JP2023151356A - 積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐エロージョン性に優れるとともに、製造工程の簡便化を実現できる積層体及びその製造方法を提供する。【解決手段】エポキシ樹脂シート(A)と剛性層(B)とを有する積層体であって、該エポキシ樹脂シート(A)は少なくとも片面の最外層として存在し、25℃における前記エポキシ樹脂シート(A)の引張貯蔵弾性率E’(A)に対する25℃における前記剛性層(B)の引張弾性率E(B)の比E(B)/E’(A)が100以上であり、かつ前記引張貯蔵弾性率E’(A)が0.50MPa以上100MPa以下である、積層体。エポキシ樹脂シート(A)と、剛性層(B)とを積層し、加熱及び加圧することで前記エポキシ樹脂シート(A)と前記剛性層(B)とを一体化する、積層体の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、積層体及びその製造方法に関する。
従来、硬化性樹脂に、炭素繊維、ガラス繊維等の強化繊維を複合して強度を向上させた硬化性樹脂複合材料は、軽量であり強度に優れることから、電気及び電子機器分野、自動車、航空機等の産業分野、建設分野等の部材として用いられている。
例えば、特許文献1及び2には、主桁の外側に翼形状を形成する外皮を備えた風車翼において、前記外皮として、引張り強度、引張り弾性率、及び引張り破断伸度が特定の範囲である有機高分子繊維の少なくとも1種類を強化繊維として含有する繊維強化複合材料を用いてなる風車翼が開示されており、飛来粒子衝突に対する摩耗を低減でき、耐久性に優れると記載されている。
特開2010-144646号公報 特開2016-204671号公報
特許文献1及び2に記載される風車翼は、有機高分子繊維を含有するため、耐熱性が不十分であり、通常100℃以下の低温で成形され、成形方法が限られているという課題があった。一方、耐摩耗性を有するシートを外層に貼ることで風車翼等の耐摩耗性を付与することができれば、製造工程の簡便化を実現することができる。
本発明は、上記課題の存在に鑑みてなされたものであり、耐エロージョン性に優れるとともに、製造工程の簡便化を実現できる積層体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、以下の構成を採用することにより、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[13]に関する。
[1] エポキシ樹脂シート(A)と剛性層(B)とを有する積層体であって、前記エポキシ樹脂シート(A)は前記積層体の少なくとも片面の最外層として存在し、下記(1)及び(2)を満たす、積層体。
(1)25℃における前記エポキシ樹脂シート(A)の引張貯蔵弾性率E’(A)に対する25℃における前記剛性層(B)の引張弾性率E(B)の比E(B)/E’(A)が100以上である
(2)前記エポキシ樹脂シート(A)の前記引張貯蔵弾性率E’(A)が0.5MPa以上100MPa以下である
[2] 前記エポキシ樹脂シート(A)のガラス転移温度を40℃以下に有する、上記[1]に記載の積層体。
[3] 前記エポキシ樹脂シート(A)は、厚さ100μmにおける全光線透過率が80%以上である、上記[1]又は[2]に記載の積層体。
[4] 前記エポキシ樹脂シート(A)の厚さが10μm以上800μm以下である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の積層体。
[5] 前記エポキシ樹脂シート(A)が、エポキシ樹脂と硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物を硬化してなるシートである、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の積層体。
[6] 前記エポキシ樹脂シート(A)に含まれるエポキシ樹脂が、ゴム成分を有するエポキシ樹脂、及び、剛直成分と柔軟成分とのブロック構造を有するエポキシ樹脂の少なくともいずれかを含む、上記[5]に記載の積層体。
[7] 前記硬化剤が、ポリエーテルアミン及び/又は脂環式構造を有する硬化剤である、上記[5]又は[6]に記載の積層体。
[8] 前記剛性層(B)は、繊維強化樹脂層及び金属層の少なくともいずれかである、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の積層体。
[9] 前記繊維強化樹脂層が、プリプレグ及び/又はセミプレグからなる繊維強化樹脂複合体を硬化してなる硬化物である、上記[8]に記載の積層体。
[10] 上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の積層体の製造方法であって、前記エポキシ樹脂シート(A)と、前記剛性層(B)とを積層し、加熱及び加圧することで前記エポキシ樹脂シート(A)と前記剛性層(B)とを一体化する、積層体の製造方法。 [11] 上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の積層体を備えた部材。
[12] 上記[11]に記載の部材を備えた移動体。
[13] 上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の積層体を備えたロボット部材、産業機器、又は建築資材。
本発明によれば、耐エロージョン性に優れるとともに、製造工程の簡便化を実現できる積層体及びその製造方法を提供できる。
[積層体]
本発明の積層体(以下、単に「積層体」ともいう)は、エポキシ樹脂シート(A)と剛性層(B)とを有し、該エポキシ樹脂シート(A)は少なくとも片面の最外層として存在し、下記(1)及び(2)を満たす。
(1)25℃における前記エポキシ樹脂シート(A)の引張貯蔵弾性率E’(A)に対する25℃における前記剛性層(B)の引張弾性率E(B)の比E(B)/E’(A)が100以上である
(2)前記エポキシ樹脂シート(A)の前記引張貯蔵弾性率E’(A)が0.5MPa以上100MPa以下である
積層体は、下記(1)及び(2)を満たすことにより、優れた耐エロージョン性を実現できる。また、剛性層に対してハンドリングが容易なエポキシ樹脂シートを積層することで耐エロージョン性を付与できるので、耐摩耗要求がある部材の製造工程の簡略化が実現できる。
ここで、エロージョンとは、流体によって表面が削り取られて摩耗されることをいい、耐エロージョン性とは、流体による摩耗が生じにくい性質をいう。
<エポキシ樹脂シート(A)>
(引張貯蔵弾性率E’(A))
25℃におけるエポキシ樹脂シート(A)の引張貯蔵弾性率E’(A)は、積層体の耐エロージョン性を向上する観点から、0.5MPa以上であり、好ましくは1MPa以上、より好ましくは1.5MPa以上、さらに好ましくは2MPa以上、よりさらに好ましくは2.5MPa以上、よりさらに好ましくは3MPa以上であり、そして、100MPa以下であり、好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下、さらに好ましくは10MPa以下、よりさらに好ましくは5.0MPa以下である。
25℃におけるエポキシ樹脂シート(A)の引張貯蔵弾性率E’(A)は、JIS K 7244-4:1999に準拠して求められ、具体的には、実施例に記載される方法で求めることができる。
エポキシ樹脂シート(A)の引張弾性率E’(A)は、後述するエポキシ樹脂シート(A)を構成する原料の種類、配合量、シートの加工方法を調整することによって、調整可能である。
(ガラス転移温度TgDSC
エポキシ樹脂シート(A)は、積層体の耐エロージョン性を向上する観点から、示差走査熱量分析(DSC)によるガラス転移温度TgDSCを、好ましくは40℃以下に有し、より好ましくは30℃以下に有し、さらに好ましくは20℃以下に有し、そして、その下限は特に限定されないが、好ましくは-80℃以上に有し、より好ましくは-60℃以上に有し、さらに好ましくは-40℃以上に有し、よりさらに好ましくは-30℃以上に有する。
一方、エポキシ樹脂シート(A)は、40℃超えのガラス転移温度TgDSCが存在しないことが好ましく、30℃超えのガラス転移温度TgDSCが存在しないことがより好ましく、20℃超えのガラス転移温度TgDSCが存在しないことがさらに好ましい。
エポキシ樹脂シート(A)のガラス転移温度TgDSCは、示差走査熱量分析(DSC)により測定でき、具体的には実施例に記載される方法で測定することができる。
エポキシ樹脂シート(A)のガラス転移温度TgDSCは、後述するエポキシ樹脂シート(A)を構成する原料の種類、配合量、シートの加工方法を調整することによって、調整可能である。
(全光線透過率)
エポキシ樹脂シート(A)は、剛性層(B)の表面の意匠性を維持する観点から、厚さ100μmにおける全光線透過率が、好ましくは80%以上、より好ましくは83%以上、さらに好ましくは85%以上であり、そして、その上限は特に限定されないが、100%以下、好ましくは98%以下である。
エポキシ樹脂シート(A)の全光線透過率は、JIS K 7136:2000に準拠して測定することができ、具体的には実施例に記載される方法で測定することができる。
(厚さ)
エポキシ樹脂シート(A)の厚さは、積層体の使用用途により適宜変更されるが、耐エロージョン性を発揮しやすい観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上、よりさらに好ましくは80μm以上であり、そして、剛性層(B)の表面の意匠性及び軽量化を達成する観点から、好ましくは1mm以下、より好ましくは800μm以下、さらに好ましくは600μm以下、よりさらに好ましくは500μm以下、よりさらに好ましくは400μm以下、よりさらに好ましくは300μm以下である。
エポキシ樹脂シート(A)の厚さは、積層体断面を顕微鏡等で観察することにより測定され、それらの算術平均により求められる。
(剥離強度)
剛性層(B)がプリプレグである場合、エポキシ樹脂シート(A)は、剥離強度300mm/minの条件で硬化前のプリプレグとT型剥離した場合の剥離強度が、好ましくは0.03N/mm以上0.3N/mm以下であることが好ましい。
エポキシ樹脂シート(A)とプリプレグとの剥離強度は、実施例に記載される方法で測定できる。
(エポキシ樹脂組成物)
エポキシ樹脂シート(A)は、エポキシ樹脂と少なくとも硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物を硬化してなるシートであることが好ましい。エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて溶剤やその他の成分を適宜配合することができる。なお、本明細書において「エポキシ樹脂」という用語は、硬化前の原料樹脂と、硬化後の樹脂(硬化物)の双方をいう。硬化反応によってエポキシ基は消費されるため、硬化後の樹脂はエポキシ基(エポキシ構造)を有していない場合があるが、本明細書においてはこれらを区別しない。
≪エポキシ樹脂≫
エポキシ樹脂として、末端反応性ブタジエンアクリロニトリル共重合体等のゴム成分を有するエポキシ樹脂(以下、「ゴム変性エポキシ樹脂」ともいう)、及び、剛直成分と柔軟成分とのブロック構造を有するエポキシ樹脂の少なくともいずれかを含むことが好ましく、ゴム成分を有するエポキシ樹脂を含むことがより好ましい。なお、以下、剛直成分と柔軟成分とのブロック構造を有するエポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂を「エポキシ樹脂(α)」ともいう。
-ゴム変性エポキシ樹脂-
末端反応性ブタジエンアクリロニトリル共重合体等のゴム成分を有するエポキシ樹脂(ゴム変性エポキシ樹脂)において、ゴム成分は、例えば、ブタジエンアクリロニトリル共重合体ゴム、スチレンブタジエン共重合体ゴム等が挙げられ、重合体の末端がカルボキシ変性、アミノ変性又はヒドロキシ変性されていてもよい。また、ゴム変性エポキシ樹脂において、エポキシ樹脂は、公知のものを使用でき、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、多官能グリシジルエーテル型エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。
ゴム変性エポキシ樹脂の具体例としては、主鎖にアクリロニトリルポリブタジエン骨格を有し、末端にはエポキシ基またはエポキシ基と反応する官能基(例えば、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基など)を含むエポキシ樹脂が挙げられる。
ゴム変性エポキシ樹脂として、市販品を用いることができ、ADEKA社製の商品名「アデカレジン EPRシリーズ」等を用いることができる。
上記エポキシ樹脂(α)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
-剛直成分と柔軟成分とのブロック構造を有するエポキシ樹脂-
上記エポキシ樹脂の剛直成分は、芳香族性を有する環構造、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環などの縮合芳香環構造や、ビフェノール環、カルド構造、フルオレン環などの芳香環構造を多数含む構造や、ピロール環、チオフェン環などのヘテロ環式構造を含むことが好ましい。
上記エポキシ樹脂の柔軟成分は、脂肪族炭化水素、例えば炭素数1~8のアルキレン基、エチレングリコール基、プロピレングリコール基、ブチレングリコール基を含むことが好ましい。
エポキシ樹脂組成物が、このような剛直成分と柔軟成分を有するエポキシ樹脂を含むことで、硬化物に柔軟性を付与することが可能となる。
エポキシ樹脂(α)は、必ずしも剛直成分と柔軟成分の双方にエポキシ基又はエポキシ基由来の構造を有していなくともよい。すなわち、エポキシ樹脂(α)が剛直成分と柔軟成分とのブロック構造を有する場合、少なくとも剛直成分及び柔軟成分のうちいずれかにエポキシ基あるいはエポキシ基由来の構造を有していればよい。耐熱性、機械的強度等のエポキシ樹脂本来の特性を有しつつ、柔軟性を付与するという観点からは、剛直成分と柔軟成分のうちいずれか一方のみにエポキシ基あるいはエポキシ基由来の構造を有していることが好ましい。
剛直成分と柔軟成分とのブロック構造を有するエポキシ樹脂(α)として、例えばビスフェノールFと1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,6-ヘキサンジオールとビスフェノールFジグリシジルエーテルとの共重合体、ビスフェノールFと1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,4-ブタンジオールとビスフェノールFジグリシジルエーテルとの共重合体、ビスフェノールAと1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,6-ヘキサンジオールとビスフェノールAジグリシジルエーテルとの共重合体、ビスフェノールAと1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,4-ブタンジオールとビスフェノールAジグリシジルエーテルとの共重合体、テトラメチルビフェノールと1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,6-ヘキサンジオールとテトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルとの共重合体、テトラメチルビフェノールと1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,4-ブタンジオールとテトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルとの共重合体、ビフェノールと1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,6-ヘキサンジオールとビフェノールジグリシジルエーテルとの共重合体、ビフェノールと1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,4-ブタンジオールとビフェノールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,4-ナフタレンジオールと1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,6-ヘキサンジオールと1,4-ナフタレンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,4-ナフタレンジオールと1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,4-ブタンジオールと1,4-ナフタレンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,6-ナフタレンジオールと1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,6-ヘキサンジオールと1,6-ナフタレンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,6-ナフタレンジオールと1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体、1,4-ブタンジオールと1,6-ナフタレンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。これらの中でも、柔軟性の観点から、エポキシ樹脂(α)は、ビスフェノールFと1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体を含むことが好ましい。
エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、上記エポキシ樹脂(α)以外のエポキシ樹脂(以下、「エポキシ樹脂(β)」という)を含有してもよい。
エポキシ樹脂(β)としては、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物を用いることが好ましい。
エポキシ基を2個有する2官能のエポキシ化合物としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールEジグリシジルエーテル、ビスフェノールZジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールアセトフェノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラ-t-ブチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノール系ジグリシジルエーテル類;ビフェノールジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル、ジメチルビフェノールジグリシジルエーテル、テトラ-t-ブチルビフェノールジグリシジルエーテル等のビフェノール系ジグリシジルエーテル類;ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジヒドロアントラセンジグリシジルエーテル、メチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジブチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、メチルレゾルシンジグリシジルエーテル等のベンゼンジオール系ジグリシジルエーテル類;ジヒドロアントラハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシジフェニルエーテルジグリシジルエーテル、チオジフェノールジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル等の芳香族系ジグリシジルエーテル類;前記ビスフェノール系ジグリシジルエーテル類、ビフェノール系ジグリシジルエーテル類、ベンゼンジオール系ジグリシジルエーテル類及び芳香族系ジグリシジルエーテル類から選ばれるジグリシジルエーテル類の芳香環に水素を添加したエポキシ化合物;アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ダイマー酸等の種々のカルボン酸類と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、ポリペンタメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,7-ヘプタンジオールジグリシジルエーテル、ポリヘプタメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,8-オクタンジオールジグリシジルエーテル、1,10-デカンジオールジグリシジルエーテル、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル等の鎖状構造のみからなる(ポリ)アルキレングリコールジグリシジルエーテル類;1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等の環状構造を有するアルキレングリコールジグリシジルエーテル類等が挙げられる。
エポキシ基を3個以上有する3官能以上のエポキシ化合物としては、例えば以下のものが挙げられる。
なお、以下の例示において、「……………型エポキシ樹脂」とは、水酸基がグリシジルエーテル基で置換されたものをいう。すなわち、例えば、「4,4’,4''-トリヒドロキシトリフェニルメタン型エポキシ樹脂」は、「4,4’,4''-トリヒドロキシトリフェニルメタン」の水酸基がグリシジルエーテル基で置換されたものをさす。
α,α-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-ヒドロキシ-α,α-ジメチルベンジル)-エチルベンゼン型エポキシ樹脂、4,4’,4''-トリヒドロキシトリフェニルメタン型エポキシ樹脂、4,4’,4''-エチリジントリス(2-メチルフェノール)型エポキシ樹脂、4,4’-(2-ヒドロキシベンジリデン)ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)型エポキシ樹脂、2,3,4-トリヒドロキシジフェニルメタン型エポキシ樹脂、2,4,6-トリス(4,ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン型エポキシ樹脂、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン型エポキシ樹脂、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス(2-メチルフェノール)型エポキシ樹脂、2,6-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルベンジル)-4-メチルフェノール型エポキシ樹脂等の3官能エポキシ樹脂類;2,2’-メチレンビス[6-(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-p-クレゾール]型エポキシ樹脂、4-[ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]ベンゼン-1,2-ジオール型エポキシ樹脂、1,1,2,2-テトラキス(p-ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、α,α,α’,α’,-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)-p-キシレン型エポキシ樹脂等の4官能エポキシ樹脂類;2,4,6-トリス[(4-ヒドロキシフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール型エポキシ樹脂等の5官能エポキシ樹脂類;ジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、キシレンジアミン等の種々のアミン化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ化合物;脂肪族ポリオールと、エピハロヒドリンから製造されるエポキシ化合物;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノール変性キシレン型エポキシ樹脂や、これら種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂等の各種のフェノール系化合物等を使用したエポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂類が挙げられる。
これらのうち、本発明に係るエポキシ樹脂の製造中のゲル化を防ぐ観点から、エポキシ樹脂(β)として2官能エポキシ化合物を使用することが好ましい。
また、良好な柔軟性を得る観点から、ビスフェノール系ジグリシジルエーテル類、ビフェノール系ジグリシジルエーテル類、ポリアルキレンポリオール系ジグリシジルエーテル類、ビスフェノール系ジグリシジルエーテル類の芳香環に水素を添加したエポキシ化合物、ビフェノール系ジグリシジルエーテル類の芳香環に水素を添加したエポキシ化合物を使用することが好ましく、それらの中でもポリアルキレンポリオール系ジグリシジルエーテル類、ビスフェノール系ジグリシジルエーテル類の芳香環に水素を添加したエポキシ化合物、ビフェノール系ジグリシジルエーテル類の芳香環に水素を添加したエポキシ化合物がより好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、エポキシ樹脂(α)のみを含むもの、エポキシ樹脂(α)とエポキシ樹脂(β)とを含有するもののいずれであってもよい。
エポキシ樹脂組成物が、エポキシ樹脂(α)とエポキシ樹脂(β)とを含有する場合、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ成分中のエポキシ樹脂(β)の割合は好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5質量%以下である。
エポキシ樹脂(β)の割合が上記上限値以下であることにより、エポキシ樹脂(α)による耐エロージョン性向上効果、柔軟性付与効果を十分に得ることができる。
本発明において、「固形分」とは溶媒を除いた成分を意味し、固体のエポキシ樹脂ないしエポキシ化合物のみならず、半固形や粘稠な液状物をも含むものとする。
また、「全エポキシ成分」とは、エポキシ樹脂(α)と前述のエポキシ樹脂(β)との合計を意味する。
≪硬化剤≫
本発明で用いる硬化剤は、上記のエポキシ樹脂のエポキシ基と、エポキシ基と反応性を有する基との間の架橋反応に寄与するものをいう。硬化剤としては特に制限はなく、一般的にエポキシ樹脂硬化剤として知られているものはすべて使用できる。
例えば、フェノール系硬化剤、脂肪族アミン、ポリエーテルアミン、脂環式アミン、芳香族アミンなどのアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミド系硬化剤、第3級アミン、イミダゾールおよびその誘導体、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩、テトラフェニルボロン塩、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体、ポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。これらの中でも、高透明性及び着色が少ない観点から、硬化剤としては、ポリエーテルアミン及び/又は脂環式ポリアミン、脂環式酸無水物等の脂環式構造を有する硬化剤が好ましく、脂環式構造を有する硬化剤がより好ましい。
ポリエーテルアミン類としては、トリエチレングリコールジアミン、テトラエチレングリコールジアミン、ジエチレングリコールビス(プロピルアミン)、トリメチロールプロパン(オキシプロピレン)トリアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン類等が挙げられる。
ポリエーテルアミン類は市販品を用いることもでき、ハンツマン社製の商品名「ジェファーミンシリーズ」等を用いることができる。
脂環式構造を有する硬化剤としては、脂環式構造を有し、エポキシ樹脂のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質であればよい。具体的には、例えば脂環式ポリアミン、脂環式酸無水物等が挙げられる。より具体的には、脂環式ポリアミンとしては、1,4-ジアザビシクロ-[2.2.2]-オクタン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデカ-7-エン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、メチレンビス(シクロヘキサナミン)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、及びこれらの脂環式ポリアミンをエポキシ変性又はエチレンオキシド変性、ダイマー酸変性、マンニッヒ変性、マイケル付加、チオ尿素縮合、ケチミン化した変性脂環式ポリアミンが挙げられる。脂環式酸無水物としては、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
これらの中でも脂環式ポリアミンが好ましく、その中でもイソホロンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、メチレンビス(シクロヘキサナミン)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、及びこれらの変性物が特に好ましい。
脂環式構造を有する硬化剤は市販品を用いることもでき、例えば、三菱ケミカル株式会社製の商品名「jERキュア113」、「jERキュアST-14」、新日本理化株式会社製の商品名「リカシッドMH-700」等を用いることができる。
エポキシ樹脂組成物における硬化剤の含有量(脂環式構造を有する硬化剤以外のその他の硬化剤を用いる場合は、脂環式構造を有する硬化剤とその他の硬化剤との合計の含有量)は、エポキシ樹脂(全エポキシ成分の合計の含有量)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上、よりさらに好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下、よりさらに好ましくは20質量部以下である。
≪溶剤≫
エポキシ樹脂組成物には、塗膜形成時等の取扱い時に、エポキシ樹脂組成物の粘度を適度に調整するために溶剤を配合し、希釈してもよい。エポキシ樹脂組成物において、溶剤は、エポキシ樹脂組成物の成形時における取扱い性、作業性を確保するために用いられ、その使用量には特に制限がない。
なお、本発明においては「溶剤」という語と「溶媒」という語をその使用形態により区別して用いるが、それぞれ独立して同種のものを用いても異なるものを用いてもよい。
エポキシ樹脂組成物が含み得る溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール等が挙げられ、これらの溶剤は適宜に2種又はそれ以上の混合溶剤として使用することも可能である。
≪その他の成分≫
エポキシ樹脂組成物には、以上に挙げた成分の他にその他の成分を含有することができる。その他の成分はエポキシ樹脂組成物の所望の物性により適宜組み合わせて用いることができる。
例えば、エポキシ樹脂組成物に、可撓性保持及び耐水性向上の観点から、熱硬化性樹脂用改質剤を添加することが好ましい。改質剤としては、末端反応性ブタジエンアクリロニトリル共重合体等が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物が改質剤を含有する場合、改質剤の配合量は、エポキシ樹脂と硬化剤との和の100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下であり、そして、その下限については特に限定されないが、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上である。
改質剤の市販品としては、アミノ基末端ブタジエンアクリロニトリル共重合体である「Hypro 1300X16 ATBN」、「Hypro 1300X42 ATBN」等;カルボキシ基末端ブタジエンアクリロニトリル共重合体である「Hypro 1300X8 CTBN」、「Hypro 1300X31 CTBN」等;エポキシ基末端ブタジエンアクリロニトリル共重合体である「HyproRA840」(以上、いずれもハンツマン社製)等が挙げられる。
また、得られる硬化物の硬化収縮率を下げる効果、熱膨張率を低下させる効果等の各種特性を向上させることを目的に、エポキシ樹脂組成物に無機充填材をさらに添加し、電気・電子分野、特に液状半導体封止材への応用展開を図ることができる。また、エポキシ樹脂組成物には、靱性を付与するためにゴム粒子、アクリル粒子等の有機充填材も添加してもよい。
無機充填材としては、粉末状の補強材や充填材、例えば酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩、ケイ藻土粉、塩基性ケイ酸マグネシウム、焼成クレイ、微粉末シリカ、溶融シリカ、ゼオライト等のケイ素化合物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、その他、カオリン、マイカ、石英粉末、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物には、繊維質の補強材や充填材を添加することも可能である。例えばガラス繊維、セラミック繊維、カーボンファイバー、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタル等が挙げられる。また、有機繊維、無機繊維のクロスあるいは不織布を用いることもできる。
これらの充填材、繊維、クロス、不織布としては、それらの表面をシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤あるいはプライマーで処理する等の表面処理を行ったものも使用できる。
エポキシ樹脂組成物に、無機充填材、繊維質の補強材又は充填材を添加する場合、これらの添加量の合計は、エポキシ樹脂と硬化剤との和の100質量部に対して、好ましくは900質量部以下、より好ましくは700質量部以下、さらに好ましくは500質量部以下であり、そして、その下限については特に限定されないが、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上である。
エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、カップリング剤、可塑剤、希釈剤、可撓性付与剤、分散剤、湿潤剤、着色剤、顔料、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤、酸化防止剤、脱泡剤、離型剤、流れ調整剤等を配合してもよい。
エポキシ樹脂組成物が上記成分を含有する場合、これらの配合量は、エポキシ樹脂と硬化剤との和の100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下であり、そして、その下限については特に限定されないが、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上である。
エポキシ樹脂組成物には、最終的な塗膜における樹脂の性質を改善する目的で、必要に応じて種々の硬化性モノマー、オリゴマー及び合成樹脂を配合してもよい。例えば、シアネートエステル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等の1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
エポキシ樹脂組成物がこれら樹脂類を含有する場合、その配合割合は、エポキシ樹脂組成物の本来の性質を損なわない範囲の量、すなわちエポキシ樹脂と硬化剤の和の100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下であり、そして、その下限については特に限定されないが、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは5.0質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上である。
<エポキシ樹脂シート(A)の製造方法>
エポキシ樹脂シート(A)を形成する方法は特に限定されず、例えば、好ましい態様として上述したエポキシ樹脂と硬化剤等とを含有するエポキシ樹脂組成物を硬化させる方法が挙げられる。ここでいう「硬化」とは、熱、光、電子線等により、エポキシ樹脂組成物を硬化させることを意味する。なお、例えば、硬化前のエポキシ樹脂組成物を長期に保管することによって、熱や光による経時的な影響で徐々に硬化するような場合も包含する。硬化の程度も特に限定されるものではなく、完全又は完全に近い程度の硬化物であってもよいし半硬化物であってもよい。目的、用途等に応じて適宜硬化の程度を調整すればよい。
エポキシ樹脂シート(A)は、エポキシ樹脂組成物を所定の厚さのシートやフィルム(以下、「シート等」という。)状に調整した状態で硬化させることにより製造することができる。また、エポキシ樹脂組成物より得られた半硬化物を所定の厚さのシート等状に成形するとともに、さらに硬化させることにより製造することもできる。
シート等状に調整する方法は特に限定されないが、例えば、キャリアシート上にエポキシ樹脂組成物を塗布し、該樹脂組成物を硬化してエポキシ樹脂シート等を形成した後、該キャリアシートを剥離してエポキシ樹脂のシート等にする方法、第一キャリアシート上にエポキシ樹脂組成物を塗布し、該樹脂組成物の該第一キャリアシートが設けられた面と反対の面に対して第二キャリアシートを張り合わせた後、該樹脂組成物を硬化してエポキシ樹脂シート等を形成し、両方のキャリアシートを剥離する方法等が挙げられる。
一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(JIS K 6900:1994)。しかし、「シート」と「フィルム」の境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないため、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
エポキシ樹脂組成物の硬化方法は、エポキシ樹脂組成物中の配合成分、配合量、又は配合物の形状(例えばシートやフィルムの厚さ)によって異なるが、通常、23~200℃で5分間~24時間加熱する方法が挙げられる。この加熱は、23~160℃で5分間~24時間の一次加熱を行う一段処理と、一段処理に加えて、一次加熱温度よりも40~177℃高い80~200℃で5分間~24時間の二次加熱を行う二段処理、又は、二段処理に加えて、二次加熱温度よりも高い100~200℃で5分間~24時間の三次加熱を行う三段処理で行うことが、硬化不良を少なくする点で好ましい。
エポキシ樹脂シート(A)を半硬化物として製造する際には、加熱等により形状が保てる程度にエポキシ樹脂組成物の硬化反応を進行させればよい。エポキシ樹脂組成物が溶剤を含んでいる場合には、加熱、減圧、風乾等の手法で大部分の溶剤を除去するが、半硬化物中に5質量%以下の溶剤を残留させてもよい。
<剛性層(B)>
剛性層(B)とは、繊維強化樹脂、金属などエポキシ樹脂シート(A)と比較して剛性が高い材料から構成される層をいい、剛性層(B)は、好ましくは繊維強化樹脂層及び金属層の少なくともいずれかを含み、より好ましくは繊維強化樹脂層を含む。
(引張弾性率E(B))
剛性層(B)の引張弾性率は、エポキシ樹脂シート(A)の引張貯蔵弾性率E’(A)に対する剛性層(B)の引張弾性率E(B)の比E(B)/E’(A)が100以上となれば特に限定されないが、機械的強度に優れる積層体を得る観点から、10GPa以上であり、好ましくは30GPa以上、より好ましくは50GPa以上であり、そして、特に限定されないが、成形加工性の観点からは、好ましくは800GPa以下、より好ましくは500GPa以上、さらに好ましくは300GPa以下である。
剛性層(B)の引張弾性率は、該当材料規格に準拠した標準試験で測定される。例えば、JIS K 7165:2008、JIS K 7164:2005、ASTM D3039、又はJIS Z 2241:2011に準拠して測定される。剛性層(A)が2種類以上の材料を含む場合、厚み割合が高い材料の規格に準拠した標準試験で測定される。
(比E(B)/E’(A))
25℃における前記エポキシ樹脂シート(A)の引張貯蔵弾性率E’(A)に対する25℃における前記剛性層(B)の引張弾性率E(B)の比E(B)/E’(A)は、耐エロージョン性に優れる積層体を得る観点から、100以上であり、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1000以上、よりさらに好ましくは5000以上、よりさらに好ましくは10000以上であり、そして、その上限は特に限定されないが、50000以下である。
(繊維強化樹脂層)
繊維強化樹脂層は、樹脂成分(a-1)と強化繊維(a-2)とを含むことが好ましい。
≪樹脂成分(a-1)≫
樹脂成分(a-1)は特に限定はなく、硬化性樹脂であってもよいし熱可塑性樹脂であってもよいが、耐熱性の観点から硬化性樹脂であることが好ましく、成形加工のプロセスに適用しやすい観点から熱硬化性樹脂であることがより好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂及びメラミン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、樹脂成分(a-1)は、耐熱性、剛性層(B)との密着性、電気絶縁性、耐薬品性、耐腐食性等の観点から、好ましくはエポキシ樹脂である。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
≪強化繊維(a-2)≫
強化繊維(a-2)としては、特に限定されないが、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維等の無機繊維、液晶ポリマー繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維等の有機繊維、アルミニウム繊維、マグネシウム繊維、チタン繊維、SUS繊維、銅繊維、金属を被覆した炭素繊維等の金属繊維等が挙げられる。これらの中でも、強化繊維(a-2)は、剛性の観点から好ましくは炭素繊維及びガラス繊維からなる群より選ばれる1種以上であり、軽量性及び剛性の観点からより好ましくは炭素繊維である。
前記炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、石油系、石炭系等のピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、リグニン系炭素繊維等が挙げられ、いずれの炭素繊維も使用することができる。特に、PANを原料としたPAN系炭素繊維で、12000~48000フィラメントのストランド又はトウが、工業的規模における生産性及び機械的特性に優れており好ましい。
強化繊維は連続繊維であってもよいし、非連続繊維であってもよいが、連続繊維であることが好ましい。強化繊維の形状が後述するようなチョップドストランド、不織布等の非連続繊維の場合、繊維の数平均繊維長は通常0.5mm以上であり、1mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、5mm以上であることがさらに好ましく、10mm以上であることが特に好ましく、30mm以上であることが殊に好ましく、50mm以上であることが最も好ましい。数平均繊維長を前記下限値以上とすることで、得られる積層体の機械特性を十分なものとしやすい傾向となる。数平均繊維長の上限は特に限定されないが、500mm以下であることが好ましく、300mm以下であることがより好ましく、150mm以下であることがさらに好ましい。数平均繊維長を前記上限値以下とすることにより、積層体を用いて最終製品、特に複雑形状の最終製品を成形する際の複雑形状部への強化繊維の充填性を十分なものとし、当該部位の強度低下の発生を抑制しやすい傾向となる。
強化繊維の形状は、特に限定されず、チョップドストランド、ロービング等の繊維束、平織、綾織等の織物、編物、不織布、繊維ペーパー、UD材(一方向性(uni directional)材)等の強化繊維シートのうちから、必要に応じて適宜選択することができる。
これらの中でも、引張弾性率、引張強さ等の機械的特性の観点から、織物、編物、UD材などの連続繊維であることが好ましい。
樹脂成分(a-1)と強化繊維(a-2)とを複合化して繊維強化樹脂層を形成する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。
例えば、樹脂成分(a-1)が硬化性樹脂の場合は、強化繊維(a-2)に樹脂成分(a-1)を含浸させたプリプレグ、又は強化繊維(a-2)に樹脂成分(a-1)を部分的に含浸(半含浸)させ空隙量を制御した所謂セミプレグを用いて熱等により硬化して、繊維強化樹脂層を形成する方法が好ましい。すなわち、繊維強化樹脂層は、プリプレグ又はセミプレグからなる繊維強化樹脂複合体を硬化してなる硬化物であることが好ましい。
樹脂成分(a-1)が熱可塑性樹脂の場合は、樹脂成分(a-1)と強化繊維(a-2)とを複合化し、押出成形、射出成形、真空成形、圧空成形、プレス成形等を採用することにより、繊維強化フィルム、繊維強化シート、繊維強化板等に成形し、繊維強化樹脂層とすることができる。また、強化繊維(a-2)と熱可塑性樹脂繊維とからなる所謂混抄マットを用い、該熱可塑性樹脂繊維の流動開始温度以上においてプレス成形等することによっても、繊維強化樹脂層を形成することができる。
繊維強化樹脂層中の強化繊維(a-2)の割合は、弾性率、強度の観点から、好ましくは20体積%以上、より好ましくは30体積%以上であり、さらに好ましくは40体積%以上であり、そして、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。
繊維強化樹脂層に用いるプリプレグとしては、市販品を用いることもでき、例えば、三菱ケミカル株式会社製「TR3110 381GMX」、「TR3523 381GMX」、「TR6110H 331GMP」、「TR350C 175S」、「HSX350C110S」等のプリプレグ等を用いることができる。
(金属層)
金属層は、比E(B)/E’(A)が上記値以上となるものであれば特に限定されないが、鉄、アルミニウム、チタン、タングステン、銅、マンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む層、又は、これらの金属を主成分とする合金からなる層であることが好ましい。
例えば、軽量化を重視する場合、金属層としては、例えば、アルミニウム板、アルミニウム合金板、マグネシウム板などが好ましい。機械的強度を重視する場合は、当該金属層としては、鉄、鉄鋼材、ステンレス、銅、銅合金、マンガン、マンガン合金、チタン、又はチタン合金などが好ましい。
金属層の形態として、特に限定されないが、板状、金属繊維布、非多孔質金属箔、多孔質金属膜、または、エキスパンデッドメタル箔であることが好ましい。
剛性層(B)は、上記繊維強化樹脂層の表面を上記金属層で被覆してなるものであってもよい。繊維強化樹脂層の表面を金属層で被覆する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。
剛性層(B)の厚さは、積層体の使用用途により適宜変更されるが、機械的強度に優れる積層体を得る観点から、好ましくは100μm以上、より好ましくは300μm以上、さらに好ましくは500μm以上、よりさらに好ましくは700μm以上、よりさらに好ましくは1000μm以上であり、そして、その上限は特に限定されないが、軽量性の観点から、好ましくは50mm以下、より好ましくは30mm以下である。
剛性層(B)の厚さは、積層体断面を顕微鏡等で観察することにより測定され、それらの算術平均により求められる。
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、上述したエポキシ樹脂シート(A)と、剛性層(B)とを積層し、加熱及び加圧することで前記エポキシ樹脂シート(A)と前記剛性層(B)とを一体化することが好ましい。具体的には、例えば、以下の(i)~(iii)の方法が好ましく挙げられる。
(i)エポキシ樹脂シート(A)に用いるエポキシ樹脂のシート等の材料と、剛性層(B)に用いるプリプレグ、セミプレグ、金属等の材料とを積層し、熱等により樹脂成分を硬化及び接着させて一体化する方法、
(ii)剛性層(B)に用いるプリプレグ、セミプレグ、金属等の材料に、エポキシ樹脂シート(A)に用いるエポキシ樹脂組成物(未硬化物)を塗布等の方法により積層し、熱等により樹脂成分を硬化及び接着させて一体化する方法、
(iii)プリプレグ、セミプレグ等の材料を予め硬化して層を得た後、該繊維強化樹脂層にエポキシ樹脂組成物(未硬化物)を塗布等により積層し、熱等により硬化及び接着させて一体化する方法
特に、前記(i)の方法は、エポキシ樹脂シート(A)として硬化の程度を適宜調整したシート等の材料を用いるため、プリプレグ等に積層する際の張り替えが容易であったり、加熱した状態でも溶融しにくいので厚みを制御しやすかったり、用いるシート等の材料が伸縮性を有するため局面等への追従性に優れやすいといった利点がある。加えて、加熱により接着させる場合は特に、エポキシ樹脂シート(A)と剛性層(B)との界面の接着力がより高くなるといった利点もある。さらに、剛性層(B)に用いるプリプレグ等の材料が半硬化状態であるため、プレス成形等の賦形成形で実際の製品に賦形する際に、賦形と同時にプリプレグ等とエポキシ樹脂シート(A)とを接着及び一体化させることも可能となり、工程が簡略化されるという利点もある。
本発明の積層体は、例えば、前記のような製造方法を採用することで、積層体の使用用途に応じて、エポキシ樹脂シート(A)及び剛性層(B)の層構成をより容易に変更することができるとともに、厚さも容易に調整できる。また、積層体の断面視において、積層体の中央から両表面に向かって、エポキシ樹脂シート(A)及び剛性層(B)の層構成が非対称のものも容易に製造できる。
本発明の積層体は、エポキシ樹脂シート(A)及び/又は剛性層(B)の樹脂成分を加熱等により硬化させると同時に、金型等により賦形等することによって、所望の形状に成形することが好ましい。例えば、オートクレーブ成形、ハイブリッド成形、ヒートアンドクールプレス成形、スタンピング成形、フィラメントワインディング成形、シートワインディング成形、ロボットによる自動積層成形等の公知の工程に供することにより、有人又は無人の航空機、自動車、船舶、鉄道車両等の移動体の胴体、翼又はプロペラ、ロボット部材、産業機器、スポーツ用品、家電製品、建築資材等の部品や製品を得ることができる。
[積層体の物性等]
<層構成>
積層体は、エポキシ樹脂シート(A)が、積層体の少なくとも片面の最外層に存在する。また、積層体は、断面視において、積層体の中央から両表面に向かって、エポキシ樹脂シート(A)及び剛性層(B)の層構成が対称であってもよいし、非対称であってもよい。
積層体の具体的な層構成の例としては、エポキシ樹脂シート(A)を「A」とし、剛性層(B)を「B」とすると、A/B、A/B/B、A/B/A、A/B/B/B、A/A/B/B、A/A/A/B、A/B/A/B、A/B/B/A、A/B/B/B/B、A/A/B/B/B、A/A/A/B/B、A/A/A/A/B、A/B/A/B/A、A/B/B/B/A等が挙げられる。また、目的の用途、性能等に応じてエポキシ樹脂シート(A)及び剛性層(B)以外のその他の層(C)を適宜含んでいてもよい。
<厚さ>
積層体の厚さは、積層体の使用用途により適宜変更されるが、機械的強度に優れる積層体を得る観点から、好ましくは200μm以上、より好ましくは500μm以上、さらに好ましくは700μm以上、よりさらに好ましくは1000μm以上であり、そして、その上限は特に限定されないが、軽量性の観点から、好ましくは50mm以下、より好ましくは30mm以下である。
[剛性層積層用部材(X)]
別の態様として、繊維強化樹脂、金属など高剛性を有する材料から構成される層からなる剛性層(B)との積層体に用いられる部材(X)を提供する。該部材(X)は、エポキシ樹脂シート(A)であることが好ましい。ここでエポキシ樹脂シート(A)は、エポキシ樹脂と硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物を硬化してなるシートであることがより好ましい。該エポキシ樹脂は、ゴム成分を有するエポキシ樹脂、及び、剛直成分と柔軟成分とのブロック構造を有するエポキシ樹脂の少なくともいずれかを含むことが更に好ましい。
剛性層(B)、エポキシ樹脂シート(A)、ゴム成分を有するエポキシ樹脂、剛直成分と柔軟成分とのブロック構造を有するエポキシ樹脂の詳細及び好ましい態様は、前記エポキシ樹脂シート(A)と前記剛性層(B)とを有する積層体と同様であり、その説明は省略する。
部材(X)は、エポキシ樹脂以外の樹脂を含んでいてもよいが、その場合、部材(X)中のエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上である。
部材(X)の形状は特に限定されるものではないが、取扱い性、賦形性、二次加工性等の観点からシート又はフィルムであることが好ましい。シート又はフィルムの厚さは、使用用途により適宜変更されるが、耐エロージョン性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上、よりさらに好ましくは80μm以上であり、そして、剛性層(B)の表面の意匠性を維持する観点から、好ましくは1mm以下、より好ましくは800μm以下、さらに好ましくは600μm以下、よりさらに好ましくは500μm以下、よりさらに好ましくは400μm以下、よりさらに好ましくは300μm以下である。
部材(X)は、好ましくはプリプレグ及び/又はセミプレグからなる繊維強化樹脂複合体を硬化してなる硬化物である剛性層(B)との積層体に用いられる。部材(X)を用いる積層体の製造方法は、プリプレグ及び/又はセミプレグと部材(X)とを積層する工程と、該プリプレグ及び/又はセミプレグを硬化する工程とを含むものである。
[繊維強化樹脂複合体積層用樹脂組成物(Y)]
さらに別の態様として、繊維強化樹脂、金属など高剛性を有する材料から構成される層からなる剛性層(B)との積層体に用いられる樹脂組成物(Y)を提供する。剛性層(B)としては、例えば、プリプレグ、セミプレグ、混抄マット、繊維強化フィルム、繊維強化シート、繊維強化板、金属層等が挙げられるが、セミプレグ及び/又はセミプレグからなる繊維強化樹脂複合体を硬化してなる硬化物であることが好ましい。
該樹脂組成物(Y)は、エポキシ樹脂と硬化剤とを含む樹脂組成物であることが好ましい。該エポキシ樹脂は、ゴム成分を有するエポキシ樹脂、及び、剛直成分と柔軟成分とのブロック構造を有するエポキシ樹脂の少なくともいずれかを含むことがより好ましい。
ここで、エポキシ樹脂、硬化剤、ゴム成分を有するエポキシ樹脂、剛直成分と柔軟成分とのブロック構造を有するエポキシ樹脂の詳細及び好ましい態様は、前記エポキシ樹脂シート(A)と前記剛性層(B)とを有する積層体と同様であり、その説明は省略する。
本発明の樹脂組成物(Y)を用いる積層体の製造方法は、繊維強化樹脂複合体又は金属層と樹脂組成物(Y)とを積層する工程と、該樹脂組成物(Y)を少なくとも硬化する工程とを含むものである。繊維強化樹脂複合体がセミプレグ及び/又はセミプレグである場合は、プリプレグ及び/又はセミプレグと樹脂組成物(Y)とを積層する工程と、該プリプレグ及び/又はセミプレグと該樹脂組成物(Y)とを硬化する工程とを含むものである。
また、樹脂組成物(Y)を用いる積層体の製造方法の別の態様として、プリプレグ及び/又はセミプレグを硬化する工程と、該プリプレグ及び/又はセミプレグの硬化物と前記樹脂組成物(Y)とを積層する工程と、該樹脂組成物(Y)を硬化する工程とを含むものである。
なお、前記製造方法の工程における積層方法、硬化方法等は、前記エポキシ樹脂シート(A)と前記剛性層(B)とを有する積層体と同様であり、その説明は省略する。
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。以下において、「部」は全て「質量部」を示す。なお、特に断らない限り、以下の操作は23℃、50%RHの条件で行った。
[各種分析、評価及び測定方法]
以下における各種物性ないし特性の分析、評価及び測定方法は次のとおりである。
<エポキシ樹脂シート(A)>
(引張貯蔵弾性率E’(A))
下記記載の方法で得られたエポキシ樹脂シート(A)から幅10mm×長さ50mmに切り出して試験片とした。JIS K 7244-4:1999に記載される動的粘弾性測定法により、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社製「DVA-200」)を用いて、周波数1Hz、昇温速度3℃/分、両持ち引張モードの測定条件で試験片の測定を行い、25℃における引張貯蔵弾性率E’(A)を求めた。
(ガラス転移温度TgDSC
エポキシ樹脂シート(A)のガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC)により測定した。エポキシ樹脂シート(A)について、JIS K 7121:2012に準じて、示差走査熱量計Pyris1 DSC(パーキンエルマー社製)を用いて、温度範囲-50~150℃、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
(全光線透過率)
エポキシ樹脂シート(A)の厚さ100μmにおける全光線透過率は、JIS K 7136:2000に準拠して、ヘーズメーター「HM-150」(株式会社村上色彩技術研究所製)により、測定した。
(プリプレグとの剥離強度)
剛性層(B)として炭素繊維プリプレグ(三菱ケミカル株式会社製の商品名「TR3110 381GMX」)を用いた。炭素繊維プリプレグ表面の保護フィルムを剥がし、エポキシ樹脂シート(A)をゴムローラーで貼り合わせた積層体から幅25mm×長さ200mmに切り出して試験片とし、万能材料試験機(株式会社島津製作所製「AGS-X」)を用いて、試験速度300mm/分で、プリプレグとエポキシ樹脂シート(A)との界面についてT型剥離試験を行い、変位が50mm~100mmの間における剥離強度の平均値を求めた。
<剛性層(B)>
(引張弾性率E(B))
剛性層(B)の引張弾性率E(B)は、万能試験機を用いてASTM D3039に準拠して求めた。厚さ2.5mmの剛性層(A)の平板から、水平繊維方向を長さ方向とし、その垂直方向を幅方向とし、長さ250mm×幅25mmの短冊形状試験片を切出した。中央部に長さ方向を測定用のひずみゲージを貼り付け、試験片の両端に長さ50mm×幅25mmのタブ材を両面貼り付け、測定用試験片を得た。万能試験機でチャッチ間距離を150mm、試験速度を2mm/分で引張試験を行い、引張応力-ひずみ曲線を作成し、ひずみ0.1%~0.3%間の線形回帰によって求めた。
<積層体>
(エポキシ樹脂シート(A)と剛性層(B)の密着性)
剛性層(B)の炭素繊維プリプレグ(三菱ケミカル株式会社製の商品名「TR3110 381GMX」)から繊維の方向が±45°になるように幅30mm×長さ150mmのシートを切出した。表面の保護フィルムを剥がし、2枚の間に、エポキシ樹脂シート(A)を挿入し、サンドイッチのように積層した。ついで、熱プレス機で0.8MPaの圧力をかけ、130℃で90分間熱プレスし、評価用サンプルを得た。万能材料試験機(株式会社島津製作所製「AGS-X」)を用いて、試験速度50mm/分で、硬化した炭素繊維プリプレグをチャックに挟んでT型剥離試験を行い、密着性を下記基準で評価した。
A:剛性層(B)が基材破壊又はエポキシ樹脂シート(A)が凝集破壊
B:剛性層(B)とエポキシ樹脂シート(A)が界面破壊
(耐エロージョン性)
下記記載の方法で得られた積層体サンプルを1辺30mmの四角形状に切り出した後、質量を測定することによって耐エロージョン性を評価した。
この四角形状の中心部分に半径5mmの円を設定し、この円内を狙い、エポキシ樹脂シート(A)の面に対して、エアブラストガンからアルミナ研削材を毎分2.1g、衝突速度127.4m/sで60分間衝突させた。衝突試験後、質量を測定し、衝突試験前後での質量変化量を求めた。なお、衝突試験前後において質量を測定する際、試験片表面に付着したゴミを取るため、事前に超音波洗浄及び真空乾燥処理を行った。なお、衝突粒子は白色アルミナ研削材(昭和電工株式会社製「WA F220」)を用いた。サンプル表面とエアブラストガンから発射されるアルミナ研削材の角度は90degとした。
上記衝突試験を3回行い、質量変化量の平均値を摩耗量とした。
また、衝突試験後のサンプルの表面損傷状態について目視で観察を行い、下記の基準で耐エロージョン性を評価した。
A:剛性層表面まで損傷がない
B:剛性層表面に損傷がある
C:剛性層表面に穴が形成された
<エポキシ樹脂シート(A)の使用材料>
・エポキシ樹脂(α1)
エポキシ樹脂(α1)として、以下の方法で調製したビスフェノールFと1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体を用いた。
撹拌機、滴下ロート及び温度計を備えた1L容ガラス製フラスコに、予め45℃に加熱した1,6-ヘキサンジオール141.8質量部、三弗化ホウ素エチルエーテル0.51質量部を仕込み、80℃まで加熱した。85℃以上にならない様に時間をかけてエピクロロヒドリン244.3質量部を滴下した。80~85℃に保ちながら1時間熟成を行った後、45℃まで冷却した。ここへ22質量%水酸化ナトリウム水溶液528.0質量部を加え、45℃で4時間激しく撹拌した。室温まで冷却して水相を分離除去し、減圧下加熱して未反応のエピクロロヒドリン、水を除去し、粗1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル283.6質量部を得た。
この粗1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルは、オールダショウ蒸留塔(15段)にて蒸留精製し、圧力1300Pa、170~190℃の留分を主留分とすることで、ガスクロマトグラフィ法によるジグリシジル体純度が97質量%、全塩素量が0.15質量%、エポキシ当量が116g/eqである1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルを127.6質量部得た。
前記1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル100質量部、ビスフェノールF(フェノール性水酸基当量:100g/eq)69.3質量部、エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド(30質量%メチルセロソルブ溶液)0.13質量部を耐圧反応容器に入れ、窒素ガス雰囲気下、165~170℃で5時間、重合反応を行うことで、エポキシ当量が1,000g/eq、数平均分子量が3,000であるビスフェノールFと1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体を得た。
このビスフェノールFと1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの共重合体は、剛直成分と柔軟成分とのブロック構造を有する共重合体であった。
・エポキシ樹脂(α2)
ゴム変性エポキシ樹脂(ADEKA社製の商品名「アデカレジン EPR-1630」、CTBN(カルボキシ基を含有するブタジエン-アクリロニトリル共重合体のエポキシ樹脂))
・エポキシ樹脂(β1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製の商品名「jER828」)(エポキシ当量:390g/eq)
・硬化剤(C)
脂環式ポリアミン
三菱ケミカル株式会社製の商品名「jERキュアST-14」、活性水素当量:85g/eq
<実施例1>
上記エポキシ樹脂(α1)100質量部に、硬化剤(C)を8.5質量部配合し、エポキシ樹脂組成物を調製した。該組成物をセパレータフィルム(三菱ケミカル株式会社製「ダイアホイルMRF-75」、片面シリコーンコートしたポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み75μm)の間に挟み、所望の厚みに調整して、40℃で16時間一次加熱処理をして、さらに80℃で6時間二次加熱処理を行い、厚さ100μmのエポキシ樹脂シートを得た。該エポキシ樹脂シートの分析結果を表1に示す。
剛性層(B)に用いる材料として、三菱ケミカル株式会社製「TR3110 381GMX」のプリプレグのセパレータフィルムを剥がし、8枚を重ねてからエポキシ樹脂シートの片面に積層した。ついで、熱プレス機で0.8MPaの圧力をかけ、130℃で90分間熱プレスし、積層体を作製した。該積層体の分析及び評価結果を表1に示す。
<実施例2>
エポキシ樹脂(α1)をエポキシ樹脂(α2)に変更し、硬化剤(C)の配合量を、8.5質量部から10.5質量部に変更してエポキシ樹脂組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして、エポキシ樹脂シート及び積層体を作製した。
<比較例1>
上記エポキシ樹脂(α2)67質量部と、上記エポキシ樹脂(β1)33質量部に、硬化剤Cを23.5質量部配合し、エポキシ樹脂組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして、エポキシ樹脂シート及び積層体を作製した。
<比較例2>
エポキシ樹脂シートを使用せず、三菱ケミカル株式会社製「TR3110 381GMX」のプリプレグのみを使用した。
実施例1及び2の積層体は、耐エロージョン性に優れている。また、熱プレス工程前は、エポキシ樹脂シート(A)と剛性層(B)は剥離する一方、熱プレス後は密着性に優れていることがわかる。エポキシ樹脂シート(A)を剛性層(B)に積層し硬化工程を経ることで簡便に耐エロージョン性を付与できるものである。また、硬化工程前のリワーク性にも優れている。
本発明の積層体は、耐エロージョン性に優れるため、胴体、翼又はプロペラ等の部材に使用されることによって、航空機、自動車、船舶、鉄道車両等の移動体に好適に用いられる。また、本発明の積層体は、ロボット部材、産業機器、スポーツ用品、家電製品、並びに建築資材に好適に用いることができる。

Claims (13)

  1. エポキシ樹脂シート(A)と剛性層(B)とを有する積層体であって、該エポキシ樹脂シート(A)は少なくとも片面の最外層として存在し、下記(1)及び(2)を満たす、積層体。
    (1)25℃における前記エポキシ樹脂シート(A)の引張貯蔵弾性率E’(A)に対する25℃における前記剛性層(B)の引張弾性率E(B)の比E(B)/E’(A)が100以上である
    (2)前記エポキシ樹脂シート(A)の前記引張貯蔵弾性率E’(A)が0.5MPa以上100MPa以下である
  2. 前記エポキシ樹脂シート(A)のガラス転移温度を40℃以下に有する、請求項1に記載の積層体。
  3. 前記エポキシ樹脂シート(A)は、厚さ100μmにおける全光線透過率が80%以上である、請求項1又は2に記載の積層体。
  4. 前記エポキシ樹脂シート(A)の厚さが10μm以上800μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
  5. 前記エポキシ樹脂シート(A)が、エポキシ樹脂と硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物を硬化してなるシートである、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
  6. 前記エポキシ樹脂シート(A)に含まれるエポキシ樹脂が、ゴム成分を有するエポキシ樹脂、及び、剛直成分と柔軟成分とのブロック構造を有するエポキシ樹脂の少なくともいずれかを含む、請求項5に記載の積層体。
  7. 前記硬化剤が、ポリエーテルアミン及び/又は脂環式構造を有する硬化剤である、請求項5又は6に記載の積層体。
  8. 前記剛性層(B)は、繊維強化樹脂層及び金属層の少なくともいずれかである、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層体。
  9. 前記繊維強化樹脂層が、プリプレグ及び/又はセミプレグからなる繊維強化樹脂複合体を硬化してなる硬化物である、請求項8に記載の積層体。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載の積層体の製造方法であって、前記エポキシ樹脂シート(A)と、前記剛性層(B)とを積層し、加熱及び加圧することで前記エポキシ樹脂シート(A)と前記剛性層(B)とを一体化する、積層体の製造方法。
  11. 請求項1~9のいずれか1項に記載の積層体を備えた部材。
  12. 請求項11に記載の部材を備えた移動体。
  13. 請求項1~9のいずれか1項に記載の積層体を備えたロボット部材、産業機器、又は建築資材。
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