JP2023157399A - 一方向性繊維強化樹脂及び積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】薄型化を図りつつ、表面平滑性及び機械的強度を高いレベルで両立することができる、一方向性繊維強化樹脂を提供する。【解決手段】一方向に引き揃えられたガラス繊維ロービングに樹脂を含浸させてなる一方向性繊維強化樹脂であって、前記ガラス繊維ロービングは、長手方向に直交する方向に沿う断面形状が扁平状であり、かつ扁平比(長径/短径)が1.5以上である、複数本のガラスフィラメントによって構成されており、前記ガラス繊維ロービングの番手が、500tex以上、7500tex以下であり、水平方向に引き延ばした前記ガラス繊維ロービングの両端を、水平方向において2m離間して固定した状態で、前記ガラス繊維ロービングを解繊することによりモノフィラメント化したときに、水平方向に延びるガラスフィラメントに対して最も下方に垂れるガラスフィラメントまでの垂れ幅である糸長差が、10mm以上、100mm以下である、一方向性繊維強化樹脂。【選択図】なし
Description
本発明は、一方向に引き揃えられたガラス繊維ロービングに樹脂を含浸させてなる一方向性繊維強化樹脂及び該一方向性繊維強化樹脂を用いた積層体に関する。
従来、ガラス繊維とマトリクス樹脂とを複合化させた繊維強化樹脂は、自動車用部材や電気・電子部品などの様々な分野で利用されている。繊維強化樹脂としては、例えば、一方向に引き揃えられたガラス繊維ロービングに樹脂を含浸させてなる一方向性繊維強化樹脂や、あるいは複数の一方向性繊維強化樹脂が積層されてなる積層体が知られている。
例えば、下記の特許文献1には、一方向に並列した連続強化繊維中にポリアミド樹脂が含浸している材料が開示されている。特許文献1では、連続強化繊維の長手方向に垂直な断面は、長径(D2)/短径(D1)で表わされる扁平率が1.5以上の非円形であると記載されている。また、特許文献1では、上記連続強化繊維として、ガラス繊維が用いられることが記載されている。
近年、自動車用部材や電気・電子部品などの分野では、さらなる薄肉化が求められることが多く、一方向性繊維強化樹脂においてもより一層の薄型化が求められている。
しかしながら、一方向性繊維強化樹脂において、樹脂の添加量を少なくし薄型化を図ろうとすると、一方向性繊維強化樹脂の表面にガラス繊維が露出して、表面平滑性が低下し、外観が損なわれるという問題がある。一方、樹脂だけでなくガラス繊維の添加量も少なくして薄型化を図ろうとすると、十分な機械的強度が得られない場合がある。
なお、特許文献1の材料においても、薄型化を図ろうとすると、やはり表面平滑性及び機械的強度を高いレベルで両立することが難しいという問題がある。
本発明の目的は、薄型化を図りつつ、表面平滑性及び機械的強度を高いレベルで両立することができる、一方向性繊維強化樹脂及び該一方向性繊維強化樹脂を用いた積層体を提供することにある。
本発明に係る一方向性繊維強化樹脂は、一方向に引き揃えられたガラス繊維ロービングに樹脂を含浸させてなる一方向性繊維強化樹脂であって、前記ガラス繊維ロービングは、長手方向に直交する方向に沿う断面形状が扁平状であり、かつ扁平比(長径/短径)が1.5以上である、複数本のガラスフィラメントによって構成されており、前記ガラス繊維ロービングの番手が、500tex以上、7500tex以下であり、水平方向に引き延ばした前記ガラス繊維ロービングの両端を、水平方向において2m離間して固定した状態で、前記ガラス繊維ロービングを解繊することによりモノフィラメント化したときに、水平方向に延びるガラスフィラメントに対して最も下方に垂れるガラスフィラメントまでの垂れ幅である糸長差が、10mm以上、100mm以下であることを特徴としている。
本発明においては、前記ガラス繊維ロービングの強熱減量が、0.1質量%以上、1.5質量%以下であることが好ましい。
本発明においては、前記ガラス繊維ロービングを構成する前記ガラスフィラメントの円相当径が、8μm以上、30μm以下であることが好ましい。
本発明においては、前記ガラス繊維ロービングを構成する前記ガラスフィラメントの本数が、1200本以上、6000本以下であることが好ましい。
本発明においては、前記ガラス繊維ロービングの番手が、1000tex以上、4800tex以下であることが好ましい。
本発明においては、前記ガラス繊維ロービングにおける前記糸長差が、20mm以上、70mm以下であることが好ましい。
本発明においては、前記一方向性繊維強化樹脂中におけるガラスの含有量が、40質量%以上、90質量%以下であることが好ましい。
本発明に係る積層体は、本発明に従って構成される一方向性繊維強化樹脂からなる樹脂層を少なくとも2層以上備えることを特徴としている。
本発明においては、上層側の前記樹脂層におけるガラス繊維ロービングの引き揃え方向と、下層側の前記樹脂層におけるガラス繊維ロービングの引き揃え方向とのなす角度が、45°以上、90°以下であることが好ましい。
本発明によれば、薄型化を図りつつ、表面平滑性及び機械的強度を高いレベルで両立することができる、一方向性繊維強化樹脂及び該一方向性繊維強化樹脂を用いた積層体を提供することができる。
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
[一方向性繊維強化樹脂]
本発明の一方向性繊維強化樹脂は、一方向に引き揃えられたガラス繊維ロービングに樹脂を含浸させてなる繊維強化樹脂である。
本発明の一方向性繊維強化樹脂は、一方向に引き揃えられたガラス繊維ロービングに樹脂を含浸させてなる繊維強化樹脂である。
ガラス繊維ロービングは、複数本のガラスフィラメントが集束されることにより構成されている。ガラス繊維ロービングを構成するガラスフィラメント(モノフィラメント)の本数は、特に限定されないが、好ましくは1200本以上、より好ましくは3500本以上であり、好ましくは6000本以下、より好ましくは5500本以下である。ガラスフィラメントの本数が、上述した範囲内である場合、一方向性繊維強化樹脂の機械的強度をより一層高めることができる。
ガラスフィラメントは、長手方向に直交する方向に沿う断面形状が扁平状であり、かつ扁平比(長径/短径)が1.5以上である。なお、本明細書において、「断面形状が扁平状」とは、断面形状が扁平な形状であればよいが、非円状であることが好ましく、長円形状や楕円形状であることがより好ましく、長円形状であることがさらに好ましい。また、このような形状のガラスフィラメントは、断面形状が扁平状であるノズルから溶融ガラスを引き出すことにより得ることができる。
また、本明細書において、扁平比は、ガラスフィラメントの断面において、重心を通る最も長い辺を長径とし、重心を通り上記長い辺に直交する辺を短径としたときに、長径と短径の比(長径/短径)で表すことができる。
本発明においては、長手方向に直交する方向に沿う断面形状が扁平状であり、かつ扁平比(長径/短径)が1.5以上のガラスフィラメントを用いることにより、ガラスフィラメントの短径を小さくできるので、一方向性繊維強化樹脂の薄型化を図ることができる。
ガラスフィラメントの扁平比(長径/短径)は、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.3以上であり、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下である。ガラスフィラメントの扁平比(長径/短径)が上述した下限値以上である場合、一方向性繊維強化樹脂のより一層の薄型化を図ることができる。また、ガラスフィラメントの扁平比(長径/短径)が上述した上限値以下である場合、ガラス繊維ロービングをより一層折れ難くすることができ、作業性をより一層向上させることができる。
ガラスフィラメントの円相当径は、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは24μm以下である。ガラスフィラメントの円相当径が上述した下限値以上である場合、一方向性繊維強化樹脂の製造時に、扁平状である断面形状をより一層維持し易くすることができる。また、ガラスフィラメントの円相当径が上述した上限値以下である場合、ガラスフィラメント自体の靭性をより一層高めることができ、しかも毛羽立ちをより一層抑制することができる。
なお、ガラスフィラメントの円相当径は、ガラスフィラメントの断面の面積を電子顕微鏡等により測定し、測定した面積になる真円の直径を求めることにより得ることができる。
本発明においては、ガラス繊維ロービングの番手が、500tex以上、7500tex以下である。ガラス繊維ロービングの番手が上述した下限値以上である場合、一方向性繊維強化樹脂の機械的強度を高めることができる。また、一方向性繊維強化樹脂の成形時に、ガラス繊維ロービングを毛羽立ち難くすることができ、ガラス繊維ロービングの断線を生じ難くすることができる。そのため、ガラス繊維ロービングの番手が上述した下限値以上である場合、作業性を向上させることもできる。他方、ガラス繊維ロービングの番手が上述した上限値以下である場合、一方向性繊維強化樹脂の薄型化を図ることができる。また、ガラス繊維ロービングを曲がり易くすることができ、ガラスフィラメントの折れを生じ難くすることができる。そのため、ガラス繊維ロービングの番手が上述した上限値以下である場合、作業者の安全性を高めることができ、作業性を向上させることもできる。
ガラス繊維ロービングの番手は、好ましくは1000tex以上、より好ましくは1200tex以上であり、好ましくは4800tex以下、より好ましくは3000tex以下である。ガラス繊維ロービングの番手が上述した範囲内にある場合、一方向性繊維強化樹脂の薄型化を図りつつ、機械的強度をより一層高めることができるととともに、作業性をより一層向上させることができる。
なお、ガラス繊維ロービングの番手は、例えば、ガラス繊維ロービングを構成するガラスフィラメントの本数や、ガラスフィラメントの円相当径により調整することができる。
本発明においては、以下に示す方法で測定したガラス繊維ロービングにおける糸長差が、10mm以上、100mm以下である。以下、糸長差の測定方法について、図1(a)及び図1(b)を参照して説明する。
まず、ガラス繊維ロービング1を2m以上(2m~2.2m程度)の長さに切断する。次に、図1(a)に示すように、水平方向xに引き延ばしたガラス繊維ロービング1の両端を、水平方向xにおいて2m離間して配置された支持部材2,3に固定する。この際、ガラス繊維ロービング1の両端は、例えば、接着剤などを用いて支持部材2,3に固定することができる。なお、支持部材2,3は、水平方向xにおいて、同じ高さ位置で互いに対向するように設けられており、かつガラス繊維ロービング1を水平に保持できるように配置されている。
次に、図1(b)に示すように、支持部材2,3に固定されたガラス繊維ロービング1を解繊することにより、モノフィラメント化する。続いて、モノフィラメント化した状態で、水平方向xに対して最も下方に垂れるモノフィラメント10aまでの垂れ幅である糸長差Lを測定する。なお、糸長差Lは、水平方向xに直交する鉛直方向zにおいて、水平方向xに延びるモノフィラメント10bと、最も下方に垂れるモノフィラメント10aにおける最も下側の部分との距離である。なお、その測定位置は、ほとんどの場合、支持部材2,3間の水平方向xにおける略中央部になる。
本発明においては、ガラス繊維ロービングにおける糸長差が上述した下限値以上であることにより、一方向性繊維強化樹脂の成形時にマトリクスとなる樹脂内でガラス繊維ロービングを拡幅し易くすることができ、マトリクスとなる樹脂への含浸性を高めることができる。また、ガラス繊維ロービングにおける糸長差が上述した上限値以下であることにより、ガラス繊維ロービング内にループを生じ難くすることができ、マトリクスとなる樹脂への含浸性を高めることができる。よって、ガラス繊維ロービングにおける糸長差が上述した範囲内であることにより、一方向性繊維強化樹脂の薄型化を図りつつ、機械的強度を高めることができる。
本発明において、ガラス繊維ロービングにおける糸張差は、好ましくは20mm以上、より好ましくは30mm以上であり、好ましくは80mm以下、より好ましくは70mm以下である。ガラス繊維ロービングにおける糸長差が上述した範囲内である場合、一方向性繊維強化樹脂の薄型化を図りつつ、機械的強度をより一層高めることができる。
なお、ガラス繊維ロービングにおける糸張差は、例えば、ガラスフィラメントを形成する際のブッシングの大きさや、ガラスフィラメントを巻き取る際における巻き速度等により調整することができる。例えば、ブッシングの大きさを大きくすれば、端部から引き出されるガラスフィラメントと、中央部から引き出されるガラスフィラメントとの間で糸長差を大きくすることができる。また、巻き速度を大きくすることで、ガラスフィラメントにテンションがかかり、糸長差を小さくすることができる。なお、ガラス繊維ロービングの糸張差の調整方法は、他の方法であってもよく、特に限定はされない。
本発明において、ガラス繊維ロービングの強熱減量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。ガラス繊維ロービングの強熱減量が上述した範囲内にある場合、ガラス繊維ロービングのストランドが拡幅しやすく、マトリクスとなる樹脂が含浸しやすいため、より均一性の高い一方向性繊維強化樹脂を得ることができる。なお、強熱減量は、JIS R3420(2013年)に従い測定することができる。
本発明の一方向性繊維強化樹脂においては、ガラス繊維ロービングに含浸させた樹脂が、マトリクスとなる樹脂である。マトリクスとなる樹脂としては、特に限定されず、その成形方法に応じて適宜選定することができ、例えば、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、又はポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、又は不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
本発明において、一方向性繊維強化樹脂中におけるガラスの含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。ガラスの含有量が上述した範囲内にある場合、一方向性繊維強化樹脂の機械的強度をより一層高めることができる。
本発明において、一方向性繊維強化樹脂中における樹脂(マトリクスとなる樹脂)の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。樹脂の含有量が上述した範囲内にある場合、一方向性繊維強化樹脂の表面平滑性をより一層高めることができる。
(一方向性繊維強化樹脂の製造方法)
本発明の一方向性繊維強化樹脂の製造方法では、まず、複数本のガラスフィラメントを用意する。具体的には、ガラス溶融炉内に投入されたガラス原料を溶融して溶融ガラスとする。この溶融ガラスを均質な状態とした後に、ブッシングに付設された耐熱性を有するノズルから溶融ガラスを引き出す。その後、引き出された溶融ガラスを冷却して複数本のガラスフィラメント(モノフィラメント)を得る。なお、ブッシングとしては、例えば、白金製のブッシングを用いることができる。
本発明の一方向性繊維強化樹脂の製造方法では、まず、複数本のガラスフィラメントを用意する。具体的には、ガラス溶融炉内に投入されたガラス原料を溶融して溶融ガラスとする。この溶融ガラスを均質な状態とした後に、ブッシングに付設された耐熱性を有するノズルから溶融ガラスを引き出す。その後、引き出された溶融ガラスを冷却して複数本のガラスフィラメント(モノフィラメント)を得る。なお、ブッシングとしては、例えば、白金製のブッシングを用いることができる。
複数本のガラスフィラメントを形成するに際しては、断面形状が扁平状であり、かつ扁平比(長径/短径)が1.5以上である、複数本のガラスフィラメントを形成する。具体的には、断面形状が扁平状であるノズルから溶融ガラスを引き出すことにより、断面形状が扁平状であり、かつ扁平比(長径/短径)が1.5以上である、複数本のガラスフィラメントを形成する。なお、ガラスフィラメントの断面形状は、長手方向に直交する方向に沿う断面形状であるものとする。
ガラスフィラメントの原料(ガラス原料)としては、特に限定されず、例えば、Eガラス、Sガラス、Dガラス、ARガラス等を用いることができる。なかでも、Eガラスを用いた場合、安価であり、かつ一方向性繊維強化樹脂の機械的強度をより一層高めることができる。また、Sガラスを用いた場合、一方向性繊維強化樹脂の機械的強度をさらに一層高めることができる。
次に、得られた複数本のガラスフィラメントの表面に、集束剤塗布機構によって集束剤を塗布する。集束剤が均等に塗布された状態で、複数本のガラスフィラメントを、数百から数千本引き揃え、集束する。複数本のガラスフィラメントは、例えば、集束シューにより引き揃え、集束することができる。これにより、ガラス繊維ロービングを形成することができる。
集束剤は、例えば、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリ酢酸ビニル、又はポリフェニレンサルファイド樹脂からなる群から選択された1種以上の熱可塑性樹脂を含有することができる、また、集束剤は、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂、エポキシ樹脂、及びポリウレタン樹脂からなる群から選択された1種以上の熱硬化性樹脂を含有していてもよい。また、集束剤は、アミノシランなどのシランカップリング剤、潤滑剤、ノニオン系の界面活性剤、又は帯電防止剤等の各成分をさらに含有していてもよい。なお、集束剤は、得られるガラス繊維ロービングの強熱減量が、例えば、0.1質量%以上、1.5質量%以下となる範囲で塗布することができる。
次に、集束剤を加熱乾燥させ、水分を蒸発させることにより、ガラスフィラメントの表面に被膜を形成する。加熱乾燥の方法としては、例えば、熱風乾燥又は誘電乾燥を用いることができる。加熱乾燥は、例えば、100℃~150℃の温度範囲において、1時間~24時間行うことができる。これにより、図2に示すようなガラス繊維ロービング22を得ることができる。
図2に示すように、上記の方法で得られたガラス繊維ロービング22は、例えば、巻回体21の形状で用いることができる。上記のような巻回体21の内周側は、空洞となっていてもよいし、巻回体21の中央に、ボビン等の芯が配置されていてもよい。
次に、同様の方法で用意した複数の巻回体から、それぞれ、ガラス繊維ロービングを引き出し、等間隔に並べた状態で、スプレッダーを通過させ、各ガラス繊維ロービングの幅を広げる。この際、各ガラス繊維ロービングの幅は、例えば、5mm以上、30mm以下に広げることができる。なお、ガラス繊維ロービングの配向方向は、スプレッダーの数や、ガラス繊維ロービングを引き出す張力により調整することができる。
次に、スプレッダーを通過させたガラス繊維ロービングを上下2つの含浸ロール間に挿入させる。ガラス繊維ロービングを含浸ロール間に挿入させる際には、押出機で溶融させた樹脂も同時に供給する。それによって、含浸ロール中でガラス繊維ロービングに樹脂を含有させる。なお、押出機の設定温度は、例えば、(樹脂の融点+20)℃以上、(樹脂の融点+80)℃以下とすることができる。また、含浸ロールの温度は、例えば、(樹脂の融点+20)℃以上、(樹脂の融点+80)℃以下とすることができる。
次に、含浸ロールを通過したガラス繊維ロービングを冷却ロールに送り出して冷却しながら、芯材に巻き取ることにより、一方向性繊維強化樹脂を得ることができる。なお、冷却ロールの温度は、例えば、樹脂のガラス転移温度以下とすることができる。また、芯材の形状は、例えば、円柱状とすることができる。
本発明の一方向性繊維強化樹脂は、例えば、一方向性繊維強化樹脂シートとして用いることができる。一方向性繊維強化樹脂シートの厚みは、例えば、10μm以上、500μm以下とすることができる。一方向性繊維強化樹脂シートの幅は、例えば、10mm以上、300mm以下とすることができる。
なかでも、本発明の一方向性繊維強化樹脂は、UDテープとして好適に用いることができる。具体的には、本発明の一方向性繊維強化樹脂は、例えば、自動車の内装用や外装用の部材、建築材料、航空機材等に使用されるUDテープとして好適に用いることができる。
[積層体]
図3は、本発明の一実施形態に係る積層体を示す模式的断面図である。図3に示すように、積層体31は、樹脂層32の積層体である。樹脂層32は、上述した本発明の一方向性繊維強化樹脂により構成されている。そのため、本実施形態の積層体31では、薄型化を図りつつ、表面平滑性及び機械的強度を高いレベルで両立することができる。
図3は、本発明の一実施形態に係る積層体を示す模式的断面図である。図3に示すように、積層体31は、樹脂層32の積層体である。樹脂層32は、上述した本発明の一方向性繊維強化樹脂により構成されている。そのため、本実施形態の積層体31では、薄型化を図りつつ、表面平滑性及び機械的強度を高いレベルで両立することができる。
本実施形態の積層体31では、上層側の樹脂層32Aにおけるガラス繊維ロービングの引き揃え方向と、下層側の樹脂層32Bにおけるガラス繊維ロービングの引き揃え方向とのなす角度が、45°以上、90°以下である。そのため、積層体31の機械的強度をより一層高めることができる。もっとも、本発明においては、積層体31を構成する樹脂層32におけるガラス繊維ロービングの引き揃え方向が全て同じ方向であってもよく、ガラス繊維ロービングの引き揃え方向は特に限定されない。
積層体31を構成する樹脂層32の積層数は、特に限定されず、例えば、2層以上、50層以下とすることができる。積層体31を構成する樹脂層32の1層当たりの厚みは、例えば、10μm以上、500μm以下とすることができる。積層体31全体の厚みは、例えば、20μm以上、25000μm以下とすることができる。
積層体31は、例えば、複数枚の一方向性繊維強化樹脂シートを重ね合わせることにより得ることができる。なお、複数枚の一方向性繊維強化樹脂シートを重ね合わせた後にプレス成形をして積層体31を得てもよい。
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
(実施例1~4及び比較例1~5)
まず、Eガラス組成の溶融ガラスを白金製のブッシングから引き出して数百~数千本のガラスフィラメントを得た。得られた数百~数千本のガラスフィラメントに、ロールコータ法により集束剤を強熱減量が0.4質量%となるように調整して塗布し、ガラスフィラメントを集束させ、集束体を得た。次に、得られた集束体を回転するコレットに配置した紙管に巻き取り、加熱乾燥させて、ガラス繊維ロービングの巻回体を得た。なお、各実施例及び比較例においては、ガラスフィラメントの扁平比、並びにガラス繊維ロービングの番手及び糸張差を下記の表1に示す値に調整した。
まず、Eガラス組成の溶融ガラスを白金製のブッシングから引き出して数百~数千本のガラスフィラメントを得た。得られた数百~数千本のガラスフィラメントに、ロールコータ法により集束剤を強熱減量が0.4質量%となるように調整して塗布し、ガラスフィラメントを集束させ、集束体を得た。次に、得られた集束体を回転するコレットに配置した紙管に巻き取り、加熱乾燥させて、ガラス繊維ロービングの巻回体を得た。なお、各実施例及び比較例においては、ガラスフィラメントの扁平比、並びにガラス繊維ロービングの番手及び糸張差を下記の表1に示す値に調整した。
次に、同様の方法で作製した8個の巻回体から、それぞれ、ガラス繊維ロービングを引き出し、等間隔に並べた状態で、スプレッダーを通過させ、ガラス繊維ロービングを200mm幅に広げた。
次に、スプレッダーを通過させたガラス繊維ロービングを上下2つの含浸ロール間に挿入した。ガラス繊維ロービングを含浸ロール間に挿入させる際には、押出機で溶融させたポリプロピレン樹脂(サンアロマー社製、品番「PM900A」)も同時に供給した。それによって、含浸ロール中でガラス繊維ロービングにポリプロピレン樹脂を含浸させた。なお、押出機の設定温度は、220℃とした。含浸ロールの温度は、上下ともに220℃とした。
次に、含浸ロールを通過したガラス繊維ロービングを冷却ロールに送り出して冷却しながら、50m連続して円柱状の芯材に巻き取ることにより、一方向性繊維強化樹脂を得た。なお、冷却ロールの温度は、50℃とした。
なお、いずれの実施例及び比較例においても、得られた一方向性繊維強化樹脂中におけるガラスの含有量は70質量%であり、マトリクスとなる樹脂の含有量は30質量%であった。
[評価]
(ガラスフィラメントの扁平比及び円相当径)
まず、ガラスフィラメントの断面を観察するために、常温硬化樹脂テクノビット(Kulzer社製)に複数本のガラスフィラメントを垂直に埋設し、樹脂硬化後に研磨を行った。次に、光学顕微鏡でガラスフィラメントの断面形状を観察するとともに、観察したガラスフィラメントの長径及び短径のそれぞれの長さを測定し、扁平比(長径/短径)を算出するとともに扁平比の相加平均を求めた。なお、ガラスフィラメントの本数は100本とした。また、円相当径については100本のガラスフィラメントの断面形状の断面積を画像解析により求め、断面積から求めた。
(ガラスフィラメントの扁平比及び円相当径)
まず、ガラスフィラメントの断面を観察するために、常温硬化樹脂テクノビット(Kulzer社製)に複数本のガラスフィラメントを垂直に埋設し、樹脂硬化後に研磨を行った。次に、光学顕微鏡でガラスフィラメントの断面形状を観察するとともに、観察したガラスフィラメントの長径及び短径のそれぞれの長さを測定し、扁平比(長径/短径)を算出するとともに扁平比の相加平均を求めた。なお、ガラスフィラメントの本数は100本とした。また、円相当径については100本のガラスフィラメントの断面形状の断面積を画像解析により求め、断面積から求めた。
(ガラス繊維ロービングの番手)
ガラス繊維ロービングの番手は、JIS L 0101-1978に準拠して測定した。
ガラス繊維ロービングの番手は、JIS L 0101-1978に準拠して測定した。
(ガラス繊維ロービングにおける糸張差)
まず、ガラス繊維ロービングを2m以上(2m~2.2m程度)の長さに切断した。次に、水平方向に引き延ばしたガラス繊維ロービングの両端を、水平方向において2m離間して配置された支持部材に接着剤により固定した。次に、支持部材に固定されたガラス繊維ロービングを解繊することにより、モノフィラメント化した。続いて、モノフィラメント化した状態で、水平方向に対して最も下方に垂れるモノフィラメントまでの垂れ幅である糸長差を測定した。
まず、ガラス繊維ロービングを2m以上(2m~2.2m程度)の長さに切断した。次に、水平方向に引き延ばしたガラス繊維ロービングの両端を、水平方向において2m離間して配置された支持部材に接着剤により固定した。次に、支持部材に固定されたガラス繊維ロービングを解繊することにより、モノフィラメント化した。続いて、モノフィラメント化した状態で、水平方向に対して最も下方に垂れるモノフィラメントまでの垂れ幅である糸長差を測定した。
(一方向性繊維強化樹脂の表面平滑性)
JIS B 0651-2001に準拠し、触針式表面粗さ測定器を用いて、一方向性繊維強化樹脂の表面における算術平均粗さ(Ra)を測定することにより、表面平滑性を評価した。
JIS B 0651-2001に準拠し、触針式表面粗さ測定器を用いて、一方向性繊維強化樹脂の表面における算術平均粗さ(Ra)を測定することにより、表面平滑性を評価した。
(一方向性繊維強化樹脂の平均厚さ)
JIS K 7130-1999に準拠し、一方向性繊維強化樹脂一枚あたりの平均厚さを測定した。
JIS K 7130-1999に準拠し、一方向性繊維強化樹脂一枚あたりの平均厚さを測定した。
(一方向性繊維強化樹脂の曲げ強度)
一方向性繊維強化樹脂を所定の長さに切断し、それらを20枚重ねて、金型に装填した。この金型をホットプレス上で220℃に加熱し、樹脂を溶融させた。樹脂溶融後、押圧治具を用いて220℃、5MPaの条件で加圧した。次に、金型を常温まで冷却し、一方向性繊維強化樹脂の積層体を得た。得られた積層体について、JIS K 7017-1999に準拠して、精密万能試験機を使用して3点曲げ試験を行った。それによって、一方向性繊維強化樹脂の積層体の曲げ強度を測定した。
一方向性繊維強化樹脂を所定の長さに切断し、それらを20枚重ねて、金型に装填した。この金型をホットプレス上で220℃に加熱し、樹脂を溶融させた。樹脂溶融後、押圧治具を用いて220℃、5MPaの条件で加圧した。次に、金型を常温まで冷却し、一方向性繊維強化樹脂の積層体を得た。得られた積層体について、JIS K 7017-1999に準拠して、精密万能試験機を使用して3点曲げ試験を行った。それによって、一方向性繊維強化樹脂の積層体の曲げ強度を測定した。
結果を下記の表1に示す。
表1より、実施例1~4のガラスフィラメントでは、断面形状が扁平状であり、かつ扁平比(長径/短径)が1.5以上であった。また、実施例1~4では、ガラス繊維ロービングの番手が、500tex以上、7500tex以下であり、ガラス繊維ロービングにおける糸長差が、10mm以上、100mm以下であった。
また、表1より、実施例1~4の一方向性繊維強化樹脂では、算術平均粗さ(Ra)が10μm以下であり、一方向性繊維強化樹脂一枚当たりの平均厚さが80μm以下であり、曲げ強度の値が340MPa以上であった。
これらの結果より、ガラスフィラメントの扁平比(長径/短径)、並びにガラス繊維ロービングの番手及び糸長差が上記範囲内にある実施例1~4の一方向性繊維強化樹脂では、薄型化を図りつつ、表面平滑性及び機械的強度を高いレベルで両立することができることが確認できた。
一方、ガラスフィラメントの扁平比(長径/短径)、並びにガラス繊維ロービングの番手及び糸長差のいずれかが上記範囲内にない比較例1~5では、薄型化を図りつつ、十分な表面平滑性及び機械的強度を得ることができなかった。なお、比較例2及び4では、作業性も悪く、一方向性繊維強化樹脂を得ることもできなかった。
1,22…ガラス繊維ロービング
2,3…支持部材
10a,10b…モノフィラメント
21…巻回体
31…積層体
32,32A,32B…樹脂層
2,3…支持部材
10a,10b…モノフィラメント
21…巻回体
31…積層体
32,32A,32B…樹脂層
Claims (9)
- 一方向に引き揃えられたガラス繊維ロービングに樹脂を含浸させてなる一方向性繊維強化樹脂であって、
前記ガラス繊維ロービングは、長手方向に直交する方向に沿う断面形状が扁平状であり、かつ扁平比(長径/短径)が1.5以上である、複数本のガラスフィラメントによって構成されており、
前記ガラス繊維ロービングの番手が、500tex以上、7500tex以下であり、
水平方向に引き延ばした前記ガラス繊維ロービングの両端を、水平方向において2m離間して固定した状態で、前記ガラス繊維ロービングを解繊することによりモノフィラメント化したときに、水平方向に延びるガラスフィラメントに対して最も下方に垂れるガラスフィラメントまでの垂れ幅である糸長差が、10mm以上、100mm以下である、一方向性繊維強化樹脂。 - 前記ガラス繊維ロービングの強熱減量が、0.1質量%以上、1.5質量%以下である、請求項1に記載の一方向性繊維強化樹脂。
- 前記ガラス繊維ロービングを構成する前記ガラスフィラメントの円相当径が、8μm以上、30μm以下である、請求項1又は2に記載の一方向性繊維強化樹脂。
- 前記ガラス繊維ロービングを構成する前記ガラスフィラメントの本数が、1200本以上、6000本以下である、請求項1又は2に記載の一方向性繊維強化樹脂。
- 前記ガラス繊維ロービングの番手が、1000tex以上、4800tex以下である、請求項1又は2に記載の一方向性繊維強化樹脂。
- 前記ガラス繊維ロービングにおける前記糸長差が、20mm以上、70mm以下である、請求項1又は2に記載の一方向性繊維強化樹脂。
- 前記一方向性繊維強化樹脂中におけるガラスの含有量が、40質量%以上、90質量%以下である、請求項1又は2に記載の一方向性繊維強化樹脂。
- 請求項1又は2に記載の一方向性繊維強化樹脂からなる樹脂層を少なくとも2層以上備える、積層体。
- 上層側の前記樹脂層におけるガラス繊維ロービングの引き揃え方向と、下層側の前記樹脂層におけるガラス繊維ロービングの引き揃え方向とのなす角度が、45°以上、90°以下である、請求項8に記載の積層体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022067291A JP2023157399A (ja) | 2022-04-15 | 2022-04-15 | 一方向性繊維強化樹脂及び積層体 |
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Country | Link |
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-
2022
- 2022-04-15 JP JP2022067291A patent/JP2023157399A/ja active Pending
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