JP2024007079A - 回転電機用ロータの製造方法及び回転電機用ロータ - Google Patents
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Abstract
【課題】フラックスバリア部への樹脂材料の射出成形を不要としつつ、ボンド磁石を適切に形成する。【解決手段】磁石孔を有する回転電機用ロータコアのワークを準備する工程と、磁石孔内の一部に、非磁性体を挿入する挿入工程と、挿入工程の後に、非磁性体を変形又は変位させることで、非磁性体を磁石孔の孔縁部に当接させる当接状態を形成する当接状態形成工程と、当接状態形成工程により形成された当接状態で、磁石孔内の非磁性体に隣接する部分に、磁石粉末と結合材とを混合したボンド磁石用の材料を充填する充填工程とを含み、当接状態形成工程において、非磁性体は、磁石孔内におけるボンド磁石用の材料が充填される空間を境界付ける態様で、磁石孔の孔縁部に当接する、回転電機用ロータの製造方法が開示される。【選択図】図5
Description
本開示は、回転電機用ロータの製造方法及び回転電機用ロータに関する。
ロータコアの磁石孔において、フラックスバリア部に樹脂材料を射出成形した後、同磁石孔における樹脂部分に隣接する部分に、磁性材(磁石粉末)と非磁性の樹脂材(結合材)とを混合してなるボンド磁石用の材料を射出成形する技術が知られている。
しかしながら、上記のような従来技術では、フラックスバリア部への樹脂材料の射出成形と、ボンド磁石用の材料の射出成形との2種類の射出成形を行うため、ボンド磁石を形成するための製造設備(例えば磁石成型用治具)が複雑化(及び高コスト化)する傾向がある。
そこで、1つの側面では、本開示は、フラックスバリア部への樹脂材料の射出成形を不要としつつ、ボンド磁石を適切に形成することを目的とする。
1つの側面では、磁石孔を有する回転電機用ロータコアのワークを準備する工程と、
前記磁石孔内の一部に、非磁性体を挿入する挿入工程と、
前記挿入工程の後に、前記非磁性体を変形又は変位させることで、前記非磁性体を前記磁石孔の孔縁部に当接させる当接状態を形成する当接状態形成工程と、
前記当接状態形成工程により形成された前記当接状態で、前記磁石孔内の前記非磁性体に隣接する部分に、磁石粉末と結合材とを混合したボンド磁石用の材料を充填する充填工程とを含み、
前記当接状態形成工程において、前記非磁性体は、前記磁石孔内における前記ボンド磁石用の材料が充填される空間を境界付ける態様で、前記磁石孔の孔縁部に当接する、回転電機用ロータの製造方法が提供される。
前記磁石孔内の一部に、非磁性体を挿入する挿入工程と、
前記挿入工程の後に、前記非磁性体を変形又は変位させることで、前記非磁性体を前記磁石孔の孔縁部に当接させる当接状態を形成する当接状態形成工程と、
前記当接状態形成工程により形成された前記当接状態で、前記磁石孔内の前記非磁性体に隣接する部分に、磁石粉末と結合材とを混合したボンド磁石用の材料を充填する充填工程とを含み、
前記当接状態形成工程において、前記非磁性体は、前記磁石孔内における前記ボンド磁石用の材料が充填される空間を境界付ける態様で、前記磁石孔の孔縁部に当接する、回転電機用ロータの製造方法が提供される。
1つの側面では、本開示によれば、フラックスバリア部への樹脂材料の射出成形を不要としつつ、ボンド磁石を適切に形成することが可能となる。
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。
図1は、一実施例によるモータ1(回転電機の一例)の断面構造を概略的に示す断面図である。図2は、ロータ30の断面図(軸方向に垂直な平面による断面図)である。なお、図2等では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。
図1には、モータ1の回転軸12が図示されている。以下の説明において、軸方向とは、モータ1の回転軸(回転中心)12が延在する方向を指し、径方向とは、回転軸12を中心とした径方向を指す。従って、径方向外側とは、回転軸12から離れる側を指し、径方向内側とは、回転軸12に向かう側を指す。また、周方向とは、回転軸12まわりの回転方向に対応する。
モータ1は、例えばハイブリッド車両や電気自動車で使用される車両駆動用のモータであってよい。ただし、モータ1は、他の任意の用途に使用されるものであってもよい。
モータ1は、インナロータタイプであり、ステータ21がロータ30の径方向外側を囲繞するように設けられる。ステータ21は、径方向外側がモータハウジング10に固定される。ステータ21は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなるステータコア211を備え、ステータコア211の径方向内側には、コイル22が巻回される複数のスロット(図示せず)が形成される。
ロータ30は、ステータ21の径方向内側に配置される。
ロータ30は、ロータコア32と、ロータシャフト34と、エンドプレート35A、35Bと、ボンド磁石61、62とを備える。
ロータコア32は、ロータシャフト34の径方向外側の表面に固定され、ロータシャフト34と一体となって回転する。ロータコア32は、軸孔320(図2参照)を有し、軸孔320にロータシャフト34が嵌合される。ロータシャフト34は、モータハウジング10にベアリング14a、14bを介して回転可能に支持される。なお、ロータシャフト34は、モータ1の回転軸12を画成する。
ロータコア32は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板により形成される。なお、変形例では、ロータコア32は、磁性粉末が圧縮して固められた圧粉体により形成されてもよい。ロータコア32の内部には、ボンド磁石61、62(図2参照)が配置される。すなわち、ロータコア32は、軸方向に貫通する磁石孔321、322(図2参照)を有し、磁石孔321、322内にボンド磁石61、62が形成される。複数のボンド磁石61、62のそれぞれは、磁石粉末と結合材とを混合したボンド磁石用の材料(以下、単に「ボンド磁石材料」とも称する)を射出成形して形成される。射出成形の方法は任意であり、例えば、トランスファ成形や、シリンダを使用した圧縮成形による樹脂注入等を含んでよい。ボンド磁石の形成方法の詳細は、後述する製造方法に関連して説明する。
ロータコア32は、図2に示すように、軸方向に視て、回転軸12を中心とした回転対称の形態を有する。図2に示す例では、ロータコア32は、回転軸12を中心として45度回転するごとに、各組のボンド磁石61、62が重なる形態である。
図2に示す例では、複数のボンド磁石61、62は、軸方向に視て、2種類のボンド磁石61、62がそれぞれ対をなして略V字状(径方向外側が開く態様の略V字状)に配置されている。この場合、対のボンド磁石61の間及び対のボンド磁石62の間に、共通の磁極が形成される。なお、複数のボンド磁石61、62は、周方向でS極とN極とが交互に現れる態様で配置される。なお、本実施例では、磁極数が8つであるが、磁極数は任意である。
なお、図1には、特定の構造を有するモータ1が示されるが、モータ1の構造は、かかる特定の構造に限定されない。例えば、図1では、ロータシャフト34は、中空であるが、中実であってもよい。
次に、図3以降を参照して、ロータコア32及びボンド磁石61、62を更に説明する。以下では、ある一の磁極に係る構成について説明するが、他の磁極に係る構成についても同様であってよい。
図3は、図2に示した一の磁極に係る部分の拡大図である。一の磁極に係る構成は、基本的に、d軸に関して対称である。以下では、周方向外側とは、d軸から離れる側を指す。
ロータコア32には、径方向外側の磁石孔321(以下、「第1磁石孔321」とも称する)と、径方向内側の磁石孔322(以下、「第2磁石孔322」とも称する)とが、形成される。
第1磁石孔321は、2つが対となって略V字状(径方向外側が開く態様の略V字状)に形成される。ただし、変形例では、第1磁石孔321は、2つが対となって直線状に形成されてもよいし、1つだけが直線状(d軸に垂直な直線状)に形成されてもよい。第1磁石孔321のそれぞれには、ボンド磁石61が設けられる。なお、第1磁石孔321には、ボンド磁石61の長手方向両端部において隙間(空洞)が形成される。この隙間は、フラックスバリア部として機能する。本実施例では、フラックスバリア部に係る隙間には、非磁性体71が配置される。非磁性体71は、ボンド磁石61に隣接する態様で設けられる。例えば、ボンド磁石61の両側の非磁性体71のうちの、径方向外側の非磁性体71は、ボンド磁石61の径方向外側の端面に当接(この場合、面接触)する。非磁性体71は、フラックスバリア部全体を埋める態様で設けられてもよいし、フラックスバリア部の一部に空洞が残る態様で設けられてもよい。非磁性体71の更なる詳細は、後述する製造方法に関連して説明する。
第2磁石孔322は、第1磁石孔321よりも径方向内側に設けられる。第2磁石孔322は、2つが対となって略V字状(径方向外側が開く態様の略V字状)に形成される。なお、対の第2磁石孔322は、対の第1磁石孔321よりも周方向の延在範囲が広い。第2磁石孔322のそれぞれには、ボンド磁石62が設けられる。なお、第2磁石孔322には、ボンド磁石62の長手方向両端部において隙間(空洞)が形成される。この隙間は、フラックスバリア部として機能する。本実施例では、フラックスバリア部に係る隙間には、非磁性体72が配置される。非磁性体72は、ボンド磁石62に隣接する態様で設けられる。非磁性体72の構成自体は、上述した非磁性体71と同様であってよい。
ロータコア32は、このような第1磁石孔321及び第2磁石孔322を有することで、径方向にブリッジ部を介してのみ接続される3つの部位3211、3212、3213(以下、第1部位3211、第2部位3212、第3部位3213とも称する)を有する。
具体的には、第1部位3211は、第1磁石孔321よりも径方向外側に延在する。第1部位3211は、ロータコア32の外周面328の一部328Aを形成する。
第2部位3212は、第2磁石孔322と第1磁石孔321との間を通って周方向両側がロータコア32の外周面328まで延在する。第2部位3212は、第1部位3211の周方向両側において、ロータコア32の外周面328の一部を形成する。第2部位3212は、q軸磁束の磁路を形成する。具体的には、q軸磁束は、第2部位3212の一端から他端に向けて第2磁石孔322と第1磁石孔321との間を通って流れる。
第3部位3213は、第2磁石孔322よりも径方向内側を通って周方向両側がロータコア32の外周面328まで延在する。第3部位3213は、第2部位3212の周方向両側において、ロータコア32の外周面328の一部328Cを形成する。
また、ロータコア32は、このような3つの部位3211、3212、3213を有することで、3つの部位3211、3212、3213を繋ぐ複数のブリッジ部41、42、43、44を有する。
ブリッジ部41(以下、「第1ブリッジ部41」とも称する)は、第2部位3212に対して第1部位3211を径方向外側で支持する。第1ブリッジ部41は、第1部位3211の周方向両側(周方向外側)に対で設けられる。第1ブリッジ部41は、ロータコア32の外周面328と第1磁石孔321の間に延在する。
ブリッジ部42(以下、「第2ブリッジ部42」とも称する)は、第3部位3213に対して第2部位3212を径方向外側で支持する。第2ブリッジ部42は、第2部位3212の周方向両側(周方向外側)に対で設けられる。第2ブリッジ部42は、ロータコア32の外周面328と第2磁石孔322の間に延在する。
ブリッジ部43は、第2部位3212に対して第1部位3211をd軸上で支持する。
ブリッジ部44は、第3部位3213に対して第2部位3212をd軸上で支持する。
なお、ロータコア32におけるボンド磁石61、62に関連した構成は、任意であり、図2及び図3に示した構成に限られない。例えば、図2及び図3に示す例ではボンド磁石61が設けられるが、図4に示す変形例によるロータ30A(ロータコア32A)のように、ボンド磁石61は省略されてもよい。この場合、第1部位3211と第2部位3212とは一体化され、第1ブリッジ部41は実質的に存在しなくなる。あるいは、第3部位3213がq軸磁束の磁路となる態様で、更なるボンド磁石がボンド磁石62よりも径方向内側に配置されてもよい。
次に、上述したロータコア32(ロータコア32Aについても同様)の製造方法について詳説する。
図5は、本実施例のロータ30の製造方法の流れを概略的に示すフローチャートである。図6から図10は、図5に示す製造方法における特定の工程の説明図である。
本製造方法は、まず、ロータコア32のワークを準備する準備工程(ステップS500)を含む。なお、ロータコア32は、上述したように、磁石孔321、322を有する。図6は、準備工程で準備される初期のワーク(ロータコア32)を示す平面図である。図6Aは、図6のQ1部の拡大図である。準備工程の段階では、図6に示すように、磁石孔321、322には、何も配置されていない。
ついで、本製造方法は、非磁性体71、72を準備する準備工程(ステップS502)を含む。非磁性体71、72は、挿入対象の磁石孔321、322におけるフラックスバリア部に対応したサイズを有する。ただし、本製造方法では、非磁性体71、72は、挿入対象の磁石孔321、322におけるフラックスバリア部よりもわずかに大きいサイズを有する。図6Aには、磁石孔322内のうちの、上述したボンド磁石62となる空間部SC0と、その両側の他の空間部(フラックスバリア部となる空間部)SC1、SC2とが示されている。図6Aでは、図示の都合上、磁石孔322の孔縁部3221よりもわずかに内側に空間部SC0、SC1、SC2が図示されているが、孔縁部3221は、空間部SC0、SC1、SC2を境界付ける。
なお、空間部SC0の位置(境界等)は、設計上、決まる。この場合、例えば、空間部SC1に係るフラックスバリア部に配置される非磁性体72は、空間部SC1の断面形状(軸方向に垂直な平面で切断した際の断面形状、以下同様)よりも、わずかに大きい断面形状を有する。この際、空間部SC1に係るフラックスバリア部に配置される非磁性体72は、軸方向に視て、空間部SC1の断面形状と実質的に相似となる断面形状を有してよい。これは、他のフラックスバリア部に配置される各非磁性体71、72も同様である。
なお、空間部SC0の位置(境界等)は、設計上、決まる。この場合、例えば、空間部SC1に係るフラックスバリア部に配置される非磁性体72は、空間部SC1の断面形状(軸方向に垂直な平面で切断した際の断面形状、以下同様)よりも、わずかに大きい断面形状を有する。この際、空間部SC1に係るフラックスバリア部に配置される非磁性体72は、軸方向に視て、空間部SC1の断面形状と実質的に相似となる断面形状を有してよい。これは、他のフラックスバリア部に配置される各非磁性体71、72も同様である。
以下では、主に、空間部SC1に挿入される非磁性体72について説明するが、空間部SC2に挿入される非磁性体72や、磁石孔321の同様の空間部に挿入される非磁性体71についても同様である。
ついで、本製造方法は、磁石成型用治具(図示せず)にロータコア32(ワーク)をセットするセット工程(ステップS504)を含む。なお、磁石成型用治具は、ワークを上下で挟む上型及び下型を有する金型装置と、射出装置とを含んでよい。なお、金型装置及び射出装置は、射出成形機の型締め装置として実現されてもよい。
ついで、本製造方法は、磁石孔321、322のそれぞれの一部であるフラックスバリア部に係る空間部SC1、SC2に、非磁性体71、72を軸方向に引っ張る引張状態でそれぞれ挿入する挿入工程(ステップS506)を含む。図7は、挿入工程で挿入された非磁性体72の状態(磁石孔322における状態)を概略的に示す図である。なお、図7(後出の図9等も同様)に示す範囲は、図6Aの一部に対応する。図8は、挿入工程(及び後出の変形工程)の説明図であり、図7のラインA-Aに沿った断面視で、一の磁石孔322の空間部SC1に挿入される非磁性体72の様子が模式的に示されている。ここでは、非磁性体72に係る挿入工程について説明するが、非磁性体71についても同様であってよい。
空間部SC1に挿入される前の状態ST81では、非磁性体72は、ステップS502に関連して上述したように、断面形状が空間部SC1よりも大きい。従って、そのままの状態では、空間部SC1に挿入することが困難である。これに対して、治具800(図8に模式的に図示)により非磁性体72を軸方向に引っ張ると(状態ST82の矢印R82参照)、非磁性体72が軸方向に弾性的に伸びることで、断面形状が小さくなる。この引張状態(状態ST82参照)では、非磁性体72は、空間部SC1、SC2の断面形状と同じ又はそれよりもわずかに小さい断面形状とされてよい。これにより、非磁性体72を空間部SC1に挿入することが容易となる(状態ST83参照)。なお、この際、非磁性体72と、空間部SC1を境界付けるロータコア32の部分(孔縁部3221の部分)との間には、断面形状の相違に応じた隙間が形成される。
ついで、本製造方法は、非磁性体71、72の引張状態を解放することで、非磁性体71、72の断面形状を拡張する変形工程(ステップS508)を含む。非磁性体71、72の引張状態を解放すると、非磁性体71、72は、元の状態に戻ろうとし、それぞれの断面形状が空間部SC1、SC2の断面形状へと拡張される(非磁性体72について、図8の状態ST84参照)。なお、引張状態が解放された状態では、非磁性体71、72は、空間部SC1、SC2内にわずかに弾性変形した状態で収まる。図9は、空間部SC1内において引張状態が解放された一の非磁性体72を、軸方向視で模式的に示す図である。図9に示すように、非磁性体72は、磁石孔322内におけるボンド磁石材料が充填される空間部を境界付ける態様で、磁石孔322の孔縁部3221に当接する。このように、変形工程(ステップS508)は、非磁性体72を磁石孔322の孔縁部3221に当接させる当接状態を形成する工程(当接状態形成工程)として機能する。磁石孔322内におけるボンド磁石材料が充填される空間部は、空間部SC0に対応する。ただし、この段階では、依然としてわずかに弾性変形した状態の非磁性体71、72は、一部が空間部SC0にはみ出す態様で延在してもよい。例えば、非磁性体72は、空間部SC0に対向する側の一部が空間部SC0にはみ出す態様で延在してもよい。以下では、説明の都合上、磁石孔322内におけるボンド磁石材料が充填される空間部は、空間部SC0と一致するものとして、空間部SC0と同一視する。なお、この際、依然としてわずかに弾性変形した状態の非磁性体71、72は、磁石孔322の孔縁部3221のうちの、当接範囲を押圧してよい(非磁性体72について、図9の圧力p90参照)。
ついで、本製造方法は、射出成形機(図示せず)を利用して、磁石孔321、322における非磁性体71、72に隣接する部分に、ボンド磁石材料を充填する充填工程(ステップS510)を含む。充填工程(ステップS510)は、配向磁場を印加した状態で実行されてよい。図10は、空間部SC1内の一の非磁性体72に隣接する部分に、ボンド磁石材料90を充填している際の、非磁性体72が発生する力(反力等)の状態を、軸方向視で模式的に示す図である。ボンド磁石材料90が射出成形されると、射出圧に応じた流体圧でボンド磁石材料90が空間部SC0に充填される。この際、ボンド磁石材料90から非磁性体72が圧力を受けることで、非磁性体72がわずかに変形し(及びそれに伴い空間部SC0にはみ出す部分がなくなり)、空間部SC0全体にボンド磁石材料が広がることができる。なお、非磁性体72は、ボンド磁石材料90の射出圧に応じた反力(図10の圧力p91参照)を発生でき、空間部SC1へとボンド磁石材料が広がることはない。
ついで、本製造方法は、その他の後工程(ステップS520)を含む。後工程は、例えば、ステップS510で充填したボンド磁石材料90を硬化させることでボンド磁石61、62を形成する工程や、エンドプレート35A、35Bやロータシャフト34等を組み付ける工程等を含んでよい。
このようにして、本製造方法によれば、あらかじめ準備した非磁性体71、72を利用することで、射出成形により空間部SC1、SC2に同様の非磁性体を形成する場合に比べて、使用する射出成形機の数や種類を低減できる。すなわち、非磁性体用の射出成形と、ボンド磁石材料の射出成形との2種類の射出成形を行う場合とは異なり、製造装置(例えば磁石成型用治具)の構造の簡易化(及び低コスト化)を図ることができる。
なお、本製造方法では、挿入工程(ステップS506)及び変形工程(ステップS508)は、セット工程(ステップS504)の後に実行されているが、セット工程(ステップS504)の前に実行されてもよい。この場合、セット工程は、非磁性体71、72が組み付けられた状態のロータコア32(ワーク)を、磁石成型用治具(図示せず)にセットすることを含む。
ここで、比較例による製造方法と対比して、本製造方法の更なる効果について説明する。図11は、比較例による製造方法の説明図であり、本製造方法に係る図10と同様のビューで、一の磁石孔における非磁性体72’及びボンド磁石材料90の状態を示す。比較例では、空間部SC1に挿入される非磁性体72’は、その断面形状が空間部SC1と同じ又は空間部SC1よりも小さい点が、本実施例の非磁性体72(上述したように断面形状が空間部SC1よりも大きい)と異なる。
このような比較例では、非磁性体72’と磁石孔322の孔縁部3221との間の密着性が低くなり、図11に模式的に示すように、ボンド磁石材料90’が空間部SC1へと回り込むおそれがある。このようなボンド磁石材料90’の回り込みが発生すると、モータの磁気特性が劣化する。すなわち、フラックスバリア部にボンド磁石が浸入すると、ロータの磁束の流れが変化してしまい、モータの磁気特性が劣化する。
これに対して、本製造方法では、上述したように、非磁性体72(非磁性体71も同様、以下同じ)は、磁石孔322(磁石孔321も同様、以下同じ)内におけるボンド磁石材料が充填される空間部を境界付ける態様で、磁石孔322の孔縁部3221に当接する。特に、本実施例では、非磁性体72は、わずかに弾性変形した状態で空間部SC1、SC2に収容されるので、非磁性体72と磁石孔322の孔縁部3221との間の密着性が非常に高くなる。これにより、上述した比較例で生じる不都合(ボンド磁石材料90’の回り込み及びそれに起因したモータ1の磁気特性の劣化)を防止できる。
換言すると、本実施例によれば、ボンド磁石材料の射出圧を高めても、空間部SC1、SC2へのボンド磁石材料90の回り込み及びそれに起因したモータ1の磁気特性の劣化を防止できる。これにより、比較的流動性が低い(それ故に比較的高い射出圧で射出する必要がある)が磁気特性の良好なボンド磁石材料(例えば磁粉含有量の高いボンド磁石材料)を利用することも可能となり、モータ1の磁気特性を高めることも可能となる。
ところで、ボンド磁石材料の充填工程(ステップS510)では、加熱により流動化したボンド磁石材料が空間部SC0内に充填されるので、ボンド磁石材料に接する非磁性体71、72に熱が伝達される。
従って、本実施例においては、非磁性体71、72は、好ましくは、融点が比較的高い材料により形成される。具体的には、非磁性体71、72は、好ましくは、ボンド磁石材料の充填工程におけるボンド磁石材料の温度又はロータコア32の温度よりも有意に高い融点を有する。これにより、ボンド磁石材料の注入に必要な温度で射出成形が可能となり、生産性向上を図ることができる。また、ボンド磁石材料の充填工程中において、非磁性体72(非磁性体71も同様)が融けることがなく、上述した非磁性体72と磁石孔322の孔縁部3221との間の高い密着性を維持できる。
また、ボンド磁石材料の充填工程(ステップS510)では、射出圧に応じた力がボンド磁石材料から非磁性体71、72へと付与される。射出圧に応じた力は、非磁性体71、72をそれぞれブリッジ部41、42へと向かわせる方向の成分を含みうる。非磁性体71、72が受ける射出圧に応じた力のうちの、大部分がブリッジ部41、42へと伝達されると、ブリッジ部41、42における応力集中が生じやすくなる。この場合、ブリッジ部41、42における残留応力がモータ1の磁気特性に悪影響を及ぼしうる。また、ブリッジ部41、42の幅の増加等の対策を行う場合も、漏れ磁束の増加に起因してモータ1の磁気特性に悪影響を及ぼしうる。
従って、本実施例においては、非磁性体71、72は、好ましくは、ロータコア32の材料(例えば電磁鋼板)よりも弾性域が広くかつロータコア32の材料よりも弾性率の低い弾性体である。非磁性体71、72は、例えば熱硬化性の樹脂材料やゴム材料(例えばシリコンゴムやフッ素ゴム)等により形成されてよい。これにより、射出成形に起因した生じうる応力が、非磁性体71、72の変形により緩和されるので、ブリッジ部41、42における応力集中を低減できる。特に、ゴムは、ポアソン比が約0.5であり、射出成形時に受ける力と垂直方向に伸びるように変形するため、ブリッジ部41、42以外に応力を逃がすことができる。その結果、ブリッジ部41、42における残留応力等に起因した磁気特性の悪化を防止できる。換言すると、ボンド磁石材料の射出圧を高めても、ブリッジ部41、42における応力集中を低減できるので、比較的流動性が低いが磁気特性が良好なボンド磁石材料を利用することも可能となり、モータ1の磁気特性を高めることも可能となる。
次に、図12及び図13を参照して、他の実施例による製造方法について説明する。以下、区別のため、図5を参照して上述した製造方法を、「実施例1による製造方法」とも称し、図12及び図13を参照して以下で説明する製造方法を、「実施例2による製造方法」とも称する。
図12は、実施例2による製造方法の流れを概略的に示すフローチャートである。図13は、実施例2による製造方法における変形工程の説明図である。
実施例2による製造方法(以下、単に「本製造方法」とも称する)は、まず、ロータコア32のワークを準備する準備工程(ステップS500A)を含む。準備工程で準備するロータコア32のワークは、上述した実施例1による準備工程と同様であってよい。
ついで、本製造方法は、非磁性体71A、72Aを準備する準備工程(ステップS502A)を含む。非磁性体71A、72Aは、挿入対象の磁石孔321、322におけるフラックスバリア部に対応したサイズを有する。ただし、本製造方法により準備される非磁性体71A、72Aは、上述した実施例1による製造方法で準備される非磁性体71、72に対して、サイズが小さい点が異なる。具体的には、非磁性体71A、72Aは、挿入対象の磁石孔321、322におけるフラックスバリア部よりもわずかに小さいサイズを有する。例えば、空間部SC1に係るフラックスバリア部に配置される非磁性体72Aは、空間部SC1の断面形状よりも、わずかに小さい断面形状を有する。この際、空間部SC1に係るフラックスバリア部に配置される非磁性体72Aは、軸方向に視て、空間部SC1の断面形状と実質的に相似となる断面形状を有してよい。これは、他のフラックスバリア部に配置される各非磁性体71A、72Aも同様である。
また、上述した実施例1による製造方法で説明したように、非磁性体71A、72Aは、好ましくは、融点が比較的高い材料により形成される。具体的には、非磁性体71A、72Aは、好ましくは、ボンド磁石材料の充填工程におけるボンド磁石材料の温度又はロータコア32の温度よりも有意に高い融点を有する。また、非磁性体71A、72Aは、好ましくは、ロータコア32の材料(例えば電磁鋼板)よりも弾性域が広くかつ弾性率の低い弾性体である。
また、本製造方法により準備される非磁性体71A、72Aは、軸方向の力を受けると、軸方向に交差する方向に変形する態様の弾性を有する。なお、このような特性の弾性自体は、通常的な弾性体で実現できる。
以下では、主に、空間部SC1に挿入される非磁性体72Aについて説明するが、空間部SC2に挿入される非磁性体72Aや、磁石孔321の同様の空間部に挿入される非磁性体71Aについても同様である。
ついで、本製造方法は、磁石成型用治具(図示せず)にロータコア32(ワーク)をセットする工程(ステップS504A)を含む。ステップS504Aは、上述した実施例1による製造方法のステップS504と同じであってよい。
ついで、本製造方法は、磁石孔321、322のそれぞれの一部であるフラックスバリア部に係る空間部SC1、SC2に、非磁性体71A、72Aをそれぞれ挿入する挿入工程(ステップS506A)を含む。本製造方法では、上述したように、非磁性体71A、72Aは、挿入対象の磁石孔321、322におけるフラックスバリア部よりもわずかに小さいサイズを有する。従って、非磁性体71A、72Aの挿入が容易となる。また、本製造方法では、上述した実施例1による製造方法とは異なり、非磁性体71A、72Aを引張状態で挿入する必要はなく、挿入工程の簡易化を図ることができる。
ついで、本製造方法は、非磁性体71A、72Aを軸方向に押圧することで、非磁性体71A、72Aの断面形状を拡張する変形工程(ステップS508A)を含む。図13は、本製造方法による変形工程の説明図であり、断面視(図7のラインA-Aに沿った断面視と同様)で、一の磁石孔322の空間部SC1に挿入される非磁性体72Aの様子が模式的に示されている。ここでは、非磁性体72Aに係る変形工程について説明するが、非磁性体71Aについても同様であってよい。
図13では、治具801を利用して軸方向一方側から非磁性体72Aに軸方向の荷重(押圧力)F130が付与されている。この際、荷重F130に抗する荷重は、非磁性体72Aの軸方向他方側の治具(図示せず)により直接的に生成されてもよいし、非磁性体72Aの変形に伴いロータコア32から(磁石孔322内で)生成されてもよい。いずれの場合も、非磁性体72Aが、軸方向に交差する方向に弾性変形し(矢印R131参照)、非磁性体72Aの断面形状が拡張(増加)する。なお、拡張後の非磁性体72Aの断面形状は、上述した実施例1による製造方法における変形工程(ステップS508)による拡張後の非磁性体72の断面形状と同じ程度であってよい。従って、本製造方法の場合も、非磁性体72A(非磁性体71Aも同様、以下同じ)は、磁石孔322内におけるボンド磁石材料が充填される空間部SC0を境界付ける態様で、磁石孔322の孔縁部3221に当接できる。また、非磁性体72Aは、治具801からの押圧力によりわずかに弾性変形した状態となるので、非磁性体72Aと磁石孔322の孔縁部3221との間の密着性が非常に高くなる。これにより、図10を参照して上述した実施例1による製造方法と同様の効果を得ることができる。
ついで、本製造方法は、射出成形機(図示せず)を利用して、磁石孔321、322における非磁性体71A、72Aに隣接する部分に、ボンド磁石材料を充填する充填工程(ステップS510A)を含む。ステップS510Aは、非磁性体71A、72Aの断面形状を拡張する変形工程が実行された状態で実行される。例えば、充填工程中、治具801は、射出圧に起因して軸方向の位置が動かないように、軸方向の位置が固定されてもよい。射出成形自体は、上述した実施例1による製造方法のステップS510と同じであってよい。
ついで、本製造方法は、射出成形が終了すると、非磁性体71A、72Aの断面形状を拡張する変形工程を終了させる工程(ステップS512A)を含む。すなわち、非磁性体71A、72Aを軸方向に押圧する治具801を、非磁性体71A、72Aから退避させる。
なお、本製造方法では、ステップS512Aに後続して、磁石孔321、322から非磁性体71A、72Aを除去する除去工程(ステップS514A)を含んでもよい。すなわち、非磁性体71A、72Aは、あくまで本製造方法での“治具”として機能し、製品のモータ1の構成要素とはならない。この場合、モータ1のフラックスバリア部は、空洞となる。なお、ステップS514Aは、省略されてもよく、この場合、モータ1のフラックスバリア部には、非磁性体71A、72Aが配置された状態となる。
ついで、本製造方法は、その他の後工程(ステップS520A)を含む。ステップS520Aは、上述した実施例1による製造方法のステップS520と同じであってよい。なお、上述した除去工程(ステップS514A)は、後工程(ステップS520A)の一部の後で実行されてもよい。
本製造方法によっても、上述した実施例1による製造方法と同様の効果が得られる。特に本製造方法によれば、充填工程(射出成形)の際に、治具801を介して、射出圧に抗する外力を非磁性体71A、72Aに付与できる。すなわち、上述したように治具801からの軸方向の押圧力は、非磁性体71A、72Aの変形(軸方向に交差する方向の変形)を生じさせる。他方、射出圧は、かかる非磁性体71A、72Aの変形を抑制する方向に働く。よって、上述したように治具からの軸方向の押圧力は、射出圧に対しては抗力として機能する。その結果、射出圧に起因してボンド磁石材料から非磁性体71A、72Aが受ける力のうち、非磁性体71A、72Aを介してブリッジ部41、42に伝達される力(径方向外側に向かう力)を低減でき、ブリッジ部41、42における応力集中を低減できる。換言すると、ボンド磁石材料の射出圧を高めても、ブリッジ部41、42における応力集中を低減できるので、比較的流動性が低いが磁気特性が良好なボンド磁石材料を利用することも可能となり、モータ1の磁気特性を高めることも可能となる。
次に、図14から図17を参照して、他の実施例による製造方法について説明する。以下、上述した実施例1及び実施例2による製造方法との区別のため、図14から図15を参照して以下で説明する製造方法を、「実施例3による製造方法」とも称する。
図14は、実施例3による製造方法の流れを概略的に示すフローチャートである。図15は、準備工程の説明図であり、は、非磁性体72Bの一例を示す2面図である。なお、図15において、上側は、軸方向に視た平面図であり、下側は、軸方向に交差する方向に視た平面図である。図16は、変形工程の説明図であり、一の非磁性体72Bの切り欠き内に挿入治具802が通された状態を軸方向に視て示す平面図である。図17は、充填工程の説明図であり、一の非磁性体72Bの切り欠き720Bに挿入治具802が挿入された状態での充填工程中の状態を軸方向に視て示す平面図である。
実施例3による製造方法(以下、単に「本製造方法」とも称する)は、まず、ロータコア32のワークを準備する準備工程(ステップS500B)を含む。準備工程で準備するロータコア32のワークは、上述した実施例1による準備工程と同様であってよい。
ついで、本製造方法は、非磁性体71B、72Bを準備する準備工程(ステップS502B)を含む。本製造方法により準備される非磁性体71B、72Bは、軸方向の孔、又は、空間部SC0に対向する側とは逆側に開口する切り欠きを有する。図15の場合、非磁性体72Bは、切り欠き720Bを有する。切り欠き720Bは、図15に示すように、軸方向に貫通する態様で形成されてよい。
また、非磁性体72B(非磁性体71Bも同様)は、挿入対象の磁石孔322におけるフラックスバリア部に対応したサイズを有する。ただし、本製造方法により準備される非磁性体71B、72Bは、上述した実施例1による製造方法で準備される非磁性体71、72に対して、サイズが小さい点が異なる。具体的には、非磁性体71B、72Bは、外力が付与されない通常的な状態で、挿入対象の磁石孔321、322におけるフラックスバリア部よりもわずかに小さいサイズを有する。例えば、非磁性体72Bは、切り欠き720Bが通常的に開いた状態では、空間部SC1の断面形状よりも、わずかに小さい断面形状を有する。あるいは、非磁性体72Bは、切り欠き720Bが閉じた状態で、空間部SC1の断面形状よりも、わずかに小さい断面形状を有してもよい。これは、他のフラックスバリア部に配置される各非磁性体71B、72Bも同様である。
また、上述した実施例1による製造方法で説明したように、非磁性体71B、72Bは、好ましくは、融点が比較的高い材料により形成される。具体的には、非磁性体71B、72Bは、好ましくは、ボンド磁石材料の充填工程におけるボンド磁石材料の温度又はロータコア32の温度よりも有意に高い融点を有する。また、非磁性体71B、72Bは、好ましくは、ロータコア32の材料よりも弾性域が広くかつ弾性率の低い弾性体である。
以下では、主に、空間部SC1に挿入される非磁性体72Bについて説明するが、空間部SC2に挿入される非磁性体72Bや、磁石孔321の同様の空間部に挿入される非磁性体71Bについても同様である。
ついで、本製造方法は、磁石成型用治具(図示せず)にロータコア32(ワーク)をセットする工程(ステップS504B)を含む。ステップS504Bは、上述した実施例1による製造方法のステップS504と同じであってよい。
ついで、本製造方法は、磁石孔321、322のそれぞれの一部であるフラックスバリア部に係る空間部SC1、SC2に、非磁性体71B、72Bをそれぞれ挿入する挿入工程(ステップS506B)を含む。本製造方法では、上述したように、非磁性体72Bは、外力が付与されない通常的な状態で、挿入対象の磁石孔322におけるフラックスバリア部よりもわずかに小さいサイズを有する。これにより、非磁性体72Bを空間部SC1に挿入することが容易となる。また、本製造方法では、上述した実施例1による製造方法とは異なり、非磁性体71B、72Bを引張状態で挿入する必要はなく、挿入工程の簡易化を図ることができる。なお、非磁性体72Bが、切り欠き720Bを開いた状態では、フラックスバリア部よりも断面形状が大きくなるが、閉じた状態では、フラックスバリア部よりも断面形状がわずかに小さくなる場合は、切り欠き720Bを閉じた状態で挿入工程を行うことも可能である。この場合も、依然として、非磁性体72Bを空間部SC1に挿入することが容易となる。
挿入工程(ステップS506B)では、非磁性体72Bは、切り欠き720Bが空間部SC0に対向する側とは逆側に位置する(すなわちブリッジ部42に対向するように)挿入される。すなわち、挿入状態では、切り欠き720Bは、ブリッジ部42に対向する側が開口する。
ついで、本製造方法は、非磁性体71B、72Bの切り欠き(図15の非磁性体72Bの切り欠き720B参照)内に挿入治具802を挿入することで、非磁性体71B、72Bの断面形状を拡張する変形工程(ステップS508B)を含む。なお、挿入治具802は、非磁性材料により形成され、ロータコア32の軸方向全体にわたって延在(挿入)できる長さを有してよい。図16は、本製造方法による変形工程の説明図であり、軸方向に視て、一の磁石孔322の空間部SC1に挿入される非磁性体72Bの様子が模式的に示されている。ここでは、非磁性体72Bに係る変形工程について説明するが、非磁性体71Bについても同様であってよい。
図16では、切り欠き720Bを軸方向に貫通できる挿入治具802が利用される。この場合、軸方向一方側から、非磁性体72Bの切り欠き720Bに挿入治具802が軸方向に貫通することで、切り欠き720Bが開き(矢印R162参照)、非磁性体72Bの断面形状が拡張(増加)する。切り欠き720Bの断面形状と挿入治具802の断面形状との関係に依存して、非磁性体72Bの切り欠き720Bに挿入治具802が軸方向に貫通するだけでは、切り欠き720Bが開かない場合、挿入された挿入治具802が空間部SC0側へと移動されてよい。図16に示す例では、矢印R161で模式的に示すように、挿入治具802が空間部SC0側へと移動されている。これにより、切り欠き720Bが開くことで非磁性体72Bの断面形状が拡張(増加)する。
なお、拡張後の非磁性体72Bの断面形状は、上述した実施例1による製造方法における変形工程(ステップS508)による拡張後の非磁性体72の断面形状と同じ程度であってよい。従って、本製造方法の場合も、非磁性体72B(非磁性体71Bも同様、以下同じ)は、磁石孔322内におけるボンド磁石材料が充填される空間部SC0を境界付ける態様で、磁石孔322の孔縁部3221に当接できる。また、非磁性体72Bは、挿入治具802からの力(切り欠き720Bを開くための力)によりわずかに弾性変形した状態となるので、非磁性体72Bと磁石孔322の孔縁部3221との間の密着性が非常に高くなる。これにより、図10を参照して上述した実施例1による製造方法と同様の効果を得ることができる。
ついで、本製造方法は、射出成形機(図示せず)を利用して、磁石孔321、322における非磁性体71B、72Bに隣接する部分に、ボンド磁石材料を充填する充填工程(ステップS510B)を含む。ステップS510Bは、非磁性体71B、72Bの断面形状を拡張する変形工程が実行された状態で実行される。例えば、充填工程中、挿入治具802は、射出圧に起因して径方向の位置が動かないように、径方向の位置が固定されてもよい。射出成形自体は、上述した実施例1による製造方法のステップS510と同じであってよい。
ついで、本製造方法は、射出成形が終了すると、非磁性体71B、72Bの断面形状を拡張する変形工程を終了させる工程(ステップS512B)を含む。すなわち、非磁性体72B(非磁性体71Aも同様)の切り欠き720Bを貫通している挿入治具802を、非磁性体72Bから退避させる。
なお、本製造方法では、ステップS512Bに後続して、磁石孔321、322から非磁性体71B、72Bを除去する除去工程(ステップS514B)を含んでもよい。すなわち、非磁性体71B、72Bは、あくまで本製造方法での“治具”として機能し、製品のモータ1の構成要素とはならない。この場合、モータ1のフラックスバリア部は、空洞となる。なお、ステップS514Bは、省略されてもよく、この場合、モータ1のフラックスバリア部には、磁性体71B、72Bが配置された状態となる。なお、除去工程(ステップS514B)が後工程(ステップS520B)の一部の後で実行されてもよいことは、上述した実施例2による製造方法と同様である。
ついで、本製造方法は、その他の後工程(ステップS520B)を含む。ステップS520Bは、上述した実施例1による製造方法のステップS520と同じであってよい。
本製造方法によっても、上述した実施例1による製造方法と同様の効果が得られる。特に本製造方法によれば、充填工程(射出成形)の際に、挿入治具802を介して、射出圧に抗する外力を非磁性体71B、72Bに付与できる。すなわち、上述したように挿入治具802は、非磁性体71B、72Bの径方向外側(ブリッジ部41、42に向かう方向)への変位を規制できる。他方、射出圧は、非磁性体71B、72Bを、径方向外側(ブリッジ部41、42に向かう方向)へと変位させる方向に作用する。従って、挿入治具802は、射出圧に起因した押圧力(非磁性体71B、72Bに作用する径方向外側への押圧力)に対する抗力(図17の力F170参照)を外力により発生できる。その結果、射出圧に起因してボンド磁石材料から非磁性体71B、72Bが受ける力のうち、非磁性体71B、72Bを介してブリッジ部41、42に伝達される力(径方向外側に向かう力)を低減でき、ブリッジ部41、42における応力集中を低減できる。換言すると、ボンド磁石材料の射出圧を高めても、ブリッジ部41、42における応力集中を低減できるので、比較的流動性が低いが磁気特性が良好なボンド磁石材料を利用することも可能となり、モータ1の磁気特性を高めることも可能となる。
なお、本製造方法では、図15に示すような切り欠き720Bを有する非磁性体72Bが利用されるが、上述したように、切り欠き720Bに代えて、軸方向の孔(軸方向に交差する方向に開口しない形態の孔)が利用されてもよい。この場合、軸方向の孔の開口形状を、挿入治具802の断面形状よりも小さくすることで、上述した変形工程を実現してもよい。あるいは、軸方向の孔の開口形状が、挿入治具802の断面形状と同じ又はそれよりも大きい場合、充填工程中に、挿入治具802を非磁性体72Bの軸方向の孔に貫通した挿入状態で、挿入治具802を空間部SC0に向かう側に移動(変位)させることとしてもよい。この場合も、非磁性体72Bは、磁石孔322内におけるボンド磁石材料が充填される空間部SC0を境界付ける態様で、磁石孔322の孔縁部3221に当接できるので、同様の効果を得ることができる。
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
1・・・モータ(回転電機)、30・・・ロータ(回転電機用ロータ)、32、32A・・・ロータコア、321、322・・・磁石孔、3221・・・孔縁部、71、72、71A、72A、71B、72B・・・非磁性体、720B・・・切り欠き、61、62・・・ボンド磁石、801・・・治具、802・・・挿入治具、
Claims (8)
- 磁石孔を有する回転電機用ロータコアのワークを準備する工程と、
前記磁石孔内の一部に、非磁性体を挿入する挿入工程と、
前記挿入工程の後に、前記非磁性体を変形又は変位させることで、前記非磁性体を前記磁石孔の孔縁部に当接させる当接状態を形成する当接状態形成工程と、
前記当接状態形成工程により形成された前記当接状態で、前記磁石孔内の前記非磁性体に隣接する部分に、磁石粉末と結合材とを混合したボンド磁石用の材料を充填する充填工程とを含み、
前記当接状態形成工程において、前記非磁性体は、前記磁石孔内における前記ボンド磁石用の材料が充填される空間を境界付ける態様で、前記磁石孔の孔縁部に当接する、回転電機用ロータの製造方法。 - 前記非磁性体は、軸方向の力を受けると、軸方向に交差する方向に変形する態様の弾性を有し、
前記挿入工程は、前記非磁性体を軸方向に引き伸ばす引張状態で実行され、
前記当接状態形成工程は、前記引張状態を解放することを含む、請求項1に記載の回転電機用ロータの製造方法。 - 前記非磁性体は、軸方向の力を受けると、軸方向に交差する方向に変形する態様の弾性を有し、
前記当接状態形成工程は、治具により前記非磁性体に軸方向の力を付与することを含む、請求項1に記載の回転電機用ロータの製造方法。 - 前記充填工程中、前記非磁性体に軸方向の力を付与することで、前記当接状態を維持する、請求項3に記載の回転電機用ロータの製造方法。
- 前記非磁性体は、軸方向の孔、又は、前記ボンド磁石用の材料が充填される空間に対向する側とは逆側に開口する軸方向の切り欠きを有し、かつ、前記軸方向の孔又は切り欠きに軸方向に挿入治具を挿入すると、軸方向に交差する方向に変形するように構成され、
前記当接状態形成工程は、前記非磁性体の前記軸方向の孔又は切り欠きに軸方向に前記挿入治具を挿入することを含む、請求項1に記載の回転電機用ロータの製造方法。 - 前記非磁性体は、軸方向の孔、又は、前記ボンド磁石用の材料が充填される空間に対向する側とは逆側に開口する軸方向の切り欠きを有し、
前記当接状態形成工程は、前記非磁性体の前記軸方向の孔又は切り欠きに軸方向に挿入治具を挿入し、かつ、前記ボンド磁石用の材料が充填される空間に対向する側に、前記非磁性体を変位させることを含む、請求項1に記載の回転電機用ロータの製造方法。 - 前記充填工程中、前記挿入治具を介して、前記ボンド磁石用の材料が充填される空間に対向する側に向けて、射出圧に抗する外力を付与することで、前記当接状態を維持する、請求項5又は6に記載の回転電機用ロータの製造方法。
- 磁石孔を有するロータコアと、
前記磁石孔内に配置されるボンド磁石と、
前記磁石孔内において前記ボンド磁石に隣接する非磁性体とを備え、
前記非磁性体は、軸方向の孔、又は、前記ボンド磁石に対向する側とは逆側に開口する軸方向の切り欠きを有する、回転電機用ロータ。
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JP2022108275A JP2024007079A (ja) | 2022-07-05 | 2022-07-05 | 回転電機用ロータの製造方法及び回転電機用ロータ |
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JP2022108275A Pending JP2024007079A (ja) | 2022-07-05 | 2022-07-05 | 回転電機用ロータの製造方法及び回転電機用ロータ |
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JP (1) | JP2024007079A (ja) |
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2022
- 2022-07-05 JP JP2022108275A patent/JP2024007079A/ja active Pending
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