JP2023160306A - 光反応性オルガノポリシロキサン、その製造方法および光硬化性組成物 - Google Patents

光反応性オルガノポリシロキサン、その製造方法および光硬化性組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 アクリレート化合物等の重合性有機化合物との相溶性に優れ、大気下でも光硬化性を付与可能な光重合開始部位を有する光反応性オルガノポリシロキサンを提供すること。【解決手段】下記式(1)で表される構成単位比を有し、光重合開始部位を有する基を1~90質量%含有する光反応性オルガノポリシロキサン。(R13SiO1/2)a(R12SiO2/2)b(R1SiO3/2)c(SiO4/2)d(1)(式中、R1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基、または光重合開始部位を有する基であり、aは、0.1~0.8の数であり、bは、0~0.5の数であり、cは、0~0.5の数であり、dは、0.2~0.9の数であり、a+b+c+d=1を満たす。)【選択図】 なし

Description

本発明は、光反応性オルガノポリシロキサン、その製造方法および光硬化性組成物に関する。
光硬化性のコーティング組成物は、硬化時間が短く、低温で硬化可能なことから、透明プラスチック材料のコーティングに広く用いられている。
この基材であるプラスチック材料は、ガラスに比して表面硬度が低く、表面に傷を受けやすい。したがって、用いられる光硬化性コーティング膜には、耐擦傷性・耐摩耗性が求められる。
この点、特許文献1では、光重合開始剤およびシロキサン骨格を有する重合性化合物を含む光硬化性コーティング組成物が、優れた硬化性や耐候性、透明性を兼ね備えた光硬化性塗膜を与えることが報告されている。
また、光硬化性コーティング組成物を大気下で硬化させる場合、酸素によって塗膜の硬化が阻害されるため、大量の光重合開始剤を使用する必要がある。
一方で、光重合開始剤の添加量が増えると膜の架橋密度が低下するため、過剰な光重合開始剤の添加は耐擦傷性および耐摩耗性の悪化を引き起こす。しかも、光重合開始剤の添加量が多い場合、未反応の光重合開始剤のブリードアウトや、それに起因した塗膜の透明性悪化、黄変等が問題となる場合がある。
したがって、大気下でも塗膜の光硬化が可能で、かつ透明性の低下や黄変を引き起こさない光重合開始剤が求められている。
この点、特許文献2,3では、光重合開始部位をシリコーン骨格に結合させた界面活性光開始剤を用いた光硬化性コーティング組成物が提案されており、これらの硬化塗膜において表面の水接触角を大きくできることが報告されているが、膜硬度が改善されている傾向はない。また、一般的にシリコーン骨格の導入は、アクリル系塗料やアクリルウレタン系塗料への相溶性の低下を引き起こす。加えて、このような界面活性剤としての作用を有する光開始剤は、表面偏析による塗膜外観の悪化を引き起こす可能性があり、光開始剤の添加量を増量することは困難である。
特開2016-132713号公報 特許第5068413号公報 特許第4675461号公報
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、アクリレート化合物等の重合性有機化合物との相溶性に優れ、大気下でも光硬化性を付与可能な光重合開始部位を有する光反応性オルガノポリシロキサン、および透明性および耐擦傷性に優れ黄変の少ない硬化物を与える光硬化性組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、光重合開始部位が化学結合によって導入された特定の光反応性オルガノポリシロキサンが、アクリレート化合物等の重合性有機化合物に対して優れた相溶性を示し、大気下でも光硬化性を付与可能な光重合開始剤となること、ならびに、本発明の光反応性オルガノポリシロキサンを含む光硬化性組成物が、透明性および耐擦傷性に優れ黄変の少ない硬化物を与えることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
1. 下記式(1)で表される構成単位比を有し、光重合開始部位を有する基を1~90質量%含有する光反応性オルガノポリシロキサン、
(R1 3SiO1/2a(R1 2SiO2/2b(R1SiO3/2c(SiO4/2d (1)
(式中、R1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基、または光重合開始部位を有する基であり、aは、0.1~0.8の数であり、bは、0~0.5の数であり、cは、0~0.5の数であり、dは、0.2~0.9の数であり、a+b+c+d=1を満たす。)
2. 前記光重合開始部位を有する基が、下記式(2)~(7)で表されるいずれかの基である1の光反応性オルガノポリシロキサン、
Figure 2023160306000001
〔式中、R4は、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基を表し、R5は、水素原子、または置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基を表し、R6は、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリーレン基を表し、R7は、ハロゲン原子、または置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基を表し、R8は、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基、または-R6-SiR2 (3-n)3 nで表される基(R2は、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基を表し、R3は、それぞれ独立して、水酸基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、またはハロゲン原子を表し、R6は、前記と同じ意味を表し、nは、1~3の整数を表す。)を表し、Xは、単結合、または置換基を有していてもよく、鎖中に、エーテル構造、エステル構造、アミド構造、ウレタン構造、ウレア構造、スルフィド構造またはスルホキシド構造を含んでいてもよい炭素原子数1~20のアルキレン基を表し、破線は、ケイ素原子との結合手を表す。〕
3. 前記光重合開始部位を有する基を15~80質量%含有する1または2の光反応性オルガノポリシロキサン、
4. 前記aが、0.3~0.7の数であり、前記bが、0~0.2の数であり、前記cが、0~0.2の数であり、前記dが、0.3~0.7の数である1の光反応性オルガノポリシロキサン、
5. 前記bおよびcが、0である1の光反応性オルガノポリシロキサン、
6. 下記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンに対し、下記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物のうち1種以上を反応させる工程を有する光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法であって、
下記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物の割合が、下記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび下記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物の合計に対し1~90質量%である光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法、
(R9 3SiO1/2a(R9 2SiO2/2b(R9SiO3/2c(SiO4/2d (8)
(式中、R9は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基、または水素原子を表し、aは、0.1~0.8の数であり、bは、0~0.5の数であり、cは0~0.5の数であり、dは、0.2~0.9の数であり、a+b+c+d=1を満たす。)
Figure 2023160306000002
〔式中、R4は、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基を表し、R5は、水素原子、または置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基を表し、R6は、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリーレン基を表し、R7は、ハロゲン原子、または置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基を表し、R8は、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基、または-R6-SiR2 (3-n)3 nで表される基(R2は、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基を表し、R3は、それぞれ独立して、水酸基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、またはハロゲン原子を表し、R6は、前記と同じ意味を表し、nは、1~3の整数を表す。)を表し、Yは、置換基を有していてもよく、鎖中に、エーテル構造、エステル構造、アミド構造、ウレタン構造、ウレア構造、スルフィド構造またはスルホキシド構造を含んでいてもよい炭素原子数2~20のアルケニル基もしくは炭素原子数1~20のヒドロキシアルキル基を表す。〕
7. 前記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物の割合が、前記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび前記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物の合計に対して15~80質量%である6の光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法、
8. 前記aが、0.3~0.7の数であり、前記bが、0~0.2の数であり、前記cが、0~0.2の数であり、前記dが、0.3~0.7の数である6の光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法、
9. 前記bおよびcが、0である6の光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法、
10. 前記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンに対し、前記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物のうち1種以上をヒドロシリル化反応させる工程を含み、
前記Yが、置換基を有していてもよく、鎖中に、エーテル構造、エステル構造、アミド構造、ウレタン構造、ウレア構造、スルフィド構造またはスルホキシド構造を含んでいてもよい炭素原子数2~20のアルケニル基である6の光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法、
11. 前記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンに対し、上記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物のうち1種以上を脱水素縮合反応させる工程を含み、
Yが、置換基を有していてもよく、鎖中に、エーテル構造、エステル構造、アミド構造、ウレタン構造、ウレア構造、スルフィド構造またはスルホキシド構造を含んでいてもよい炭素原子数1~20のヒドロキシアルキル基である6の光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法、
12. 脂肪族不飽和結合を有し光重合開始部位を有しない化合物を、前記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、または前記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと前記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物のうち1種以上との反応物とヒドロシリル化反応させる工程を含む6の光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法、
13. 水酸基を有し光重合開始部位を有しない化合物を、前記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、または前記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと前記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物のうち1種以上との反応物と脱水素縮合反応させる工程を含む6の光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法、
14. 1の光反応性オルガノポリシロキサンおよびラジカル重合性不飽和結合を有する化合物を含む光硬化性組成物、
15. 14の光硬化性組成物を硬化させてなる硬化物
を提供する。
本発明の光反応性オルガノポリシロキサンは、ポリシロキサン骨格に化学結合を介して光重合開始部位が導入されているため、光硬化性組成物に用いた際の光重合開始剤のブリードアウトを防止することができ、それに伴う塗膜の透明性および黄変の悪化を防ぐことができる。
また、本発明の光反応性オルガノポリシロキサンは、アクリレート化合物等の重合性有機化合物との相溶性に優れており、硬化性組成物への添加量を上げることができる。
加えて、ポリシロキサン骨格に結合した光重合開始部位を起点に重合性モノマーが重合を開始することで、ポリシロキサンが架橋点となって塗膜に組み込まれ、光重合開始剤による塗膜硬度の低下が防止できると共に、優れた大気下光硬化性を付与することができる。
以上のように、本発明の光反応性オルガノポリシロキサンを光硬化性組成物に添加することで、大気下において塗膜を効果的に硬化することができ、また優れた耐擦傷性、透明性、低黄変性が付与された硬化物を得ることができる。
実施例2-1~2-3および比較例2-1~2-3で作製した硬化膜の耐擦傷性と有効光開始剤含有量との関係を表す図である。 実施例2-1~2-3および比較例2-1~2-3で作製した硬化膜の初期Hzと有効光開始剤含有量との関係を表す図である。 実施例2-1~2-3および比較例2-1~2-3で作製した硬化膜のイエローインデックス(YI)と有効光開始剤含有量との関係を表す図である。
以下、本発明について具体的に説明する。
(1)光反応性オルガノポリシロキサン
本発明の光反応性オルガノポリシロキサンは、下記式(1)で表される構成単位比を有し、光重合開始部位を有する基を1~90質量%含有する。なお、本発明において、(R3SiO1/2)で表されるシロキサン単位をM単位、(R2SiO2/2)で表されるシロキサン単位をD単位、(RSiO3/2)で表されるシロキサン単位をT単位、(SiO4/2)で表されるシロキサン単位をQ単位という場合がある。
(R1 3SiO1/2a(R1 2SiO2/2b(R1SiO3/2c(SiO4/2d (1)
上記式(1)中において、R1の炭素原子数1~20、好ましくは炭素原子数1~5のアルキル基は、直鎖状、環状、分岐状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-ノナデシル、n-イコシル基等の直鎖または分岐状アルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基等のシクロアルキル基が挙げられ、これらの中でも炭素原子数1~3の直鎖状アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
1の炭素原子数6~20、好ましくは炭素原子数6~12のアリール基としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル基等が挙げられ、こられの中でもフェニル基が好ましい。
なお、これらのアルキル基およびアリール基は、置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、メトキシ、エトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;水酸基;シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
1の光重合開始部位を有する基に含まれる光重合開始部位としては、光を受けて励起し、ラジカル重合性基を含有する化合物に励起エネルギーを与えて硬化反応を開始させる構造であれば特に限定されない。その具体例としては、ベンジルケタール構造、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造、α-アミノアルキルフェノン構造、アシルフォスフィンオキサイド構造、ベンゾイル蟻酸構造、ベンゾイル蟻酸エステル構造、ベンゾフェノン構造、オキシムエステル構造、チタノセン構造、o-ベンゾイル安息香酸エステル構造、ベンゾイン構造、ベンゾインエーテル構造、キサントン構造、チオキサントン構造、ジスフィルド構造、キノン構造、ハロゲン化炭化水素、アミン類、有機過酸化物類等の構造が挙げられ、これらの構造の組み合わせでもよい。
本発明において、光重合開始部位を有する基としては、下記式(2)~(7)で表される基が好ましい。
Figure 2023160306000003
上記各式において、R4は、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基を表し、R5は、水素原子、または置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基を表し、R6は、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリーレン基を表し、R7は、ハロゲン原子、または置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基を表し、R8は、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基、または-R6-SiR2 (3-n)3 nで表される基(R2は、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基を表し、R3は、それぞれ独立して、水酸基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、またはハロゲン原子を表し、R6は、前記と同じ意味を表し、nは、1~3の整数を表す。)を表し、Yは、置換基を有していてもよく、鎖中に、エーテル構造、エステル構造、アミド構造、ウレタン構造、ウレア構造、スルフィド構造またはスルホキシド構造を含んでいてもよい炭素原子数2~20のアルケニル基もしくは炭素原子数1~20のヒドロキシアルキル基を表す。
4の置換基を有していてもよい炭素原子数6~20、好ましくは炭素原子数6~12のアリール基の具体例としては、フェニル、4-メトキシフェニル、4-ヒドロキシフェニル、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル、ビフェニル、ナフチル基等が挙げられるが、保存安定性や光重合性の観点から、フェニル基、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル基が好ましい。
5の置換基を有していてもよい炭素原子数1~20、好ましくは炭素原子数1~5のアルキル基としては、上記R1で例示した基と同様のアルキル基が挙げられ、その置換基も上述と同様の基が挙げられる。
5の置換基を有していてもよい炭素原子数6~20、好ましくは炭素原子数6~12のアリール基としては、上記R1で例示した基と同様のアリール基が挙げられ、その置換基も上述と同様の基が挙げられる。
これらの中でも、R5は、水素原子、フェニル基が好ましい。
6の置換基を有していてもよい炭素原子数6~20、好ましくは炭素原子数6~12のアリーレン基の具体例としては、フェニレン、メチルフェニレン、ジメチルフェニレン、ビフェニレン、ナフチレン基等が挙げられるが、フェニレン、ジメチルフェニレン基が好ましい。
7のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子等が挙げられる。
7の炭素原子数1~20、好ましくは炭素原子数1~5のアルキル基は、直鎖、分岐鎖、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロへキシル、n-ヘプチル、n-オクチル基等が挙げられる。
7の炭素原子数2~20、好ましくは炭素原子数2~10のアルケニル基は、直鎖、分岐鎖、環状のいずれでもよく、その具体例としては、ビニル、アリル、ブテニル、ヘキセニル、オクテニル基等が挙げられる。
7の炭素原子数6~20、好ましくは炭素原子数6~12のアリール基としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル基等が挙げられる。
なお、これらのアルキル基、アルケニル基およびアルケニル基は、置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、メトキシ、エトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;水酸基;シアノ基等が挙げられる。
また、アリール基も、置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、メチル、エチル基等のアルキル基;メトキシ、エトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;水酸基;シアノ基等が挙げられる。
これらの中でも、R7としては、フェニル基が好ましい。
8の置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基は、上記R4で例示したアリール基と同様の基が挙げられるが、フェニル基が好ましい。
また、R8は、-R6-SiR2 (3-n)3 nで表される基(R2は、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基を表し、R3は、それぞれ独立して、水酸基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、またはハロゲン原子を表し、R6は、上記と同じ意味を表し、nは、1~3の整数を表す。)であってもよい。
2の炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、および炭素原子数6~20のアリール基としては、上記R7で例示したアルキル基、アルケニル基、アリール基と同様の基が挙げられるが、中でも、立体障害の小さい炭素原子数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
3のハロゲン原子としては、上記R7で例示した原子と同様のものが挙げられる。
3の炭素原子数1~6のアルコキシ基は、その中のアルキル基が直鎖、分岐鎖、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ基等が挙げられる。
これらの中でも、安定性および反応性を考慮すると、R3はメトキシ基が好ましい。
nは1~3の整数であるが、反応性を考慮すると、2または3が好ましく、3がより好ましい。
Xは、単結合、または置換基を有していてもよく、鎖中に、エーテル結合、エステル構造、アミド構造、ウレタン構造、ウレア構造、スルフィド構造またはスルホキシド構造を含んでいてもよい炭素原子数1~20のアルキレン基を表す。
炭素原子数1~20のアルキレン基は、直鎖、分岐鎖、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、シクロへキシレン基等が挙げられる。
これらのアルキレン基は、炭素原子数が多い場合(炭素原子数8以上)では有機材料との相溶性が特に良好となり、炭素原子数が少ない場合(炭素原子数3以下)では硬化膜に導入した際の耐擦傷性の向上に特に効果的である。
なお、上記アルキレン基は、置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、メトキシ、エトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;水酸基;シアノ基等が挙げられ、また、それらの構造の一部に、エーテル構造、エステル構造、アミド構造、ウレタン構造、ウレア構造、スルフィド構造、スルホキシド構造等が介在していてもよい。
本発明の光反応性オルガノポリシロキサンは、光重合開始部位を有する基を1~90質量%、好ましくは10~85質量%、より好ましくは15~80質量%含有する。光重合開始部位を有する基が1質量%未満では光硬化性が不足する場合があり、90質量%を超えると、得られる硬化物の透明性の低下や黄変が発生する場合がある。
a、b、cおよびdは、a+b+c+d=1を満たす数である。
ここで、a(すなわちM単位の含有比)は、0.1~0.8の数であるが、0.3~0.7の数が好ましく、0.5~0.7の数がより好ましい。aが0.1未満であると、光反応性オルガノポリシロキサンの保存安定性およびアクリレート化合物等の重合性有機化合物との相溶性が不足する場合がある。一方、aが0.8を超えると、得られる硬化物の硬度が低下する場合がある。
b(すなわちD単位の含有比)は、0~0.5の数であるが、0~0.2の数が好ましく、0がより好ましい。bが0.5を超えると、得られる硬化物の硬度が低下する場合がある。
c(すなわちT単位の含有比)は、0~0.5の数であるが、0~0.2の数が好ましく、0がより好ましい。cが0.5を超えると、光反応性オルガノポリシロキサンとアクリレート化合物等の重合性有機化合物との相溶性が不足する場合がある。
d(すなわちQ単位の含有比)は、0.2~0.9の数であるが、0.3~0.7の数が好ましく、0.3~0.5の数がより好ましい。dが0.2未満であると、得られる硬化物の硬度が低下する場合がある。一方、dが0.9を超えると、光反応性オルガノポリシロキサンの保存安定性およびアクリレート化合物等の重合性有機化合物との相溶性が不足する場合がある。
なお、光反応性オルガノポリシロキサンの各構成単位の比は、例えば、29Si-NMR(核磁気共鳴)スペクトルを用いた公知の方法で確認することができる。
本発明の光反応性オルガノポリシロキサンの数平均分子量は、特に限定されるものではないが、1,000~30,000が好ましく、2,000~20,000がより好ましく、3,000~15,000がより一層好ましい。数平均分子量が20,000以下であれば、高粘度化が抑制され作業性がより良好なものとなり、保存安定性にも優れる。また、数平均分子量が1,000以上であれば、硬化性や得られる硬化物の硬度がより良好なものとなる。
なお、本発明における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いたポリスチレン換算値である(以下、同様)。
(2)光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法
次に、本発明の光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法の一例について詳細に説明する。
本発明の光反応性オルガノポリシロキサンは、下記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンに対し、下記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物のうち1種以上を、ヒドロシリル化反応または脱水素反応によって導入する工程を有する製造方法により得ることができる。
(R9 3SiO1/2a(R9 2SiO2/2b(R9SiO3/2c(SiO4/2d (8)
Figure 2023160306000004
(式中、R4、R5、R6、R7およびR8は、上記式(2)~(7)と同じ意味を表し、Yは、置換基を有していてもよく、鎖中に、エーテル構造、エステル構造、アミド構造、ウレタン構造、ウレア構造、スルフィド構造またはスルホキシド構造を含んでいてもよい炭素原子数2~20のアルケニル基もしくは炭素原子数1~20のヒドロキシアルキル基を表す。)
上記式(8)において、R9は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基、または水素原子であり、1分子中少なくとも1つは水素原子である。aは、0.1~0.8の数であり、bは、0~0.5の数であり、cは0~0.5の数であり、dは、0.2~0.9の数であり、a+b+c+d=1を満たす。
9の炭素原子数1~20、好ましくは炭素原子数1~5のアルキル基は、直鎖状、環状、分岐状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-ノナデシル、n-イコシル基等の直鎖または分岐状アルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基等のシクロアルキル基が挙げられ、これらの中でもメチル基が好ましい。
炭素原子数6~20、好ましくは炭素原子数6~12のアリール基としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
なお、これらのアルキル基およびアリール基は、置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、メトキシ、エトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;水酸基;シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子に結合する水素原子(Si-H基)は、ヒドロシリル化反応または脱水素縮合反応を用いて光重合開始部位を有する官能基を導入する際の反応点となる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン1分子中に含まれるR9の全数に対する水素原子の数は、後述するヒドロシリル化反応または脱水素縮合反応させる下記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物の割合が、下記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび下記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物の合計に対し1~90質量%、好ましくは10~85質量%、より好ましくは15~80質量%となるのに十分な数である。
a、b、cおよびdは、a+b+c+d=1を満たす数である。
ここで、a(すなわちM単位の含有比)は、0.1~0.8の数であるが、0.3~0.7の数が好ましく、0.5~0.7の数がより好ましい。aが0.1未満であると、光反応性オルガノポリシロキサンの保存安定性およびアクリレート化合物等の重合性有機化合物との相溶性が不足する場合がある。一方、aが0.8を超えると、光反応性オルガノポリシロキサンを用いて得られる硬化物の硬度が低下する場合がある。
b(すなわちD単位の含有比)は、0~0.5の数であるが、0~0.2の数が好ましく、0がより好ましい。bが0.5を超えると、光反応性オルガノポリシロキサンを用いて得られる硬化物の硬度が低下する場合がある。
c(すなわちT単位の含有比)は、0~0.5の数であるが、0~0.2の数が好ましく、0がより好ましい。cが0.5を超えると、光反応性オルガノポリシロキサンとアクリレート化合物等の重合性有機化合物との相溶性が不足する場合がある。
d(すなわちQ単位の含有比)は、0.2~0.9の数であるが、0.3~0.7の数が好ましく、0.3~0.5の数がより好ましい。dが0.2未満であると、得られる硬化物の硬度が低下する場合がある。一方、dが0.9を超えると、光反応性オルガノポリシロキサンの保存安定性およびアクリレート化合物等の重合性有機化合物との相溶性が不足する場合がある。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの数平均分子量は、特に限定されるものではないが、500~10,000が好ましく、800~7,000がより好ましく、1,000~5,000が更に好ましい。数平均分子量が10,000以下であれば、高粘度化が抑制され作業性がより良好なものとなり、保存安定性にも優れる。また、数平均分子量が500以上であれば、光反応性オルガノポリシロキサンの硬化性や得られる硬化物の硬度がより良好なものとなる。
本発明の光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法で用いられる原料のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、例えば、特開2017-75283号公報等に記載の公知の方法で製造することができる。
上記式(9)~(14)において、Yは、置換基を有していてもよく、鎖中に、エーテル構造、エステル構造、アミド構造、ウレタン構造、ウレア構造、スルフィド構造またはスルホキシド構造を含んでいてもよい炭素原子数2~20のアルケニル基もしくは炭素原子数1~20のヒドロキシアルキル基であり、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSi-H基と、ヒドロシリル化反応(アルケニル基の場合)または脱水素縮合反応(ヒドロキシアルキル基の場合)する基である。
炭素原子数2~20、好ましくは炭素原子数2~10のアルケニル基としては、ビニル、アリル、3-ブテニル、5-ヘキセニル、7-オクテニル、9-デセニル、11-ドデセニル基等が挙げられる。
炭素原子数1~20、好ましくは炭素原子数1~10のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル、5-ヒドロキシペンチル、6-ヒドロキシヘキシル、8-ヒドロキシオクチル基等が挙げられる。
これらのアルケニル基またはヒドロキシアルキル基は、炭素原子数が多い場合(炭素原子数8以上)では有機材料との相溶性が特に良好となり、炭素原子数が少ない場合(炭素原子数3以下)では硬化膜に導入した際の耐擦傷性の向上に特に効果的である。
なお、上記アルケニル基またはヒドロキシアルキル基は、構造中に不飽和結合や水酸基以外の置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、メトキシ、エトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;水酸基;シアノ基等が挙げられ、また、それらの構造の一部に、エーテル構造、エステル構造、アミド構造、ウレタン構造、ウレア構造、スルフィド構造、スルホキシド構造等が介在していてもよい。
本発明の光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法におけるヒドロシリル化反応では、上記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物中のアルケニル基と上記式(8)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSi-H基との反応を促進するために、触媒を添加することが好ましい。
ヒドロシリル化反応触媒としては、例えば、白金ブラック、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン,ビニルシロキサン,アセチレンアルコール等との錯体等が挙げられる。添加量は、所望する硬化速度に応じて適宜選択すればよいが、通常は反応に供する光重合開始部位を有する化合物の質量に対して白金族金属の質量換算で0.1~500ppmであり、好ましくは1~200ppmである。
ヒドロシリル化反応の条件は、特に制限はないが、反応温度20~120℃、反応時間1~8時間が好ましく、反応温度20~100℃、反応時間1~6時間がより好ましい。
本発明の光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法における脱水素縮合反応では、上記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物中のヒドロキシ基と上記式(8)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSi-H基との反応を促進するために、触媒を添加することが好ましい。
脱水素縮合反応触媒としては、例えば、パラジウム錯体、白金錯体、パラジウム炭素などの金属化合物、ジエチルヒドロキシアミン等の塩基性化合物、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等のルイス酸性化合物が挙げられる。触媒の添加量は、所望する硬化速度に応じて適宜選択すればよいが、通常は反応に供する光重合開始部位を有する化合物に対して0.05~2.0モル%であり、好ましくは0.1~1.0モル%である。
脱水素縮合反応に用いた触媒は、反応後に吸着剤等を用いた公知の手法によって取り除いてもよい。具体的には、ジエチルヒドロキシアミン等の塩基性化合物はキョーワード700(共和化学工業(株)製)等のアニオン交換樹脂を用いて吸着除去することができるし、パラジウム炭素などの固体系触媒は濾過によって除去することができる。
脱水素縮合反応の条件は、特に制限はないが、反応温度20~150℃、反応時間1~8時間が好ましく、反応温度20~120℃、反応時間1~6時間がより好ましい。
ヒドロシリル化反応または脱水素縮合反応させる上記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物の割合は、上記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび上記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物の合計に対し1~90質量%であり、好ましくは10~85質量%、より好ましくは15~80質量%である。光重合開始部位を有する化合物が1質量%未満では得られる光反応性オルガノポリシロキサンの光硬化性が不足する場合があり、90質量%を超えると、得られる硬化物の透明性の低下や黄変が発生する場合がある。
さらに、脂肪族不飽和結合または水酸基を有し、光重合開始部位を有しない化合物を、上記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンまたは上記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと上記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物との反応物とヒドロシリル化反応(該化合物が脂肪族不飽和結合を有する場合)または脱水素縮合反応(該化合物が水酸基を有する場合)させる工程を有していてもよい。
脂肪族不飽和結合または水酸基を有し光重合開始部位を有しない化合物としては、例えば、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、スチレン、アリルベンゼン等の脂肪族不飽和結合を有する化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、へプタノール、オクタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレンレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレンレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレンレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレンレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコール等の水酸基を有する化合物等が挙げられる。
これらの化合物を上記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンまたは上記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと上記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物との反応物と反応させ、アルキル基またはオキシアルキル基を導入することにより、光反応性オルガノポリシロキサンの保存安定性、粘度またはアクリレート化合物等との相溶性を調整することができる。
本発明の光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法では、有機溶媒を用いてもよい。
有機溶剤としては、副反応の発生や触媒の失活を防ぐために、非プロトン性の有機溶媒が好ましい。具体的には、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン等の芳香族炭化水素類などが挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(3)光硬化性組成物
上述した本発明の光反応性オルガノポリシロキサンは、ラジカル重合性不飽和結合を有する化合物と混合することで光硬化性組成物として用いることができる。
ラジカル重合性不飽和結合を有する化合物は、1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有する硬化反応可能なモノマーやオリゴマーであれば特に限定されない。
その具体例としては、(メタ)アクリレート化合物、スチレン化合物、マレイミド化合物、フマル酸エステル化合物、チオール化合物と不飽和結合を有する化合物の混合物などが挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリレート化合物は、単官能、多官能のいずれであってもよい。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(n=2~15)ジアクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2~15)ジアクリレート、ポリブチレングリコール(n=2~15)ジアクリレート、2,2-ビス(4-アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパンジアクリレート、ビス(2-アクリロキシエチル)-ヒドロキシエチル-イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ジペンタエリスリトールとε-カプロラクトンとの付加物のアクリレート化物)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、N-ビニルピロリドン、脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、脂肪族ポリエステルアクリレートオリゴマー等が挙げられる。
また、本発明の光硬化性組成物には、必要に応じて、上記光反応性オルガノポリシロキサン以外の光反応開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、溶剤等を本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。
上記光反応性オルガノポリシロキサン以外の光反応開始剤は、光を受けて励起し、ラジカル重合性基を含有する化合物に励起エネルギーを与えて紫外線照射による硬化反応を開始させるものである。
本発明の光硬化性組成物においては、上記光反応性オルガノポリシロキサンに光反応開始剤としての機能が備わっているため、必ずしもその他の光反応開始剤を添加する必要はないが、必要に応じて他の光反応開始剤を併用することで、表面硬化性、深部硬化性、可視光硬化性等の特性を制御することができる。
上記光反応性オルガノポリシロキサン以外の光反応開始剤としては、アセトフェノンおよびその誘導体、ベンゾフェノンおよびその誘導体、o-ベンゾイル安息香酸エステル、ベンゾインおよびその誘導体、ベンゾインエーテルおよびその誘導体、キサントンおよびその誘導体、ジスフィルド化合物、キノン化合物、ハロゲン化炭化水素、アミン類、有機過酸化物等が挙げられる。これらの中でも、相溶性、安定性の観点から、アセトフェノンおよびその誘導体、ベンゾフェノンおよびその誘導体、o-ベンゾイル安息香酸エステル、ベンゾインおよびその誘導体、ベンゾインエーテルおよびその誘導体、キサントンおよびその誘導体等の、置換または非置換のベンゾイル基を含有する化合物;有機過酸化物がより好ましい。
光反応開始剤の具体例としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキシド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、オキシフェニル酢酸、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキシド、ベンゾイルペルオキシド、クメンペルオキシド等が挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらの光反応開始剤の中でも、相溶性、光反応性の点から、アセトフェノン、プロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキシド;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム);オキシフェニル酢酸、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物が好ましい。
光反応開始剤を使用する場合、その配合量は、光硬化性組成物中の固形分100質量部に対して0.1~10質量部が好ましい。
重合禁止剤の具体例としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、フェノチアジン、ベンゾフロキサン、ニトロソベンゼン、2-メチル-2-ニトロソプロパンダイマー、N-t-ブチル-α-フェニルニトロン等が挙げられる。
重合禁止剤を使用する場合の添加量は、組成物中に使用する(メタ)アクリル基を有する有機ケイ素化合物の質量を基準にして100~10,000ppm程度である。
酸化防止剤は、組成物の硬化物の酸化を防止して、耐候性を改善するために使用することができ、例えば、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤が挙げられる。
ヒンダードアミン系酸化防止剤の具体例としては、N,N',N'',N'''-テトラキス-(4,6-ビス(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N'-ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミン)・N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合体、[デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジル)エステル、1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(70質量%)]-ポリプロピレン(30質量%)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケ-ト、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケ-ト、1-[2-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]-4-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ[4.5]デカン-2,4-ジオン等が挙げられる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、ペンタエリストール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレン-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N'-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオアミド)]、ベンゼンプロパン酸3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシC7-C9側鎖アルキルエステル、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート、3,3',3'',5,5',5''-ヘキサン-tert-ブチル-4-a,a',a''-(メシチレン-2,4,6-トリル)トリ-p-クレゾール、カルシウムジエチルビス[[[3,5-ビス-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート]、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、N-フェニルベンゼンアミンと2,4,4-トリメチルペンテンとの反応生成物、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
上記酸化防止剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
紫外線吸収剤は、耐光性安定剤であり、光劣化を防止して耐候性を改善するために使用される成分であり、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系等が挙げられる。
紫外線吸収剤の具体例としては、2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(直鎖および側鎖ドデシル)-4-メチルフェノール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール等のトリアジン系紫外線吸収剤;オクタベンゾン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤;上記成分がシリル基および/またはアクリル基で変性された有機化合物などが挙げられる。
上記紫外線吸収剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
光安定化剤は、硬化物の光酸化劣化を防止するために使用される成分であり、例えば、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物等が挙げられるが、ヒンダードアミン系化合物が好ましく、特に、組成物の保存安定性改良という点から、第3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤がより好ましい。
第3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤の具体例としては、チヌビン622LD,チヌビン144,チヌビン123、CHIMASSORB119FL(いずれも);MARKLA-57,LA-62,LA-67,LA-63(いずれも旭電化(株)製);サノールLS-765,LS-292,LS-2626,LS-1114,LS-744(いずれも三共(株)製)等が挙げられ、これらは1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
溶剤は、上記成分を溶解するまたは分散し得るものであれば特に限定されるものではないが、極性の高い有機溶剤が主溶剤であることが好ましい。
有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシル等のエステル類などが挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
溶剤の使用量は、本発明の光硬化性組成物の固形分濃度を1~80質量%、特に10~60質量%とする量が好ましい。この範囲外では組成物を塗布、硬化した塗膜に不具合が生じることがある。具体的には、上記範囲未満の濃度では塗膜にタレ、ヨリ、マダラが発生し易くなり、所望の硬度、耐擦傷性が得られない場合がある。また、上記範囲を超える濃度では、塗膜のブラッシング、白化、クラックが生じ易くなるおそれがある。
なお、本発明の光硬化性組成物は、上記添加物以外にも、必要に応じて、シリコーンレジン、レベリング剤、増粘剤、顔料、染料、金属粉、熱線反射・吸収性付与剤、可撓性付与剤、帯電防止剤、防汚性付与剤、撥水性付与剤等のその他の添加剤を本発明の目的や効果に悪影響を与えない範囲内で添加することができる。
例えば、レベリング剤として、信越化学工業(株)製「KP-341」、BYKChemie製「BYK-180」、「BYK-190」、共栄社化学(株)製「LE-604」等を使用することができる。
(4)硬化物
本発明の光硬化性組成物は、大気、窒素等の雰囲気下で紫外線を照射することによって、硬化させることができる。
反応可能な範囲の波長領域のランプとしては、例えば、ウシオ電機(株)製の高圧水銀ランプ(UV-7000)、メタルハライドランプ(MHL-250、MHL-450、MHL-150、MHL-70)、JMtech社製のメタルハライドランプ(JM-MTL2KW)、三菱電機(株)製の紫外線照射灯(OSBL360)、日本電池(株)製の紫外線照射機(UD-20-2)、(株)東芝製の蛍光ランプ(FL-20BLB)、Fusion社製のHバルブ、Hプラスバルブ、Dバルブ、Qバルブ、Mバルブ等が挙げられる。
照射量は、100~12,000mJ/cm2が好ましく、300~8,000mJ/cm2がより好ましく、500~6,000mJ/cm2がより一層好ましい。
(5)被覆物品
本発明の光硬化性組成物を、基材の少なくとも一方の面に、直接または少なくとも1種のその他の層を介して塗布し、それを上記の光照射によって硬化させて被膜を形成することで、被覆物品を得ることができる。
上記基材としては、特に限定されないが、プラスチック成形体、木材系製品、セラミックス、ガラス、金属、およびそれらの複合物等が挙げられる。
また、これらの基材の表面が処理されたもの、具体的には、化成処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、酸やアルカリ液等で処理されている基材や、基材本体と表層が異なる種類の塗料で被覆されている化粧合板等も用いることもできる。
特に、ポリカーボネート基材上に本発明の光硬化性組成物からなる硬化膜を形成させた場合、ポリカーボネートの耐擦傷性や耐候性を改善することが可能となる場合がある。
また、予めその他の機能層が形成された基材表面に、本発明の光硬化性組成物による被覆を施してもよい。
その他の機能層としては、プライマー層、防錆層、ガスバリア層、防水層、熱線遮蔽層等が挙げられ、これらの何れか一層または複数層が基材上に予め形成されていてもよい。
なお、被覆物品は、上記組成物からなる硬化膜が形成された面に、さらに、化学気相成長(CVD)法による蒸着層、ハードコート層、防錆層、ガスバリア層、防水層、熱線遮蔽層、防汚層、光触媒層、帯電防止層等の一層または複数層によって被覆されていてもよい。
さらに、被覆物品は、上記組成物からなる硬化膜が形成された面とは反対側の面が、ハードコート層、防錆層、ガスバリア層、防水層、熱線遮蔽層、防汚層、光触媒層、帯電防止層等の一層または複数層によって被覆されていてもよい。
光硬化性組成物の塗布方法としては、公知の手法から適宜選択すればよく、例えば、刷毛塗り、スプレー、浸漬、フローコート、ロールコート、カーテンコート、スピンコート、ナイフコート等の各種塗布方法を用いることができる。
本発明の被覆物品における、硬化膜の厚みには特に制限はなく、使用用途により適宜選択すればよいが、0.1~50μmが好ましく、硬化膜の硬さ、耐擦傷性、長期的に安定な密着性、およびクラックが発生しないことを満たすためには、1~20μmがより好ましい。膜厚は、塗工方法上の工夫によって適宜調整することができる。
本発明の被覆物品は、硬化膜の可視光透過性が特徴の一つである。
可視光透過性は、一般的に硬化膜の曇価(ヘイズ(Haze))で評価され、ヘイズが小さいほど可視光透過性が良好とされている。ヘイズは、濁度計NDH2000(日本電色工業(株)製)で測定した値を用いることができる。硬化膜のヘイズは、一般に膜厚が大きいほど大きくなる。
本発明の被覆物品においては、硬化膜の膜厚が20μm以下の状態において、ヘイズ2.0以下が好ましく、1.0以下がより好ましく、0.7以下がより一層好ましい。
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[1]光重合開始部位を有する化合物の製造
[合成例1]光重合開始部位を有する化合物(i)の合成
撹拌機および温度計を備えた500mLのガラス製反応器中で、ベンゾイル蟻酸メチル150g、3-ブテノール85g、パラトルエンスルホン酸一水和物6gを混合し、120℃で8時間還流した。その後、100℃で副生成物であるメタノールを留去した。溶液を冷却した後、トルエン200gを加え、水200gで水洗した。同様の水洗操作を3回行った後、トルエン層を減圧濃縮し、光重合開始部位を有する化合物(i)を得た。
Figure 2023160306000005
[合成例2]光重合開始部位を有する化合物(ii)の合成
撹拌機および温度計を備えた500mLのガラス製反応器中で、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキシド(IGM Resins B.V.社製、Omnirad TPO H)50g、N-ブロモスクシンイミド(NBS)37g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.6g、四塩化炭素500mLを混合した後、窒素下、80℃で3時間加熱撹拌した。反応液をろ過した後、ろ液を減圧留去して下記生成物(ii-1)を得た。
次いで、撹拌機および温度計を備えた500mLのガラス製反応器中で、上記で得られた生成物(ii-1)40g、酢酸銀20g、酢酸300gを混合し、100℃で3時間加熱撹拌した。反応液をろ過した後、イオン交換水500mLとトルエン500mLを加え、分液操作によって有機層を回収した。この際、500mLのイオン交換水で洗浄操作を2回繰り返した。その後、トルエンを減圧留去することで取り除き、ヘキサン:酢酸エチル(3:2)の混合液を展開溶媒としたカラムクロマトグラフィーによって生成物(ii-2)を得た。
さらに、撹拌機、温度計を備えた300mLのガラス製反応器中で、上記で得られた生成物(ii-2)10g、テトラヒドロフラン80mL、イオン交換水80mLを撹拌しながら濃塩酸20mLを滴下した。反応溶液を80℃で12時間加熱撹拌した後、反応液をろ過し、イオン交換水300mLとトルエン300mLを加え、分液操作によって有機層を回収した。この際、300mLのイオン交換水で洗浄操作を2回繰り返した。その後、溶剤を減圧留去することで取り除き、光重合開始部位を有する化合物(ii)を得た。
Figure 2023160306000006
[2]光反応性オルガノポリシロキサンの調製
[実施例1-1]
(1)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合成工程
撹拌機および温度計を備えた500mLのガラス製反応器中で1,1,2,2-テトラメチルジシロキサン84g、イソプロピルアルコール56g、イオン交換水56g、濃塩酸122gを混合し、混合液の温度を-5℃まで冷却した後、撹拌しながらエチルシリケート40(コルコート(株)製)114gを滴下した。混合液を16時間撹拌した後、トルエン122gを反応液に加え、30分間撹拌した後、60分間静置した。分離した水層を回収した後、イオン交換水122gを反応液に加え、30分間撹拌した後、60分間静置し、分離した水層を回収した。同様の水洗操作を3回繰り返すことで酸性成分を取り除いた。得られた溶液中の揮発性成分を減圧留去によって取り除き、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(HMQ-1、M単位/Q単位=1.6)を得た。
(2)ヒドロシリル化による光重合開始部位の導入工程
合成例1で得られた光重合開始部位を有する化合物(i)9.0g、白金触媒(CAT-PL-50T、信越化学工業社製)0.1gを100mlのガラス製反応容器に加え撹拌した。窒素雰囲気下で、上記で得られたオルガノハイドロジェンポリシロキサン(HMQ-1)5.0gとトルエン5.0gとの混合溶液を加え、60℃で3時間撹拌を継続した。得られた溶液中に含まれる揮発性成分を減圧留去によって取り除くことで液状の光反応性オルガノポリシロキサン(I)を得た。
[実施例1-2]
(1)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合成工程
撹拌機および温度計を備えた500mLのガラス製反応器中で1,1,2,2-テトラメチルジシロキサン8g、1,1,1,2,2,2-ヘキサメチルジシロキサン91g、イソプロピルアルコール56g、イオン交換水56g、濃塩酸122gを混合し、混合液の温度を-5℃まで冷却した後、撹拌しながらエチルシリケート40(コルコート(株)製)114gを滴下した。混合液を16時間撹拌した後、トルエン122gを反応液に加え、30分間撹拌した後、60分間静置した。分離した水層を回収した後、122gのイオン交換水を反応液に加え、30分間撹拌した後、60分間静置し、分離した水層を回収した。同様の水洗操作を3回繰り返すことで酸性成分を取り除いた。得られた溶液中の揮発性成分を減圧留去によって取り除き、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(HMQ-2、M単位/Q単位=1.6)を得た。
(2)ヒドロシリル化による光重合開始部位の導入工程
合成例1で得られた光重合開始部位を有する化合物(i)0.9g、白金触媒(CAT-PL-50T、信越化学工業(株)製)0.1gを100mlのガラス製反応容器に加え撹拌した。窒素雰囲気下、上記で得られたオルガノハイドロジェンポリシロキサン(HMQ-2)5.0gとトルエン5.0gとの混合溶液を加え、60℃で3時間撹拌を継続した。得られた溶液を中に含まれる揮発性成分を減圧留去によって取り除くことで液状の光反応性オルガノポリシロキサン(II)を得た。
[実施例1-3]
実施例1-1のヒドロシリル化による光重合開始部位の導入工程において、光重合開始部位を有する化合物(i)の添加量を6gに変更し、さらに1-へキセン1.2gを加えた以外は、実施例1-1と同様の手順で、液状の光反応性オルガノポリシロキサン(III)を得た。
[実施例1-4]
合成例2で得られた光重合開始部位を有する化合物(ii)16.1g、ジエチルヒドロキシアミン0.02g(DEHA)、トルエン10gを100mlのガラス製反応容器に加え撹拌した。窒素雰囲気下、上記で得られたオルガノハイドロジェンポリシロキサン(HMQ-1)5.0gとトルエン5.0gとの混合溶液を加え、10時間加熱還流を継続し、脱水素縮合反応を行った。得られた溶液を室温まで冷却し、キョーワード700(協和化学工業(株)製)0.2gを添加して1時間撹拌した。濾過によって固形物を除去した後、溶液中に含まれる揮発性成分を減圧留去によって取り除くことで液状の光反応性オルガノポリシロキサン(IV)を得た。
[実施例1-5]
実施例1-4において、光重合開始部位を有する化合物(ii)を1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(下記式(iii)、IGM Resins B.V.社製、OMNIRAD 2959)9.9gに変更した以外は、実施例1-4と同様の手順で、液状の光反応性オルガノポリシロキサン(V)を得た。
Figure 2023160306000007
[比較例1-1]
撹拌機および温度計を備えた500mLのガラス製反応器中で1,1,1,2,2,2-ヘキサメチルジシロキサン101g、イソプロピルアルコール56g、イオン交換水56g、濃塩酸122gを混合し溶液温度を-5℃まで冷却した後、エチルシリケート40(コルコート(株)製)114gを滴下した。混合液を16時間撹拌した後、トルエン122gを反応液に加え、30分間撹拌した後、60分間静置した。分離した水層を回収した後、イオン交換水122gを反応液に加え、30分間撹拌した後、60分間静置し、分離した水層を回収した。同様の水洗操作を3回繰り返すことで酸性成分を取り除いた。得られた溶液中の揮発性成分を減圧留去によって取り除き、液状のオルガノポリシロキサン(VI)を得た(M/Q=1.6)。
上記実施例および比較例で得られたポリシロキサンの物性を表1に示す。なお、表1における光重合開始部位含有率は、[光重合開始部位を有する化合物の添加量]/[オルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量+光重合開始部位を有する化合物の添加量]×100(質量%)として算出した。
また、本発明における数平均分子量は、展開溶媒にテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定したポリスチレン換算値である。なお、サンプルはポリシロキサン濃度が0.5質量%となるようにTHFで希釈した溶液を用いた。
Figure 2023160306000008
[3]光硬化性組成物の調製
[実施例2-1~2-7、比較例2-1~2-5]
アクリレート化合物として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)80質量部および1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)20質量部、ならびに溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)70質量部を混合した溶液に、表2に示す配合量(質量部)で、実施例1-1~1-5、比較例1-1で得られたオルガノポリシロキサン(I~VI)、ベンゾイル蟻酸メチルまたは2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(IGM Resins B.V.社製、Omnirad 1173)を混合し、光硬化性組成物を調製した。
なお、光重合開始部位含有量は、ポリシロキサンの配合量×光重合開始部位含有率/100から算出した。
また、ポリシロキサン含有量は、ポリシロキサンの配合量から上記光重合開始部位含有量を除いた量である。
Figure 2023160306000009
上記実施例2-1~2-7および比較例2-1~2-5で得られた光硬化性組成物を、ポリカーボネート板(厚さ5mm、製品名タキロンPCクリア-1600型:タキロンシーアイ社製)上にフローコートした後、25℃で5分乾燥し、さらに80℃で5分加熱した後に、高圧水銀灯を用い、大気雰囲気下で600mJ/cm2(波長300~390nmの紫外線積算エネルギー、岩崎電気(株)製アイ紫外線積算照度計UVPF-A1(PD-365)にて測定)の紫外線を照射することにより、膜厚約15μmの硬化膜を調製し、硬化性の評価を行った。また、硬化膜の物性(ヘイズ、イエローインデックス、耐擦傷性)の評価は、1800mJ/cm2の紫外線照射により硬化した塗膜に対して行った。結果を表3~表5に示す。
[硬化性]
所定のエネルギーの紫外線を照射した際に塗膜が硬化した場合を「○」、未硬化であった場合を「×」として評価した。
[初期ヘイズ(Hz)]
ヘイズメーター(NDH5000SP:日本電色工業(株)製)を用いて測定した。ヘイズの値が高いほど透明性に乏しく、通常、1%以上では肉眼でも僅かな濁りが見られる。
[イエローインデックス(YI)]
色度計Z-300A(日本電色工業(株)製)を用いた透過光測定によって測定した。YIの値が高いほど黄色が強く、通常、1以上では肉眼でも黄色を判別できる。
[耐擦傷性(ΔHz)]
ASTM 1044に準じ、テーバー摩耗試験にて摩耗輪SC-10Fを装着し、荷重500gfでの500回転後のヘイズをヘイズメーター(NDH5000SP:日本電色工業(株)製)を用いて測定し、摩耗試験前の値との差(%ポイント)を算出した。
Figure 2023160306000010
Figure 2023160306000011
Figure 2023160306000012
表3~5に示されるように、光硬化組成物の硬化膜物性について、本発明の要件を満たす実施例2-1~2-7では、比較例2-1~2-5と比較して、有効光開始剤含有量が同じである場合には、いずれもより透明性・低黄変性に優れた塗膜を得ることができていることがわかる。特に、実施例2-1や実施例2-4のような有効光開始剤含有量が少ない系においても、少ない光照射エネルギーで良好な硬化性を示すことがわかる。比較例2-1の一般的な光開始剤を等量添加した系では、少ない光照射エネルギーでは硬化せず、比較例2-5のような光重合開始部位を全く含まない系でも同様に光照射によって全く硬化する挙動が見られなかったことから、本発明で得られる化合物は優れた大気下硬化性を示すことが示唆された。
また、耐擦傷性と有効光開始剤含有量との関係を表した図1から、本発明の光反応性オルガノポリシロキサンは、その添加量の増加に伴って効果的に耐摩耗性が改善するのに対して、比較例の一般的な光開始剤を添加した系ではその改善効果が小さいことがわかる。これは、本発明の光反応性オルガノポリシロキサンは、ポリシロキサンに対して複数の光重合開始部位が結合しているため、ポリシロキサンが架橋点として塗膜構造に組み込まれ、塗膜の架橋密度が向上したことで耐擦傷性が効果的に改善したことを示唆している。
さらに、初期Hzと有効光開始剤含有量との関係を表した図2から、本発明の光反応性オルガノポリシロキサンは、その添加量を増加させても塗膜の透明性が大きく変化しないのに対し、比較例の一般的な光開始剤を添加した系では、添加量の増加に伴って大きく透明性が悪化することがわかる。これは、一般的な光開始剤を大量に添加した際には、未反応成分が多く存在し、塗膜の硬化が進行するにつれて上記成分が相分離した影響に起因したものと考えられる。本発明の光反応性オルガノポリシロキサンは、ポリシロキサンに対して複数の光重合開始部位が結合した構造を有しているため、未反応成分の相分離が抑制されたことで良好な透明性を示したものと推察される。
また、イエローインデックス(YI)と有効光開始剤含有量との関係を表した図3から、本発明の光反応性オルガノポリシロキサンは、その添加量を増加させても塗膜の黄変が大きく進行しないのに対し、比較例の一般的な光開始剤を添加した系では、添加量の増加に伴って大きく黄変が進行することがわかる。このような現象は、一般的な光開始剤を大量に添加した際に、その未反応成分や反応後成分の間で反応が生じ、黄変の原因である副生成物が多く発生することが要因と考えられる。本発明の化合物では、ポリシロキサンに対して複数の光重合開始部位が結合した構造を有しているため、未反応成分や反応後成分の運動性・拡散性が低下し、黄変の原因である副生成物発生が抑制されたことが示唆される。
以上のことから、本発明の要件を満たす化合物は、少量の有効光開始剤含有量であっても、大気下において塗膜を効果的に硬化することができ、また優れた透明性、低黄変性を付与することができることが示された。

Claims (15)

  1. 下記式(1)で表される構成単位比を有し、光重合開始部位を有する基を1~90質量%含有する光反応性オルガノポリシロキサン。
    (R1 3SiO1/2a(R1 2SiO2/2b(R1SiO3/2c(SiO4/2d (1)
    (式中、R1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基、または光重合開始部位を有する基であり、aは、0.1~0.8の数であり、bは、0~0.5の数であり、cは、0~0.5の数であり、dは、0.2~0.9の数であり、a+b+c+d=1を満たす。)
  2. 前記光重合開始部位を有する基が、下記式(2)~(7)で表されるいずれかの基である請求項1記載の光反応性オルガノポリシロキサン。
    Figure 2023160306000013
    〔式中、R4は、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基を表し、R5は、水素原子、または置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基を表し、R6は、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリーレン基を表し、R7は、ハロゲン原子、または置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基を表し、R8は、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基、または-R6-SiR2 (3-n)3 nで表される基(R2は、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基を表し、R3は、それぞれ独立して、水酸基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、またはハロゲン原子を表し、R6は、前記と同じ意味を表し、nは、1~3の整数を表す。)を表し、Xは、単結合、または置換基を有していてもよく、鎖中に、エーテル構造、エステル構造、アミド構造、ウレタン構造、ウレア構造、スルフィド構造またはスルホキシド構造を含んでいてもよい炭素原子数1~20のアルキレン基を表し、破線は、ケイ素原子との結合手を表す。〕
  3. 前記光重合開始部位を有する基を15~80質量%含有する請求項1または2記載の光反応性オルガノポリシロキサン。
  4. 前記aが、0.3~0.7の数であり、前記bが、0~0.2の数であり、前記cが、0~0.2の数であり、前記dが、0.3~0.7の数である請求項1記載の光反応性オルガノポリシロキサン。
  5. 前記bおよびcが、0である請求項1記載の光反応性オルガノポリシロキサン。
  6. 下記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンに対し、下記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物のうち1種以上を反応させる工程を有する光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法であって、
    下記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物の割合が、下記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび下記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物の合計に対し1~90質量%である光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法。
    (R9 3SiO1/2a(R9 2SiO2/2b(R9SiO3/2c(SiO4/2d (8)
    (式中、R9は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基、または水素原子を表し、aは、0.1~0.8の数であり、bは、0~0.5の数であり、cは0~0.5の数であり、dは、0.2~0.9の数であり、a+b+c+d=1を満たす。)
    Figure 2023160306000014
    〔式中、R4は、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基を表し、R5は、水素原子、または置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基を表し、R6は、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリーレン基を表し、R7は、ハロゲン原子、または置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基を表し、R8は、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基、または-R6-SiR2 (3-n)3 nで表される基(R2は、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基もしくは炭素原子数6~20のアリール基を表し、R3は、それぞれ独立して、水酸基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、またはハロゲン原子を表し、R6は、前記と同じ意味を表し、nは、1~3の整数を表す。)を表し、Yは、置換基を有していてもよく、鎖中に、エーテル構造、エステル構造、アミド構造、ウレタン構造、ウレア構造、スルフィド構造またはスルホキシド構造を含んでいてもよい炭素原子数2~20のアルケニル基もしくは炭素原子数1~20のヒドロキシアルキル基を表す。〕
  7. 前記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物の割合が、前記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび前記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物の合計に対して15~80質量%である請求項6記載の光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法。
  8. 前記aが、0.3~0.7の数であり、前記bが、0~0.2の数であり、前記cが、0~0.2の数であり、前記dが、0.3~0.7の数である請求項6記載の光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法。
  9. 前記bおよびcが、0である請求項6記載の光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法。
  10. 前記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンに対し、前記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物のうち1種以上をヒドロシリル化反応させる工程を含み、
    前記Yが、置換基を有していてもよく、鎖中に、エーテル構造、エステル構造、アミド構造、ウレタン構造、ウレア構造、スルフィド構造またはスルホキシド構造を含んでいてもよい炭素原子数2~20のアルケニル基である請求項6記載の光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法。
  11. 前記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンに対し、上記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物のうち1種以上を脱水素縮合反応させる工程を含み、
    Yが、置換基を有していてもよく、鎖中に、エーテル構造、エステル構造、アミド構造、ウレタン構造、ウレア構造、スルフィド構造またはスルホキシド構造を含んでいてもよい炭素原子数1~20のヒドロキシアルキル基である請求項6記載の光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法。
  12. 脂肪族不飽和結合を有し光重合開始部位を有しない化合物を、前記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、または前記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと前記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物のうち1種以上との反応物とヒドロシリル化反応させる工程を含む請求項6記載の光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法。
  13. 水酸基を有し光重合開始部位を有しない化合物を、前記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、または前記式(8)で表される構成単位比を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと前記式(9)~(14)で表される光重合開始部位を有する化合物のうち1種以上との反応物と脱水素縮合反応させる工程を含む請求項6記載の光反応性オルガノポリシロキサンの製造方法。
  14. 請求項1記載の光反応性オルガノポリシロキサンおよびラジカル重合性不飽和結合を有する化合物を含む光硬化性組成物。
  15. 請求項14記載の光硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
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