表記「A~B」とは、A以上B以下であることを意味する。ここで、A及びBは、B>Aを満たす単位を伴うことのある数値である。
[フレーク金属粉末]
上述の通り、本発明のフレーク金属粉末は、粒子径が所定の範囲にあり、熱機械分析(TMA)を行ったときに収縮率が6.0%となるときの温度が658℃以下であるものである。以下、当該フレーク金属粉末の各構成について説明する。
<フレーク形状>
本発明の金属粉末は、フレーク形状であり、フレーク形状とは薄片状のことをいう。フレーク形状は、板面を有する形状や、扁平な形状であると好ましい。フレーク形状の粉末は球状粉末よりも比表面積が高く粒子同士の接触面積が大きいので、本発明のフレーク金属粉末を焼結させると、導電性に優れた導電体層が形成できる。
このフレーク金属粉末は、乾燥状態で走査型電子顕微鏡(SEM)により加速電圧5kV、倍率5000倍で観察すると、粉末を構成する多くの粒子が、板面が見える状態で撮影される。一方フレーク金属粉末を、後述する硬化性組成物として加熱硬化させ、得られた硬化物について、クロスセクションポリッシャにより所定の断面を切り出す加工を行い、得られた前記断面について、SEMにより同様に観察すると、得られた観察画像においては、多くの粒子が、前記板面に直交する断面が見える状態であり、観察画像における粒子の後述する平均アスペクト比を求めると、1.5以上である。
<金属種>
本発明のフレーク金属粉末の金属種に特に限定はないが、具体例としては、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Zn(亜鉛)が挙げられる。これらの単金属からなる粉末でも、複数の金属の合金粉末でもよい。また、前記の単金属又は複数金属からなるコア粒子が、前記のいずれかの金属で被覆された粉末であってもよい(コア粒子を構成する金属と、被覆層を形成する金属の種類は異なる)。
前記の金属の中でも、導電性に優れることから銅及び銀が好ましい。
<体積基準の累積50%粒子径>
本発明のフレーク金属粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)は0.7~4.9μmである。D50径があまりに小さいと粒子が凝集しやすく、凝集した二次粒子の存在により導電性ペーストの材料として使用する場合に充填性が悪くなり、導電性の良好な導電体層が得られない。一方D50径が大きすぎると、熱機械分析を行ったときの収縮率が6.0%となるときの温度が高くなってしまう。これらの点や薄い電極の形成を可能とする観点から、D50径は好ましくは0.8~4.5μmであり、より好ましくは1.0~4.0μmである。
<熱機械分析(TMA)での6%収縮温度TMA6%
本発明のフレーク金属粉末は、昇温を開始してから所定の低温の領域までで焼結がある程度以上に進む金属粉末であり、具体的には、前記フレーク金属粉末に対して25℃から900℃まで昇温速度10℃/分で昇温する熱機械分析(TMA)を行ったとき、収縮率が6.0%となるときの温度(6%収縮温度TMA6%)が658℃以下である。このような特性を示すため、本発明のフレーク金属粉末を導電性ペーストの金属フィラーとして使用して積層セラミック電子部品の製造に用いると、焼成工程において焼結が不十分な箇所が極めて発生しにくい。
なお前記のTMAのより詳細な条件は以下のとおりである。
フレーク金属粉末0.5gと、当該粉末に対して質量割合2%のビヒクル(Mitsubishi Plastics BR-105(三菱樹脂株式会社製)とテルピネオールの、質量割合3:7(BR-105:テルピネオール)の混合物)を混合し、プレス機を用いて荷重360Nで20秒間押し固めて測定試料(5mmφ)を作製する。この測定試料を直径5mm、高さ3mmのアルミナパンに詰めて、熱機械分析(TMA)装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製のTMA/SS6200)の試料ホルダ(シリンダ)にセットし、測定プローブにより、N雰囲気下で、測定荷重49mNの荷重を付与して、常温(25℃)から昇温速度10℃/分で900℃まで昇温して、測定試料の収縮量を測定する。
本発明のフレーク金属粉末の6%収縮温度TMA6%は、前記の焼成工程において焼結が不十分な箇所を発生させない観点、及びセラミック粉末と焼結のタイミングをそろえて、積層セラミック電子部品の製造において内部電極や外部電極となる塗膜と誘電体層の焼結のタイミングのずれによる応力の発生(クラックの原因となりうる)を防止する観点から、好ましくは400~650℃であり、より好ましくは480~640℃である。
<短軸径の相対標準偏差>
本発明のフレーク金属粉末の、下記で説明する静的画像解析により測定した短軸径の相対標準偏差は、当該粉末が昇温を開始してから所定の低温の領域までで焼結がある程度以上に進む性質を備える観点から、好ましくは65.0%以下である。相対標準偏差とは標準偏差を平均値で除したものである。短軸径の相対標準偏差が65.0%以下であるということは、フレーク金属粉末を構成する粒子の短軸径のバラつきが小さいことを意味する。下記の静的画像解析にて説明する通り、短軸径はフレーク金属粉末の粒子の厚みを反映するので、短軸径のバラつきが小さいことは、前記粒子の厚みが均一であることを意味する。フレーク粒子の厚みが薄いと粒子内部までの伝熱が速く、加熱した時に粒子の焼結が起こりやすい。反対にフレーク粒子が厚いと粒子内部までの伝熱が遅く、粒子の焼結が起こりにくい。相対標準偏差が小さいということは、過度に厚いフレーク粒子が極めて少ないということであり、前記相対標準偏差が65.0%以下であるフレーク金属粉末は、TMA分析において昇温を開始してから収縮率6.0%になるのが658℃以下という条件を好適に満足することができる。
(静的画像解析)
本発明のフレーク金属粉末の短軸径の相対標準偏差を求めるため、以下の通り、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察するための硬化物試料を作製する。
エポキシ樹脂(日本電子製の「エポキシ(G-2)取説付きPart A」)とイミダゾール硬化剤(日本電子製の「エポキシ(G-2)取説付きPart B」)を10:1の質量割合で混合する。得られた混合物10質量部に対して本発明のフレーク金属粉末を40質量部添加混合する。得られた混合物(硬化性組成物)を試料台上に塗布し、70℃で真空脱泡した後、120℃で60分加熱することで硬化させる。得られた硬化物の表面を粗さ1000のやすりで削って平滑にし、得られた硬化物試料が乗った試料台をクロスセクションポリッシャ(日本電子株式会社製)の回転ホルダに装入する。そしてその硬化物試料の断面を前記クロスセクションポリッシャで切り出す加工を行う。なおこの断面は、前記硬化物と試料台の接触面に平行である。
このように切り出された断面においては、メカニズムは不明であるが、フレーク金属粉末の板面に直交する断面が見えるように当該粉末の粒子が配向している。前記切り出された断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で、加速電圧5kV、拡大倍率5000倍で観察する。
得られたSEM画像を静的画像解析装置(例えばマルバーン・パナリティカル社製のMORPHOLOGI 4)に取り込み、粒子がある箇所と粒子のない箇所を二値化する。この二値化は、例えば静的画像解析装置のソフトにおけるコントラストの数値を設定することにより行うことができる。
そして当該ソフトにより、二値化された粒子の画像から、その平均短軸径(Width Mean)及び短軸径の相対標準偏差(Width RSD)のデータを取得する。なお短軸径とは、粒子の長軸径に直交する、粒子の輪郭上の2点を結ぶ線分のうち、長さ最大の線分の長さである。前記長軸径とは、粒子の輪郭上の2点を結び、粒子外に出ることのない線分のうち、長さ最大の線分の長さである。上記の通り粒子画像を撮影した断面においては、フレーク金属粉末の板面に直交する面が見えるように、当該粉末の粒子が配向している。従って前記粒子画像における短軸径は、フレーク金属粉末の粒子厚みととらえることができる。
なお平均短軸径及び短軸径の相対標準偏差のデータ取得にあたっては、複数粒子(凝集粒子など)を単一粒子として認識した粒子を除去するため、また断面試料を作製する際にどうしても生じてしまう、粉末中には実際には存在しない(試料作成の過程で作り出された)極小径の粒子欠片を除去するために、フィルタリング条件を設定する。具体的には、前者の粒子の除去のため、例えば「Convexity(周長包絡度)>0.9」の粒子を測定対象とする、という条件を採用することができる。凝集粒子などは凹凸が多いため周長包絡度(=包絡周囲長/実測周囲長)が小さくなりやすい。また後者の除去のためには、例えば「CE Diameter(面積円相当径)>フレーク金属粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)の1/10~1/70」である粒子を測定対象とする、という条件を採用することができる。本発明のフレーク金属粉末のD50径は上記の通り0.7~4.9μmであるが、このようなフレーク金属粉末については、CE Diameter(面積円相当径)>0.2μmの粒子を測定対象とする、という条件を採用すれば、適切な評価をすることができる。
以上のようなフィルタリング条件を設定して、100粒子以上について短軸径を求める。測定粒子数の上限は特に制限されないが、例えば2000粒子とすることができる。
このようにして測定されるフレーク金属粉末の短軸径の相対標準偏差は、当該粉末が昇温を開始してから所定の低温の領域までで焼結がある程度以上に進むようにする観点と、相対標準偏差を非常に小さい値とすることは製造上困難であることから、より好ましくは15~64.0%であり、更に好ましくは25~63.0%であり、特に好ましくは40~62.5%である。
<平均短軸径>
本発明のフレーク金属粉末が、後述する熱機械分析において658℃までに6.0%(以上)収縮するほどの優れた焼結性を示すためには、短軸径自体が小さいことが非常に好ましい。この観点と、製造可能性の観点から、フレーク金属粉末の、上記静的画像分析で求めた短軸径の平均値(平均短軸径)は、好ましくは0.1~1.5μmであり、より好ましくは0.25~1.2μmであり、さらに好ましくは0.35~1.0μmである。
<TMAでの6%収縮温度TMA6%と1%収縮温度TMA1%の差>
本発明のフレーク金属粉末は、TMAでの6%収縮温度TMA6%とTMAにて収縮率が1.0%となるときの温度である1%収縮温度TMA1%の差(TMA6%-TMA1%)が小さいことが好ましい。1.0%収縮するのは、フレーク金属粉末の焼結が開始するときのタイミングであり、当該粉末を構成する粒子の中でも特に粒子径の小さいものなど、焼結しやすいものが焼結している。6.0%収縮すればほぼ全体的に粒子の焼結が起こっていると考えることができるので、6.0%収縮温度と1.0%収縮温度の差が小さい場合、フレーク金属粉末を構成する金属粒子が全体的にそろったタイミングで焼結することを意味すると考えられる。この場合、焼結個所の偏りやタイミングの大きなずれによる応力の発生が防止されると期待され、好ましい。以上の観点から、前記差(TMA6%-TMA1%)は好ましくは195℃以下である。なお、前記差(TMA6%-TMA1%)を非常に小さくすることは粉末の製造上困難であることもあわせると、前記差(TMA6%-TMA1%)は好ましくは30~185℃であり、より好ましくは70~145℃である。
<(D90径-D10径)/D50径>
本発明のフレーク金属粉末は、例えば後述する本発明のフレーク金属粉末の製造方法により製造することができる。当該方法では粒度分布がシャープな粉末を原料に使うので、出来上がるフレーク金属粉末の粒度分布もシャープになりやすい。
この場合、フレーク金属粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積90%粒子径(D90径)と、同様に測定した体積基準の累積10%粒子径(D10径)との差を、同様に測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)で除した値((D90径-D10径)/D50径)は好ましくは1.4以下である。また、過度に粒度分布がシャープな粉末は原料コストが高まるので、(D90径-D10径)/D50径はより好ましくは0.8~1.35である。
<平均アスペクト比>
上記で説明した、本発明のフレーク金属粉末の短軸径(フレーク金属粉末の厚みに相当する)の相対標準偏差を求める際に、フレーク粉末の構成粒子の長軸径も求められる。各構成粒子の長軸径/短軸径を当該粒子のアスペクト比とする。本発明のフレーク金属粉末において、これの平均値である平均アスペクト比は、当該粉末を含む導電性ペーストから形成される導電体層の導電性(以下単に導電性、ともいう)の観点から、好ましくは1.5以上である。平均アスペクト比を非常に大きくすることは製造上困難であり、この点もあわせると、平均アスペクト比は好ましくは2.0~15であり、より好ましくは2.4~10である。
<酸素量、炭素量>
本発明のフレーク金属粉末中の酸素量は、導電性の観点から1質量%以下であることが好ましく、0.02~0.8質量%であることが好ましく、0.05~0.6質量%であることがさらに好ましい。本発明のフレーク金属粉末中の炭素量は、焼成時のガス発生抑制の観点から0.5質量%以下であることが好ましく、0.35質量%以下であることがより好ましく、0.03~0.30質量%であることがさらに好ましい。
<BET比表面積>
本発明のフレーク金属粉末のBET比表面積は、0.05~1.2m/gであることが好ましく、0.1~1.0m/gであることがさらに好ましい。
<タップ密度>
本発明のフレーク金属粉末のタップ密度は、フレーク金属粉末を導電性ペーストの材料として使用する場合に、粉末の充填性を高めて良好な導電性の導電体を形成するために、またタップ密度の向上には限度があることから、2.8~7g/cmであることが好ましく、3.5~6.5g/cmであることがより好ましい。
[金属粉末の製造方法]
次に、本発明のフレーク金属粉末の製造方法について説明する。当該製造方法は、メディアビーズを用いて金属粉末を塑性変形させてその形状をフレーク状にするフレーク金属粉末の製造方法であって、前記金属粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)が0.6~4.0μmであり、前記金属粉末の、同様に測定した体積基準の累積90%粒子径(D90径)と、同様に測定した体積基準の累積10%粒子径(D10径)との差を、前記累積50%粒子径(D50径)で除した値が1.3以下であり、前記メディアビーズの直径が0.8mm以下であり、前記金属粉末を液体媒体との混合スラリーとして、この混合スラリーを循環させながら、前記メディアビーズによる塑性変形を実施する。以下、本発明のフレーク金属粉末の製造方法における各構成について説明する。
<金属粉末(元粉)>
フレーク形状に加工される(以下、フレーク形状に加工することを「フレーク化する」ともいう)前の金属粉末を「元粉」という。元粉である金属粉末の粒子径は、前記のとおりである。金属粉末があまりに小さいと、フレーク化時にメディアビーズ同士の隙間に入り込んで十分なフレーク化がなされない(ビーズによって潰されにくい)。また非常に小さい粒子は凝集しやすく、凝集粒子を含む金属粉末は導電性ペーストの材料に使用した場合に充填性が悪く、導電性の良好な導電体層が得られない。一方金属粉末が大きすぎると、その大きさゆえに6%収縮温度TMA6%が高くなる。またメディアビーズに対して金属粉末が大きいと、粒子全体が均一にフレーク化される(ビーズにより潰される)確率が下がり、得られるフレーク化金属粉末の構成粒子の厚さがばらついてしまう。これも、6%収縮温度TMA6%が大きくなる方向に作用する。以上の理由から、金属粉末の累積50%粒子径(D50径)は0.6~4.0μmとされる。D50径は好ましくは0.8~3.5μmである。
フレーク金属粉末の元粉である金属粉末の(D90径-D10径)/D50径は、前記のとおり1.3以下であり、当該粉末は粒度分布がシャープである。粒度分布がブロードであると((D90径-D10径)/D50径が1.3より大きいと)、粉末中に粒子径の大きい粗粒が存在することになり、このような粗粒を十分にフレーク化することは困難である。結果、得られるフレーク金属粉末の短軸径の相対標準偏差が大きくなり、6%収縮温度TMA6%が高くなる。なお粒度分布が過度にシャープな金属粉末は製造コストが高いことから、(D90径-D10径)/D50径は好ましくは0.8~1.2である。
元粉である金属粉末の形状は特に制限されず、例えば略球状、粒状、樹枝状など、種々の形状であってよい。
金属粉末を構成する金属種は、本発明のフレーク金属粉末の金属種と同様であり、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Zn(亜鉛)の単金属からなる粉末でも、複数の金属の合金粉末でもよい。また、前記の単金属又は複数金属からなるコア粒子が、前記のいずれかの金属で被覆された金属コート粉末であってもよい(コア粒子を構成する金属と、被覆層を形成する金属の種類は異なる)。なお本発明においては、フレーク形状でない金属コート粉末を本発明で規定するフレーク化に供しても、フレーク形状でないコア粒子の粉末をフレーク化したのち所定の金属で被覆してもよい。
以上説明した元粉である金属粉末は、湿式還元法やアトマイズ法や気相法など、従来公知の方法で製造可能であり、また市販もされている。金属コート粉末についても、従来公知のコート方法、例えばコア粒子の構成金属と銀の置換反応を利用した置換法や、還元剤を用いる還元法により製造することができる。
<湿式フレーク化>
本発明においては、以上説明した元粉である金属粉末と液体媒体との混合スラリーに対して、メディアビーズを使用して機械的エネルギーにより金属粉末を塑性変形させる(潰す)。湿式でフレーク化を実施することで、粉末のフレーク化の程度を均一にさせるものである。なお、フレーク化においてはメディアビーズが混合スラリー中に分散しているが、本明細書においては便宜的にこれらを分けてとらえるものとする。
前記液体媒体としては水、アルコール、水とアルコールの混合溶媒などが使用可能である。前記混合溶媒における水の割合は、例えば0.1~15質量%、好ましくは0.1~10質量%である。また前記アルコールの例としては、炭素数1~5のアルコール、好ましくは炭素数1~3のアルコールが挙げられる。
前記混合スラリーにおける液体媒体の割合は、効率的なフレーク化を実現する観点から、好ましくは20~95質量%であり、より好ましくは45~90質量%である。
(メディアビーズ)
本発明では、直径が0.8mm以下と小さいメディアビーズを使用して金属粉末のフレーク化を実施する。大きいメディアビーズでは、ビーズ同士の隙間に金属粉末が入り込んで十分に潰されず、厚さの均一なフレーク金属粉末は得られない。ビーズ同士の隙間を小さくする観点と、ビーズが金属粉末に付与する機械的エネルギー(これが大きいほど強く塑性変形させる(潰す)ことができる)の観点から、メディアビーズの直径は好ましくは0.1~0.7mmであり、より好ましくは0.3~0.6mmである。同様な観点から、金属粉末の累積50%粒子径(D50径)をメディアビーズの直径で除した値が、3~8(μm/mm)であることが好ましい。
メディアビーズの材質は、金属粉末に強い機械的エネルギーを付与して十分にフレーク化する観点から、好ましくはイットリア安定化ジルコニアである。またメディアビーズの形状は好ましくは略球形である。
以上説明したメディアビーズとしては市販のものを用いることができる。
また、金属粉末とメディアビーズの使用割合は、十分かつ効率的なフレーク化を実現する観点から、好ましくは質量基準で1:4~15である。TMAでの6%収縮温度TMA6%と1%収縮温度TMA1%の差を小さくする観点からは、前記使用割合は好ましくは1:4.5~6.5又は1:8.5~11である。
(スラリーの循環とフレーク化装置の実施の形態)
本発明のフレーク金属粉末の製造方法では、以上説明した金属粉末と液体媒体との混合スラリーを、メディアビーズを用いて、前記混合スラリーを循環させながら、前記金属粉末を塑性変形させる。このフレーク化(元粉である金属粉末の塑性変形)は、代表的には前記混合スラリー及びメディアビーズを収容する収容部並びに前記混合スラリー及びメディアビーズを撹拌する撹拌羽根を備える撹拌装置、例えばアトライタにより行う。ここで、混合スラリーの循環無しでは、装置の収容部内の下部に混合スラリーの一部が滞留して撹拌によるせん断作用を十分に受けられず、フレーク化(塑性変形)が不十分になりうる。その結果として、十分にフレーク化された粉末とフレーク化が不十分な粉末の混合粉末が得られ、これの静的画像分析で求めた短軸径の相対標準偏差は大きく、当該粉末の6%収縮温度TMA6%は高い。そこで、混合スラリーを撹拌装置から抜き出して再度撹拌装置に投入して循環させることで、混合スラリー中の金属粉末全体が均等にフレーク化されるようにする。
循環の具体的な態様について説明すると、前記の通り撹拌装置の収容部内の下部に位置する混合スラリーのフレーク化が不十分となりうるので、この位置のもの、すなわち混合スラリーのうち下部位置(例えば、スラリーのうちその鉛直方向における中央位置よりも底部側の位置)にあるものを収容部から抜き出す。そして十分なフレーク化がなされる位置、すなわち収容部内の混合スラリーの上部位置(例えば、収容部の鉛直方向における前記中央位置よりも上側の位置)に、抜き出した混合スラリーを投入する。この混合スラリーの循環(外部循環)は市販の種々のポンプにより実施可能である。
なお前記「下部位置」とは、混合スラリーを循環させずに全量を収容部に保持した時の混合スラリーの高さの、例えば30%以下の高さの箇所であり、収容部の底部を含む。収容部の前記の高さの側面や底部の面に抜き出し口を設けて、そこから混合スラリーを抜き出す(この抜き出し口の中心が前記「30%以下の高さ」にあればよい)。
また上記「上部位置」とは、混合スラリーを循環させずに全量を収容部に保持した時の混合スラリーの高さの、例えば70%以上の高さの箇所であり、収容部の頂部を含む。収容部の前記の高さの側面や頂部の面に投入口を設けて、そこから、抜き出されてきた混合スラリーを投入する(この投入口の中心が前記「70%以上の高さ」にあればよい)。
なお、循環して収容部外にある混合スラリーの量は、例えば混合スラリー全量の3~50体積%、好ましくは5~30体積%、より好ましくは6~20体積%程度に調整することが、十分にフレーク化させる観点から好ましい。また、抜き出し口からスラリーを抜き出す速度と、抜き出されたスラリーを投入口から投入する速度は、基本的には実質的に同じである。
メディアビーズごと混合スラリーを循環させるとポンプの閉塞を招くおそれがあるので、混合スラリーを抜き出す抜き出し口にはメディアビーズの通過を妨げる手段、例えば目皿を設けることが好ましい。これにより、下部位置の混合スラリーを選択的に抜き出すことができる。
このような態様でフレーク化を実施する場合、混合スラリーの循環速度があまりに速いと、フレーク化が不均一となる。そのため、混合スラリーの循環速度は適度なものであることが望ましい。
具体的には、混合スラリーが1周循環する(混合スラリー全量に相当する量が収容部の抜き出し口から抜き出される)のに要する時間が0.6~5分であることが好ましく、1.2~3分であることがより好ましい。この条件を満足する製法で製造された本発明のフレーク金属粉末は、6%収縮温度TMA6%と1%収縮温度TMA1%の差(TMA6%-TMA1%)が小さく、フレーク金属粉末を構成する金属粒子が全体的にそろったタイミングで焼結しうる。
(撹拌)
フレーク化効率及び生産性の観点から、フレーク化における撹拌羽根による撹拌時間は好ましくは30~400分であり、より好ましくは80~300分である。撹拌羽根の好ましい回転数は、撹拌装置の形状や混合スラリーの容量などにより変動するが、例えば80~800rpmであり、より好ましくは100~500rpmである。また撹拌動力で表現すると、混合スラリー中の金属粉末1kgあたりの動力原単位として、好ましくは0.03~0.4kWh/kg、より好ましくは0.05~0.2kWh/kgである。
(滑剤)
フレーク化の際には、金属粉末の構成粒子同士の衝突も起こり、この際凝集が起こってしまう場合がある。これを防止することを目的として滑剤を混合スラリーに添加してもよい。滑剤の具体例としては、ステアリン酸、ベンゾトリアゾールが挙げられる。滑剤の使用量については、滑剤と金属粉末の合計における割合が0.05~1.0質量%であることが好ましく、0.2~0.7質量%であることがより好ましい。
(不活性ガスによるバブリング)
フレーク化の際には、収容部内の混合スラリーに窒素ガスなどの不活性ガスを吹き込んでバブリングさせてもよい。不活性ガスの吹込み位置は特に制限されないが、ガスは上方に移動するので、撹拌装置の収容部内の、混合スラリーの下部位置に吹き込むことが好ましい。また不活性ガスの吹込み圧力については、特に制限されないが、例えば0.2~1.0MPaとすることができる。また混合スラリーに単位時間(1分)あたりに供給される不活性ガスの量は、例えば体積基準で混合スラリー全量の2~35倍、好ましくは4~25倍、より好ましくは5~12倍である。
(フレーク化後の任意工程)
以上説明したフレーク化の工程を実施することで、本発明のフレーク金属粉末が液体媒体中に分散したスラリーが得られるが、これを固液分離し、得られた固形物を乾燥して、乾燥状態のフレーク金属粉末を得ることができる。なお、必要に応じて、固液分離して得られた固形物を乾燥する前に液体媒体で洗浄してもよいし、乾燥した後に分級して粒度を調整してもよい。また製造対象のフレーク金属粉末が銀コート銅粉などの金属コート粉末で、金属で被覆していない粉末を元粉としてフレーク化を実施した場合には、フレーク化された粉末を金属で被覆する。更にフレーク金属粉末をベンゾトリアゾールなどの有機化合物で表面処理して、凝集を防止して粉末の充填性を高めてもよい。
[導電性ペースト]
本発明のフレーク金属粉末を導電性ペーストの材料として使用する場合、この金属粉末を有機溶剤及びバインダ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種である有機ビヒクルの中に分散させることで、導電性ペーストを作製することができる。前記有機溶剤の例としては飽和脂肪族炭化水素類、不飽和脂肪族炭化水素類、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、エステル類及びアルコール類が挙げられる。前記バインダ樹脂の例としては、エチルセルロースなどのセルロース樹脂やアクリル樹脂が挙げられる。有機溶剤及びバインダ樹脂は、2種以上を混合して使用してもよい。
また、必要に応じて、この導電性ペーストにはガラスフリット、無機酸化物、分散剤などを添加してもよい。
導電性ペースト中の本発明のフレーク金属粉末の含有量は、導電性ペーストの製造コストおよび導電性ペーストの塗膜を焼成して形成される導電体層の導電性の観点から、4.5~97.5質量%であることが好ましく、70~95質量%であることがさらに好ましい。
また、導電性ペーストには、1種以上の他の金属粉末(本発明のフレーク金属粉末の要件を満足しない、銅粉末、銀粉末、銀被覆銅粉末、銀と錫の合金粉末、錫粉末などの金属粉末。以下「任意粉末」ともいう)を添加してもよい。この任意粉末は、本発明によるフレーク金属粉末と形状や粒径が異なる粉末でもよい。
任意粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)は、導電性ペーストを焼成して薄い導電体層を形成するために、0.5~10μmであることが好ましく、0.8~5.0μmであることがより好ましい。また、任意粉末の導電性ペースト中の含有量は、1~94質量%であることが好ましく、3~28質量%であることがさらに好ましい。なお、導電性ペースト中のフレーク金属粉末と任意粉末の含有量の合計は、60~98.5質量%であることが好ましく、74~98質量%であることがさらに好ましい。
また、導電性ペースト中のフレーク金属粉末の分散性や導電性ペーストの適切な粘度を考慮して、有機溶剤の含有量は0.8~20質量%であることが好ましく、0.8~15質量%であることがさらに好ましい。また、導電性ペースト中のバインダ樹脂の含有量は、導電性ペースト中の金属粉末の分散性や導電性ペーストの導電性の観点から、0.1~10質量%であることが好ましく、0.1~6質量%であることがさらに好ましい。
また、導電性ペースト中のガラスフリットの含有量は、導電性ペーストの焼結性の観点から、0.1~20質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがさらに好ましい。このガラスフリットは、2種以上を混合して使用してもよい。
このような導電性ペーストは、例えば、各構成要素を計量して所定の容器に入れ、らいかい機、万能攪拌機、ニーダーなどを用いて予備混練した後、3本ロールで本混練することによって作製することができる。また、必要に応じて、その後、さらに有機溶剤を添加して、粘度調整を行ってもよい。また、ガラスフリットや無機酸化物と有機溶剤やバインダ樹脂を混練して粒度を下げた後、最後にフレーク金属粉末を追加して本混練してもよい。
[積層セラミック電子部品]
例えば、導電性ペースト1を塗布して形成される塗膜1と、セラミック粉末が有機溶剤及びバインダ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の中に分散している誘電体ペーストを塗布して形成される塗膜2(グリーンシートとも呼ばれる誘電体膜)とを交互に積層して積層体を形成する。この積層体の側面に導電性ペースト2を塗布して積層体側面に塗膜3を形成し、その積層体を焼成する。これにより、前記塗膜1中の金属粉末が焼結して内部電極である導電体層を形成し、塗膜2中のチタン酸バリウムなどのセラミック粉末が焼結して誘電体層(セラミック層)を形成し、前記塗膜3中の金属粉末が焼結して外部電極である導電体層を形成する。このような焼成などの工程を経て、内部電極が交互に一対の外部電極の一方に引き出され、内部電極と誘電体層とが積層した積層セラミック電子部品が製造される。
前記塗膜1を形成するための導電性ペースト1や塗膜3を形成するための導電性ペースト2として、本発明の導電性ペーストを使用することができる。両方に本発明の導電性ペーストを使用する場合、導電性ペースト1と2は、金属粉末、有機溶剤やバインダ樹脂などの種類や配合量の点で同じであっても異なっていてもよい。具体的には、例えば、導電性ペースト1が金属粉末Aが有機溶剤A及びバインダ樹脂Aからなる群より選ばれる少なくとも一種の中に分散したものであり、導電性ペースト2が、金属粉末Cが有機溶剤C及びバインダ樹脂Cからなる群より選ばれる少なくとも一種の中に分散したものである場合において、金属粉末AとC、有機溶剤AとC、バインダ樹脂AとCは、同じであっても異なっていてもよい。
上記した焼成工程における焼成温度は、例えば900~1400℃程度とすることができ、950~1300℃程度であることがより好ましい。より具体的には、焼成工程では、上記積層体を-20~50℃(通常常温)から900~1400℃の焼成温度まで昇温して、当該焼成温度で保持することにより実施される。なお焼成温度での保持は、必ずしも特定の温度1点で行われる必要は無く、焼成温度として説明した温度範囲の中で保持中の温度が上下してもよい。
前記昇温の時間及び焼成温度での保持の時間の合計は、金属粉末およびセラミック粉末を十分に焼結させる観点と積層セラミック電子部品の生産性の観点から、好ましくは10分~3時間である。なお、前記昇温の時間及び焼成温度での保持の時間の合計に占める、前記焼成温度での保持の時間の割合は、金属粉末およびセラミック粉末を十分に焼結させる観点や急激な昇温を避ける観点から、好ましくは30%以上であり、より好ましくは35~85%である。
また、焼成の実施前に、真空乾燥などにより予備乾燥を行うことにより、導電性ペースト1及び2の塗膜並びに誘電体膜中の有機溶剤などの揮発成分を除去してもよい。また、これらがバインダ樹脂を含む場合は、焼成の実施前に、バインダ樹脂の含有量を低減させる脱バインダ工程として250~400℃の低温で加熱することが好ましい。
また、外部電極に対しては、良好な半田接続を行い、また信頼性を高めるために、その表面にNiメッキ及びSnメッキをこの順に行ってもよい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されない。
[実施例1]
(元粉である銅粉末の製造、物性評価)
大気雰囲気下、タンディッシュ炉中で電気銅40kgを1600℃に加熱した溶湯に還元剤としてカーボン粉を添加し、その溶湯をタンディッシュ炉下部から落下させながら、水アトマイズ装置により大気中で高圧水(水圧:150MPa、水量:160L/分、pH:10)を吹付けて粉砕・凝固させ、得られた粉末をろ過し、水洗し、乾燥し、解砕し、分級して、銅粉末(フレーク化する元粉)を得た。
得られた銅粉末について、レーザー回折式粒度分布測定装置(SYMPATEC社製のへロス粒度分布測定装置(HELOS&RODOS(気流式の分散モジュール)))を使用して、窒素ガスで分散圧5barで分散させて粒度分布を評価し、体積基準の累積10%粒子径(D10径)、累積25%粒子径(D25径)、累積50%粒子径(D50径)、累積75%粒子径(D75径)、累積90%粒子径(D90径)及び累積99%粒子径(D99径)を求めた。
(フレーク化)
上記で得られた元粉について、下記の条件でフレーク化を実施して、実施例1に係るフレーク銅粉末を得た。
銅粉末1.732kgと滑剤であるステアリン酸(ST5000)を5.2g、径が0.5mmの略球状のイットリア安定化ジルコニアビーズ10.5kgと工業用アルコール(日本アルコール販売(株)製 ソルミックスAP7)0.93kgを混合したスラリーをアトライタ(型式:MA1SE、三井三池化工機製)に投入し、スラリーを0.7L/minの速度で循環させ、回転数360rpmで180分粉砕した。なお、前記銅粉末と滑剤の合計における滑剤の量は0.3質量%だった。
前記イットリア安定化ジルコニアビーズを除いた混合スラリーの量は1.4Lであり、当該スラリー全量が1度抜き出されるのに要する時間は2分だった。スラリーの循環については図1に模式図を示す。混合スラリーの抜き出し口は、循環させずに全量を収容部に保持した時の混合スラリーの高さの30%以下の高さにあり、混合スラリーの投入口は、循環させずに全量を収容部に保持した時の混合スラリーの高さの70%以上の高さにあった。ビーズが循環しないよう、抜き出し口には目皿を設けた。また、循環してアトライタの収容部外にある混合スラリーの量は、混合スラリー全量の7.4体積%だった。
以上のフレーク化により得られたスラリーをろ過し、乾燥してフレーク銅粉末を得た。フレーク化に使用した元粉である銅粉末の粒度分布、及びフレーク銅粉末の製造条件を、後述する実施例2~10及び比較例1~7を含めて、下記表1に示した。
Figure 2024049800000002
<評価>
得られた実施例1に係るフレーク銅粉末について、以下の評価を行った。
(走査型電子顕微鏡(SEM)による観察)
乾燥状態のフレーク銅粉末を、加速電圧5kV、倍率5000倍で走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製のJSM-7200F)で観察した。結果を図2に示す。粒子の板面がよく観察されている。
(粒度分布)
元粉の粒度分布評価の場合と同様に、フレーク銅粉末について、体積基準の累積10%粒子径(D10径)、累積25%粒子径(D25径)、累積50%粒子径(D50径)、累積75%粒子径(D75径)、累積90%粒子径(D90径)及び累積99%粒子径(D99径)を求めた。
(熱機械分析(TMA))
フレーク銅粉末の熱機械分析(TMA)は以下のようにして実施した。フレーク銅粉末0.5gと、当該粉末に対して質量割合2%のビヒクル(Mitsubishi Plastics BR-105(三菱樹脂株式会社製)とテルピネオールの、質量割合3:7(BR-105:テルピネオール)の混合物)を混合し、プレス機を用いて荷重360Nで20秒間押し固めて5mmφの測定試料を作製した。この測定試料を直径5mm、高さ3mmのアルミナパンに詰めて、熱機械分析(TMA)装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製のTMA/SS6200)の試料ホルダ(シリンダ)にセットし、測定プローブにより、N雰囲気下で、測定荷重49mNの荷重を付与して、常温(25℃)から昇温速度10℃/分で900℃まで昇温して、測定試料の収縮量を測定した。
(BET比表面積)
フレーク銅粉末のBET比表面積を、BET比表面積測定器(株式会社マウンテック製のMacsorb)を使用して、測定器内に105℃で20分間窒素ガスを流して脱気して粉末の粒子表面の夾雑物を除去した後、窒素とヘリウムの混合ガス(N:30体積%、He:70体積%)を流しながら、BET1点法により測定した。
(タップ密度)
フレーク銅粉末のタップ密度として、特開2007-263860号公報に記載された方法と同様に、フレーク銅粉末を内径6mm×高さ11.9mmの有底円筒形のダイに容積の80%まで充填してフレーク銅粉末層を形成し、このフレーク銅粉末層の上面に0.160N/mの圧力を均一に加えて、この圧力でフレーク銅粉末がこれ以上密に充填されなくなるまでフレーク銅粉末を圧縮した後、フレーク銅粉末層の高さを測定し、このフレーク銅粉末層の高さの測定値と、充填されたフレーク銅粉末の重量とから、フレーク銅粉末のタップ密度を求めた。
(酸素量)
フレーク銅粉末の酸素量を酸素・窒素・水素分析装置(株式会社堀場製作所製のEMGA-920)により測定した。
(炭素量)
フレーク銅粉末の炭素量を炭素・硫黄分析装置(株式会社堀場製作所製のEMIA-920V2)により測定した。
(MORPHOLOGI 4によるフレーク銅粉末の厚さの評価)
エポキシ樹脂(日本電子製の「エポキシ(G-2)取説付きPart A」)とイミダゾール硬化剤(日本電子製の「エポキシ(G-2)取説付きPart B」)を10:1の質量割合で混ぜ(合計重量:0.03g)、フレーク銅粉末を0.12g添加混合し、得られた硬化性組成物をスパチュラでステンレス製の試料台上に塗布し(こすりつけ)、形成された塗膜を70℃に加熱しながら真空脱泡し、脱泡が終了したことを目視で確認してから、120℃で60分加熱硬化させた。得られた硬化物の表面を粗さ1000のやすりで削って平滑にした。この硬化物試料が乗った試料台を、クロスセクションポリッシャ(日本電子株式会社製)の回転ホルダに装入し、当該ポリッシャで加工することで、硬化物試料の、試料台との接触面に平行な断面を切り出した。当該断面のSEM画像(日本電子株式会社製のJSM-7200F、加速電圧:5kV、倍率:5000倍)を取得した。
得られたSEM画像を図3に示す。画像は1280×1024ピクセル(W×H)で構成され、ピクセルサイズは、0.019μm×0.019μmである。この画像をMORPHOLOGI 4に取り込み、粒子がある箇所と粒子のない箇所を二値化し、平均短軸径(Width Mean)、短軸径の相対標準偏差(Width RSD)、平均アスペクト比(長軸径/短軸径の平均値)のデータを取得した。なお前記二値化は下記解析条件のコントラストの設定により行った。またフィルタリング条件として、複数粒子(凝集粒子など)を単一粒子として認識した粒子を除去するため、加えて、断面試料を作製する際にどうしても生じてしまう、実際には存在しない極小径の粒子欠片を除去するため、以下の解析条件を設定した。
解析条件
コントラスト:100
Convexity(周長包絡度)>0.9
CE Diameter(面積円相当径)>0.2μm
測定粒子数:624~1595(実施例1~10及び比較例1~7における測定粒子数の最大値及び最小値を示した)
以上の評価結果を、後述する実施例2~10及び比較例1~7についての結果を含めて、下記表2に示す。
Figure 2024049800000003
[比較例1]
実施例1における元粉の製造において、分級条件を変えることで、上記表1に示した粒度分布を有する比較例1の元粉を製造した。
この元粉を使用した以外は実施例1と同様にしてフレーク化を行い、比較例1に係るフレーク銅粉末を得た。このフレーク銅粉末について、実施例1と同様に各種の評価を行った。評価結果を上記表2に示す。
[比較例2]
実施例1における元粉の製造において、分級条件を変えることで、上記表1に示した粒度分布を有する比較例2の元粉を製造した。
この元粉を使用した以外は実施例1と同様にしてフレーク化を行い、比較例2に係るフレーク銅粉末を得た。このフレーク銅粉末について、実施例1と同様に各種の評価を行った。評価結果を上記表2に示す。
[比較例3]
実施例1における元粉の製造において、分級条件を変えることで、上記表1に示した粒度分布を有する比較例3の元粉を製造した。
この元粉を使用した以外は実施例1と同様にしてフレーク化を行い、比較例3に係るフレーク銅粉末を得た。このフレーク銅粉末について、実施例1と同様に各種の評価を行った。評価結果を上記表2に示す。
[比較例4]
フレーク化において、1.0mm径のSUSビーズを使用した以外は、実施例1と同様にしてフレーク化を行い、比較例4に係るフレーク銅粉末を得た。このフレーク銅粉末について、実施例1と同様に各種の評価を行った。評価結果を上記表2に示す。
[比較例5]
フレーク化において、スラリーの循環を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてフレーク化を行い、比較例5に係るフレーク銅粉末を得た。このフレーク銅粉末について、実施例1と同様に各種の評価を行った。評価結果を上記表2に示す。
なお、MORPHOLOGI 4での短軸径の評価にあたって撮影したSEM写真を図4に示す。
[比較例6]
窒素雰囲気下、タンディッシュ炉中で電気銅36kgとニッケル4kgを1300℃に加熱した溶湯に還元剤としてカーボン粉を添加し、その溶湯をタンディッシュ炉下部から落下させながら、水アトマイズ装置により窒素中で高圧水(水圧:150MPa、水量:160L/分、pH:10)を吹付けて粉砕・凝固させ、得られた粉末をろ過し、水洗し、乾燥し、解砕し、分級して、銅合金粉末(フレーク化する元粉)を得た。
フレーク化において、1.6mm径のSUSビーズを使用し、元粉として前記で得られた銅合金粉末を使用し、スラリー全量が1度抜き出されるのに要する時間を0.8分とし、フレーク化時間を90分とし、金属粉末とビーズの使用量割合を1:7.3とし、滑剤を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてフレーク化を行った。得られたフレーク銅合金粉末に対して、以下のようにして銀による被覆を行った。
EDTA-2Na二水和物0.476kgと炭酸アンモニウム0.476kgを純水5.54kgに溶解した溶液(溶液1)と、EDTA-2Na二水和物0.51kgと炭酸アンモニウム0.25kgを純水2.0kgに溶解した溶液に、硝酸銀0.18kgを純水0.16kgに溶解した溶液を加えて得られた溶液(溶液2)を用意した。
次に、窒素雰囲気下において、被覆する合金コア粒子の粉末として、得られた上記フレーク銅合金粉末1.0kgを溶液1に加えて、攪拌しながら25℃まで昇温させた。この銅合金粉末が分散した溶液に溶液2を加えて5分攪拌した後、ステアリン酸2gをソルミックス64.7gに溶解した溶液を加えて40分攪拌し、ろ過し、水洗し、乾燥し、解砕して、比較例6に係るフレーク銀コート銅合金粉末を得た。
このフレーク銀コート銅合金粉末について、実施例1と同様に各種の評価を行った。評価結果を上記表2に示す。
[比較例7]
窒素雰囲気下、タンディッシュ炉中で電気銅40kgを1600℃に加熱した溶湯に還元剤としてカーボン粉を添加し、その溶湯をタンディッシュ炉下部から落下させながら、水アトマイズ装置により窒素中で高圧水(水圧:150MPa、水量:160L/分、pH:10)を吹付けて粉砕・凝固させ、得られた粉末をろ過し、水洗し、乾燥し、解砕し、分級して、銅粉末(フレーク化する元粉)を得た。
この元粉を使用し、スラリー全量が1度抜き出されるのに要する時間を0.8分とし、フレーク化時間を150分とし、アトライタ装置を日本コークス工業株式会社製:MA15SE-Xに変更し、その回転数を111rpmに変更した以外は、実施例1と同様にしてフレーク化を行った。なお、循環してアトライタの収容部外にある混合スラリーの量は、混合スラリー全量の12.5体積%だった。得られたフレーク銅合金粉末について、実施例1と同様に各種の評価を行った。評価結果を上記表2に示す。
[実施例2]
フレーク化を、スラリーに窒素ガスを10L/minで打ち込みながらバブリングさせて実施した以外は(1分あたりの窒素ガスの供給量は、体積基準で混合スラリー全量の約7.1倍だった)、実施例1と同様にして元粉のフレーク化を行い、実施例2に係るフレーク銅粉末を得た。なお窒素ガスの打ち込み口の口径から求めた窒素の圧力は0.5MPaであった。このフレーク銅粉末について、実施例1と同様に各種の評価を行った。評価結果を上記表2に示す。
[実施例3]
フレーク化時間を150分に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3に係るフレーク銅粉末を得た。このフレーク銅粉末について、実施例1と同様に各種の評価を行った。評価結果を上記表2に示す。なお本実施例では、フレーク化における金属粉末1kgあたりの撹拌動力原単位を、Panasonic製の電力計(KW1M-H エコパワーメータ)による測定により求めた。その結果、動力原単位は0.09kWh/kgだった。
[実施例4]
フレーク化時間を60分に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例4に係るフレーク銅粉末を得た。このフレーク銅粉末について、実施例1と同様に各種の評価を行った。評価結果を上記表2に示す。
[実施例5]
フレーク化において、フレーク化時間を150分とし、滑剤の使用量を0.08質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例5に係るフレーク銅粉末を得た。このフレーク銅粉末について、実施例1と同様に各種の評価を行った。評価結果を上記表2に示す。
[実施例6]
フレーク化において、フレーク化時間を150分とし、スラリー全量が1度抜き出されるのに要する時間を0.8分とし、アトライタ装置を日本コークス工業株式会社製:MA15SE-Xに変更し、その回転数を111rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例6に係るフレーク銅粉末を得た。なお、循環してアトライタの収容部外にある混合スラリーの量は、混合スラリー全量の12.5体積%だった。このフレーク銅粉末について、実施例1と同様に各種の評価を行った。評価結果を上記表2に示す。なお本実施例のフレーク化における金属粉末1kgあたりの撹拌動力原単位を実施例3と同様に求めたところ、0.12kWh/kgだった。
[実施例7]
フレーク化において、フレーク化時間を150分とし、滑剤を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてフレーク銅粉末を得た。この粉末に対して、以下のようにして銀による被覆を行った。
EDTA-2Na二水和物0.166kgと炭酸アンモニウム0.166kgを純水1.94kgに溶解した溶液(溶液1)と、EDTA-2Na二水和物0.37kgと炭酸アンモニウム0.18kgを純水1.5kgに溶解した溶液に、硝酸銀0.13kgを純水0.12kgに溶解した溶液を加えて得られた溶液(溶液2)を用意した。
次に、窒素雰囲気下において、被覆するコア粒子の粉末として、得られた上記フレーク銅粉末0.35kgを溶液1に加えて、攪拌しながら25℃まで昇温させた。この銅粉末が分散した溶液に溶液2を加えて1時間攪拌した後、ろ過し、水洗し、乾燥したあと、コーヒーミル(メリタMJ518)にベンゾトリアゾール(川口化学工業)0.366gと一緒に投入し、40秒間解砕し、実施例7に係るフレーク銀コート銅粉末を得た。
このフレーク銀コート銅粉末について、実施例1と同様に各種の評価を行った。評価結果を上記表2に示す。
[実施例8]
フレーク化において、スラリー全量が1度抜き出されるのに要する時間を0.4分とした以外は、実施例6と同様にしてフレーク化を行った。得られたフレーク銅合金粉末について、実施例1と同様に各種の評価を行った。評価結果を上記表2に示す。
[実施例9]
フレーク化において、金属粉末とビーズの使用量割合を1:7.3とした以外は、実施例6と同様にしてフレーク化を行った。得られたフレーク銅合金粉末について、実施例1と同様に各種の評価を行った。評価結果を上記表2に示す。
[実施例10]
フレーク化において、金属粉末とビーズの使用量割合を1:9.6とした以外は、実施例6と同様にしてフレーク化を行った。得られたフレーク銅合金粉末について、実施例1と同様に各種の評価を行った。評価結果を上記表2に示す。なお本実施例のフレーク化における金属粉末1kgあたりの撹拌動力原単位を実施例3と同様に求めたところ、0.12kWh/kgだった。
<ペースト評価>
実施例1及び比較例2のフレーク銅粉末の各9gに対してBCA(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート)1gを混錬機(あわとり練太郎 型式:ARE-250)で1400rpm、30secの条件で混合して、2種の導電性ペーストを得た。それぞれの導電性ペーストを、アルミナ基板上に塗布した。その後、前記基板上に形成された塗膜を窒素雰囲気下において、550℃まで5℃/minの速さで昇温し、その温度で10min保持した後、加熱を止め窒素雰囲気下で自然冷却した。
得られた、前記塗膜の熱処理物を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率5000倍で観察した。結果を図5に示す。
実施例1のフレーク銅粉末は6%収縮温度が低く、550℃の焼成でも焼結が全体的に進行しており、積層セラミック電子部品の製造に用いた場合には、900~1400℃程度で焼成されると十分に焼結が進行するものと期待される。一方比較例2は、6%収縮温度が高く、550℃焼成では部分的にしか焼結しておらず、積層セラミック電子部品の製造に用いた場合には焼成工程にてフレーク銅粉末の焼結が十分には進行しないことが懸念される。

Claims (15)

  1. レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)が0.7~4.9μmであり、25℃から900℃まで昇温速度10℃/分で昇温する熱機械分析(TMA)を行ったとき、収縮率が6.0%となるときの温度が658℃以下である、フレーク金属粉末。
  2. 以下の方法で測定した短軸径の相対標準偏差が65.0%以下である、請求項1に記載のフレーク金属粉末:
    エポキシ樹脂及びイミダゾール硬化剤を10:1の質量割合で混合して得られた混合物10質量部と、前記フレーク金属粉末40質量部とを混合した硬化性組成物を試料台上に塗布して120℃で加熱硬化させ、得られた硬化物について、クロスセクションポリッシャにより、前記硬化物と試料台の接触面に平行な断面を切り出す加工を行い、得られた断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)により加速電圧5kV、倍率5000倍で観察し、得られた観察画像中の、前記フレーク金属粉末を構成する各金属粒子の短軸径の相対標準偏差を静的画像解析により求める。
  3. 前記フレーク金属粉末の、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積90%粒子径(D90径)と、同様に測定した体積基準の累積10%粒子径(D10径)との差を、同様に測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)で除した値が1.4以下である、請求項1又は2に記載のフレーク金属粉末。
  4. 前記フレーク金属粉末に対して25℃から900℃まで昇温速度10℃/分で昇温する熱機械分析(TMA)を行ったとき、収縮率が6.0%となるときの温度と収縮率が1.0%となるときの温度との差が195℃以下である、請求項1又は2に記載のフレーク金属粉末。
  5. 前記フレーク金属粉末を構成する金属が、銅及び銀からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1又は2に記載のフレーク金属粉末。
  6. 前記フレーク金属粉末の短軸径の平均値が0.1~1.5μmである、請求項2に記載のフレーク金属粉末。
  7. 前記走査型電子顕微鏡による観察で得られた観察画像中の、前記フレーク金属粉末を構成する各金属粒子の長軸径を短軸径で除して求められるアスペクト比の平均値が、1.5以上である、請求項2に記載のフレーク金属粉末。
  8. メディアビーズを用いて金属粉末を塑性変形させてその形状をフレーク状にするフレーク金属粉末の製造方法であって、
    前記金属粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)が0.6~4.0μmであり、前記金属粉末の、同様に測定した体積基準の累積90%粒子径(D90径)と、同様に測定した体積基準の累積10%粒子径(D10径)との差を、前記累積50%粒子径(D50径)で除した値が1.3以下であり、
    前記メディアビーズの直径が0.8mm以下であり、
    前記金属粉末を液体媒体との混合スラリーとして、この混合スラリーを循環させながら、前記メディアビーズによる塑性変形を実施する、
    フレーク金属粉末の製造方法。
  9. 前記金属粉末とメディアビーズの使用割合が、質量基準で1:4~15である、請求項8に記載のフレーク金属粉末の製造方法。
  10. 前記金属粉末の塑性変形を、前記混合スラリー及びメディアビーズを収容する収容部並びに前記混合スラリー及びメディアビーズを撹拌する撹拌羽根を備える撹拌装置により行い、
    前記混合スラリーの循環を、当該スラリーのうちその鉛直方向における中央位置よりも底部側の下部位置にあるスラリーを前記収容部から抜き出し、抜き出した混合スラリーを、前記収容部内の前記中央位置よりも鉛直方向上側の上部位置に投入することにより実施する、
    請求項8又は9に記載のフレーク金属粉末の製造方法。
  11. 前記混合スラリーの循環において、前記混合スラリーの全量に相当する量が前記収容部から抜き出されるのに要する時間が0.6~5分である、請求項10に記載のフレーク金属粉末の製造方法。
  12. 請求項1又は2に記載のフレーク金属粉末が、有機溶剤及びバインダ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の中に分散している、導電性ペースト。
  13. 金属粉末Aが有機溶剤A及びバインダ樹脂Aからなる群より選ばれる少なくとも一種の中に分散している導電性ペースト1と、セラミック粉末が有機溶剤B及びバインダ樹脂Bからなる群より選ばれる少なくとも一種の中に分散している誘電体ペーストとを用いて、前記導電性ペースト1の塗膜1と前記誘電体ペーストの塗膜2が交互に積層された積層体を形成し、
    前記積層体の、前記塗膜1と塗膜2の積層方向に平行な側面に、金属粉末Cが有機溶剤C及びバインダ樹脂Cからなる群より選ばれる少なくとも一種の中に分散している導電性ペースト2を塗布して塗膜3を形成し、
    当該塗膜3が形成された積層体を900~1400℃で焼成する、積層セラミック電子部品の製造方法であって、
    前記導電性ペースト1及び/又は導電性ペースト2が、請求項12に記載の導電性ペーストである、積層セラミック電子部品の製造方法。
  14. 前記焼成が、前記積層体を-20~50℃から900~1400℃の焼成温度まで昇温して、当該焼成温度で保持することにより実施され、前記昇温の時間及び焼成温度での保持の時間の合計が10分~3時間である、請求項13に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  15. 前記昇温の時間及び焼成温度での保持の時間の合計に占める、前記焼成温度での保持の時間の割合が30%以上である、請求項14に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
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