JP2024012030A - クラッチ装置および自動二輪車 - Google Patents

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Abstract

【課題】プレッシャプレートのプレッシャ側嵌合歯に保持された出力側回転板により多くのクラッチオイルを供給すること。【解決手段】クラッチ装置10は、入力側回転板20と交互に配置された出力側回転板22を保持するクラッチセンタ40と、クラッチセンタ40に対して接近または離隔可能に設けられたプレッシャプレート70と、を備え、プレッシャプレート70は、出力側回転板22を保持する複数のプレッシャ側嵌合歯77を備え、クラッチセンタ40は、出力側回転板22を保持する複数のセンタ側嵌合歯47を備え、半クラッチ状態において、出力軸15の径方向から見たときにセンタ側嵌合歯47の一部とプレッシャ側嵌合歯77の一部とが重なる。【選択図】図16

Description

本発明は、クラッチ装置および自動二輪車に関する。より詳細には、エンジン等の原動機によって回転駆動する入力軸の回転駆動力を任意に出力軸に伝達または遮断するクラッチ装置およびそれを備えた自動二輪車に関する。
従来から、自動二輪車等の車両はクラッチ装置を備えている。クラッチ装置は、エンジンと駆動輪との間に配置され、エンジンの回転駆動力を駆動輪に伝達または遮断する。クラッチ装置は、通常、エンジンの回転駆動力によって回転する複数の入力側回転板と、駆動輪に回転駆動力を伝達する出力軸に接続された複数の出力側回転板と、を備えている。入力側回転板と出力側回転板とは積層方向に交互に配置され、入力側回転板と出力側回転板とを圧接および離隔させることにより回転駆動力の伝達または遮断が行われる。
例えば、特許文献1には、出力側回転板(被動側クラッチ板)を保持するクラッチセンタ(クラッチ部材)と、クラッチセンタに対して接近および離隔可能に設けられたプレッシャプレート(プレッシャ部材)と、を備えたクラッチ装置が開示されている。プレッシャプレートは、入力側回転板および出力側回転板を押圧可能に構成されている。このように、クラッチ装置では、クラッチセンタとプレッシャプレートとが組み付けられて用いられている。
また、特許文献1のクラッチ装置では、出力側回転板を保持する部位として、クラッチセンタがセンタ側嵌合歯(スプラインが形成された外周壁)を有し、プレッシャプレートがプレッシャ側嵌合歯を有している。クラッチセンタとプレッシャプレートとが組付けられた状態では、センタ側嵌合歯とプレッシャ側嵌合歯とが径方向に重なるように構成されている。
特許第6903020号公報
ところで、プレッシャプレートがクラッチセンタから離隔するときに、プレッシャプレートの移動方向(即ち出力軸の軸線方向)に関してプレッシャ側嵌合歯とセンタ側嵌合歯との間に隙間が生じることが起きうる。この場合、例えば、クラッチセンタの内部を流れるクラッチオイルはこの隙間を介して外部へと流れるため、プレッシャプレートに保持されている出力側回転板にクラッチオイルが流れにくいという問題があった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、プレッシャプレートのプレッシャ側嵌合歯に保持された出力側回転板により多くのクラッチオイルを供給することができるクラッチ装置およびそれを備えた自動二輪車を提供することである。
本発明に係るクラッチ装置は、入力軸の回転駆動力を出力軸に伝達または遮断するクラッチ装置であって、前記入力軸の回転駆動によって回転駆動する複数の入力側回転板を保持するクラッチハウジングに収容され、かつ、前記入力側回転板と交互に配置された複数の出力側回転板を保持し、かつ、前記出力軸と共に回転駆動するクラッチセンタと、前記クラッチセンタに対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられ、前記入力側回転板および前記出力側回転板を押圧可能なプレッシャプレートと、を備え、前記プレッシャプレートは、少なくとも一つの前記出力側回転板を保持し、かつ、周方向に並ぶ複数のプレッシャ側嵌合歯を備え、前記クラッチセンタは、前記出力軸が連結される出力軸保持部と、前記出力軸保持部よりも径方向外側に位置する外周壁と、前記出力側回転板を保持し、かつ、前記外周壁の外周面から径方向外側に突出するように形成された周方向に並ぶ複数のセンタ側嵌合歯と、を備え、半クラッチ状態において、前記出力軸の径方向から見たときに前記センタ側嵌合歯の一部と前記プレッシャ側嵌合歯の一部とが重なる。
本発明に係るクラッチ装置によると、半クラッチ状態において、出力軸の径方向から見たときにセンタ側嵌合歯の一部とプレッシャ側嵌合歯の一部とが重なる。即ち、半クラッチ状態において、プレッシャプレートの移動方向に関してプレッシャ側嵌合歯とセンタ側嵌合歯とに隙間が生じないため、例えば、クラッチセンタの内部を流れるクラッチオイルは外部に直接流れず、プレッシャプレート側に流れる。これにより、プレッシャプレートに保持された出力側回転板により多くのクラッチオイルを供給することができる。
本発明に係る他のクラッチ装置は、入力軸の回転駆動力を出力軸に伝達または遮断するクラッチ装置であって、前記入力軸の回転駆動によって回転駆動する複数の入力側回転板を保持するクラッチハウジングに収容され、かつ、前記入力側回転板と交互に配置された複数の出力側回転板を保持し、かつ、前記出力軸と共に回転駆動するクラッチセンタと、前記クラッチセンタに対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられ、前記入力側回転板および前記出力側回転板を押圧可能なプレッシャプレートと、を備え、前記プレッシャプレートは、少なくとも一つの前記出力側回転板を保持し、かつ、周方向に並ぶ複数のプレッシャ側嵌合歯を備え、前記クラッチセンタは、前記出力軸が連結される出力軸保持部と、前記出力軸保持部よりも径方向外側に位置する外周壁と、前記出力側回転板を保持し、かつ、前記外周壁の外周面から径方向外側に突出するように形成された周方向に並ぶ複数のセンタ側嵌合歯と、を備え、クラッチが切断された状態において、前記出力軸の径方向から見たときに前記センタ側嵌合歯の一部と前記プレッシャ側嵌合歯の一部とが重なる。
本発明に係る他のクラッチ装置によると、クラッチが切断された状態において、出力軸の径方向から見たときにセンタ側嵌合歯の一部とプレッシャ側嵌合歯の一部とが重なる。即ち、クラッチが切断された状態において、プレッシャプレートの移動方向に関してプレッシャ側嵌合歯とセンタ側嵌合歯とに隙間が生じないため、例えば、クラッチセンタの内部を流れるクラッチオイルは外部に直接流れず、プレッシャプレート側に流れる。これにより、プレッシャプレートに保持された出力側回転板により多くのクラッチオイルを供給することができる。
本発明に係る他のクラッチ装置は、入力軸の回転駆動力を出力軸に伝達または遮断するクラッチ装置であって、前記入力軸の回転駆動によって回転駆動する複数の入力側回転板を保持するクラッチハウジングに収容され、かつ、前記入力側回転板と交互に配置された複数の出力側回転板を保持し、かつ、前記出力軸と共に回転駆動するクラッチセンタと、前記クラッチセンタに対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられ、前記入力側回転板および前記出力側回転板を押圧可能なプレッシャプレートと、前記プレッシャプレートと接触可能に設けられ、かつ、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから所定の距離以上離隔することを抑制するストッパプレートと、を備え、前記プレッシャプレートは、少なくとも一つの前記出力側回転板を保持し、かつ、周方向に並ぶ複数のプレッシャ側嵌合歯を備え、前記クラッチセンタは、前記出力軸が連結される出力軸保持部と、前記出力軸保持部よりも径方向外側に位置する外周壁と、前記出力側回転板を保持し、かつ、前記外周壁の外周面から径方向外側に突出するように形成された周方向に並ぶ複数のセンタ側嵌合歯と、を備え、前記プレッシャプレートが前記ストッパプレートに接触した状態において、前記出力軸の径方向から見たときに前記センタ側嵌合歯の一部と前記プレッシャ側嵌合歯の一部とが重なる。
本発明に係る他のクラッチ装置によると、プレッシャプレートがストッパプレートに接触した状態において、出力軸の径方向から見たときにセンタ側嵌合歯の一部とプレッシャ側嵌合歯の一部とが重なる。即ち、プレッシャプレートがストッパプレートに接触した状態において、プレッシャプレートの移動方向に関してプレッシャ側嵌合歯とセンタ側嵌合歯とに隙間が生じないため、例えば、クラッチセンタの内部を流れるクラッチオイルは外部に直接流れず、プレッシャプレート側に流れる。これにより、プレッシャプレートに保持された出力側回転板により多くのクラッチオイルを供給することができる。
本発明によれば、プレッシャプレートのプレッシャ側嵌合歯に保持された出力側回転板により多くのクラッチオイルを供給することができるクラッチ装置を提供することができる。
図1は、第1実施形態に係るクラッチ装置の断面図である。 図2は、第1実施形態に係るクラッチセンタの斜視図である。 図3は、第1実施形態に係るクラッチセンタの平面図である。 図4は、第1実施形態に係るプレッシャプレートの斜視図である。 図5Aは、第1実施形態に係るプレッシャプレートの平面図である。 図5Bは、図5A中のVB-VB線に沿う断面図である。 図6は、第1実施形態に係るプレッシャプレートの斜視図である。 図7は、第1実施形態に係るプレッシャプレートの平面図である。 図8は、第1実施形態に係るプレッシャ側カム部の一部を拡大した側面図である。 図9は、第1実施形態に係るプレッシャプレートの一部を拡大した斜視図である。 図10は、第1実施形態に係るクラッチセンタとプレッシャプレートとが組み合わされた状態を示す平面図である。 図11Aは、センタ側アシストカム面およびプレッシャ側アシストカム面の作用について説明する模式図である。 図11Bは、センタ側スリッパーカム面およびプレッシャ側スリッパーカム面の作用について説明する模式図である。 図12は、第1実施形態に係るクラッチセンタおよびプレッシャプレートの断面図である。 図13は、通常時のクラッチセンタおよびプレッシャプレートの位置関係を示す一部拡大断面図である。 図14Aは、通常時のクラッチセンタおよびプレッシャプレートの位置関係を示す断面図である。 図14Bは、プレッシャプレートがクラッチセンタから最も離れた時のクラッチセンタおよびプレッシャプレートの位置関係を示す断面図である。 図15は、第2実施形態および第3実施形態に係る通常時のクラッチセンタおよびプレッシャプレートの位置関係を示す一部拡大断面図である。 図16は、第2実施形態に係る半クラッチ状態のクラッチセンタおよびプレッシャプレートの位置関係を示す一部拡大断面図である。 図17は、第2実施形態に係るクラッチが切断された状態のクラッチセンタおよびプレッシャプレートの位置関係を示す一部拡大断面図である。 図18は、第2実施形態に係るプレッシャプレートがストッパプレートに接触した状態のクラッチセンタおよびプレッシャプレートの位置関係を示す一部拡大断面図である。 図19は、第3実施形態に係る半クラッチ状態のクラッチセンタおよびプレッシャプレートの位置関係を示す一部拡大断面図である。 図20は、第3実施形態に係るクラッチが切断された状態のクラッチセンタおよびプレッシャプレートの位置関係を示す一部拡大断面図である。 図21は、第3実施形態に係るプレッシャプレートがストッパプレートに接触した状態のクラッチセンタおよびプレッシャプレートの位置関係を示す一部拡大断面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明に係るクラッチ装置の実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係るクラッチ装置10の断面図である。クラッチ装置10は、例えば、自動二輪車等の車両に設けられている。クラッチ装置10は、例えば、自動二輪車のエンジンの入力軸(クランクシャフト)の回転駆動力を出力軸15に伝達または遮断する装置である。クラッチ装置10は、出力軸15を介して入力軸の回転駆動力を駆動輪(後輪)に伝達または遮断するための装置である。クラッチ装置10は、エンジンと変速機との間に配置される。
以下の説明では、クラッチ装置10のプレッシャプレート70がクラッチセンタ40に対して接近および離隔する方向を方向D(移動方向の一例である)とし、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40に接近する方向を第1の方向D1、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40から離隔する方向を第2の方向D2とする。また、クラッチセンタ40およびプレッシャプレート70の周方向を周方向Sとし、周方向Sに関して一方のプレッシャ側カム部90から他方のプレッシャ側カム部90に向かう方向を第1の周方向S1(図5A参照)、他方のプレッシャ側カム部90から一方のプレッシャ側カム部90に向かう方向を第2の周方向S2(図5A参照)とする。本実施形態では、出力軸15の軸線方向、クラッチハウジング30の軸線方向、クラッチセンタ40の軸線方向およびプレッシャプレート70の軸線方向は、方向Dと同じ方向である。また、プレッシャプレート70およびクラッチセンタ40は、第1の周方向S1に回転する。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、クラッチ装置10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
図1に示すように、クラッチ装置10は、出力軸15と、入力側回転板20と、出力側回転板22と、クラッチハウジング30と、クラッチセンタ40と、プレッシャプレート70と、ストッパプレート100と、を備えている。
図1に示すように、出力軸15は、中空状に形成された軸体である。出力軸15の一方側の端部は、ニードルベアリング15Aを介して後述する入力ギア35およびクラッチハウジング30を回転自在に支持する。出力軸15は、ナット15Bを介してクラッチセンタ40を固定的に支持する。即ち、出力軸15は、クラッチセンタ40と一体的に回転する。出力軸15の他方側の端部は、例えば、自動車二輪車の変速機(図示せず)に連結されている。
図1に示すように、出力軸15は、その中空部15Hにプッシュロッド16Aと、プッシュロッド16Aに隣接して設けられたプッシュ部材16Bと、を備えている。中空部15Hは、クラッチオイルの流通路としての機能を有する。クラッチオイルは、出力軸15内、即ち中空部15H内を流動する。プッシュロッド16Aおよびプッシュ部材16Bは、出力軸15の中空部15H内を摺動可能に設けられている。プッシュロッド16Aは、一方の端部(図示左側の端部)が自動二輪車のクラッチ操作レバー(図示せず)に連結されており、クラッチ操作レバーの操作によって中空部15H内を摺動してプッシュ部材16Bを第2の方向D2に押圧する。プッシュ部材16Bの一部は出力軸15の外方(ここでは第2の方向D2)に突出しており、プレッシャプレート70に設けられたレリーズベアリング18に連結している。プッシュロッド16Aおよびプッシュ部材16Bは、中空部15Hの内径よりも細く形成されており、中空部15H内においてクラッチオイルの流通性が確保されている。
クラッチハウジング30は、アルミニウム合金から形成されている。クラッチハウジング30は、有底円筒状に形成されている。図1に示すように、クラッチハウジング30は、略円形状に形成された底壁31と、底壁31の縁部から第2の方向D2に延びる側壁33と、を有する。クラッチハウジング30は、複数の入力側回転板20を保持する。
図1に示すように、クラッチハウジング30の底壁31には、入力ギア35が設けられている。入力ギア35は、トルクダンパ35Aを介してリベット35Bによって底壁31に固定されている。入力ギア35は、エンジンの入力軸の回転駆動によって回転する駆動ギア(図示せず)と噛み合っている。入力ギア35は、出力軸15から独立してクラッチハウジング30と一体的に回転駆動する。
入力側回転板20は、入力軸の回転駆動によって回転駆動する。図1に示すように、入力側回転板20は、クラッチハウジング30の側壁33の内周面に保持されている。入力側回転板20は、クラッチハウジング30にスプライン嵌合によって保持されている。入力側回転板20は、クラッチハウジング30の軸線方向に沿って変位可能に設けられている。入力側回転板20は、クラッチハウジング30と一体的に回転可能に設けられている。
入力側回転板20は、出力側回転板22に押し当てられる部材である。入力側回転板20は、環状に形成された平板である。入力側回転板20は、SPCC(冷間圧延鋼板)材からなる薄板を環状に打ち抜いて成形されている。入力側回転板20の表面および裏面には、複数の紙片からなる摩擦材(図示せず)が貼り付けられている。摩擦材の間にはクラッチオイルを保持するための深さ数μm~数十μmの溝が形成されている。
図1に示すように、クラッチセンタ40は、クラッチハウジング30に収容されている。クラッチセンタ40は、クラッチハウジング30と同心に配置されている。クラッチセンタ40は、円筒状の本体42と、本体42の外周縁から径方向外側に延びるフランジ68とを有する。クラッチセンタ40は、入力側回転板20と方向Dに交互に配置された複数の出力側回転板22を保持する。クラッチセンタ40は、出力軸15と共に回転駆動する。
図2に示すように、本体42は、環状のベース壁43と、ベース壁43の径方向外側に位置しかつ第2の方向D2に向けて延びる外周壁45と、ベース壁43の中央に設けられた出力軸保持部50と、ベース壁43および外周壁45に接続された複数のセンタ側カム部60と、センタ側嵌合部58と、を備えている。
出力軸保持部50は、円筒状に形成されている。出力軸保持部50には、出力軸15が挿入されてスプライン嵌合する挿入孔51が形成されている。挿入孔51は、ベース壁43を貫通して形成されている。出力軸保持部50のうち挿入孔51を形成する内周面50Aには、軸線方向に沿って複数のスプライン溝が形成されている。出力軸保持部50には、出力軸15が連結されている。
図2に示すように、クラッチセンタ40の外周壁45は、出力軸保持部50よりも径方向外側に配置されている。外周壁45の外周面には、スプライン嵌合部46が設けられている。スプライン嵌合部46は、外周壁45の外周面に沿ってクラッチセンタ40の軸線方向に延びる複数のセンタ側嵌合歯47と、隣り合うセンタ側嵌合歯47の間に形成されかつクラッチセンタ40の軸線方向に延びる複数のスプライン溝48と、オイル排出孔49とを有する。センタ側嵌合歯47は、出力側回転板22を保持する。複数のセンタ側嵌合歯47は、周方向Sに並ぶ。複数のセンタ側嵌合歯47は、周方向Sに等間隔に形成されている。複数のセンタ側嵌合歯47は、同じ形状に形成されている。センタ側嵌合歯47は、外周壁45の外周面から径方向外側に突出する。センタ側嵌合歯47の外周面は出力軸15の軸線と略平行に形成されている。オイル排出孔49は、外周壁45を径方向に貫通して形成されている。オイル排出孔49は、隣り合うセンタ側嵌合歯47の間に形成されている。即ち、オイル排出孔49は、スプライン溝48に形成されている。オイル排出孔49は、センタ側カム部60の側方に形成されている。オイル排出孔49は、センタ側カム部60のセンタ側スリッパーカム面60Sの側方に形成されている。オイル排出孔49は、センタ側スリッパーカム面60Sよりも第1の周方向S1側に形成されている。オイル排出孔49は、後述するボス部54よりも第2の周方向S2側に形成されている。オイル排出孔49は、クラッチセンタ40の内部と外部とを連通する。オイル排出孔49は、出力軸15からクラッチセンタ40内に流出したクラッチオイルを、クラッチセンタ40の外部に排出する孔である。
出力側回転板22は、クラッチセンタ40のスプライン嵌合部46およびプレッシャプレート70に保持されている。出力側回転板22の一部は、クラッチセンタ40のセンタ側嵌合歯47およびスプライン溝48にスプライン嵌合によって保持されている。出力側回転板22の他の一部は、プレッシャプレート70の後述するプレッシャ側嵌合歯77(図4参照)に保持されている。出力側回転板22は、クラッチセンタ40の軸線方向に沿って変位可能に設けられている。出力側回転板22は、クラッチセンタ40と一体的に回転可能に設けられている。
出力側回転板22は、入力側回転板20に押し当てられる部材である。出力側回転板22は、環状に形成された平板である。出力側回転板22は、SPCC材からなる薄板材を環状に打ち抜いて成形されている。出力側回転板22の表面および裏面には、クラッチオイルを保持するための深さ数μm~数十μmの溝が形成されている。出力側回転板22の表面および裏面には、耐摩耗性を向上させるために表面硬化処理がそれぞれ施されている。なお、入力側回転板20に設けられた摩擦材は、入力側回転板20に代えて出力側回転板22に設けられていてもよいし、入力側回転板20および出力側回転板22のそれぞれに設けてもよい。
センタ側カム部60は、入力側回転板20と出力側回転板22との押圧力(圧接力)を増加させる力であるアシストトルクまたは入力側回転板20と出力側回転板22とを早期に離隔させて半クラッチ状態に移行させる力であるスリッパートルクを生じさせるアシスト&スリッパー(登録商標)機構を構成する傾斜面からなるカム面を有した台状に形成されている。センタ側カム部60は、ベース壁43から第2の方向D2に突出するように形成されている。図3に示すように、センタ側カム部60は、クラッチセンタ40の周方向Sに等間隔に配置されている。本実施形態では、クラッチセンタ40は、3つのセンタ側カム部60を有しているが、センタ側カム部60の数は3に限定されない。
図3に示すように、センタ側カム部60は、出力軸保持部50の径方向外側に位置する。センタ側カム部60は、センタ側アシストカム面60Aと、センタ側スリッパーカム面60Sとを有する。センタ側アシストカム面60Aは、プレッシャプレート70に対して相対回転した際に、入力側回転板20と出力側回転板22との押圧力(圧接力)を増加させるためにプレッシャプレート70をクラッチセンタ40に接近させる方向の力を発生させるように構成されている。本実施形態では、上記力が発生するときにはクラッチセンタ40に対するプレッシャプレート70の位置は変化せず、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40に対して物理的に接近する必要はない。なお、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40に対して物理的に変位してもよい。センタ側スリッパーカム面60Sは、プレッシャプレート70に対して相対回転した際に、入力側回転板20と出力側回転板22との押圧力(圧接力)を減少させるためにプレッシャプレート70をクラッチセンタ40から離隔させるように構成されている。周方向Sに関して隣り合うセンタ側カム部60において、一方のセンタ側カム部60Lのセンタ側アシストカム面60Aと他方のセンタ側カム部60Mのセンタ側スリッパーカム面60Sとは周方向Sに対向して配置されている。
図2に示すように、クラッチセンタ40は、複数(本実施形態では3つ)のボス部54を備えている。ボス部54は、プレッシャプレート70を支持する部材である。複数のボス部54は、周方向Sに等間隔に配置されている。ボス部54は、円筒状に形成されている。ボス部54は、出力軸保持部50より径方向外側に位置する。ボス部54は、プレッシャプレート70に向けて(即ち第2の方向D2に向けて)延びる。ボス部54は、ベース壁43に設けられている。ボス部54には、ボルト28(図1参照)が挿入されるねじ穴54Hが形成されている。ねじ穴54Hは、クラッチセンタ40の軸線方向に延びる。
図2に示すように、センタ側嵌合部58は、出力軸保持部50より径方向外側に位置する。センタ側嵌合部58は、センタ側カム部60より径方向外側に位置する。センタ側嵌合部58は、センタ側カム部60よりも第2の方向D2側に位置する。センタ側嵌合部58は、外周壁45の内周面に形成されている。センタ側嵌合部58は、後述するプレッシャ側嵌合部88(図4参照)に摺動可能に外嵌するように構成されている。センタ側嵌合部58の内径は、プレッシャ側嵌合部88に対して出力軸15の先端部15Tから流出するクラッチオイルの流通を許容する嵌め合い公差を有して形成されている。即ち、センタ側嵌合部58と後述するプレッシャ側嵌合部88との間には隙間が形成されている。本実施形態では、例えば、センタ側嵌合部58は、プレッシャ側嵌合部88の外径に対して0.1mmだけ大きな内径に形成されている。このセンタ側嵌合部58の内径とプレッシャ側嵌合部88の外径との寸法公差は、流通させたいクラッチオイル量に応じて適宜設定されるが、例えば、0.1mm以上かつ0.5mm以下である。
図2および図3に示すように、クラッチセンタ40は、ベース壁43の一部を貫通するセンタ側カム孔43Hを有する。センタ側カム孔43Hは、出力軸保持部50の側方から外周壁45まで延びる。センタ側カム孔43Hは、センタ側カム部60のセンタ側アシストカム面60Aとボス部54との間に形成されている。クラッチセンタ40の軸線方向から見て、センタ側アシストカム面60Aとセンタ側カム孔43Hの一部とは重なる。
図1に示すように、プレッシャプレート70は、クラッチセンタ40に対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられている。プレッシャプレート70は、入力側回転板20および出力側回転板22を押圧可能に構成されている。プレッシャプレート70は、クラッチセンタ40およびクラッチハウジング30と同心に配置されている。プレッシャプレート70は、本体72と、本体72の第2の方向D2側の外周縁に接続しかつ径方向外側に延びるフランジ98とを有する。本体72は、フランジ98よりも第1の方向D1に突出している。フランジ98は、プレッシャプレート70の外径端部に位置する。フランジ98は、後述する筒状部80(図4参照)よりも径方向外側に位置する。プレッシャプレート70は、入力側回転板20と交互に配置された複数の出力側回転板22を保持する。フランジ98は、入力側回転板20および出力側回転板22を押圧可能に構成されている。
図4に示すように、本体72は、筒状部80と、複数のプレッシャ側カム部90と、プレッシャ側嵌合部88と、スプリング収容部84(図6も参照)とを備えている。
筒状部80は、円筒状に形成されている。筒状部80は、プレッシャ側カム部90と一体に形成されている。筒状部80は、出力軸15の先端部15T(図1参照)を収容する。筒状部80には、レリーズベアリング18(図1参照)が収容される。筒状部80は、プッシュ部材16Bからの押圧力を受ける部位である。筒状部80は、出力軸15の先端部15Tから流出したクラッチオイルを受け止める部位である。
プレッシャ側カム部90は、センタ側カム部60に摺動してアシストトルクまたはスリッパートルクを発生させるアシスト&スリッパー(登録商標)機構を構成する傾斜面からなるカム面を有した台状に形成されている。プレッシャ側カム部90は、フランジ98よりも第1の方向D1に突出するように形成されている。図5Aに示すように、プレッシャ側カム部90は、プレッシャプレート70の周方向Sに等間隔に配置されている。本実施形態では、プレッシャプレート70は、3つのプレッシャ側カム部90を有しているが、プレッシャ側カム部90の数は3に限定されない。
図5Aに示すように、プレッシャ側カム部90は、筒状部80の径方向外側に位置する。プレッシャ側カム部90は、プレッシャ側アシストカム面90A(図7および図9も参照)と、プレッシャ側スリッパーカム面90Sとを有する。プレッシャ側アシストカム面90Aは、センタ側アシストカム面60Aと接触可能に構成されている。プレッシャ側アシストカム面90Aは、クラッチセンタ40に対して相対回転した際に、入力側回転板20と出力側回転板22との押圧力(圧接力)を増加させるためにプレッシャプレート70をクラッチセンタ40に接近させる方向の力を発生させるように構成されている。プレッシャ側スリッパーカム面90Sは、センタ側スリッパーカム面60Sと接触可能に構成されている。プレッシャ側スリッパーカム面90Sは、クラッチセンタ40に対して相対回転した際に、入力側回転板20と出力側回転板22との押圧力(圧接力)を減少させるためにプレッシャプレート70をクラッチセンタ40から離隔させるように構成されている。周方向Sに関して隣り合うプレッシャ側カム部90において、一方のプレッシャ側カム部90Lのプレッシャ側アシストカム面90Aと他方のプレッシャ側カム部90Mのプレッシャ側スリッパーカム面90Sとは周方向Sに対向して配置されている。
図8に示すように、プレッシャ側カム部90のプレッシャ側アシストカム面90Aの周方向Sの端部には、直線状に面取りされた面取り部90APが形成されている。面取り部90APの角(第1の方向D1かつ第1の周方向S1側の角)は直角である。より詳細には、面取り部90APは、プレッシャ側アシストカム面90Aの第1の周方向S1の端部90ABに形成されている。
ここで、センタ側カム部60およびプレッシャ側カム部90の作用について説明する。エンジンの回転数が上がり、入力ギア35およびクラッチハウジング30に入力された回転駆動力がクラッチセンタ40介して出力軸15に伝達され得る状態となったときには、図11Aに示すように、プレッシャプレート70には第1の周方向S1の回転力が付与される。このため、センタ側アシストカム面60Aおよびプレッシャ側アシストカム面90Aの作用により、プレッシャプレート70には第1の方向D1への力が発生する。これにより、プレッシャプレート70は、クラッチセンタ40に対して更に近接する方向(第1の方向D1)に移動して、入力側回転板20と出力側回転板22との圧接力を増加させるようになっている。
一方、出力軸15の回転数が入力ギア35およびクラッチハウジング30の回転数を上回ってバックトルクが生じた際には、図11Bに示すように、クラッチセンタ40には第1の周方向S1の回転力が付与される。このため、センタ側スリッパーカム面60Sおよびプレッシャ側スリッパーカム面90Sの作用により、プレッシャプレート70を第2の方向D2へ移動させて入力側回転板20と出力側回転板22との圧接力を解放させるようになっている。これにより、バックトルクによるエンジンや変速機に対する不具合を回避することができる。
図4に示すように、プレッシャ側嵌合部88は、プレッシャ側カム部90より径方向外側に位置する。プレッシャ側嵌合部88は、プレッシャ側カム部90よりも第2の方向D2側に位置する。プレッシャ側嵌合部88は、センタ側嵌合部58(図2参照)に摺動可能に内嵌するように構成されている。
図4および図5Aに示すように、プレッシャプレート70は、本体72およびフランジ98の一部を貫通するプレッシャ側カム孔73Hを有する。プレッシャ側カム孔73Hは、筒状部80よりも径方向外側に位置する。プレッシャ側カム孔73Hは、筒状部80の側方からプレッシャ側嵌合部88よりも径方向外側まで延びる。プレッシャ側カム孔73Hは、隣り合うプレッシャ側カム部90のプレッシャ側アシストカム面90Aとプレッシャ側スリッパーカム面90Sとの間に形成されている。図5Aおよび図7に示すように、プレッシャプレート70の軸線方向から見て、プレッシャ側アシストカム面90Aとプレッシャ側カム孔73Hの一部とは重なる。
図4に示すように、プレッシャプレート70は、フランジ98の第1の方向の面98Aに配置された複数のプレッシャ側嵌合歯77を備えている。プレッシャ側嵌合歯77は、少なくとも一つの出力側回転板22を保持する。入力側回転板20および出力側回転板22は、プレッシャ側嵌合歯77の外周面77A(図13も参照)に沿って方向Dに移動可能に設けられている。プレッシャ側嵌合歯77は、フランジ98の第1の方向の面98Aから第1の方向D1に向けて突出する。プレッシャ側嵌合歯77は、筒状部80よりも径方向外側に位置する。プレッシャ側嵌合歯77は、プレッシャ側カム部90より径方向外側に位置する。プレッシャ側嵌合歯77は、プレッシャ側嵌合部88より径方向外側に位置する。複数のプレッシャ側嵌合歯77は、周方向Sに並ぶ。複数のプレッシャ側嵌合歯77は、周方向Sに等間隔に配置されている。図13に示すように、プレッシャ側嵌合歯77の外周面77Aの第2の方向D2の端部には、径方向内側に凹む凹部77Hが形成されている。凹部77Hは、プレッシャ側嵌合歯77の外周面77Aの第2の方向D2の端部の全周に亘って形成されている。凹部77Hの方向Dの長さRAは、1枚の入力側回転板20の方向Dの長さRBより短い。また、プレッシャ側嵌合歯77の内周面77Bは、第1の方向D1に行くほど径方向外側に傾斜している。プレッシャ側嵌合歯77の内周面77Bは、第1の方向D1に行くほど径方向外側に位置するように、出力軸15に対して例えば約2°傾斜している。内周面77Bの傾斜角度は、他の部位、例えば、プレッシャ側嵌合歯77の外周面77Aの傾斜角度よりも大きい。プレッシャ側嵌合歯77の外周面77Aは、第2の方向D2に行くほど径方向外側に傾斜している。プレッシャ側嵌合歯77の外周面77Aは、第2の方向D2に行くほど径方向外側に位置するように、出力軸15に対して例えば約1°傾斜している。また、図5Bに示すように、プレッシャ側嵌合歯77の周方向Sの一対の側面777Fは、出力軸15の径方向から見たときに、第1の方向D1に行くにしたがって互いに接近するように傾斜している。側面77Fと出力軸15の軸線と平行な直線15Lとのなす角度αは、例えば、0°より大きく5°より小さい(例えば0°より大きく1°より小さい)。なお、本実施形態では、一部のプレッシャ側嵌合歯77が取り除かれているため、該部分の間隔は広がっているが、その他の隣り合うプレッシャ側嵌合歯77は等間隔に配置されている。
図14Aに示すように、プレッシャ側嵌合歯77の方向Dの長さP1は、プレッシャプレート70の方向Dの最大移動距離P2と、プレッシャ側嵌合歯77に保持された出力側回転板22のうち最も第1の方向D1側に位置する出力側回転板22であるプレッシャ側最外方出力側回転板22Aの第2の方向D2の端部22ATからプレッシャ側嵌合歯77の第2の方向D2の端部77Q(フランジ98との境界部分)までの通常時の距離である回転板距離P3との合計距離(P2+P3)よりも長い。即ち、P1>(P2+P3)が成立する。なお、通常時とは、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40に最も接近しているときを意味する。ここでは、通常時とは、クラッチが接続された状態(以下クラッチON状態ともいう)を意味する。このため、図14Bに示すように、プレッシャプレート70が通常時から第2の方向D2に最大移動距離P2移動したときには、プレッシャ側最外方出力側回転板22Aがプレッシャ側嵌合歯77の一部と重なり、プレッシャ側最外方出力側回転板22Aはプレッシャ側嵌合歯77に保持されている。即ち、プレッシャ側嵌合歯77は、常にプレッシャ側最外方出力側回転板22Aを保持しており、プレッシャ側最外方出力側回転板22Aが脱落しない長さP1を有する。なお、回転板距離P3は、プレッシャ側最外方出力側回転板22Aの第1の方向D1の端部22DTからプレッシャ側嵌合歯77の第2の方向D2の端部77Q(フランジ98との境界部分)までの通常時の距離であってもよい。また、プレッシャプレート70が通常時から第2の方向D2に最大移動距離P2移動したときには、プレッシャプレート70はストッパプレート100(図1参照)と接触する。
図12に示すように、プレッシャ側嵌合歯77は、センタ側嵌合歯47よりも径方向外側に位置する。プレッシャ側嵌合歯77とセンタ側嵌合歯47との径方向の間には、隙間が形成されている。図13に示すように、プレッシャ側嵌合歯77の第1の方向D1の端部77Tは、センタ側嵌合歯47の第2の方向D2の端部47Tよりも第1の方向D1に位置する。プレッシャ側嵌合歯77とセンタ側嵌合歯47との径方向の距離LXは、プレッシャ側嵌合部88とセンタ側嵌合部58との径方向の距離LYよりも長い。上述のように、プレッシャ側嵌合歯77の内周面77Bは、第1の方向D1に行くほど径方向外側に傾斜し、センタ側嵌合歯47の外周面は出力軸15の軸線と略平行に形成されているため、距離LXは第1の方向D1に行くほど広くなっている。これにより、プレッシャプレート70およびクラッチセンタ40が回転しているときに、プレッシャ側嵌合歯77とセンタ側嵌合歯47との間の空間に保持されたクラッチオイルは、プレッシャ側嵌合歯77の第1の方向D1の端部77Tとセンタ側嵌合歯47との間に広く形成された開口部から出力側回転板22および入力側回転板20に向けて飛散させ易くなり、出力側回転板22および入力側回転板20の潤滑性が向上する。なお、距離LXは、プレッシャ側嵌合歯77とセンタ側嵌合歯47との径方向の距離のうち最も短い距離である。また、通常時において、プレッシャ側嵌合歯77の第1の方向D1の端部77Tと、クラッチセンタ40に保持された出力側回転板22のうち最も第2の方向D2側に位置する出力側回転板22であるセンタ側最外方出力側回転板22Bとの間には隙間CXが形成されている。即ち、プレッシャ側嵌合歯77は、センタ側最外方出力側回転板22Bとは接触しない。
図6および図7に示すように、スプリング収容部84は、プレッシャ側カム部90に形成されている。スプリング収容部84は、第2の方向D2から第1の方向D1に凹むように形成されている。スプリング収容部84は、楕円形状に形成されている。スプリング収容部84は、プレッシャスプリング25(図1参照)を収容する。スプリング収容部84には、ボス部54(図2参照)が挿入される挿入孔84Hが貫通形成されている。即ち、挿入孔84Hは、プレッシャ側カム部90に貫通形成されている。挿入孔84Hは、楕円形状に形成されている。
図1に示すように、プレッシャスプリング25は、スプリング収容部84に収容されている。プレッシャスプリング25は、スプリング収容部84の挿入孔84Hに挿入されたボス部54に保持されている。プレッシャスプリング25は、プレッシャプレート70をクラッチセンタ40に向けて(即ち第1の方向D1に向けて)付勢する。プレッシャスプリング25は、例えば、ばね鋼を螺旋状に巻いたコイルスプリングである。
図10は、クラッチセンタ40とプレッシャプレート70とが組み合わされた状態を示す平面図である。図10に示す状態では、プレッシャ側アシストカム面90Aとセンタ側アシストカム面60Aとは接触せず、かつ、プレッシャ側スリッパーカム面90Sとセンタ側スリッパーカム面60Sとは接触していない。このとき、プレッシャプレート70はクラッチセンタ40に最も接近している。この状態をクラッチ装置10の通常時の状態とする。図10に示すように、通常時のボス部54と挿入孔84Hのプレッシャ側アシストカム面90A側(即ち第1の周方向S1側)の端部84HAとの周方向Sの距離L5は、通常時のボス部54と挿入孔84Hのプレッシャ側スリッパーカム面90S側(即ち第2の周方向S2側)の端部84HBとの周方向Sの距離L6よりも短い。
図1に示すように、ストッパプレート100は、プレッシャプレート70と接触可能に設けられている。ストッパプレート100は、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40から第2の方向D2に所定の距離以上離隔することを抑制する部材である。ストッパプレート100は、クラッチセンタ40のボス部54にボルト28によって固定されている。プレッシャプレート70は、スプリング収容部84にクラッチセンタ40のボス部54およびプレッシャスプリング25が配置された状態でストッパプレート100を介してボルト28がボス部54に締め付けられて固定されている。ストッパプレート100は、平面視で略三角形状に形成されている。
ここで、プレッシャプレート70がストッパプレート100と接触するとき、プレッシャ側スリッパーカム面90Sとセンタ側スリッパーカム面60Sとは、それぞれ、プレッシャ側スリッパーカム面90Sの面積の50%以上90%以下、かつ、センタ側スリッパーカム面60Sの面積の50%以上90%以下で互いに接触している。また、プレッシャプレート70がストッパプレート100に接触するとき、プレッシャスプリング25は、スプリング収容部84の側壁から離隔している。即ち、プレッシャスプリング25は、ボス部54とスプリング収容部84とによって挟み込まれておらず、ボス部54に過度な応力が加わることが抑制されている。
ここで、周方向Sに関して隣り合うプレッシャ側カム部90のうち一方のプレッシャ側カム部90Lの第1の周方向S1側に位置するプレッシャ側アシストカム面90Aの第1の方向D1の端部90AAから他方のプレッシャ側カム部90Mの第2の周方向S2側に位置するプレッシャ側スリッパーカム面90Sの第1の方向D1の端部90SAまでの周方向Sの長さL1(図5A参照)は、1つのセンタ側カム部60のセンタ側アシストカム面60Aの第2の方向D2の端部60AAからセンタ側スリッパーカム面60Sの第2の方向D2の端部60SAまでの周方向の長さL2(図3参照)より長い。
また、出力軸15の軸線方向から見て、筒状部80の中心80Cと、周方向Sに関して隣り合うプレッシャ側カム部90のうち一方のプレッシャ側カム部90Lの第1の周方向S1側に位置するプレッシャ側アシストカム面90Aの第1の周方向S1の端部90ABと、他方のプレッシャ側カム部90Mの第2の周方向S2側に位置するプレッシャ側スリッパーカム面90Sの第1の周方向S1の端部90SBとのなす角度θ1(図5A参照)は、出力軸保持部50の中心50Cと、1つのセンタ側カム部60のセンタ側アシストカム面60Aの第2の周方向S2の端部60ABと、センタ側スリッパーカム面60Sの第2の周方向S2の端部60SBとのなす角度θ2(図3参照)より大きい。
また、センタ側アシストカム面60Aの第2の方向D2の端部60AAからボス部54までの周方向Sの長さL3(図3参照)は、プレッシャ側アシストカム面90Aの第1の方向D1の端部90AAから挿入孔84Hまでの周方向Sの長さL4(図5A参照)よりも長い。
また、出力軸15の軸線方向から見て、出力軸保持部50の中心50Cと、センタ側カム部60のセンタ側アシストカム面60Aの第2の周方向S2の端部60ABと、ボス部54の中心54Cとのなす角度θ3(図3参照)は、筒状部80の中心80Cと、プレッシャ側アシストカム面90Aの第1の周方向S1の端部90ABと、挿入孔84Hの中心84HCとのなす角度θ4(図5A参照)より大きい。
クラッチ装置10内には、所定量のクラッチオイルが充填されている。クラッチオイルは、出力軸15の中空部15Hを介してクラッチセンタ40およびプレッシャプレート70内に流通し、その後センタ側嵌合部58とプレッシャ側嵌合部88との隙間やオイル排出孔49を介して入力側回転板20および出力側回転板22に供給される。クラッチオイルは、熱の吸収や摩擦材の摩耗を抑止する。本実施形態のクラッチ装置10は、いわゆる湿式多板摩擦クラッチ装置である。
次に、本実施形態のクラッチ装置10の作動について説明する。クラッチ装置10は、上述のように、自動二輪車のエンジンと変速機との間に配置されるものであり、運転者がクラッチ操作レバーを操作することによって、エンジンの回転駆動力を変速機へ伝達および遮断する。
クラッチ装置10は、自動二輪車の運転者がクラッチ操作レバーを操作しない場合には、クラッチレリーズ機構(図示せず)がプッシュロッド16Aを押圧しないため、プレッシャプレート70がプレッシャスプリング25の付勢力(弾性力)によって入力側回転板20を押圧する。これにより、クラッチセンタ40は、入力側回転板20と出力側回転板22とが互いに押し当てられて摩擦連結されたクラッチONの状態(即ちクラッチが接続された状態)となって回転駆動する。即ち、エンジンの回転駆動力がクラッチセンタ40に伝達されて出力軸15が回転駆動する。
クラッチON状態において、出力軸15の中空部H内を流動しかつ出力軸15の先端部15Tから流出したクラッチオイルは、筒状部80内に落下または飛翔して付着する(図1の矢印F参照)。筒状部80内に付着したクラッチオイルは、クラッチセンタ40内に導かれる。これにより、クラッチオイルは、オイル排出孔49を介してクラッチセンタ40の外部に流出する。また、クラッチオイルは、センタ側嵌合部58とプレッシャ側嵌合部88との隙間を介してクラッチセンタ40の外部に流出する。そして、クラッチセンタ40の外部に流出したクラッチオイルは、入力側回転板20および出力側回転板22に供給される。
一方、クラッチ装置10は、クラッチON状態において自動二輪車の運転者がクラッチ操作レバーを操作した場合には、クラッチレリーズ機構(図示せず)がプッシュロッド16Aを押圧するため、プレッシャプレート70がプレッシャスプリング25の付勢力に抗してクラッチセンタ40から離隔する方向(第2の方向D2)に変位する。これにより、クラッチセンタ40は、入力側回転板20と出力側回転板22との摩擦連結が解消されたクラッチOFFの状態(即ちクラッチが切断された状態)となるため、回転駆動が減衰または回転駆動が停止する状態となる。即ち、エンジンの回転駆動力がクラッチセンタ40に対して遮断される。
クラッチOFF状態において、出力軸15の中空部H内を流動しかつ出力軸15の先端部15Tから流出したクラッチオイルは、クラッチON状態と同様に、クラッチセンタ40内に導かれる。このとき、プレッシャプレート70は、クラッチセンタ40に対して離隔するため、センタ側嵌合部58およびプレッシャ側嵌合部88との嵌合量が少なくなる。この結果、筒状部80内のクラッチオイルは、より積極的にクラッチセンタ40の外部に流出してクラッチ装置10の内部の各所に流動する。特に、互いに離隔する入力側回転板20と出力側回転板22との間にクラッチオイルを積極的に導くことができる。
そして、クラッチOFF状態において運転者がクラッチ操作レバーを解除した場合には、クラッチレリーズ機構(図示せず)によるプッシュ部材16Bを介したプレッシャプレート70の押圧が解除されるため、プレッシャプレート70はプレッシャスプリング25の付勢力によってクラッチセンタ40に接近する方向(第1の方向D1)に変位する。
図15は、第2実施形態に係るクラッチ装置110および第3実施形態に係るクラッチ装置210の通常時(クラッチが接続された状態)の一部拡大断面図である。図15に示すように、クラッチ装置110およびクラッチ装置210では、クラッチが接続された状態において、出力軸15の径方向から見たとき(即ち方向Dと直交する方向から見たとき)にセンタ側嵌合歯47の一部とプレッシャ側嵌合歯77の一部とが重なる。ここでは、方向Dに関して、センタ側嵌合歯47とプレッシャ側嵌合歯77とは長さG1だけ重なる。また、クラッチが接続された状態において、センタ側嵌合歯47とプレッシャ側嵌合歯77の径方向の距離LXは、センタ側嵌合歯47の第2の方向D2側の端部47Tとプレッシャプレート70(ここではフランジ98)との方向Dの距離LZよりも短い。なお、距離LXは、距離LZよりも長くてもよい。また、クラッチ装置110およびクラッチ装置210は、低温側の温度域(例えば-10℃~40℃)から高温側の温度域(例えば80℃~400℃)までの使用可能温度域(例えば-10℃~400℃)において温度変化するとき、使用可能温度域の全体に亘って、出力軸15の径方向から見たときにセンタ側嵌合歯47の一部とプレッシャ側嵌合歯77の一部とが重なる(図15~図21参照)。低温側の温度域とは、例えば、エンジン始動前の外気温である。高温側の温度域とは、例えば、エンジンの暖気が終わった後の運転時におけるクラッチ装置110、210の温度である。
<第2実施形態>
図16~図18に示すように、第2実施形態に係るクラッチ装置110では、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40から離れる方向(即ち第2の方向D2)に移動するとき、入力側回転板20および出力側回転板22の全体がクラッチセンタ40側に残り、プレッシャプレート70(より詳細にはフランジ98)と複数の入力側回転板20および複数の出力側回転板22のうち最も第2の方向D2側に位置する入力側回転板20Aとの間に隙間(方向Dの隙間)が形成される。
図16に示すように、クラッチ装置110では、半クラッチ状態において、出力軸15の径方向から見たとき(即ち方向Dと直交する方向から見たとき)にセンタ側嵌合歯47の一部とプレッシャ側嵌合歯77の一部とが重なる。ここでは、方向Dに関して、センタ側嵌合歯47とプレッシャ側嵌合歯77とは長さG2(G1>G2)だけ重なる。即ち、プレッシャ側嵌合歯77の第1の方向D1の端部77Tとセンタ側嵌合歯47の第2の方向D2の端部47Tとについて、方向Dに隙間が生じない。このため、クラッチセンタ40の内部から流れるクラッチオイルが遠心力によって径方向の外側に飛散する場合でも、クラッチオイルの大部分はプレッシャ側嵌合歯77に当たり、この結果、プレッシャ側嵌合歯77に保持された出力側回転板22等にクラッチオイルが供給される。なお、半クラッチ状態とは、クラッチが接続された状態(図15参照)と、クラッチが切断された状態(図17参照)との間の状態である。
図17に示すように、クラッチ装置110では、クラッチが切断された状態において、出力軸15の径方向から見たとき(即ち方向Dと直交する方向から見たとき)にセンタ側嵌合歯47の一部とプレッシャ側嵌合歯77の一部とが重なる。ここでは、方向Dに関して、センタ側嵌合歯47とプレッシャ側嵌合歯77とは長さG3(G2>G3)だけ重なる。即ち、プレッシャ側嵌合歯77の第1の方向D1の端部77Tとセンタ側嵌合歯47の第2の方向D2の端部47Tとについて、方向Dに隙間が生じない。
図18に示すように、クラッチ装置110では、プレッシャプレート70がストッパプレート100に接触した状態状態において、出力軸15の径方向から見たとき(即ち方向Dと直交する方向から見たとき)にセンタ側嵌合歯47の一部とプレッシャ側嵌合歯77の一部とが重なる。ここでは、方向Dに関して、センタ側嵌合歯47とプレッシャ側嵌合歯77とは長さG4(G3>G4)だけ重なる。即ち、プレッシャ側嵌合歯77の第1の方向D1の端部77Tとセンタ側嵌合歯47の第2の方向D2の端部47Tとについて、方向Dに隙間が生じない。
<第3実施形態>
図19~図21に示すように、第3実施形態に係るクラッチ装置210では、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40から離れる方向(即ち第2の方向D2)に移動するとき、入力側回転板20のうち最も第1の方向D1側に位置する入力側回転板20Bのみがクラッチセンタ40側に残り、入力側回転板20Bと出力側回転板22との間に隙間(方向Dの隙間)が形成される。なお、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40から離れる方向に移動するときに形成される方向Dの隙間は、入力側回転板20Bと出力側回転板22との間に限定されない。例えば、クラッチセンタ40と入力側回転板20Bとの間に形成されてもよいし、隣接する入力側回転板20と出力側回転板22との間に形成されてもよいし、プレッシャプレート70と入力側回転板20との間に形成されてもよい。
図19に示すように、クラッチ装置210では、半クラッチ状態において、出力軸15の径方向から見たとき(即ち方向Dと直交する方向から見たとき)にセンタ側嵌合歯47の一部とプレッシャ側嵌合歯77の一部とが重なる。ここでは、方向Dに関して、センタ側嵌合歯47とプレッシャ側嵌合歯77とは長さG5(G1>G5)だけ重なる。即ち、プレッシャ側嵌合歯77の第1の方向D1の端部77Tとセンタ側嵌合歯47の第2の方向D2の端部47Tとについて、方向Dに隙間が生じない。
図20に示すように、クラッチ装置210では、クラッチが切断された状態において、出力軸15の径方向から見たとき(即ち方向Dと直交する方向から見たとき)にセンタ側嵌合歯47の一部とプレッシャ側嵌合歯77の一部とが重なる。ここでは、方向Dに関して、センタ側嵌合歯47とプレッシャ側嵌合歯77とは長さG6(G5>G6)だけ重なる。即ち、プレッシャ側嵌合歯77の第1の方向D1の端部77Tとセンタ側嵌合歯47の第2の方向D2の端部47Tとについて、方向Dに隙間が生じない。
図21に示すように、クラッチ装置210では、プレッシャプレート70がストッパプレート100に接触した状態状態において、出力軸15の径方向から見たとき(即ち方向Dと直交する方向から見たとき)にセンタ側嵌合歯47の一部とプレッシャ側嵌合歯77の一部とが重なる。ここでは、方向Dに関して、センタ側嵌合歯47とプレッシャ側嵌合歯77とは長さG7(G6>G7)だけ重なる。即ち、プレッシャ側嵌合歯77の第1の方向D1の端部77Tとセンタ側嵌合歯47の第2の方向D2の端部47Tとについて、方向Dに隙間が生じない。
以上のように、第2実施形態のクラッチ装置110および第3実施形態のクラッチ装置210によると半クラッチ状態、クラッチが切断された状態およびプレッシャプレート70がストッパプレート100に接触した状態のそれぞれにおいて、出力軸15の径方向から見たときにセンタ側嵌合歯47の一部とプレッシャ側嵌合歯77の一部とが重なる。即ち、半クラッチ状態、クラッチが切断された状態およびプレッシャプレート70がストッパプレート100に接触した状態のそれぞれにおいて、方向Dに関してプレッシャ側嵌合歯77とセンタ側嵌合歯47とに隙間が生じないため、例えば、クラッチセンタ40の内部を流れるクラッチオイルは外部に直接流れず、プレッシャプレート70側に流れる。これにより、プレッシャプレート70に保持された出力側回転板22および入力側回転板20により多くのクラッチオイルを供給することができる。
第2実施形態のクラッチ装置110および第3実施形態のクラッチ装置210では、出力軸15の径方向から見たときに、プレッシャ側嵌合歯77の周方向Sの一対の側面77Fは、第1の方向D1に行くにしたがって互いに接近するように傾斜している。上記態様によれば、プレッシャプレート70をクラッチセンタ40に対して容易に接近および離隔させることができる。
第2実施形態のクラッチ装置110および第3実施形態のクラッチ装置210では、クラッチが接続された状態において、センタ側嵌合歯47とプレッシャ側嵌合歯77の径方向Sの距離LXは、センタ側嵌合歯47の第2の方向D2側の端部47Tとプレッシャプレート70との方向Dの距LZ離よりも長くてもよい。上記態様によれば、プレッシャ側嵌合歯77とセンタ側嵌合歯47との隙間をクラッチオイルがより流れやすくなる。
第2実施形態のクラッチ装置110および第3実施形態のクラッチ装置210では、クラッチ装置110およびクラッチ装置210が低温側の温度域から高温側の温度域までの使用可能温度域において温度変化するとき、使用可能温度域の全体に亘って、出力軸15の径方向から見たときにセンタ側嵌合歯47の一部とプレッシャ側嵌合歯77の一部とが重なる。上記態様によれば、クラッチ装置110およびクラッチ装置210の使用可能温度域では、方向Dに関してプレッシャ側嵌合歯77とセンタ側嵌合歯47とに隙間が生じないため、例えば、クラッチセンタ40の内部を流れるクラッチオイルは外部に直接流れず、プレッシャプレート70側に流れる。これにより、プレッシャプレート70に保持された出力側回転板22および入力側回転板20により多くのクラッチオイルを供給することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
上述した実施形態では、クラッチ装置10、110、210は、運転者がクラッチ操作レバーを操作することによって、エンジンの回転駆動力を変速機へ伝達および遮断するように構成されたいわゆるマニュアルクラッチであったが、これに限定されない。クラッチ装置10、110、210は、クラッチアクチュエータによって自動的にエンジンの回転駆動力を変速機へ伝達および遮断するように構成されたいわゆる自動クラッチであってもよい。
上述した実施形態では、クラッチセンタ40において、出力軸保持部50と外周壁45とが一体的に形成されていたが、これに限定されない。例えば、クラッチセンタ40は、出力軸保持部50を備えた第1部材と、第1部材とは別体に形成されかつ外周壁45を備えた第2部材とを備え、第1部材と第2部材とを嵌め合わせて用いる形態であってもよい。
10 クラッチ装置
15 出力軸
20 入力側回転板
22 出力側回転板
22A プレッシャ側最外方出力側回転板
22AT 第2の方向の端部
22B センタ側最外方出力側回転板
30 クラッチハウジング
40 クラッチセンタ
45 外周壁
47 センタ側嵌合歯
50 出力軸保持部
58 センタ側嵌合部
70 プレッシャプレート
77 プレッシャ側嵌合歯
77A 外周面
77B 内周面
77F 側面
77H 凹部
77Q 第2の方向の端部
77T 第1の方向の端部
88 プレッシャ側嵌合部
98 フランジ
100 ストッパプレート
110 クラッチ装置
210 クラッチ装置

Claims (7)

  1. 入力軸の回転駆動力を出力軸に伝達または遮断するクラッチ装置であって、
    前記入力軸の回転駆動によって回転駆動する複数の入力側回転板を保持するクラッチハウジングに収容され、かつ、前記入力側回転板と交互に配置された複数の出力側回転板を保持し、かつ、前記出力軸と共に回転駆動するクラッチセンタと、
    前記クラッチセンタに対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられ、前記入力側回転板および前記出力側回転板を押圧可能なプレッシャプレートと、を備え、
    前記プレッシャプレートは、
    少なくとも一つの前記出力側回転板を保持し、かつ、周方向に並ぶ複数のプレッシャ側嵌合歯を備え、
    前記クラッチセンタは、
    前記出力軸が連結される出力軸保持部と、
    前記出力軸保持部よりも径方向外側に位置する外周壁と、
    前記出力側回転板を保持し、かつ、前記外周壁の外周面から径方向外側に突出するように形成された周方向に並ぶ複数のセンタ側嵌合歯と、を備え、
    半クラッチ状態において、前記出力軸の径方向から見たときに前記センタ側嵌合歯の一部と前記プレッシャ側嵌合歯の一部とが重なる、クラッチ装置。
  2. 前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタに接近する方向を第1の方向、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから離隔する方向を第2の方向としたとき、
    前記出力軸の径方向から見たときに、前記プレッシャ側嵌合歯の周方向の一対の側面は、前記第1の方向に行くにしたがって互いに接近するように傾斜している、請求項1に記載のクラッチ装置。
  3. 前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタに対して接近および離隔する方向を移動方向、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタに接近する方向を第1の方向、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから離隔する方向を第2の方向としたとき、
    クラッチが接続された状態において、前記センタ側嵌合歯と前記プレッシャ側嵌合歯の径方向の距離は、前記センタ側嵌合歯の前記第2の方向側の端部と前記プレッシャプレートとの前記移動方向の距離よりも長い、請求項1に記載のクラッチ装置。
  4. 前記クラッチ装置が低温側の温度域から高温側の温度域までの使用可能温度域において温度変化するとき、前記使用可能温度域の全体に亘って、前記出力軸の径方向から見たときに前記センタ側嵌合歯の一部と前記プレッシャ側嵌合歯の一部とが重なる、請求項1または2に記載のクラッチ装置。
  5. 請求項1または2に記載のクラッチ装置を備えた自動二輪車。
  6. 入力軸の回転駆動力を出力軸に伝達または遮断するクラッチ装置であって、
    前記入力軸の回転駆動によって回転駆動する複数の入力側回転板を保持するクラッチハウジングに収容され、かつ、前記入力側回転板と交互に配置された複数の出力側回転板を保持し、かつ、前記出力軸と共に回転駆動するクラッチセンタと、
    前記クラッチセンタに対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられ、前記入力側回転板および前記出力側回転板を押圧可能なプレッシャプレートと、を備え、
    前記プレッシャプレートは、
    少なくとも一つの前記出力側回転板を保持し、かつ、周方向に並ぶ複数のプレッシャ側嵌合歯を備え、
    前記クラッチセンタは、
    前記出力軸が連結される出力軸保持部と、
    前記出力軸保持部よりも径方向外側に位置する外周壁と、
    前記出力側回転板を保持し、かつ、前記外周壁の外周面から径方向外側に突出するように形成された周方向に並ぶ複数のセンタ側嵌合歯と、を備え、
    クラッチが切断された状態において、前記出力軸の径方向から見たときに前記センタ側嵌合歯の一部と前記プレッシャ側嵌合歯の一部とが重なる、クラッチ装置。
  7. 入力軸の回転駆動力を出力軸に伝達または遮断するクラッチ装置であって、
    前記入力軸の回転駆動によって回転駆動する複数の入力側回転板を保持するクラッチハウジングに収容され、かつ、前記入力側回転板と交互に配置された複数の出力側回転板を保持し、かつ、前記出力軸と共に回転駆動するクラッチセンタと、
    前記クラッチセンタに対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられ、前記入力側回転板および前記出力側回転板を押圧可能なプレッシャプレートと、
    前記プレッシャプレートと接触可能に設けられ、かつ、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから所定の距離以上離隔することを抑制するストッパプレートと、を備え、
    前記プレッシャプレートは、
    少なくとも一つの前記出力側回転板を保持し、かつ、周方向に並ぶ複数のプレッシャ側嵌合歯を備え、
    前記クラッチセンタは、
    前記出力軸が連結される出力軸保持部と、
    前記出力軸保持部よりも径方向外側に位置する外周壁と、
    前記出力側回転板を保持し、かつ、前記外周壁の外周面から径方向外側に突出するように形成された周方向に並ぶ複数のセンタ側嵌合歯と、を備え、
    前記プレッシャプレートが前記ストッパプレートに接触した状態において、前記出力軸の径方向から見たときに前記センタ側嵌合歯の一部と前記プレッシャ側嵌合歯の一部とが重なる、クラッチ装置。
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