JP2024029322A - ホーンチップ及び超音波接合装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】超音波接合装置に対して簡易かつ確実に取付けることができ、接合時の動作が安定するホーンチップを提供する。【解決手段】ホーンチップ6は、超音波LTホーン4に取り付けるための複数の貫通孔61,62が設けられた底板部6aと、底板部6aから垂直方向に突出した接合部6bを備えている。接合部6bの厚さwに対する、接合部6bの底板部6aの上面側からの長さhの比h/wは、1.5以下とする。【選択図】図11
Description
本発明は、超音波接合に用いるホーンチップ、及び当該ホーンチップを取り付けて使用する超音波接合装置に関する。
従来、超音波接合装置では、外形又は接合面の形状が異なる様々な種類のホーンチップが用意されており、接合対象のワーク又は接合の条件により最適なホーンチップを選択できるようになっている。
例えば、特許文献1の超音波接合装置は、幅の広いチップに対してチップ部材が超音波ホーンに対して着脱自在となっている。チップ部材をホーンに取り付ける場合、チップ部材のテーパ部及びガイド部をホーンの下方側からチップ部材取付孔の第1の孔部及び第2の孔部に挿入するとともに、螺子部材をホーンの上方側からチップ部材取付孔の第3の孔部に挿入し、螺子部材をホーンの上方側から締め付けるようにする(特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1の装置は、チップ部材を確実に固定するため超音波ホーンに第1~第3の孔部を形成する必要があり、その加工に手間とコストがかかっていた。また、チップ部材の形状によっては、接合時に螺子が緩んで取付け部に対して滑ってしまうことがあるため、確実に取り付けることができる構造が求められていた。
さらに、チップ部材の根元から先端部まで長さは、チップ部材の固有振動数に関係する。チップ部材の固有振動数によっては、チップ部材と超音波ホーンとが互いに逆方向に変位するため、接合時にチップ部材の底面が取付け部から浮き上がり、接合精度に影響を及ぼすという問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、超音波接合装置に対して簡易かつ確実に取付けることができ、接合が安定するホーンチップを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、第1発明は、超音波接合によるワークの接合に用いるホーンチップであって、螺子を通過させる複数の貫通孔が設けられた底板部と、前記底板部から垂直方向に突出した接合部と、を備え、
前記接合部の厚さwに対する、前記接合部の前記底板部の上面側からの長さhの比h/wは、1.5以下であることを特徴とする。
前記接合部の厚さwに対する、前記接合部の前記底板部の上面側からの長さhの比h/wは、1.5以下であることを特徴とする。
本発明のホーンチップは、底板部の複数の貫通孔を利用して超音波ホーンに螺子で取り付けるので、確実に固定することができる。ワークの接合には、底板部から垂直方向に突出した接合部を用いる。
また、ホーンチップの接合部の厚さwに対する、当該接合部の底板部の上面側からの長さhの比h/wは、1.5以下とするとよい。当該接合部の厚さw及び長さhをこの比に設定すると、ホーンチップの固有振動数と超音波ホーンの固有振動数とを異ならせることができるので、ワークの接合時にチップ部材と超音波ホーンとの共振を回避することができる。そのため、ワークの接合を安定して行うことができる。
第1発明のホーンチップにおいて、前記接合部は、前記底板部の長手方向に延びる1つ端縁から垂直方向に突出していることが好ましい。
この構成によれば、接合部が底板部の当該端縁から垂直方向に突出したホーンチップ(略L字柱状)は加工が比較的容易であり、接合部よりも底板部を大きくすることができるので、貫通孔の数、貫通孔の配置の自由度を高めることができる。
また、第1発明のホーンチップにおいて、前記底板部から前記接合部に連続する基端部に向かって、徐々に肉厚が増加する肉厚部を備えていることが好ましい。
ホーンチップの底板部と接合部とがなす部分に当該肉厚部を設けることで、ワークの接合時に接合部がぐらつかず、安定してワークを接合することができる。
また、第1発明のホーンチップにおいて、前記底板部の前記超音波ホーンの表面と接触する下面側に溝部が設けられていることが好ましい。
ホーンチップと超音波ホーンの接触面積が大きい場合、螺子の締結による力が分散して超音波振動により接触面同士で擦れる。そのため、超音波振動による摩擦熱が大きくなるが、ホーンチップの下面側に溝部を設けることで摩擦熱の発生を抑えることができる。
第2発明の超音波接合装置は、螺子を通過させる複数の貫通孔が設けられた底板部と、前記底板部から垂直方向に突出した接合部とを備え、前記接合部の前記底板部の上面側からの長さは共振する長さの半分以下であるホーンチップと、前記ホーンチップを取付け可能な超音波ホーンと、を備え、
前記超音波ホーンの先端部の少なくとも1つの側面に、前記ホーンチップの前記貫通孔に対応した螺子穴が設けられていることを特徴とする。
前記超音波ホーンの先端部の少なくとも1つの側面に、前記ホーンチップの前記貫通孔に対応した螺子穴が設けられていることを特徴とする。
本発明の超音波接合装置は、第1発明と同じホーンチップに対応した先端部を有している。当該先端部には、ホーンチップの貫通孔に対応した数の螺子穴が同じ間隔で設けられているため、組み合わせて使用することができる。
第2発明の超音波接合装置において、前記先端部が四角柱状をなしていることが好ましい。
この構成によれば、四角柱状の側面にホーンチップを螺子で取り付けることにより、両者を確実に固定することができる。
また、第2発明の超音波接合装置において、前記接合部は、前記底板部の長手方向に延びる1つ端縁から垂直方向に突出しており、前記先端部の端面と前記ホーンチップの前記接合部の端面とが面一となっていることが好ましい。
本発明では、超音波ホーンの先端部の端面と略L字柱状のホーンチップの接合面の端部とが面一となるようにホーンチップを取り付ける。これにより、接合時のホーンチップとワークの位置決めを容易に行うことができる。
また、第2発明の超音波接合装置において、前記螺子穴は、前記先端部の軸線方向の中央部よりも応力が低い位置に設けられていることが好ましい。
この応力は、超音波振動により超音波ホーンが伸縮することで発生する力であり、超音波ホーンの中央部は応力が高く、伸縮量が大きい。つまり、螺子穴の変形も大きくなる。この点、当該中央部よりも応力が低い位置に設けられた螺子穴は、超音波振動による伸縮、変形が小さい。このため、ホーンチップを固定する螺子が緩むことがなく、ホーンチップの確実な固定を可能とする。
また、第2発明の超音波接合装置において、前記先端部の前記ホーンチップを取り付ける面に、前記ホーンチップが前記先端部に対してずれることを防止する凸部が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、ホーンチップは超音波ホーンの先端部に設けられた凸部によりずれが防止されるため、ワークの接合時にホーンチップの位置がずれて接合精度が低下することを防止することができる。
また、第2発明の超音波接合装置において、前記ホーンチップと干渉しない位置に設けられた前記螺子穴は、振動調整部材を着脱可能であることが好ましい。
超音波ホーンに設けられた螺子穴のうち、ホーンチップと干渉しない位置の螺子穴に、振動調整部材を取り付けることができる。振動調整部材を用いて超音波ホーンの両端の振動振幅を調整し、等しくすることで、ワークの接合精度を高めることができる。
以下では、本発明の超音波接合装置の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
初めに、図1を参照して、本発明の実施形態に係る超音波接合装置1の全体構成を説明する。超音波接合装置1は、金属板等の接合対象物(ワーク)を後述する超音波複合振動を利用して溶接する装置である。超音波接合装置1は、主にリチウムイオン電池又は半導体素子の電極、同種又は異種の金属の接合に用いられる。
超音波接合装置1は、超音波振動子(Langevin Type)2と、超音波拡大ホーン3と、超音波LTホーン4と、ホーンチップ6と、アンビル7とで構成されている。また、発振装置8、加圧装置10、センサ12、制御装置13、表示装置14も超音波接合装置1の一部である。
電源(図示省略)から発振装置8に電源電圧を印加すると、超音波振動子2の+電極及び-電極に電圧信号が伝達され、超音波振動子2が振動し、超音波振動(約20KHz)が発生する。超音波振動子2で発生した超音波振動は、超音波振動子2の一端部に取り付けられた円筒状の超音波拡大ホーン3に伝達され、振動振幅が拡大される。さらに、超音波振動は、超音波拡大ホーン3の一端部(超音波振動子2でない側の端部)に取り付けられた円筒状の超音波LTホーン4に伝達される。
超音波振動子2で発生した超音波振動は、超音波拡大ホーン3と超音波LTホーン4の長軸方向に伝達されるが(超音波の縦振動)、超音波LTホーン4の複数の斜めスリットSにより、縦振動から横振動に変換した振動成分が生じる。そして、超音波振動(複合振動)は、超音波LTホーン4の一端部(超音波拡大ホーン3でない側の端部)に螺子止めされたホーンチップ6に伝達される。
ホーンチップ6は、複数のワークW(例えば、厚み方向に重ねられた複数の平板状ワーク)の接合時に当該複数のワークWのうち最も上側にある一のワークWと接触する先端部を有している。このとき、制御装置13が超音波振動の縦振動と捩じり振動の位相及び振幅を調整することにより、超音波LTホーン4の一端部で複合振動(例えば、楕円振動)が生じ、ホーンチップ6の先端部が上部のワークWの表面を、楕円軌道を描いて振動する。
この振動はワークWの表面の不純物を排除し、さらにワークWの表面の塑性変形を促進する。なお、ホーンチップ6はワークWの種類に応じて交換可能であるが、今回は、図1に示されるような略L字板状又は略L字柱状であり、かつワークWに当接する接合面が略矩形状のホーンチップを用いる。
複合振動について補足すると、ホーンチップ6の先端部が上部のワークWを押圧したとき、押圧の方向に垂直な第1方向の振動成分と、当該第1方向に直交する第2方向の振動成分とを複合させた振動である。当該第1方向の振動成分と当該第2方向の振動成分の位相差が90度で且つ振幅比が1:1であれば円形振動、位相差が90度で且つ振幅比N:1(N>1。例えば、N=2)であれば楕円振動となる。
また、超音波拡大ホーン3のフランジ部3aに剛性の高い加圧用ブロック(図示省略)が接触している。このため、制御装置13により加圧装置10を制御し、昇降動作する加圧用ブロックを介して超音波接合装置1を垂直方向に移動させることができる。
そして、台座であるアンビル7上にワークWを載置することで、ホーンチップ6の接合部6bが上部のワークWに接触して、接合部6bからの静圧力(接合時は200~800[N/m2])がワークWに対して加わるようになっている。
一般に、静圧力を高くすると接合強度が高まるが、静圧力を高くし過ぎるとワークWが損傷し、破壊、ひび割れの原因となる。一方、接合開始時の静圧力が低いと、ホーンチップ6が上部のワークWを掴めず、上部のワークWが滑ってうまく接合することができない。
静圧力を発生させる方法としては、エアーシリンダ、ばね等によりアンビル7、ひいては下部のワークWを下方から押し上げる方法と、サーボモータによりホーンチップ6の位置及び(又は)変位速度を制御し、上部のワークWの上方から押し下げる方法とがあるが、本実施形態では後者を採用している。
さらに、加圧用ブロックの変位を検出するセンサ(ストロークセンサ)12があり、制御装置13がホーンチップ6のワークWの押し込み量(沈み込み量)を取得している。センサ12は、接合時のホーンチップ6の垂直方向の座標変化を制御装置13に送信し、制御装置13が当該座標変化に基づいてホーンチップ6によるワークWの押し込み量をフィードバック制御することで、当該押し込み量が一定に保持される。このため、加圧装置10には、制御装置13から送信されるフィードバック制御信号に対する応答速度が速いアクチュエータが用いられていることが好ましい。
ホーンチップ6によるワークWの押し込み量の目標値又は時間変化態様は、超音波接合装置1の作業者が表示装置14から予め設定されていてもよい。このように、ワークの接合時には、押し込み量及び/又は静圧力を調整しながら複合振動を与えることで確実に接合(固相接合)が促進される。
固相接合について補足すると、例えば、金属原子はその表面が油脂及び/又は酸化被膜で覆われ、原子同士の接近が妨げられた状態となっている。超音波接合では、金属に超音波振動を与えて、金属表面に強力な摩擦力を発生させる。これにより、金属表面の酸化被膜等が除去され、接合面に清浄かつ活性化した金属原子が現れる。
この状態で、さらに金属表面に超音波振動を与えることにより、摩擦熱による温度上昇で原子の運動が活発となり、原子間の相互引力が発生し、固相接合の状態が生成される。
次に、図2を参照して、本実施形態の超音波LTホーン4の詳細を説明する。
図2に示す超音波LTホーン4は、斜めスリットSを含む円筒部4aと、四角柱状の先端部4bとからなる。先端部4bは、正面側から見て水平方向に長い長方形状であるが、正方形状又は八角形状に形成されていてもよい。
超音波LTホーン4の先端部4bの水平方向に長い面(取付面M)には、ホーンチップ6を取り付けるための水平方向に相互に離間して配置された2個の螺子穴41,42が設けられている。なお、超音波接合装置1による加工時には、取付面Mは垂直下向き(アンビル7の方向)を向く(図1参照)。
当該先端部4bの螺子穴41,42は雌螺子溝であり、後述するホーンチップ6の貫通孔61,62に対応して設けられている。複数の螺子穴41,42を設けてホーンチップ6を固定することで、ホーンチップ6を当接させたワークWの接合時に、ホーンチップ6が先端部4bに対して回転してしまうことを防止することができる。なお、超音波LTホーン4の先端部4bには、正面側から見たときの円形穴4cが設けられているが、必須の構成ではない。
取付面Mは、ホーンチップ6が先端部4bに対して滑らないようにサンドブラスト加工されていることが好ましい。超音波LTホーン4の先端部4bの取付面Mに、水平方向に相互に離間して配置された3個以上の螺子孔が設けられていてもよい。さらに、ホーンチップ6が先端部4bに対してずれることを防止する凸部4d(図10参照)を設けるようにしてもよい。
次に、図3A、図3Bを参照して超音波接合装置1に用いられるホーンチップ6について説明する。
図3Aに示すように、略L字板状又は略L字柱状のホーンチップ6は、超音波LTホーン4に取り付けるための長手方向に相互に離間して配置された2個の貫通孔61,62が設けられた略矩形板状の底板部6aと、底板部6aの1つの長辺縁部から垂直方向に突出した略矩形板状の接合部6bとからなる。
すなわち、ホーンチップ6は、長手方向に垂直な断面形状が略L字形状の略L字板状又は略L字柱状に形成されている。L字柱状のホーンチップ6は加工が比較的容易であり、これを構成する2つの平板のうち比較的面積が大きい平板を底板部6aとする。すなわち、底板部6aの面積を大きくすることができるので、ホーンチップ6の貫通孔61,62の数、その配置の自由度を高めることができる。
当該貫通孔61,62は螺子溝が形成されていない孔であるが、超音波LTホーン4(先端部4b)の螺子穴41,42の間隔に対応しており、孔の直径は螺子穴41,42よりも一回り大きい。接合部6bは、長方形状の平面が上部のワークWとの接触面である。この接触面の形状は楕円形等でもよく、接触面に多数の突起又は凹部を設けてもよい。
図3Bは、ホーンチップ6の底板部6aの下面側(超音波LTホーン4と接触する側)を示している。底板部6aの下面側は研磨された平坦面となっており、その長手方向の中央部には、超音波LTホーン4の表面と接触しない、短手方向の全長の亘って延びる溝部63が設けられている。
超音波LTホーン4と底板部6aとの接触面積が大きい場合、螺子の締結による力が分散し、超音波振動により接触面同士で擦れるため、超音波振動による摩擦熱が大きくなる。そこで、溝部63の部分だけ超音波LTホーン4と底板部6aとの接触面積を減らすことで、螺子の締結による力が集中して加わるため、摩擦熱の発生を抑える。溝部63は、底板部6aの下面側の長手方向に延びるように形成されていてもよいし、短手方向と長手方向とのそれぞれに延在する連続した又は独立した溝の組合せにより構成されていてもよい。
底板部6aの溝部63以外の平坦面にはサンドブラスト加工が施され、ワークWの接合時に底板部6aとワークWとの滑りが抑制されてもよい。また、当該平坦面に窒化膜処理が施されると、超音波LTホーン4への貼付き又はさびの発生を防止することができる。さらに、当該平坦面のエッジに丸みを付けたり、面取りをすることで、超音波LTホーン4及び/又はホーンチップ6(底板部6a)が削れるのを防止することができる。
図4に示すホーンチップ16のように、接合部16bの両端部が切欠けた小さい長方形平面の接触面としてもよい。また、図5に示すホーンチップ17のように、底板部17aの短手方向の中間箇所から接合部17bに連続する基端部向かって、底板部17aをべき数が正の指数関数的又は二次関数的に徐々に肉厚にする肉厚部17cを設けてもよい。
図5では、底板部17aにおいて長手方向に相互に離間して配置された貫通孔171,172は、肉厚部17cを避けるように底板部17aの厚さ方向を貫通するように形成されている。そして、ホーンチップ17の肉厚部17cは、接合部17bの短手方向の中間箇所から底板部17aに連続する基端部に向かって底板部17aをべき数が正の指数関数的又は二次関数的に徐々に肉厚にする部分でもある。
肉厚部17cにより、ワークWの接合時に底板部17a対する接合部17bのぐらつきが抑制され、ワークWに対する接合部17bの当該態様を安定に維持してワークWを接合することができる。なお、ホーンチップ6と同様に、下面側には短手方向に延びる溝部173が設けられている。
肉厚部は、図5に示される形状に限られるものではない。肉厚部は、底板部17aの短手方向の中間箇所から接合部17bに連続する基端部向かって、底板部17aを線形関数的又はべき数が負の指数関数的に徐々に肉厚が増加するように形成されていてもよい。
貫通孔171,172は、少なくとも部分的に底板部17aの肉厚部17cを厚さ方向に貫通するように形成されていてもよい。また、底板部17aの先端箇所から接合部17bの先端箇所に向かって底板部17aを徐々に肉厚にするように肉厚部17cが形成されていてもよい。
ホーンチップの形状は、L字型に限られるものではない。図6Aに示すような略T字板状又は略T字柱状のホーンチップ18を超音波接合装置1に用いてもよい。ホーンチップ18では、底板部18aの短手方向の略中央から垂直方向に突出した接合部18bを有しており、貫通孔181~184が接合部18bの両側に設けられている。
図6Bは、ホーンチップ18を超音波LTホーン4に取り付けたときの側面図である。図6に示されているように、ホーンチップ18は、接合部18bの両側で螺子30により超音波LTホーン4に対して固定されている。そのため、ワークWの接合時の超音波LTホーン4に対するホーンチップ18のぐらつきを防止し、ホーンチップ18のワークWに対する当接状態を安定に維持してワークWを接合することができる。
この他にも、様々な形状のホーンチップが考えられる。図7Aに示すホーンチップ19は、水平方向又は長手方向に相互に離間して配置された3個の貫通孔191,192,193が設けられた略矩形板状の底板部19aと、底板部19aの一方の長辺縁部の全体に沿って延在し、かつ底板部19aに対して垂直方向に突出した接合部19bとからなる。
ホーンチップ19は、3個の螺子孔が設けられた先端部を有する超音波LTホーンに取り付けられることができる。この態様によれば、超音波LTホーン4に対してホーンチップ19が強固に固定されるため、ホーンチップ19と超音波LTホーン(先端部)との間に隙間ができ難く、2個の貫通孔のホーンチップと比較して超音波LTホーン4への固定が安定する。
図7Aに示されているように、ホーンチップ19は、底板部19aの短手方向の中間箇所から接合部19bに連続する基端部に向かって、底板部19aを指数関数的又は二次関数的に徐々に肉厚にする肉厚部19cを備えている。このため、ワークWの接合時の超音波LTホーン4に対するホーンチップ19のぐらつきを防止し、ホーンチップ19のワークWに対する当接状態を安定に維持してワークWを接合することができる。
図7Bは、底板部19aの下面側(超音波LTホーンと接触する側)を示している。底板部19aの下面側は研磨された平坦面となっているが、短手方向の中央部において超音波LTホーンの表面と接触しない、長手方向の全長に亘って延びる溝部194が設けられている。溝部194の部分だけ接触面積を減らすことにより、超音波LTホーン4とホーンチップ19との摩擦熱の発生を抑えることができる。
長手方向に延びる平坦面に螺子の締結による力が集中して加わるため、面同士の滑りを防止する効果が高まる。底板部19aの下面側と超音波LTホーン(先端部)の面同士の接合を防止するため、当該平坦面に窒化膜処理を施してもよい。また、当該平坦面の一部を削って溝部194と同じ高さとし、接触面積をさらに減らすようにしてもよい。
図8Aに示すホーンチップ20は、水平方向に相互に離間して配置された3個の貫通孔201,202,203が設けられた略矩形状の底板部20aと、底板部20aの短手方向の中央部において長手方向の全長に亘って延在し、かつ底板部20aに対して垂直上下方向に突出した接合部20bとからなる(変形T字型)。接合部20bの底板部20aに対して上方には、底板部20aの短手方向の中間箇所から接合部20bに連続する基端部に向かって、底板部20aを指数関数的又は二次関数的に徐々に肉厚が増加する肉厚部20cが設けられている。
また、接合部20bの底板部20aに対して下方には、3個の貫通孔204,205,206が設けられている。図8Bに示すように、ホーンチップ20は、超音波LTホーン4(先端部)の端部に載置され、貫通孔201~206を利用して螺子30で超音波LTホーン4に対して固定される。2方向からホーンチップ20を固定することで、底板部20aの下面側と超音波LTホーン4との当接面同士の滑りを確実に防止することができる。
図9に示すホーンチップ21は、水平方向に相互に離間して配置された2個の貫通孔211,212が設けられた底板部21aと、底板部21aの短手方向の中央部において長手方向の全長に亘って延在し、かつ底板部21aの端部に載置された接合部21bとからなる。底板部21aは、短手方向の両端部に接合部21bの方向に向かって上るリブ21cを有している。
リブ21cは、底板部21aの長手方向の端縁から接合部21bに連続する基端部向かって、線形関数的に徐々に肉厚が増加する肉厚部である。リブ21cを設けることにより、超音波LTホーン4とホーンチップ9の振動の共振状態において、底板部21aの当該両端部が逆位相で振動すること、当該両端部の角部分が大きく振動して、ワークWの接合精度が低下することを防止することができる。
また、接合部21bには、多数の突起Pが設けられている。突起Pは接合部21b上に等間隔で配置されており、ワークWを上方から押圧して確実にワークWを接合するための構造である。突起Pは、上述のホーンチップ6,16~20に設けてもよい。
図10は、上述のホーンチップ6を超音波LTホーン4に取り付けたときの側面図である。
ホーンチップ6は、接合部6bの先端面と超音波LTホーン4の先端部4bの先端面とが面一となるように取り付けることが好ましい。これにより、ワークWの接合時のホーンチップ6とワークWとの位置調整を容易に行うことができる。なお、ホーンチップ6の取り付け位置は、超音波LTホーン4の軸線方向の後端側であってもよいが、詳細は後述する。
一般に超音波接合装置1によりワークWの接合を行うとき、超音波振動の振動振幅の効率を高める必要がある。このため、ホーンチップ6の固有振動数(共振周波数)が超音波LTホーン4の固有振動数とほぼ同じ値になるように調整する。
しかしながら、L字形状のホーンチップ6において、ホーンチップ6の固有振動数を超音波LTホーン4の固有振動数に合わせた場合、超音波LTホーン4の先端部4bが振動により右方向に変位したときホーンチップ6(接合部6b)がその逆方向に変位する現象(逆位相現象)が知られている。これにより、超音波LTホーン4とホーンチップ6の間に隙間が生じ、ホーンチップ6の接合部6bの振動が不安定となって、ワークWの接合精度が低下する。
この現象に対する対策としては、接合部6bの底板部6aの上面側からの長さを調整することが好ましい。従って、ホーンチップ6を超音波LTホーン4に取り付けたときに両者が共振状態となるホーンチップ6の当該長さを測定する必要がある。
図11は、超音波LTホーン4とホーンチップ6の接合部6bを示している。超音波LTホーン4の固有振動数f1とホーンチップ6の固有振動数f2とがほぼ等しい状態であるときの接合部6bの底板部6aの上面側からの長さhを測定し、その長さ(共振長)をLとする。このとき、超音波LTホーン4とホーンチップ6は1つの振動体として振動する。
共振長Lのとき、図12(a)の波形に示されるように、超音波LTホーン4が一方向に変位したとき、ホーンチップ6の接合部6bの先端部は、当該一方向とは逆向きに変位する。具体的には、超音波LTホーン4の図中の点Cと当該先端部との逆位相の振動となる。よって、点Cに働く力が大きくなり、超音波LTホーン4とホーンチップ6との間に隙間が生じるおそれがある。なお、実際の数値は、接合部6bの厚さw=7(mm)に対し、長さh(L)=19(mm)のため、比h/w=2.71となる。
次に、ホーンチップ6の接合部6bの長さhを短くすることで、固有振動数f1,f2を異ならせる。当該接合部6bを短くすると、ホーンチップ6の固有振動数f2は高くなる。図12(b)は、接合部6bの長さhをL/2~Lに設定した場合を示している。逆位相の振動ではあるが、当該接合部6bの先端部は、共振長Lのときよりも小さな振動となる。このとき、接合部6bの厚さw=7(mm)に対し、例えば長さh=14(mm)のため、比h/w=2.00である。
図12(c)は、ホーンチップ6の接合部6bの長さhをさらに短くして、長さhをL/2に設定した場合を示している。このとき、点Cが振動のノード(振幅がゼロの節)となり、超音波LTホーン4の点Cとホーンチップ6の接合部6bの先端部との逆位相は解消する。このため、この条件で超音波接合装置1によりワークWを接合することは可能である。しかし、点Cと接合部6bの当該先端部とは、振幅の大きさが異なる振動が生じている。このとき、接合部6bの厚さw=7(mm)に対し、長さh(L/2)=9.5(mm)のため、比h/w=1.36である。
図12(d)は、ホーンチップ6の接合部6bの長さhをさらに短くして、長さhをL/3に設定した場合を示している。この条件では、点Cとホーンチップ6の接合部6bの先端部とは振幅の大きさがほぼ等しく、同じ方向に動作する。このとき、接合部6bの厚さw=7(mm)に対し、長さh(L/3)=6.3(mm)のため、比h/w=0.90である。
超音波LTホーン4の形状、肉厚部の有無等にも依存するが、接合部6bの厚さwが一定のとき、ホーンチップ6の接合部6bの長さhは、超音波LTホーン4とホーンチップ6とが共振する共振長Lの半分(1/2)以下が好ましく、1/3~1/2とするとより好ましい。接合部6bの厚さwと長さhの比h/wは、1.5以下(0<h/w≦1.5)が好ましく、この条件のとき、超音波LTホーン4とホーンチップ6との間に生じる当該隙間の発生を抑えることができる。
当該接合部6bを共振長Lから徐々に短くしていくと、振動解析により同位相となる当該接合部6bの長さhが確認できるので、実際に試行するとよい。なお、当該接合部6bの厚さwを厚くした場合、共振長Lは長くなる。
次に、図13を参照して、超音波LTホーン4の軸線方向におけるホーンチップ6の取付位置を説明する。
図13に示されるように、ホーンチップ6は、接合部6bの端面と超音波LTホーン4の先端部4bの端面とが面一となる位置に取り付けられている。ここで、超音波LTホーン4の先端部4bの軸線方向の中心部付近は振動の節(ノード)となるため、振動時の変位量は小さいが、振動による応力(伸縮応力)は大きい。応力が大きい位置にホーンチップ6を取り付けると、超音波LTホーン4が伸び方向に変位したとき先端部4bの螺子穴41,42が僅かに広がってしまう。
一方で、超音波LTホーン4の円筒部4aと先端部4bとの接合面及び接合部6bの端面は、振動時の変位量が大きい振動の腹の位置となり、応力は小さい。従って、ホーンチップ6を固定する螺子30は、超音波LTホーン4の応力が比較的小さい位置とすることが好ましい。例えば、螺子30の部分の応力が最大値の30%以下となる位置とするとより好ましい。
螺子30を応力が比較的小さい位置(振動の腹の位置)に取り付けることで、超音波LTホーン4の螺子穴41,42の広がりが防止されるので、螺子緩みの現象が起こらなくなる。以上の理由で、ホーンチップ6を、先端部4bのうち応力が比較的小さい所定の位置とすることも可能である。
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
本実施形態の超音波LTホーン4の先端部4bは円形穴4cが設けられていたが(図14A参照)、螺子穴が短くなるため、ホーンチップ6の超音波LTホーン4に対する固定が不十分になる。また、当該先端部4bの螺子穴を有する面の肉厚が薄くなるため、当該先端部4bの亀裂発生の原因となる。例えば、3個の貫通孔を有するホーンチップ6を超音波LTホーン4の先端部4bに取り付ける場合、螺子30bの位置に対応する螺子穴を短くする必要があるため、螺子30bの締結力が不十分になることがある(図14B参照)。
そこで、超音波LTホーン4の先端部4bは、円形穴4cと比較して直径の小さい2個の円形穴4c1,4c2を開けた形態(超音波LTホーン4’)としてもよい(図15A参照)。
図15Bに示されるように、2個の円形穴4c1,4c2の間に螺子30bに対応する螺子穴を形成するため、他の螺子穴と同じ螺子の締結力が得られる。また、ホーンチップ6は3本の螺子30a~30cで固定されるため、ホーンチップ6を超音波LTホーン4’の先端部4bに対して確実に取り付けることができる。
超音波LTホーン4’の先端部4bの形態は、縦方向及び捩じり方向の振動振幅にも影響する。一般に、超音波LTホーン4’の先端部4bの面積及び断面2次極モーメントを小さくすると、振動振幅が大きくなることが知られている。
縦方向の振幅は、超音波LTホーン4’の後端(図15Aの左端部)から中央部までの部分の断面積(A)と、当該中央部から後端(同右端部)までの部分の断面積(B)の比(A/B)が大きいほど大きくなる。すなわち、超音波LTホーン4’の先端部4bの断面積を小さくすれば比(A/B)の値が大きくなり、縦方向の振動が増加する。これは、捩じり方向の振幅拡大につながる。
また、超音波LTホーン4’の先端部4bの断面2次極モーメントは、(先端部4bの長方形部分の断面2次極モーメント)-(先端部4bの2個の円形穴の断面2次極モーメント)で与えられる。さらに、円形穴4c1,4c2の断面2次極モーメントは、当該先端部4bの中心軸から離した方が(腕が長い分)大きくなる。
捩じり方向の振幅は、超音波LTホーン4’の後端(図15Aの左端部)から中央部までの部分の断面2次極モーメント(C)と、当該中央部から後端(同右端部)までの部分の断面2次極モーメント(D)の比(C/D)が大きいほど大きくなる。以上により、当該先端部4bの円形穴4c1,4c2の間隔を一定距離離して配置することで、捩じり方向の振幅を拡大することができる。
また、図16に示されるように、超音波LTホーン4の先端部4bの水平方向に長い面N(ホーンチップ6の取付面Mの反対側)に螺子穴43,44を設けておき、螺子型のバランサ35(本発明の「振動調整部材」)を着脱可能な構成としてもよい。
従来、静圧力がかかった状態で、超音波LTホーン4のような正面に対して幅方向が広いホーンを振動させた場合、ホーンチップ6の左右端部で振幅が異なることがあった。これは、異なる振動モードの重ね合わせることで生じる端部での歪変形が原因と考えられる。そして、この状態で接合すると、ホーンチップ6の各端部でワークWの接合強度が異なってしまうことがあった。
この対策として、超音波LTホーン4の先端部4bの面Nにバランサ35を取り付けることで、ホーンチップ6の左右端部の振動振幅が等しくなるように調整することができる。具体的には、振動振幅が大きい側におもりの役目となるバランサ35を取り付ける。バランサ35は螺子とワッシャーの構成でもよい。また、この場合、ワッシャーの外径は螺子頭の直径よりも大きい方が好ましい。
ホーンチップ6の左端(図中の「L」)の振動振幅が右端(図中の「R」)の振動振幅と比較して大きいとき、左側の螺子穴43にバランサ35を取り付けることにより、左右端部の振動振幅を等しくすることができる。また、ホーンチップ6の右端の振動振幅が左端の振動振幅と比較して大きいときは、右側の螺子穴44にバランサ35を取り付ければよい。
バランサ35は面Nに限らず、ホーンチップ6と干渉しない、超音波LTホーン4の先端部4b側面の螺子穴45,46に取り付けてもよい。また、複数のバランサ35を螺子穴43~46に取り付けて調整してもよい。
1…超音波接合装置、2…超音波振動子、3…超音波拡大ホーン、3a…フランジ部、4,4’…超音波LTホーン、4a…円筒部、4b…先端部、4c…円形穴、4d…凸部、6,16,17,18,19,20,21…ホーンチップ、6a,16a、17a,18a,19a,20a,21a…底板部、6b,16b,17b,18b,19b,20b,21b…接合部、7…アンビル、8…発振装置、10…加圧装置、12…センサ、13…制御装置、17c,19c,20c…肉厚部、21c…リブ、30…螺子、35…バランサ、41~46…螺子穴、61,62,161,162,171,172,181~184,191~193,201~212…貫通孔、63,173,194…溝部、P…突起、S…斜めスリット、W…ワーク。
Claims (10)
- 超音波接合によるワークの接合に用いるホーンチップであって、
螺子を通過させる複数の貫通孔が設けられた底板部と、
前記底板部から垂直方向に突出した接合部と、を備え、
前記接合部の厚さwに対する、前記接合部の前記底板部の上面側からの長さhの比h/wは、1.5以下であることを特徴とするホーンチップ。 - 前記接合部は、前記底板部の長手方向に延びる1つ端縁から垂直方向に突出している、請求項1に記載のホーンチップ。
- 前記底板部から前記接合部に連続する基端部に向かって、徐々に肉厚が増加する肉厚部を備えている、請求項1に記載のホーンチップ。
- 前記底板部の前記超音波ホーンの表面と接触する下面側に溝部が設けられている、請求項1~3の何れか1項に記載のホーンチップ。
- 螺子を通過させる複数の貫通孔が設けられた底板部と、前記底板部から垂直方向に突出した接合部とを備え、前記接合部の前記底板部の上面側からの長さは共振する長さの半分以下であるホーンチップと、
前記ホーンチップを取付け可能な超音波ホーンと、を備え、
前記超音波ホーンの先端部の少なくとも1つの側面に、前記ホーンチップの前記貫通孔に対応した螺子穴が設けられていることを特徴とする超音波接合装置。 - 前記先端部が四角柱状をなしている、請求項5に記載の超音波接合装置。
- 前記接合部は、前記底板部の長手方向に延びる1つ端縁から垂直方向に突出しており、
前記先端部の端面と前記ホーンチップの前記接合部の端面とが面一となっている、請求項5又は6に記載の超音波接合装置。 - 前記螺子穴は、前記先端部の軸線方向の中央部よりも応力が低い位置に設けられている、請求項5に記載の超音波接合装置。
- 前記先端部の前記ホーンチップを取り付ける面に、前記ホーンチップが前記先端部に対してずれることを防止する凸部が設けられている、請求項5に記載の超音波接合装置。
- 前記ホーンチップと干渉しない位置に設けられた前記螺子穴は、振動調整部材を着脱可能である、請求項5に記載の超音波接合装置。
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