JP2024046395A - 車両用制動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ヒステリシス特性を有する電動ブレーキを用いた車両用制動装置において、制動力保持時にヒステリシス活用電流低減処理、停止位置調整処理又は位相調整処理の技術を適切に組み合わせて実行する車両用制動装置を提供する。【解決手段】モータのトルクと電動ブレーキに発生する制動力との関係は、ヒステリシス特性を有している。位置制御又は荷重制御により制動力を保持しつつ、ヒステリシス特性に基づき正効率線から逆効率線までモータの駆動電流及びトルクを低減する処理を「ヒステリシス活用電流低減処理」と定義する。制動力の保持時にモータの回転が停止した状態で通電するロック通電において、注目するいずれかの相の電流絶対値を減少又は増加させるように、位置制御により回転停止位置を調整する処理を「停止位置調整処理」と定義する。制動力制御部は、制動力を保持するとき、ヒステリシス活用電流低減処理及び停止位置調整処理を実行する。【選択図】図7

Description

本発明は、車両用制動装置に関する。
従来、モータのトルクと、運動変換機構からブレーキディスクに加える押圧力との関係がヒステリシス特性を有している車両の電動ブレーキ装置において、制動力を目標値に保持しつつモータの駆動電流を低減する技術が知られている。
例えば特許文献1に開示された電動ブレーキ装置では、モータ制御装置は、荷重センサで検出される押圧力の大きさに基づいてモータの駆動電流を制御する。モータトルクと押圧力との関係はヒステリシス特性を有している。このモータ制御装置は、押圧力をブレーキディスクに加えて保持するとき、荷重センサで検出される押圧力の大きさが目標値よりも大きい所定値に到達するまでモータのトルクを増加させてから、荷重センサで検出される押圧力の大きさが目標値に到達するまでモータのトルクを減少させるようにモータの駆動電流を制御する。
特許第6080682号公報
本明細書では「押圧力」を「荷重」と言い換える。制動力は荷重に相関し、要求制動力は荷重指令値に反映される。制動力の増加時に、制動力が要求制動力に到達するまでモータのトルクを正効率線に沿って増加させる動作を「増加動作」という。制動力が要求制動力よりも所定量だけ超過するまでモータのトルクを正効率線に沿って増加させる動作を「超過動作」という。超過動作の終了時における制動力が保持されたままモータのトルクが減少する動作を「保持動作」という。保持動作後、制動力が要求制動力に到達するまで逆効率線に沿ってモータのトルクを減少させる動作を「戻し動作」という。
特許文献1の従来技術では、制動力の保持中にモータの駆動電流を低減し、インバータやモータ巻線の発熱を低減することができる。しかし、超過動作での荷重センサの精度不足や、温度変化などに伴うパッドやディスクの変形により、保持動作において実制動力と要求制動力とのずれが生じるおそれがある。また、制動力を保持する過程で多相モータのロック通電が必要となり、特定の相に電流が集中し、発熱が偏るという問題がある。
これらの問題に対する解決手段について、出願人は先に複数の特許出願を行った。特願2022-122869では、ヒステリシス特性に基づき正効率線から逆効率線までモータの駆動電流及びトルクを低減するヒステリシス活用電流低減処理の技術が提案された。
特願2022-148195及び特願2022-148229では、モータの回転停止位置を調整することで、ロック通電時に特定の相に発熱が偏ることを防止する停止位置調整処理の技術が提案された。
特願2021-196167では、dq軸電流の電流位相について、同じ電流位相での通電を所定時間以上継続しないように、時間に応じて電流位相を変更することで、ロック通電時に特定の相に発熱が偏ることを防止する位相調整処理の技術が提案された。
出願人が提案したこれらの技術は、複数組み合わせて使用することが可能である。本発明の目的は、ヒステリシス特性を有する電動ブレーキを用いた車両用制動装置において、制動力保持時にヒステリシス活用電流低減処理、停止位置調整処理又は位相調整処理の技術を適切に組み合わせて実行する車両用制動装置を提供することにある。
本発明の車両用制動装置は、多相のモータ(60)が出力したトルクを直動機構(85)により直動力に変換し、対応する車輪(91-94)に押圧して制動力を発生させる複数の電動ブレーキ(81-84)が各車輪に設けられた車両(900)に搭載される。
車両用制動装置は、トルク指令演算部(40)及び電流指令演算部(50)を含み、各電動ブレーキが発生させる制動力を制御する制動力制御部(400)を備える。トルク指令演算部は、外部から指令される要求制動力に基づきモータのトルク指令値を演算する。電流指令演算部は、トルク指令値に基づきモータに通電する電流指令値を演算する。
本発明の第一の態様では、電動ブレーキは、モータの実際の回転角度、又は、直動機構の実際のストロークである実位置(θ、X)を検出する位置センサ(72、73)を備えているか、又は、車輪に実際に押圧される制動荷重である実荷重(F)を検出する荷重センサ(71)を位置センサに加えて備えている。
モータのトルクと電動ブレーキに発生する制動力との関係は、トルクが増加するとき、制動力が正効率線に沿って増加し、トルクが増加から減少に転じる転向値から保持臨界値まで減少するとき、制動力が一定に保持され、トルクが保持臨界値から減少するとき、制動力が逆効率線に沿って減少するヒステリシス特性を有している。
トルク指令演算部は、位置センサにより検出された実位置を位置指令値(θ*、X*)に近づけるようにトルク指令値を演算する位置制御を実行するか、又は、荷重センサにより検出された実荷重を、要求制動力に基づき演算される荷重指令値(F*)に近づけるようにトルク指令値を演算する荷重制御と、位置制御とを切替可能に実行する。
位置制御又は荷重制御により制動力を保持しつつ、ヒステリシス特性に基づき正効率線から逆効率線までモータの駆動電流及びトルクを低減する処理を「ヒステリシス活用電流低減処理」と定義する。
制動力の保持時にモータの回転が停止した状態で通電するロック通電において、注目するいずれかの相の電流絶対値を減少又は増加させるように、位置制御により回転停止位置を調整する処理を「停止位置調整処理」と定義する。
制動力制御部は、制動力を保持するとき、ヒステリシス活用電流低減処理及び停止位置調整処理を実行する。第一の態様では、制動力保持時の電流低減効果と、特定の相への発熱偏り防止効果との両方が得られる。
ここで、ヒステリシス活用電流低減処理及び停止位置調整処理は適切な順序で実行されることが好ましい。仮にヒステリシス活用電流低減処理により逆効率線上に動作点を移した後、停止位置調整処理により制動力増加側の調整が行われると、動作点が再び正効率線上に移動してしまい、最大限の電流低減効果が得られない。そこで、停止位置調整処理を実行した後にヒステリシス活用電流低減処理を実行することで上記現象が回避される。
或いは、ヒステリシス活用電流低減処理の超過動作を実行後に、戻し動作を兼ねて、モータの回転停止位置を制動力の減少方向に調整するように停止位置調整処理を実行することによって上記現象が回避される。
また、電流指令演算部は、トルク指令値に基づき、dq軸座標における電流振幅及び電流位相で定義される電流指令値を演算するものであり、ロック通電において、同じ電流位相での通電を所定時間以上継続しないように、時間に応じて電流指令値の位相を変更する処理を「位相調整処理」と定義する。
さらに位相調整処理を実行する場合、制動力制御部は、停止位置調整処理及びヒステリシス活用電流低減処理を実行した後に位相調整処理を実行することが好ましい。位相調整制御における適切な調整方向や調整量は、モータの回転停止位置や出力トルクなどによって変化する。したがって、停止位置調整処理又はヒステリシス活用電流低減処理によりモータの位置及びトルクが変化し終わった後に位相調整処理を実行することが効率的かつ効果的である。
本発明の第二の態様では、電動ブレーキが位置センサを備えることやトルク指令演算部が位置制御を実行することは要件ではない。ヒステリシス活用電流低減処理の定義において「位置制御又は荷重制御により」の部分は削除される。制動力制御部は、制動力を保持するとき、ヒステリシス活用電流低減処理を実行した後、位相調整処理を実行する。第二の態様でも、制動力保持時の電流低減効果と、特定の相への発熱偏り防止効果との両方が得られる。
本発明の第三の態様では、電動ブレーキは位置センサ(72、73)を備えており、トルク指令演算部は位置制御を少なくとも実行する。制動力制御部は、制動力を保持するとき、停止位置調整処理を実行した後、位相調整処理を実行する。
停止位置調整処理において、要求荷重の変動許容範囲により位置調整が可能な範囲が制限される場合がある。その場合、位相調整処理を併用することで特定の相への発熱の偏りを防止することができ、特に効果的である
本実施形態の車両用制動装置が搭載される車両の構成図。 各車輪に対応する電動ブレーキの模式的な構成図。 (a)電動ブレーキのパッドの模式図、(b)パッド荷重とパッド位置との特性図。 比較例による荷重制御での制動力制御を示す図。 Aタイプの制動力制御部の概略ブロック図。 Bタイプの制動力制御部の概略ブロック図。 第1群(第3群)実施形態による制動力保持動作の全体スキーム図。 (a)停止位置調整処理からヒステリシス活用電流低減処理への移行判定のフローチャート。(b)ヒステリシス活用電流低減処理から位相調整処理への移行判定のフローチャート。 第2群(第4群)実施形態による制動力保持動作の全体スキーム図 ヒステリシス活用電流低減処理の戻し動作兼停止位置調整処理から位相調整処理への移行判定のフローチャート。 第5群実施形態による制動力保持動作の全体スキーム図。 第6群実施形態による制動力保持動作の全体スキーム図。 ヒステリシス活用電流低減処理のH1、H2実施形態によるトルク指令演算部のブロック図。 H1実施形態による荷重制御と位置制御との切替を説明する図。 H1実施形態の変形例による荷重制御と位置制御との切替を示す図。 H2実施形態による荷重制御と位置制御との切替を示す図。 H3実施形態のトルク指令演算部のブロック図。 H3実施形態による位置制御での制動力制御を示す図。 要求制動力増加時における動作切替のフローチャート。 位置指令演算のフローチャート。 停止位置調整処理のL1実施形態による制動力制御部の構成例を示すブロック図。 比較例での要求荷重に対する停止位置を示す図。 比較例でのロック通電位置の例1を示す三相電流波形図。 L1実施形態での要求荷重に対する停止位置を示す図。 L1実施形態でのロック通電位置の例1を示す三相電流波形図。 停止位置の調整前後でのロック通電時の電流を比較する図。 比較例でのロック通電位置の例2を示す三相電流波形図。 L1実施形態でのロック通電位置の例2を示す三相電流波形図。 停止位置の調整前後でのロック通電時の大電流相と高放熱相との関係を比較する図。 停止位置調整処理のフローチャート。 適用除外条件成否判定のフローチャート。 停止位置調整処理のL2実施形態による制動力制御部の構成例を示すブロック図。 位相調整処理のP1-P3実施形態による制動力制御部の構成例を示すブロック図。 dq軸座標における最大効率動作点を示す電流ベクトル図。 最大効率動作点で駆動したときのモータ位置(電気角)と三相電流との関係を示す図。 ロック通電時における三相電流のタイムチャート。 P1実施形態による等トルク曲線上の位相調整処理を示す電流ベクトル図。 P1実施形態の位相調整処理による位相角と三相電流との関係を示す図。 P1実施形態の位相調整処理を行った場合のロック通電時における三相電流のタイムチャート。 P2実施形態による等振幅円上の位相調整処理を示す電流ベクトル図。 P2実施形態の位相調整処理による位相角と三相電流との関係を示す図。 P2実施形態の位相調整処理による位相角とトルクとの関係を示す図。 P3実施形態の位相調整処理を説明する電流ベクトル図。
本発明の複数の実施形態による車両用制動装置を図面に基づいて説明する。以下の第1群実施形態~第6群実施形態には三種類の基本処理に関する複数の実施形態が含まれる。本明細書では、第1群実施形態~第6群実施形態の組み合わせに関する構成を先に説明した後で、三種類の基本処理に関する出願済みの内容を記載する。組み合わせの説明部分における「本実施形態」は、各群にて組み合わせられる全ての実施形態を指す。各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。各基本処理における符号やステップ番号の重複を避けるため、出願済みの明細書、図面に対し一部の符号やステップ番号を変更する。
本実施形態の車両用制動装置は、モータが出力したトルクを直動機構により直動力に変換し、対応する車輪に押圧して制動力を発生させる複数の電動ブレーキが各車輪に設けられた車両に搭載される。車両用制動装置は、各電動ブレーキが発生させる制動力を制御する制動力制御部を備える。
[車両の構成]
図1~図3(b)を参照し、本実施形態の車両用制動装置30が搭載される車両900及び電動ブレーキ81-84の構成を説明する。図1に示すように、車両900は、前後方向において二列の左右対の車輪91、92、93、94を有する四輪車両である。前列左右輪91、92に「FL、FR」、後列左右輪93、94に「RL、RR」と記す。各車輪91、92、93、94に対応して複数(この例では四つ)の電動ブレーキ81、82、83、84が設けられている。以下、連続する四つの符号を、「車輪91-94」、「電動ブレーキ81-84」のように省略して記す。後述の記号「負荷トルクTL1-TL4」、「モータ温度Temp1-Temp4」についても同様とする。
車両用制動装置30は制動力制御部400を備える。制動力制御部400は、外部から指令される要求制動力に基づき、各電動ブレーキ81-84が発生させる制動力を制御する。要求制動力は、運転者のブレーキ操作や運転支援装置からの制動信号等により指令される。各電動ブレーキ81-84を構成するモータ又は直動機構の動作位置を検出した位置センサ信号θ、X、及び、ブレーキパッドの押圧荷重を検出した荷重センサ信号Fのうち少なくとも一部が制動力制御部400に入力される。各センサ信号θ、X、Fの詳細については図2を参照して後述する。どのセンサ信号が制動力制御部400に入力されるかは実施形態によって異なる。また、車両用制動装置30は、車速センサ97から車速Vを取得する。
電動ブレーキ81-84のアクチュエータは、「多相モータ」としての三相モータ(図中「三相M」)60で構成されている。具体的に三相モータ60は、永久磁石式のブラシレスモータである。なお、他の実施形態では四相以上の多相モータが用いられてもよい。本実施形態では各電動ブレーキ81-84に対応する三相モータ60の構成、作用は同様であるものとし、単一の符号「60」を用いる。以下の明細書中、適宜、三相モータ60を単に「モータ60」と省略する。制動力制御部400は、各電動ブレーキ81-84のモータ60の通電を制御する四つのモータ制御装置の機能を含む。
制動力制御部400は、負荷トルクTL1-TL4又はモータ温度Temp1-Temp4を取得してもよい。負荷トルクTL1-TL4はインバータの消費電力から推定してもよい。モータ温度Temp1-Temp4は、例えば温度センサにより検出される。或いは、三相モータ60への通電によるジュール熱から温度上昇を推定し、外気温に加算することでモータ温度Temp1-Temp4を算出してもよい。負荷トルクTL1-TL4及びモータ温度Temp1-Temp4は、適用除外の説明で後述される。適用除外要件の判定に使用しない場合、制動力制御部400は、負荷トルクTL1-TL4又はモータ温度Temp1-Temp4を取得しなくてもよい。
本実施形態では各電動ブレーキ81-84の制御構成は同様である。図2には、電動ブレーキ81-84のうちいずれか一つを例として、制動力制御部400による電動ブレーキの制御構成を図示する。
各電動ブレーキ81-84は、モータ60、直動機構85、及びキャリパ86を含む。モータ60は、例えば永久磁石式三相ブラシレスモータで構成されており、制動力制御部400から通電される駆動電流によりトルクを出力する。直動機構85は、モータ60の出力回転を減速しつつ直線運動に変換するアクチュエータである。モータ60の回転角度θと直動機構85のストロークXとは比例する。こうして各電動ブレーキ81-84は、モータ60が出力したトルクを直動機構85により直動力に変換し、対応する車輪91-94に押圧して制動力を発生させる。
モータ60の出力トルクは、直動機構85を介してキャリパ86のパッド87を動作させる。パッド87が移動して各車輪91-94のディスク88に押し付けられることで、摩擦により制動力が発生する。また、パッド87がディスク88から離れることで、制動力が解除される。
図3(a)、(b)を参照し、図2のIIIa部に示す電動ブレーキ81-81のパッド87の特性について補足する。図3(a)に示すように、パッド87はバネのような特性を持ち、直動機構85による押し込み力Fdと、ひずみ量に応じた反力Frとが互いに反対方向に作用する。図3(b)に示すように、直動機構85のストロークに基づくパッド位置Xと、パッド荷重Fとはほぼ比例する。モータ60の回転角度の変化Δθによりパッド位置がΔX変化すれば、パッド荷重はΔF変化する。なお、図3(b)及び図24では、記号「ΔF」は荷重の変化分を示す。図13、図21等で用いられる、荷重制御における荷重指令値と実荷重との荷重偏差を示す「ΔF」とは意味が異なる。
図2に戻り、制動力制御部400は、トルク指令演算部40、電流指令演算部50及びインバータ55を含む。トルク指令演算部40は、外部から指令される要求制動力に基づきモータ60のトルク指令値Trq*を演算する。電流指令演算部50は、トルク指令値Trq*に基づき、dq軸座標における電流振幅及び電流位相で定義される電流指令値Id*、Iq*を演算する。
インバータ55は、入力されたバッテリ15の直流電力を交流電力に変換し、電流指令値Id*、Iq*に応じた交流電力をモータ60に供給する。なお、電流指令演算部50からインバータ55までの電流フィードバック等の構成については、停止位置調整処理及び位相調整処理において後述する。
また電動ブレーキ81-84は、実線で示す角度センサ72、又は、二点鎖線で示すストロークセンサ73のうち少なくとも一方を備えている。角度センサ72は、モータ60の実際の回転角度である実角度θを検出する。ストロークセンサ73は、直動機構85の実際のストロークである実ストロークXを検出する。ストロークセンサ73は、直動機構85の移動部分の位置変化を検出してもよく、パッド87の位置変化を検出してもよい。
角度センサ72及びストロークセンサ73を包括して「位置センサ」という。位置センサ72、73は、例えばホール素子や磁気抵抗素子等で構成され、比較的高い精度で位置を検出可能である。また、実角度θ及び実ストロークXを包括して「実位置」という。位置センサ72、73が検出した実位置θ、Xはトルク指令演算部40に入力される。本実施形態では、主に角度センサ72を備える構成を想定し、以下の説明では「位置センサ72」の符号、及び「実位置θ」の記号のみを用いる。ストロークセンサ73を備える構成は、その他の実施形態に記載する。
後述のAタイプの構成では、電動ブレーキ81-84は、破線で示す荷重センサ71をさらに備えている。荷重センサ71は、車輪91-94に実際に押圧される制動荷重である実荷重Fを検出する。荷重センサ71は例えばロードセル等で構成され、位置センサ72に比べて検出精度が低い。荷重センサ71が検出した実荷重Fはトルク指令演算部40に入力される。後述のBタイプの構成では、電動ブレーキ81-84は荷重センサ71を備えていない。なお、荷重センサ71が検出した実荷重Fがトルク指令演算部40の演算に使用されない場合もあり得るが、以下、不使用の場合については言及を省略する。
次に図4を参照し、この構成の電動ブレーキにおけるモータトルクと制動力との関係について説明する。制動力はブレーキパッド荷重に相関する。以下、単に「トルク」とはモータ60が出力するトルクを意味し、単に「荷重」とはパッド87による押圧荷重を意味する。図4は、特許文献1(特許第6080682号公報)の図10に対応するものであり、本明細書では、後述する理由により比較例の図として扱われる。
モータ60のトルクと電動ブレーキ81-84に発生する制動力との関係はヒステリシス特性を有している。トルクが増加するとき、制動力は正効率線に沿って増加する。トルクが増加から減少に転じる転向値Tconvから保持臨界値Tcrまで減少するとき、制動力は一定に保持される。トルクが保持臨界値Tcrから減少するとき、制動力は逆効率線に沿って減少する。ここで、トルクはモータ60の駆動電流に相関する。
縦軸において「Fhold」は荷重の目標値であり、「dF」はオフセット値である。「Fex(=Fhold+dF)」は、目標値にオフセット値を加えた「目標値よりも大きい所定値」である。特許文献1の従来技術では、荷重センサで検出される荷重の大きさが「目標値よりも大きい所定値Fex」に到達するまでモータのトルクを増加させる。その後、荷重センサで検出される荷重の大きさが目標値に到達するまでモータのトルクを減少させるようにモータの駆動電流を制御する。
電動ブレーキ61-64が実際に出力する制動力を「実制動力」という。実制動力を要求制動力まで増加させて保持するとき、トルク及び制動力のヒステリシス変化を表す第1~第4過程の用語を定義する。図4の(1)~(4)が第1~第4過程に対応する。
第1過程では、実制動力が要求制動力に到達するまでモータ60のトルクを正効率線に沿って増加させる「増加動作」が行われる。第2過程では、第1過程に続き、実制動力が要求制動力よりも所定量だけ超過するまでモータ60のトルクを正効率線に沿って増加させる「超過動作」が行われる。第3過程では、超過動作の終了時における制動力が保持されたままモータ60のトルクが減少する「保持動作」が行われる。第4過程では、実制動力が要求制動力に到達するまで、モータ60のトルクを逆効率線に沿って減少させる「戻し動作」が行われる。
図4において第1~第4過程に付された白抜きブロック矢印は、荷重センサ71により検出された実荷重Fに基づく荷重制御を意味する。つまり、特許文献1の従来技術に相当する比較例では、第1~第4過程の全てにおいて荷重制御が行われる。
しかし、荷重センサ71は一般に精度が低いため、比較例では、超過動作時に荷重センサ71の分解能以上のオフセット値dFに相当する制動力を変化させる必要がある。そのため、要求制動力と保持制動力とのずれが大きくなり、ブレーキフィーリングの悪化が生じるおそれがある。また、温度変化などに伴いパッド87やディスク88の変形が起こると、荷重が変化しているにもかかわらず動作点は変化しない現象が発生し得る。その際、モータ60の駆動電流の低減効果が十分に得られない場合がある。
そこで出願人は、制動力を保持するとき、「ヒステリシス活用電流低減処理」により、要求制動力とのずれを小さくし、モータ駆動電流の低減効果を確保する技術を先に特許出願した。ただし、本実施形態において組み合わせに用いられる「ヒステリシス活用電流低減処理」は、この特許出願で特定される位置制御を要件とする構成や、超過動作及び戻し動作を要件とする構成には必ずしも限定されない。
また、保持動作にて制動力を保持する過程で、モータの回転が停止した状態で通電する「ロック通電」が必要となり、特定の相に電流が集中し、発熱が偏るという問題がある。その結果、インバータの素子やモータ巻線の故障を招いたり、耐熱性の高い部品を使用することが必要になったりする。
そこで出願人は、多相モータのロック通電時に「停止位置調整処理」により、特定の相に発熱が偏ることを防止する技術を先に特許出願した。さらに出願人は、多相モータのロック通電時に「位相調整処理」により、特定の相に発熱が偏ることを防止する技術を先に特許出願した。
本実施形態では、制動力制御部400は、ヒステリシス活用電流低減処理、停止位置調整処理及び位相調整処理のうち二つ又は三つの基本処理を組み合わせて一連の処理として実行する。各基本処理の定義は次の通りである。
「位置制御又は荷重制御により制動力を保持しつつ、ヒステリシス特性に基づき正効率線から逆効率線までモータの駆動電流及びトルクを低減する処理」が「ヒステリシス活用電流低減処理」と定義される。
「制動力の保持時にモータ60の回転が停止した状態で通電するロック通電において、注目するいずれかの相の電流絶対値を減少又は増加させるように、位置制御により回転停止位置を調整する処理」が「停止位置調整処理」と定義される。
「ロック通電において、同じ電流位相での通電を所定時間以上継続しないように、時間に応じて電流指令値Id*、Iq*の位相を変更する処理」が「位相調整処理」と定義される。
また、電動ブレーキ81-84が位置センサ72に加えて荷重センサ71を備え、トルク指令演算部40が荷重制御と位置制御とを切替可能に実行する構成を「Aタイプ」とする。電動ブレーキ81-84が位置センサ72のみを備え、トルク指令演算部40が位置制御のみを実行する構成を「Bタイプ」とする。図5はAタイプ、図6はBタイプの概略構成を示すものである。各基本処理に特有の構成については、後述の各基本処理の説明において対応するブロック図を参照する。
図5にAタイプの制動力制御部400Aの概略ブロック図を示す。トルク指令演算部40Aは、荷重指令演算部41、荷重制御器43、位置指令演算部44、位置制御器46、保持判定・制御切替部47及び切替器48を有する。図5では、スペースの都合上、荷重制御器43は荷重偏差算出器を含み、位置制御器46は位置偏差算出器を含むように図示される。
荷重指令演算部41は、要求制動力に基づき荷重指令値F*を演算する。荷重制御器43は、荷重センサ71により検出された実荷重Fと荷重指令値F*との荷重偏差ΔF(=F*-F)をゼロに近づけるように、すなわち実荷重Fを荷重指令値F*に近づけるようにトルク指令値Trq*(f)を演算する「荷重制御」を実行する。
位置指令演算部44は、要求制動力、実位置θ及びトルク指令値Trq*に基づき位置指令値θ*を演算する。位置制御器46は、位置センサ72により検出された実位置θと位置指令値θ*との位置偏差Δθ(=θ*-θ)をゼロに近づけるように、すなわち実位置θを位置指令値θ*に近づけるようにトルク指令値Trq*(θ)を演算する「位置制御」を実行する。
保持判定・制御切替部47には荷重指令値F*、荷重偏差ΔF及び位置偏差Δθが入力される。保持判定・制御切替部47は、保持動作への移行を判定するとともにトルク指令演算に係る制御を切り替える。Aタイプでの「制御切替」には、荷重制御と位置制御との切替と、処理の切替との両方の意味が含まれる。保持判定及び制御切替部47による制御切替結果は、荷重指令演算部41、位置指令演算部44、切替器48及び電流指令演算部50に出力される。切替器48は、保持判定及び制御切替部47による制御切替結果に従い、トルク指令演算部40Aが出力するトルク指令値Trq*としてTrq*(f)又はTrq*(θ)を切り替える。このようにAタイプのトルク指令演算部40Aは、荷重制御と位置制御とを切替可能に実行する。
制動力制御部400Aは、電流指令値演算部50及びインバータ(図中「INV」)55に加え、図2で省略された電流フィードバック(図中「FB」)制御部53を含む。電流指令値演算部50は、電流指令値として具体的にはベクトル制御によるdq軸電流指令値Id*、Iq*を演算し、電流フィードバック制御部53に出力する。電流フィードバック制御部53は、電流センサ57が検出した三相電流Iu、Iv、Iw、及び、位置センサ72が検出したモータ電気角、すなわち実位置θを取得し、三相電流Iu、Iv、Iwをdq軸電流Id、Iqに変換する。電流フィードバック制御部53は、dq軸電流Id、Iqを電流指令値Id*、Iq*に追従させるように電圧指令値を演算し、さらにPWM制御等によりスイッチング信号を生成してインバータ55に出力する。
図6にBタイプの制動力制御部400Bの概略ブロック図を示す。Bタイプのトルク指令演算部40Bは、Aタイプのトルク指令演算部40Aから荷重制御に関する構成を削除したものに相当し、位置制御のみを実行する。Bタイプの保持判定・制御切替部47には位置偏差Δθが入力される。Bタイプでの「制御切替」は、処理の切替を意味する。保持判定及び制御切替部47による制御切替結果は、位置指令演算部44及び電流指令演算部50に出力される。
(第1群、第2群実施形態)
図7~図10を参照し、第1群、第2群実施形態による制動力保持動作の概要について説明する。第1群、第2群実施形態では、制動力制御部400は、ヒステリシス活用電流低減処理及び停止位置調整処理を一連の処理として実行した後、さらに位相調整処理を実行する。図7、図9において破線で図示された位相調整処理のブロックが有るものとみなす。第1群実施形態と第2群実施形態とでは、停止位置調整処理とヒステリシス活用電流低減処理とを実行する順序が異なる。
仮にヒステリシス活用電流低減処理により逆効率線上に動作点を移した後、停止位置調整処理により制動力増加側の調整が行われると、動作点が再び正効率線上に移動してしまい、最大限の電流低減効果が得られない。そこで第1群実施形態では、停止位置調整処理を実行した後にヒステリシス活用電流低減処理を実行することで上記現象が回避される。また第2群実施形態では、ヒステリシス活用電流低減処理の超過動作を実行後に、戻し動作を兼ねて、モータの回転停止位置を制動力の減少方向に調整するように停止位置調整処理を実行することによって上記現象が回避される。
図7に第1群実施形態による制動力保持動作の全体スキーム図を示す。第1群実施形態では、制動力制御部400は、停止位置調整処理を実行した後、調整後のモータ60の回転停止位置でヒステリシス活用電流低減処理に移行する。Aタイプの制動力制御部400Aの構成が用いられる場合、ヒステリシス活用電流低減処理の超過動作までは位置制御が実行され、戻し動作以後は荷重制御が実行される。Bタイプの制動力制御部400Bの構成が用いられる場合、ヒステリシス活用電流低減処理の超過動作に続き、戻し動作以後も位置制御が継続される。
正効率線上の増加動作で実制動力が要求制動力に到達すると、保持判定により制動力保持動作に移行し、まず正効率線上での位置制御により停止位置調整処理が実行される。停止位置調整処理が完了すると、完了時の実荷重Fが目標荷重として記憶され、ヒステリシス活用電流低減処理の超過動作に移行する。超過動作の後、荷重制御に切り替えられ、又は位置制御を継続したまま、ヒステリシス活用電流低減処理の戻し動作に移行し、記憶された目標荷重まで逆効率線上で戻し動作が行われる。このとき、動作点が正効率線側に戻らないように不感帯が設定されることが好ましい。
制動力制御部400は、停止位置調整処理に続いてヒステリシス活用電流低減処理を実行した後、さらに位相調整処理を実行する。位相調整処理は、保持状態が終了するまで継続される。位相調整制御における適切な調整方向や調整量は、モータの回転停止位置や出力トルクなどによって変化する。したがって、停止位置調整処理又はヒステリシス活用電流低減処理によりモータの位置及びトルクが変化し終わった後に位相調整処理を実行することが効率的かつ効果的である。
図7の全体スキームでは、要求制動力が一定であることを前提とし、一連の処理の途中に要求制動力が急変することは想定されていない。実際には、ヒステリシス活用電流低減処理や停止位置調整処理の途中に要求制動力が急変した場合、処理を中断して保持動作が解除され、増加動作又は減少動作に移行する。また、位相調整処理実行中に要求制動力が急変した場合、位相調整処理が終了し、増加動作又は減少動作に移行する。
図8(a)に停止位置調整処理からヒステリシス活用電流低減処理への移行判定、図8(b)にヒステリシス活用電流低減処理から位相調整処理への移行判定のフローチャートを示す。以下のフローチャートの説明で記号「S」はステップを意味する。図8(a)のS011では停止位置調整処理が実行されている。S012で位置偏差の絶対値|Δθ|が位置偏差閾値Δθth01より小さいと判断されると、S013でヒステリシス活用電流低減処理に移行する。図8(b)のS021ではヒステリシス活用電流低減処理が実行されている。Aタイプの構成の場合、S022で荷重偏差の絶対値|ΔF|が荷重偏差閾値ΔFth02より小さいと判断されると、S023で位相調整処理に移行する。
S012及びS022での誤判定を防止するため、瞬時に条件を満たしたときYESと判定されるのでなく、所定の時間にわたって条件成立状態が継続したときYESと判定されるようにすることが好ましい。また、ヒステリシス活用電流低減処理は一時超過してから戻す方式に限らず、位置の変化を伴わない方式(例えば予め定めた電流量だけ低減する方式等)を採用してもよい。その場合、ヒステリシス活用電流低減処理の完了が位相調整処理への移行判定条件となる。
第1群実施形態では、ヒステリシス活用電流低減処理との組み合わせによって停止位置調整処理での位置調整方向の制約が発生しない。したがって、特定の相への発熱偏り防止効果がより小さな調整幅で得られる。なお、第1群実施形態の変形例として、停止位置調整処理の実行前に、ヒステリシス活用電流低減処理の一部が先行して開始されてもよい。
図9に第2群実施形態による制動力保持動作の全体スキーム図を示す。第2群実施形態では、制動力制御部400は、ヒステリシス活用電流低減処理の超過動作を実行した後、ヒステリシス活用電流低減処理の戻し動作を兼ねて、モータ60の回転停止位置を制動力の減少方向に調整するように停止位置調整処理を実行する。第2群実施形態ではBタイプの制動力制御部400Bの構成が用いられる。
正効率線上の増加動作で実制動力が要求制動力に到達すると、保持判定により制動力保持動作に移行する。要求制動力が一定のとき、正効率線上でヒステリシス活用電流低減処理の超過動作が実行され、超過動作完了時の実荷重Fが目標荷重として記憶される。その後、ヒステリシス活用電流低減処理の戻し動作を兼ねて、位置調整方向を制動力の減少方向に限定し、目標荷重に対応する位置の付近を狙いの調整位置とする停止位置調整処理が実行される。このとき、動作点が正効率線側に戻らないように不感帯が設定されることが好ましい。制動力制御部400は、ヒステリシス活用電流低減処理の戻し動作兼停止位置調整処理を実行した後、さらに位相調整処理を実行する。位相調整処理を後に実行する方が良い理由、及び、保持動作の解除に関しては第1群実施形態と同様である。
図10に、ヒステリシス活用電流低減処理の戻し動作兼停止位置調整処理から位相調整処理への移行判定のフローチャートを示す。S031ではヒステリシス活用電流低減処理の戻し動作兼停止位置調整処理が実行されている。S032で位置偏差の絶対値|Δθ|が位置偏差閾値Δθth03より小さいと判断されると、S033で位相調整処理に移行する。S032での誤判定を防止するため、瞬時に条件を満たしたときYESと判定されるのでなく、所定の時間にわたって条件成立状態が継続したときYESと判定されるようにすることが好ましい。
第2群実施形態では、ヒステリシス活用電流低減処理の戻し動作と停止位置調整処理とを同時に実行することができるため、制動力保持動作中の実制動力のアップダウンが抑制される。また、最終的な制動力保持値に収束するまでの時間が短縮でき、位相調整の効果も早く得られる。
第1群、第2群実施形態において、ヒステリシス活用電流低減処理と停止位置調整処理との組み合わせ、及び、ヒステリシス活用電流低減処理と位相調整処理との組み合わせについては、制動力保持時の電流低減効果と特定の相への発熱偏り防止効果との両方を得ることができる。
また、停止位置調整処理と位相調整処理との組み合わせについて、停止位置調整処理において、要求荷重の変動許容範囲により位置調整が可能な範囲が制限される場合がある。その場合、位相調整処理を併用することで特定の相への発熱の偏りを防止することができる。
(第3群、第4群実施形態)
第1群実施形態に対し位相調整処理が実行されないものを第3群実施形態とし、第2群実施形態に対し位相調整処理が実行されないものを第4群実施形態とする。第3群、第4群実施形態では、図7、図9において破線で図示された位相調整処理のブロックが無いものとみなす。制動力制御部400がヒステリシス活用電流低減処理及び停止位置調整処理を一連の処理として実行することで、制動力保持時の電流低減効果と、特定の相への発熱偏り防止効果との両方が得られる。
(第5群実施形態)
図11に第5群実施形態による制動力保持動作の全体スキーム図を示す。制動力制御部400は、制動力を保持するとき、ヒステリシス活用電流低減処理を実行した後、位相調整処理を実行する。停止位置調整処理は実行されない。制動力制御部400は、第1群実施形態と同様に位置制御によりヒステリシス活用電流低減処理の超過動作を実行した後、荷重制御に切り替え、又は位置制御を継続したまま戻し動作及び位相調整処理を実行してもよい。或いは制動力制御部400は、超過動作から位相調整処理まで全て荷重制御により実行してもよい。つまり、電動ブレーキ81-84が位置センサを備えることやトルク指令演算部40が位置制御を実行することは要件ではない。ヒステリシス活用電流低減処理として、H1~H3実施形態に限らず、図4に示す比較例の構成が用いられてもよい。第5群実施形態でも、制動力保持時の電流低減効果と、特定の相への発熱偏り防止効果との両方が得られる。
(第6群実施形態)
図12に第6群実施形態による制動力保持動作の全体スキーム図を示す。制動力制御部400は、制動力を保持するとき、停止位置調整処理を実行した後、位相調整処理を実行する。ヒステリシス活用電流低減処理は実行されない。電動ブレーキ81-84は位置センサ72を備えており、トルク指令演算部40は位置制御を少なくとも実行する。例えば増加動作からの保持時には正効率線上のみで動作点が変化する。停止位置調整処理と位相調整処理との組み合わせの効果は、第1群、第2群実施形態で上述した通りである。
以上の第1群~第6群実施形態を包括すると、本実施形態では、ヒステリシス活用電流低減処理、停止位置調整処理又は位相調整処理を組み合わせた際に制御同士が互いに干渉することによる効果の低下を適切に回避し、制動力保持動作を効率的、効果的に実行することができる。
続いて、ヒステリシス活用電流低減処理、停止位置調整処理、位相調整処理の各基本処理について詳しく説明する。区別のため、ヒステリシス活用電流低減処理の実施形態には'hysteresis'に由来する「H」、停止位置調整処理の実施形態には'lock'に由来する「L」、位相調整処理の実施形態には'phase'に由来する「P」の文字を付す。
[ヒステリシス活用電流低減処理]
図13~図20を参照し、ヒステリシス活用電流低減処理のH1~H3実施形態について説明する。H1~H3の各実施形態のトルク指令演算部40は、実制動力を要求制動力まで増加させて保持するとき、図4に示す第1過程、第2過程、第3過程及び第4過程の順にトルク指令値を変化させる。トルク指令演算部40は、少なくとも第2過程で位置センサ72により検出された実位置θに基づく位置制御によりトルク指令値を演算する。
続いて、実施形態毎に詳細な構成について説明する。Aタイプの構成に対応するH1、H2実施形態のトルク指令演算部には「401H」、Bタイプの構成に対応するH3実施形態のトルク指令演算部には「403H」の符号を付して区別する。第1群、第3群実施形態ではH1~H3実施形態のどれが採用されてもよい。第2群、第4群実施形態では、第4過程の戻し動作で位置制御が実行されるH2又H3実施形態が採用される。第5群実施形態では、H1~H3実施形態に限らず、図4に示す荷重制御のみが実行される比較例の構成が採用されてもよい。
(H1、H2実施形態)
図13~図16を参照し、H1実施形態及びH2実施形態について説明する。H1、H2実施形態では、第1~第4過程の移行に伴い、荷重センサ71により検出された実荷重Fに基づく荷重制御と、位置センサ72により検出された実位置θに基づく位置制御とが切り替えられる。
図13にH1、H2実施形態のトルク指令演算部401Hのブロック図を示す。トルク指令演算部401Hは、荷重指令演算部41、荷重偏差算出器42、荷重制御器43、位置指令演算部44、位置偏差算出器45、位置制御器46、切替判定部47及び切替器48を有する。
荷重指令演算部41は、要求制動力に基づき荷重指令値F*を演算する。荷重偏差算出器42は、荷重センサ71により検出された実荷重Fと荷重指令値F*との荷重偏差ΔF(=F*-F)を算出する。荷重制御器43は、荷重偏差ΔFをゼロに近づけるように、すなわち実荷重Fを荷重指令値F*に近づけるようにトルク指令値Trq*(f)を演算する。
位置指令演算部44は、後述する方法により、或いは、破線で示すように要求制動力に基づき位置指令値θ*を演算する。位置偏差算出器45、位置センサ72により検出された実位置θと位置指令値θ*との位置偏差Δθ(=θ*-θ)を算出する。位置制御器46は、位置偏差Δθをゼロに近づけるように、すなわち実位置θを位置指令値θ*に近づけるようにトルク指令値Trq*(θ)を演算する。
切替判定部47は、第1過程から第4過程までの各過程に応じてモータ60のトルク指令値Trq*を演算する構成として、荷重制御器43による荷重制御と、位置制御器46による位置制御との切替を判定する。
切替判定部47には荷重指令値F*、荷重偏差ΔF、及び、実施形態により位置偏差Δθが入力される。荷重指令値F*により要求制動力の変動が把握される。荷重指令値F*の変動量が所定範囲内であり、荷重偏差ΔFが荷重偏差閾値を下回ったとき、荷重制御における実荷重Fが荷重指令値F*に到達したと判断される。また、位置偏差Δθが位置偏差閾値を下回ったとき、位置制御における実位置θが位置指令値θ*に到達したと判断される。
切替器48は、切替判定部47からの指令により、トルク指令演算部401Hが出力するトルク指令値Trq*を切り替える。図13に示す構成例では各制御器43、46の出力側に切替器48が設けられているが、この構成に限らず、例えば荷重制御器43又は位置制御器46の一方の動作をマスクするように切替機能が実現されてもよい。
また、第1過程から第2過程に移行するタイミングを「超過動作開始タイミング」と記す。荷重指令演算部41は、切替器48から通知された超過動作開始タイミングにおいて取得した実位置θを位置指令値θ*とするように演算してもよい。この位置指令値θ*は第2過程の位置制御における初期の位置指令値となる。詳しくは図20のフローチャートを参照して後述する。
図14に、H1実施形態による荷重制御と位置制御との切替を示す。トルクと制動力とのヒステリシス特性は、図4に示す比較例と同じである。縦軸が二重に示されるように、H1、H2実施形態では、制動力は荷重F及び位置θに相関する。言い換えれば、制動力に相関するパラメータとして荷重F及び位置θが二重に用いられる。
要求制動力に対応する荷重Fが目標保持荷重Fholdとなり、要求制動力に対応する位置θが目標保持位置θholdとなる。また、目標超過制動力に対応する荷重Fが目標保持荷重Fholdより荷重超過量dFだけ大きい目標超過荷重Fex(=Fhold+dF)となる。目標超過制動力に対応する位置θが目標保持位置θholdより位置超過量dθ大きい目標超過位置θex(=θhold+dθ)となる。ここで、位置θの大小は、対応する制動力の大小に準じて定義される。つまり、対応する制動力が大きいほど位置θが大きいと表す。
図14~図16において、白抜きブロック矢印は荷重制御を表し、ハッチング入りのブロック矢印は位置制御を表す。H1、H2実施形態ともトルク指令演算部401Hは第1過程で荷重制御を実行する。H1実施形態では、トルク指令演算部401Hは、第2過程で位置制御を実行し、第3過程及び第4過程で荷重制御を実行する。トルク指令演算部401Hは、第1過程から第2過程に移行するとき、切替判定部47により荷重制御から位置制御に切り替える。
詳しくは、第1過程から第2過程に移行するとき、切替判定部47は、荷重偏差ΔFが荷重偏差閾値を下回ると、位置制御に切り替えるように切替器48に指令する。トルク指令演算部401Hは、第1過程から第2過程に移行する超過動作開始タイミングに荷重センサ71により検出された実荷重Fを目標保持荷重Fholdとして記憶する。第2過程では、実位置θを位置指令値θ*に近づけるように位置制御器46が演算したトルク指令値が用いられる。
また、第2過程から第3過程に移行するとき、切替判定部47は、位置偏差Δθが位置偏差閾値を下回ると、荷重制御に切り替えるように切替器48に指令する。第3過程では積極的な制御がなされるわけではなく、正効率線から逆効率線まで成り行きでトルクが減少する。トルク指令値が逆効率線まで減少すると、荷重制御のまま第4過程に移行する。トルク指令演算部401Hは、第4過程において、実荷重Fが目標保持荷重Fholdに到達するまで戻し動作を継続する。
H1実施形態では、第2過程の超過動作において高精度な位置センサ72を用い、位置センサ72の分解能に応じて位置超過量dθをできるだけ小さく設定して位置制御を行うことができる。したがって、第2過程で荷重制御を行う比較例に比べ、保持動作における実制動力と要求制動力とのずれを小さくし、フィーリングの悪化を防ぐことができる。また、温度変化などに伴う荷重変化が発生しても、位置センサ72によりモータ60や直動機構85の位置を直接検出することで、動作点が確実に変化するまでモータ駆動電流を低減することができる。
また、既存の電動ブレーキ81-84は荷重センサ71を備えているため、第2過程でのみ位置制御を行い、第1、第3、第4過程では荷重制御を行うようにトルク指令演算部401Hが制御を切り替えることで、既存設計からの変更を最小限にすることができる。さらに、第3過程と第4過程とを同じ制御とすることで、保持動作の終了を判定しなくても保持動作から戻し動作へは成り行きでの移行が可能となる。
図15に、H1実施形態の変形例による荷重制御と位置制御との切替を示す。この変形例では、トルク指令演算部401Hは、第2過程に続いて第3過程で位置制御を実行し、第4過程で荷重制御を実行する。つまり、超過動作から保持動作に移るタイミングではなく、保持動作から戻し動作に移るタイミングで位置制御から荷重制御に切り替えられる。この変形例では切替判定部47が保持動作の終了を判定するロジックを追加する必要があるが、第2過程で位置制御を行うことによりH1実施形態と同様の作用効果が得られる。
図16に、H2実施形態による荷重制御と位置制御との切替を示す。H2実施形態では、トルク指令演算部401Hは、第2過程に続いて第3過程及び第4過程で位置制御を実行する。H1実施形態と同様に、トルク指令演算部401Hは、第1過程から第2過程に移行するとき、切替判定部47により荷重制御から位置制御に切り替える。
トルク指令演算部401Hは、第1過程から第2過程に移行する超過動作開始タイミングに位置センサ72により検出された実位置θを目標保持位置θholdとして記憶する。第2過程では、実位置θを位置指令値θ*に近づけるように位置制御器46が演算したトルク指令値が用いられる。
実位置θが目標超過位置θexに到達すると、第2過程から第3過程に移行し、超過動作の終了時における制動力が保持されたまま、正効率線から逆効率線まで成り行きでトルクが減少する。トルク指令値が逆効率線まで減少すると、位置制御のまま第4過程に移行する。トルク指令演算部401Hは、第4過程において、実位置θが目標保持位置θholdに到達するまで戻し動作を継続する。
H2実施形態でも、第2過程で位置制御を行うことにより、H1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、微小な位置超過量dθに対し、超過動作及び戻し動作において共通の精度で位置制御を実行することができる。
(H3実施形態)
図17、図18を参照し、H3実施形態について説明する。H3実施形態では、トルク指令演算部403Hは、第1過程~第4過程の全部で、位置センサ72により検出された実位置θに基づく位置制御を実行する。図17にH3実施形態のトルク指令演算部403Hのブロック図を示す。トルク指令演算部403Hは、位置指令演算部44、位置偏差算出器45及び位置制御器46を有する。
位置指令演算部44は、要求制動力に基づき位置指令値θ*を演算する。図13の構成では、要求制動力は、基本的に荷重指令演算部41に入力される他、位置指令演算部44に入力されてもよい。それに対し図17の構成では荷重指令演算部41が無いため、要求制動力は必ず位置指令演算部44に入力される。位置偏差算出器45及び位置制御器46は、図13の構成と同じであるため説明を省略する。
位置偏差算出器45が算出した位置偏差Δθ(=θ*-θ)は位置指令演算部44にフィードバックされる。位置指令演算部44は、位置偏差Δθが位置偏差閾値を下回ったとき、位置制御における実位置θが位置指令値θ*に到達したと判断する。
図18に、H3実施形態による位置制御による制動力制御を示す。トルクと制動力とのヒステリシス特性は、比較例及びH1、H2実施形態と同じである。H3実施形態では、制動力は位置θにのみ相関する。図18において、ハッチング入りのブロック矢印は位置制御を表す。トルク指令演算部403Hは、第1過程で位置制御を実行する。
トルク指令演算部403Hは、実位置θが要求制動力に対応する位置指令値θ*に達し、第1過程から第2過程に移行する超過動作開始タイミングに位置センサ72により検出された実位置θを目標保持位置θholdとして記憶する。それ以後はH2実施形態と同様に第4過程まで位置制御が継続される。
H3実施形態でも、第2過程で位置制御を行うことにより、H1、H2実施形態と同様の作用効果が得られる。また、荷重制御と位置制御とを切り替えるロジックが不要となるため、トルク指令演算部403Hの構成が簡素となる。
[ヒステリシス活用電流低減処理での制動力制御のフローチャート]
次に図19、図20のフローチャートを参照し、H1~H3実施形態を包括してヒステリシス活用電流低減処理での制動力制御について説明する。
図19に、要求制動力増加時における動作切替のフローを示す。このフローは第1過程で荷重制御が行われるH1、H2実施形態が対象となる。H1、H2実施形態が有効に使用される場面を考慮すると、要求制動力の減少時は前提から省かれる。したがって、要求制動力が増加中であるか減少中であるかを判別するロジックも省略される。ただし、現実のシステム設計では、要求制動力が減少する場合を含めてフローを設計することが求められる。
S11Hでは、第1過程(増加動作)中であるか判断される。S11HでYESの場合、S12Hで実制動力が増加する。S13Hでは、荷重偏差ΔFが荷重偏差閾値ΔFth1より小さいか判断される。S13HでYESの場合、S14Hでは、第2過程(超過動作)を経て第3過程(保持動作)に切り替えられる。
S11HでNOの場合、第3過程(保持動作)中であると推定される。H1、H2実施形態では、第3過程の途中に要求制動力が急変することを想定していないが、現実には、第3過程の途中に要求制動力が急変し、それに応じて荷重指令値F*が急変する場合があり得る。要求制動力増加時という前提から急減の場合を除外すると、荷重指令値F*が急増し、実荷重Fと荷重指令値F*との荷重偏差ΔFが急増する場合が想定される。S15Hでは荷重偏差ΔFが荷重偏差閾値ΔFth2より大きいか判断される。S15HでYESの場合、S16Hでは、第3過程(保持動作)が中止され、第1過程(増加動作)に切り替えられる。
図20に、位置指令演算部44による位置指令演算のフローを示す。S21Hで、第1過程(増加動作)が行われる。S22Hでは実制動力が要求制動力に到達し、第1過程から第2過程に移行したか判断される。S22HでYESの場合、S23Hで、超過動作開始タイミングにおける実位置θが目標保持位置θholdとして記憶される。
S24Hでは、第2過程(超過動作)で、位置指令値θ*を順次増加させながら位置制御を行う。具体的には目標保持位置θholdより大きい暫定位置θtempを位置指令値θ*とし、実位置θの増加に先行して暫定位置θtempを増加させる。これにより、暫定位置θtemp(すなわち位置指令値θ*)の増加に追従して実位置θが増加する。
S25Hでは暫定位置θtempが目標超過位置θexに到達したか判定される。S25HでYESのとき、S26Hで第3過程(保持動作)に移行する。S26Hの後、S27H又はS28Hの2パターンのステップが選択可能である。
H1実施形態に対応するS27Hでは、荷重制御に切り替えられ、第4過程(戻し動作)の荷重指令値F*が目標保持荷重Fholdに設定される。H2、H3実施形態に対応するS28Hでは、位置制御のまま、第4過程(戻し動作)の位置指令値θ*が目標保持位置θholdに変更される。
[停止位置調整処理]
停止位置調整処理に関するL1、L2実施形態の構成について説明する。このパートの明細書及び図面における「本実施形態」は、停止位置調整処理の実施形態を指す。L1実施形態及びL2実施形態の制動力制御部は、停止位置調整処理の実行、非実行を切り替える部分の制御構成のみが異なり、作用効果は同じである。停止位置調整処理の実行、非実行の切替部分が含まれるトルク指令演算部の符号について、L1実施形態のトルク指令演算部には「401L」、L2実施形態のトルク指令演算部には「402L」の符号を付して区別する。
(L1実施形態)
図21~図31を参照し、L1実施形態について説明する。L1実施形態では、停止位置調整処理を実行する場合、実位置θを位置指令値θ*に追従させる位置制御が実行され、停止位置調整処理を実行しない場合、実荷重Fを荷重指令値F*に追従させる荷重制御が実行される。制動力が正効率線に沿って増加する過程、及び、逆効率線に沿って減少する過程では荷重制御が実行される。制動力を保持しつつトルクを減少させる過程において、必要に応じて位置制御により停止位置調整処理が実行される。なお、停止位置調整処理の調整量をゼロとすることで、実質的に停止位置調整処理の実行を中止してもよい。
図21に、Aタイプの構成に対応するL1実施形態の制動力制御部400Lのブロック図を示す。トルク指令演算部401Lは、荷重指令演算部41、荷重偏差算出器42、荷重制御器43、位置偏差算出器45、位置制御器46及び切替器48を有する。
荷重指令演算部41は、要求制動力に基づき荷重指令値F*を演算する。荷重偏差算出器42は、荷重センサ71により検出された実荷重Fと荷重指令値F*との荷重偏差ΔF(=F*-F)を算出する。荷重制御器43は、荷重偏差ΔFをゼロに近づけるように、すなわち実荷重Fを荷重指令値F*に近づけるようにトルク指令値Trq*(f)を演算する。
位置偏差算出器45は、位置センサ72により検出された実位置θと停止位置調整器67が出力した位置指令値θ*との位置偏差Δθ(=θ*-θ)を算出する。位置制御器46は、位置偏差Δθをゼロに近づけるように、すなわち実位置θを位置指令値θ*に近づけるようにトルク指令値Trq*(θ)を演算する。
切替器48は、停止位置調整器67からの切替信号に従い、トルク指令演算部401Lが出力するトルク指令値Trq*としてTrq*(f)又はTrq*(θ)を切り替える。図21に示す構成例では各制御器43、46の出力側に切替器48が設けられているが、この構成に限らず、例えば荷重制御器43又は位置制御器46の一方の動作をマスクするように切替機能が実現されてもよい。
さらに制動力制御部400Lは、電流指令値演算部50及びインバータ(図中「INV」)55に加え、図2で省略された電流フィードバック(図中「FB」)制御部53、ロック通電判定部69及び停止位置調整器67を含む。
電流指令値演算部50は、電流指令値Id*、Iq*を演算し、電流フィードバック制御部53に出力する。電流フィードバック制御部53は、電流センサ57が検出した三相電流Iu、Iv、Iw、及び、位置センサ72が検出したモータ電気角、すなわち実位置θを取得し、三相電流Iu、Iv、Iwをdq軸電流Id、Iqに変換する。電流フィードバック制御部53は、dq軸電流Id、Iqを電流指令値Id*、Iq*に追従させるように電圧指令値を演算し、さらにPWM制御等によりスイッチング信号を生成してインバータ55に出力する。
ロック通電判定部69は、実位置θの変動幅や時間微分等から、モータ60の回転が停止した状態で通電する「ロック通電時」であるか否かを判定し、ロック通電時であると判定したとき、ロック通電信号を停止位置調整器67に出力する。なお、回転の「停止」には、例えば数rpm程度の超低回転状態を含む。
停止位置調整器67は、対応する電動ブレーキ81-84から、負荷トルクTL1-TL4及びモータ温度Temp1-Temp4を取得し、後述する適用除外要件の成否を判定する。停止位置調整器67は、適用除外要件を満たす場合を除き、ロック通電時に、所定の位置調整範囲内で回転停止位置を調整する「停止位置調整処理」を実行する。以下の明細書中、「停止位置」は回転停止位置を意味する。
本実施形態は、ロック通電時におけるモータ60の回転停止位置に応じて負荷に作用する荷重が変化する電動ブレーキ装置に適用される。次に図22~図29を参照し、ロック通電時に停止位置調整処理を実行しない比較例と対比しつつ、停止位置調整処理の技術的意義を説明する。
停止位置調整処理の定義によると、停止位置調整器67は、ロック通電において、注目するいずれかの相の電流絶対値を減少又は増加させるように、位置制御により回転停止位置を調整する。具体的には次の二つの例を想定する。[1]停止位置調整器67は、各相のうち電流絶対値が最大となる最大電流相の電流絶対値を低減するように回転停止位置を調整する。[2]停止位置調整器67は、各相のうち相対的に放熱性が高い一相以上の高放熱相に電流を偏らせるように回転停止位置を調整する。
図22に、比較例での要求荷重に対する停止位置を示す。比較例では、負荷に作用する荷重の目標値である要求荷重が決まると停止位置は一意に決まり、特定の相に電流が集中する位置で停止する可能性がある。図23に、比較例でのロック通電位置の例1を示す。各相のうち電流絶対値が最大となる相を「最大電流相」と定義する。図23の例では、ロック通電位置でV相電流Ivの絶対値が最大であり、V相が最大電流相に相当する。
図24に、本実施形態での要求荷重に対する停止位置を示す。停止位置調整処理において、モータ60の回転停止位置は、要求荷重の変動許容範囲に対応する範囲に調整される。図24では、位置調整による荷重変化をΔFと表す。位置調整方向は、例えば荷重が増加する側が正方向、荷重が減少する側が負方向と定義される。図24には、位置θの調整と荷重Fの調整とが互いに相関関係にあることが表されている。
図25に、本実施形態でのロック通電位置の例1を示す。この例では、調整前の位置から、V相電流IvとU相電流Iuとの符号が反対で絶対値が等しい位置に停止位置が調整される。図26にロック通電時の各相電流を示す。比較例では調整前の状態が継続し、最大電流相のインバータ55の素子やモータ60の巻線で発熱が偏る。それに対し本実施形態の停止位置調整処理では、最大電流相であるV相の電流絶対値を低減するように停止位置が調整される。好ましくは、最大電流相の電流絶対値が最小となる位置(例えばV相電流IvとU相電流Iuとの絶対値が等しくなる電気角45°の位置)が停止位置調整処理のターゲット位置θtgtとなる。トルク指令演算部401Lは、調整後の回転停止位置が反映されたトルク指令値Trq*を演算する。
図27に、比較例での要求荷重に対するロック通電位置の例2を示す。各相のうち相対的に放熱性が高い相を「高放熱相」と定義する。図27の例ではU相が高放熱相である場合に、W相電流Iwの絶対値が最大となる位置(電気角135°の位置)でロック通電となった状況を想定する。
図28に、本実施形態でのロック通電位置の例2を示す。この例では、調整前の電気角135°の位置から、高放熱相であるU相の電流絶対値が最大となる電気角75°の位置に、電気角60°分、停止位置が調整される。つまり、高放熱相が一相の場合、高放熱相の電流絶対値が最大となる位置が停止位置調整処理のターゲット位置θtgtとなる。
このとき、調整前の位置から電気角30°分を調整した電気角105°の位置でU相電流IuとW相電流Iwとの絶対値が等しくなる。したがって、太線で示す電気角105°から電気角75°までの区間では高放熱相であるU相の電流絶対値が三相の中で最大となる。つまり、高放熱相に電流を偏らせるように回転停止位置が調整される。特に回転停止位置が電気角75°の位置に調整される場合、高放熱相の電流絶対値が最大となる。
図29に単純な構成例として、120°毎に3スロットのステータを有する三相モータにおける各相の熱偏りを示す。図中の「冷」は相対的に放熱性が高い高放熱相を意味し、「熱」は相対的に放熱性が低い低放熱相を意味する。高放熱相に対応する周方向範囲を実線両矢印で示し、低放熱相に対応する周方向範囲を破線両矢印で示す。U相が高放熱相であり、V相及びW相が低放熱相であるとすると、ロック通電時の調整前、低放熱相であるW相に大電流が通電されている。比較例では調整前の状態が継続し、低放熱相のインバータ55の素子やモータ60の巻線で発熱が偏る。それに対し本実施形態の停止位置調整処理では、高放熱相であるU相に電流が偏るように停止位置が調整される。
例えば停止位置調整器67は、調整前の実位置θとターゲット位置θtgtとの関係をマップとして記憶してもよいし、三相モータの場合、実位置θを60°で除した余りが特定の値となるように位置を調整してもよい。また、停止位置調整器67は、位置を直接調整するのでなく、ターゲット位置θtgtに対応する荷重のマップを記憶し、実荷重Fが適正範囲に入るように調整してもよい。
停止位置調整処理において、モータ60の回転停止位置は、上記例のようなターゲット位置θtgtに調整されることが好ましい。ただし、要求荷重の変動許容範囲に基づいて制限される位置調整範囲が、ターゲット位置θtgtまでの位置変化量より小さくなる場合がある。その場合、モータ60の回転停止位置は、位置調整範囲内でターゲット位置θtgtに最も近い位置に調整される。
図30のフローチャートを参照し、停止位置調整器67による停止位置調整処理について説明する。以下のフローチャートの説明で記号「S」はステップを意味する。S10Lで停止位置調整器67は、ロック通電信号の入力有無により、ロック通電時であるか否か判断する。S10LでYESの場合、S20Lで停止位置調整器67は、適用除外要件を満たすか判断する。適用除外要件の具体例については図15を参照する。
S20LでNOの場合、S30Lで停止位置調整器67は、位相調整範囲内で停止位置調整処理を実行する。S10LでNO、又は、S20LでYESの場合、S25Lで停止位置調整器67は、停止位置調整処理の実行を中止する。例えば切替器48により位置制御から荷重制御に切り替えてもよいし、停止位置調整器67が調整量をゼロとして位置制御を実行してもよい。
(適用除外)
本実施形態において、停止位置調整器67は停止位置調整処理を常に実行するとは限らず、ロック通電しても特定の相の発熱が問題にならないような状況では停止位置調整処理を実行する必要はよい。そこで、所定の適用除外要件を満たす場合、停止位置調整器67は停止位置調整処理を実行しない。
図31のフローチャートに、適用除外要件の成否判定の例を示す。この例では3項目の要件についてS21L~S23Lで順に成否を判断する。S21L~S23Lのうち少なくともいずれか一つでYESと判断されたとき、S24Lで適用除外要件を満たすと判定される。
制動力制御部400Lは、各モータ60の負荷トルクTL1-TL4又はモータ温度Temp1-Temp4を取得する。S21では、モータ60の負荷トルクTL1-TL4が所定のトルク閾値未満であるか判断される。低負荷の領域ではロック通電時に流れる電流が小さいため、発熱は問題とならない。
S22Lでは、モータ60の負荷トルクTL1-TL4の変動が所定のトルク変動閾値より大きいか判断される。S22LでYESの場合、モータ60が回転するため、そもそもロック通電状態にならない。S23Lでは、モータ60の温度Temp1-Temp4が所定の温度閾値未満であるか判断される。たとえロック通電が行われても、許容上限温度に対して十分に余裕がある状況では、停止位置調整処理を行う必要はない。
このように、そもそもロック通電にならない場合や、ロック通電しても特定の相の発熱が問題とならない場合、停止位置調整器67は停止位置調整処理を実行しない。これにより、位置調整による荷重変化ΔFが不必要に生じることを回避することができる。
(L2実施形態)
図32に、Bタイプの構成に対応するL2実施形態の制動力制御部400Lのブロック図を示す。L1実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。L2実施形態のトルク指令演算部402Lは、制動力の増加、保持、減少の全過程で、位置センサ72により検出された実位置θに基づく位置制御を実行する。トルク指令演算部402Lは、位置指令演算部44、位置偏差算出器45、位置制御器46及び切替器68を有する。位置指令演算部44は、要求制動力に基づき基本の位置指令値θ*0を演算する。
L1実施形態と同様に、制動力制御部400Lはロック通電判定部69及び停止位置調整器67を含む。停止位置調整器67は「停止位置調整処理」を実行すると判定したとき、調整後の位置指令値θ*aを演算するとともに切替信号を切替器68に出力する。切替器68には、位置指令演算部44が演算した基本の位置指令値θ*0、及び、停止位置調整器67が演算した調整後の位置指令値θ*aが入力される。
切替器68は、停止位置調整処理を実行しない時、基本の位置指令値θ*0を選択し、停止位置調整処理を実行する時、調整後の位置指令値θ*aを選択するように切り替えられる。切替器68が選択した位置指令値θ*が位置偏差算出器45に入力される。位置偏差算出器45及び位置制御器46は、図21の構成と同じであるため説明を省略する。
L2実施形態においても停止位置調整処理の具体的な構成や作用効果はL1実施形態と同様であり、モータ60のロック通電時に特定の相に発熱が偏ることを防止することができる。
[位相調整処理]
位相調整処理に関するP1-P3実施形態の構成について説明する。このパートの明細書及び図面における「本実施形態」は、位相調整処理の実施形態を指す。図33に制動力制御部400Pの構成例を示す。制動力制御部400Pは、トルク指令演算部40、電流指令演算部50、回転停止判定部52、電流フィードバック(図中「FB」)制御部53及びインバータ(図中「INV」)55を含む。トルク指令演算部40は、要求制動力に基づきモータ60のトルク指令値Trq*を演算する。電流指令演算部50は、トルク指令値Trq*に応じてdq軸電流指令値Id*、Iq*を演算し、電流フィードバック制御部53に出力する。
電流フィードバック制御部53は、電流センサ57が検出した三相電流Iu、Iv、Iw、及び、位置センサ(回転角センサ)72が検出したモータ電気角(実位置)θを取得し、三相電流Iu、Iv、Iwをdq軸電流Id、Iqに変換する。電流フィードバック制御部53は、dq軸電流Id、Iqを電流指令値Id*、Iq*に追従させるように電圧指令値を演算し、さらにゲート駆動信号を生成してインバータ55に出力する。
回転停止判定部52は、位置センサ72が検出したモータ電気角θに基づき、モータ60の回転が停止していることを判定して電流指令演算部50に通知する。なお、回転の「停止」には、例えば数rpm程度の超低回転状態を含む。回転停止判定部52は、停止位置調整処理における「ロック通電判定部69」に対応する。また、電流指令演算部50は、対応する電動ブレーキ81-84から、負荷トルクTL1-TL4及びモータ温度Temp1-Temp4を取得し、後述する適用除外要件の成否を判定する。
電流指令演算部50は、対応する三相モータ60が適用除外要件を満たさず、且つ、回転停止判定部52により回転停止状態であると判定されたとき、位相調整処理を実行する。
次に図34~図36を参照し、位相調整処理を行わない場合の電流指令値の設定について説明する。図34に示すように、電流指令値は、dq軸座標における電流振幅及び電流位相で定義される。電流振幅Iaは式(1)で表される。電流位相は、d軸を基準とする反時計回り方向の角度で定義される。ベクトル図では角度の意味を強調して「位相角φ」と表すが、「位相角」は「位相」と同じ意味である。d軸電流Id及びq軸電流Iqは位相角φを用いて、「Id=Ia×cosφ、Iq=Ia×sinφ」と表される。
Figure 2024046395000002
モータ60のトルクτは、d軸電流Id及びq軸電流Iqに基づき、式(2.1)で算出される。式中の定数pは極対数、Keは磁石磁束、Ldはd軸インダクタンス、Lqはq軸インダクタンスである。式(2.1)を変形してq軸電流Iqをd軸電流Idの関数として表すと、等トルク曲線の式(2.2)が得られる。
Figure 2024046395000003
等トルク曲線上で電流振幅が最小の動作点を最大効率動作点Pと定義する。最大効率動作点Pでは最も小さい電流で最大のトルクが得られる。この例での最大効率動作点Pの位相角φは約105°である。なお、諸元次第では最大効率動作点Pの位相角φは他の値となる。また、最大効率動作点Pの振幅を半径とする円を等振幅円と表す。電流指令演算部50は、トルク指令Trq*に応じたトルクをモータ60が出力するように、最大効率動作点Pのdq軸電流を電流指令値Id*、Iq*として演算する。
図35に、最大効率動作点Pで駆動したときのモータ位置(電気角)と三相電流Iu、Iv、Iwとの関係を示す。三相電流Iu、Iv、Iwは、電気角θと位相角φとにより、式(3)で表される。角度θ、φの単位は[°]である。なお、縦軸の電流値は他の図との対比のために記載するものに過ぎず、数値自体に意味はない。
Figure 2024046395000004
ここで、モータ60の回転が停止した状態で通電することを「ロック通電」という。例えば電気角30°の位置でロック通電が行われると、図36に示すように、電流値は一定となる。以下、本明細書で「最大電流」とは絶対値が最大の電流を意味する。電気角30°の位置ではV相に最大電流が流れる。したがって、電気角30°でのロック通電が継続すると、V相に電流が集中し、発熱が偏るおそれがある。
そこで電流指令演算部50は、ロック通電において、同じ電流位相での通電を所定時間以上継続しないように、時間に応じて電流指令値の位相を変更する。続いて、位相調整処理の具体的な方法について実施形態毎に説明する。
(P1実施形態)
図37~図39を参照し、P1実施形態の位相調整処理について説明する。図37に示すように、電流指令演算部50は、最大効率動作点Pを基準として等トルク曲線上で電流指令値の位相を変更する。図38に、電気角30°でのロック通電時にP1実施形態の位相調整処理を行った場合の三相電流の変化を示す。最大効率動作点P(φ=約105°)から進角側に位相角φを変更すると、最大電流が流れる相(この場合、V相)の電流を下げることができる。位相角φが120°のとき、丸印のようにV相電流IvとU相電流Iuとの絶対値が一致し、位相角φが120°を超えると、U相電流Iuの絶対値が最大となる。
図39に、位相角φを105°と125°との間で往復させたときの三相電流の時間変化を示す。位相調整処理を行わない図6に対し、各相電流Iu、Iv、Iwは増減を繰り返す。この場合、最大電流が流れる相をV相とU相とに分散させることができるため、特定相の発熱を抑制することができる。位相角φの変化方式は、図9のように一定速度で位相範囲を往復する方式に限らず、所定時間毎にステップ状に位相角φを変化させてもよい。また、各位相角φでの保持時間に差を設けてもよい。
このようにP1実施形態では、時間に応じて電流指令値の位相を変更することで、特定の相に電流が集中し、発熱が偏ることを防止することができる。また、最大効率動作点Pを基準とした範囲で通電位相を変化させることで、平均的に効率良くモータ60にトルクを出力させることができる。ただし、等トルク曲線上の位相調整処理では、最大効率動作点Pから離れるほど電流振幅Iaが大きくなる。そのため、最大電流相以外の相の電流増加との兼ね合いで調整が必要となる場合がある。
(P2実施形態)
図40~図42を参照し、P2実施形態の位相調整処理について説明する。図40に示すように、電流指令演算部50は、最大効率動作点Pを基準として等振幅円上で電流指令値の位相を変更する。図41に、電気角30°でのロック通電時にP2実施形態の位相調整処理を行った場合の三相電流の変化を示す。最大効率動作点P(φ=約105°)から進角側に位相角φを変更すると、最大電流が流れる相(この場合、V相)の電流を下げることができる。
P2実施形態でもP1実施形態と同様に、特定の相に電流が集中し、発熱が偏ることを防止することができる。また、平均的に効率良くモータ60にトルクを出力させることができる。ただし、等振幅円上での位相調整処理では、電流振幅は変化しないが、最大効率動作点Pから位相角φが離れるほどトルクは低下する。図42に、最大効率動作点Pでのトルクを1としたときのトルク比の変化を示す。なお、その他の実施形態では、例えば等トルク曲線と等振幅円とを折衷した調整曲線を定義し、その調整曲線に沿って電流位相を変更してもよい。
(P3実施形態)
続いて図43を参照し、P3実施形態の位相調整処理について説明する。P3実施形態では、電流指令演算部50は、位相調整処理において、図4に示すヒステリシス特性を利用し、ヒステリシス領域内で電流指令値の位相を変更する。ヒステリシス特性がある場合、元(すなわち高トルク側)の等トルク曲線と、ヒステリシス分のトルクを減じた低トルク側の等トルク曲線との間の領域でパッド荷重を保持することが可能である。また、元の等トルク曲線上の最大効率動作点Pを通る等振幅円上では電流振幅を増加させずに電流位相を変更することができる。
そこで、低トルク側の等トルク曲線と等振幅円との遅角側の交点をQL、進角側の交点をQHとし、各交点QL、QHに対応する位相角をφL、φHとする。電流指令演算部50は、例えば低トルク側の等トルク曲線と等振幅円との間の領域をマップで記憶して、この領域内の任意の動作点を選択してもよい。また電流指令演算部50は、低トルク側の等トルク曲線上の位相角φL~φHの範囲で位相角φを変更してもよい。P3実施形態でも同様に、特定の相に電流が集中し、発熱が偏ることを防止することができる。また、平均的に効率良くモータ60にトルクを出力させることができる。
(適用除外)
上記の各実施形態において、電流指令演算部50は位相調整処理を常に実行するとは限らず、ロック通電しても特定の相の発熱が問題にならないような状況では位相調整処理を実行しなくてもよい。そこで、モータ60が所定の適用除外要件を満たす場合、電流指令演算部50は位相調整処理を実行せず、演算した電流指令値を継続して出力する。位相調整処理における適用除外要件の成否判定のフローチャートは、停止位置調整処理の図31を援用する。
このように、そもそもロック通電にならない場合や、ロック通電しても特定の相の発熱が問題とならない場合、電流指令演算部50は位相調整処理を実行しない。これにより、最大効率動作点Pから離れた動作点において、P1実施形態により電流振幅が増加することやP2実施形態によりトルクが低下することを回避し、常に最大効率でモータ60を動作させることができる。
(その他の実施形態)
(a)本発明の車両用制動装置が搭載される車両は、車両前後方向において二列の左右対の車輪を有する四輪車両に限らず、車両前後方向において三列以上の車輪を有する六輪以上の車両であってもよい。
(b)上記実施形態では、位置センサとして、主にモータ60の角度センサ72が用いられることを想定しているが、位置センサとして直動機構85のストロークセンサ73が用いられてもよい。その場合、位置制御器46は、位置偏差ΔXをゼロに近づけるように、すなわち実位置Xを位置指令値X*に近づけるようにトルク指令値を演算する。停止位置調整処理の位置調整範囲は、ストロークから換算された回転角度により上記実施形態と同様に設定される。
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
本開示に記載の制動力制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制動力制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制動力制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
30・・・車両用制動装置、
400(400A、400B、400L、400P)・・・制動力制御部、
40(401H、403H、401L、402L)・・・トルク指令演算部、
50・・・電流指令演算部、
60・・・モータ、三相モータ
71・・・荷重センサ、
72・・・角度センサ(位置センサ)、73・・・ストロークセンサ(位置センサ)、
81-84・・・電動ブレーキ、 85・・・直動機構、
900・・・車両、 91-94・・・車輪。

Claims (6)

  1. 多相のモータ(60)が出力したトルクを直動機構(85)により直動力に変換し、対応する車輪(91-94)に押圧して制動力を発生させる複数の電動ブレーキ(81-84)が各車輪に設けられた車両(900)に搭載される車両用制動装置であって、
    外部から指令される要求制動力に基づき前記モータのトルク指令値を演算するトルク指令演算部(40)、及び、前記トルク指令値に基づき前記モータに通電する電流指令値を演算する電流指令演算部(50)を含み、各前記電動ブレーキが発生させる制動力を制御する制動力制御部(400)を備え、
    前記電動ブレーキは、前記モータの実際の回転角度、又は、前記直動機構の実際のストロークである実位置(θ、X)を検出する位置センサ(72、73)を備えているか、又は、車輪に実際に押圧される制動荷重である実荷重(F)を検出する荷重センサ(71)を前記位置センサに加えて備えており、
    前記モータのトルクと前記電動ブレーキに発生する制動力との関係は、トルクが増加するとき、制動力が正効率線に沿って増加し、トルクが増加から減少に転じる転向値から保持臨界値まで減少するとき、制動力が一定に保持され、トルクが前記保持臨界値から減少するとき、制動力が逆効率線に沿って減少するヒステリシス特性を有しており、
    前記トルク指令演算部は、前記位置センサにより検出された前記実位置を位置指令値(θ*、X*)に近づけるように前記トルク指令値を演算する位置制御を実行するか、又は、前記荷重センサにより検出された前記実荷重を前記要求制動力に基づき演算される荷重指令値(F*)に近づけるように前記トルク指令値を演算する荷重制御と、前記位置制御とを切替可能に実行し、
    前記位置制御又は前記荷重制御により制動力を保持しつつ、前記ヒステリシス特性に基づき前記正効率線から前記逆効率線まで前記モータの駆動電流及びトルクを低減する処理をヒステリシス活用電流低減処理と定義し、
    制動力の保持時に前記モータの回転が停止した状態で通電するロック通電において、注目するいずれかの相の電流絶対値を減少又は増加させるように、前記位置制御により回転停止位置を調整する処理を停止位置調整処理と定義すると、
    前記制動力制御部は、制動力を保持するとき、前記ヒステリシス活用電流低減処理及び前記停止位置調整処理を実行する車両用制動装置。
  2. 前記制動力制御部は、
    前記停止位置調整処理を実行した後、調整後の前記モータの回転停止位置で前記ヒステリシス活用電流低減処理に移行する請求項1に記載の車両用制動装置。
  3. 前記ヒステリシス活用電流低減処理は、
    前記電動ブレーキが実際に出力する制動力である実制動力が前記要求制動力よりも所定量だけ超過するまで前記モータのトルクを前記正効率線に沿って増加させる超過動作と、
    前記超過動作の終了時における制動力を保持しつつ前記モータの駆動電流を低減させた後、前記実制動力が前記要求制動力に到達するまで前記モータのトルクを前記逆効率線に沿って減少させる戻し動作と、を含み、
    前記制動力制御部は、
    前記ヒステリシス活用電流低減処理の前記超過動作を実行した後、前記ヒステリシス活用電流低減処理の前記戻し動作を兼ねて、前記モータの回転停止位置を制動力の減少方向に調整するように前記停止位置調整処理を実行する請求項1に記載の車両用制動装置。
  4. 前記電流指令演算部は、前記トルク指令値に基づき、dq軸座標における電流振幅及び電流位相で定義される電流指令値を演算するものであり、
    前記ロック通電において、同じ電流位相での通電を所定時間以上継続しないように、時間に応じて前記電流指令値の位相を変更する処理を位相調整処理と定義すると、
    前記制動力制御部は、
    前記ヒステリシス活用電流低減処理及び前記停止位置調整処理を実行した後、さらに前記位相調整処理を実行する請求項2または3に記載の車両用制動装置。
  5. 多相のモータ(60)が出力したトルクを直動機構(85)により直動力に変換し、対応する車輪(91-94)に押圧して制動力を発生させる複数の電動ブレーキ(81-84)が各車輪に設けられた車両(900)に搭載される車両用制動装置であって、
    外部から指令される要求制動力に基づき前記モータのトルク指令値を演算するトルク指令演算部(40)、及び、前記トルク指令値に基づき、dq軸座標における電流振幅及び電流位相で定義される、前記モータに通電する電流指令値を演算する電流指令演算部(50)を含み、各前記電動ブレーキが発生させる制動力を制御する制動力制御部(400)を備え、
    前記モータのトルクと前記電動ブレーキに発生する制動力との関係は、トルクが増加するとき、制動力が正効率線に沿って増加し、トルクが増加から減少に転じる転向値から保持臨界値まで減少するとき、制動力が一定に保持され、トルクが前記保持臨界値から減少するとき、制動力が逆効率線に沿って減少するヒステリシス特性を有しており、
    制動力を保持しつつ、前記ヒステリシス特性に基づき前記正効率線から前記逆効率線まで前記モータの駆動電流及びトルクを低減する処理をヒステリシス活用電流低減処理と定義し、
    制動力の保持時に前記モータの回転が停止した状態で通電するロック通電において、同じ電流位相での通電を所定時間以上継続しないように、時間に応じて前記電流指令値の位相を変更する処理を位相調整処理と定義すると、
    前記制動力制御部は、制動力を保持するとき、前記ヒステリシス活用電流低減処理を実行した後、前記位相調整処理を実行する車両用制動装置。
  6. 多相のモータ(60)が出力したトルクを直動機構(85)により直動力に変換し、対応する車輪(91-94)に押圧して制動力を発生させる複数の電動ブレーキ(81-84)が各車輪に設けられた車両(900)に搭載される車両用制動装置であって、
    外部から指令される要求制動力に基づき前記モータのトルク指令値を演算するトルク指令演算部(40)、及び、前記トルク指令値に基づき、dq軸座標における電流振幅及び電流位相で定義される、前記モータに通電する電流指令値を演算する電流指令演算部(50)を含み、各前記電動ブレーキが発生させる制動力を制御する制動力制御部(400)を備え、
    前記電動ブレーキは、前記モータの実際の回転角度、又は、前記直動機構の実際のストロークである実位置(θ、X)を検出する位置センサ(72、73)を備えており、
    前記モータのトルクと前記電動ブレーキに発生する制動力との関係は、トルクが増加するとき、制動力が正効率線に沿って増加し、トルクが増加から減少に転じる転向値から保持臨界値まで減少するとき、制動力が一定に保持され、トルクが前記保持臨界値から減少するとき、制動力が逆効率線に沿って減少するヒステリシス特性を有しており、
    前記トルク指令演算部は、前記位置センサにより検出された前記実位置を位置指令値(θ*、X*)に近づけるように前記トルク指令値を演算する位置制御を少なくとも実行し、
    制動力の保持時に前記モータの回転が停止した状態で通電するロック通電において、注目するいずれかの相の電流絶対値を減少又は増加させるように、前記位置制御により回転停止位置を調整する処理を停止位置調整処理と定義し、
    前記ロック通電において、同じ電流位相での通電を所定時間以上継続しないように、時間に応じて前記電流指令値の位相を変更する処理を位相調整処理と定義すると、
    前記制動力制御部は、制動力を保持するとき、前記停止位置調整処理を実行した後、前記位相調整処理を実行する車両用制動装置。
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